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2008/03/10 [Mon] 19:43:46 » E d i t
厚生労働省は3月5日、2008年度診療報酬改定に伴う新点数などを告示し、同日付で新しい診療報酬の運用に関する留意事項などを通知しました。08年度の改定は、大まかに言えば、産科・小児科、病院勤務医対策などを重点的に評価する一方、再診料に上乗せする外来管理加算は「おおむね5分を超えて」直接診察することを算定要件に位置付けて算定を抑制させるというものです(キャリアブレイン:2008/03/05 21:55)。

問題なのは、生体腎移植手術の診療報酬を大幅に引き下げたことです。この点について、中日・東京新聞のみで取り上げていましたので、紹介したいと思います。(3月27日追記:フィリピンの腎臓移植の動向について追記しました)


1.中日新聞平成20年3月6日付朝刊

生体腎移植の診療報酬4割減 厚労省通知、医師は反発
2008年3月6日 朝刊

 厚生労働省は5日、新年度から生体腎移植の手術の診療報酬を4割以上引き下げると通知した。同省は「死体腎移植をより推進するため」とするが、死体腎移植が増えない現状で、さらに生体腎移植にもブレーキがかかることになりかねず、現場の医師から反発の声が上がっている。

 診療報酬は、公的医療保険を使って医者にかかった場合に適用される医療行為の「公定価格」。

 今回の改定で大きく変わったのは移植手術分の診療報酬で、改定前は生体腎移植も死体腎も同じ74万8000円だったが、4月からは生体腎は約35万円減の40万円となる。

 一方、「臓器提供者(ドナー)への負担が少ない」として腹腔(ふくくう)鏡下で摘出手術をした場合は新たに38万6000円が加算される。臓器提供者(ドナー)の安全管理にかかる費用として5万円も加算される。

 摘出と移植を合わせた手術では、死体腎移植は脳死の場合119万円、脳死以外の場合約145万円といずれも変更はなかった。生体では、摘出と移植を合わせた手術の診療報酬は、腹腔鏡手術をしない場合は約30万円(3割)下がり、腹腔鏡手術をした場合でも14万円下がる。

 2006年に国内で行われた腎移植手術は1136例で、うち8割を生体が占めている。

 移植は人工透析に比べて生存率が高いとされ、厚労省も移植を推進する路線を取ってきただけに、大きな方向転換となった。

 日本移植学会の寺岡慧理事長は「移植医療機関には大きな痛手。移植を増やしていこうとする流れに逆行することで、到底受け入れられない。腹腔鏡手術を評価するのはいいが、腹腔鏡をしない施設は致命的な打撃を受ける。早急に見直してほしい」と話した。」(東京新聞平成20年3月6日付朝刊1面「生体腎移植 報酬4割下げ 厚労省通知 『死体腎』推進へ」




(1) 今年4月から「生体腎移植の手術の診療報酬を4割以上引き下げる」のですから、急に大幅引き下げを行うことになります。

「今回の改定で大きく変わったのは移植手術分の診療報酬で、改定前は生体腎移植も死体腎も同じ74万8000円だったが、4月からは生体腎は約35万円減の40万円となる。(中略)

 摘出と移植を合わせた手術では、死体腎移植は脳死の場合119万円、脳死以外の場合約145万円といずれも変更はなかった。生体では、摘出と移植を合わせた手術の診療報酬は、腹腔鏡手術をしない場合は約30万円(3割)下がり、腹腔鏡手術をした場合でも14万円下がる。」



要するに、診療報酬について、死体腎移植の手術は現状のまま(引き上げも引き下げもなし)であるのに対して、生体腎移植の手術は大幅に引き下げたわけです。生体腎移植の手術の診療報酬を大幅に引き下げれば、医師側が生体腎移植を避けることが考えられ、生体腎移植を抑制することにはなるでしょう。

厚労省は、生体腎移植の手術の診療報酬の大幅引き下げを「死体腎移植をより推進するため」としています。しかし、生体腎移植の診療報酬を引き下げたところで、死体腎移植を推進することにつながるとは思えません。なぜなら、死体腎移植の診療報酬は引き上げていないのですし、死体腎移植を推進するための具体策を何もしていないため、死体腎移植を行う前提としてのドナーがいないのですから。



(2) 日本移植学会の寺岡慧理事長は、生体腎移植の手術の診療報酬の大幅引き下げについて次のように述べています。

「日本移植学会の寺岡慧理事長は「移植医療機関には大きな痛手。移植を増やしていこうとする流れに逆行することで、到底受け入れられない。腹腔鏡手術を評価するのはいいが、腹腔鏡をしない施設は致命的な打撃を受ける。早急に見直してほしい」と話した。」



病気腎移植につき、日本移植学会の主張に同調することはないのですが、この意見には同調します。今回の診療報酬の改定が実施されると、「死体腎移植が増えない現状で、さらに生体腎移植にもブレーキがかかる」ことになってしまいます。これでは、腎移植全般の抑制策となるだけですから。

日本移植学会にしてみれば、厚労省とともに(焚き付けて?)病気腎移植を否定してだけに、今回の診療報酬の改定には裏切られた気持ちでいっぱいではないかと思います。

ただし、厚労省の態度としては一貫しているといえそうです。腎臓移植の運用指針及び議論からすれば、厚労省も日本移植学会も健康体から腎臓を摘出するという「生体腎移植」は好ましくないものだとしており、厚労省は本気で生体腎移植を抑制する気であったわけですから。言い換えると、日本移植学会としては、(病気腎移植という移植拡大を阻止することは熱心だったが)生体腎移植を抑制する気はまったくなかったのに対して、厚労省は本気だったということだからです。

もしこの診療報酬のまま実施されることになれば、生体腎移植は抑制され、しかも死体腎移植も増えないのですから、病気腎移植を実施することで腎臓移植を増やすしかないともいえます。(病気腎移植も保険適用にすることが前提となりますが)

日本移植学会はどういう態度をとっていくのでしょうか? 生体腎移植の診療報酬引き下げ阻止だけを主張するのでしょうか、それとも死体腎移植を大幅に増やす具体策を提示したり、病気腎移植は妥当であるとの見解変更を行うのでしょうか? 注目したいと思います。


2.もしこの診療報酬のまま実施されることになれば、生体腎移植は抑制され、しかも死体腎移植も増えず、病気腎移植も実施しないのであれば、海外で移植するしかありません。ところが、海外での移植、フィリピンでの腎臓移植ができなくなったのです。

(1) 東京新聞平成20年3月8日付朝刊3面

比、外国人への腎移植停止  臓器移植医学会 国際批判高まり受け

 【クアラルンプール=吉枝道生】 フィリピンの臓器移植医学会は、同国での外国人への腎臓移植手術を当面の間停止することを決めた。手術件数の多さなどに対して国際的な批判が高まったためで、期限は設定されていないという。

 同国の国立腎臓移植研究所などによると、日本人ら外国人への手術停止は6日から正式に始まった。同国では多くの外国人患者が腎移植手術を受けているが、一方で貧困などの理由から臓器をブローカーに売る人が絶えない。また、外国人への移植は全手術の10%までと定められているが、規定を守らずこれ以上の手術を続け、政府から一時停止を命じられた病院も出ていた。

 外国人への手術の是非をめぐってはこれまでも議論があり、昨年から保健省の専門チームが新たな方針を打ち出すための検討を続けてきた。同省は近く結論を出すとみられている。」




(2) このように、フィリピンでの外国人への腎臓移植手術につき、「日本人ら外国人への手術停止は6日から正式に始まった」のです。停止の「期限は設定されていない」のですから、フィリピンでの移植は無理になったのです。

もっとも、「外国人への移植は全手術の10%までと定められているが、規定を守らずこれ以上の手術を続け、政府から一時停止を命じられた病院も出ていた」ことから移植を停止したのですから、規定を遵守できる病院に限定するなど移植をコントロールできるようなれば、いつかまた開始されることはあるのでしょう。

しかし、くフィリピンでの移植状況に対して日本は何も関与できない以上、漠然とした未来に希望(移植可能になる)をもっていても難しいのです。

もしこの診療報酬のまま実施されることになれば、生体腎移植は抑制され、しかも死体腎移植も増えず、病気腎移植も実施できず、海外で移植することもできないまま……。

国内外問わず腎臓移植全般ができなくなる状況において、一体、腎臓移植を切望している患者はどうすればいいのでしょうか? 厚労省は、腎不全の患者に対して、切実に移植を願うという希望を実現する気はまったくないようです。



<3月27日追記>

フィリピンでの腎臓移植の動向について記事が出ていたので、追記しておきます。東京新聞平成20年3月27日付朝刊3面掲載の記事です。

比、外国人腎移植で新方針 制限付け継続へ

 【マニラ=吉枝道生】 フィリピン保健省は26日、論争の続いていた外国人患者への腎臓移植について、より制限を厳しくする新方針を公表した。臓器売買などが社会問題となり、臓器移植医学会が外国人への移植手術を一時停止する中で、政府として、制限を加えながらも外国人への手術を今後も続行する姿勢を示した格好だ。

 新方針は、支払い能力にかかわらずフィリピン人患者の優先をうたい、臓器売買や商業的な取引を禁止。臓器ブローカーの介在を厳しく排除する姿勢を打ち出した。

 今後、政府や医療専門家らによる委員会を立ち上げて手術のための要件や規制などの詳細を定める。運用開始後は医療機関などへの監視を強化して違反には罰則も科したい考え。

 現在、同国では外国人への移植は手術全体の10%までとされるが、規定を守らない病院も多く、貧困層がブローカーに臓器を売る実態も社会問題となっている。今月から臓器移植医学会が外国人への手術を期限を定めずに停止しており、この措置は当面継続される。」



「政府として、制限を加えながらも外国人への手術を今後も続行する姿勢を示した」ようです。その理由は、フィリピン大のレオナルド・デ・カストロ教授(哲学)が、「ドナー調査の中で、貧しさの中にも人を救う行為という誇りがあったのが救い。ひどい経済格差や貧困は残念だがすぐには解消できない。禁止しても闇に潜るだけ。ドナー救済や補償は必要だ」と述べているように、禁止よりも補償をという現実があるからだと思われます(「移植シンポジウムで各国が現状報告~臓器売買深刻化浮き彫り(東京新聞6月3日付「こちら特報部」)」(2007/06/06 [Wed] 20:59:23)参照)。

では、日本人がフィリピンに行って腎臓移植できるかというと、「今月から臓器移植医学会が外国人への手術を期限を定めずに停止しており、この措置は当面継続される」とのことですから、難しいようです。元々、フィリピンで腎臓移植をしてきても日本の病院では診療をしないという暴挙に出る可能性があるのですから(本来なら、医師法の「応召義務」違反となる)、残念ながら、フィリピンでの腎臓移植は危ういようです(「フィリピンで4月以降に腎移植した患者を診察すると罰せられる?~フィリピンでの腎移植受患者への診療拒否、拡大 」(2007/09/10 [Mon] 08:31:36)参照)。

テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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20.3.9追記 最後に届け出様式を追記しました 読売新聞の記事について考える 2008年2月24日 読売新聞 病気腎移植実施の病院、「生体腎」も診療報酬なし 診療報酬改定に合わせ厚労省が方針 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080224-OYT8T00197.htm ?...
2008/03/10(月) 22:53:57 | 万波誠医師を支援します
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