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2007/12/20 [Thu] 23:59:28 » E d i t
国連総会本会議は18日、死刑の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成104、反対54、棄権29で採択、決議が成立しました。決議案作成は欧州連合(EU)が主導したものです。日米中やシンガポール、中東諸国などが反対に回りましたが、賛成国数は104ですから、決議案を上程した第3委員会(人権)での99カ国より増えています。決議に法的拘束力はないのですが、死刑制度の見直しへ向けた国際圧力が高まるのは確実になってきました。

死刑執行停止を求める決議が、192の全加盟国が参加する本会議で採択されるのは極めて異例で、潘基文事務総長は歓迎の声明を出しています。

そして忘れてはならないことは、同日の国連総会本会議において、北朝鮮の人権侵害に「極めて深刻な懸念」を表明、外国人拉致問題の解決と拉致被害者の即時帰国を求める人権決議案をも採択、決議が成立したということです。同じく法的拘束力はない決議ですが。

では、この報道について触れたいと思います。(12月22日付追記:安保理決議につき記事を引用しました。)


1.まず報道記事についていくつか。

(1) 東京新聞平成19年12月19日付夕刊10面

死刑停止決議が成立 国連本会議日米中反対 賛成100カ国上回る
2007年12月19日 夕刊

 【ニューヨーク=共同】国連総会本会議は十八日、死刑の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成一〇四、反対五四、棄権二九で採択、決議が成立した。決議案作成は欧州連合(EU)が主導。

 日米中やシンガポール、中東諸国などが反対に回った。

 死刑執行停止を求める決議が、百九十二の全加盟国が参加する本会議で採択されるのは極めて異例で、潘基文(バン・キムン)事務総長は歓迎の声明を出した。賛成国数は、決議案を上程した第三委員会(人権)での九十九カ国より増えた。決議に法的拘束力はないが、死刑制度の是非をめぐる論議に一石を投じそうだ。

 決議は、死刑が「(犯罪)抑止に結び付くという確実な証拠はなく、死刑の誤判は取り返しがつかない」とした上で、死刑制度を定めている国に「死刑廃止を視野に死刑執行のモラトリアムの確立」を求めた。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、死刑制度を廃止したり、十年以上執行していない国は百三十カ国以上に上る。

 昨年は二十五カ国で少なくとも計千五百九十一人が死刑となり、うち中国だけで千十人を占めた。」




(2) 朝日新聞平成19年12月19日付夕刊12面(4版)

「死刑停止」を国連決議 日本反対、孤立深める
2007年12月19日11時36分

 【ニューヨーク=立野純二】国連総会は18日、死刑執行の停止を求める決議案を賛成多数で採択した。日本を含む死刑制度の存続国に対し国際世論の多数派が「深刻な懸念」を示した形だ。決議に法的拘束力はないが、存続国には死刑制度の状況を国連に報告するよう求めており、制度の見直しへ向けた国際圧力が高まるのは確実だ。

 国連加盟国192カ国のうち、欧州連合(EU)のほか、南米、アフリカ、アジア各地域の87カ国が決議の共同提案国になった。採決は、賛成104、反対54、棄権29。死刑制度を続けている日本、米国、中国、シンガポール、イランなどは反対した。

 決議は、人権尊重の意義や、死刑が犯罪を抑止する確証がないこと、誤審の場合は取り返しがつかないことなどを指摘。存続国に対し、執行の現状や死刑囚の権利保護を国連事務総長に報告▽死刑を適用する罪名の段階的な削減▽死刑制度の廃止を視野にした執行停止――などを求めている。

 採択後、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「世界の多様な地域から支持されて心強い。死刑廃止へ向けた潮流の証しだ」と歓迎の声明を出した。

 国連総会は71年と77年にも死刑に関する決議を採択した。当時は制度の乱用が問題視され、死刑の対象となる罪名の規制に力点を置き、廃止については「望ましい」との表現にとどまっていた。今回は廃止を視野に入れ、その前段階として存続国に執行の停止を求めたのが特徴だ。

 死刑廃止の動きはEUの主導で広がっている。国連総会での死刑廃止要求決議案は90年代に2回提案されて採択に至らなかったが、今回は「予想を超える大差の賛成数」(EU代表)になった。

 決議の内容を死刑の即時廃止ではなく、執行停止に緩めたことで中間派が賛成に回った事情もある。だが最大の主因は、廃止・停止に動く国々の急速な広がりだ。

 国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、77年当時、死刑を廃止した国は16だったが、現在は90。制度は残っていても執行を長期停止した韓国やロシアなどの停止国を加えると133カ国に達する(今年11月現在)。この10年間だけでも約30カ国が廃止・停止した。

 一方、存続国は中国、イラン、サウジアラビア、米国など64カ国。そのうち昨年中に執行した国は25カ国。死刑制度を維持し、実際に執行も続ける国は日本を含め世界の少数派になった。」(*見出しは紙面どおりに変更)




(3) 毎日新聞平成19年12月19日付夕刊1面(4版)

国連:死刑執行の一時停止求める決議案、初の採択

 【ニューヨーク小倉孝保】国連総会は18日、欧州連合(EU)などが提出した死刑執行の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成多数で採択した。国連が死刑のモラトリアム要求決議案を採択したのは初めて。総会決議に拘束力はないが、国際社会の多数意見を反映するものとして加盟国には一定の圧力となる。

 賛成はEUのほかトルコ、イスラエルなど104カ国。反対は日本、米国、中国など54カ国、棄権が韓国など29カ国。総会内の第3委員会(人道問題)が既に同決議案を採択していたが、総会の採択で正式な決議となった。日本はモラトリアムが憲法に反することなどを理由に一貫して決議案に反対した。

 この結果を受け、潘基文(バンギムン)国連事務総長は「国際社会の勇気ある一歩を象徴している。死刑廃止傾向が強まっていることの証拠だ」とする声明を発表した。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も「反人道的な処罰を終わらせることへの歴史的な一歩だ」と歓迎した。

 採択された決議案は▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する▽死刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める--とした。その上で、死刑執行を続ける国に対して▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす▽死刑廃止に向けてモラトリアムを行う--ことなどを求めている。

 EUはここ数年、決議案採択を目指してきたが、そのめどが立たず、提案を見送ってきた。国連人権委員会(現在の人権理事会)では「死刑に疑問を投げかける」決議案が採択されたことがある。

 米国では、ニュージャージー州が17日、同国で死刑が復活した76年以来初めて死刑制度を廃止するなど、死刑の是非を巡る議論が盛んになっている。

 元死刑囚、免田栄さんは10月、国連内の討論会で決議案への支持を訴えていた。

毎日新聞 2007年12月19日 11時12分」




(4) 国連総会本会議で採択された決議案は、

「採択された決議案は
▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する
▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する
▽死刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める--とした。
その上で、死刑執行を続ける国に対して
▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす
▽死刑廃止に向けてモラトリアムを行う--ことなどを求めている。」(毎日新聞平成19年12月19日付夕刊1面)

となっています。

「国連の委員会、“死刑執行一時停止”決議案を採択~日米などは反対したとのことだが……。」(2007/11/20(火) 23:59:41)で触れように、国連総会第3委員会(人道問題)で採択された決議案は、

「採択された決議案は
▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する
▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する
▽死刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める--としたうえで、
死刑執行を続けている国に対して
▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす
▽死刑廃止に向けてモラトリアムを作る--ことなど求めている。」(毎日新聞平成19年11月16日付東京夕刊)

としていたのですから、国連総会第3委員会での決議案と国連総会本会議の決議案は、全く同じであり、国連総会本会議も修正することなく決議したようです。



「死刑廃止の動きはEUの主導で広がっている。国連総会での死刑廃止要求決議案は90年代に2回提案されて採択に至らなかったが、今回は「予想を超える大差の賛成数」(EU代表)になった。

 決議の内容を死刑の即時廃止ではなく、執行停止に緩めたことで中間派が賛成に回った事情もある。だが最大の主因は、廃止・停止に動く国々の急速な広がりだ。

 国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、77年当時、死刑を廃止した国は16だったが、現在は90。制度は残っていても執行を長期停止した韓国やロシアなどの停止国を加えると133カ国に達する(今年11月現在)。この10年間だけでも約30カ国が廃止・停止した。」


90年代では採決に至らなかったのに、今回は賛成104、反対54という大差の賛成数になったの最大の理由は、 「廃止・停止に動く国々の急速な広がり」ということです。「10年間だけでも約30カ国が廃止・停止」したというのですから、日本と異なり、国際社会では急速に人権尊重の意識が広がったことが伺えます。



2.国連での死刑制度問題については、ほとんど無視してきた読売新聞ですが、さすがに国連決議までだされるとなると、読売新聞も(仕方なく?)記事にしています(なお、国連総会第3委員会での決議は、やっと平成19年12月8日付で報道)。

(1) 読売新聞平成19年12月19日付夕刊2面

国連、死刑執行一時停止を決議 賛成104、反対54 史上初、存続国へ圧力

 【ニューヨーク=白川義和】国連総会は18日、欧州連合(EU)を中心とする87か国が共同提案した死刑執行の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を、賛成104、反対54、棄権29で史上初めて採択した。

 総会決議に法的拘束力はないが、死刑廃止を求める国際世論の高まりを示した形で、日本や米国など死刑存続国への一定の政治的圧力となりそうだ。

 決議は「死刑の犯罪抑止効果に確証はない」としたうえで、死刑の存続に「深刻な懸念」を表明。加盟国に死刑廃止を視野に入れた執行の一時停止や死刑適用の段階的削減、国連事務総長への関連情報提供などを求めている。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「死刑廃止に向けた流れが裏付けられた」と歓迎する声明を発表した。

 一方、死刑制度を維持する国は「決議は主権の侵害だ」などと反発。日米中、インド、タイ、インドネシアなどが反対票を投じた。日本は11月の国連総会第3委員会での同決議採択の際、「世論調査で国民の大半が凶悪犯への死刑を支持している」、「死刑廃止に関する国際的総意はない」との立場を表明している。

 国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルによると、国連加盟192か国中、133か国が死刑制度を廃止するか、事実上取りやめた。06年に死刑執行したのは25か国。米、中、イラン、イラク、パキスタン、スーダンの6か国で世界全体の執行件数の91%を占めるという。

(2007年12月19日12時43分 読売新聞)」(見出しは紙面通りに変更)




(2) やっと読売新聞も、国連での死刑執行停止決議案について報道するようになったようですが、妙な点が多々あるのです。読売新聞は、

「日本は11月の国連総会第3委員会での同決議採択の際、『世論調査で国民の大半が凶悪犯への死刑を支持している』、『死刑廃止に関する国際的総意はない』との立場を表明している。」

などと書いていますが、なぜ古いネタをいまさら書くのだろうと思うのです。国連総会第3委員会での同決議採択のことを、かなり後になって埋め草程度にしか報じていないから、いまさら触れるという少々間が抜けた報道になってしまったのです。


一番気になったのは、

「総会決議に法的拘束力はないが、死刑廃止を求める国際世論の高まりを示した形で、日本や米国など死刑存続国への一定の政治的圧力となりそうだ。」

という点です。
 

米では執行停止中

 今回の国連議論で米国はそれほど強い反対の論陣は張らなかった。伝統的に死刑制度が根強い国ではあるものの、最近は微妙な変化も出ている。

 全米50州のうち死刑制度を維持しているのは36州。多くの州で死刑は薬物注射で執行されているが、連邦最高裁は9月、その方法が憲法が禁じる「残虐で異常な刑罰」に当たるかどうか審理に入った。それ以降、全米で死刑執行は停止され、審理は来年6月ごろまで続くとみられている。

 東部ニュージャージー州は17日、死刑を廃止する法が成立した。

 連邦最高裁が死刑を合憲と判断した76年以降では初めて。州政府が設けた特別調査委員会が「死刑制度による犯罪の抑止は確認できない」との結論を出した結果だった。

 ブッシュ米大統領の出身地のテキサス州など死刑制度を強く擁護する地域は依然多いが、死刑制度のあり方を問う論議は続いている。(ニューヨーク=立野純二)」(朝日新聞平成19年12月19日付夕刊12面(4版))


全米中で死刑の執行を停止中なのですから、国連で死刑執行の停止を求める決議があっても、米国に対してはあまり「政治的圧力にな」っていません。決議直前には、東部ニュージャージー州で死刑廃止法の決議があり、12月17日には死刑を廃止する法が成立しているくらいなのですから、「今回の国連議論で米国はそれほど強い反対の論陣は張らなかった」(朝日新聞)のです。

このように読売新聞は、「米国など」と米国の名前を出して「圧力」などと書くべきではありませんでした。読売は、間抜けな記事を書いてしまったように思います。




3.毎日新聞の記事(毎日新聞が政府に踊らされて書いた記事?)からすると、日本政府側は決議に法的拘束力のない点を強調したいようです。

(1) 毎日新聞平成19年12月19日付夕刊8面(4版)

国連:法務省「拘束力ない」と静観 死刑一時停止決議採択

 国連総会が決議した死刑の一時停止について、鳩山邦夫法相は19日、「死刑の存続に関するさまざまな考え方の一つと受け止めているが、存廃は各国が国民感情や犯罪情勢で独自に決定すべき」と静観する考えを示した。しかし、死刑制度に反対する市民団体などからは「廃止が世界の流れになりつつある」との声が上がった。

 今回の決議を前に、死刑囚として初めて再審無罪になった免田栄さん(82)は10月、ニューヨークでの国際NGO主催のイベントに招かれ、国際社会に死刑廃止の必要性をアピールした。決議案採択の見通しが強まった今月17日には東京都内で会見し、「人が人を裁く行為に『絶対』はありえない」と、改めて政府に死刑廃止を決断するよう訴えた。

 また、日本弁護士連合会は19日、「政府は総会決議を真摯(しんし)に受け止め、速やかに死刑の執行を一時停止し、制度の見直しを行う作業に着手すべきだ」とのコメントを出した。

 一方、7日に3人の死刑を執行したばかりの法務省。鳩山法相は19日「わが国で執行を一時停止することは国民世論の多数が凶悪な犯罪には死刑もやむを得ないと考えていることなどから、適当ではない」とのコメントを出した。また、同省幹部もかなり前から採択を予想し、「驚きはないし、採択に法的拘束力もない。国内への直接的な影響もない」と冷めた反応をみせた。【坂本高志】

毎日新聞 2007年12月19日 12時15分 (最終更新時間 12月19日 13時04分)」




(2) しかし、法的拘束力がないことを強調することは、国際法上は、おかしなことなのです。

鳩山法相「存続、内政の問題」
2007年12月19日12時28分

 国連が18日、死刑の執行停止を求める総会決議を初めて採択した。「世論の高い支持」を理由に死刑制度を存続している日本は、今年は年間で77年以降最多となる9人の死刑を執行するなど、世界の潮流とは逆行。国際的な孤立を深めている。

 「世論には死刑制度や死刑執行にかなりの支持がある。国連の決議があっても我が国の死刑制度を拘束するものでは、まったくない」。決議を前にした18日の閣議後の記者会見で、鳩山法相は語気を強めた。「死刑を存続するかしないかは内政の問題だ」という政府の立場を改めて強調するものだ。

 凶悪犯罪に対して厳罰を求める声を背景に、このところ日本では死刑執行のペースが上がる傾向にある。鳩山法相は今月7日、3人の死刑を執行した。前任の長勢法相の執行人数も在任10カ月余の間に10人を数えた。鳩山法相の「死刑自動化」発言をきっかけに法務省内に執行のあり方を検討する勉強会ができたり、執行対象者の氏名を公表したりする動きはあるが、執行停止や制度廃止に至る論議は低調だ。

 死刑廃止を訴えてきた団体は、国連決議をきっかけに停滞する状況を変化させたい考えだ。再審で無罪となった元死刑囚の免田栄さん(82)は10月に国連本部に赴き、討論会で「拘置所で別れの握手を交わした死刑囚は覚えているだけで56人。冤罪だという人も何人もいた」といったエピソードを通じて死刑廃止の必要性を訴えた。死刑廃止議員連盟も、03年以来凍結されている死刑停止法案を来年の通常国会に提出する考えを示している。

 国連総会の決議に法的拘束力がないことについて、神奈川大法科大学院の阿部浩己教授(国際法)は「法的拘束力がないことだけで議論を進めれば、国際社会の営みは限りなく意味がなくなる」と指摘する。

 日本は総会に「北朝鮮の人権状況を非難する決議」などを積極的に提案している。阿部教授は「自国に有利な決議は最大限利用し、不利なら『意味がない』では説得力がない。日本は決議に反対することによってどんな社会を実現したいのかを主体的に示すべきだ」と話す。(市川美亜子)

■「制度見直しを」 日弁連コメント

 日本弁護士連合会は「日本政府は総会決議を真摯(しんし)に受け止め、速やかに死刑の執行を一時停止し、制度を見直す作業に着手すべきだ」とのコメントを出した。」(朝日新聞平成19年12月19日付夕刊12面(4版))(*見出しは紙面どおりに変更)



国際法の阿部浩己教授は、次のように述べています。

「国連総会の決議に法的拘束力がないことについて、神奈川大法科大学院の阿部浩己教授(国際法)は「法的拘束力がないことだけで議論を進めれば、国際社会の営みは限りなく意味がなくなる」と指摘する。

 日本は総会に「北朝鮮の人権状況を非難する決議」などを積極的に提案している。阿部教授は「自国に有利な決議は最大限利用し、不利なら『意味がない』では説得力がない。日本は決議に反対することによってどんな社会を実現したいのかを主体的に示すべきだ」と話す。」


一昔前は、「勧告」や「条約」の効力など国際法の分野において、法的拘束力があるか否かを気にする議論をしていました。しかし、法の執行すなわち強制という点を見ると、国内法の場合には、違反行為に対して警察や軍隊などの力による強制がなされますが、国際法の場合には、国内の警察や軍隊にあたる、法を強制的に執行する機関が存在していません。国際連合は国際法違反に対する強制機関としての役割の一部を担っていますが、違法な武力行使によって平和を破壊する国家に対してのみ強制を行うのみで、すべての国際法違反に対して強制を行うわけではありません。もちろん、違法な武力行使を行う国家に対する強制力も限られています。このように、元々、国際法は国内法と違うのであって、権力による強制が法の本質とは言いがたいのです。

現在では国際法と国内法との違いが認識され、今は条約の監視活動は、改善を求める「法的な」圧力であると理解され、法的拘束力のない条約、国連決議であろうと、各国は十分に尊重することが求められており、十分影響力があるということで一致しています。現在の国際法の議論においては、法的拘束力の有無は、あまり意味のない議論だといえるのです。



(3) もし法的拘束力を強調するのであれば、北朝鮮に対する人権決議案も法的拘束力がないのですから、北朝鮮に対する人権決議案は無意味なことになるのではないでしょうか?

拉致問題の解決求める 国連、北朝鮮決議が成立

 【ニューヨーク18日共同】国連総会本会議は18日、北朝鮮の人権侵害に「極めて深刻な懸念」を表明、外国人拉致問題の解決と拉致被害者の即時帰国を求める人権決議案を賛成101、反対22、棄権59(昨年はそれぞれ99、21、56)で採択、決議が成立した。

 北朝鮮を名指しして拉致に触れた人権決議案の採択は3年連続で、賛成は最多になった。決議案は日本や米国、欧州諸国などが共同提案した。採決では北朝鮮や中国、ロシアなどが反対。南北の関係改善を進める韓国は、先月の総会第3委員会(人権)に引き続き、昨年の賛成から棄権に回った。決議に法的拘束力はない。

 決議は、住民の移動制限や、北朝鮮に帰国した住民らへの制裁措置など「組織的な人権侵害」を非難。拉致に関しては「拉致被害者の速やかな帰国の保証を含め、透明性ある方法で問題を解決するよう北朝鮮政府に強く要請」した。

 本会議はまた、むち打ちなどの拷問や公開処刑が行われているとして、イランに人権状況の改善を求める決議案も日米欧などの賛成で採択した。

2007/12/19 10:09 【共同通信】」(【共同通信2007/12/19 10:09】




北朝鮮の人権状況を非難 国連総会、3年連続
2007年12月19日09時57分

 国連総会は18日、北朝鮮の人権状況を非難する決議案を賛成101、反対22、棄権59で採択した。同様の決議は3年連続の採択で、賛成数は05年の88、06年の99を超えて過去最多。

 決議は日本など51カ国が共同提案した。「組織的に広範で重大な人権侵害」が続いているとし、拉致問題について「深刻な懸念」を表明。被害者の即時帰還を含む緊急解決を北朝鮮に求めた。

 反対した国は、中国、ロシア、イラン、ベトナム、インドネシアなど。昨年賛成した韓国は今年、拉致問題についての表現などを緩めるよう修正を求めたが実現せず、棄権した。」(朝日新聞平成19年12月19日付夕刊2面


日本政府や法務省が法的拘束力のない決議は無視する態度をとっているということは、 北朝鮮に対する人権決議案も何の意味もないと考えているということです。日本国民としては、拉致被害者の奪還こそ国際社会に訴えるべきことではないのでしょうか? 日本政府や法務省が奪還意思のないことを、毎日新聞の報道を通じて国際社会に示すのですから、これでは国際社会は北朝鮮に対する拉致被害者奪還に協力するわけがありません。北朝鮮側も、日本政府と同様に、「法的拘束力のない決議は無視する、日本政府と同じだ」とアピールしてくるでしょう。

北朝鮮に対する人権決議案については、「昨年賛成した韓国は今年、拉致問題についての表現などを緩めるよう修正を求めたが実現せず、棄権した」(朝日新聞)のですから、韓国は全く当てになりません。北朝鮮に影響力のある中国、ロシアさえも決議に反対していたのですから、どうやって北朝鮮に国際的な圧力をかけることができるのでしょうか。

北朝鮮による拉致被害者奪還のためにも、「法的拘束力のない決議は無視する」といった愚かしい態度は示すべきではなかったのです。



<12月22日付追記>

「お玉おばさんでもわかる 政治の話」さんの「二つの国連決議」でのコメント欄で知ったことですが、日本政府はまた「国連におねだり」したようです。

イラク:安保理、多国籍軍駐留1年間延長の決議案採択

 【ニューヨーク小倉孝保】国連安全保障理事会は18日、イラクの多国籍軍駐留期間を08年末まで1年間延長する決議案を全会一致で採択した。イラク政府は、最後の延長になるとの考えを示した。

 イラク政府が延長を要請していた。マリキ首相は安保理にあてた書簡の中で「最後の延長要求になる」と説明している。イラク政府は国連決議による駐留を終了させた後、米政府との2国間の協議で米軍の駐留期間などを決める意向だ。

 決議の前文では、多国籍軍の業務が「国連への支援を含む」とされた。これについて一部では、航空自衛隊の空輸業務を念頭に置いているとする見方もある。

毎日新聞 2007年12月19日 11時42分 (最終更新時間 12月19日 13時08分)」(毎日新聞 2007年12月19日 11時42分 (最終更新時間 12月19日 13時08分)


以前にも日本政府は、自衛隊の活動が国際的に感謝されていると装うため、「おねだり」したことは、よくご存知のことかと思います。日本政府がおねだりして追加してもらった文言に、どれほどの意味があるのでしょうか。日本政府は、おねだりして追加してもらった文言を含んだ「安保理決議を尊重しよう」などと述べていましたが、自作自演の決議を尊重しようだなんてよく恥ずかしくもなく言えるものです。

テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済

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