FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
03« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30.»05
スポンサーサイト 
--/--/-- [--] --:--:-- » E d i t
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 *  TB: --  *  CM: --  * top △ 
2008/02/08 [Fri] 05:23:25 » E d i t
「プリンスホテルによる日教組会場使用拒否・司法判断無視事件(上)~解約有効の主張は無理なのでは?」の続きです。



1.まず、解説記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成20年2月2日付朝刊34面

「信用失った」「安易な屈服」専門家ら

 仮処分とは、訴訟を起こして判決に確定するまでに差し迫った危険や損害が申し立てた側に起きてしまう場合などに、「仮の状態」を定める手続きだ。

 過去には公共の会場使用をめぐり、憲法上の「集会の自由」が最高裁で争われた判例はある。今回は、ホテルの営業上の利益と組合活動のどちらを重くみるかを考慮して、「使わせる」との結論に達したとみられる。

 裁判所は、強制的に従わせる仕組みはもっていない。とはいえ、高裁決定に大企業が従わないケースは極めてまれだ。あるベテラン裁判官は「日教組は損害賠償や慰謝料を求める訴訟を起こすしかない」という。「ホテル側は営業上の自由を主張しても、認められる可能性は低いだろう」

 危機管理の点からも、専門家はホテルの対応に首をかしげる。危機管理コンサルタントの田中辰巳さんは「集客事業は、過去に威圧的な妨害を受けている団体には慎重にならざるをえない」としながらも、契約を一方的に破り司法判断にも従わないことで、「企業としての信頼感、信用を失った」とみる。

 蛇の目ミシン工業恐喝事件で最高裁は、警察に届けるなど適切な対応をすべきだったと、300億円を脅し取られた旧経営陣の過失を認定した。弁護士の久保利英明さんは「安易に屈したのが信じられない。リスクはあっても、社会のために闘うことも必要」と話す。

 早稲田大学法学部長の上村達男教授(会社法)は「法を無視しても賠償すればよいという姿勢なら、法治国家の最低限のモラルに反する」と指摘する。」



注目すべき点は、

「蛇の目ミシン工業恐喝事件で最高裁は、警察に届けるなど適切な対応をすべきだったと、300億円を脅し取られた旧経営陣の過失を認定した。」

という点です。すなわち、蛇の目ミシン工業恐喝事件の最高裁の判断からすれば、右翼団体が多数の街宣車を繰り出し騒音を出そうとしても、ホテル側は警察と協力して対応する義務(善管注意義務・忠実義務)があるといえるわけです。

なお、裁判所がプリンスホテルに会場確保を強制するといったように、「裁判所は、強制的に従わせる仕組みはもっていない」ことは確かです。しかし、仮処分を無視して行ってもいいわけではありません。例えば、新株発行差し止めの仮処分命令があるのに、あえて仮処分命令に違反して新株発行がされた場合には、その新株発行は差し止め理由の有無を問わず無効となるのです(最高裁平成5年12月16日判決)。「仮処分命令に違反したことが新株発行の効力に影響しないとすれば、差止請求権を株主の権利として認め、しかも仮処分命令を得る機会を株主に与えることによって差止請求権の実効性を担保しようとした法の趣旨が没却されてしまうことになるから」です。



(2) 東京新聞平成20年2月2日付朝刊3面「解説」

プリンスホテル 問われる社会的責任 日教組集会使用契約破棄 司法判断も無視

 教研集会の会場使用契約を一方的に破棄しただけでなく、使用させるよう求める司法判断までも無視したプリンスホテル側の姿勢は、有名ホテルグループという大手企業としての社会的責任を問われる対応といえる。

 教研集会の会場の周辺では、毎回、大規模な抗議活動が実施される。周辺の交通規制や厳しい警備体制が敷かれ、ホテル側が主張するように、周辺住民の生活などに影響を及ぼすことがある。

 そうした事情は広く知られた事実で、使用を拒むのなら、ホテル側は契約に応じるべきではなかった。日教組に所属する教員にとって、集会は全国の仲間と意見交換する貴重な場だが、こうした事態が続けば会場探しが難しくなり、表現の自由は狭められていく。

 2003年、熊本県黒川温泉のホテルがハンセン病元患者の宿泊を拒否した際、ホテルよりも旅館業法違反で告発した県が批判を浴びたことがことがあった。元患者が暮らす療養所に「権利だけ主張しないで」など、匿名の手紙が届いたという。

 民主主義の社会では、多様な言論の自由が認められなければならない。集会によって、ときに騒がしいことや不快なこともあるだろうが、それを含めて言論・集会の自由をどう支えるのか、一人ひとりの意識が問われている。(社会部・早川由紀美)」



注目すべき点は、

「2003年、熊本県黒川温泉のホテルがハンセン病元患者の宿泊を拒否した際、ホテルよりも旅館業法違反で告発した県が批判を浴びたことがことがあった。元患者が暮らす療養所に「権利だけ主張しないで」など、匿名の手紙が届いたという。」

という点です。

熊本県黒川温泉のホテルは、他の宿泊客が嫌がるからという理由でハンセン病元患者の宿泊を拒否しました。ホテル側は、差別的な宿泊を禁止した旅館業法違反であって、宿泊拒否の理由がなかったのです。それなのに、ハンセン病元患者に対して「権利だけ主張しないで」という下劣な手紙が届きました。周りが迷惑するからということで、正当な利益が害される――。プリンスホテルの対応も、熊本県黒川温泉のホテルの対応とほとんど変わらないのです。



(3) 東京新聞平成20年2月2日付朝刊28面

◆表現の自由を侵食――奥平康弘・東京大学名誉教授(憲法)の話

 今までの平均的な考えでは、司法の判断が出ればそれに従うというのが常識だ。表現の自由は大事にされなければいけないという前提を共有することで、戦後60年かけて1つの文化が培われてきた。(私が参加する)「憲法9条の会」も会場探しが大変になってきているが、場所の確保があって、表現の自由も守られる。今回のような企業の姿勢が社会的に許されれば、これまで培われた文化は侵食されてしまうだろう。


◆初期対応悪かった――危機管理コンサルタント・田中辰巳氏の話

 集客事業を営む企業は、過去に威圧妨害行為を受けた団体の利用受け付けには慎重にならざるを得ない。他の利用客の安心・安全確保ならびに警備に必要なコスト負担に懸念が生ずるからだ。ただし一度受けてしまい、取り消しが裁判所によって拒否された場合、受け入れなければコンプライアンス(法令順守)の姿勢が疑われる。リスク回避のため、全館を借り切ってもらう契約もできたはずだ。今回は初期対応のまずさに尽きる。」



憲法学上も、危機管理の面からしても、プリンスホテルの対応は不当だったわけです。この事案で東京地裁・東京高裁は日教組側を主張を認めたわけですが、専門家の立場からすれば、その裁判所の判断は妥当であるということになります。

プリンスホテルによる「司法判断無視」の行動については、顧問弁護士は何も言わなかったのでしょうか? 万が一、顧問弁護士が是認したのであれば、懲戒請求が認められることは確実で、今後弁護士活動ができなくなる(業務停止。弁護士法57条1項2号)可能性があります。もちろん、「司法判断無視」をしてよいなどとアドバイスをした弁護士は皆無に等しいと思いますが。



2.社説をいくつか。いずれも、プリンスホテルを非難するものですが、司法判断を無視した点を強調する社説と、集会の自由を害するものという点を強調する社説に分けられます。

(1) まず、司法判断を無視した点を強調する社説を。

 <1> 読売新聞平成20年2月3日付「社説」

ホテル使用拒否 司法をないがしろにする行為だ(2月3日付・読売社説)

 司法の判断に従わなくとも構わないという理屈がまかり通れば、社会が成り立たない。

 日本教職員組合の教育研究全国集会(教研集会)が都内で始まったが、全体集会が中止になった。会場になるはずだったホテルが「日教組の予約は解約した」と主張し、使用を拒んだからだ。

 東京地裁、東京高裁は、「解約は無効で、使用させなければならない」と命じたが、ホテルはこれに従わなかった。(中略)

 ホテルが右翼団体による妨害を恐れ、筋の通らない理屈で解約を正当化してまで集会を中止させれば、右翼団体の思うつぼである。(中略)

 異なる立場の意見でも、発言する自由を最大限認めるのが、民主主義社会である。憲法で保障された「集会の自由」「表現の自由」が脅かされてはならない。

 ホテル側は、「極めて短時間で十分な審理、理解を得られないままなされたもので、大変残念」としている。

 だが、ホテル側は裁判の係争中なのに、会場には既に別の客の予約を入れていた。司法をないがしろにする行為は許されまい。一流ホテルには、それにふさわしい社会的責任が求められる。

(2008年2月3日01時19分 読売新聞)」




 <2> 日経新聞平成20年2月5日付「社説」 

社説2 司法を無視したホテルの非(2/5)

 司法判断を公然と無視する一流ホテルがあるとは、あきれてしまう。日本教職員組合が東京のグランドプリンスホテル新高輪で開く予定だった教育研究全国集会の全体集会が中止に追い込まれた問題である。

 ホテル側はいったん結んでいた会場使用契約を解除し、使用を認める裁判所の決定にも従わなかった。「右翼団体が多数の街宣車を繰り出し、騒音や警備によって利用者や住民に大きな迷惑がかかるのは明白」。プリンスホテルはこう主張した。(中略)

 仮処分の申し立てを受けた東京地裁は日教組側に落ち度はないとし、会場を使わせるよう命じた。東京高裁もホテル側の抗告を棄却し「警察と十分な打ち合わせをすることで混乱は防げる」と指摘している。

 日教組の主義主張に批判は少なくないが、あくまでも合法的な組織の合法的な集会だ。早い段階で事情を説明して契約も結んでいる。この司法判断は極めて妥当だが、ホテル側は会場使用に頑として応じず、会場に別の予約まで入れていた。

 教研集会をめぐっては公共施設が貸与を拒んだ例はあるが、司法は使用拒否を認めず、施設側も従ってきた。そこには、憲法の保障する言論や集会の自由が損なわれてはならないという社会の意思があるはずだ。それなのに、私企業とはいえ公的な性格を持つ大規模ホテルがこの対応では情けない限りではないか。

 プリンスホテルは西武鉄道株の名義偽装事件を機に誕生した新生西武グループの一員だ。コンプライアンス(法令順守)にはとりわけ配慮を払っているという。それが裁判所の命令さえはねつけたのでは、企業理念がむなしく響くばかりである。」




(2) 次に、集会の自由を害する点を強調する社説を。

朝日新聞平成20年2月2日付「社説:教研集会拒否―ホテルが法を無視とは」山陽新聞平成20年2月3日付「社説:ホテル使用拒否 「集会の自由」は守らねば」西日本新聞平成20年2月3日付「社説:理解できないホテル判断 教研集会拒否」信濃毎日新聞平成20年2月3日付「社説:集会拒否 憲法の精神に反する」沖縄新報平成20年2月3日付「社説:会場使用拒否 ホテルは社会的責任自覚を」北海道新聞平成20年2月3日付「社説:会場提供拒否 無視された集会の自由(2月3日)」などかなり多いのですが、ここでは2つほどを一部引用しておきます。


 <1> 毎日新聞平成20年2月2日付「社説」

会場使用拒否 言論の自由にかかわる問題だ

 自由に集会し、自由に意見を交わす場が騒ぎと警備に囲まれ、会場確保のために裁判所の判断を仰がなければならないというのは、本来あってはならないことだ。しかし、集会や言論の自由という最低限の基本的権利はそれで守られる。それを越え、どうであれ会場(機会)は与えないという事態は到底看過できぬ権利侵害といわざるをえない。

 それが日教組の集会であれ、逆に反日教組の集会であれ、保障されるべきは同じである。今回の「全体会取りやめ」は今後、日教組にとどまらず、集会や言論、表現の会場使用をめぐる問題に「前例」として重くのしかかるおそれがある。

 そうしないための問題認識や気構えが必要だ。」




 <2> 東京新聞平成20年2月2日付【社説】

日教組大会 集会の自由は守らねば

 日教組が集会場に都内のホテルを予定していたが、ホテル側が約束を破って使用を拒み、集会が中止になった。裁判所の命令も無視しての対応だ。「集会の自由」を守れなくて信用が築けるのか。(中略)

 三度出された裁判所の命令を無視してまで混乱を避けようとするホテル側のその“企業判断”は正しいのか。社会から支持が得られるとは、とても思えない。

 たとえ、主義主張の違いがあったとしても、表現や思想信条、集会の自由は、民主主義社会で守らなければならない最も大切な権利だ。

 周囲で右翼が騒ぐおそれがあるからといって、会場の使用を拒んでいたら、民主主義社会が崩れてしまう。法令も守らなければならない。

 客側に問題がない以上、警察と協力して妨害者を排除しながら客に集会を開かせることがホテル本来の務めだ。信用とは、その積み重ねによって築かれるのではないか。」





3.プリンスホテル新高輪の行動の最大の問題点としては、既に述べたようにプリンスホテルによる「契約の拘束力の軽視」の姿勢である点のほかに、「司法判断の無視」の点があります。

(1) 日本国及び日本国憲法は、社会の中で生じた紛争を独立した中立公平な裁判所(司法権)による法に基づく裁判で解決することとしています(憲法76条1項)。司法権は、近代国家の権力分立原理の下で国家作用・国家の統治機構の一分野をなしていますから、裁判所による裁定は国家権力の行使そのものです。

そして、司法権は、紛争解決により国民の権利保護を図るとともに、法令の解釈の統一、意見対立の調整の任務を行うなどして、国家の基本秩序・法秩序の維持のための一翼を担うという機能も有しているのです。

今回の事件において、東京地裁と東京高裁は「ホテルと警察が十分に打ち合わせをすれば、混乱は防止できる」「解約は無効で、会場を使用させなければならない」と命じていました。それなのに、プリンスホテルは会場使用を拒否したのですから、司法の判断を公然と無視したことになります。しかも、ホテル側は裁判が開始された直後、同じ会場にプリンスホテルの関係者を客として予約を入れてしまったのですから、いかなる司法判断が下されようとも無視する意図が明らかでした。


これに対して、プリンスホテルは、「裁判所の決定は極めて短時間に、十分な審理のないままなされたものだ」との不満を述べています。

しかし、裁判所の判断に対してどんなに不満があろうとも、判断が下されたならば、訴訟の当事者は裁判所の判断に従うことが「法の支配」「法治国家」の下ある日本では求められているのです。短時間に決定せざるを得なくなったのは、プリンスホテルが11月12日という開催日(2月2日)に近くなってから一方的に解約したからであり、また、仮処分制度自体を否定する主張であって、まったく根拠のない主張です。

プリンスホテルの「司法判断無視」の行動は、国家権力の行使を無視したものであり、国家の基本秩序の維持に寄与する裁判所の機能を失いかねないものです。プリンスホテルの行動は、裁判に負けても身勝手な理屈を付けて裁判に従わないことが蔓延ることになりかねず、もしプリンスホテルの行動が賞賛されるようなれば、誰も裁判制度を信用できなくなり、法秩序が維持できなくなってしまい、日本国が無法地帯と化してしまいます。こんなことになれば、日本の国家体制が危機に瀕してしまいます。

早稲田大学法学部長の上村達男教授(会社法)は「法を無視しても賠償すればよいという姿勢なら、法治国家の最低限のモラルに反する」と指摘していますが、まさにそのとおりです(朝日新聞平成20年2月2日付朝刊34面)。

プリンスホテルの行動は、裁判制度を無意味と化しかねず、どこぞの国のように日本をも無法地帯に招く危険性をはらんだものであって、日本の国家体制に敵対するもの、日本の国家体制に対する挑戦なのです。



(2) 他の問題点としてまず挙げるべきことは、憲法21条で保障している集会の自由を損なってしまうという点です。

しかし、プリンスホテルは次のように主張しています。

「今回の件は、憲法で保障する「集会の自由」を脅かすものとのご指摘がございますが、これにはあたらないものと考えております。仮に申し込みがあった時点でお断りしていたならどうでしょう。「集会の自由」に反するということであれば、それすら許されないことになります。ご承知の通り、「集会の自由」は基本的には国家、公的機関との関係において保障されたものであり、民間にその会場提供を強制するものではございません。」



  イ:人権の保障は、基本的には国家と国民との関係において、国家による国民の権利・自由の侵害を排除するものですが、社会の中に企業など強力な私的団体が多数生まれ、それらによって国民の人権が脅かされるようになったため、国家との関係のみでなく、私人間の関係でも憲法の趣旨を及ぼす(民法90条のような私法の一般条項を、憲法の趣旨を取り込んで解釈・適用する)とされているのです(間接適用説。最高裁昭和48年12月12日大法廷判決、最高裁昭和56年3月24日判決)。

このようなことから、憲法が間接的に適用される以上、やはり「憲法問題」となるのです。


  ロ:そして、この事件の場合、周囲で右翼が騒ぐおそれがあるからといって会場の使用を拒むことが正当化されてしまうのであれば、過去に威圧的な妨害を受けている団体は今後集会を開くことが困難になり、集会の自由の保証は無意味となり、民主主義社会が崩れてしまいます。多様な言論の自由、集会の自由が認められてこそ、民主主義社会が成り立つからです。

「今回の『全体会取りやめ』は今後、日教組にとどまらず、集会や言論、表現の会場使用をめぐる問題に『前例』として重くのしかかるおそれがある」(毎日新聞「社説」)ので、影響力が大きく、プリンスホテルの行動を正当化されないようにする必要性が高いといえます。

大量の街宣車を繰り出して、会場を取り囲み、大音量で日教組批判を繰り返すという尋常でない方法で集会を妨害する右翼団体こそが問題なのであって、平穏に集会を開いている日教組側には非はないのです。

「プリンスホテルの行いは、まるで「いじめ」を「未然に」防ぐために、あらかじめ「いじめられそうな者」を共同体から排除しようとしているに等しい。」(「世界の片隅でニュースを読む」さんの「暴力的威嚇に屈するということ~日教組教研集会会場問題」



  ハ:このようなことから、契約を締結する前から「民間にその会場提供を強制するもの」ではありませんが、契約を締結した以上、プリンスホテルの対応は、直接、憲法21条に違反するということにはならなくても、憲法21条(集会の自由)を損なうものであり、プリンスホテルの主張は妥当ではないのです。


なお、プリンスホテル新高輪の行動の最大の問題点としては、プリンスホテルによる「契約の拘束力の軽視」の姿勢である点と「司法判断の無視」の点の2点を挙げましたが、集会の自由がさほど問題視しないということではありません。憲法が間接的に適用される以上、やはり「憲法問題」であることは確かなのですから。



(3) 他にも問題があります。

東京高裁は、客や周辺の迷惑になるとするホテル側の主張に、「警視庁などが警備を了解しており、街宣車が取り囲む事態は想定し難い」と非難して否定しています。さらに、「警視庁は今回、教研集会が都内で開催された1991年と2001年を参考に約1000人態勢の警備を計画」(読売新聞)していたのです。日教組とプリンスホテルは10末まで打ち合わせをしていたことからすると、警視庁の警備計画のあらましは知っていたはずです。

ところが、プリンスホテルは、あくまで客や周辺の迷惑になると主張しているのですから、警視庁の準備・対応を信用していないことになります。「昨年の大分大会も大分県警が他県の応援も含め1300人態勢で警備し、大きな混乱は起きていない」(西日本新聞平成20年2月3日付「社説」)のに、プリンスホテルは警視庁は大分県警ほどの能力がない、いわば無能扱いしたのです。

プリンスホテルが、周囲や客の迷惑になるからとして契約の解除の正当性を主張すればするほど、「警視庁は無能だ、警察は信用しない」のだと喧伝することになり、より一層、警察の威信を傷つけることになります。日本の警察官のほとんどが、プリンスホテルの言動に対して苦々しい思いでいるはずです。

「警察は無能だ、警察は信用しない」と述べているに等しいプリンスホテルの言動は、警察機構や警察官に対する侮辱であり、極めて妥当でないのです。ただ、警察側としては、なぜプリンスホテルは右翼団体の圧力に負けたのだろうかと、疑いを抱いたはずです。この事件を切っ掛けとして、プリンスホテルと右翼団体(暴力団?)との結びつきなどを調査するため、捜査が開始されるかもしれません。




4.今後の動向についても触れておきます。

(1) 日教組は損害賠償や慰謝料を求める訴訟を起こすはずですし、裁判において認められることは確実です。朝日新聞の記事では、ベテラン裁判官は「ホテル側は営業上の自由を主張しても、認められる可能性は低いだろう」(朝日新聞)としているように、日教組側の主張が認められる可能性が高いのです。

プリンスホテルは、裁判所の裁定を無視しても損害賠償をすればよいという姿勢なのかもしれません。しかし、プリンスホテルは、一度は予約を受け付けた以上、日教組も同じ客であるのに、日教組と無関係な右翼団体がもたらす迷惑のために解除するなど差別的に扱い、正当な理由なく解約したばかりか、平然と司法判断を無視したのです。

これらのことから、東京都知事は、プリンスホテル新高輪に対して旅館業法違反(1条)であることを理由に、営業許可の取り消し又は営業停止(8条)を行うことも可能だと思われます。



(2) もし、プリンスホテルが日教組に損害賠償を払うことになった場合、プリンスホテルの株主は、取締役に対して代表訴訟(会社法847条:責任追及等の訴え)を起こす可能性があります。

「蛇の目ミシン工業恐喝事件で最高裁は、警察に届けるなど適切な対応をすべきだったと、300億円を脅し取られた旧経営陣の過失を認定した。弁護士の久保利英明さんは「安易に屈したのが信じられない。リスクはあっても、社会のために闘うことも必要」と話す。」(朝日新聞平成20年2月2日付朝刊34面)



蛇の目ミシン最高裁判決は、取締役に対して脅迫を行い、蛇の目ミシン工業側から融資目的で約300億円を脅し取った事案につき、脅迫されたのなら警察に届けて対応すべきであって、警察に相談することなく違法行為をしても責任は免責されないとして、当時の取締役に対して責任を認めました(「蛇の目ミシン株主代表訴訟最高裁判決」(2006/04/14(金) 05:52:44)参照)。

最高裁は、経営者に対して、警察との連携を保つなど対策を講じて、企業自体の組織的な対応力を高めることによって、反社会的勢力の恐喝(暴行・脅迫)に対して屈してはいけない態度を示すべきだとしているのです。久保利英明弁護士は、プリンスホテル側の対応に対して、「安易に屈したのが信じられない。リスクはあっても、社会のために闘うことも必要」と話していますが(朝日新聞平成20年2月2日付朝刊34面)、蛇の目ミシン最高裁判決を踏まえれば当然のことなのです。

そうなると、蛇の目ミシン最高裁判決の論理、裁判継続中に他の予約客を入れるといった仮処分制度の実効性を無にする態度、司法判断さえも無視して会場使用を拒否したことからすれば、善管注意義務違反・忠実義務違反となることは明白であり、取締役の責任が認められる可能性はきわめて高いといえます。


「プリンスホテルは西武鉄道株の名義偽装事件を機に誕生した新生西武グループの一員だ。コンプライアンス(法令順守)にはとりわけ配慮を払っているという。それが裁判所の命令さえはねつけたのでは、企業理念がむなしく響くばかりである。」(日経新聞「社説」)



プリンスホテルを傘下に持つ「西武ホールディングス」は、どんなに新生しようとも、コンプライアンス(法令順守)という企業理念を守る気がないといえます。いまのところは、「プリンスホテルの集会使用拒否問題を考える会」(発起人=毛利正道弁護士)は2月7日、ホテル側に、今後同様の態度を取らないよう求める要請書を手渡したにとどまっていますが(毎日新聞)、今回のプリンスホテルの行動は、今後の訴訟などを含め極めて重い結果をもたらすことになりそうです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

事件 *  TB: 8  *  CM: 12  * top △ 
コメント
この記事へのコメント
プリンスサイドは、自らの側に多少なりとも法的正当性が有るなどとは思っていないでしょう、内心。(予約を受けた時点でアウト) 上村早稲田大学教授の指摘されている通り「法を無視しても賠償すればよいという姿勢」なのです。 一私企業として、本件においてはこの姿勢が経営上advantageousだと考えた、ただそれだけのことで。 後はこれに対し、社会がどのような評価を下すか、と言うことです。 (“真っ当な右翼”の私から見て、今の右翼団体なんて全然怖くも何とも無いのにね)
それより、そもそも日教組ごときが、新高輪プリンスなどという、ブルジョア向け高級ホテルを利用せねばならない必然はどこにあるのか? 「いやぁ、この前の集会は新高輪のプリンスでしてねぇ、はっはっ」って、田舎もんの教師どもを歓ばせるためでないの? 
日本中に閑古鳥の鳴く公共施設が五万と有って困っているのだから、そこを使えよっ、ての、非国民が。
2008/02/08 Fri 11:16:44
URL | rice_shower #-[ 編集 ]
>rice_showerさん:2008/02/08 Fri 11:16:44
コメントありがとうございます。


>上村早稲田大学教授の指摘されている通り「法を無視しても賠償すればよいという姿勢」なのです。 一私企業として、本件においてはこの姿勢が経営上advantageousだと考えた、ただそれだけのことで

米国の契約法と日本の契約法を想定しながら考えると、プリンスホテルの態度はなかなか面白いです。

米国の契約法だと契約を破る自由はありますが、高額な賠償金を支払うことになります。しかも司法判断に反して拒絶すれば懲罰的賠償も生じる可能性があります。賠償すればよいという姿勢はある意味、米国的です。もっとも、そうそう高額な賠償を払うことはしないので、米国でも契約は維持されるわけです。

これに対して、日本の契約法だと本来の履行義務を遵守させようとしており(強制履行が本則)、そのためか賠償額は実害(+慰謝料)のみです。ですから、賠償すればよいという姿勢だと、日本法的には困ります。rice_showerさんが仰るとおり、プリンスホテルとすれば、日本法では実害のみ払えば足りるため、司法判断を無視しても解除するのが経営上有利だと、ドライに割り切ったともいえますね。

しかし、妙に感じるのは、プリンスホテルが解除した理由として「客と周囲に迷惑がかかること」を挙げた点です。迷惑をかけているのは街宣車を繰り出す右翼団体であり、本当に迷惑が生じるようなら警察の不手際であって、プリンスホテルに何ら責任はありません。

米国的な契約の考えからすれば、右翼団体が何をしようともホテルに責任がないのですから、契約を解除する理由なんてないのです。周りのことを気遣って自らの責任がないことでも解除をしようだなんて、あまりにも日本的・情緒的な解除理由です。

契約履行を軽視して解除したという事実だけは米国的ですが、解除の理由は日本的。どうにも妙なんですよね。そういう妙な契約解除なので、「経営上有利だから」ではなくて、右翼団体から弱みを握られた西武の幹部の差し金で、解除に至ったんだろうなとも推測できそうです。


>後はこれに対し、社会がどのような評価を下すか、と言うことです

日教組からの損害賠償、代表訴訟、営業停止など色々待ってますので、社会の評価だけにとどまらないでしょうね。それに経団連が掲げている「企業行動憲章」にも違反してますから、どうなることやらと思います。なので、プリンスホテルはわざわざ苦難の道を選んだようにも思えます。「我に七難八苦を与えたまえ」って感じですね。


>“真っ当な右翼”の私から見て、今の右翼団体なんて全然怖くも何とも無いのにね

西武ホールディングスの幹部が何らかの理由で怖がったんでしょうね。きっと。

赤尾敏先生がご存命中の頃なら威厳もあったし、怖がる要素もあったんでしょうが、今街宣車を繰り出している右翼団体に対しては、一般人は怖がるというよりも関心がなくなってしまったと思います。

それに、「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」によって、警察には拡声機や宣伝カーの「提出命令権」がありますので、今は都内で街宣車で迷惑になるなんてちょっと考えにくいんですよね。

(作家の宮崎学さんが右翼団体に取材した記事・書籍によると、拡声機の値段が高いので、資金繰りが苦しい右翼団体にとって拡声機の提出は非常に困るとのことです。だから、あまり音を出せないわけです。もし大集結して騒音を出しまくったらことごとく没収の憂き目にあってしまい、街宣車は壊滅でしょう。警察は大喜びですね。)


>そもそも日教組ごときが、新高輪プリンスなどという、ブルジョア向け高級ホテルを利用せねばならない必然はどこにあるのか?

最初の契約交渉から、イベント会社に任せているので、日教組がわざわざ好きでプリンスホテル新高輪を選んだ、というわけではないのでしょうね。

イベント会社は、なるべく東京開催優先でと頼まれていたから、東京で日程的に空いている会場を選んだら、たまたまプリンスホテルになった、という感じでしょうか。イベント会社としては、「教員には高級すぎるかも」だなんて考えてはいないと思います。
2008/02/09 Sat 01:50:31
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
契約救済法
英米契約法が損害賠償原則主義であるというのはその通りですが、「高額な賠償」になるかは分かりません。アメリカ契約法では損害軽減義務(mitigation)を初め、賠償額を限定する法理が発達しています。(樋口範雄『アメリカ契約法』(弘文堂、1994年)第3章、第4章参照。)

特に、懲罰的賠償はあり得ません。他に独立の不法行為を構成しない限り、単純な契約違反(債務不履行)に対しては懲罰的賠償は課されません。(第2次契約法リステイトメント355条参照。第2次不法行為法リステイトメント908条コメントbも参照。)

また、仮にアメリカ(のどこかの州の)法が本件に適用されるとしても、特定履行(履行強制)の認めれられたであろう事案であるように思われます。


> 日本の契約法と本来の履行義務を遵守させようとしており(強制履行が本則)、
> そのためか賠償額は実害(+慰謝料)のみ

履行強制原則主義と損害賠償の範囲とは連関しないように思います。
「実害」の中身が問題で、日本法でも履行利益が契約違反に対する損害賠償の本則ですよね。この点はアメリカ法も同様です。
むしろ本件の場合、何が損害の範囲に入ってくるかが興味深い論点だと思っています。
2008/02/09 Sat 10:00:49
URL | IZW34 #-[ 編集 ]
契約救済法(追記)
アメリカで裁判所の命令に従わなかったとすれば、裁判所侮辱(contempt of court)になってjailに放り込まれる可能性はありますね。
2008/02/09 Sat 10:15:24
URL | IZW34 #-[ 編集 ]
そもそも右翼ではないが
まあ、そもそも国旗を掲げながら騒音を撒き散らしている右翼(もどき)こそ一番国旗を侮辱していると感じている私ですが、まあそれはおいておいて。

ただ困ったことに、日教組自体もここで出てきている右翼的行動(自分たちの思想に合わない集会を中止に追い込む)をしているんですよね。ましてその中止に追い込んだことを「勝利」などと言い放つ偽善。

ホテル側の対応の是非はともかくとして、日教組もこの件ではえらそうなこといえないのではと感じざるを得ません。

そうそう右翼といえば私の勤めている近くの建設会社に最近までよく街宣車がきていました。
「地域住民の不安に答えろ。」
などと叫んでいましたが、その答えろと騒いでいる本人たちが拡声器による騒音で地域住民を不安に追い込み、ごみをポイ捨てする矛盾を内心笑いながら見ていました。

同じように今回の件も、日教組が他の団体の集会を講義で中止に追い込んでいることに対する因果応酬にしか見えません。
2008/02/10 Sun 20:20:42
URL | さくら #z8Ev11P6[ 編集 ]
>IZW34さん
はじめまして、コメントとTBありがとうございます。


>英米契約法が損害賠償原則主義であるというのはその通りですが、「高額な賠償」になるかは分かりません。アメリカ契約法では損害軽減義務(mitigation)を初め、賠償額を限定する法理が発達しています。(樋口範雄『アメリカ契約法』(弘文堂、1994年)第3章、第4章参照。)

損害軽減義務は、大まかに言えば「債権者は代替物の取得が容易な場合には、まずそちらを試みるべきで、そのようなことを怠った場合には損害賠償は制限される」というものだと思います。損害軽減義務は、「英米法やドイツ法のほか、国際取引に関しては確立した法理として肯定されている。さらに、日本の判例も、実質的には、このような義務を前提とした判断をしていると解することが可能である」(内田貴『民法3(第3版)』(東京大学出版会、2005年)124頁など、国際取引法の書籍など)と理解されています。ですから、米国固有の契約法として、損害軽減義務を挙げるのは適当でないように思います。

それに米国在住の知人の実感からすると、米国では賠償額が限定されているといえないようなのです。IZW34さんと異なり、米国在住40年では少なすぎるのかもしれませんが。


>特に、懲罰的賠償はあり得ません。他に独立の不法行為を構成しない限り、単純な契約違反(債務不履行)に対しては懲罰的賠償は課されません

ご指摘ありがとうございます。
単純な契約違反ではなく、「司法判断に反して拒絶すれば懲罰的賠償も生じる可能性」があるのではないかと推測しました。


>履行強制原則主義と損害賠償の範囲とは連関しないように思います。

連関するか否かの議論があるかどうかの文献を探していないので、「そのためか賠償額は実害(+慰謝料)のみ」としました。


>アメリカで裁判所の命令に従わなかったとすれば、裁判所侮辱(contempt of court)になってjailに放り込まれる可能性はありますね。

なるほど。情報ありがとうございます。


2008/02/09 Sat 01:50:31のようなコメントを書く切っ掛けの1つは、IZW34さんのブログのエントリーでした。ありがとうございます。ただ、こうして色々考えてみると、日本と米国の契約法の違いという観点で書くことは、あまり有益でなかったように思います。あくまで日本法適用での出来事なのですから。
2008/02/13 Wed 01:11:51
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>たけだ=さくらさん
はじめまして、コメントありがとうございます。まず、名義については「たけだ2008/02/10 Sun 20:20:22=さくら2008/02/10 Sun 20:20:42」なので、名義は統一して下さるようお願いします。たけだ名義は間違いだったという趣旨だったのでしょうが、できれば、以前、さくらさん名義の方がコメントなされているので、「さくら」以外の名義にして頂けたらと思います。


>ましてその中止に追い込んだことを「勝利」などと言い放つ偽善
>ホテル側の対応の是非はともかくとして、日教組もこの件ではえらそうなこといえないのではと感じざるを得ません

日教組の対応を逐一調べているわけではないので、偽善の事実の有無はよく知りませんし、「えらそう」なのかどうかは、価値観の問題のように思います。

問題なのは、プリンスホテルが司法判断を無視したことです。自分勝手に契約解除は有効であるとして、司法判断を無視できるとなれば、裁判制度が危機に陥ってしまうことです。


>近くの建設会社に最近までよく街宣車がきていました。
>「地域住民の不安に答えろ。」
>などと叫んでいましたが、その答えろと騒いでいる本人たちが拡声器による騒音で地域住民を不安に追い込み、ごみをポイ捨てする矛盾を内心笑いながら見ていました

街宣右翼の相手はその建設会社なのだと思います。それを前提として、街宣右翼は、建設会社だけでなく、地域住民に対して迷惑をかけることで、建築会社に間接的にも圧力をかけ、(おそらく)金銭を引き出そうとするやり口をとったわけです。「拡声器による騒音で地域住民を不安に追い込」むことは、百も承知だと思いますよ。
2008/02/13 Wed 01:19:14
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
Re: 契約救済法
> 損害軽減義務

2008/02/09 Sat 10:00:49付けコメントで「アメリカ法では」としているは私がすぐに確認できるのがアメリカ法だけだという趣旨で、米国法に限定する意図ではありません。
また、国際取引におけるそれも英米法起源であると理解しています。<span style="font-size:smaller;">(UCC→CISGの連関については曽野裕夫教授(北大/法務省)の論文を読んだ記憶があるのですが手元で確認できませんmOm。)</span>

内田民法の該当記述も現在確認できないのですが、裁判所は相当因果関係論を使って処理している問題を、損害軽減義務を措定することでうまく説明できる、という趣旨だったと記憶しています。機能的比較法としてはもっともな主張だと考えますが、損害軽減義務という法理を裁判所が使って判断している、という意味で日本法に存在するという主張は少数説に留まるものだと了解しています。


> 米国在住の知人の実感からすると、米国では賠償額が限定されているといえないようなのです。

この知見は<u>契約訴訟においても</u>そうであるというものでしょうか。

<u>不法行為</u>等においては賠償額が拡張的な方向で考えられる、という点については異論はありません。填補賠償だけでミリオン・ダラー、懲罰的賠償付き、という話もよく聞きます。また、マスコミ報道に出てくるのはしばしばクラス・アクションの帰結であることもあるので、この場合、実際には<span style="font-size:smaller;">(ヘタをすると)</span>数百万規模の数の被害者の損害を積み上げた額が報道されることになります。

ここで問題になっているのは<u>契約違反</u>に対する損害賠償であって、そちらについては限定的な方向で思考する、と了解しています。先に挙げた例のほか、損害賠償額の予定も少な目の額はスルーなのに大きい額はチェックが入る、といった法理もあります。
但し若干の留保は必要で:
・州によっては品質保証/瑕疵担保責任(warranty)が製造物責任追及の手段となっていることがあり、ここで人身損害が絡めば賠償額は膨らみます。
・請求権競合論として日本で議論される問題については、論点の存在自体が認識されずに日本で言う請求権競合説的に運用されるため、原告側は複数の訴訟原因を並べ立てるのが通常です。そこで(契約違反とは別に、一緒に並べられた)不法行為が認められて損害が拡張的に算定される可能性はあります。


> 単純な契約違反ではなく、「司法判断に反して拒絶すれば懲罰的賠償も生じる可能性」があるのではないか

それは、やはりない、というのが私のjudgeです。
・そもそも、司法判断に反して拒絶するというシチュエーションがあまり想定できません。先に指摘した通り裁判所の命令への違背は裁判所侮辱となりますし、通常は命令に従うでしょう。アメリカの企業であれば、命令に従いたくなければ命令の執行停止(stay)を裁判所に求めると思います。
・司法判断への違背は、裁判所の権威、引いては主権への挑戦であって、被告と主権者との間の問題です。(私のエントリはその趣旨を明確に意識して書いているはずです。)契約違反という訴訟原因は既に成立しているのであり、あとはこれに対して裁判所がどのような救済を与えるのかという問いであって、裁判所の命令への違背が翻って原告と被告との訴訟原因に影響する、というのはちょっとよく分からない構成です。(少なくとも、そのような事件は普通の契約法や不法行為法のケースブックにも載っていないかと。)
2008/02/13 Wed 16:18:37
URL | IZW34 #-[ 編集 ]
「たけだとは別場所で使っているHNです。(こことはまったくかかわりありません)。まったく別の場所なのでHN変えようとしていたのですが間違って登校してしまいました。大変申し訳ありませんでした。できればたけだは削除していただけるとありがたいです。またこの「」内は不都合なら消していただいてもかまいません。

HN、要請にお答えしHN変更します。
さくら→そめいよしの

ちなみに、法的に言えば、民事の判決を無視しても相応の賠償金を支払うことでたいていの場合問題な師となってしまうと思いますがいかがでしょうか?
もちろん「支払え」という命令なら差し押さえなどの強制執行ができますが、「使わせろ」だと共生的に使わせるのは実質的に無理ですから、そのホテルに支払った予約金+違約料。あとそれにプラスして会場変更に伴う損金を支払えばすんでしまうものだと思います。判決に従わなければ強制執行ですが、今回の件は使用の強制執行は実質できないわけですし、刑事でもない限り逮捕もできないでしょう。

まあ、個人的感想で言えば、日教組は自分たちが訴えられるってことを考えていないのかな?って感じます。

あと、右翼は右的考えを基本としている私から見れば、国旗を侮辱しているその街宣車行為こそ万死に値すると思っています。
2008/02/13 Wed 22:00:41
URL | そめいよしの #-[ 編集 ]
>IZW34さん:2008/02/13 Wed 16:18:37
コメントありがとうございます。お返事が遅くなってすみません。

>私がすぐに確認できるのがアメリカ法だけだという趣旨で、米国法に限定する意図ではありません
>国際取引におけるそれも英米法起源である

あのー。そういう説明は困惑します。
起源がどうであろうとも、損害軽減義務は、「英米法やドイツ法のほか、国際取引に関しては確立した法理」なのですから、IZW34さんのコメントは、私のコメントと無関係のコメントです。私が行ったのは「米国の契約法と日本の契約法」とを比較したコメントなのであって、世界の契約法と日本の契約法の比較ではないのですから。


>内田民法の該当記述も現在確認できないのですが、裁判所は相当因果関係論を使って処理している問題を、損害軽減義務を措定することでうまく説明できる、という趣旨だった
>日本法に存在するという主張は少数説に留まるものだと了解

すべての損害賠償の範囲は相当因果関係で判断するのですから、間違いではありませんが、内田貴教授の見解は、IZW34さんの理解とは異なります。違った理解で「少数説に留まるものだと了解」されても、困惑するばかりです。

内田先生が平井宜雄先生に揚げ足取りのような批判を加え、平井先生が激怒されて以来、内田先生を軽視する風潮が増えたということなのでしょう。IZW34さんが内田先生のご見解をほとんど覚えていないのは、「無視していいんだよ、暗黙の了解だろ」という意図であると理解しました。


>> 米国在住の知人の実感からすると、米国では賠償額が限定されているといえないようなのです。
>この知見は<u>契約訴訟においても</u>そうであるというものでしょうか。

その通りです。
ただ、その点は、IZW34さんが40年以上米国に在住なされているのであれば、違う実感かもしれませんね、ということです。


>> 単純な契約違反ではなく、「司法判断に反して拒絶すれば懲罰的賠償も生じる可能性」があるのではないか
>それは、やはりない、というのが私のjudgeです。
>・そもそも、司法判断に反して拒絶するというシチュエーションがあまり想定できません

米国では存在しない事例について「やはりない、というのが私のjudge」ということですね。存在しない事例なら「分からない」ということになりそうですが……。もちろん、IZW34さんが米国において米国契約法の権威というお立場であるなら、そのご判断は尊重します。

色々な貴重なご意見ありがとうございました。今後のご活躍をお祈りします。
2008/02/17 Sun 19:46:55
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>そめいよしのさん:2008/02/13 Wed 22:00:41
HNの変更とコメント、ありがとうございます。お返事が遅くなってすみません。


>「たけだとは別場所で使っているHNです
>できればたけだは削除していただけるとありがたい

ご要望に従い、削除しました。


>法的に言えば、民事の判決を無視しても相応の賠償金を支払うことでたいていの場合問題な師となってしまうと思いますがいかがでしょうか?
>そのホテルに支払った予約金+違約料。あとそれにプラスして会場変更に伴う損金を支払えばすんでしまう

恣意的な解除を行い、民事の判決を無視することを厭わないホテルとなると、利用客だけでなくホテル業界での信頼をなくしますし、エントリーでも触れたように旅館業法違反として営業停止もあり得るでしょうし、取締役の責任も追及される可能性もあり、税務当局や警察も後ろ暗いものがあるのではないかと、疑いの目を向けることになります。プリンスホテルは、そういった多くのリスクを背負ったわけです。親会社の西武自体が怪しいので、前から目を付けられているとは思いますが。このように、判決を無視して賠償金を払えばそれで済むわけではないのです。だから、真っ当な会社は、判決を無視したりしないわけですね。

そして、これは通常の訴訟ではなく、仮処分を求めているので事情が違うのです。この事案では、日教組が仮処分を求めた点が重要なのです。

仮処分制度(保全制度)は、訴訟の提起から確定までに時間がかかることから、その間の状況の変化により将来の強制執行ができなくなったり、勝訴判決をとっても無意味になることを避けるためのものです(羽成守編『仮差押え・仮処分の法律相談』(青林書院、2004年)57頁)。

エントリーで触れたように、日教組は、多人数の集会であり、右翼団体からの妨害があることから、1年ぐらい前から会場の契約交渉を始めていることから分かるように、プリンスホテルが開催日の2ヶ月半前に突如解除を通告したのでは、集会中止に追い込まれるは必然です。そして、多人数が集まる集会は、その集会を開くこと自体に意義があるのですから、集会中止になってしまえばいくら損害賠償を請求できるとしても全く無意味です。

だからこそ、損害賠償を請求できても無意味だから、日教組は仮処分を求めたのです。


>個人的感想で言えば、日教組は自分たちが訴えられるってことを考えていないのかな?って感じます

ちょっと意味が分かりませんが、今回の件で日教組がプリンスホテルに損害賠償を請求する訴訟を
おこせば、勝訴は確実です。エントリーで引用した裁判官が判断しているとおりです。


>右翼は右的考えを基本としている私から見れば、国旗を侮辱しているその街宣車行為こそ万死に値する

なるほど。街宣車に対する意識はそれぞれですね。
集会を妨害したり、嫌がらせをするような街宣右翼は非難しますが、長年、東京で街宣右翼を見ている身としては、すっかり大人しくなってしまった街宣右翼に対して「万死に値する」というほどの気持ちはありません。「宮崎学著『右翼の言い分』」を読んでいたせいでもありますね。もし読んでいなければぜひご一読を。
2008/02/17 Sun 19:54:24
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2008/02/19 Tue 15:08:08
| #[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/846-02834bd6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
 つくばみらい市が右翼勢力の暴力的威嚇によりDV防止の講演会を中止した事件を、以前当ブログでも取り上げたが、この国では今や大きな声で脅かせば、行政も住民も唯々諾々と従ってしまい、全く無抵抗になってしまう風潮が広がっている。つくばみらいと同じ講演者による...
2008/02/08(金) 11:42:31 | 世界の片隅でニュースを読む
石橋を叩いても渡らない自分は、日教組の教研集会をプリンスホテルが蹴っ飛ばした話題を今頃になって書く。 先週のパウエルの二重契約に続き、契約法の教材として民法の先生が泣いて喜びそうな事例だ…とは言えパウエルの事例は実際には二重契約ではないのでしたか。 ...
2008/02/09(土) 10:26:50 | アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する
    皆様のご支援に感謝致します! ありがとう! 赤福の情報なら、ここで知りましょう! ●三重県よろずや 様。 *2008年02月12日 NHKと赤福広報課長のツーショット --------------------------------------- ● 日 テ レ 赤福が約4か月ぶりに販売を再...
2008/02/12(火) 22:11:28 | 晴天とら日和
    皆様のご支援に感謝致します! ありがとう! 赤福の情報なら、ここで知りましょう! ●三重県よろずや 様。 *2008年02月12日 NHKと赤福広報課長のツーショット --------------------------------------- ● 日 テ レ 赤福が約4か月ぶりに販売を再...
2008/02/12(火) 22:11:53 | 晴天とら日和
●都内ホテル「教研集会、お帰りいただく」…高裁判断を無視 2日後に開催が迫った「日本教職員組合」(日教組)の教育研究全国集会(教研集会)で、全体集会の会場として予定されていた「グランドプリンスホテル新高輪」(東京都港区)は31日、読売新聞の取材に、2月1日?...
2008/02/15(金) 13:55:45 | 松尾光太郎 de 海馬之玄関BLOG
石橋を叩いても渡らない自分は、日教組の教研集会をプリンスホテルが蹴っ飛ばした話題を今頃になって書く。 先週のパウエルの二重契約に続き...
2008/03/03(月) 10:56:14 | アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する
===== (4)-1.是非の境目はどこか~企業統治の観点から ===== ホテル側の対応の是非を判じるにあたって、企業統治の観点から私の価値判断軸を編成します。 一点目。 企業統治と企業倫理を並べてどちらが上位かと比較することはできない、この二つは組織体が存続す...
2008/03/20(木) 02:27:57 | 1day,1page
MS??Ĥ?ξ?
2009/04/08(水) 15:19:15 | MS
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。