FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
05« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30.»07
スポンサーサイト 
--/--/-- [--] --:--:-- » E d i t
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 *  TB: --  *  CM: --  * top △ 
2008/02/01 [Fri] 08:10:17 » E d i t
代理出産の是非などを検討している日本学術会議の委員会(委員長・鴨下重彦東大名誉教授)は1月30日、代理出産は原則的に法律で禁止すべきであるとの報告書案をまとめました。営利目的には罰則を科す一方、国の厳格な管理の下に試行的に実施する道を残しているため、結論としては、例外的に代理出産を容認した案となっています(時事通信「2008/01/30-18:43 代理出産は法律で禁止=営利のみ処罰、試行の道残す-学術会議報告書案」参照)。ただし、例外的な実施をどのように認めるかを巡って議論が紛糾したため、最終的な結論は持ち越しとなりました。

1月31日に講演会を行い、国民に対して一応の説明を行ったうえで、年度内に最終的な報告書をまとめるとのことです。



1.1月30日の会合の内容・様子(代理出産の例外的な実施条件を巡り議論が紛糾し、結論は持ち越し)について、報道記事を幾つか。

(1) NHKニュース1月30日 19時2分

代理出産 例外的に容認の素案

 赤ちゃんをほかの女性に産んでもらう代理出産の是非について、日本学術会議の検討委員会は新たな法律を作り、原則として禁止する一方で、国の厳重な管理の下なら例外的に認めてよいのではないかとする報告書の素案を示しました。代理出産をめぐっては、国や学会などが全面的に禁止すべきだとしており、例外的ではあっても実施を認める今回の素案は、これまでの流れを大きく変えることになりそうです。

 日本学術会議は、専門家による委員会を設けて去年1月から代理出産の是非について検討を行ってきましたが、30日に開かれた会合で報告書の素案を示しました。素案では、新しい法律を作って原則として代理出産を禁止し、営利目的の場合には罰則を付けるべきだとしています。

 しかし、代理で出産する女性の心と体にどのような影響があるかや、生まれる赤ちゃんの成長の状況などについて科学的なデータを集めるため「代理出産の試行は考慮されてよい」として、国の厳重な管理の下で例外的に認めてよいのではないかとしています。

 代理出産をめぐっては、5年前、厚生労働省の部会が罰則付きの法律を作って全面的に禁止すべきだとする報告をまとめたほか、専門の医師で作る日本産科婦人科学会も指針で禁止しています。検討委員会は、一般の人からも意見を聞いたうえで近く最終的な報告書をまとめることにしていますが、例外的ではあっても代理出産の実施を認める今回の素案は、これまでの流れを大きく変えることになりそうです。  (1月30日 19時2分)」



1月30日の会合の結論のポイントは3点ありますが、1点目としては、このNHKの報道内容が端的でしょう。

「赤ちゃんをほかの女性に産んでもらう代理出産の是非について、日本学術会議の検討委員会は新たな法律を作り、原則として禁止する一方で、国の厳重な管理の下なら例外的に認めてよいのではないかとする報告書の素案を示しました。代理出産をめぐっては、国や学会などが全面的に禁止すべきだとしており、例外的ではあっても実施を認める今回の素案は、これまでの流れを大きく変えることになりそうです。」


これまで厚労省の部会の報告書は全面禁止であったのに、報告書素案は――臨床研究の形であっても――例外的にも代理出産を認め、しかも国の厳重な管理下で実施するというのですから、国が代理母のリスクなどの責任を負担することを認めつつ、代理出産の実施を行うわけです。管理する者はその責任をも負担するというのが法理論(管理監督責任論)ですから。

代理出産を実施している米国でも、代理出産につき国が責任を負担してくれることはないのですから、従来、全面禁止であったのに、「例外的ではあっても実施を認める今回の素案は、これまでの流れを大きく変えることになりそうです」という評価は妥当なものといえるのです。



(2) 日経新聞平成20年1月31日付朝刊42面

代理出産「容認の余地」は  学術会議、なお紛糾 報告書案は原則禁止

 不妊夫婦が妻以外の女性に子供を産んでもらう代理出産の是非を議論している日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東大名誉教授)は30日会合を開き、代理出産を法律で原則禁止する報告書案をまとめた。

 条件付きで代理出産を試行することは認める方向だが、この日は例外的な実施をどのように認めるかを巡って議論が紛糾。最終的な結論は来月の会合へ持ち越された。検討委は31日に東京都内で公開講演会を開き、一般の意見も聴いた上で、2月にも最終報告書をまとめる方針。

 報告書案の内容は、法律で代理出産を原則禁止し、営利目的だった場合には刑事罰を科すというもの。一方で国の管理下で厳しい条件を設けて代理出産を試行することを認めており、将来、改めて是非を判断する必要性にも言及している。

 30日の会合では、実施の余地を巡って委員の意見が分かれて議論が紛糾。「禁止しながら試行を認めることは、例外的な条件付き容認とどう違うのか」「試行とは生まれてくる子供に失礼。第三者機関の厳しいチェックの下、認める道を残すべきだ」など異論が噴出。検討委は最終報告書に向けて調整を図る方針。」



1月30日の会合で最も議論になったのは、例外的な実施をどのように認めるかを巡ってでした。これが1月30日の会合のポイントの2点目です。

「30日の会合では、実施の余地を巡って委員の意見が分かれて議論が紛糾。「禁止しながら試行を認めることは、例外的な条件付き容認とどう違うのか」「試行とは生まれてくる子供に失礼。第三者機関の厳しいチェックの下、認める道を残すべきだ」など異論が噴出。検討委は最終報告書に向けて調整を図る方針。」



代理出産一律否定派は、「禁止しながら試行を認めることは、例外的な条件付き容認とどう違うのか」と述べ、代理出産を将来にわたって一切認めないようにしたい意図を明らかにしています。他方、代理出産肯定派は、「試行」とした実施することは子供の人権への配慮に欠けるため、「試行とは生まれてくる子供に失礼。第三者機関の厳しいチェックの下、認める道を残すべきだ」と述べています。このように、報告書素案の実施条件に関しても、賛否が分かれたことが表れています。

報告書素案は、「国の厳重な管理下で実施」するというものですが、財政難の折、管理する場合の費用や補償費用がどれほど全く未知数です。先進国において国が管理する代理出産はまずないので、個人が負担すべき費用との配分も不明です。このように国の負担費用が全く不透明なのですから、「国の厳重な管理下で実施」することは財務省が嫌うことは必至です。

このように、「国の厳重な管理下で実施」するという報告書素案は、実現性が著しく低い案です。「第三者機関の厳しいチェックの下、認める道を残すべきだ」という代理出産肯定派の意見の方が現実的で妥当な案といえそうです。



(3) 毎日新聞平成20年1月31日付朝刊2面(13版)

代理出産「養子縁組で親子容認」 学術会議検討委、結論は持ち越し

 不妊夫婦の受精卵で他の女性が妊娠・出産する代理出産について、日本学術会議の検討委員会は30日、「生まれた子の母は出産した女性とし、依頼夫婦とは養子や(戸籍上ほぼ実子と同様に扱う)特別養子縁組によって親子関係を認めてもよい」とする報告書案を示した。代理出産の是非は、一部容認を求める意見があったため、前回案の「法律で一律禁止すべきだ」を「禁止すべきだ」と弱めた。しかし、まだ異論があり、結論は持ち越した。

 親子関係の規定については、「血のつながりがある子を実子と認めないのは不当だ」との批判が出た。

 報告書案は、国の管理下で代理出産を「試行」し、例外的に実施することも「考慮されてよい」としたが、「禁止としながら国が試験的に実施するのは整合性がとれない」などの意見も出された。

 鴨下重彦委員長は「大きな結論の変更が必要とは考えていない。(法律で禁止することに対し)皆さんの考えにずれはないのではないか」と話した。【永山悦子、大場あい】

毎日新聞 2008年1月30日 20時18分」



  イ:毎日新聞の記事をみても、原則禁止で、例外的に容認する報告案の方向にほぼ決定していることが分かります。「「代理出産の是非は、一部容認を求める意見があったため、前回案の『法律で一律禁止すべきだ』を『禁止すべきだ』と弱めた。」としているように、「一律禁止」という表現を止めて、例外的に容認することを認めているのですから。また、鴨下重彦委員長も「大きな結論の変更が必要とは考えていない。(法律で禁止することに対し)皆さんの考えにずれはないのではないか」と話していることからすれば、報告書素案の結論を変更する可能性はまずないので、一律禁止の芽はなくなったといえるからです。

もっとも、毎日新聞の見出しは、「結論は持ち越し」とし、「まだ異論があり、結論は持ち越した」としているなど、報告書案の方向に反した意見を掲載し、1月30日の会合の結論を歪めて報道しているようです。

おそらくは、毎日新聞は、代理出産強行反対派委員(水野紀子教授など)からのリークを基にして報道しているため、こういった奇妙な報道になっているのだろうと思います。代理出産禁止は、記事を担当している永山悦子記者の意見と合致しているので、毎日新聞の記事は、禁止の方向性へ向けて誘導したい意図があり、常に割り引いて読む必要があります。


  ロ:代理出産強行反対派委員が、代理出産の身体的危険性を主張して、代理出産を一律禁止にしたいという主張を貫きたいと画策しようとしても、日本で実施を公表している医療機関では問題が生じていないというのであれば、いくら代理出産の身体的危険性を説いたとしても説得力がありません。

新たに2組が代理出産 長野の根津医師
2008.1.31 15:54

 諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長が、新たに3組の夫婦で代理出産を試み、うち2組が出産して子供を得たことが31日、関係者の話で分かった。1組は妊娠中だという。

 根津医師はこれまでに五組の夫婦で代理出産を実施、計7人の子供が生まれたことを明らかにしている。

 今回明らかになった3組は、すべて平成17年以降に実施しており、代理母となったのはいずれのケースも母親など親族だという。

 代理出産をめぐっては、日本学術会議の検討委員会が「代理母や子供への影響が問題だ」として、法律で原則禁止を求める報告書をまとめつつある。根津医師は「3組の母子ともに健康に問題はなく、委員会の判断は間違っている」と話しているという。」(産経新聞2008.1.31 15:54


この産経新聞の報道は、代理出産強行反対派委員が、日本で実施している代理出産の現状を把握することなく、観念論で議論していることがよく分かるものとなっています。



2.1月30日の会合のポイントの3点目子供の法的地位についても案を出したことです。それに関する報道記事をいくつか。


(1) 産経新聞平成20年1月31日付朝刊26面(yahoo!ニュース)

代理出産 法的地位に特例 学術会議が「実子」制度案
1月31日8時2分配信 産経新聞

 代理出産の是非を審議する日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東大名誉教授)は30日、政府に提出する報告書案の大枠をまとめた。子の法的地位を特例として依頼夫婦の実子にする制度を盛り込んだ。

 代理出産で生まれた子は依頼夫婦ではなく、分娩(ぶんべん)した女性が親となっていた。委員会は代理出産を法的に原則禁止とする方針を打ち出しているが、報告書案では「日本はもちろん国外でも是非を判断するに足る十分な科学的データは存在しているわけではない」と認めた。

 このため、データ収集の「試行」として国の管理のもと、代理出産以外、子供をつくる選択肢がないなど条件を満たした夫婦に対し、容認する方針を盛り込んだ。法的地位は従来の「養子」に加え、裁判所の認定で依頼夫婦の実子にする選択肢を用意し、その後の影響を比較する。委員からは「『試行』では生まれてくる子供に失礼すぎる」という反論の声もあり、委員会は来月19日に最終的な報告書をまとめる。」




(2) 朝日新聞平成20年1月31日付朝刊37面

代理出産養子縁組で親子関係「認める」

 代理出産のあり方を議論している日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(鴨下重彦座長)は30日、原則禁止の状況にもかかわらず、代理出産で産まれた子どもについては、養子や特別養子縁組で依頼夫婦との親子関係を認めるとする案を公表した。外国で生まれたケースも同様に考えるとした。

 委員会では、産んだ女性を母とする現行民法を適用することで、誕生と同時に、司法判断を待つことなく一律に親を確定することができ、子どもの法的地位の安定につながるとした。

 そのうえで現実には養育を望む夫婦に育てられるのが子どもにとって最も幸福であるとし、養子縁組や特別養子縁組が認められてよいとの考えを示した。」




(3) 毎日新聞平成20年1月31日付朝刊2面(13版)

代理出産「養子縁組で親子容認」 学術会議検討委、結論は持ち越し

 不妊夫婦の受精卵で他の女性が妊娠・出産する代理出産について、日本学術会議の検討委員会は30日、「生まれた子の母は出産した女性とし、依頼夫婦とは養子や(戸籍上ほぼ実子と同様に扱う)特別養子縁組によって親子関係を認めてもよい」とする報告書案を示した。代理出産の是非は、一部容認を求める意見があったため、前回案の「法律で一律禁止すべきだ」を「禁止すべきだ」と弱めた。しかし、まだ異論があり、結論は持ち越した。

 親子関係の規定については、「血のつながりがある子を実子と認めないのは不当だ」との批判が出た。(以下、省略)」





3.検討委員会は、やっと子供の法的地位についての案を決定する気になったようです。しかし、やはりというべきか、結論は持ち越しとなりました。

(1) 3つの記事を見ると報告書案に2通りあることが分かります。どちらが正しいのか不明ですが。

産経新聞が紹介する案は、「法的地位は従来の「養子」に加え、裁判所の認定で依頼夫婦の実子にする選択肢を用意」という併用案ですが、これに対して、朝日・毎日が紹介する案は、「生まれた子の母は出産した女性とし、依頼夫婦とは養子や(戸籍上ほぼ実子と同様に扱う)特別養子縁組によって親子関係を認めてもよい」とする案です。

いずれの案にしても、フランスと異なり、代理出産関係者のうちから法律上の親と認めたことは妥当なことです。代理出産の是非を問わず、生まれた子供に対して養育監護という保護は必要であり、子供にとって代理出産関係者を法律上の親とすることが最も適しているからです。



(2) まず、産経新聞が紹介する案から検討します。

もし産経新聞が紹介するように、依頼夫婦の実子にする案は妥当であり、もし実子にする案を認めたのであれば高く評価したいと思います。

親の決定は、生物学的(遺伝的)な血縁が原則であり、血縁を第一に考え、例外はその他の要素(依頼者・協力者の意思、養育の責任)を加味することが妥当であると考えます(遠藤直哉「生殖補助医療支援基本法の制定の必要性――学術会議(生殖補助医療の在り方検討委員会)への申入書」法律時報80巻1号90頁)。分娩の事実は、出産した子と母との血縁関係を推定するものという位置づけで足りるというべきです。

なぜなら、日本民法は血族で親族関係を決定しているのですから、遺伝的な繋がりを基本として身分関係を定めているのであり、また、子供の福祉を重視するのが親子法制の基本原則ですから、その親子法制の基本原則を重視すれば、養育の責任をもつ者は代理出産依頼夫婦しかいないからです。

このように考えれば、依頼夫婦の実子とする案は妥当なものであるといえるのです。

また、(夫婦の精子と卵子を提供した)代理出産依頼夫婦は、実子をもうけ養育したいという意図で代理出産を依頼し、代理母も代理出産依頼夫婦のために懐胎するのですから、関係当事者の意思に合致ということも可能でしょう。


ただし、併用案は中途半端な感じがします。

代理出産依頼夫婦にとって、将来、深刻な問題は子供に対して出自をどうやって説明するかです。多くの親が出自を説明していない状況であるのに、代理出産だけでなく、わざわざ養子縁組という負荷を負わせることを選択すれば、余計に子供に対して出自を説明できなくなります。

また、依頼夫婦の実子にすることが可能であるのに、あえて戸籍上一目瞭然な養子縁組を選択する夫婦がいるとは思えません。

記事によれば、併用案を採用することで、「その後の影響を比較する」ようですが、実子のみが選択され、養子縁組を選択しないという「比較」しかできないように思われます。



(3) 次に、朝日・毎日が紹介する養子縁組案はどうでしょうか?

この養子縁組案には多くの欠点があります。箇条書きしておくことにします。

<1>他人の子供との間で親子関係を形成するのが養子縁組制度であるから、実子との間で養子縁組とすることは養子制度に反する。血のつながりがある子供であるのに、なぜ実子と認めずに養子にしなければならないのか、という素直な感覚に答えることが困難である。

<2>諸外国の養子縁組は、裁判所が関与する制度であって、離縁ができないか離縁が著しく困難であるため、養子縁組にしても子の保護に欠けることはない。しかし、日本の養子縁組は離縁が可能であるため、子の保護が不十分である。もし万が一、代理出産依頼者が離縁した場合、その子供は養育監護を受ける利益を失ってしまう。

<3>代理母を実母とする扱いは、代理出産関係者すべての意思に反する。代理母依頼者は自己が法律上の親となる意思を有しているのであり、また、代理母は依頼夫婦のために懐胎するのであって、自ら養育するために代理母依頼を受けたわけではないからである。

<4>代理母を実母とする扱いは、その子供が代理母の相続人となり、代理母に養育監護する義務が生じることになるが、そのような法律関係が生じることは、代理母側の意思に反する。

<5>「産んだ女性を母とする現行民法を適用することで、誕生と同時に、司法判断を待つことなく一律に親を確定することができ、子どもの法的地位の安定につながる」という理解自体が妥当でない。離婚後300日規定の問題で分かるように、子供が戸籍などに記載されて初めて子供の法的地位が安定するのである。だから、誕生前から裁判所が関与していれば、子供の法的地位が安定する。





4.これで報告書素案がすべて出たことになりますが、この案は、代理出産を原則禁止、養子縁組という形で子の保護を認める(ただし、子の保護は不十分)、国家による管理を行う、営利目的での代理出産の関係者(代理母を除く)を処罰するという特徴を有しています。

これは、全体的としてはドイツ型の規制を採用したと評価できます。ドイツ型規制は、代理出産禁止、代理出産依頼者との養子縁組を肯定、連邦医師会による管理、代理出産関係者(代理母と依頼者夫婦を除く)を処罰する、という特徴があり、ほぼ一致するからです。


(1) ドイツ型規制は、人間の尊厳は受精の時点から始まるという見地から行うものであり、受精卵の段階から生まれるまで子供の間の保護を行っているわけです。だからこそ、1990年に「胚保護法」を制定して、胚の実験使用の禁止、代理出産の禁止を行いますが、生まれた以上はその子の救済は行うべきと理解しているわけです。これらは、「自己決定権を行使できないから規制する」というわけではないことに注意を要します。

ところが、報告書案(日本型規制)の場合は、「家」を重視する日本では強制や誘導が懸念されるという点を強調して規制を行おうとしています。言い換えれば、日本ではいまだに「家制度」が事実上存在しており、日本は自己決定権を行使できるほど成熟した社会でもないし、女性の地位は低くく周囲に意思決定を左右されやすいので、自己決定権を抑制した方が女性の利益になるということです。

そのため、報告書案(日本型規制)に対しては、<1>代理母はすべて被害者という扱いはおかしい、<2>代理出産依頼者を処罰するが、依頼者もまた親族の圧力による「被害者」ともいえるのだから、処罰対象にするのはおかしい、<3>代理母に対する強制は強要罪(刑法223条)という刑事罰で規制することが可能であり、代理出産は長期間、多数の関係者が関与するのですから、「強制や誘導」から逃れる機会は十分にある、との批判に対して反論ができないのです。

しかも、ドイツ型規制を含めた諸外国と異なり、日本の養子縁組は離縁が可能であるなど子供の保護が弱いのです。報告書案は、代理母を「被害者」扱いすることだけに専念してしまい、代理母よりもずっと弱い立場である、代理出産から産まれた子供の保護が疎かになってしまっているのです。



(2) ドイツ型規制では、ナチスドイツ時代を髣髴とさせるような国家による規制を避け、連邦医師会が管理を行うのですが、報告書案(日本型規制)はなぜかフランス型規制のように国家(行政)による管理下に置くことにしています。

なぜ、ドイツ法規制のように、代理母など医学的な見地からの判断能力のある医師会の管理下におくことにせず、国の管理下にしたのか、不可解な感じがします。

他者に害を及ぼさない行為には法は介入しない、というのが自由主義社会の基本です。また、生殖自体、生物としての人(ヒト)の最も基本的な営みであり、子供を持つことは生殖として人間として本源的な欲求であるのだから、個人の自由の問題です。

それなのに、なぜ、自由な意思で代理出産を行うことに対して、国家の厳重な管理下におくのか、その理由が明確でないように思われます。「データ収集のため」であるなら、代理出産は人体実験のつもりなのかという批判を受けてしまうでしょう。



(3) このような検討をしてみると、報告書案は、代理出産を禁止するドイツ型規制を基にした規制にしようとしているのですが、ドイツ型規制と異質な「家制度」を根拠にして、ドイツ型規制にしようとしているために、ちぐはぐな規制になってしまっているように思えるのです。

昨年2~3月に厚労省が実施した国民意識調査では、54%が代理出産を容認するとしており、代理出産から生まれた子供を代理出産依頼夫婦の実子として認める意見の方が多数なのです。この結果については、日本では血のつながりを重視するという意識が強いからと評価されています。

血のつながりを重視する意識が根強い日本社会において、報告書案のように、血のつながりのある子供が実子でなく養子となるとすることは、日本社会の意識に合致しない法規制となってしまいます。また、日本の親子法は血族を基本としており、家族法自体も血縁関係を基礎にしているのですから、血のつながりのある子供を実子にしないことは、親子法の基本からしても実に不自然です。


検討委員会の中にはフランス法の家族法こそが素晴らしいものであるとして、常にフランス法を引き合いに出して日本法を批判を行う家族法学者(水野紀子教授)もいます。こういう学者にとっては、生殖補助医療すべてフランス法規制(代理出産禁止、子供の救済なし、国家による管理)で行いたいのでしょう。

しかし、ドイツ法規制やフランス法規制はその国民性や全体的な法制度が背景にあり、それぞれ国民性に合致した別個の規制根拠に基づいているのですから、ドイツ法規制やフランス法規制をそのまま取り入れることは困難です。

むしろ、現在の日本法は、米国の法規制に合わせた法規制・法改正が多く、法理論的にも米国のものをとりれることが多く、日本社会も米国文化を取り入れることが多いのです。日本は米国の属国であると揶揄されるほどですから、生殖補助医療への規制も、代理出産を容認する米国の法規制を取り入れる方が、現在の日本の法規制の方向性と合致しているのです。

代理出産を厳しく規制している、ドイツ法規制やフランス法規制を金科玉条として日本法に無理やり取り入れようとするよりも、現在の日本法や日本社会の意識に合致する方向での法規制にすることこそが妥当なのであり、選択の自由を保障する方向での法規制を行うべきなのです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/833-9db59a51
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
   \"七福神\"(1月)から、  \"かまくら\"(2月)にバトンタッチ。     皆様のご支援に感謝致します! ありがとう!     2月(如月)もヨロシクです! ●昭和毎日ニュース 阪神と契約の江川、6時間後に巨人・小?...
2008/02/01(金) 22:49:26 | 晴天とら日和
裁判・司法・刑事政策に関するマスコミの報道は全般的に歪んでおり、これについて理解することは、たとえば死刑を廃止した場合の刑罰体系等について語るにおいても重要となってくると思います(なお、私は死刑賛成者です)。まあマスコミの報道も必ずしも全てが意図的とい...
2008/02/02(土) 01:20:24 | 無期懲役刑に関する誤解の蔓延を防止するためのブログ
無期懲役刑に関する誤解の蔓延を防止するためのホームページ 誤った認識により日本の現行の無期懲役刑が著しく過小評価されている現状を憂い、正確な情報を広めるべく立ち上げたホームページです。是非ご覧ください。 また、ホームページまたはブログをお持ちの方で...
2008/02/02(土) 01:20:52 | 無期懲役刑に関する誤解の蔓延を防止するためのブログ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。