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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/01/24 [Thu] 17:51:33 » E d i t
近時、日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」に対して、「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」とする学術会議報告書素案が提出され、検討されたとの報道がありました(素案の検討については、「「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」の学術会議報告書素案提示(上)~委員会では賛否両論で結論持ち越し」「「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」の学術会議報告書素案提示(下)~憲法に対する意識、日本人の生き方が問われている問題である」をご覧ください)。


1.その素案では子供の法的地位の問題、生まれてきた子供の出自を知る権利、第三者の配偶子(卵子又は精子)の提供については触れておらず、検討委員会の作業部会は結論を出すことを諦めてしまったのです。

「生まれた子が出自を知る権利の確保や、第三者から卵子などの提供を受ける不妊治療の是非についても検討課題だったが、「十分な検討時間がない」として、結論を出さないことにした。」(毎日新聞平成20年1月19日付朝刊30面)



第三者の生殖により生まれた子の法的地位は、日本法では明文規定がなく、しかも母子関係を決定する規定さえもないため、かなり不安定な状況であり、一刻の猶予もないのです。子の法的身分関係が不安定となると、養育監護を受ける権利が保障されないなど「子の保護」が危うくなるのですから、「子の保護」を最優先とする(比較法的にも)親子法制の基本原則に著しく反している状態なのです。

ですから、なぜ作業部会は、子供の出自を知る権利や、第三者の配偶子(卵子又は精子)の提供につき、なぜ結論を出さなかったのか疑問に感じたと思います。では、学術会議報告書素案が出自を知る権利や配偶子提供の是非につき沈黙したのはなぜでしょうか? 

検討委員会作業部会の委員に見識がなかったことが最大の理由でしょうが、最近の海外事情を知ったことで、結論が出せなくなってしまったのではないかと推測しています。そこで、海外における配偶子提供の現状に関して報告した論文(石原 理・他『卵子提供,代理懐胎(IVFサロガシー)の実態と展望』 臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1496頁)を紹介しつつ、説明していきたいと思います。


臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)の論文を紹介する前に。

ネットでの議論を見ると、古い海外データを使い、1980年代のフェミニストグループやカトリック教会の主張をそのまま受け売りにして、代理出産などの生殖補助医療を巡る問題に関して強行に反対する方が多いようです。誰がその主張をしているのか、なぜ探らないのでしょうか? 日本ではこんなにもフェミニズム――しかも1980年代半ばの――を肯定する意識が増えて、いつの間にカトリック教会(バチカン)の信者が増大したのだろうかと皮肉りたくなります。

そして、代理出産などの生殖補助医療を巡る問題は、どのような立法を行うかの段階に入っているのです(立法論)から、関連する法分野(憲法、民法、刑法、国際私法、国際民事訴訟法)に目を配りつつ法律的な議論を行うことが不可欠なのです。しかし、代理出産などの生殖補助医療を巡る問題に関して、幅広い法分野の問題であることを意識しつつ法律的な議論をして、否定的に論じている方は皆無です。少なくとも、もっと法律論であることを意識して論じるべきではないでしょうか。「向井亜紀さんが気に食わないから代理出産に反対」だといった趣旨のことを述べている方もいますが、あまりにも情けないと思うのです。



2.まずは、海外、特にヨーロッパ諸国における配偶子の提供の現況です。

(1) 日本産科婦人科学会は、会告で体外受精などの生殖医療を夫婦間に限定し、第三者に由来する配偶子(卵子又は精子)や胚、あるいは代理懐胎(IVFサロガシー)など第三者の関与する生殖医療の実施をすべて禁止しています。

しかし、配偶子提供について完全に禁止している日本の状況は、国際的には異例な状況です。

「配偶子や胚の提供に関する最近注目された事件として、従来、まったく法規制が存在しなかったイタリアにおいて、2004年2月にバチカン主導で成立した、きわめて制限的な生殖医療関連の法制定がある……。しかし、ほとんどのヨーロッパ諸国において、すでに配偶子提供それ自体は日常診療として完全に確立しているというべきであろう。むしろ、すでにESHREのSIGから2002年に報告されているように、配偶子提供における問題点の焦点は、<1>提供者の匿名性、<2>提供者への経費など補償の可否、<3>提供者と被提供者のスクリーニングと同意の重要性、の3点に絞られているのである。」(臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1497頁)



イタリアでは、カトリック教会の影響力が強いため、2004年、第三者の配偶子の提供を禁止する立法を行ってしまいましたが、ほとんどのヨーロッパ諸国では配偶子(精子及び卵子)の提供は認めており(ただし、ノルウェーでは卵子提供は禁止)、日常診療として確立しているのです。もはや、配偶子の提供を認める前提で、提供者の匿名性などの問題点の解決が課題になっているのです。



(2) 生まれた子が出自を知る権利、すなわち「提供者の匿名性」については、次のような状況です。

  イ:ヨーロッパ諸国の法改定状況と現実の実態は次のようなものです。

 「なかでも「提供者の匿名性」の問題は、きわめて大きな課題である。

 この問題の背景には、AID(非配偶者人工授精:DI)により出生した子供たちのなかから、自らの出自を知ることがアイデンティティ確立のために必要であるとする要求が各国で強く出されたことがある。なぜなら従来AIDを受けたことを子どもに伝えていたカップルの比率は、例えばきわめて最近のBBC番組によれば英国では10%未満にすぎず、70%以上のカップルは今後も伝えるつもりはないという。……最近の法改定の傾向として、特に北欧や英国を中心に、提供者の匿名性を廃止する方向にあtったのは事実である。しかし、きわめて最近になって、この方向性にはやや見直しの兆しがある。スペインは2006年に、提供配偶子により出生した児には一般情報は提供するが、提供者の住所、氏名までは教えないことを法律で明確にした。ベルギーでは、現在まで提供者の匿名性に関して法制定に至らない理由として、現在の被提供者による匿名と非匿名の選択を許す状況を継続する意図がある。また、フランスでは現在、提供者は匿名であり、次回2009年に生殖倫理法の改定予定であるが、……世論調査の結果では、79%が配偶子提供者の匿名性維持に賛成したという。したがってフランスでは今後も、匿名性が維持される可能性が高いと考えられる。(中略)

 匿名性についていえば、米国では匿名、非匿名の並立であり、商業ベースというべき多額の費用をドナーに支払う場合が多いが、一方、非匿名・無償で精子提供者を募っている組織もあり、さまざまである。
」(臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1497頁)



 「1985年に精子提供者の匿名性を廃止したスウェーデンの状況を注視する必要がある。スウェーデンではDIにより出生した子供たちが18歳で、精子提供者を知ることができるようになったわけだが、2003年から現在に至るまで、提供者のアイデンティティ開示を求めた例はない。(中略)

 2005年に匿名性を廃止した英国で起こったこととは、提供者の激減と第三者配偶子を必要とするカップルの海外渡航による治療である。……提供配偶子を求める英国のカップルは、匿名性が維持され卵子提供者が多数存在するスペインやギリシャ、南アフリカへと渡航する。近い将来の提供者匿名性廃止が決まったフィンランドでも、匿名配偶子を求め、すでにエストニアなどのバルト三国への渡航治療が増加しているという。」(臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1498頁)



要するに、「提供者の匿名性」については、ヨーロッパ諸国では「提供者匿名性廃止」の法制定を行ってきていたのですが、法律上見直しの兆しがあり、匿名性廃止を行った結果、提供者が激減し、提供配偶子を求めるカップルは匿名性を維持している国へ渡航するようになってしまったのです。

ただし、「遺伝性疾患が出生子に出現したときのために、提供者を追跡可能にしておくシステムは必須であると各国で考えらられている」(臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1498頁)とのことですから、出生した子供に出自を知る権利がないとしても、すべての情報が非公開のままというわけではありません。


  ロ:最近、英国の男女が双子であることを知らないまま結婚していたことが判明し、英高等法院(裁判所)が「近親婚」であるとして婚姻の無効を決定したという報道がありましたが(読売新聞平成20年1月12日付夕刊14面「別々に育った「双子」知らずに結婚、英高等法院が無効決定」など)、上で述べたような事情が背景にあったのです。そう簡単な問題ではないことが分かると思います。

別々に育った双子が結婚 英国、事情知らされず…解消
2008年1月12日 10時56分

 【ロンドン11日共同】英国で生後間もなく別々の家庭に養子として引き取られた双子の男女が、事情を知らされないまま成人して恋愛結婚し、後に実のきょうだいであることが判明して婚姻関係を解消した事例があったことが11日、明らかになった。英主要メディアが一斉に報じた。

 2人の身元や知り合った経緯、双子の事実が分かった理由などの詳細は明らかにされていない。英高等法院が2人の訴えを受け、既に結婚を無効とする決定を下したという。

 報道によると、英議会では生殖補助医療の在り方などを規定する法改正案を審議中で、非配偶者間人工授精(AID)で生まれた人の「出自を知る権利」推進を訴えるアルトン上院議員(無所属)が今回の双子の事例を挙げて問題を提起した。

 アルトン氏はこのような悲劇を起こさないためにも「子どもの知る権利は最優先に位置付けられるべきだ」と語った。」(東京新聞平成20年1月12日付夕刊11面




  ハ:では、日本において配偶子提供問題についてどのように考えるべきでしょうか? 

『卵子提供,代理懐胎(IVFサロガシー)の実態と展望』 臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)の筆者は次のように主張しています。

「提供配偶子を使用する生殖医療を日本で可能とするのであれば、提供者を追跡可能にするシステムがあるという前提で、提供者の匿名性についてはdouble track(匿名と非匿名をともに可能にする)を選択する方向に現実性があると、筆者は考える。なお、known donor、例えば友人や親族(兄弟姉妹)が配偶子を提供する例は各国で相当の割合があり、このシステムが問題化したことはないとされる。これらの場合、そもそもknown donorであるから、匿名性がもとよりないことはいうまでもない。家族関係が複雑になるという理由でknown donorからの提供を認めないとする厚生科学審議会生殖補助医療部会の考え方は、国際的にみてきわめて異例な突出した考え方というべきであろう。」(臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1498頁)


このシステムは、ベルギーや米国で実施しているものと同様であり、このシステムが妥当であると考えます。匿名性を維持すると配偶子提供者がいなくなり、配偶子を求めるカップルは海外渡航することになってしまうだけでなく、このシステムが問題化したことがないという実績もあるからです。

友人や親族(兄弟姉妹)が配偶子を提供する例が各国で相当の割合であるように、親しい関係にある者が提供することがもっとも現実的です。日本においても、全国20の不妊治療クリニックがつくる「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」は、「現段階では匿名の第三者から卵子の提供を受けることは難しい」ことが分かっています(「友人・姉妹間の卵子提供肯定へ~不妊治療団体倫理委が容認」(2007/04/30(月) 23:29:54)参照)。

厚生科学審議会生殖補助医療部会(厚労省の報告書)が友人や姉妹の卵子提供を認めなかったのは、例えば姉妹間の提供だと、子供の「遺伝上の親」が近くにいて親子関係が複雑化する、周囲から「なぜ卵子を提供してあげないのか」などと圧力を受けるなどの可能性が指摘されたためです。

しかし、このシステムが問題化していないという現実からすると、友人や姉妹の卵子提供を否定した理由が机上の空論であり妥当でなかったことは明白です。また、提供者の匿名性を維持すれば、子の出自を知る権利は保障されないままになり妥当ではありません。配偶子提供者を確保しつつ、子の出自を知る権利を保障するには、友人や親族(兄弟姉妹)が配偶子を提供することを認めることが最も現実的なのです。

提供者匿名各国の実情を知れば、いかに厚労省の報告書が非現実的で机上の空論であり、「国際的にみてきわめて異例な突出した考え方」であることがよく分かるかと思います。



3.『卵子提供,代理懐胎(IVFサロガシー)の実態と展望』 臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)の筆者は、次のような主張を述べてまとめとしています。

「日本における第三者の関与する生殖医療について行われる議論の中心は、いまだに第三者が関与することの倫理的問題となることがしばしばある。しかし、完璧な結論や完全な合意など永遠に成立するはずもないこの議論に、いつまでも拘泥している間に、毎日、現実に子供たちが誕生している。

 直ちに着手すべきことは、生殖医療の発展に伴って「拡大した親子関係」を子どもたち当事者の利益を守るという視点に立って、法的に明らかにすることである。親子の定義としては、おそらく分娩した女性を子どもの母親と規定することが最も合意が容易であろう。しかし、(生物学的でない)社会的な母親と父親の権利と義務を同時に明確化することが、第三者配偶子による子供たちばかりでなく、養子やさまざまなステップファミリーを含む家族において、暗黙の了解や思い込みによるトラブルを回避する有用な術となろう。日本の社会においても、性同一性障害者の性別変更が可能になったこともはじめ、「多様な家族のあり方」が現実として存在していることを社会はすでに認知している。したがって、生殖医療に関する法的規制の内容についての議論は、「親子法」のあとでも、決して遅くはないと考える。」(臨床婦人科産科2007年12月号(61巻12号)1500頁)。


要するに、まず生殖医療を含めた「親子法」について明文化するべきであり、生殖医療に関する法的規制の内容についての議論は後回しでよいのであって、「親子」の決定については、分娩した女性を母親とすることで合意しやすいとしても、(その分娩した女性を母とする定めを置きつつも?)養育監護する意思のある者(社会的な母親と父親)を親として権利義務を定める方が妥当であると主張するのです。それが、生殖医療に伴う子供だけなく、様々な親子関係での法的身分関係に関する紛争を解決することにつながるのであり、また、国際社会と同様に日本社会も、「多様な家族のあり方」が現実として存在していることをすでに認知しているのだから。

このような考え方は、「「代理出産への扉」(日経新聞12月24・31日付)の批判的検討(下)」で示した見解と基本的に同じであり、妥当な考え方だと思います。


「日本生殖医学会の石原理・倫理委員長(埼玉医大教授)は『代理出産で生まれたことが明らかな子供たちがいる。最優先に議論が必要なのは、この子供たちを法で実子と認めるかどうかだ。代理出産が日本で許されるかどうかは、その後の話だ』と強調している。」(読売新聞平成19年4月29日付(日曜)15面「生命を問う 不妊治療(2)」)



「仮に両親が、禁止された生殖補助医療を行った場合でも、生まれてきた子どもにその尻ぬぐいをさせるのは一般的には考えられない。その子にとって最大の利益が図れるよう対処することが望ましい。」(読売新聞平成19年6月17日付19面「生命を問う 不妊治療(8)」検討委員会委員で生命倫理が専門の加藤尚武・東京大医学部特任教授の発言)



(検討委員会の作業部会委員と異なり)現実感覚のある法律学者及び医学者の立場は、すでに一致しています。市民の側も、今おかれている子供たちの現実を直視して、「多様な家族のあり方」を認める社会に即した態度が求められているのです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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