1.橋下弁護士に対して訴える方針であるとの報道記事は、次のようなものです。
(1) RCCニュース(中国放送)(8/27 18:01)
「光市母子殺害事件弁護団が提訴〜橋下弁護士のテレビ発言で損害賠償請求へ
タレント活動でも知られる弁護士がテレビ番組での発言をめぐってほかの弁護士から訴えられることになりました。山口県光市の母子殺害事件で、被告の元少年の弁護団が弁護団の活動を批判している橋下徹弁護士にテレビ番組で業務を妨害する発言をされたとして、損害賠償を求めて広島地裁に提訴する方針を固めました。
提訴するのは99年に起きた光市母子殺害事件の差し戻し控訴審で、被告の元少年の弁護団に加わっている広島弁護士会の足立修一弁護士や今枝仁弁護士などで最終的に原告の弁護士は4人から6人となる見通しです。
足立弁護士らは橋下徹弁護士が今年5月、大阪のテレビ番組に出演した際、正当な理由がないにもかかわらず弁護団の懲戒処分を弁護士会に請求するよう視聴者に呼びかけて業務を妨害したとして、原告の弁護士1人あたりおよそ100万円の損害賠償を橋下弁護士に求める方針です。
この訴訟のために足立弁護士らには6人から7人の弁護団が組織され、9月3日頃、広島地裁に訴状を提出することになっています。
足立弁護士らの提訴の方針について橋下弁護士は「訴状が出されれば、その上できちんと対応したい」と話しています。 (8/27 18:01)」
(2) 中国新聞('07/8/28)
「光母子殺害で弁護士が提訴へ '07/8/28
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光市母子殺害事件の差し戻し控訴審で、テレビ番組で弁護団の懲戒処分を弁護士会に申し立てるよう呼び掛け、活動を妨害したとして、弁護団に加わる広島弁護士会所属の弁護士数人が、大阪弁護士会所属の橋下徹弁護士を相手に1人当たり100万円の損害賠償を求め、近く広島地裁に提訴する方針を決めた。訴えによると、橋下弁護士は5月下旬、十分な調査もせず、テレビ番組で視聴者に呼び掛けたとしている。」
この2つの記事によると、 足立弁護士ら数名の弁護士は、橋下徹弁護士が、5月下旬、大阪放映のテレビ番組において、「正当な理由がないにもかかわらず」ないしは「十分な調査もせずに」、弁護団の懲戒処分を弁護士会に請求するよう多数の視聴者に呼びかけて(教唆)、業務を妨害したということで、不法行為(民法709条又は719条2項[共同不法行為])に基づく損害賠償請求を求める訴えを起こすということのようです。
2.では、足立弁護士ら数名の弁護士による、橋下弁護士に対する損害賠償請求は認められるでしょうか?
(1) 橋下弁護士は、「懲戒請求ってのは誰でも彼でも簡単に弁護士会にいって懲戒請求立てれますんで何万何十万という形であの21人の弁護士の懲戒請求立てて貰いたいですね。……1万2万とか10万人位この番組見てる人が一斉に弁護士会にいって懲戒請求をかけてくれ……下さったらですね弁護士会の方としても処分出さないわけにはいかないですよ」(「たかじんのそこまで言って委員会」07-05-27放送分)と述べており、この点が重要です。懲戒請求を単なる署名活動と誤解させるような発言です。
仮に適法な懲戒請求であっても、10万人位という過剰な懲戒請求を唆すことは、懲戒請求を受けた者及び所属弁護士会に過剰な負担を求めるものであり、実際上、数百件に及ぶ懲戒請求がなされているのですから、懲戒請求を受けた者及び所属弁護士会に対して業務妨害を生じさせたことは明白です。
ですから、仮に「正当な理由がないにもかかわらず」ないしは「十分な調査もせずに」という要素がない、適法な懲戒請求であっても、10万人位という過剰な懲戒請求を唆すことは、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が十分に成り立つということです。懲戒請求を受けた弁護士は、根拠のない請求により名誉・信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、その弁明を余儀なくされる負担を負うことになるのですから、懲戒請求は署名活動ではないのです。
(2) 「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否〜“母子殺害で懲戒請求数百件”との報道を聞いて」においていくらか検討したように、弁護団は、接見により得られた被告人の(否認)供述及び鑑定書・家庭裁判所の調査官による「少年記録」(精神年齢は4、5歳)・第1審での被告人質問では否認しているといった証拠に基づいて、差し戻し審において殺人罪でなく傷害致死罪であるなど事実誤認があるという弁護活動を行っているのです。
そうすると、弁護人は被告人の利益のために誠実に弁護する(誠実義務)という刑事弁護の基本に沿った弁護活動を行っていることは明らかであって、異論を挟むことも困難です。ですから、「正当な理由がないにもかかわらず」懲戒請求をしたことは明らかであって、橋下弁護士は不当な懲戒請求を唆したことになります。
なお、いまだに「懲戒請求のテンプレートのHP」がありますが、このテンプレートは全く懲戒請求の理由になっていません(「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否〜“母子殺害で懲戒請求数百件”との報道を聞いて」参照)。このHPでも、橋下弁護士のテレビ発言を掲載しており、いまだにこのHPとともに不当な懲戒請求を煽っているのです。
(3) しかも、弁護団は、報道機関に対して、差し戻し控訴審の初公判2日前に、新たな証拠に基づき提出した更新意見書について2時間をかけて説明し、また、当日には100頁ある更新意見書のコピーを記者に配布したのです(週刊金曜日2007.6.8(657号)・人権とメディア第400回、浅野健一「光市母子殺害事件報道 検察メディア一体の弁護士攻撃だ」31頁)。
そうすると、最高裁平成19年4月24日判決によれば、懲戒請求者は「懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように,対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査,検討をすべき義務を負う」のですから、100頁ある更新意見書又はそれに類似する証拠を入手する必要があり、それを読めば、弁護内容が証拠に基づいて行っていることは明らかなので、懲戒事由に当たらないことが明白です。
ですから、このような証拠資料を入手することなく懲戒請求をした者は、「十分な調査もせずに」懲戒請求をしたことは明らかです。特に、テレビ視聴者という立場である者にとっては、100頁ある更新意見書又はそれに類似する証拠を、簡単に入手することは非常に困難です。
なので、橋下弁護士が「懲戒請求ってのは誰でも彼でも簡単に弁護士会にいって懲戒請求立てれます」と唆すことは、「十分な調査もせず」に懲戒請求できることを唆したのですから、明らかに不当な懲戒請求を唆したことになります。
ただし、現在では、差し戻し控訴審において、被告人質問において被告人は殺意を否定しており、鑑定人の証人喚問もなされており、山口県光市「母子殺害事件」 弁護団記者会見(1) 全6回(00:09:07)といった情報やあることから、「100頁ある更新意見書又はそれに類似する証拠」の入手がかなり容易になったと思います。
もっとも、こういった情報を入手すれば、弁護内容が証拠に基づいて行っていると容易に判断できるでしょう。なお、光市事件における最高裁弁護人弁論要旨・補充書は、以前から書籍として出版されています(『光市裁判 年報・死刑廃止2006』発行: 2006年10月)。この書籍は通常人も容易に入手でき、しかも読めば、法律に疎い「通常人」であっても、弁護内容が証拠に基づいて行っているという位は、容易に判断できるでしょう。
なお、橋下弁護士は、ご自身のブログにおいて、「弁護団は、なぜ第1審や第2審と異なる弁護をするのか国民に対して説明していない」として、説明義務違反が懲戒理由にあたると述べています。しかし、説明義務自体(法的根拠がなく、守秘義務違反のおそれがあるので)認められないことはもちろん、差し戻し控訴審の初公判2日前と当日において、報道機関に対して説明しているのですから(一部報道済み)、説明義務を果たしていないという言い分は妄想にすぎません。
(4) もっとも、橋下弁護士に対する損害賠償請求については、多少の問題点があります。すなわち、まだ(多くは)懲戒請求が却下される前の損害賠償請求であるから、不当な懲戒請求かどうか分からないのではないか、という点です。
通常、弁護士に対する懲戒請求に不法行為を認めた裁判例は、懲戒請求が却下された後であることは確かです。しかし、すでに述べたように10万人位という過剰な懲戒請求を唆すことは、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が十分に成り立つのです。
また、前述のように「正当な理由がないにもかかわらず」懲戒請求をしたことは明らかであり、「十分な調査もせず」に懲戒請求できることを唆したのですから、明らかに不当な懲戒請求を唆したことになります。
懲戒処分の決定前で提訴することは、これ以上、不当な懲戒請求をしないように、不当な懲戒請求を抑制するという必要性から行うものと考えられます。このように必要性が高いことを考慮するべきです。
このようなことから、懲戒請求が却下される前であっても、損害賠償請求を求めることは問題ないと思われます。
(5) このような検討からすると、足立弁護士ら数名の弁護士による、橋下弁護士に対する損害賠償請求は認められるものであり、損害賠償請求が認められる可能性が非常に高いと考えます。
足立弁護士らは、損害賠償額として原告1人100万円を予定しているようです。名古屋地裁平成13年7月11日判決は100万円、最高裁平成19年4月24日判決は50万円の賠償金を認めていることから、従来の裁判例並みの額といえます。
もっとも、従来の裁判例は、1つの懲戒請求による損害につき認めた損害額ですから、事情が異なります。橋下弁護士の場合、10万人もの懲戒請求を煽り、結果として数百件の懲戒請求がなされているのですから、煽った行為と個別の懲戒請求との因果関係をすべて立証することは難しいことを考慮しても、数千万円の賠償額を認めることも可能かもしれません。
なお、差し戻し控訴審後の弁護団の記者会見については、山口県光市「母子殺害事件」 弁護団記者会見(1) 全6回(00:09:07)で見ることができます。ぜひご覧下さい。
3.この橋下弁護士に対する損害賠償請求は、一個人への賠償請求という意味だけでなく、広がりのある訴訟です。
(1) 「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否〜“母子殺害で懲戒請求数百件”との報道を聞いて」において紹介したように、母子殺害事件の弁護士に対して、懲戒請求が計数百件に上っており、しかも「元少年を死刑にできないならば弁護士らを銃で処刑する」という極めて悪質な脅迫文が日弁連や新聞社に届いているという、極めて異常な事態になっています。
このような異常事態をもたらした元凶の一因は、橋下弁護士のテレビ発言だったのですから、このテレビ発言は重大な問題であるとして、損害賠償請求を求める訴えを提起する方針を固めたものと思われます。
(2) このような異常事態を問題視しているのは、光市母子殺害事件の弁護団だけではありません。
「山口光市母子殺害 弁護士脅迫で中弁連が抗議声明
8月23日7時51分配信 産経新聞
山口県光市の母子殺害事件公判で、元少年の被告の主任弁護人を務める安田好弘弁護士に、脅迫文などが送りつけられている問題で、中国地方弁護士会連合会(広島市)は22日、抗議声明を発表した。これまでに日弁連と全国18の弁護士会が同様の声明を発表している。
声明では「弁護士の活動が、脅迫行為によって妨害されることは絶対に許されない」としている。また、同日会見した中弁連の大本和則理事長は「弁護士は被告、被疑者の立場に立って、権利を守らなくてはいけないことを理解してほしい」と話した。
中弁連によると、5月末に「元少年を死刑にできないならば弁護士らを銃で処刑する」という脅迫文と模造銃が日弁連に送りつけられたほか、安田弁護士の事務所にも脅迫文が複数送付されているという。」(Yahoo!ニュース(産経新聞8月23日7時51分))
このように、日弁連と全国19の弁護士会が抗議声明を出しているのです。橋下弁護士への損害賠償請求の訴えを提起する方針を固めたことは、中国地方弁護士会連合会(広島市)が8月22日、抗議声明を発表したからこそでしょう。それだけでなく、日弁連と全国18の弁護士会の抗議声明の後押しがあってのことと思います。言い換えると、異常事態を問題視しているのは、橋下弁護士を除く、それ以外の弁護士ほとんどであるという捉え方ができるのです。
(3) もう1つ言えば、エキセントリックな報道状況において、法律の専門家である弁護士という立場で、橋下弁護士が煽った点です。
「大弁護団への批判加熱 山口・母子殺害 顔写真を並べたて
まるで極悪人のさらしものである。『フライデー』7月20日号「山口・光市母子殺害 本村洋氏を絶句させた『大弁護団21人の素顔」。安田好弘主任弁護人を筆頭に光市母子殺害事件弁護団21人の実名や経歴、そして主な弁護人の顔写真を並べたてたものだ。
6月26日から3日間、広島高裁で開かれた審理を伝えるマスコミ報道は予想通り、弁護団を批判する内容ではほぼ一色だ。『週刊文春』7月12日号も「光市母子殺害犯『聞くに堪えない』傍聴11時間」という傍聴記を掲載している。
確かに被害者の本村洋さんの話は胸を打つし、報道する側が被害者感情を斟酌(しんしゃく)するのは当然だ。しかし、この裁判をめぐる報道はあまりにもエキセントリックになりすぎていないだろうか。その典型が冒頭に紹介したさらしもの報道で、同様の記事は『週刊ポスト』も6月15日号で「光市母子殺害犯を守る『21人人権派弁護団』の全履歴」と題して掲載していた。
テレビや週刊誌の弁護団批判報道を受けて、弁護士らへの脅迫や嫌がらせが続いているという。全員の実名を掲載するといった記事は、そうした風潮をあおっているような気がしてならない。
無罪推定どころか、被告人を弁護することさえ許さないという雰囲気である。一般の市民が被害者に同情してそうした感情を抱くことは理解できないことでもない。しかしマスコミがそれを一方的に煽(あお)るという風潮は、危ういと思えてならない。
ついでに書いておけば前述の『フライデー』のさらしもの報道だが、掲載された弁護団メンバーの写真が、古い写真なのか、私の知っている中道弁護士も松井弁護士も全然似てない。こんな写真を載せることにどんな意味があるのかと思ってしまう。(中略) (月刊『創』編集長・篠田博之)」(東京新聞平成19年7月9日付朝刊21面「週刊誌を読む 7月2日〜8日」)
「無罪推定どころか、被告人を弁護することさえ許さないという雰囲気」を、一番正さなければならない立場にいるのが弁護士です。それなのに、エキセントリックな報道と一緒になって煽り立てることは、弁護士として問題ある行動なのです。
「たかじんのそこまで言って委員会」は、出演者が、法律論や刑事弁護とは何かなんて無関係に感情の赴くままにしゃべる事で、視聴者に溜飲を下げてもらうという関西放映の娯楽番組です。関東では問題視される発言も、この関西の番組では(視聴者も娯楽と分かっているので)許されるという意識があって、橋下弁護士も喋っているのでしょう。
そういう何でも許されるという番組に出演する関係上、雰囲気的に過激に話す方向になってしまうのかもしれませんが、法律家という立場では、言ってはいけないことがあるのです。橋下弁護士の“懲戒請求呼び掛け”発言は、許されない発言だったのです。
(4) 橋下弁護士に対して損害賠償請求を求める意義としては、ここまで指摘したような、<1>懲戒請求は署名活動ではない、<2>懲戒処分の決定前での提訴により、不当な懲戒請求を抑制する、<3>マスコミに対して裁判報道の反省を求める(むやみに煽る報道は公正を欠く、テレビスタジオは法廷ではない)、<4>不当な懲戒請求は不法行為が認められるという判例の啓蒙が挙げれらます。
ただ、ほかにも、<5>弁護人に刑事弁護の理解を広める(橋下弁護士が刑事弁護の理解が不十分、ロースクールで弁護士が激増し、刑事弁護の理解が不十分な弁護士が激増する可能性)、<6>裁判員制度を実施前に、刑事弁護の意義を国民に知らせる、といった意義もあるかと思います。
4.マスコミ報道がいかにエキセントリックであろうとも、橋下弁護士がどんなことを言おうととも、市民の側がエキサイトせずに冷静に判断すれば、マスコミも煽ることを止めるしかないのです。
「栄六輔氏は、本誌編集長も出演しているCS放送「朝日ニュースター」(7月21日放送)の番組の中で、「僕がテレビの実験放送から始めたとき、アメリカからジャーナリストが来て『スタジオは裁判所ではないです。スタジオを裁判所にしないように』と繰り返し言われた。いまは裁判所になってるでしょ。『ニュースキャスターは裁判官ではありません』と言われたが、最近は裁判官に近いでしょ」「昔は『村八分』というこれも差別がありましたよね。今はテレビのおかげで『国八分』になっている。日本中でという形になっているのが怖い」と指摘していた。
テレビのスタジオはもちろん、雑誌・ネット上からご近所の世話話の類(たぐい)まで、この事件のことに対してはみんな何かしらの意見を述べる。いわゆる「感想」を話したり、判決を「予想」したり、あたかも誰かの「代弁者」のように怒ったり、それらは「世論」の上に乗っかることが参加条件だ。繰り返されるメディア情報だけを材料に、裁判長や検事になったかのように話す。決して被告の側やそれを弁護する側ではない。この裁判の法廷は広島高裁の中にある302号法廷1つしかないはずなのに、その法廷以外のあちこちで別の「裁判」が進行しているといった方がいいだろうか。いや、それらは決して「裁判」ではなくて、「私刑(リンチ)」に近い。」(創9.10月号・綿井健陽「これでいいのか!!『光市母子殺害事件』裁判報道28頁)
このまま多くの市民が私刑(リンチ)に参加するのか否か、私刑(リンチ)がはびこることで、十分な刑事弁護を受けることができず、冤罪事件が蔓延し、自らの首を絞めることをずっと続けるのか否か。
市民の側が刑事弁護の意義を十分に理解できていない状態で、裁判員制度が実施されれば、市民が自ら関与した裁判で冤罪事件が生じることは確実です。なかには、死刑判決を下すこともあるでしょうから、もし冤罪だと分かったら、一生涯、「無実者を殺した、人殺し」の烙印を背負って生きることになります。
自らの首を絞めることをずっと続けるのか否か、一生涯、「無実者を殺した、人殺し」の烙印を背負って生きる可能性を増加させるのか……。それでも良いのかどうかが問われているのです。
<8月31追記>
「教えて!goo 山口県光市母子殺害事件の弁護士への懲戒請求について」を見ると、質問者は「私は、上記弁護士の懲戒請求を求める『署名運動』のようなモノかと思い、つい義憤にかられて懲戒請求書を5部郵送しました。」と書いています。なんかもう、「あちゃ〜」というしかありません。
「Sezam indyjski」さんの「やはりグダグダだった橋下弁護士」では、「弁護団はいろいろ説明してる」ことがよく分かるような内容になっています。ぜひご覧下さい。
いやいや。この解釈はいくらなんでも無理ありますって。
法律家でもマスコミ関係者でも無い「通常人であれば普通の注意」の範疇にここまで入りませんって。
そんな解釈認めたら「広く一般の人々に対し懲戒請求権を認める」っていう趣旨を完全に没却してしまいますよ。
URL | 七誌 #-[ 編集 ]
おそらくは,ただ単に「どうせこの弁護団は死刑廃止という政治的活動が目的で,真相などどうでもいいんだろう。」とか「『魔術的儀式』とかも死刑回避のために弁護団が(ウソだと分かっていながら)被告人に吹き込んだものなんだろう」という考えから弁護団を批判してるんではないかなと。
あと「裁判がリンチではダメ」という主張は非常に良く分かりますし一般論としては賛成です。私も法律に基づき冷静に判断されるべきだと思います。しかし,「冷静な判断=被告に甘い判断」のは自明ですよね?判断の中には,当然に社会への影響や,被害者の怒り,世論や一般常識的な「正義」とかも当然に含まれますよね?
この「被告を死刑にしろ」と言っている皆さんは,私含めて別にリンチ推進派ではありません。多分。
単に「法律に基づいて冷静に判断したとしても死刑にすべきだろ」という主張なんではないかと思います。
URL | 七誌 #-[ 編集 ]
そんな調査もできず、情報も論理も人は「懲戒請求はするな」という一番単純な論理でしょう。それが厳しい調査義務を認めた最高裁の論理の裏側にあります。
この件で弁護団を批判する人たちは裁判官を気取っているんだと思います。だから、裁判官と独立する弁護士の意義はわかりにくいのでしょう。
少なくとも、あなたの発想はなぜ裁判官と独立して弁護士がいるのか理解しているとは思えません。裁判官的に分析して弁護団批判につなげているからです。
URL | 炎の獅子 #XZm8TX1I[ 編集 ]
関連エントリも拝読しました。たいへん勉強になりました。
橋下弁護士は
>1万2万とか10万人位この番組見てる人が一斉に弁護士会にいって懲戒請求をかけてくれ……下さったらですね弁護士会の方としても処分出さないわけにはいかないですよ<
と、懲戒請求を「数が多ければ効力がある」かのように言ったのですが、これは虚偽(間違った法律知識)を述べた、と言えるのではないでしょうか。
こちらのエントリ始め、いくつかの法律関係者(と思われる)サイトを見ても、「懲戒請求は数が多いと効果がある」と書かれたものは目にしませんでした。橋下弁護士のみがTVで述べていることのようです。
この点を橋下弁護士は視聴者・一般国民に対して説明する責任があると思います。公共の電波使って(いくらバラエティ仕立てとはいえ)、弁護士の立場で言ったことですし。
URL | kiriko #-[ 編集 ]
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/choukaiseikyu2.htm
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/choukaiseikyu1.htm
ありがとう。
URL | 名無し #-[ 編集 ]
>懲戒請求が違法となるのは、明らかに懲戒事由が存在しないのに、それを分かっていながら懲戒請求をかけた場合。
何度も出している平成19年4月24日最高裁判所判例の判示は、
「同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。」
ただし、それを受け売りしても懲戒理由は作れません。裁判で不法行為の訴状が出されたときに、答弁書としてあのブログの内容をそのまま出して、その通りだと納得する裁判官はいないでしょう。成功している弁護士であるなら、大事なのは「自分の意見」ではなく、懲戒判断権者の心証や、弁護士が懲戒取消や不法行為で訴えてきた場合に担当裁判官の抱く心証や判断であることは分かっているはずです。いくら裁判官を批判して、それが筋が通っていても、裁判で負けては意味がありません。
懲戒を支持する人たちにとって、橋下氏のように簡単な説明をしてくれるのは心強いでしょうが、簡単なことを言っているということは、例え彼の提示しない論理に大きな飛躍があったりしても検証できないということです。簡単な説明に飛びつき小難しい説明は無視するのは、こと結論が分かれている場合には危険です。
URL | 名無し #-[ 編集 ]
うーむ。これは何を根拠にそのような判断をされているのですか?別に判例にもそんな記載は無いと思うのですが。
あれは「厳しい調査義務を認めた」っていうより「請求者が常識的に判断して濫用とわかるような懲戒請求をした場合には違法性を認める」という内容ですよ。
炎の獅子さんと,春霞さんの解釈は明らかに誤読かと。
>少なくとも、あなたの発想はなぜ裁判官と独立して弁護士がいるのか理解しているとは思えません。裁判官的に分析して弁護団批判につなげているからです。
教科書に書かれてるレベルの理解はしてると思うんですけどね〜・・・
炎の獅子さんが,どのような分析に対して「裁判官的」といわれているのかは判りかねますが,私としては外から裁判をウォッチしている「善良な一市民」の意見のつもりです。
URL | 七誌 #l/1fEPD6[ 編集 ]
あの事件は常識的に見て変な懲戒請求だったから、あそこまで言わなくとも不法行為成立は認められたかもしれませんが、あの事件を解決するためだけに最高裁があんな一般論に使える理屈を言うと思っているのでしょうか。
民事裁判が濫訴で不法行為になる判例など、その件では不法行為にならないと言われたのに今の実務はその判例に従って不法行為の成立いかんを判断し、不法行為成立を認めた例もあるそうです。
また、懲戒請求を広く認めたのは懲戒の適正な行使のためにあると最高裁判決にありますが、十分な根拠もないのに行う懲戒請求が、適正な懲戒権の行使に役立つのでしょうか。それが個々の弁護士の苦痛に上回るものなんでしょうか。
懲戒請求は請求者本人を助けるための制度ではないのは最高裁判決以前から承認されてきたところですよ。
紀藤弁護士は、第三者の懲戒請求は基本的に違法と言ってます。
あなたが懲戒制度の趣旨をどうとらえているか知りませんが、かなりずれていると思いますよ。
URL | 炎の獅子 #XZm8TX1I[ 編集 ]
>2007/08/31(金) 00:10:00
>えー・・・ それはないでしょう・・・・
>>懲戒請求者は(中略)100頁ある更新意見書又はそれに類似する証拠を入手する必要があり
>いやいや。この解釈はいくらなんでも無理ありますって。
ネットでの主張を見る限り、弁護内容が懲戒事由にあたるというのが、橋下弁護士以外の方の主張です。
報道情報は、報道機関が加工し、各報道機関独自の意見を含む情報ですから、よく吟味する必要があることは(メディアリテラシー)、小学生でも理解すべきこととされています。↓
「小・中学生向けメディア・リテラシー教材の貸出し」
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/hoso/kyouzai.html
ですから、通常人、すなわち大人であれば、テレビや新聞報道の記事を見ただけでは、「事実上及び法律上裏付ける相当な根拠」にならないことは、当然です。
そうなると、弁護内容を正確に理解する必要がある以上、なるべく正確性を担保するためには、100頁ある更新意見書又はそれに類似する証拠を入手する必要があります。
近時(といっても数年前からですが)、安易な懲戒請求が問題視されている状況では、100頁ある更新意見書又はそれに類似する証拠を必要とすることは、無理のない判断です。
>法律家でもマスコミ関係者でも無い「通常人であれば普通の注意」の範疇にここまで入りませんって。
最高裁判決の「請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに」の解釈ですね。
これは、「不当訴訟」の最高裁判例と比較すると分かりやすいのですが、「不当訴訟」の最高裁判例では、事実的・法律的根拠を欠くことを知り、または通常人であれば容易に知りえたのにあえて訴えを提起した場合とは、悪意または重過失の場合を意味するというのが、一般的な民法解釈です。
そうすると、最高裁判決の「請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに」とは、悪意又は軽過失を意味すると分かると思います。
民法709条にいう「過失」は軽過失のことですから、最高裁平成19年4月24日判決は、文言どおりの解釈を示したのであり、「通常人であれば普通の注意」にはさほどの意味はないということです。この解釈は、別にオリジナルということではなく、ごく一般的な民法解釈です。念のため。
>そんな解釈認めたら「広く一般の人々に対し懲戒請求権を認める」っていう趣旨を完全に没却してしまいますよ。
弁護士法58条が広く一般の人々に対し懲戒請求権を認めたのは、「自治的団体である弁護士会に与えられた自律的懲戒権限が適正に行使され,その制度が公正に運用されることを期したもの」(最高裁平成19年4月24日判決)であり、弁護士会の適正運用の確保という、弁護士会の組織のための制度であって、国民や利害関係者のための権利ではありません。
炎の獅子さん(2007/08/31(金) 01:37:57)が「窓口を開いているのは、一般人にもしかすると懲戒すべき弁護士を発見する情報や論理を持っている人がいるかもしれないから窓口」と書いていることは、弁護士法の解説書や判例を分かりやすく説明したものであり、弁護士法の解説書や判例に沿った一般的な理解です。
また、炎の獅子さん(2007/09/01(土) 01:36:28 )は「紀藤弁護士は、第三者の懲戒請求は基本的に違法」という見解を紹介して下さっていますが、現在の裁判例からすると、的確な内容です。弁護士法58条の「何人」は、裁判例からするとほとんどの第三者は含まれないわけです。
>2007/08/31(金) 00:33:01
>この弁護団批判する皆さんって別に「弁護」っていう制度自体を批判してる訳じゃないんですよ。
懲戒請求が数百件(千件にも及ぶと指摘するブログもあり)もあることを忘れていませんか? 多くの弁護士会が「弁護士は被告、被疑者の立場に立って、権利を守らなくてはいけないことを理解してほしい」と述べて抗議声明を出していることを忘れていませんか?
懲戒請求が認められれば、被告人の弁護活動ができなくなる(弁護士法第57条。2年以内の業務の停止、退会命令、除名)のですから、被告人に対する「刑事『弁護』っていう制度自体を批判」しているのとほとんど同じです。
>この「被告を死刑にしろ」と言っている皆さんは,私含めて別にリンチ推進派ではありません。多分。
違います。貴方も含めてリンチ推進派です。刑事弁護人が、弁護の基本原則である誠実義務に沿った弁護活動を行っているのに、それがおかしいとして、懲戒請求までするのですから、刑事弁護の否定と同じだからです。誠実義務に沿った弁護ができない裁判は、十分な弁護とはいえず、適正手続(憲法31条)を欠く裁判であって、リンチと同じだからです。
>2007/09/01(土) 00:35:53
>あれは「厳しい調査義務を認めた」っていうより「請求者が常識的に判断して濫用とわかるような懲戒請求をした場合には違法性を認める」という内容ですよ。
う〜ん。あっているような間違っているような言い方ですね。法律に携わる者が懲戒請求する場合には、最高裁平成19年4月24日判決は「常識的」な注意義務ですが、一般人にとっては厳しい注意義務かと思います。
最高裁平成19年4月24日判決を、学者の従来の解説にそった形で言い換えると、「自らの懲戒請求が事実的・法律的根拠を欠くことについて悪意又は軽過失があれば、不法行為を認める」ということです。
そうなると、不法行為における過失責任を認める範囲は広いことから、「懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について、調査・検討すべき義務」が重要になってきます。不当訴訟では、重過失がなければ、「不当」でないことと対比すると、分かりやすく言えば、不当な懲戒請求では、懲戒を受けた弁護士と訴訟して勝訴できるほどの証拠が必要となるのでしょう。これは、かなりシンドイです。
このような意味から、法律に携わる者にとっては、最高裁平成19年4月24日判決は「常識的」な注意義務ですが、一般人にとっては厳しい注意義務だろうと判断できるわけです。
最高裁は、厳しい注意義務をかしているとの評価は、すでに民事法学者も指摘済みのことです。
>炎の獅子さんと,春霞さんの解釈は明らかに誤読かと
えーーー! 「誤読」ですか!?!?(^^ゞ
ここのエントリーで書いていることは、不当訴訟や不当な懲戒請求の判例解説、弁護士法解説を読んで書いたものであり、しかも、法律論に関しては自説を展開したというほどの内容はありません。なので、「誤読」を展開するほどの内容ではないのです。
もちろん、一般的な法解釈論も含めて説明しているので、一般的な法解釈論を知らないと、「誤読」と誤解する余地はあるかもしれませんね。
もしかして、七誌さんは懲戒請求してしまったんですか? 「明らかな誤読」と批判し、オリジナル解釈論で安心することは止めた方がいいと思います。
>そんな調査もできず、情報も論理ももたない人は「懲戒請求はするな」という一番単純な論理でしょう
その通りです。
訴訟などで接していた弁護士を懲戒請求する場合でも、裁判例も安易な懲戒請求が増えている批判なのに、視聴者という立場で懲戒請求ができるわけがありません。
懲戒請求は、テレビショッピングではないのですから、そうそう安易に請求しては困ります。
>この件で弁護団を批判する人たちは裁判官を気取っているんだと思います。だから、裁判官と独立する弁護士の意義はわかりにくいのでしょう。
物事には役割分担というものがあります。
弁護士には被告人の利益だけを考えるという立場、裁判官は検察側と弁護側の攻撃防御を聞いて、公正な判断をする立場にいるのです。
この件で弁護団を批判する人たちは、報道で加工された、わずかな弁護内容だけを基にして、どうこう論じているのですから、「裁判官を気取っている」に過ぎません。裁判の部外者にとっては、裁判内容の正確な理解さえできないのに。
裁判の当事者以外の者にとっては、裁判内容から、いかに犯罪の抑止・予防につなげるのか、もっと犯罪被害者にそった保護が必要ではないかなどへ勢力を注ぐことこそ、もっとも相応しい役割ではないかと思います。
これから裁判員制度も実施されます。法曹三者の役割・刑事弁護の意義の理解はもちろん、刑事訴訟手続の理解も必要です。刑事弁護の弁護内容を批判している暇はないはずなのですが……。
>紀藤弁護士は、第三者の懲戒請求は基本的に違法と言ってます
情報ありがとうございます。紀藤弁護士のご指摘は、現在の裁判例からすれば、適切な理解ですね。
>関連エントリも拝読しました。たいへん勉強になりました。
ありがとうございます。
>懲戒請求を「数が多ければ効力がある」かのように言ったのですが、これは虚偽(間違った法律知識)を述べた、と言えるのではないでしょうか。
虚偽ですね。請求された事実が弁護士法58条の懲戒事由にあたる否かだけであり、いくら数が多くても効果(多いと認められやすい?)がある訳がありません。
>こちらのエントリ始め、いくつかの法律関係者(と思われる)サイトを見ても、「懲戒請求は数が多いと効果がある」と書かれたものは目にしませんでした。橋下弁護士のみがTVで述べていることのようです。
「懲戒請求は数が多いと効果がある」なんて、法律関係者ならまず、誰も言いませんよ。懲戒請求は署名活動ではないのですから。
>この点を橋下弁護士は視聴者・一般国民に対して説明する責任があると思います。公共の電波使って(いくらバラエティ仕立てとはいえ)、弁護士の立場で言ったことですし。
弁護士法2条によると弁護士は「法令及び法律事務」するべきなのに、虚偽の法解釈を説明したのですから、一般国民に対して説明責任がありますね。
法律的にも、テレビ局側と弁護士という立場も含めて出演契約を締結しているはずですから、テレビ番組内で間違った法解釈を述べたら、契約上、(その付随義務として)正すべき義務が生じるかと思います。
なので、仰るとおり、「橋下弁護士は視聴者・一般国民に対して説明する責任がある」と思います。
ただ、「説明」するってことは、全面的に謝罪するってことですから、本当に「説明」するのかな〜とは思いますけどね。出演者全員の発言も無茶苦茶で問題だったですし。だんまりで終わりか、よくて説明なく降板するくらいでしょうか。
本当に訴訟になれば、橋下弁護士が東京の番組で出演することは、ほぼなくなるかと思いますが。
>拙HPへ掲載させていただきました。
>お疲れ様。
ありがとうございます。
ゆうこさんのHPに掲載して頂けると、何か立派な感じになりますね(汗)。
>いくらご専門とは言え、こんなご立派なことを物されるのは簡単ではない、と御労苦に、こうべを垂れています。
法律論は専門ですが、普段はここまで急ぐこともないですし、ブログでは法律論以外の部分(背景など)も含めて論じていますので、疲れました(汗)。
>UPの作業の中で、内容が(私などには)難しいものですから、何度も拝読して・・・時間がかかりました。
すみません。
難しく思うのは、文章量が多いですし、(特にこのエントリーは)文章の推敲が足りないせいもあるかと思います。これからも、なるべく分かりやすい内容にするよう、心掛けたいと思います。
まだ,していないです。ゆっくりと文案考えてから出そうとは思っていますが。
URL | 七誌 #-[ 編集 ]
>最高裁判決の「請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに」とは、悪意又は軽過失を意味すると分かると思います。
ふむ。なるほど。これはちょっと判例解説でも読んで調べてみる価値はありそうですね。ご指摘どうもありがとうございました。
>ネットでの主張を見る限り、弁護内容が懲戒事由にあたるというのが、橋下弁護士以外の方の主張です。
あらら。本当だ。テンプレサイトのテンプレでは弁護士職務基本規程には触れられていないですねぇ。わざわざサイトに書いてあるんだから書けばいいのに。。
確かにあのテンプレだと「弁護人は被告の証言通りの主張をしているだけなので問題は無い」みたいな返し方をされてしまいますんで文案には問題があるかなと。
まあ多分,請求者諸兄の言わんとするのは「安田弁護団は死刑回避という自らの政治的目的を達成するために,弁護団自らが考えたウソのストーリーを被告に証言させている。よって,これらは弁護士職務基本規程
第75条に違反するので懲戒請求すべきである。」という事かと。
>弁護内容を正確に理解する必要がある以上、なるべく正確性を担保するためには、100頁ある更新意見書又はそれに類似する証拠を入手する必要があります。
上記を前提に考えると問題となるのは「弁護団が『ちょうちょ結び』『魔術的儀式』等の偽証を被告にそそのかした」という事の根拠となる資料が入手できるか否かです。
本事件の事実関係については最高裁で「他の動かし難い証拠との整合性を無視したもので失当であり,本件記録によれば,弁護人らが言及する資料等を踏まえて検討しても,上記各犯罪事実は,各犯行の動機,犯意の生じた時期,態様等も含め,第1,2審判決の認定,説示するとおり揺るぎなく認める」と弁護側の主張は完全に否定されています。
従い,懲戒請求者が最高裁の判例に基づいて事実認定を行うのは何ら問題は無いと思われます。
この事実認定に立てば,現在の弁護団の主張はウソということになり,そのウソは弁護団がそそのかしている可能性が疑われます。
で,ロクに法律知識も無いであろう被告が弁護団が変わった途端「魔術的儀式」等という主張をするとはまず考えられないので,弁護団による「そそのかし」と考えられます。
以上の主張をするのに必要な資料は,最高裁の判例と弁護団が「魔術的儀式」「ドラえもん」といった主張をしていることを示す資料であり,それは複数の報道機関の記事で十分であると思われます。
別に懲戒請求者側が公開されてもいない更新意見書まで入手する必要はありません。
そんなものは被調査人から各弁護士会へ提出すべきものです。
>>この「被告を死刑にしろ」と言っている皆さんは,私含めて別にリンチ推進派ではありません。多分。
>違います。貴方も含めてリンチ推進派です。
春霞さんの仰るリンチの定義がよくわかりませんが「弁護士の弁護方法に何らかの制限を設けるべき」と主張する人を称して「リンチ推進派」といっておられるのであれば,確かにその通りかと。別に否定しませんし,なんら恥ずべき事とも思いません。
私としては弁護士職務基本規程に反するような偽証をそそのかしたり,故意に裁判手続きを遅延させるような弁護方法は厳しく制限されるべきと考えていますので。あとは,犯罪被害者の人権とかにも何らかの方法で配慮すべきかと考えております。
URL | 七誌 #l/1fEPD6[ 編集 ]
また、被告人の供述を、法廷で判りやすく構成しなおすことは、弁護人が通常やることであり、全く問題ありません。そもそも供述調書などはそういう風にできています。
弁護人がたきつけなければ言うとは考えられないといっても、それは全くの推測の域を出ません。本当だったからという可能性や、死刑が怖くなった被告人が言い出したという可能性などもあります。
平成19年4月24日判例は「相当な根拠」を調査検討する義務を認めており、可能性がある程度のもので懲戒請求をすればアウトでしょう。
また、仮に弁護団がたきつけたとしても、証拠から見て疑われる被告人に有利な情状は最大限主張していくのは、刑事弁護のイロハであり、懲戒事由になることはありえません。
例えば、民事裁判で勝った弁護士の相手方が、自分が負けたのはあの弁護士が偽証させたからだと思い込んだら、これと言って偽証の根拠がなくても懲戒請求してもいいのでしょうか。
まぐれ当たりしない限り、懲戒請求は棄却され、不法行為の賠償請求と虚偽告訴罪処罰のおまけがついてきます。
URL | 炎の獅子 #XZm8TX1I[ 編集 ]
つまり、「誰でもできる」のはその通りですが、「気軽な気持でやってはならないもの」なのです。
懲戒請求したということは、刑事告訴したも同然なのです。
つまり、刑事告訴を行う者と同様の調査義務があるということです。
しかも、懲戒請求のうち「弁護団は死刑廃止のために運動している」などは事実無根であり、少しの調査をすればすぐ分かることです。
URL | あああ #qbIq4rIg[ 編集 ]
某巨大掲示板でこの懲戒請求について語られていたので、いろいろとHPをめぐって調べているうちにここまでやってまいりました。
この橋下弁護士の一件についての春霞さんの考察は判例を引用した理論的なもので、非常に参考になりました。
そこで花霞さんに質問なのですが、平成19年判決が本文にあるような注意義務を一般人に課しているとすると、一般人より高度な注意義務を課せられている弁護士が懲戒請求する場合には、本文の調査のほかにいったいどのような調査をすることを要求されるのでしょうか。
花霞さんが例としてあげている意見書の入手などは、たとえ弁護士であっても当該訴訟とは無関係の者が入手できるギリギリのラインのものではないかと思うのですが、これ以上の注意義務を弁護士に要求するとなると、実質的に訴訟当事者以外の者が懲戒請求を起こすことが不可能となり、懲戒制度の趣旨が没却されてしまう気がします。
よっては私は1番目のコメントの七誌さんのように、一般人に対して課せられている注意義務は、もっと軽いものではないかと考えています。
お手数をおかけしますが、回答をよろしくお願いいたします。
URL | ISGM #ehI39bI6[ 編集 ]
>>もしかして、七誌さんは懲戒請求してしまったんですか?
>まだ,していないです。ゆっくりと文案考えてから出そうとは思って
う〜ん。文案次第でなんとかなる問題ではないと思いますが……。
>請求者諸兄の言わんとするのは「安田弁護団は死刑回避という自らの政治的目的を達成するために,弁護団自らが考えたウソのストーリーを被告に証言させている。よって,これらは弁護士職務基本規程第75条に違反するので懲戒請求すべきである。」という事かと
>現在の弁護団の主張はウソということになり,そのウソは弁護団がそそのかしている可能性が疑われます
>私としては弁護士職務基本規程に反するような偽証をそそのかしたり
弁護団が、弁護士職務基本規程75条(偽証のそそのかし)違反を行ったという主張ですね。
炎の獅子さん(2007/09/02(日) 04:36:27)が「被告人が言っていたことは、基本的に供述調書に書いてあったこと」と指摘されているように、被告人はウソをついていないようです。
もし懲戒請求者が、被告人の主張がウソだというのならば、供述調書を入手する必要があるのでしょうね。
それに、弁護士職務基本規程75条の「偽証」は偽証罪(刑法169条)と同義と理解できるので、そうすると、偽証罪では、刑事被告人は自己の刑事被告事件についてウソをついても処罰されないと解釈されています。
なので、被告人の供述が「偽証」にあたらない以上、弁護人が仮にウソをそそのかしても(=教唆)、弁護士職務基本規程75条違反になりません(正犯が成立しない場合は教唆犯は不成立。共犯の従属性と言います)。言い換えると、弁護士職務基本規程75条は、弁護人が、被告人以外の者に虚偽証言をさせることを予定しているかと思います。
このように、弁護士職務基本規程75条違反であるとの主張は、まず無理……というか不可能だと思いますけどね〜。
それに、元々、刑事弁護人が被告人にウソをつくように唆すことはあり得ないというのが実情でしょうけど。
>上記を前提に考えると問題となるのは「弁護団が『ちょうちょ結び』
幼児の首に結んであった「ちょうちょ結び」は、客観的事実であり、ウソではありません。第1審段階から明らかにされている事実です。まだ、ご存じなかったのですか?
最高裁判決後でしょうね、この事実が報道されるようになったのは。妙なことですが。
>本事件の事実関係については最高裁で「他の動かし難い証拠との整合性を無視したもので失当であり
光市事件最高裁判決のことですね。ちょっと該当部分の判示を引用してみます。
「なお,弁護人安田好弘,同足立修一は,当審弁論及びこれを補充する書面において,原判決が維持した第1審判決が認定する各殺人,強姦致死の事実について,重大な事実誤認がある旨を指摘する。 しかし,その指摘は,他の動かし難い証拠との整合性を無視したもので失当であり,本件記録によれば,弁護人らが言及する資料等を踏まえて検討しても,上記各犯罪事実は,各犯行の動機,犯意の生じた時期,態様等も含め,第1,2審判決の認定,説示するとおり揺るぎなく認めることができるのであり,指摘のような事実誤認等の違法は認められない。」
これは、「なお書き」での判断、すなわち傍論での判断ですね。 傍論での判断は法的拘束力がないのが基本ですし、たとえ拘束力を認めても、新しい証拠資料が取り調べられれば、拘束力がないと解釈されています。
このように、最高裁の認定に拘束されないので、最高裁の認定を持ち出しても、意味がないです。かりに弁護団に不利な法解釈をしても、少なくとも争う余地のある解釈ですから、最高裁の認定に反する主張をしたからといって、「懲戒事由」にあたるというのは、無理……というかこれも不可能じゃないかな〜。
しかも、差し戻し控訴審では、鑑定人に証言させているのですから、控訴審の裁判官自身が、最高裁の認定を覆す可能性のある訴訟追行を認めているのです。明らかに「懲戒事由」になる主張なら、こういった訴訟追行は難しいかと。だから、差し戻し控訴審の状況を考えると、余計に最高裁の認定に反する主張をしたらダメなんていえないでしょうね。
余談になりますが。
「なお書き」での事実認定は異例ですし、「なお書き」でも拘束力があるのか否か、いまだ迷いがあります。いい資料があったら教えて下さい。
>故意に裁判手続きを遅延させるような弁護方法は厳しく制限されるべきと考えていますので
最高裁での欠席について「遅延」とする意味でしたら、↓でコメントしたように、「遅延」にあたりません。
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-451.html#comment1588
>なんら恥ずべき事とも思いません
恥じて下さい。
>犯罪被害者の人権とかにも何らかの方法で配慮すべきかと考えております
「被害者の人権に配慮した弁護内容にせよ」と求めるのですか? そうしないと、懲戒事由だと?
刑事裁判は被害者のための裁判ではなく、刑事弁護人は被告人の利益のために誠実に弁護するのが役割なので、この主張も無理です。
もちろん、被害者と示談するとか、被害者と加害者の対話の橋渡しをするという限度では被害者の人権への配慮は可能でしょうけど。
被害者の人権に配慮する役割を担うのは、検察官(及び政府)です。裁判制度が、検察官、弁護人、裁判官に分かれて訴訟を進行するのは、役割がみな異なるからなのです。それぞれが違う役割をするからこそ、訴訟で真実・事実を明らかになり、公正な裁判が可能となるのです。
>仮に弁護団がたきつけたとしても、証拠から見て疑われる被告人に有利な情状は最大限主張していくのは、刑事弁護のイロハであり、懲戒事由になることはありえません。
その通りです!!!
弁護団は、「刑事弁護のイロハ」にしたがった弁護内容を裁判で主張しているのですから、100%懲戒事由になりえないです。
しかも、被告人が殺意を否定し、殺意否定に結び付けうる鑑定書もあるのですから、傷害致死を主張しなかったら、弁護団の方こそほぼ100%懲戒処分になってしまいます。
要するに、弁護団を非難する方たちは、「100%懲戒にならない弁護を非難し、ほぼ100%懲戒にあたる弁護をせよ!」と言っているのと同じですから、訳が分かりません。
>弁護士への懲戒請求は、虚偽告訴罪の対象ともなっているわけですから、刑事告訴・告発と同じような行為です。
>つまり、「誰でもできる」のはその通りですが、「気軽な気持でやってはならないもの」なのです。
「弁護士への懲戒請求は、虚偽告訴罪の対象ともなっている」という説明が一番明快ですね。そう、安易に懲戒請求できないことが分かりやすいです。
>しかも、懲戒請求のうち「弁護団は死刑廃止のために運動している」などは事実無根であり、少しの調査をすればすぐ分かることです。
その通りですね。
光市事件に関しては、第1審、第2審で無期懲役とされ、それに対して被害者の遺族である本村洋氏が強く死刑を求め続け、検察官が上告した結果、原判決が破棄されたのです。
この経過からすると、検察官や本村氏が「死刑拡大運動」のためこの事件を利用したのであって、弁護団がこの事件を「死刑廃止運動」のために利用したといわれる筋合いではないのです。
>非常に参考になりました。
ありがとうございます。
>実質的に訴訟当事者以外の者が懲戒請求を起こすことが不可能となり、懲戒制度の趣旨が没却されてしまう
>一般人に対して課せられている注意義務は、もっと軽いものではないかと
やはり弁護士法58条1項が「何人も」懲戒請求できるとしている点へのこだわりがあるようです。「何人」と規定しているから、一般人には注意義務を軽減し、なくべく広く請求させるべきと理解するだと思います。
しかし、その理解は誤解なのです。その誤解を解くために、懲戒請求と類似する告発制度の場合における扱いを挙げておきます。
刑事訴訟法239条1項は「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」と規定しています。しかし、告発をするに当たっては、犯罪の嫌疑をかけるのに相当な客観的根拠を確認してなすべき注意義務があり、かかる義務を怠って告発した場合は、相手方に対して不法行為に基づく損害賠償責任を免れないことが判例上認められています(判例タイムズ840号144頁)。
そうすると、一般人であっても(警察へ)刑事告発する場合は、犯罪嫌疑があるという相当な証拠まで確認しないといけないのです。これはかなりキビシイですね。
このように「何人も」と規定しても、「一般人には注意義務を軽減し、なくべく広く請求させるべき」という解釈はしていないのです。そして、この解釈は、告訴・告発と類似する懲戒請求の場合にも妥当するというわけなのです。
>平成19年判決が本文にあるような注意義務を一般人に課しているとすると、一般人より高度な注意義務を課せられている弁護士が懲戒請求する場合には、本文の調査のほかにいったいどのような調査をすることを要求されるのでしょうか。
平成19年判決は基本的には一般人・弁護士問わず、同じ注意義務を課したものです。ただ、補足意見では、弁護士が懲戒請求をする場合には慎重であるべきとしているので、実質的には一般人よりも高い注意義務を課しているといえるかもしれません。
基本的には弁護士も一般人と同じ注意義務なので、弁護士が懲戒請求する場合にも、「本文の調査」で足りるかと思います。
ただ、注意してほしいことは、光市事件弁護団は、殺意否定に結びつく証拠と被告人の殺意否認に基づいた弁護活動を行っているのですから、被告人の利益のための弁護を行っているのです。被告人の利益のための弁護である以上、どんなに調査を尽くしても、懲戒事由にあたることはありません。
言い換えると、弁護内容は懲戒事由にあたらないことが明らかなので、一般人に調査義務を軽減するか否かの議論は、ほとんど意味がないのです。
>実質的に訴訟当事者以外の者が懲戒請求を起こすことが不可能となり、懲戒制度の趣旨が没却されてしまう気がします。
懲戒事由によるので、基本的には一概に言えません。ただ、仰るとおり、訴訟当事者以外の者が懲戒請求を起こすことは不可能でしょうね。
法解釈一般に言えることなのですが、濫用事例が多発すれば、判例や法解釈は濫用を抑えるため、どんどん制限していくのが常なのです。
近年、懲戒請求は安易な懲戒が多くなり、警鐘を鳴らすべく不法行為責任を認める裁判例が増加しています。ですから、「訴訟当事者以外の者が懲戒請求を起こすことが不可能」になるのも、当然の成り行きかといえるのです。
しかも、光市事件の弁護団に対して、3900件もの懲戒請求がなされたとか(毎日新聞9月4日付)。これでは、より一層、懲戒請求に対する不法行為責任は認められ、懲戒請求は制限されていくでしょう。
橋下弁護士は、何万人と懲戒請求してほしいと煽ったのですが、こんなことをしたら、懲戒請求が認められるどころか逆効果になったと思います。
春霞さんは懲戒請求による不法行為については一般人と弁護士は基本的に同じ注意義務が課せられると考えておられるようですが、不法行為における過失の認定について、客観的過失を主に判断しながらも、行為者の具体的事情(主観的過失)も考慮に入れて判断する以上、弁護士や医者などにはより高度な注意義務が課せられると解するのが相当なのではないでしょうか。
業務者等に対して一般人より高度な注意義務を課すのは、一般不法行為に共通する原則なのではないかと思うのですが。
なぜ一般人に課せられる注意義務をある程度軽くするべきかというと、懲戒請求についてその後の結果としては
1.懲戒相当
2.懲戒不相当だが懲戒請求の濫用とまではいえない
3.懲戒不相当かつ懲戒請求の濫用であり、不法行為成立
があると思うのですが、あまり一般人に高度な注意義務を課すと、このうち2に当てはまる場合が少なくなってしまうことになると思います(注意義務違反→過失ありとなるので)。
そうなると懲戒不相当となった場合はそのまま不法行為を構成することになるのですが、日弁連のHPには、懲戒請求のうち9割以上は不相当で決着がついており、この不相当となった懲戒請求がほぼ全て不法行為を構成するとなると、懲戒制度は原則として「身内が身内を裁く」形となっている以上、問題が大きいと考えるからです。
あと、平成19年判決の解説(判タ1242号107頁)には次のようなことが書かれていました。
「(前略)しかしながら,本判決は,弁護士に対する懲戒請求について,訴えの提起の違法性に絞りをかけた前掲最三小判昭63.1.26の基準と比較して請求者に対してやや厳しい注意義務を課し,訴えの提起の場合よりも不法行為の成立範囲を広く認め得る基準を採用した。両者の文言を比べると,前掲最三小判昭63.1.26の基準では「通常人であれば容易にそのことを知り得たのに」とされている部分が,本判決の基準では「通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに」とされており,同じく「著しく相当性を欠く場合に限り」とされている部分が,単に「相当性を欠くと認められるときには」とされている。この差異は,裁判を受ける権利が憲法上の権利であるのに対し,弁護士の懲戒請求権は公益の観点から一般に認められた法律上の権利であること,紛争解決を目的とする民事訴訟の提起と被懲戒者である弁護士に非難を向ける懲戒請求とは性質が異なり,懲戒請求は,むしろ,告訴・告発の制度に類似する側面があるといえることなどを考慮したものであると考えられる。もっとも,本判決が,告訴・告発について述べられているような注意義務,すなわち「犯罪の嫌疑をかけることを相当とする客観的嫌疑を確認すべき注意義務」(例えば,大阪高判昭55.9.26判タ436号104頁,東京地判平10.2.20判タ1009号216頁など)と同様の注意義務を懲戒請求者に対して課したものではない点についても,本判決の判示から読み取ることができるであろう(後略)」
つまり告訴する場合に要求される注意義務よりは、懲戒請求に要求される注意義務は軽いようです。
この点からも、本文にあるような注意義務は、一般人に対しては重過ぎるのではないかと感じる次第です。
URL | ISGM #u3MRTyDc[ 編集 ]
また、最高裁判決は懲戒制度の趣旨を逸脱する一例として「通常人であれば知りえた」というのを挙げたに過ぎません。
弁護士にはもっときつい注意義務(例えば「通常弁護士が知りうる」とか)ということもありえます。
落としどころは、判例の集積次第になるかもしれません。今度の提訴は特殊すぎて使い勝手が悪いでしょうけど。
最高裁の基準を一般人に対して重いと見るのは、実は私もそんなに間違った感覚だとは思えないのですが、ただ弁護士としても刑事被告人に等しい不安定な地位におかれるのも間違いありません。刑事補償のような手当てもありません。今のままでは濫請求抑止の必要は高いです。
懲戒請求を受けた弁護士の負担をもっと軽くするような運用や弁護士法改正が一番全うなんじゃないかと思います。
URL | 炎の獅子 #XZm8TX1I[ 編集 ]
>春霞さんは懲戒請求による不法行為については一般人と弁護士は基本的に同じ注意義務が課せられると考えておられるようですが
「私の」見解というより、最高裁平成19年4月24日判決の立場です。最高裁平成19年4月24日判決は、一般人と弁護士に不法行為に基づく損害賠償を求めた事案で、しかも判示部分では一般人と弁護士とで注意義務を区別していませんから、基本的に同じ注意義務と判断しました。平成19年判決の解説(判タ1242号107頁)でも、一般人と弁護士とで注意義務を区別する説明をしていないことからも、明らかだと思います。
もちろん、繰り返しになりますが、実質的には弁護士にはある程度高度な注意義務を課しているのでしょうけど。
>業務者等に対して一般人より高度な注意義務を課すのは、一般不法行為に共通する原則なのではないか
東京地裁平成5年11月18日判決では、弁護士に高度な注意義務を課していましたね。ただその後は、不当な懲戒請求事案の裁判例では、弁護士に高度な注意義務を課したものは(探した範囲では)見つかりませんし、最高裁自体が触れていないのでなんとも……。
>なぜ一般人に課せられる注意義務をある程度軽くするべきかというと、懲戒請求についてその後の結果としては
>本文にあるような注意義務は、一般人に対しては重過ぎるのではないか
裁判例にない「ある程度軽い」注意義務ですので、その意味がよく分かりませんのでなんともいえません。ただ、ご自分の見解として主張するのであれば、それはそれでいいと思います。最高裁判例の立場とは異なりますが。
>懲戒請求のうち9割以上は不相当で決着がついており、この不相当となった懲戒請求がほぼ全て不法行為を構成するとなると、懲戒制度は原則として「身内が身内を裁く」形となっている以上、問題が大きい
利害関係がある一般人であれば、資料収集が可能なので、懲戒事由が不相当でも、不法行為責任が生じる場合は少ないでしょう。
しかし、利害関係のなかった全く無関係の一般人が行った場合は不法行為責任を認めやすいと思います。利害関係のなかった全く無関係の一般人にとっては、懲戒請求を認めなければいけない利益はなく、他方で、被請求者の被る不利益が重大であることを比較すれば、不法行為を認めても問題はないといえます。
ですから「この不相当となった懲戒請求がほぼ全て不法行為を構成する」わけではなく、問題ありません。
ちなみに、弁護士会は独立した団体ですから、「身内が身内を裁く」のは当然です。それに、どんな組織でも、構成員の不祥事は組織内で処理するのが普通では?
>つまり告訴する場合に要求される注意義務よりは、懲戒請求に要求される注意義務は軽いようです。
告訴する場合に必要とされる「高度の注意義務」より、懲戒請求の場合は注意義務は軽い、すなわち、捜査機関並みの調査は不要であるという解説は、まぁ、穏当な説明ですね。懲戒請求は告訴・告発と類似する制度とはいえ、さすがに捜査機関並みに調べることは、弁護士だろうとなかなか難しいですから。
どうしても一般人には軽い注意義務という考えを主張したいようですので、「相当の根拠」について説明をしておきます。
懲戒請求者は「相当な根拠」について調査・検討する義務があるとしました。この意味は、調査・検討する程度は、高度な調査・検討(=捜査機関並みの調査)は不要ですが、被請求者の名誉信用等に対する重大性を考慮して安易な懲戒請求を防止するため、通常の調査・検討では足りず、「相当の」調査・検討を必要としたということなのです(東京地裁平成4年3月31日判決。判例タイムズ798号118頁参照)。もちろん、「相当」の内実は、事案によって判断するしかありませんが。
「相当」の解釈は従来からこのように理解されてきているので、最高裁も同様でしょう。
要するに、平成19年判決は、弁護士・一般人問わず、事実的・法律的根拠の有無について、通常の調査・検討以上の「相当の」調査・検討が必要としたということです。このように理解されている以上、裁判例の立場による限りは、一般人の場合は「軽い注意義務」(程度が不明ですが)にするのは難しいと思います。
>実質的にも差を儲けていると見てもよいように思います。
実質的には差異があるとは思います。
>最高裁の基準を一般人に対して重いと見るのは、実は私もそんなに間違った感覚だとは思えないのですが
同感です。
利害関係のあった一般人の場合、懲戒請求をしても十分な調査が可能ですから、さほど問題ないのですから。
利害関係のない、視聴者の場合には元々懲戒請求を認める必要性がないのですから、最高裁の基準によれば、安易な懲戒請求が抑制されていいと思います。光市事件弁護団へ3900件の請求だなんて、理性を失ったかのような請求ですから。
>懲戒請求を受けた弁護士の負担をもっと軽くするような運用や弁護士法改正が一番全うなんじゃないか
そう思います。
他にも、懲戒請求をする場合、高額な費用負担を求めるなど、制限を加えるような形で懲戒制度を改める方法もあるかと思います。あまりにも安易な懲戒請求が急増していますから。
>橋下氏に好意的に言えば、橋下氏の脳内では、十分に彼らに反駁して懲戒委員会や法廷でも対抗しうる理屈が出来ていると考えることはできるでしょう。
>ただし、それを受け売りしても懲戒理由は作れません。裁判で不法行為の訴状が出されたときに、答弁書としてあのブログの内容をそのまま出して、その通りだと納得する裁判官はいないでしょう。
同感です。
9月5日、橋下弁護士が反論会見をしていましたが、本気で「説明義務論」を主張するようです。
J−CASTニュース「橋下弁護士は「業界の笑いもの」なのか?」
http://www.j-cast.com/2007/09/04010942.html
を読むと「被告弁護士側は橋下弁護士の主張について『業界で笑い話になる』と述べている」と書いてありますが、その通りでしょう。それも「業界」とは弁護士業界だけでなく、法曹三者すべてのみならず、法律業界すべてでしょうね。それほど、橋下弁護士の言い分は無茶苦茶です。
>どうしても一般人には軽い注意義務という考えを主張したいようですので、「相当の根拠」について説明をしておきます。
これは自分の書き方にわかりにくい点がありましたね。
一般人にも相当の注意義務が課せられていることはその通りだと思いますが、その「相当」の基準を判断するに当たって、春霞さんが本文であげたような例は必要とされるのか、一般人はもっと軽い調査によって「相当」の注意義務を払ったと認められるのではないか、という趣旨でした。
ニュースによると橋下弁護士は損害賠償請求に対して争うとのことです。
この訴訟で一般人に課せられる注意義務について何らかの実質的判断が示されるかはわかりませんが(「懲戒請求を煽る」行為そのものに違法性が認められればそれだけで不法行為は成立しうるでしょう)、これからも注目していきたいと思います。
どうもありがとうございました。
URL | ISGM #u3MRTyDc[ 編集 ]
春霞さんの脳内裁判所によると上記の様な判決になるものと理解しておきます。
もっとも,強盗強姦殺人犯には人権に配慮し軽い罰を下し,それに復讐した人間には重罰を課すという,現実の裁判所の判断とは大分異なった判断を下す裁判所の様ですので,どの程度参考にすべきかは大変疑問ですが・・・
URL | 七誌 #-[ 編集 ]
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1027159.html
すでに4000人近くの人が懲戒請求を出しており,今後更に増えそうな事も考えると,たとえ提訴されるとしてもその確率は多分数%程度ですし。私個人でも十分に取りうる範囲のリスクかと思います。
懲戒請求の文面も春霞さんのお蔭でテンプレよりは幾分マシなものが書けるかと思います。
あ,それと被告の人権にも考慮し,懲戒請求には「最高裁欠席により被告が弁護を受ける権利を侵害した」という条項も加えることに致しました。
いろいろとどうもありがとうございました。
URL | 七誌 #-[ 編集 ]
>これは自分の書き方にわかりにくい点がありましたね
なるほど。
>その「相当」の基準を判断するに当たって、春霞さんが本文であげたような例は必要とされるのか、一般人はもっと軽い調査によって「相当」の注意義務を払ったと認められるのではないか
最高裁は、一般人と弁護人で「相当性」を区別していない以上、判例を前提とする限り、無理ですね。
「相当」な調査を必要とし、弁護内容自体を懲戒事由とするなら、その正確な内容を記した文書を必要とするしかありません。不正確な内容のままの批判では、「不正確な内容を前提としているから、批判に値しない」として、反論されるだけです(そう答えた弁護人もいるようです)。
特に、弁護内容をどうするかは第一次的に当該弁護人の判断に委ねられているのですから(最高裁平成17年11月29日決定)、弁護内容の是非で懲戒にすることはまず困難です。まず困難なのに、曖昧な文書で批判できるわけがありません。
>ニュースによると橋下弁護士は損害賠償請求に対して
>この訴訟で一般人に課せられる注意義務について何らかの実質的判断が示されるかはわかりませんが
あれ? やっぱり一般人の注意義務軽減論ですか!?
それはともかくとして、確かに、(暗に仰るとおり)橋下弁護士は、法律の素人である一般人並み発言をしているとはいえ(^^ゞ、形式上は(今のところ)弁護士ですから、一般人の注意義務を示すことはないでしょうね。
何度も言いますが、弁護内容自体を批判する懲戒請求は、全くの的外れであり、懲戒事由にあたりません。なので、ISGMさんが気にしている「注意義務」の議論は、この事件ではまったく無意味ですよ。まさか、懲戒事由があると思っているとか……(-_-;)
<9月6日追記>
「橋下氏の「不法行為不成立説」は本当か?」
http://plaza.rakuten.co.jp/igolawfuwari/diary/200708300000/
「東京地裁平成5年11月18日裁判例は弁護士により高度の注意義務を課すようなことを言っていますが、一般人免責を意味するとは読めませんし、最高裁判例は弁護士であることを考慮していますが、一般人と弁護士で一般論を区別して論じていません。……私人だから安心というような誤解を植えつけるような文章はどうでしょうか。」
このブログの方も私と同意見ですね。素直に判例を理解すれば、一般人の注意義務を(実質的に)軽減するといった判断にならないと思いますけどね。
一般人の注意義務を軽減したいという価値観は分からないでもないですが。
>弁護団の各先生方も「懲戒請求した人達、彼にそそのかされた被害者だから今は提訴しない」 と仰っておられるようですので今回はお言葉に甘えて懲戒請求を出す方向で検討してみようか
>今後更に増えそうな事も考えると,たとえ提訴されるとしてもその確率は多分数%程度
今は提訴しないというだけですから、提訴される可能性はあります。特に今から懲戒請求する場合、橋下弁護士に乗せられた「被害者」ではないのですから、提訴される可能性は大きくなるでしょうね。
>私個人でも十分に取りうる範囲のリスクかと思います。
懲戒請求すれば、弁護士会から呼び出しを受けますので、そのリスクは覚悟する必要はあります。よかったですね。
「○弁護士法67条
3 懲戒委員会は、審査に関し必要があるときは、対象弁護士等、 懲戒請求者、関係人及び官公署その他に対して陳述、説明又は資料の提出を求めることができる。
○(大阪の例)大阪弁護士会綱紀調査手続き規定第3条
(懲戒請求人に対する求釈明)
委員会の委員長(以下「委員長」という)は・・・懲戒請求書の記載のみでは懲戒の事由及びその説明が明確でないと認めたときは懲戒請求人の出頭を求め又は期間を定めて書面による回答を求める等、釈明のため必要な措置を採ることができる。』」
>懲戒請求の文面も春霞さんのお蔭でテンプレよりは幾分マシなものが書けるかと思います。
懲戒事由がないと何度も念を押されていることが分かった上で、懲戒請求を出すことになるわけです。とすると、七誌さんは、懲戒事由がないことを知りつつも請求するのですから、「虚偽」であることにつき未必の故意があるため、虚偽告訴罪(刑法172条)に当たる可能性があります。よかったですね。
>それと被告の人権にも考慮し,懲戒請求には「最高裁欠席により被告が弁護を受ける権利を侵害した」という条項も加えることに致しました。
あはは。本気で書くのですか?
| #[ 編集 ]
>とても読みやすかったです
>このエントリはとくに参考になりました
ありがとうございます。
これからも宜しくお願いします。
追記に「教えて!goo」のことが載っていましたが、はっきり言ってこの質問者さんはまだましな部類だと思います。同じ「教えて!goo」の別のエントリには、もっとすごい誤解をしている人が何人もいましたよ。「実際に犯罪を起こした人物を擁護する弁護士は共犯と同じ」とかね。今はほとんど削除されているようですが…。6月下旬の段階で、橋下弁護士の言う「説明責任」を問題にしている人は皆無だったと言ってよいと思います。殆どの人が弁護側の主張内容に憤っていましたし、一定の数がそろえば「弁護団の解体請求」ができると思っている人もいたようです。
他の記事もじっくり読ませていただきます。
URL | 虹 #JalddpaA[ 編集 ]
>懲戒騒ぎについて「何か変だ」という不安を感じていろいろ検索していたところ、こちらのブログで詳しい説明に出会えて
懲戒請求騒ぎについて、法的な面から分析を行っています。
特に、「弁護士に対する懲戒請求と不法行為の成否〜“母子殺害で懲戒請求数百件”との報道を聞いて」のエントリーは、いわゆる「炎上」したほどの大人気ですね。
「炎上」はともかく、多くのブログなどで引用して頂いたようで、懲戒請求に対する理解を広めることができたエントリーではないかと思います。
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-451.html
>「教えて!goo」の別のエントリには、もっとすごい誤解をしている人が何人もいましたよ。「実際に犯罪を起こした人物を擁護する弁護士は共犯と同じ」とかね。
それはスゴイですね。
「実際に犯罪を犯した」かどうかは、裁判中は分からないのですし、犯罪を犯したと疑われた者(被疑者、被告人)を弁護するために弁護人がいるので、弁護人制度自体を否定することになります。それに正犯(=被告人)の行為後に関与する者は、「共犯」になりませんから、弁護人は絶対に「共犯」になりません。間違いが3つもあるのに、信じてしまう人がいたら怖いですね。
>6月下旬の段階で、橋下弁護士の言う「説明責任」を問題にしている人は皆無だったと言ってよいと思います。
そうですよね。その「説明責任」自体も、守秘義務に抵触する可能性があるから、認めることは無理ですけど。
>殆どの人が弁護側の主張内容に憤っていましたし、一定の数がそろえば「弁護団の解体請求」ができると思っている人もいたようです。
「解体請求」っていうのも、よく分からないですね。会社などの構成員が代わっても存続する団体ではなくて、数人集まっているから「弁護団」と呼ばれているだけで。「解体」自体できるのかな〜。裁判が結審したら「解体」するでしょうけど。
「一定の数がそろえば」もまるで署名活動ですね。しかも、署名活動であっても、必ずその活動の目的通りの効果がでるとは限りませんし。「一定の数そろえば」なんとかなるって言う思い込みはどこから出てきたのでしょうね。日本人って騙され易いのでしょうか?(^^ゞ
>他の記事もじっくり読ませていただきます。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
裁判所の判例って一般人にはかなりとっつきにくいものですから、解説があると助かります。
>「一定の数そろえば」なんとかなるって言う思い込みはどこから出てきたのでしょうね。
上のコメントで例に出したのは、
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3029397.html
にあったものですが、同じページに
>先ほど関西テレビ(録画)で橋下弁護士が「テレビを見ている一人でも多くの人が弁護士会宛に解任請求をしましょう!」と言ってました。解任請求は誰でもできるらしいです。しかし数が集まらないと弁護士会も動かないそうです。
というコメントがありましたので、そのあたりからかなと推察します。
懲戒請求のテンプレサイトを見て「プリントアウトして郵便局まで行って発送するのは面倒だな」と思った人が
>だけど、もしかしたら、もしかしたら、今、解体請求できるまで、後一通かもしれないよなぁ。
>私がしなくても誰かするんだろうけど、もしかしたら、みんなそう思ってて誰もしてないかもしれないよなぁ。
と言っているコメントもありました(現在は削除済み)
地方議員や首長のリコールと混同しているような気がします。
あとは余談になりますが…もともとこのエントリは本村さんを応援したいという質問から始まっていたのに、「あすの会」に協力(寄付やボランティア)してはどうかという提案にほとんど反応がなかったのが、何だかお気の毒でした。懲戒請求よりよっぽど役に立ちそうなのに。
URL | 虹 #YUtoCf6E[ 編集 ]
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