FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
08« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30.»10
2006/05/18 [Thu] 23:32:51 » E d i t
共謀罪創設の是非については、東京新聞は連日報道している状態です。昨日(平成18年5月17日付)も「核心 乱用・拡大解釈 共謀罪尽きぬ懸念 『議論尽くした』と言うが…」という表題で報道していました。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060517/mng_____kakushin000.shtml
ここでは、東京新聞・平成18年5月18日付朝刊より「こちら特報部」での「刑減免より犯罪組織が怖い  共謀罪 刑事が反対する理由」という表題の記事を引用して検討してみたいと思います。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060518/mng_____tokuho__000.shtml


1.東京新聞(平成18年5月18日付朝刊24・25面)の「こちら特報部」によると、

刑減免より犯罪組織が怖い 共謀罪 刑事が反対する理由

 窃盗など619種類の罪に関し、実行しなくても話し合えば罪になる「共謀罪」の新設法案。政府・与党は「犯罪組織摘発に必要」と強調し、自民・公明両党の衆院法務委員会での採決強行が目前といわれる。しかし、この主張には、元刑事など警察関係者からも「今に条文の拡大解釈が進み、治安維持法の復活につながる」との声が上がる。題して「刑事(デカ)さんたちが反対する、これだけの理由」-。

 関東地方のある駅前。男は巨体を揺すり、通行人をびびらせるようなこわもてで待ち合わせ場所に現れた。エナメルの靴、金色のブレスレット。並んで歩くのは勘弁願いたいと思う服装も、昔と変わりない。

 「こちら特報部」が、この男に会おうと思ったのは「日本を荒らしまくる外国人をしょっぴくには、共謀罪は欠かせない法律さ。さて、共謀罪の運用実務だがな」-こんな立て板に水の講釈を聞きたかったからだ。殺人、誘拐、放火など凶悪犯罪捜査一筋の刑事人生。「日教組と共産党は大嫌い」と吐き捨て、在日外国人も出入りする飲食店内で、ことさら韓国・朝鮮人や中国、ロシア人の蔑称(べっしょう)を口にするこの男なら、捜査現場での共謀罪の展開方法を楽しげに語るに違いない。

 繁華街裏手の居酒屋。警察人事の話などで、ひとしきり盛り上がると、男はショートホープの燃えさしを灰皿にこすりつけて、「キャリアが考えそうな法律だわな」と唇をゆがめた。

 「いいか。暴力団やらテロ集団一味の中から、警察に密告するヤツが出てくると思うか。しっかりした犯罪組織ほど、それはあり得ないんじゃないのか」

■重大な事件の捜査が手薄に

 でも、共謀罪法案には自首の減免規定があるから密告者も出るのでは?

 「坊や、あいかわらず、おりこうさんだねえ」と冷笑して、男は続けた。「それが甘いって言うのよ。刑が減免されたところで、組織の回し者に殺されたら何になる? 警察が一生、守ってくれるわけでもないのに。ヤクザとテロリストはな、警察より組織が怖いのよ。坊やの意見は、おりこうさんのキャリア官僚と同じ机上の空論ってやつよ」

 だから、年がら年中、盗聴をやるってとこに行き着くんじゃないですか?

 「ふん。そこは分からんけどね」

 「共謀罪が始まったら、きっと重大事件の捜査に支障が出てくるね」。男は、政府の国会答弁と正反対のことを言い出した。

■すでに現場は負担過剰気味

 「組織の一員と名乗るヤツが密告してきたら、警察は一応、捜査しなきゃならなくなる。で、とどのつまり犯罪じゃありませんでした、と。こんなヤツが次々に出てきたら、どうなんの? 本当に大事な事件の方は人手不足になっちまう」

 警察の現場は今でも負担が過剰だという。「知ってるか? 同棲(どうせい)中に浮気した本人が元カレやら元カノから『ストーカーされてます』って警察に言ってくる。昔だったら民事ですよで終わったけど、市民相談とか言ってさ、今は山のように持ち込まれてる。調べると、ほとんどは本人が悪い。でも、市民相談受けたら、なんでもかんでも調べて、報告書、書かなきゃいかんってことになってんだよ、今は。そのうえ共謀罪? 人手不足もいいとこになるって。世間の風向きばかり見てる官僚には分からんだろうがね」

 「私は愛国心とかが好きだし、左翼なんかは好きじゃないんですけどね。でも、共謀罪は五年、十年かけて拡大解釈されていき、きっと治安維持法みたいになりますね。え、この電話ですか? 盗聴されてるかもしれませんけど、構いませんよ。間違ったこと言ってるわけじゃないから」。受話器から、いかにも公安警察OBらしい折り目正しい声が響いてきた。

 ある県警のノンキャリアとして公安捜査に従事してきた彼は「共謀罪が左翼、右翼やNGOを狙い撃ちした立法とは思わないが、将来的には、そういうツールになるでしょう」と言う。

 「例えば、外事警察の動きを見てください。破壊活動防止とか、本当の仕事に力を注ぐべきなのに、外国人のオーバーステイとか、簡単な事件ばかりやっているでしょ。警察はノルマ社会だから、事件数の統計を伸ばして予算を取りやすくしたいんです。犯罪組織が対象だという共謀罪だって、法施行から数年後、あれっと気づいた時には、犯罪組織よりも市民団体に矛先が向いているだろうことは想像に難くありません」

 「予算を削られたくないという役人根性も共謀罪が出てきた背景でしょうね。公安の中には、左翼取り締まり全盛時代に回帰したいと思う人々がいる。取り締まる事案がないなら、別の仕事をすればいいじゃないかって、普通は思いますよね。でも、彼らは違う。長年やってきたことの否定は、人格否定されるような気持ちになるんです」

■すでに公安は独自情報収集

 「それに公安は、対象の組織に潜り込んだり、人間関係をつくって情報収集する手法をやってますから、犯罪組織メンバーの密告を促すような共謀罪法案があらためて必要とは思えません」とも付け加えた。

■警察依存の末『国民も責任』

 「ただ、こういう法案を提出させてしまうのは国民の責任でもあると思う。警察の力で事件を未然に防いでほしいという、警察依存の気持ちが昔より強まり、マスコミも同調している。そこに、行け行けどんどん型のキャリア官僚の思惑が結びついた気がします」

 元読売新聞大阪本社の事件記者で、捜査機関の内情に詳しいジャーナリスト大谷昭宏氏は「捜査現場の声は当を得ている」としたうえで、こう語る。

 「検挙率80%を誇ったころの日本警察を優等生だとすれば、同20%台の今の警察は、できの悪い息子みたいなもの。暴力団対策法(暴対法)、通信傍受法、共謀罪という名の高価な学習机や電気スタンドを次々にねだる。親である国民は暴対法を買い与えたが、息子の成績は伸びず、暴対法施行ごろ五万数千人だった暴力団がそれほど減ってはいない。なのに息子は『僕のせいじゃない。共謀罪も買って』とせがんでいる。私には、そう見える。共謀罪ができても犯罪組織からのタレコミなどあるはずがなく、市民団体にスパイを潜り込ませてつぶすために使われるだけだろう」

 大谷氏は「法律の使われ方が変遷するのは間違いない。霞が関の官僚が机の上で考え出した“銃器対策”がいい例だ。全国の警察に銃器対策課をつくった結果、ノルマが生じ各地で(銃器発見)の“やらせ事件”が発生した」と指摘する。

 たしかに、警察が暴力団組員に、妻の釈放と引き換えに拳銃提供を要求した事件や、警察官が二百万円で拳銃四丁を購入する事件、拳銃発見の捏造(ねつぞう)事件などが相次いでいる。

 「警察は『あんなに苦労して法案を通したのに、全然、共謀罪の摘発件数が上がらないじゃないか』との非難を恐れて、数字を上げるのに必死になる。そのために、住民団体を犯罪者集団に仕立て上げていくだろう。刑事警察は、プライドにかけて共謀罪を使わないと思うが、公安は別件逮捕に使うだろう」

<デスクメモ> 「ハム(公安)は法律なら軽犯(罪法)から始まって何でも使うから、共謀罪は使い勝手のいい道具になるんじゃないの」。生活安全部畑が長かった元刑事の言だ。問題は道具の使い方だ。ビラ配りで逮捕、長期留置なんて乱暴な摘発も目立つが、“ノルマ”のために逮捕されたらたまらない。まさかねぇ…。 (透)」

としています。




2.この記事は、実際に共謀罪の捜査を行う刑事さんの発言を取り上げていることから、大変意義のあるものです。共謀罪が創設された場合の実際の運用が、確実性をもって予想できるわけですから。


(1) この記事では、共謀罪創設法案で規定している、自首の減免規定の効果について触れています。この自首減免規定は、事件を未然に防止するため、実行着手前に警察に届け出た(自首した)場合は、刑を減免するというものです。

記者の「共謀罪法案には自首の減免規定があるから密告者も出るのでは?」という問いかけに対して、
この刑事さんは、

「いいか。暴力団やらテロ集団一味の中から、警察に密告するヤツが出てくると思うか。しっかりした犯罪組織ほど、それはあり得ないんじゃないのか
「坊や、あいかわらず、おりこうさんだねえ」と冷笑して、男は続けた。「それが甘いって言うのよ。刑が減免されたところで、組織の回し者に殺されたら何になる? 警察が一生、守ってくれるわけでもないのに。ヤクザとテロリストはな、警察より組織が怖いのよ。坊やの意見は、おりこうさんのキャリア官僚と同じ机上の空論ってやつよ

と答えています。
要するに、元々、共謀罪適用の対象としているテロリスト集団の場合、自首して密告したら組織から殺害される可能性があるのだから、実際上、密告なんて到底あり得ず、自首減免規定はまったく無意味だというわけです。

自首減免規定は、一人で犯罪を行う場合や犯罪の実行に着手し犯罪発覚前の段階では、意味があるでしょう。
しかし、共謀段階において自首減免規定が実効性をもつためには、犯罪組織からの追求から自首した者を保護する措置が必要です。そのための措置としては、アメリカなど各国では「証人保護プログラム(Witness Security Program)」(証言者に対して新しい氏名・住所の付与や24時間体制の保護を行う)がありますが、日本ではそのような措置は存在しません。

おそらく条約で規定している自首減免規定を、そのまま国内法でも規定する意図なのでしょうが、「証人保護プログラム」のない日本では自首減免規定は無意味でしょう。この刑事さんが「机上の空論」と厳しく批判することはもっともなことだと思います。



(2) 最も注目すべき記事の部分は、共謀罪創設による捜査への影響です。

共謀罪が始まったら、きっと重大事件の捜査に支障が出てくるね」。男は、政府の国会答弁と正反対のことを言い出した。
「組織の一員と名乗るヤツが密告してきたら、警察は一応、捜査しなきゃならなくなる。で、とどのつまり犯罪じゃありませんでした、と。こんなヤツが次々に出てきたら、どうなんの? 本当に大事な事件の方は人手不足になっちまう
「…市民相談受けたら、なんでもかんでも調べて、報告書、書かなきゃいかんってことになってんだよ、今は。そのうえ共謀罪? 人手不足もいいとこになるって世間の風向きばかり見てる官僚には分からんだろうがね

のところです。


私は「組織的な犯罪に関する共謀罪の創設の是非(下)」というエントリーにおいて、
 

「犯罪の実行に着手する前の段階での検挙できるとしても、共謀事実自体についての立証を必要とするのですから、共謀段階で有罪にできるほどの証拠まで集める必要があります。そうなると、有罪とすることができず、無駄に終わる捜査が増加すると思われますし、他方で、もし共謀罪立証を重視するとなると、既遂に至った場合の捜査の方が疎かになる可能性も出てきます。…

 このように現在でさえ、検挙率が下がっているのです。共謀罪で検挙する場合が増えるとしても、一般市民にとって最も重視して欲しい、既遂に至った場合の検挙が減ってしまい、犯罪を繰り返す者を検挙できず、結局は一般市民の利益・社会公共の利益に繋がらないおそれさえあるのです。

 共謀罪規定を創設することで、抽象論や理念としては「その実行に着手する前の段階での検挙・処罰が可能となり,被害の発生を未然に防止できる」としても、実際上は、共謀罪規定を創設することで、かえって「被害の発生防止」につながらないおそれさえあるように思えるのです。」

と指摘していました。

共謀罪創設法案には、色々な法律上の問題点があり、一般市民の言動が不当に制約される危険性があることはもちろんですが、私がまず心配したことは、共謀罪摘発に比重がかかり、既遂に至った犯罪や犯罪を繰り返す者の捜査(及び重大事件の捜査)の方の捜査がおろそかになる点でした。
処罰規定を増やせば、特に619種類もの犯罪規定を増やすのですし、しかも、より立証が難しい共謀罪を、有罪にできるだけの捜査も行うことになるので、現場の刑事さんの負担は膨大となるからです。

やはり、刑事さんも、本当に大事な事件の方が人手不足になって、検挙できず、いつまでも野放しになってしまうことを危惧しているのです。刑事さんが「世間の風向きばかり見てる官僚には分からんだろうがね」と侮蔑するのも当然でしょう。



(3) また、生活安全部畑が長かった元刑事が「ハム(公安)は法律なら軽犯(罪法)から始まって何でも使うから、共謀罪は使い勝手のいい道具になるんじゃないの」と指摘するように、共謀罪規定を必要としていると予想される公安警察も、公安警察OBによると、
 

共謀罪は五年、十年かけて拡大解釈されていき、きっと治安維持法みたいになりますね。」
「犯罪組織が対象だという共謀罪だって、法施行から数年後、あれっと気づいた時には、犯罪組織よりも市民団体に矛先が向いているだろうことは想像に難くありません」
「それに公安は、対象の組織に潜り込んだり、人間関係をつくって情報収集する手法をやってますから、犯罪組織メンバーの密告を促すような共謀罪法案があらためて必要とは思えません

というのですから、犯罪組織摘発のためには、共謀罪規定を必要とする捜査機関は皆無のようです。むしろ、公安警察自体が、すでに治安維持法みたいになるとさえ言っているのですから、有害無益な法律案です。



(4) このように、共謀罪を必要とする捜査機関がなく、かえって重大事件の捜査に支障をきたすとして迷惑しているのです。最初から重大事件の捜査が手薄になることは、一般市民の生命・財産の保護に欠けることになって、一般市民に非常に不安を与えることにもなります。


実際に捜査を行う刑事さんが反対する共謀罪をあえて創設することは、捜査機関にとっても、一般市民にとっても有害無益なことです。共謀罪創設法案(特に政府・与党案)は不要というべきです。強行採決した場合、自民党と公明党は信用に値しない政党だと考えます

テーマ:共謀罪 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/89-66040e5f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック