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2007/12/07 [Fri] 05:47:39 » E d i t
いわゆる「光市母子殺害事件」で殺人や女性暴行致死などの罪に問われた犯行時18歳だった男性被告(26)の差し戻し審公判が12月4日午後、広島高裁で開廷し、弁護側が最終弁論を行い、乱暴目的や殺意を改めて否定するとともに、傷害致死罪の適用などを求め結審しました。この報道に関連していくつか論じてみたいと思います。

なお、検察側は10月の最終弁論の中で、元少年は上告審やこの差し戻し審で、それまで認めていた事実関係を争い、反省するどころか事実を捏造し、遺族にさらなる苦痛を与えているとして元少年への死刑を求めています(TBS Newsi(12月4日17:54)「光母子殺害、差し戻し控訴審が結審)。


1.まず報道記事をいくつか。

(1) 中国新聞 '07/12/5

殺意と乱暴目的を再び否定 光母子殺害結審 '07/12/5

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 光市母子殺害事件で殺人や女性暴行致死などの罪に問われた犯行時十八歳だった男性被告(26)の差し戻し審公判が四日、広島高裁であった。弁護側が最終弁論をし、殺意や乱暴目的をあらためて否定するとともに、「生きる道しるべを示す判決を」と求め結審した。死刑の適否が焦点となる判決は、来年四月二十二日の予定。

▽来年4月22日判決

 弁護側は最終弁論で、被告が乱暴目的や殺意を認めた捜査段階の自白調書について、「捜査官が赤子の手をひねるように作った虚偽の調書で信用性はない」と主張。差し戻し審で被告は記憶通りに証言し、真実が明らかになったと説明した。

 弁護側の依頼で法医鑑定や精神鑑定をした専門家による法廷での証言でも最高裁の認定に「事実誤認があることが明らかになった」と述べた。

 本村洋さん(31)の妻弥生さん=当時(23)=の自宅を訪ねる前の現場アパートでの戸別訪問は「物色行為ではなく、人恋しさから寂しさを紛らわすためだった」などとし、乱暴目的の犯行と認定した最高裁の判断を否定した。

 弥生さんと長女夕夏ちゃん=同(11カ月)=の二人に対する犯行態様の認定にも反論。弥生さんの首を両手で強く絞めたとする行為、夕夏ちゃんの首にひもを巻いて締め付けて殺害したなどとする認定はいずれも「遺体の痕跡と矛盾する」とした。「両手ではなく、右の逆手で押さえた」「ひもで緩く結んだだけ」など、それぞれ別の態様も示して殺意を否定、傷害致死罪の適用を求めた。

 また「父親の虐待により極めて精神が未成熟だった少年による偶発的な事件」「被告は贖罪(しょくざい)の中で生きることを決意した」などとして減刑を求めた。(門戸隆彦)

▽クリック 光市母子殺害事件

 1999年4月14日、光市のアパートの会社員本村洋さん(31)方で、妻の弥生さん=当時(23)、長女夕夏ちゃん=同(11カ月)=の遺体が発見された。山口県警は4日後、男性被告を殺人容疑で逮捕。山口地検は殺人と女性暴行致死、窃盗の罪で起訴した。検察は死刑を求刑、1、2審は(1)乱暴目的の犯行だが殺害の計画性がない(2)犯行時の年齢は(死刑が適用できる)18歳になりわずか30日で内面が未熟で更生の可能性があるとして無期懲役とした。昨年6月の最高裁判決は1、2審が死刑を回避した理由を退け、特に酌量すべき事情がないか審理をやり直すよう広島高裁に差し戻した。

▽最終弁論の要旨

 広島高裁で四日開かれた、光市母子殺害事件の差し戻し審で、弁護側最終弁論の要旨は次の通り。

 【殺害行為の不存在】

 殺意をもって弥生さんの首を両手で圧迫したものではない。

 被告は新供述のように、右の逆手で首を押さえ、気道と一緒に静脈を圧迫した。片手の逆手では体重をかけられず被害者の抵抗を受けて現実的ではない、とする検察側の主張は誤り。

 被告は首を圧迫している認識さえなく、殺人の故意は認められない。夕夏ちゃんを床にたたきつけた事実も、頭部の傷などの鑑定からは言えない。首を両手で絞めた痕跡はなく、ひもによる圧迫も強く絞めてはいない。顔を見られて犯行の発覚を恐れる必要はなく殺害の動機はない。本件は傷害致死罪となる。

 【女性暴行の不存在】

 一審判決は女性暴行の計画性を認めているが、(本村さんの住む)アパートを訪問した際、ほかに訪問した住民と話した内容は変わらず、カッターナイフで弥生さんを脅してもいない。

 被告は人恋しい心理状態で、弥生さんに亡くなった実母を感じて抱きついた。無理やり、人の意思を無視してでも性交しようとする意思・意欲の表れとしての暴行行為は見いだせない。

 【情状】

 父親からのすさまじい虐待は、被告の心身の成長に大きな影響を与えた。母親への暴力も目の当たりにした。父親の暴力から互いをかばい合うことで母子一体の共存関係が形成された。

 その母親の自殺に直面した。フラッシュバックを繰り返し、虐待による心的外傷も受けた。精神の未熟さから、犯行当時の被告は退行状態、パニック状態に陥っており、女性暴行目的の計画的犯行ではなかった。

 【検察官の批判】

 被告人質問で、被告は遺族の意見陳述を丁寧にメモしていた。検察官は「すっと一本ペンを引いて一行削除した」と批判した。被告は「万死に値する」など被害者遺族からの厳しい言葉を書き留めていただけだ。

 あらぬ嫌疑を掛けられ、非難された被告は「なめないでいただきたい」とも言った。被告の言葉は場をわきまえない言葉だった。被告は裁判所や遺族に申し訳ないことをしたと謝罪した。自分を恥じ、更生に向けての歩みは始まっている。

 【量刑】

 本件は精神的に未熟な少年による計画性のない偶発的な事件である。虐待の影響を受けた被告に成人同様の批判を浴びせ、刑を科すことはできない。少年の行状、素質、環境などを無視して刑の量定をなすことはできない。

 【結語】

 これまで誰も、被告に生きることや命の大切さを教えてこなかった。残された課題は、被告がこれからどう生きていくか。私たちは裁判所に求める。被告に生きる道しるべを指し示す判決を出してほしい。」




(2) 中国新聞 '07/12/5

生きる道司法に問う 弁護側「被告は反省」 '07/12/5

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 光市母子殺害事件の差し戻し審は四日、弁護側の最終弁論をもって広島高裁で結審した。五月から計十二回の公判で重ねた主張、立証で、死刑を回避すべき新たな「事実」を引き出すことはできたのか。弁護側が最後に示したのは、男性被告(26)がどう生きるべきかという司法への問い掛けだった。

 五百十ページにも及んだ弁論要旨。弁護側は約三時間かけ、その要点を陳述した。白いシャツに紺のジャケット姿で現れた男性被告は、落ち着いた様子で法廷に臨んだ。

 弁護側は法医鑑定証人の証言を交え、検察側が指摘する犯行態様が遺体の痕跡と合致しないなどと主張し、殺意をあらためて否定した。検察官が腕を組み弁護側に鋭い視線を向ける中、「事実こそ最大の情状」と続け、父親から受け続けた虐待が精神発達を阻害していたとも強調した。

 「誰も(被告に)命の大切さを教えてこなかった。彼は事件を受けとめ、反省と贖罪(しょくざい)の中で生きている。残された課題は彼がどう生きるかということ」。弁論の最後には被告の成長を示唆する言葉もあった。遺族の本村洋さん(31)は妻子の遺影を抱いたまま時折、目をつぶり聞き入っていた。

 公判終了後、広島市中区の弁護士会館で会見した安田好弘主任弁護人は「心理鑑定人ら専門家の意見に多くの教訓があった。二度とこのような事件が起こらないよう、司法の責任として彼にどう生きるか道しるべを指し示す裁判にしないといけない」と話し、弁護への理解を呼び掛けた。(野田華奈子)

【写真説明】記者会見で差し戻し審の主張を総括する安田主任弁護人(左から2人目)ら弁護団」




(3) 朝日新聞平成19年12月5日付朝刊38面

光市母子殺害事件差し戻し審結審 弁護団、死刑回避主張
2007年12月04日21時05分

 山口県光市で99年4月、会社員本村洋さん(31)の妻弥生さん(当時23)と長女夕夏ちゃん(同11カ月)が殺害された事件で、殺人と強姦(ごうかん)致死などの罪に問われている元少年(26)=一、二審で無期懲役=の差し戻し控訴審の第12回公判が4日、広島高裁(楢崎康英裁判長)であった。弁護側は最終弁論で、殺意や強姦目的を改めて否定し、傷害致死罪が適用されるべきだと主張した。少年法で死刑適用が認められる18歳から1カ月で犯行に及んだ点を強調し、精神的に未熟だった元少年が起こした「偶発的な事件」として、死刑回避を求めた。

 元少年は一、二審で殺意や強姦目的を認めていたが、最高裁の段階から明確な否認に転じた。06年6月の最高裁判決は、事件の悪質さから「特に酌むべき事情がない限り、死刑を選択するほかない」と高裁判決を破棄し、審理を差し戻していた。裁判はこの日で結審し、判決は08年4月22日に言い渡される。

 弁護側はまず、殺害と強姦目的を認定した一、二審は、当時の弁護人が犯罪事実を争わず、裁判所も証拠の吟味を怠ったと批判。差し戻し控訴審で初めて犯罪事実が吟味されたと評価した。

 弥生さんの死亡については、最高裁判決まで認定された両手で強く絞め付けたことによる殺害ではないと主張。甘えようとして抱きついて反撃に遭い、「無我夢中で右手逆手で押さえつけた頸部(けいぶ)圧迫による窒息死」とした。夕夏ちゃんへの行為も、頭から床にたたきつけるなどした上、首にひもを巻いて絞め付けて殺害したのではなく、ひもを緩く縛ったことによるむくみで窒息死したと訴え、いずれも殺意があったとは言えないとした。

 さらに、アパートを戸別訪問したのは時間つぶしと人恋しさだったと述べ、「計画的な強姦ではなかった」とした。

 また、元少年は父親からの虐待や中学1年時の母親の自殺で精神的に未成熟だったと説明。最高裁判決は更生可能性について「困難」としたが、教誨師(きょうかいし)らと出会って内省を深めたとし、「元少年に生きる道しるべを指し示す判決を」と訴えた。

 元少年は約3時間に及ぶ弁論の読み上げを、弁護人や裁判官の方をじっと見ながら聞いた。

 本村さんは弥生さんと夕夏ちゃんの遺影を抱えて傍聴。弁護人の方を見たり、うつむいて目を閉じたりして弁論を聴いていたが、弁護人が「殺人の故意は認められない」と、改めて傷害致死罪の適用を主張した時、何度もため息をついた。

 検察側は10月の最終弁論で改めて死刑を求めている。」




(4) 時事通信(2007/12/04-21:43)

「最後まで弁護する」と強調=結審受け弁護団が広島で会見-光市母子殺害

 山口県光市の母子殺害事件で4日、広島高裁で差し戻し控訴審が結審したことを受け、被告の弁護団が記者会見した。主任の安田好弘弁護士は「被告自身が贖罪(しょくざい)の人生を歩んでいくことを、私たちはぜひ実現したいし、見届けていきたい」と死刑回避を改めて訴え、「最後まで弁護していきたい」と力を込めた。

 安田弁護士は今回の差し戻し審を「実質上、彼にとって第一審だった」とし、上告審までの一連の審理を批判。各地から21人が顔をそろえた弁護団について「まともな弁護活動をするために集まった。ごく当たり前の活動をしただけだ」と述べた。」



上で引用ししたように中国新聞の記事((1)(2))で、弁論内容が大体分かると思います。朝日新聞の記事は、その弁論要旨のうち、肝心な点をなるべく拾い上げたものになっています。

これに対して、時事通信の記事は、最終弁論の内容でなく、最終弁論後の記者会見のものです。「弁護側はまず、殺害と強姦目的を認定した一、二審は、当時の弁護人が犯罪事実を争わず、裁判所も証拠の吟味を怠ったと批判。差し戻し控訴審で初めて犯罪事実が吟味されたと評価した。」(朝日新聞)というように、最終弁論でも触れていますが、記者会見でも、「安田弁護士は今回の差し戻し審を『実質上、彼にとって第一審だった』とし、上告審までの一連の審理を批判」していたようです。記事では「弁護団、死刑回避主張」という見出しもありましたが、弁護団としては、まず何よりも事実誤認があった・真実を明らかにすることを求めたと評価した方が妥当なように思います。


差し戻し審は、これまで3回、計9日間の集中審理があり、弁護側と検察側が主張、立証を重ねて、12月4日・12回目の公判で結審しました。判決は平成20年4月22日午前10時、言い渡されます。

来年4月に判決ですから、いくら間がある(結審から判決まで4ヶ月)ようにも思えます。しかし、平成18年6月6月の最高裁判決は、事件の悪質さから「特に酌むべき事情がない限り、死刑を選択するほかない」と高裁判決を破棄し、審理を差し戻し、平成19年5月24日から差し戻し審が始まり、12月4日に結審したのです。実質的な審理期間が6ヶ月で、差し戻し審の開始から判決まで1年未満なのですから、スピード審理・判決だったといえます。

21人もの弁護人が選任されたことから「多すぎる」という批判を受けていましたが、21人もの弁護人がいたからこそ、スピード審理が可能だったのです。弁護団批判が妥当であったとすれば、差し戻し審だけで数年はかかっていたはずであり、「弁護団批判はむしろ長期裁判を望んでいたことになる」のですから、馬鹿馬鹿しい批判であったことが明白だったのです。


このような不当な弁護団批判などに現れているように、光市事件裁判では、裁判外で多くの問題点が生じさせました。そこで、裁判外で巻き起こった問題点について触れてみたいと思います。


2.問題点の1つとして、まず、メディア報道において、刑事司法の原理や弁護権の重大さへの基本的な理解を欠いたような、弁護人批判が繰り広げられたことです


「刑事弁護のあり方に対するメディアからの批判が過熱しています。

 この傾向は、弁護権の全うという観点からも、メディアの使命のあり方からも、看過できない問題をはらんでいます。

 刑事弁護は、人権がもっとも鋭く権力機構と対峙する局面です。弁護方針が人権の擁護と権力への対峙に徹するとき、被害者の立場に共鳴する市民感情と衝突することは当然に起こりうるところです。弁護士の使命の遂行が、市民感情から攻撃されることも覚悟せざるを得ません。

 その市民感情を代弁するかたちで、メディアが過剰に弁護方針を攻撃する場面が表面化しています。とりわけ、電波メディアにその典型がみられます。

 かつてはメディアの裁判批判と言えば、裁判所や警察・検察機構へ矛先が向けられ、冤罪批判がメインでした。いまは、被告人の権利行使や弁護方針にも感情的な批判が向けられ、「早く有罪判決を」「もっと重罰を」という雰囲気があります。市民感情や社会の雰囲気をストレートにぶつけて、法が持っている理想や理念を攻撃しているように見えます。

 いくつかの事件に顕著ですが、集中豪雨的とも言うべきセンセーショナルな弁護団バッシングが行われています。刑事司法が制度として市民の参加を得ようとしているこの時期に、メデイアのこのようなあり方には、ある種の危機感を抱かざるを得ません。

 弁護権行使のあり方が批判を許さぬ聖域であるはずはありませんが、近時のメディアの批判の姿勢には疑問を感じざるをえません。権力に対峙する側への批判は、刑事司法の原理や弁護権の重大さへの基本的な理解を欠いていることに起因してはいないでしょうか。」(「法と民主主義」編集委員会「特集・刑事弁護とメディア ◆特集にあたって」法と民主主義2007年11月号2頁)



メディアが「刑事司法の原理や弁護権の重大さへの基本的な理解を欠いている」批判を行っているということは、記事を書く報道記者に基礎的な法的知識が欠如しているという意味になります。要するに、メディアが劣化しているわけです。

もっとも、「刑事司法の原理や弁護権の重大さへの基本的な理解を欠いている」ような批判であるとしても、必ずしも記者の側に基礎的な法的知識を欠く者が多いということではないと思います。むしろ、報道機関側としては、営業面を重視して、被害者の立場に共鳴する市民感情に便乗して記事にしている面がありますし、また、被害者の立場に共鳴する市民感情による新聞社への脅迫(=悪質なクレーマー)に躊躇して、少しでも弁護団を擁護するような記事を書くことができないでいるという面もあるようです。

要するに、「刑事司法の原理や弁護権の重大さへの基本的な理解を欠いている」ような報道がなされる原因としては、市民の一部に裁判制度や刑事弁護に対する理解に欠けている、日本の一部の市民の影響によるというわけです。




3.そうなると裁判外の問題点の大元としては、未熟な人権意識の市民感情の蔓延にあるということです。言い換えれば、刑事司法におけるポピュリズムの危険性が特に現れたのです。刑事司法におけるポピュリズムの危険性について指摘した記事を引用しておきます。

(1) 毎日新聞平成19年12月4日付夕刊「ダブルクリック」欄

 「弁護とはそもそも…・――芹沢一也(思想史研究者)

 最近、山口県光市の母子殺害事件の弁護団に、全国から大量の懲戒処分請求が出されたことが話題になった。理由は「意図的に裁判を遅らせている」といったもので、日弁連によると、その件数は7500件を上回ったらしい。

 これほどまでに大量の請求があったのは、テレビ番組で橋下弁護士が呼びかけたためだという。元少年である加害者弁護のあり方は、被害者の尊厳を踏みにじっていると訴えたわけだ。対する東京弁護士会は先月22日、懲戒処分請求を退けると決定した。

 あるいは、これも先日、大騒動になったボクシングの亀田問題。たしかに、試合での反則などは言語道断だ。だが、少なくないメディアが亀田家の普通の態度、あるいは教育のあり方までをバッシングしたのは、明らかに過剰な振る舞いではなかったか。

 この2つの例ではバッシングの位相がやや違うが、いずれにせよ、メディアを筆頭に日本国中が妙に道徳的になっている印象がある。自己満足感に浸りつつ非を唱えられる対象を、血眼になって探しているようにも見える。

 たしかに、犯罪被害者と刑事司法の関係はデリケートな問題を孕(はら)む。ことに光市のような事件での弁護活動は、理不尽なものにみえるだろう。人々は加害者を擁護する弁護士を魔女狩りでの魔女のごとく糾弾し、「人権派」とのレッテルを張って揶揄(やゆ)する。

 だが、東京弁護士会は「社会全体から指弾されている被告であっても、被告の弁明を受け止めて法的主張をするのは正当な弁護活動。仮に関係者の感情が傷つけられても正当性は変わらない」とする。そもそも、不当な国家権力の行使から被告を守ることこそが弁護活動の要諦(ようてい)。その根幹が人権という理念だ。それまでが、ポピュリズムで押しつぶされつつあるように感じる。許されない事態だと思う。」



(2) 弁護士・小池振一郎「特集:刑事弁護とメディア ◆弁護士コメンテーターとは」法と民主主義2007年11月号39頁(一部引用)

 「視聴率アップのために犯罪報道が際限なく流され、体感治安が悪化し、被害者に対する同情が増幅される。それが重罰化の世論を作り、裁判所までがそれに影響されて従来の判例と異なる重罰化の判決を出す。そのため過剰拘禁の歯止めがなくなる。

 このような事態が現出している中で、メディアは、ますます被害者感情を大きく報じ、被疑者・被告人バッシングを過熱させ、処罰感情をあおる方向に走る。犯罪報道は、事件の背景や原因に迫り、再発防止の道を探るためにあるといわれるが、実際は、重罰化への悪循環を促進している。

 そこに、法律専門家ではなく、「普通の人々」の視点から刑事制度について発言する個人、集団が登場し、犯罪被害者に「普通の人々」を代表する特権的地位が与えられる。その立場から刑事制度の変容が強く迫られ、政治家を動かし、立法を実現する時代になった。

 過失犯の法定刑が懲役20年という危険運転致死罪の登場はその象徴である。被害応報の立場から、故意犯と過失犯の境界が曖昧となり、歴史的に発展してきた刑事司法の理念の根本が覆されようとしている。教育刑思想が失われ、共生ではなく、排除の論理に染められようとしている。

 これを「ポピュリズム刑事政策の時代への突入」と評する宮澤節生教授は、光市母子殺害事件で、無期懲役とした原判決を破棄して全員一致で審理を差し戻した最高裁小法廷判決について、「司法権が立法権による厳罰化に量刑で寄り添うことを宣言した」と指摘する。

 メディアが被害者感情を増幅し、感情的な発言がもてはやされるようになったのは、こういう時代が到来したからである。専ら被害者の立場に立つコメントは、一般受けし、無難であり、視聴率も上る。

 しかし、感情で処罰していいのか。今こそ、法律家と市民の対話が求められている。被害者対策として短絡的に厳罰化のみを主張する傾向に対する法律家のアンチテーゼを提供しなければならない。

 弁護士コメンテーターの役割はますます大きくなっている。このときに、専ら被害者の立場に立って、弁護人の弁護方針を批判し、懲戒請求まで扇動する弁護士コメンテーターがいるとは、信じがたい。弁護方針の変更をマスコミに説明する義務は弁護人にはないし、弁護活動を理由に懲戒請求をそそのかすことは戦前の治安維持法時代に逆戻りさせる自殺行為であるといわざるを得ない。」



 「不当な国家権力の行使から被告を守ることこそが弁護活動の要諦(ようてい)。その根幹が人権という理念だ。それまでが、ポピュリズムで押しつぶされつつあるように感じる。」(毎日新聞)とか、「「ポピュリズム刑事政策の時代への突入」と評する宮澤節生教授は、光市母子殺害事件で、無期懲役とした原判決を破棄して全員一致で審理を差し戻した最高裁小法廷判決について、「司法権が立法権による厳罰化に量刑で寄り添うことを宣言した」と指摘する。」(法と民主主義)など、刑事司法におけるポピュリズムの危うさが共通認識になっていることが分かると思います。



(3) 法律専門家しか関心がなかった「被害者対策」について、日本の市民が関心を向けるようになったことは妥当なことであり、そのための要求をすることは健全な行動です。しかし、要求にも「程度の問題」があり、レベルを超えるような要求は、公共システムや法制度そのものの機能を阻害させてしまいます(内田樹・神戸女学院大学教授「特集:1億総クレーマー時代 ◆日本人が共同体からの利益を捨てるまで」中央公論2007年12月号25頁)。

被告人の供述(殺意を否定・強姦目的での殺害を否定)とそれを基礎付ける客観的証拠(上野鑑定、大野鑑定。なお、捜査機関が嘱託し第1審が証拠として採用した山口大学教授の鑑定では、両親指で力一杯抑え使えた痕跡はなく、全体重をかけて両手で頚部を扼頚した痕跡はなかったのに、最高裁は誤りと判断した。)があるのですから、弁護人としては、被告人の供述と客観的証拠に基づいて弁護活動をするのがもっとも基本的な弁護であり、むしろそれ以外の弁護方法を行うことは弁護人依頼権(憲法37条3項、憲34条)違反になってしまいます。それなのに、光市事件弁護人である安田弁護士に対して、24時間の嫌がらせと脅迫電話をかけ、カミソリや銃弾も送りつける事態になったのです。さらに光市弁護団に対する懲戒請求が扇動され、7500件もの懲戒請求がなされたのです。

このような基本的な刑事弁護を全否定するような事態が生じるようだと、刑事弁護制度が崩壊し、刑事裁判が開廷できなくなり、冤罪が激増することは必至です。これは、まるで医療崩壊と医療でのクレーマーを彷彿とさせます。すなわち、医療崩壊の一因は、医療訴訟の増加といわれ、若い医師が訴訟率の高い産科や小児科を敬遠するようになったからだと言われています。また、医療でのクレーマーは、「賠償金だけでは気が収まらず、ときに医師免許の剥奪まで求めたりする」(久坂部羊・医師/作家「特集:1億総クレーマー時代 ◆暴走する“患者さま”」中央公論2007年12月号44頁)からです。


懲戒請求を送ったとするブログを見ると、うつ病を患っていると表明する方だったり、家庭環境に悩みを抱えている方が数名いました。懲戒請求を送った者すべてではないにしても、個人的な悩みやイライラ感を解消するために、懲戒請求を行ったように感じられます。要するに、八つ当たりなわけです。

もちろん、日本社会全体にギスギスした空気や息苦しさが広がっていることも、背景にあると思いますが(「「投票日を前に ニッポンのゆくえ」(朝日新聞7月26~28日より)~投票前に日本社会の現状を……。」参照)。自己の価値観と異なる他人の行動を許せないという「不寛容の時代」であるとか、日本社会では、寛容の精神が失われていることが背景にある、といった方が良いかもしれません。

市民が、八つ当たりをしやすくなったのは、法律専門家の能力が著しく低下して(専門家の素人化)、法律専門家を軽視する意識が蔓延してきたことも一因かと思います。橋下弁護士のように、弁護士に対する懲戒請求を行った者に対して不法行為責任(民法709条)を認めた判例(最高裁平成19年4月24日判決など多数の下級審判例)を知らずに懲戒請求を煽る弁護士なぞがいるのです(「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否~“母子殺害で懲戒請求数百件”との報道を聞いて」参照)。しかも、橋下弁護士は、「被告人のためだけに働くのは(弁護士会の懲戒対象である)品位を失う活動にあたる」とまで主張するのです。そのような主張は、専ら被告人の利益擁護のための弁護人制度を定めた弁護士法そのもの及び弁護人依頼権(憲法37条3項、憲34条)に違反するものであり、明らかに妥当ではないのに。



(4) 個人的な悩みが背景にあるのですから、いくらか同情すべき点はあります。しかし、光市弁護団をいくら批判しようとも、八つ当たりをしたとしても、個人的な悩みは解決しないのです。

光市事件の被告人を死刑にして、彼の人生を終わらせてしまえば、一個人の感情的には満たされるかもしれません。しかし、事件の背景や社会問題を明らかにして犯罪防止の具体策を講じ、被害者支援のあり方を問い直さなければ、何も解決しないのであり、日本の多数の市民にとっては無意味なのです。

もっといえば、もし仮に、今の弁護団がバッシングによって辞めていたとしても、次に選任された弁護人が真っ当な刑事弁護士であれば、基本的には今の弁護団と同じ弁護活動をするだけであって、何ら変わらない裁判が続いただけであり、むしろ弁護人の辞任によって差し戻し審だけで3~4年かかるなど一層長期化したはずです。このような結果となることは、被害者が希望する結果といえるのでしょうか。


ところで、自民党の犯罪被害者救済に関するプロジェクトチーム(早川忠孝座長)は11月26日までに、地下鉄サリン事件などオウム真理教が起こした事件の被害者救済法案の概要をまとめました(時事通信)。教団の破産手続きは来年3月で終結するが、賠償金総額の3分の2に当たる約25億円が未払いとなっていることから、国が「見舞金」などの名目で肩代わりするとのことですが、来年の通常国会に議員立法で提出を目指すものであり、いまだに被害者は十分に救済されていないのです。これが日本政府の対応なのです。

日本政府としては、多様な具体策や多額の資金を必要とする「被害者対策」を充実させるよりは、立法及び司法により厳罰化し、被告人を長期間刑務所に放り込んでおき、あわよくば死刑判決が増えた方が楽なのです。刑事弁護が十分に機能しなければ、嫌疑を受けた者は無実であろうと有罪となりますから、政府とすればその方が楽な対応なのです。体感治安の悪化を煽りたて、厳罰化を望む市民感情が吹き荒れることを最も喜んでいるのは、今の日本政府なのです。

日本の市民は、刑事弁護批判を行うマスコミ報道を一歩引いて冷静に判断し、厳罰化によって誰が最も喜んでいるのか、物事の本質はどこにあるのか、よく考えてみるべきなのです。

テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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コメント
この記事へのコメント
あくまで法医学鑑定の結果から言うと
真犯人は「元少年」ではなく,新日鉄光の「M」氏だと言えるでしょう.私も傍証になる「M」氏の広大時代の行動をコンピュータ処理した資料のコピーを合法的に手に入れています.つまり「性格的な問題」(本当は病気)が医学的に存在する可能性がある.

つまり,企業の名において,企業が最高裁まで乗っ取ろうとしたという,大疑獄事件に発展する可能性も出て来たと言えるのではないでしょうか.技術屋の私に言えることは,これだけです.

# しかし,弁護団の方々とおつきあいしてて,懲戒請求を単なる署名活動と誤解している市民が多いのには驚きました.やはり,高校や大学で法学の基礎を学ばせる必要があるのかも知れません.
2007/12/08 Sat 14:03:46
URL | kaetzchen #HfMzn2gY[ 編集 ]
>kaetzchenさん
コメントありがとうございます。


>真犯人は「元少年」ではなく,新日鉄光の「M」氏だと言えるでしょう

kaetzchenさんの前々からのご主張ですね。まぁ、さすがに光市事件弁護団は、そういう主張はしないでしょうけど。

ただ、本村さんは、被告人が斜視だということは長期間裁判で傍聴して分かっているはずなのに、「睨み付けられた」など色々と妄想に近いことを述べたりするので、ちょっとどうかしていると感じます。

最終弁論後、本村さんが記者会見を開いたかどうか分かりませんが、少なくとも本村さんのコメントを報道するところがなかったので、やっと少しはまともな報道になったかと、やれやれと思ってました。


>弁護団の方々とおつきあいしてて,懲戒請求を単なる署名活動と誤解している市民が多いのには驚きました

安田弁護士も、「ほとんどの懲戒請求書は形式も内容も同一である。まるで署名運動である」と述べています(法と民主主義2007年11月号10頁)。「ちょっとは考えて懲戒請求したら?」と言いたくなりますね。


>高校や大学で法学の基礎を学ばせる必要があるのかも知れません.

仰るとおりです。ぜひ法教育の充実を図る必要がありますね。もっとも、懲戒請求などしてきたのは、20歳をとっくに過ぎた大人でしょうから、大人への法教育が必要なのでしょうけど。
2007/12/10 Mon 06:02:34
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>「ちょっとは考えて懲戒請求したら?」と言いたくなりますね。

僕ももうちょっと文面練るべきだとは思いますが,彼らは彼らなりに考えてるんじゃないですかね?

弁護団側の「懲戒請求が違法行為」という主張はどうにもブラフくさいし,そもそも7500件もの懲戒請求に対していちいち訴訟なんて起こさないだろうっていう読みのもと,テンプレのままで出したっていうんだったらまあそれはそれで合理的な行動のような気もします。
2007/12/11 Tue 23:43:34
URL | とおりすがり #-[ 編集 ]
>とおりすがりさん:2007/12/11(火) 23:43:34
コメントありがとうございます。光市事件弁護団を擁護すると、必ず批判的なコメントがきますね~。しかも「とおりすがり」という捨てHNで。そんなにびくびくしなくてもいいのにと思うのですけど。いずれにしてもご苦労様です。


>彼らは彼らなりに考えてるんじゃないですかね?

「彼らは彼らなりに考えてる」という言い方は、「彼ら=懲戒請求者」をかなり侮辱してますね。「彼らなりに考え」たのに、テンプレートのままの文面でしか請求できなかったということですから、言い換えれば、「この程度でも考えたんだよ。一般の人はそう思えなくても。彼らの頭の程度が低いんだから勘弁してやろうよ」ということですから。


>弁護団側の「懲戒請求が違法行為」という主張はどうにもブラフくさい

「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否~“母子殺害で懲戒請求数百件”との報道を聞いて」というエントリーをみれば、テンプレートのままの請求だと、不法行為(民法709条)が成立することはほぼ確実だと分かります。「ブラフくさい」だなんて、能天気すぎます。


>そもそも7500件もの懲戒請求に対していちいち訴訟なんて起こさないだろうっていう読みのもと,テンプレのままで出したっていうんだったらまあそれはそれで合理的な行動

7500件は現時点での件数ですから、「7500件」くると思ってテンプレのまま請求できるのは神様だけです。なので、人は神様ではないので、「合理的な行動」になりません。
2007/12/12 Wed 23:55:08
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
こちらこそ,コメントどうもありがとうございます。

>光市事件弁護団を擁護すると、必ず批判的なコメントがきますね~。

まあ,母数が多いんで(笑)


>「彼ら=懲戒請求者」をかなり侮辱してますね。

法律に不慣れな人が多いのかな,という評価はしていますね。それが「侮辱」に当たるとは考えていませんが。この辺は各人の主観になるんでしょうが…

>「ブラフくさい」だなんて、能天気すぎます。

例のエントリーは拝見しました。
しかし,例の判例は懲戒請求が違法となる場合の判断基準をしめしているだけであって,今回の懲戒請求が違法になるか否かの当てはめは春霞さんのご意見です。
私としては,当てはめの論理構成に疑問がありますし,そもそも利害関係やイデオロギー的な面から考えて,本件では失礼ながら春霞さんに中立性は期待できません。
よって,上記の意見は維持させていただきます。

>そもそも7500件もの懲戒請求…

確かに7500という数字が出たのはつい最近ですが,それ以前からかつて無い規模で懲戒請求が送られているという話は随所ででていたように記憶しています。
2007/12/15 Sat 01:17:36
URL | とおりすがり #-[ 編集 ]
>とおりすがりさん:2007/12/15(土) 01:17:36
コメントありがとう。このレスでも同じことを少し。まず。コメントして頂けるのは良いのですが、読者に対して同一人物か分からないので、今度からはHNの変更をお願いします。


>まあ,母数が多いんで(笑)

今枝弁護士への懲戒請求者が一番多いようですが、それでも500人程度ですし、少人数が一時的に何度も文句を付けているようです。ですので、思っていたほど母数は少ないと、最近は感じています。ただし、光市弁護団に対して、弁護活動妨害目的で脅迫を行うなど悪質な輩がいるのが一番問題です。


>今回の懲戒請求が違法になるか否かの当てはめは春霞さんのご意見です。
>私としては,当てはめの論理構成に疑問がありますし,そもそも利害関係やイデオロギー的な面から考えて

下級審判例や最高裁判決、憲法、刑事訴訟法、弁護士法の文献を引用して解釈・適用したものです。法曹を含む研究者であれば、異論のない判断でしょう。現に今回の懲戒請求に関して賛成する法律関係者は皆無です。

専門家としての見解を(抑制気味に)客観的に書いたものであって、それを信じないのであればご自由に、としか言いようがありません。不利益を受けるのは、とおりすがりさんご自身ですから。

私は、橋下弁護士及び光市弁護団と利害関係はありませんし、このブログでイデオロギーを明らかにしたことはありません。……イデオロギーっていう程の思想をもっていたかな~。それはともかく、この懲戒請求に関する法解釈に関して、イデオロギーを入れる余地がないと思いますけど。

イデオロギーに基づいて法解釈するなんてどうやってやるのでしょう? 結構、昔から法解釈を生業にしていますが、ちょっと思いつきません。イデオロギーを反映させた法解釈をぜひ教えて下さい。
2007/12/17 Mon 01:36:21
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>春霞さん
橋下氏が大阪府知事選に出馬表明した直後に、「今さら」懲戒請求された方が多数おられるようですが、法と政治を侮辱していると思えませんか。

また一番上に、被害者の家族を、想像だけで侮辱している者が居ますが、問題だとは思いませんか。
「合法的に入手した資料」の真偽はともかく、それが真実であっても、自らの興味でそんなものを入手し、事件とは何の関係も無い赤の他人に持論を展開するなど、許される行為なのでしょうか。公益性が全く無いと思うのですがいかがですか。
2007/12/19 Wed 01:24:37
URL | 元関西人 #JOOJeKY6[ 編集 ]
>元関西人さん
コメントありがとうございます。お久しぶりですね。お元気でしたか。


>橋下氏が大阪府知事選に出馬表明した直後に、「今さら」懲戒請求された方が多数おられるようですが、法と政治を侮辱していると思えませんか。

12月17日報道の記事のことですね。

「大阪府知事選に立候補を表明した橋下徹(はしもと・とおる)弁護士(38)が5月、山口県光市で起きた母子殺害事件の被告弁護団の懲戒請求をテレビ番組で呼びかけたのは「刑事弁護の正当性をおとしめる行為だ」として、12都府県の市民342人が17日、橋下氏の懲戒処分を所属先の大阪弁護士会に請求した。関係者によると、賛同する市民らが9月以降、知人に声をかけるなどして広がったという。」(朝日新聞)

おそらく、橋下氏への懲戒請求を考えていた人たちは、どこかの弁護士会で懲戒請求の決議が出るのを待っていたのでしょう。東京弁護士会は光市事件の弁護士への懲戒請求につき、「正当な弁護活動で、懲戒処分には当たらない」と議決したとの報道が11月27日にあったことから、その文面を入手し分析してから懲戒請求したのだと思います。それがたまたま、(運悪く?)立候補と重なってしまったのでしょう。橋下氏への懲戒請求をしていた人たちは十分に分析して証拠を丹念に集めていて、今に至ったということであって、橋下氏は突如として立候補を表明したわけですから。ですから、「今さら」懲戒請求ということではないと思います。

http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-693.html
「東京弁護士会、光市事件の弁護士懲戒せず~正当な弁護活動であるがゆえ」


>また一番上に、被害者の家族を、想像だけで侮辱している者が居ますが、問題だとは思いませんか。

新日鉄光の「M」氏では、被害者家族らしいと思えても、これだけでは必ず被害者遺族だと断定しにくいです。


>公益性が全く無いと思うのですがいかがですか

刑法230条の2第2項では「犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす」と規定しています。

もっとも、根拠なく怪しむのはどうかと思いますが。香川県坂出市のパート従業員三浦啓子さんと孫の山下茜ちゃん、彩菜ちゃん姉妹が遺体で見つかった事件では、報道関係者が山下清氏を犯人扱いしていましたが、妥当でなかったと思うのです。
2007/12/20 Thu 08:31:51
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
長文すみません
春霞さん、コメントありがとうございます。
「橋下弁護士への懲戒請求が342通に達した」のなら理解できるんですが、結局「声をかけて」数を集めて一度に送付するという手段は、単に「目には目を」的なやり方にしか見えません。
同じ理由での懲戒請求ならば、1通で良いんですよね?
懲戒請求を呼びかける行為が問題になるのは、橋下氏の問題で表面化して多くの人が知ったかと思います。それが橋下氏への懲戒請求理由の一部であるはずなのに、同じ手段を使うのは「報復」ととらえるのが自然ではないですか。
「弁護士会の決定が出たから出馬を決意した」との確証があるならば納得もできますが、政治活動に対する妨害となると解っていて、このタイミングでの懲戒請求なんて、「たまたま」で済ませられるのでしょうか。選挙後でいいのではないですか。(出馬表明と同日までならばたまたまでしょうけれど。また呼びかけでなく個々の判断ならば納得できますが。)
弁護士を辞めさせたいのなら、「弁護士会の決定後すぐ懲戒請求したかったが、選挙の妨害とならないよう選挙後まで待った。」との理由で、選挙後に請求すれば良いはずです。それを、選挙に影響を与えるのが誰にでも解るこのタイミングで行うというのは、「弁護士を辞めさせたい」だけでなく「知事にさせたくない」という意志が表れていると思えます。
「市民」とのことですので、選挙権のない方も含まれているかもしれません。もし、そのような方々がいて、政治活動を妨害する意志があっての懲戒請求なら、私は許せません。
2007/12/23 Sun 12:12:49
URL | 元関西人 #JOOJeKY6[ 編集 ]
>元関西人さん:2007/12/23(日) 12:12:49
コメントありがとうございます。お返事が遅くなりすみません。


>結局「声をかけて」数を集めて一度に送付するという手段は、単に「目には目を」的なやり方にしか見えません。
> 同じ理由での懲戒請求ならば、1通で良いんですよね?

橋下氏が安易に懲戒請求を煽って、それに乗せられた人たちが500人ほどいたわけです。
それに対して、「賛同する市民らが9月以降、知人に声をかけるなどして広がった」ということであれば、全員で1通ということではないにしても、数人が連名で懲戒請求している可能性が高く、準備期間も長いので相当な証拠資料もあると考えられます。
このように、同じく多数の懲戒請求をした事例であっても、質的な差異があるので、12都府県の市民342人の行動を非難する気にはなれません。


>同じ手段を使うのは「報復」ととらえるのが自然ではないですか。

このブログで触れたように、東京弁護士会での「懲戒しない」との議決内容からすると、橋下氏は反憲法的・反刑事訴訟法的な懲戒請求を煽ったのです。反憲法的・反刑事訴訟法的な行動に対して、阻止すべく懲戒請求を行うことは正当防衛的行動といえるので、非難できないと思っています。普通は、正当防衛的行動は「報復」とは言いません。


>政治活動に対する妨害となると解っていて、このタイミングでの懲戒請求なんて、「たまたま」で済ませられるのでしょうか。選挙後でいいのではないですか

選挙では、有権者は立候補者の政策のみならず、職業、過去の言動、人格をも総合して判断することになります。特に知事となれば権限も大きく、言動も全国報道されることからすれば、慎重な判断が求められます。橋下氏の場合、弁護士としての行動につき、懲戒事由があるのならば、すぐにでも明らかにするよう公表する方が選挙の意義にかなうことです。懲戒請求は「選挙後」では遅いのです。

橋下氏は、反憲法的理解に基づき反憲法的な懲戒請求を煽ったのです。公務員は憲法99条により憲法尊重擁護義務をおっているのですから、反憲法的言動を行う者は、公務員たる知事として不適格者です。このように、憲法を遵守することは、政治家として必要不可欠な条件ですから、反憲法的な言動をしたとして批判(=懲戒請求)を受けたとしても、政治家として必要不可欠な条件がないというだけであって、少しも非難に値しません。「政治活動の妨害」以前の問題です。


>「市民」とのことですので、選挙権のない方も含まれているかもしれません。

市民団体の関係者に声を掛けたのでしょうから、選挙権のない方はいないように思いますけど。「懲戒請求」をするのには国籍、年齢を問わないので、問題視する必要はありませんが。


>もし、そのような方々がいて、政治活動を妨害する意志があっての懲戒請求なら、私は許せません

橋下氏は、多数の懲戒請求があっても弁護活動への妨害にならないと主張していたはずです。懲戒請求が弁護活動への妨害にもならないのならば、政治活動への妨害にもならないというのが論理的だと思います。 

もっとも、橋下氏は以前の発言はまたしてもウソだったのか、選挙妨害みたいなことを言っているみたいですが。橋下氏は平気でウソをつくということなのでしょう。
2007/12/28 Fri 08:10:49
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
春霞さん
> 数人が連名で懲戒請求している可能性が高く
342名もしくはその大半が連名しての請求ならば文句はありません。政治的にもです。

「呼びかけに応じて342名が個々に懲戒請求した」(と読み取れるので)のならば目には目をとの行為だと思います。
また私が、「報復」と言っているのは「342通の懲戒請求」のことで、懲戒請求そのものを非難しているのではありません。従って連名での懲戒請求を報復とは思いません。

選挙に絡めてのことなのですが、結果として「懲戒に値しない」との判断が弁護士会から下された場合はどうなるのですか。
請求者の罰を求めているのではありませんが、懲戒に値しない事を大きく報道され、選挙に影響を与えられたのならば、懲戒請求に対する手間と全く違う損失が発生すると思います。
> 職業、過去の言動、人格をも総合して判断することになります。
「人格が低いから懲戒請求」との342名の発言ともとれるのですが、弁護士会の結論が「懲戒に値しない」と出ても、貶められた人格と選挙結果は元には戻らないのではないですか。まさか選挙のやり直しがあるわけではないですし。

市民団体には国籍・年齢の関係で選挙権の無い方もいます。その方々の「懲戒請求の権利」を否定しているのではありません。
「選挙に影響を与える行為(しかも妥当かどうかの結論は選挙後確定)」を問題視しているのです。もちろん橋下氏が懲戒になれば、市民団体の主張が正しいのですから問題にはならないと思います。また連名ならば、やはり問題とは思いません。
実際どうでしょうか。どんな証拠があるのか解からないのですが、春霞さんは懲戒が妥当だと思われますか。

懲戒請求による弁護活動への妨げ(時間的なものや手間)と政治活動への妨げ(風評、名誉が回復しても選挙後)は異質であると素人目にも判りますが「妨害」の一言で同じことだと春霞さんは主張されるのですか。
2007/12/28 Fri 17:52:19
URL | 名無しの権兵衛 #JOOJeKY6[ 編集 ]
前のコメントは私です
タイトルすら忘れてますね。
2007/12/29 Sat 16:55:21
URL | 元関西人 #JOOJeKY6[ 編集 ]
横入り失礼
光市の事件は追いかけていないので事案の細部に基づく議論はできないのですが、状況の見え方について。

突き詰めると、裁判ないし司法的判断(民事刑事問わず)の正当性をどこに求めるのか、という問いなのだと理解しています。
どうも日本では「実体的真実」が(検察等法曹も含め)大好きなようなのですが;
裁判の正当性を適正手続に求めるとすると、弁護団にできる限りの機会を与えることが、正当性を高めることになるはず(「あなた(被告人)に争う機会をこれだけ提供したのだから、この有罪判決は正しい。あなたに対する不利益な判断を甘受しなさい」)。
弁護側を攻撃する人々は有罪(死刑?)判決を求める人々と重なる部分が多いと了解しているのですが、それは自ら望んでいるものの価値を下げる主張で、奇妙な構図だと思っています。
2007/12/30 Sun 09:02:55
URL | izw134 #HuBhO90w[ 編集 ]
>元関西人さん:2007/12/28(金) 17:52:19・2007/12/29(土) 16:55:21
コメントありがとうございます。


>2007/12/29(土) 16:55:21
>前のコメントは私です

ホストは似てるけど、名無しだったので誰だろうとちょっと困りました。


>「呼びかけに応じて342名が個々に懲戒請求した」(と読み取れるので)のならば目には目をとの行為だと思います。

「呼びかけに応じて342名が個々に懲戒請求した」かもしれないというだけではっきりしないわけですよね? 多数か少数かは肝心な点なので、この点を仮定のまま議論するのは、危なっかしくて、ちょっとできません。


>選挙に絡めてのことなのですが、結果として「懲戒に値しない」との判断が弁護士会から下された場合はどうなるのですか。

これも仮定の議論ですよね? 橋下氏は、反憲法的・反刑事訴訟法的懲戒請求を煽って多数の懲戒請求が殺到したのですから、ほぼ確実に懲戒になるでしょう。90%の確率で。結果として「懲戒に値しない」との判断が弁護士会から下されることは、非常に考えにくいです。


>どんな証拠があるのか解からないのですが、春霞さんは懲戒が妥当だと思われますか。

今回の懲戒請求者がどんな懲戒理由を挙げたのかは不明ですから、今回の懲戒請求が認められるかは分かりません。

ただし、橋下氏がテレビ番組で懲戒を煽った点を懲戒理由にしたのであれば、懲戒が認められると思います。

東京弁護士会が示したように、橋下氏が煽った懲戒請求は全く根拠がなかったのです。それも反憲法的・反刑事訴訟法的懲戒請求を煽ったのですから、依頼者の預かり金を横領したことに匹敵するほど、弁護士として許されない行動でした。懲戒にならないと考える法曹はまずいないでしょうね。


>懲戒請求による弁護活動への妨げ(時間的なものや手間)と政治活動への妨げ(風評、名誉が回復しても選挙後)は異質であると素人目にも判りますが「妨害」の一言で同じことだと春霞さんは主張されるのですか。

以前の橋下氏によれば、多数の懲戒請求だろうと、(弁護士として)名誉や信用を毀損されないというのです。本業である弁護士業務に関する懲戒であるのに、その懲戒は問題ないというのですから、本来業務と無関係な選挙活動に影響する――って論理的に難しくありませんか?
2007/12/31 Mon 23:03:11
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>izw134さん:2007/12/30(日) 09:02:55
コメントありがとうございます。


>裁判の正当性を適正手続に求めるとすると、弁護団にできる限りの機会を与えることが、正当性を高めることになるはず
>「あなた(被告人)に争う機会をこれだけ提供したのだから、この有罪判決は正しい

本当はそのとおりですね。米国では、必要かつ十分な弁護がなされ適正手続きを経た裁判の結果は、それが「真実」であるという意識が通常です。


>弁護側を攻撃する人々は有罪(死刑?)判決を求める人々と重なる部分が多いと了解しているのですが、それは自ら望んでいるものの価値を下げる主張で、奇妙な構図

その通りでしょうね。
懲戒請求や脅迫など弁護活動を妨害すれば、裁判の正当性が揺らぐのですし、再審になる可能性も生じます。なぜ、光市事件において死刑を望む人々が、弁護人の弁護活動を妨害するのか、実のところ妙なことだと思っています。結局は、刑事弁護への理解が欠如しているところに問題があるのでしょうけど。
2007/12/31 Mon 23:04:36
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
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