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2008/02/14 [Thu] 23:46:51 » E d i t
鳩山邦夫法相は2月13日、法務省内で開かれた検察長官会同で訓示し、違法な取り調べが問題となった鹿児島県議選の買収無罪事件(志布志事件)について「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではないと考えている」と述べて、また思いつきで問題発言を行いました。


<志布志事件> 2003年の鹿児島県議選で、買収行為があったとして公選法違反(買収)罪で、当選した県議や住民が逮捕、起訴された。鹿児島地裁は07年2月、「強圧的、誘導的な取り調べで自白が引き出された可能性がぬぐえない」として被告12人全員に無罪を言い渡し、鹿児島地検は控訴を断念した。これを受けて最高検は、捜査や公判の問題点について報告書を公表。「供述の信用性の吟味が不十分だった」と指摘した。」(東京新聞平成20年2月14日付朝刊1面)




1.まず、報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年2月14日付朝刊33面

鹿児島12人無罪「冤罪ではない」 鳩山法相が発言
2008年02月14日00時49分

 被告12人全員の無罪が確定した鹿児島県議選の公職選挙法違反をめぐる「志布志事件」について、鳩山法相は13日、法務省で開かれた検察長官会同の席上で「私は冤罪と呼ぶべきではないと考えている」と発言した。後で記者会見を開くなどして、冤罪の定義について「無実の罪で有罪判決を受け、確定した場合」とし、裁判の結果として無罪となったケースとは分けて考えたと釈明した。

 鳩山氏の発言は、全国から集まった検事正たちに対し、捜査のあり方について反省を求める中で出てきた。富山県氷見市の男性が実刑判決を受け、服役した後で真犯人が発覚した強姦(ごうかん)事件を「冤罪」と表現し、志布志事件は冤罪ではない、との見解を示した。

 鳩山法相は発言の後、省内で会見を開き、「志布志事件では、被告とされた方に大変ご迷惑をおかけし、社会通念上は冤罪と言われても致し方ない」と釈明した。

 志布志事件では元県議らが公選法違反で逮捕、起訴された。鹿児島地裁は昨年2月の判決で「客観的な証拠は全くない」として12人全員を無罪とし、確定している。

 事件をめぐっては最高検が昨年8月、「反省すべき点は率直に反省しなければならない」などとして再発防止策を報告書にまとめている。」



(2) 時事通信(2008/02/14-12:14)

鳩山法相の発言に苦言=町村官房長官

 町村信孝官房長官は14日午前の記者会見で、鳩山邦夫法相が鹿児島県議選の買収無罪事件を「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではない」と発言したことについて、「冤罪であるかないかという議論よりは、ああした不適切な手法による捜査は是正しなければいけないと強調すべきだ。その反省を強く持ち、今後適正な捜査が行われるべきだと強調しなければいけない」と苦言を呈した。」



(3) 朝日新聞平成20年2月15日付朝刊37面

鳩山法相「冤罪と呼ぶべきでない」発言を謝罪 衆院委
2008年02月14日21時02分

 鳩山法相は14日、被告12人の無罪が確定した鹿児島県議選の公職選挙法違反をめぐる「志布志事件」を「冤罪と呼ぶべきでない」と述べた自らの発言について、衆院予算委員会で「志布志の被告であられた方々が、不愉快な思いをされたとすれば、おわびをしなければならない」と陳謝した。

 保坂展人議員(社民)の質問に答えた。冤罪の定義について、鳩山法相は「人違いで有罪判決を受け、服役までした場合」などに限定して解釈していたと釈明。「今後、このまったく不確定な『冤罪』という言葉は公式の場で一切使うまい、と考えるようになった」と述べた。

 一方、福田首相は同日、法相の謝罪について、首相官邸で記者団に「被害を受けた方の立場になって考える必要があると私は思います」と述べた。 」




2.鳩山法相がいつもながらの思いつきで問題発言を行い、それをまた町村官房長官がたしなめ、結局、鳩山法相が陳謝するという、いつものパターンになったわけです。鳩山法相には学習能力がないのでしょう。


(1) 鳩山法相は、「志布志事件」は冤罪ではなく、「冤罪」の定義の問題だとのたまったようです。

「被告12人全員の無罪が確定した鹿児島県議選の公職選挙法違反をめぐる「志布志事件」について、鳩山法相は13日、法務省で開かれた検察長官会同の席上で「私は冤罪と呼ぶべきではないと考えている」と発言した。後で記者会見を開くなどして、冤罪の定義について「無実の罪で有罪判決を受け、確定した場合」とし、裁判の結果として無罪となったケースとは分けて考えたと釈明した。」


「無実の罪で有罪判決を受け、確定した場合」に、後に再審において無罪となったときを、「冤罪」に含まれることには、刑事訴訟法の議論としても異論がありません。

「冤罪」という語句は法律の文言として使われておらず、刑事訴訟法の書籍においても通常、「冤罪」という言葉を定義することはありません。しかし、刑事訴訟法の学者も、「冤罪」の意義(定義)として、再審無罪に限っていません。

例えば、刑事訴訟法専門で特に冤罪事件に詳しい、小田中聡樹・専修大学法学部教授は、「再審えん罪事件全国連絡会(編)『えん罪入門』(日本評論社、2001年)14頁」において、次のように述べています。

「無実の罪で、犯人に仕立てあげられることを『えん罪』といいます。」



このような定義からすると、被告12人全員の無罪が確定した鹿児島県議選の公職選挙法違反をめぐる「志布志事件」は、「冤罪」に当たることになります。国語辞典としても、冤罪とは、「罪がないのに、疑われたり罰を受けたりすること。無実の罪。ぬれぎぬ。」(三省堂「大辞林 第二版」)という説明をしており、刑事訴訟法上も、社会一般や社会通念上も、「冤罪」の意味は変わらないといえそうです。

そうすると、鳩山法相は、冤罪の定義について「無実の罪で有罪判決を受け、確定した場合」としていますが、その冤罪の定義の理解は妥当でないといえます。


「保坂展人議員(社民)の質問に答えた。冤罪の定義について、鳩山法相は「人違いで有罪判決を受け、服役までした場合」などに限定して解釈していたと釈明。「今後、このまったく不確定な『冤罪』という言葉は公式の場で一切使うまい、と考えるようになった」と述べた。」(asahi.com)


すでに説明したように、「冤罪」という言葉は、「不確定」ではありません。相変わらず、鳩山法相は理解能力が欠如しています。



(2) ただし、ある意味、鳩山法相が「志布志事件」を冤罪でないとしたことは正しいともいえます。

「鳩山法相、鹿児島の志布志事件を「冤罪でない」発言。そりゃそうだ。あれは県警が事件そのものを捏造(ねつぞう)した「犯罪」なんだもの。」(朝日新聞平成20年2月14日付夕刊1面「素粒子」)


冤罪事件にも色々な事例がありますが、最悪な事例がありもしない事件を捏造したうえで犯人に仕立て上げた場合です。志布志事件は、その最悪な事例に当たるものでした。しかも違法捜査のあげく、12人も犯人に仕立てたのですから、冤罪などという評価も軽いとさえいえます。

ですから、「素粒子」が述べるように、冤罪と評価するよりも、冤罪よりもっと悪質な「捜査機関による犯罪である」と評価した方がいいかもしれないのです。鳩山法相が思いつき発言をした意図とは異なりますが。



(3) なぜ、鳩山法相が思いつき発言をしたのかというと、「検察官の士気を上げるために、十分反省した上で『積極的に前を向いてくれ』と言いたかった」(時事通信(2008/02/13-16:38)「>鹿児島事件「冤罪ではない」=鳩山法相」)からだそうです。

要するに、冤罪の定義を狭くした上で、志布志事件のように有罪が確定する前に無罪となった裁判についてはやむを得ないものだから、検察官は気にすることなく捜査に励んでほしいという意味だと思います。

しかし、志布志事件は、関係者の言い分をまるで聞くことなく、取り調べ中に親族の名前などを書いた紙を踏まされた「踏み字」まで行うという下劣な違法捜査まで行い、ありもしない事件を捏造し、捏造した事件の「嘘の自白」を強要して起訴したものです。こういう「嘘の自白」をとってしまい、その「嘘の自白」で検察が起訴するのが、典型的な冤罪事件ですから(再審えん罪事件全国連絡会(編)『えん罪入門』(日本評論社、2001年)15頁)、志布志事件こそ冤罪と呼ぶのにふさわしい事件です。(志布志事件は、志布志署長として実情を知っていた黒健治警視と、黙認した鹿児島地検の水沼祐治次席検事にもっとも問題がある)

法相としては、志布志事件のように事件を捏造し、(それを分かっていながら)起訴することこそ、検察官として絶対にしてはならないことだと注意するべきだったのです。それなのに、鳩山法相は、志布志事件を冤罪に含めずに、「志布志事件のように有罪が確定する前に無罪となった裁判についてはやむを得ない」といった趣旨のことを述べたのですから、冤罪事件とは何か、検察官が取り組むべきことをまるで分かっていない証拠です。




3.鳩山法相が発言したのは、検察長官会同の席上でした。

取り調べ「任意性・信用性確保を」 検事総長、冤罪事件受け訓示

 全国の高検、地検のトップが集まる検察長官会同が13日、法務省で開かれた。但木敬一検事総長は富山の冤罪(えんざい)事件や鹿児島県議選をめぐる無罪判決に触れ、「基本に忠実な適正な捜査が何より重要と再認識させられた。関係者の言い分などに耳を傾け、取り調べの過程にも十分配慮して任意性と信用性の確保に努めなければならない」と訓示した。

 開始まで残り約1年と迫った裁判員制度に対する取り組みについて「分かりやすく的確な立証を目指し、裁判員の視点に立って検討を重ねる」などと説明。

 2006年7月から試行している取り調べ過程の録音・録画をめぐっては「最高検でこれまでの試行結果の検証作業を進めている。容疑者の供述が任意にされたことをより分かりやすい形で明らかにできるという確かな手応えを感じる」と強調した。(14:23)」(日経新聞平成20年2月2月13日付夕刊16面


鳩山法相から「志布志事件は冤罪ではない」などと聞かされた、全国から集まった検事正たちは、一様に唖然としたことでしょう。検事総長が、「基本に忠実な適正な捜査が何より重要と再認識させられた。関係者の言い分などに耳を傾け、取り調べの過程にも十分配慮して任意性と信用性の確保に努めなければならない」と訓示したことをまるで聞いていなかったのかと。

鳩山法相が思いつきで発言することはいつものこととはいえ、福田首相は、いつまでこういう馬鹿げた発言を繰り広げる鳩山氏を放置するのでしょうか? 志布志事件において取調べなどで苦しめられた12人に対してどう説明するのでしょうか? 福田首相は、鳩山法相を罷免するべきです。もっとも、罷免さえもできないのであれば、福田首相には首相としての能力がないということで、次期国政選挙で自民党が大敗するのも一案ではありますが。

テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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