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2008/03/08 [Sat] 23:58:21 » E d i t
不妊の夫婦が妻以外の女性に出産を頼む代理出産の是非を検討していた日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)は3月7日の会合で、代理出産の法律による禁止など10項目の提言を盛り込んだ報告書最終案をまとめました。学術会議内での審査などを経て、4月上旬をめどに報告書を完成し、厚生労働、法務両相に提出するとのことです。


提言内容について検討する前に、ネットを見ていると勘違いしている方が多いので、代理出産を認めるか否かとはどういうことかを簡単に説明しておきます。

代理出産を認めた場合、代理母と代理出産依頼者夫婦すべての人の同意を必要とするのです。代理出産を認めたとしても、親族又は第三者の意思問わず、女性すべてを代理母として強制するものではありません(強要すれば、強要罪として処罰される)。代理出産を実施する場合、最低限1年半から2年ほどの期間かかり、しかも多数人が関与するのですから、長期間、強要し続けることはまず困難であり、代理母となるためには医学的な適格審査が必要であって誰でも代理母となるわけではないのです。

他方で、代理出産を禁止するということは、代理母と代理出産依頼者夫婦すべてが代理出産の実施に同意していても、そのすべての人の同意という自己決定権(憲法13条)を全面的に制約・禁止するということです。注意すべきことは、代理母の自己決定権も全面的に否定することになる点です。

代理出産を認めるか否かとは、代理母と代理出産依頼者夫婦すべての人の同意を尊重するのか、それともすべての人の同意を禁圧するのか、ということなのです。



1.まず、報告書案の提言の要旨と、批判書の一部を。

(1) 中国新聞3月7日21時14分更新

代理出産に関する提言要旨 日本学術会議検討委員会

--------------------------------------------------------------------------------

 日本学術会議検討委員会が7日まとめた、代理出産に関する提言の要旨は次の通り。

 一、代理出産は法律で原則禁止とすべきだ。

 一、営利目的の代理出産は、医師、あっせん者、依頼者を処罰する。

 一、代理出産の危険性チェックなどのため、厳重な管理下での試行(臨床試験)は考えられる。

 一、試行には、登録や追跡調査などに当たる公的運営機関が必要。

 一、代理出産でも産んだ女性が母。

 一、生まれた子と依頼者夫婦は、養子縁組で親子関係を確定する。

 一、子が出自を知る権利は今後の検討課題。

 一、議論が尽くされていない生殖医療の課題の検討が引き続き必要。

 一、生命倫理を検討する公的研究機関と、内閣府への常設委員会設置が望ましい。

 一、生殖医療の議論では子の福祉を最優先する。

(初版:3月7日21時14分)」




(2) 産経新聞平成20年3月8日付朝刊29面

代理出産報告書案に盛り込まれた提言(要旨)2008.3.8 00:48

 ▽代理懐胎については、現状のまま放置することは許されず、規制が必要である。規制は法律によるべきであり、例えば、生殖補助医療規制法(仮称)のような新たな立法が必要と考えられ、それに基づいて当面代理懐胎は原則禁止とすることが望ましい。

 ▽営利目的で行われる代理懐胎には、処罰をもって臨む。処罰は、施行医、斡旋者、依頼者を対象にする。

 ▽代理懐胎の医学的問題、とくに出生後子の精神的発達などについて長期的観察の必要性と、倫理的、法的、社会的問題など起こり得る弊害の可能性に配慮するとともに、母体保護や生まれる子の権利や福祉を尊重する立場を重視し、厳重な管理の下に例外的に試行(臨床試験)を行う。

 ▽親子関係については、代理懐胎者を母とする。試行の場合も同じとする。外国に渡航して行われた場合についても、これに従う。

 ▽代理懐胎を依頼した夫婦と生まれた子については、養子または特別養子縁組によって親子関係を定立する。試行の場合も同じとする。外国に渡航して行われた場合もこれに従う。

 ▽新たに内閣府の下に常設の委員会を設置し、生命倫理に関する政策の立案なども含め、処理していくことが望ましい。」




(3) 学術会議報告書に対する批判書(平成20年2月15日)

学術会議報告書に対する批判書

扶助生殖医療を推進する患者会「二輪草」    
法学博士・桐蔭横浜大学法科大学院教授    
世話人弁護士 遠  藤  直  哉
(協力:医師 大谷徹郎、医師 根津八紘)


第1 結論

1 患者不在の報告書である。患者(障害者、弱者)を抑圧し、社会の差別意識を助長するものである。

2 子の福祉を全く保護しないものである。

3 根津医師の代理出産の功績を否定し、会告の禁止では足りないとし、さらに法律で禁止し、患者の人権を侵害し、世論に背くもの。

4 特に、母親の代理出産を否定する理由には全く根拠がない。

5 日産婦会の会告による禁止の状態をやめ、法律で公認する役割を期待されていたが、全く果たしていない。

6 本報告書は、代理出産ではなく養子をすすめるが、本報告書で自白するとおり、「養子」では泣く泣く子を渡す母親及び兄弟から子を引離す点で、「代理出産」(子を渡す意思と義務が明白である類型)より弊害のあることが明らかとなった。」




2.一見して分かるように、代理出産の「試行」は認めたので、すべての代理出産を罰則付きで全面的に禁止すべきだとした2003年の厚生労働省部会の結論を緩和した内容です。また、代理出産のみ検討して他の「生殖補助医療」は検討しないままになりましたから、2003年の厚生労働省部会の報告書よりも中身のないものになりました。


以下、提言内容10についてすべてコメントしておきます。

一、代理出産は法律で原則禁止とすべきだ。



代理出産には、妻が卵巣と子宮を摘出した等により、妻の卵子が使用できず、かつ妻が妊娠できない場合に、夫の精子を妻以外の第三者の子宮に医学的な方法で注入して妻の代わりに妊娠・出産してもらう「サロゲートマザー」と、夫婦の精子と卵子は使用できるが、子宮摘出等により妻が妊娠できない場合に、夫の精子と妻の卵子を体外受精して得た胚を妻以外の第三者の子宮に入れて、妻の代わりに妊娠・出産してもらう「ホストマザー」の2種類が存在します。過去の報道からして、「ホストマザー」のみを予定していると思われます。

原則禁止とした場合、厚生労働省が今年2・3月に実施した意識調査によると「認めてよい」と回答した人は54%に上り、1999年、2003年に続き3回目となる今回の調査で半数を超えています。そうすると、原則禁止の法規制は、このような国民の意識と乖離した法規制を提示しても国民は納得しないし、立法化は困難です。法律が遵守されるには、国民の社会意識と合致している必要があるからです。


なお、代理出産禁止の根拠として、「代理懐胎において比較的高齢の女性が懐胎する場合には、高齢妊娠の要因により妊娠中の異常がさらに増加することが懸念される」という文献を挙げているようです。しかし、その文献は代理出産の文献ではなく、卵子提供の文献及び一般の高齢出産の文献ですから、誤りです(「学術会議報告書に対する批判書」より)。

また、代理出産禁止の根拠として、「妊娠の母体から子への物質の移行にともない、移行物質の直接作用、およびDNA配列の変化を伴わない遺伝情報の変化(エピジェネティック変異)により出生後の子の健康状態に影響が及ぶことが示唆されている(※3)。……代理懐胎では、胎児は代理懐胎者の健康状態の影響を直接受けることとなり、代理懐胎の子に及ぼす影響の評価は今後の研究に俟つべきものが多い。」としています。しかし、母体について健康か異常かが子に直接影響することは、あり得るとした場合、代理母が健康であれば、子も健康となることは通常分娩と変わりはありません。※3は、動物実験の論文であり、かつ動物の代理出産の論文ではないのですから、そのような全く無関係な論文を引用して禁止の根拠にするのか、実に馬鹿げています(「学術会議報告書に対する批判書」より)。

また、代理出産禁止の根拠として、「『卵子提供による体外受精』に関する研究によると、妊娠中の異常出血、妊娠高血圧症候群、子宮内胎児発育遅延、早産が、通常の妊娠に比べて高い頻度でみられる。」ことから、代理出産でも同じ結果が生じるとしているようです。しかし、卵子提供を受ける者は、不妊症であること、高齢となっていることなどから、通常の妊娠に比べ、不妊の原因(内膜症・骨盤内癒着など)によるリスクを伴うことが明らかとされているのであって、代理母自体は不妊症患者ではありません。ですから、『卵子提供による体外受精』に関する研究の結果は、不妊症でない代理母の妊娠出産には当てはまらないのです。むしろ、代理母は不妊症でないがゆえに、代理母においては、一般の体外受精よりリスクは少ないとの文献報告があるくらいなのです(「学術会議報告書に対する批判書」より)。

また、代理出産禁止の根拠として、「代理母と早期に引き離される子供の精神的ダメージが予想される」というものがあります。しかし、特別養子縁組の場合も、母親と出産直後に子供を手放す場合が少なくないのですから、特別養子縁組を認めておきながら代理出産を禁止することは論理一貫しません。これに対して、代理母が母親の場合には、引き離されることはなく、孫と楽しく過ごす大きな喜びが待っています(「学術会議報告書に対する批判書」より)。このように、代理母が母親の場合と特別養子縁組を比較すると、養子縁組の方が子供の精神的ダメージが深刻なのです。


 

一、営利目的の代理出産は、医師、あっせん者、依頼者を処罰する。



営利の目的を有する者は本来、斡旋業者のみですから、売買防止法のように、斡旋業者のみを処罰すれば足り、懐胎者、依頼者、医師は処罰の対象外とすべきです。搾取をし、営利を受けるのは斡旋業者のみであり、被害者は懐胎者、依頼者、医師だからです(「学術会議報告書に対する批判書」より)。

依頼者を処罰すると、もし懲役刑を科す場合は子供の扶養ができないことを意味し、罰金を科す場合もその家族全体に経済的な負担をもたらすことになります。いずれにしても、子供の福祉に反することになるため、妥当ではありません。提言では、「子の福祉を最優先」としておきながら、結局は子供の福祉に反する提言を行っています。

医師に対しては「保険医の登録を取消すことができる……医師の保険医の指定を取消すことが可能となる。」ことを予定しているようです。しかし、保険医の登録の取消しとは、保険診療に関する不正行為などに関係することに限定されます。ですから、保険診療に関係のない代理出産に関し、保険医の取消しをすることは、論理的に不可能です(「学術会議報告書に対する批判書」より)。

出産を請け負った代理母は、「妊娠・出産を負担した被害者」などの理由で対象から外していますが、同意ある場合しか代理出産ができない以上、同意に基づいて代理母となった者であるのだから、「被害者」ではありません。最初から代理母を「被害者」扱いすることは、代理母を侮辱するものであり、代理母の自己決定権をないがしろにするものです。元々、生殖医療という秘匿性の高いプライバシーであり、生殖に関する自己決定権について、謙抑性を基本とする刑罰を科すべきなのか疑問があります。


 

一、代理出産の危険性チェックなどのため、厳重な管理下での試行(臨床試験)は考えられる。



「試行(臨床試験)」とは、実質的には代理出産を許容する意味を有しますから、素直に「例外的に許容する」と明示した方がよいと思います。医療技術や薬の効能を試すのと異なり、一人の人間が生まれるのですから、「試行」という捉え方自体問題があるからです(朝日新聞平成20年3月8日付「社説」)。「子作りは実験ではない」(根津院長)のです。

産婦人科医や小児科医、法律家、心理カウンセラーなどで構成する機関が、〈1〉依頼する女性に子宮がない〈2〉代理母が他からの強制を受けていない――など、厳しい条件のもとで試行する場合に限るとのことですが、「代理母が他からの強制を受けていない」ことは当然の要件であり、何が厳しい条件なのか、かなり意味不明です。

「試行で問題が出た場合には、その時点で全面禁止にする」ようですが、何をもって「問題が出た」というのか(トラブル? それとも子供への影響?)、内容不明確です。

なお、報告書では、「我が国においては、代理懐胎が会告を無視した形で一部の医師により行われていることは報道されているが、データを明らかにすることなく独自に行われていることもあり、医学的データの報告はほとんど存在しない。」ことから、試行すると説明しています。しかし、諏訪マタニティークリニックの根津医師は、減胎手術、非配偶者間体外受精に始まり、代理出産についても積極的に公表し、医学的ペーパーを提供してきたのですから、日本でも医学的データの報告は存在します。報告書は虚偽の説明を行っているのです。


 

一、試行には、登録や追跡調査などに当たる公的運営機関が必要。



公的運用機関を実施するには、実際上、多くの困難が伴います。例えば、<1>代理出産の依頼から代理出産に至るまで数年かかるのが通常なので、国のどこが管理するのか、代理出産を行う医療機関をどうやって選定するのか、<2>代理出産依頼者及び代理母には肉体的・精神的・金銭的負担が生じ、医療機関に支払う金銭も多大なものになる。国の管理下にある以上、国がそれらすべてを補償する責任を負うことになるが、その費用をどうやって拠出するのか、<3>多数の多くの高度なプライバシー情報を長期間(20~30年)にわたって国が管理する以上、その情報管理が重要になるが、どこが責任をもって情報管理を行うのかなどです。


 

一、代理出産でも産んだ女性が母。



代理母を法律上の親とすると、依頼者提供受精卵による子供に相続権が発生するが、それは代理母・その配偶者及び夫婦間の血縁関係のある子供の合理的意思に反することになります。代理出産でも産んだ女性を母とすることは、その代理母側の家族全員にも扶養義務などを負うことになるなど、代理母の家族全体に影響してしまうことに注意する必要があります。

代理出産でも産んだ女性を母とした場合、代理母側の家族全体に影響してしまうとすると、第三者は代理母となることを躊躇することになりますが、そうなると、親族のみが代理母とならざるを得なくなり、余計に親族に対する強制の契機が生じてしまいます。報告書はむしろ、親族に対する代理出産の強制をもたらす結果となってしまいました。

また、代理契約上、代理母(及びその配偶者)には養育意思がありませんが、代理母を法律上の親とすると、養育意思のない者を親とすることになり、妥当でありません。近時、自然妊娠・出産後、病院に生み捨てていく女性が増えていることから分かるように、産んだ女性を形式的に母と扱ったとしても、養育意思を欠いていれば無意味なのですから。養育意思のない代理母を、法律上の母として養育を強要することは、代理母依頼者のみならず、代理母と子供双方にとっても不幸です。

養育意思のない者(代理母)を親とする方がよいのか、養育意思のある者(代理出産依頼者)を親とした方がいいのか、子供にとってどちらが幸福なのでしょうか。報告書は前者を採用しましたが、妥当とは思えません。

「代理出産でも産んだ女性が母」とすると、戸籍上、血縁関係のある者(代理出産依頼者と子供との血縁関係)であっても親子関係があるとの記載がなされないことになります。これでは近親婚の危険性を排除できません。近親婚の防止よりも、産んだ女性を母とすることが優先するという立法政策は妥当とは思えません。


 

一、生まれた子と依頼者夫婦は、養子縁組で親子関係を確定する。



養子と特別養子とは全く異なります。養子では、代理母と子との親子関係は継続するのに対して、特別養子ではこれが切断されます。子供の福祉の観点からすれば、特別養子に限定する必要があります。しかし、特別養子でも、血縁の証明は必要と考えられて、戸籍を追えば親子関係が分かるようになっているので、妥当性を欠いています(諸外国と異なる)。元々、代理母と子との間に、血縁はないのですから、血縁関係を示す特別養子制度は不適合といえます(「学術会議報告書に対する批判書」より)。

外国に渡航して行われた場合も、生まれた子と依頼者夫婦は、養子縁組で親子関係を確定するとのことですが、代理出産を認める米国の州で実施した場合には、養子縁組は非常に困難です(向井・高田夫妻の事例参照)。法務省及び学者は脱法的な方法をとれば養子縁組が可能としていますが、明確性が要求される身分行為について、特に脱法的な方法は妥当ではありません。また、脱法行為を肯定したとしても、役所に正直に言えば養子縁組となり、外国裁判所の決定に従えば実子となるのですから、誰も正直に言わないだけです。


 

一、子が出自を知る権利は今後の検討課題。



子供の福祉の尊重を最優先とするのであれば、まず最優先で「子が出自を知る権利」を保障するべきでした。しかし、報告書では、議論もせず、権利保障しなかったのですから、報告書は論理矛盾を起こしています。

「第三者の生殖により生まれた子の法的地位」は、日本法では明文規定がなく、しかも母子関係を決定する規定さえもないため、かなり不安定な状況であり、一刻の猶予もないのです。子の法的身分関係が不安定となると、養育監護を受ける権利が保障されないなど「子の保護」が危うくなるのですから、「子の保護」を最優先とする(比較法的にも)親子法制の基本原則に著しく反している状態なのです。ですから、子供の出自を知る権利などの「第三者の生殖により生まれた子の法的地位」について、決定するべきでした。この点がこの報告書の最大の欠陥だといえます。

仮に「子が出自を知る権利」を認めた場合、報告書によると、代理出産の場合には養子縁組にするしかないのですから、真実を知ったとき、子供は代理出産と養子縁組という二重の精神的負担を負わされることになります。これは、子供の福祉にとって非常に妥当性を欠いたものです。


 

一、議論が尽くされていない生殖医療の課題の検討が引き続き必要。



「生殖補助医療」としては、夫婦の精子・卵子・胚のみを用いるものと提供された精子・卵子・胚を用いるものがあり、また、人工授精、体外受精、胚の移植、代理懐胎等様々な方法があります。法務省及び厚生労働省は、これらすべての「生殖補助医療」についての議論を整理することを依頼していました。すなわち、日本学術会議は、「代理懐胎が生殖補助医療として容認されるべきか否かなど、代理懐胎を中心に生殖補助医療をめぐる諸問題について、従来の議論を整理し、今後のあり方等について調査審議を行う。」はずだったのに、依頼された任務を怠ったのです。こんな不十分な報告書をよく提出できたものです。

イタリアでは、カトリック教会の影響力が強いため、2004年、第三者の配偶子の提供を禁止する立法を行ってしまいましたが、ほとんどのヨーロッパ諸国では配偶子(精子及び卵子)の提供は認めており(ただし、ノルウェーでは卵子提供は禁止)、日常診療として確立しているのです。もはや、配偶子の提供を認める前提で、提供者の匿名性などの問題点の解決が課題になっている状況です。もちろん、米国でも配偶子(精子及び卵子)の提供は認めています。このように、日本よりも進んだ生殖医療を行っている世界的な傾向からすれば、配偶子(精子及び卵子)の提供は異論なく認めるべきでした(「海外における配偶子提供の現状~学術会議報告書素案が子の出自を知る権利や配偶子提供の是非につき沈黙したのはなぜか?」参照)。


 

一、生命倫理を検討する公的研究機関と、内閣府への常設委員会設置が望ましい。



希望することは立派ですが、本当に設置するのであれば、これ自体の法整備はもちろん、予算と人材を必要としますから、早期の立法化は困難になります。早期の立法化とどうやって折り合いを付けろというのでしょうか。報告書はかなり無責任です。


 

一、生殖医療の議論では子の福祉を最優先する。



「子の福祉」とは具体的にどういう内容でしょうか? 立法化を願うのであれば抽象論を主張する時期は終わっているのですから、これも無責任な内容です。すでに述べたように、報告書は子が出自を知る権利さえも認めておらず「子の福祉」に反するものばかりを含んでいますから、どこが子の福祉を最優先なのか、矛盾に満ち満ちています。真に子の福祉を最優先する報告書を作成すべきでした。

報告書全体からすると、子の保護を最優先とする立法を願っているのではなく、(子供よりも)「被害者」である代理母の保護を最優先する立法を願うものとなっているといわざるを得ません。「生殖医療の議論では子の福祉を最優先する」ではなく、「生殖医療の議論では代理母の保護を最優先する」とした方が報告書全体としては整合性が図れています。しかし、「子の福祉を全く保護しない」立法が妥当とはいえません。

生まれ出る子供にとって最大幸福は、世に出る機会に恵まれることです。代理出産を禁止することは、世に出る機会を奪うのですから、最も子の福祉に反することです。また、子供にとっては、親から愛され、愛情が十分に整った環境の中に生れ落ちるべきですが、養育意思のある者が親となることこそ、「愛情が十分に整った環境」であり、子供の福祉に最適といえます。出産した母を親とすることは、子供の福祉に反するのです。




3.次に報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年3月8日付朝刊1面

代理出産、法律で原則禁止に 学術会議が最終報告
2008年03月08日00時36分

 日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(鴨下重彦委員長)は7日、代理出産の原則禁止を盛り込んだ「生殖補助医療法」(仮称)を定めるように求めた最終報告書をまとめた。法律で、営利目的の代理出産をあっせんした業者、実施した医師、依頼者を処罰対象とすることで規制に実効性を持たせようとしている。一方で、公的機関の厳格な管理のもと、試行(臨床試験)の道も残した。

 幹事会の承認を経て、4月に審議依頼された厚生労働省、法務省に提出する。議論は今後、国会に移るが、法案づくりを政府が主導するのか、議員立法になるのか、は不透明だ。また、議員には代理出産容認論もあり、意見集約の難しさを指摘する声も出ている。ねじれ国会の影響から、議論がいつ始まるかも分からない。

 報告書では、子宮がない女性にとって、代理出産以外に血のつながった子を産む方法がないことから、公的機関の管理と法律の規定する要件のなかで、試行として実施されることは考慮していい、とした。

 試行的な代理出産で子どもが生まれた場合、産んだ女性を母親と規定。外国で生まれたケースも含め、依頼者との親子関係は、養子や特別養子の縁組で認めるとした。

 代理出産で生まれた子が、自分が誰から生まれたかを知ることを、権利としてどこまで認めるかや、第三者から提供された卵子と夫の精子を体外受精させて妊娠、出産する方法の是非については「今後の重要な検討課題」などとして、結論は出さなかった。」




(2) 読売新聞平成20年3月8日付朝刊1・38面

代理出産「営利」に刑罰

学術会議 法制化求める

 代理出産の是非を検討してきた日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長=鴨下重彦・東京大名誉教授)は7日、代理出産を「生殖補助医療法(仮称)」で禁止し、営利目的で代理出産を行った場合は依頼者を含めて刑罰の対象とすべきだとする最終報告書をまとめた。

 過去にも法制化を求める厚生労働省の報告書が出されたことがあり、学界の総意といえる今回の報告書を受けた具体化への動きが、今後の焦点となる。

依頼・仲介者、医師が対象

 受精卵を第三者に託して出産を依頼する「代理出産」の実施については、依頼を受けた代理母や生まれた子供の身体的・精神的負担が大きいと判断し、外国で代理出産を行っている現状に歯止めをかけるため、新たな法律で禁止すべきだと決めた。

 特に、金銭の授受などが絡む営利目的で代理出産が行われた場合は、依頼者と仲介者、医師の3者を刑罰の対象とした。出産を請け負った代理母は、「妊娠・出産を負担した被害者」などの理由で対象から外した。

 一方、現時点では代理出産に関する医学的情報が不足しているため、公的機関の厳重な管理のもとで代理出産を試行することは、例外的に考慮されてよいと指摘した。産婦人科医や小児科医、法律家、心理カウンセラーなどで構成する機関が、〈1〉依頼する女性に子宮がない〈2〉代理母が他からの強制を受けていない――など、厳しい条件のもとで試行する場合に限る。試行で問題が出た場合には、その時点で全面禁止にする。

 また、海外などで実施された場合の親子関係については、代理母を法的な母とするが、依頼夫婦と養子縁組することは認める。

 この問題に関し舛添厚労相は同日、「立法府で早めに議論することが必要。各国会議員が、自分の哲学に基づいて、考えをまとめる時期にきている」と話し、法制化に向けた早期の国会での議論が必要との認識を示した。

 同検討委は、法相と厚労相の要請を受け、代理出産の是非を中心に昨年1月から計17回にわたり審議を行ってきた。



[解説]「人体商品化」阻止狙う

 日本学術会議の生殖補助医療の在り方検討委員会がまとめた報告書で注目されるのは、代理出産に対する刑罰を営利目的に限った点だ。

 これは、金にあかせて途上国の女性に代理出産を依頼する「代理出産ツアー」が出てくることを阻止すべきだという、検討委の意思が反映したものだ。

 この懸念がたんなる杞憂(きゆう)でないのは、途上国への医療ツアーが、臓器移植ですでに現実化しているからだ。フィリピンなど途上国への渡航移植が後を絶たず、「日本人は臓器を金で買っている」と国際的に強い批判を受けている。これに代理出産が続けば、「人体の商品化」としてさらに大きな問題となりかねない。

 海外での代理出産を希望する日本人夫婦は現在、仲介業者に費用を支払い、主に米国で代理出産を行っているが、検討委は、今後は経済格差を利用して途上国での代理出産を試みる夫婦が出てくることを懸念している。

 ただ、忘れてならないのは、この方法以外に子供を得られない夫婦にとって、代理出産は切実な問題だという点だ。検討委も、こうした点に配慮している。公的機関の厳重な管理下で代理出産を試行し、その結果によっては、法改正して一定の指針のもとで容認する可能性も残している。

 厚労省の部会も2003年に代理出産禁止の法制化を求める報告書をまとめているが、法案の提出に至っていない。代理母や生まれてくる子供の心身への影響、社会への影響など、わかっていない点も多い。

 ここでまだ足踏みを続ければ、安全性などについての社会的な合意がないまま、既成事実だけが積み重ねられる。国は検討委の意見を真摯(しんし)に受け止め、試行を可能にする法制化に向けて歩み出すべきだ。(科学部 吉田昌史)



根津院長「悪法には従わない」

 日本学術会議の検討委員会が代理出産を原則禁止とする報告書をまとめたのを受け、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津(ねつ)八紘(やひろ)院長は7日、クリニックで記者会見し、「代理出産を必要とする当事者の意見がほとんど反映されていない。(厚生労働省が実施した国民意識調査で代理出産を容認した)54%の民意を無視したもの」と批判した。

 根津院長は、子どもを産めない女性のために代理出産を実施しており、今後、法律で禁止されても「悪法に従うつもりはない。私は、正しいことをやりたい」と明言。禁止が法制化されれば代理出産をやめると表明していたことを撤回した。

 同会議が、公的機関の厳重な管理下で例外的に代理出産を試行することを認めたことには「子作りは実験ではない。民意を無視する形にならないようにした“ジェスチャー”だ」と述べた。さらに、「禁止するにしても、どうやって当事者たちを救うのか明らかにされていない」とした。

(2008年3月8日 読売新聞)」




(3) 幾つかの点に触れていきます。

「議論は今後、国会に移るが、法案づくりを政府が主導するのか、議員立法になるのか、は不透明だ。また、議員には代理出産容認論もあり、意見集約の難しさを指摘する声も出ている。ねじれ国会の影響から、議論がいつ始まるかも分からない。」(朝日新聞)



この点は、「日本学術会議が報告書最終案(下)」で触れます。


「日本学術会議の生殖補助医療の在り方検討委員会がまとめた報告書で注目されるのは、代理出産に対する刑罰を営利目的に限った点だ。

 これは、金にあかせて途上国の女性に代理出産を依頼する「代理出産ツアー」が出てくることを阻止すべきだという、検討委の意思が反映したものだ。

 この懸念がたんなる杞憂(きゆう)でないのは、途上国への医療ツアーが、臓器移植ですでに現実化しているからだ。フィリピンなど途上国への渡航移植が後を絶たず、「日本人は臓器を金で買っている」と国際的に強い批判を受けている。これに代理出産が続けば、「人体の商品化」としてさらに大きな問題となりかねない。」(読売新聞)



かなり奇妙な解説です。「金にあかせて途上国の女性に代理出産を依頼する『代理出産ツアー』が出てくることを阻止」するためには、刑罰規定だけでなく、国外犯処罰規定を創設してはじめて可能になりますが、報告書には国外犯処罰規定を創設するとの内容は見当たりません。しかも、生殖医療を含め、医師には守秘義務がありますから、捜査権のない国外において代理出産に関する証拠を集めることは非常に困難です。

そうすると、本当に、「代理出産に対する刑罰を営利目的に限った点」が「『代理出産ツアー』が出てくることを阻止すべきだという、検討委の意思が反映」したのだとすれば、検討委員会の委員はそろって間抜けとしか言いようがありません。委員会の委員は、日本法が国外でも通用して捜査できると思っており、頭の中がお花畑になっているようです。

なお、フィリピンでは外国人への腎臓移植手術を当面の間停止することにしましたから(東京新聞平成20年3月8日付朝刊3面)、「フィリピンなど途上国への渡航移植が後を絶たず」という例は引用ミスといえます。読売新聞さんはもう少し勉強すべきでした。


「根津(ねつ)八紘(やひろ)院長は7日、クリニックで記者会見し、「代理出産を必要とする当事者の意見がほとんど反映されていない。(厚生労働省が実施した国民意識調査で代理出産を容認した)54%の民意を無視したもの」と批判した。

 「禁止するにしても、どうやって当事者たちを救うのか明らかにされていない」とした。」(読売新聞)



不妊治療は日本のカップルの10組に1組が行っているほど日常的であり身近で切実な医療行為ですから、不妊治療に携わる医療関係者や不妊夫婦が納得しない法律を制定することは困難ですし、54%の民意を無視した立法を遵守せよということは無理があります。

代理出産を禁止するなら、それに代わる具体な救済策を提示することが、日本学術会議の責務だったはずです。日本学術会議は、「代理懐胎が生殖補助医療として容認されるべきか否かなど、代理懐胎を中心に生殖補助医療をめぐる諸問題について、従来の議論を整理し、今後のあり方等について調査審議を行う。」はずだったのですから。

あまりにも不十分で説明不足な報告書だったのです。これでどうやって、国会で立法化せよというのでしょうか。日本学術会議は無責任です。



続きは、「日本学術会議が報告書最終案(下)~代理出産法制化の見込みは?」で論じます。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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