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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2008/01/19 [Sat] 21:04:44 » E d i t
代理出産の是非を検討していた日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)の作業部会が、代理出産を新法で原則禁止すべきだとする報告書素案をまとめ、1月18日の会合で報告書素案を提示しました。委員からは厳しい条件付きで例外的な実施を認める意見なども出され、賛否両論が巻き起こり、結論は1月30日に持ち越しとなりました。この報道についてコメントしたいと思います。


1.検討委員会の作業部会による素案は、作業部会委員によるリーク報道が1月17日付朝刊(中日、東京、日経)や同日夕刊(読売)で行われていました。これらは、共同通信の記事と酷似していることから(  【共同通信】「代理出産、新法で禁止を 学術会議検討委が素案」(2008/01/17 02:05)参照)、元々共同通信の記者にリークしたものと思われます。そのリーク報道を2つ引用しておきます。

(1) 中日新聞平成20年1月17日付朝刊

代理出産「新法で禁止」 処罰は営利限定に
2008年1月17日 朝刊

 子どもを持てない夫婦が妻以外の女性に出産してもらう、代理出産の是非を検討していた日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)の作業部会が、代理出産を新法で禁止すべきだとする報告書素案をまとめたことが16日分かった。

 処罰の対象は営利目的での実施に限定。すべての代理出産を罰則付きで禁止すべきだとした2003年の厚生労働省部会の結論をやや緩和した。18日の検討委会合に示される。

 検討委は素案をたたき台に、今月中にも報告書案をまとめるが、素案通りの結論となった場合は、代理出産の容認派、反対派双方から異論が予想される。

 素案は、夫婦の精子と卵子を用いた、いわゆる「借り腹」による代理出産について検討。代理母となる女性が被る身体的・精神的負担や、生まれてくる子どもの心に与える影響など深刻な問題があり、代理母が危険を承知で引き受けたとしても「自己決定が十分と言えるか疑問がある」とした。

 規制策については「医療者の自律と責任に委ねられる段階を超えている」と、学会の自主規制の限界を指摘。新法で基本的に禁止すべきだとした。

 一方、代理出産すべてが人々に害を及ぼす犯罪とは言えないとして、処罰は、対価を得るなど営利目的の場合に限定。少なくともあっせん者と医師は処罰し、国外犯も罰すべきだとの考えを示した。代理母は対象から外した。

 営利目的でない場合に処罰はないが、関与した医師の保険医指定を取り消すなどの制裁により、抑止は十分可能だと判断した。検討委は代理出産の是非のほか、生まれた子の法的地位などについても見解をまとめ、報告書案に盛り込む予定だ。」




(2) 日経新聞平成20年1月17日付朝刊42面

代理出産、法律で原則禁止  学術会議素案、研究の必要性は認める

 代理出産の是非を議論している日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東大名誉教授)の報告書素案が16日明らかになった。法律で代理出産を原則禁止し、営利目的については処罰すべきだとしている。ただ国の管理下で厳格な条件を定めて、代理出産を研究する必要性は認めた。

 素案は18日の会合に提示。一般の意見も聞いた上で2月にも決定する。ただ委員の意見は分かれており、素案通りにまとまるかは不透明だ。

 代理出産を巡っては厚生労働省の専門部会が2003年、罰則付きで禁止する報告書を策定。法制化は棚上げされたが、日本産科婦人科学会が自主規制で禁止してきた。今回の素案は原則禁止としながらも、将来的に容認する道を残した。

 報告書素案では、代理出産を引き受ける代理母に身体的・精神的に負担がかかるほか、生まれる子どもの心に深刻な影響がある問題点を挙げた。学会の規制では限界があることから、法律で基本的に禁止。処罰の規定がなくてもあえて実施する医師がいるとは考えにくいとして、処罰対象は営利目的のみに絞った。

 ただ、世論では容認派が過半数を占めているほか、子宮がないなどの理由で妊娠・出産できない女性が、遺伝的につながりがある子どもを持つ手段として限定的な容認を求める声が根強い。

 そこで、素案では代理出産の是非を判断できる十分な科学的データがない現状に言及した。国の管理下で代理出産を依頼できる女性の要件などを限定、生まれた子どもや代理出産を依頼した夫婦、代理母、社会に対してどのような結果をもたらすか、詳しく研究する必要性があるとした。(07:00)」

(*紙面には解説記事もあるが、省略)



このリーク報道は、ある程度正しい素案内容だったのですが、間違っていた部分もあるなど不正確な内容でしたし、素案は検討委員会のうちでも代理出産強硬反対派の立場そのものですから、当然委員会の委員からの批判があり得るはずでそのまま受け入れがたいものであるばかりでなく、会合前に(=委員の同意なく)リーク報道をしてよいのかどうか問題でした。ですから、検討委員会の委員の多くは、このリーク報道を不快に思ったはずです。(ですから、このブログでも、18日の会合前まで触れませんでした)

リークを行ったのは作業部会の委員でしょうが、こういう不正確(=歪んだ)で委員の同意のない身勝手なリークは妥当ではありません。レストア腎移植(病気腎移植)問題でも、不正確で間違ったリーク報道が相次いでおり、妥当ではありませんでした(「病気腎移植は学会と現場にギャップ~田辺功 (著)『ドキュメント医療危機』より」参照)。

こういう一方の意見のみ(代理出産強硬反対派の作業部会委員)を有利に事を運ぼうというあざとい意図での、政治的なリークは止めるべきです。日本学術会議は、学者らしい冷静な行動を行うべきであり、政治家集団の集まりのような行動をすべきではないのですから。




2.では、1月18日の会合に関する報道記事を幾つか。

(1) 時事通信(2008/01/18-20:50)

代理出産、法律で禁止を=営利目的には罰則-学術会議報告書案

 第三者の女性に子供を産んでもらう「代理出産」について、日本学術会議の検討委員会が18日開かれ、法律で禁止すべきだとする報告書の素案が示された。営利目的の場合には罰則を科すとしている。一方、現状では是非を判断するだけの十分な科学的データがないとし、厳格な要件と管理の下での試行的実施の可能性を示した。
 ただ、委員の間で統一した見解に至っておらず、最終的な結論を出すまでにはなお曲折が予想される。会期は今月までだったが、2カ月間の延長を決定。今月31日に公開講演会を開き、その内容も踏まえ、年度内に報告書をまとめる予定。」




(2) 日経新聞平成20年1月19日付朝刊

代理出産、原則禁止に賛否・学術会議が素案提示、結論持ち越し

 不妊の夫婦が妻以外の女性に子どもを産んでもらう代理出産の是非を議論している日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東大名誉教授)は18日、会合を開き、法律で原則禁止すべきだとする報告書素案を提示した。委員からは厳しい条件付きで例外的な実施を認める意見なども出され、賛否両論が巻き起こった。結論は30日の次回会合以降へ持ち越された。

 素案は法律で代理出産を原則禁止し、営利目的の場合には刑事罰を科す内容。代理出産を引き受ける代理母に身体的・精神的に負担がかかるほか、生まれる子どもの心に深刻な問題を及ぼす可能性などを挙げた。処罰の規定がなくてもあえて実施する医師がいるとは考えにくいとして、処罰対象は営利目的のみに絞った。

 ただ現時点では代理母や誕生する子ども、代理母の実子など、代理出産を実施した場合にどのような影響が関係者の心身両面に生じるのか詳しい科学的データがない。このため素案は国の管理下で厳しい条件を設け、試験的に実施・研究する必要性も認めた。代理出産の是非を将来再検討する判断材料とする狙いだ。

 素案が提示されたこの日の会合では「一律に禁止すべきだ」との表現に「なぜ断定的な結論を出すのか」と両論併記を求める意見が出たほか、営利目的以外に刑事罰を科さない点には賛成と反対の対立する意見が表明された。

 試験的に実施することについては「実際やるとすれば大変なこと」など、実効性に疑問の声も上った。

 検討委は今月中に審議を終える予定だったが、議論が紛糾したため、3月末まで審議期間を延長する方針を決めた。

 代理出産を巡っては厚生労働省の専門部会が2003年、罰則付きで禁止する報告書を策定。法制化は棚上げされたが、日本産科婦人科学会が自主規制で禁止してきた。

 ただ世論は容認派が過半数を占め、子宮がないなどの理由で妊娠・出産できない女性が遺伝的につながりのある子どもを持つための唯一の手段として限定的な容認を求める声が根強い。
(07:00) 」





3.この素案に関しては、日本政府や国会議員は非常に戸惑ったことと思います。

(1) 柳沢厚労相(当時)は、平成19年4月13日の閣議後会見で、「細い道かもしれないけれども、(日本学術会議には代理出産を認める道は)ないかということを議論いただいている」と話している(大臣等記者会見 閣議後記者会見概要 H19.04.13(金)08:50~09:00)ことから、日本政府は日本学術会議に対して、代理出産を容認する前提で検討を依頼していることが明らかになっています。

このように日本政府は、代理出産を肯定する方向で要望していたのですから、非常に戸惑ったと思います(日本政府は見解を明確にしていません。今後、肯定的な見解を表明したとしても本音としては)。


元々、2003年厚生労働省部会が罰則付きで代理出産一律禁止の報告書を提出したところ、国会議員などから批判を受けて立法化しなかったのですから、まして現在、世論の多数が代理出産を認める現状において、国会において代理出産一律禁止を認める方向にはなりにくいのです。しかも、日本産科婦人科学会も代理出産を肯定する場合には、素早く対応するとの意見を持っているのです。

民主党の小宮山洋子議員、自民党の山際大志郎議員、野田聖子議員らと超党派で作った勉強会は、議員立法での法案提出を予定しています。その内容は、生殖補助医療は原則自由、患者主体で行えるとする特例法であり、検討委員会素案とは対極にある内容なのです(「野田聖子議員が語る「代理出産は認めるべき」~nikkeiBPnet(12月1日)より」(2006/12/23(土) 23:14:44))。


このように、代理出産一律禁止の素案のままで立法化する見通しはほとんどないのですから、何のために検討委員会がそのような素案を出すのか不可解です。日本政府としては意向に反する素案だからといって依頼した以上無視するわけにはいかず、かといって意向に反する素案をそのまま採用することもできません。日本政府としては、世論に反する素案であることを理由に大幅な骨抜きを行っていくことになるのだろうと予測しています。



(2) 検討委員会素案は、事前規制型の法律、しかも事前規制だけでなく事後規制も強いものです。

取引法や家族法問わず、戦後、政府は、事前規制重視の法律を制定し、規制と指導を通して自由な活動・自由な権利行使を許しませんでした。しかし、1990年代以降、銀行による大蔵官僚(当時)接待が問題になるなど、官僚のモラル低下が見られるようになると、官僚が事前に指導や規制をするのではなく、自由な活動や自由な権利行使をさせた上で、事後的に取り締まる行政手法へ転換していっています。いわゆる事前規制型社会から事後規制型社会への転換、(昔ながらの)大陸法型の法規制から英米法型の法規制へと転換していっているのです。

事前規制から事後規制へと変化しているのは、社会の変化激しい現在、いつまでも事前規制をかけていると自由な発想ができず、自由な行動ができなくなり、国民が社会の変化に対応できなくなってしまうのであり、また、事前規制が科学や発明などの進歩・発展を阻害して関係者の創意工夫を削ぐため、国益に反することになるからです。事前規制+非公開という態度よりも、事後規制+公開の方を選択する方がよりよい結果が得られるわけです。

一人ひとりの自分の価値観や行動様式が多様化し、そういった価値観の多様性を肯定する社会(個人の尊厳や憲法13条は、価値観の多様性を肯定している)に変化しているため、事前規制が困難になっている点も重要です。


「日本の法律は、いまだにお上が国民をコントロールするためのテキストみたいな性格が強い。でもこれからの時代は、国民が主権者として、自分の人生をいろいろな選択肢から選べる、そのメニューの基本姿勢を示すものとして法律が存在しなくてはなりません。成熟した国家としてそういう方向に切りかえることがいちばん大事だと思う。」(野田聖子著『不器用』176頁)


代理出産を認める法律を制定することは、誰かに代理出産を強制することではなくて、特に女性にとって(代理出産という)選択の自由を認めることであって、現在の法律規制のあり方に沿ったものです。

代理出産は、健康な卵巣を持っていても子宮機能不全から妊娠出産がかなわない女性や、自分で生みたくでもキャリアなどの理由で妊娠適齢期を過ぎてしまった女性にとって大きな救いとなるものです。代理母として、代理出産を希望する女性への救いとなる行動をしたいと思う女性にとっても、選択の自由の行使を認めることになるのです。要するに、代理出産は、女性が思い通りに自分自身の人生を設計する一手段であるのです。


このように、今回の検討委員会素案は、再び事前規制社会、(昔ながらの)大陸法型の法規制、選択の自由を制限する日本の従来型の法律へ戻そうとするものです。検討委員会素案のような法規制は過去のものであって極めて妥当ではないのです。



続きは、「「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」の学術会議報告書素案提示(下)~憲法に対する意識、日本人の生き方が問われている問題である」で論じます。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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2008/01/22(火) 14:03:12 | りゅうちゃんミストラル
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