FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
10« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30.»12
スポンサーサイト 
--/--/-- [--] --:--:-- » E d i t
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 *  TB: --  *  CM: --  * top △ 
2007/07/10 [Tue] 01:54:34 » E d i t
米投資ファンドのスティール・パートナーズが「ブルドックソースの買収防衛策」の差し止めを求めた仮処分決定の即時抗告審で、東京高裁は7月9日、申し立てを却下した東京地裁決定を支持し、スティールの抗告を棄却しました。スティールは最高裁への特別抗告なども可能ですが、ブルドックは7月10日に新株予約権を発行するため、仮処分の請求維持は厳しく、日本で初めて新株予約権を使った防衛策が発動されることになります。

東京高裁という司法機関が、スティールを「濫用的買収者」と認定した点が注目されます。それは、「濫用的買収者」たる株主への差別的扱いは許され、「濫用的買収者」への買収防衛策は適法になりやすいことから、他の会社においてもスティールに対する買収防衛策は適法となる可能性が非常に高くなり、スティールが今までのように好きなように物色(日本企業買収)することは難しくなると予測されるからです。

このような買収防衛策が適法となるポイントについて、に関する司法判断について、元東京高裁判事の鬼頭季郎氏に適法となる買収防衛策のポイントを聞いたインタビュー記事を紹介します。もちろん、この記事はブルドックソースの買収防衛策自体についてコメントしたものではありません。


1.東京新聞平成19年6月19日付朝刊9面

適法な買収防衛策とは? 「危機」証明 経営側に必要 元東京高裁判事鬼頭季郎氏に聞く

 買収者に対する企業防衛のあり方に注目が集まっている。ブルドックソースの買収防衛策では、米系投資ファンド「スティール・パートナーズ」が買収防衛策発動の差し止め仮処分を東京地裁に求めた。TBSも楽天への防衛策発動の検討に入っている。2005年3月、ニッポン放送が発動しようとした防衛策の訴訟でライブドアに軍配を上げ、防衛策が認められる例外事例を示した元東京高裁判事の鬼頭季郎氏(66)に適法となる防衛策のポイントを聞いた。 (聞き手・桐山純平)

 ――最近の買収防衛策をどうみる。

 「株主は会社法で、企業経営の細かい部分に口を出せない。だから、株主による取締役の更迭権限は最低限保障する必要がある。株主の議決権割合を薄める防衛策は、経営者の保身につながりやすく簡単に許されるものではない」

 ――訴訟で防衛策が適法かどうか判断されるポイントは。

 「買収者が会社を食い物にしようとする具体的な危機の内容とその可能性の証明が防衛側に必要だ。危機を回避するための防衛策の内容が、一般株主に必要最小限の影響に終わるかどうかもポイントだ。買収者以外の既存株主に影響を与える防衛策は好ましくない。切迫した大きな危機などが証明できれば、取締役会の判断のみでも発動可能な場合もある」

 「上場企業の大半が取り入れている事前警告型の防衛策については、導入時点ではなく発動段階になってそれが適法かどうかを裁判所は判断する」

 ――防衛側の危機の証明は難しくないか。

 「危機を直接証明するものを出しにくいのは分かる。だから、例えば、買収者がファンドの場合、その投資スタイルやこれまでの買収のやり方など、『危機』が推測できるような事例を出せばいい」

 「私はニッポン放送の防衛策をめぐる訴訟で、防衛策が認められる4類型を法廷を示した。それ以外に、買収者が標的企業を守るための第三者の友好的買収(ホワイトナイト)を誘発し、保有株式の高値売り抜けの画策を推測できれば、会社を食い物にすると認めても不当ともいえない」

 「一方、事業会社が相乗効果を求めて行う買収の場合は、過去に被買収事業に危機や脅威を与えた事例がなければ、証明がおそらく難しくなる」

 ――防衛側が社外取締役や有識者らで構成される第三者機関に発動の判断を委ねる企業が多い。

 「第三者機関が防衛策を承認しても、その構成メンバーや判断能力からみて客観性に疑問があるケースが多い。経営側の判断に恣意(しい)性がないことを示す間接的な証明にはなり、また一般株主が買収に対する対応を決定する重要な資料にもなるが、裁判所にとっては参考意見にしかならない」

 ――株主総会の普通決議(議決権の過半数の賛成)で、株主の承認を得た場合は。

 「株主が買収者より経営陣の経営にお墨付きを与えたとしても、買収者が会社を食い物にするとは言い切れない。参考資料にはなるが、防衛策の必要性や相当性を法律的に評価するのに決定的な要素ではない。ただ、特別決議(3分の2以上の賛成)で承認を得られれれば、新株発行の割り当てを受ける者の範囲や発行条件次第では、裁判所がその防衛策を『不公正』だという余地はかなりなくなる」


◆2005年3月に東京高裁が防衛策を認めた4類型

*買収者が以下の事例にあてはまれば例外的に発動が許される

1 経営参加の意思がないのに、株価をつりあげて高値で株式を会社関係者にひきとらせる(グリーンメーラー)
2 会社経営を一時的に支配し、事業上必要な知的財産権や秘密情報などを買収者などに移す
3 会社経営を支配後に、その会社の資産を買収者などの債務の担保や弁済原資として流用する
4 会社経営を一時的に支配し、事業に当面関係ない不動産や有価証券などを売却させ、その処分利益で一時的な高配当をさせるか、一時的高配当による株価急上昇を狙って高値売り抜けをする

=====================
きとう・すえお

1963年名古屋大学法学部卒。65年東京地裁判事補。旭川地家裁所長などを経て、97年東京高裁部総括。2005年10月から政府の「情報公開・個人情報保護審査会」の会長。名古屋市中川区出身。
=====================

◆大半が「事前警告型」

 野村證券金融経済研究所によると、買収防衛策を導入した上場企業は、ライブドアによるニッポン放送買収問題が起きた2005年以降、3年間で全体の約10%に当たる378社(5月時点)。07年だけでも200社に上る。

 導入した防衛策の大半は「事前警告型」と呼ばれる。例えば会社が定めた防衛ライン「20%以上」まで株式を取得しようとする買収者が現れた場合、防衛側が買収側に質問書を送付するなど、買収側と交渉する時間的猶予を自ら与える。会社を食い物にする「乱用的買収者」と認定すれば、既存の株主に新株予約権などを発行し、買収者の持株比率を薄める。

 こうした防衛策の目的は、買収者の急激な株買い占めを防ぐとともに、株主のために時間を稼ぐ手段となる。類似の防衛策を企業が導入している米国では一度も発動されたことがない。」



新聞報道や学者の解説は色々ありますが、このインタビュー記事が一番分かりやすく正確であると思います。

「 ――訴訟で防衛策が適法かどうか判断されるポイントは。

 「買収者が会社を食い物にしようとする具体的な危機の内容とその可能性の証明が防衛側に必要だ。危機を回避するための防衛策の内容が、一般株主に必要最小限の影響に終わるかどうかもポイントだ。」


こういった点を端的に指摘している解説報道はまずありません。


「 ――防衛側が社外取締役や有識者らで構成される第三者機関に発動の判断を委ねる企業が多い。

 「第三者機関が防衛策を承認しても、その構成メンバーや判断能力からみて客観性に疑問があるケースが多い。……裁判所にとっては参考意見にしかならない」 」


「――株主総会の普通決議(議決権の過半数の賛成)で、株主の承認を得た場合は。

 「株主が買収者より経営陣の経営にお墨付きを与えたとしても、買収者が会社を食い物にするとは言い切れない。参考資料にはなるが、防衛策の必要性や相当性を法律的に評価するのに決定的な要素ではない。ただ、特別決議(3分の2以上の賛成)で承認を得られれれば、新株発行の割り当てを受ける者の範囲や発行条件次第では、裁判所がその防衛策を『不公正』だという余地はかなりなくなる


この2点も、新聞報道や解説とは一致してない点でしょう。

「第三者機関」をいくら設定したところで、裁判所にとっては参考意見にしかならない、要するに、適法か否かの判断につき、証拠ともならず、判断を左右するほどの重要な意見でもなく、あまり意味のない機関であるということです。

株主総会決議は、「第三者機関」と異なり意味のある機関の決議ですが、決定的な要素ではありません。「切迫した大きな危機などが証明できれば、取締役会の判断のみでも発動可能な場合もある」のです。
ただ、株主総会の特別決議は、適法になる方へ傾くわけですが、やはり条件次第ということで、適法となるための決定的な要素ではないのです。

繰り返しますが、新株予約権の発行を決めた決定機関が、株主総会か取締役会かの違いは、適法性の判断に関して決定的な要素ではないのです。「防衛策発動を決議するのが取締役会か株主総会かがポイント」(日経新聞7月9日付「社説」)ではないのです。注意が必要です。その意味で東京地裁の決定も問題があったのですが……。




2.ブルドックソースの買収防衛策については、2点に注目してみたいと思います(細かくはそれを商売にしている方(企業法務専門弁護士など)へお聞きして下さい)。報道記事については、「M&Aと企業防衛」(読売新聞)を参照して下さい。

なお、念のため注意しておきますが、ブルドックソースの買収防衛策は、いわば有事において導入されたものですが、「事前警告型の買収防衛策」です。
買収防衛策には、平時導入型と有事導入型とがありますが、「事前警告型の買収防衛策」は平時導入型に分類されるものです。有事に導入した場合であっても、「事前警告型」であることに注意が必要です。ただ、この分類はあまり意味がありません。導入は平時であってもなくても実際に機能するのは有事のときなのですから。


(1) まず1点は、ブルドックソースの買収防衛策は「株主平等原則」(会社法109条1項:各株式の内容が同一である限り同一の取り扱いがなされるべきであること)に反するのかどうか、です。多少、議論を区別すると、<1>ブルドックソースが予定している「新株予約権の無償割当て」についても株主平等原則が及ぶのか、<2>及ぶとして株主平等原則に反するのか、です。

この<2>の点について、経済産業省は次のようなコメントをしています。

 「北畑経済産業事務次官の事務次官等会議後記者会見の概要
                       
平成19年6月25日(月)
                        14:03~14:10
                        於:記者会見室

【ブルドッグソース株主総会】
 
Q: ブルドックの件なのですが、買収防衛に対して8割以上の株主が賛成したということですが、株主平等の原則の観点から、今後いろいろな議論が出てくるかと思うのですが、次官のご所見をお伺いしたい。
 
A: 買収防衛策を議論した企業価値研究会の中で、議論された中で二つの大きな原則があったと思います。一つが企業価値向上原則、それからもう一つが株主意思の確認ということだったと思います。目的としては、企業価値の向上、つまり企業価値を損なうような突然の買収というものについては適切な防衛策を講じることが合法だという議論があったわけです。もう一つは防衛策を導入するに当たっての手続として株主意思の原則というのが入っていたと思います。平時であれば取締役会限りで導入をして、株主を事後的に確認をするとか、そんなことが書いてあるのですが、今回は有事導入型ということでしたので、会社の方では非常に慎重な手続き、入念な手続きをとって株主総会に諮られた。その結果、株主意思として明解な形で株主意思が確認をされたというケースであろうと思います。株主平等の原則との関係ですが、こういう目的と手続をとっていけば、株主平等の原則には全く反しないものだと思います。
 少し補足説明をしますと、今の会社法は定款自治、株主総会で非常に幅の広い権限の授権というのを認めているわけです。そういう意味で8割の株主が賛成をしたというのは、新しい会社法の精神から言っても、株主の自治によってそれを決めたわけですから、株主平等の原則に反するものではない。形式的な株主平等の原則というのは、そういう株主総会決議によって変更が可能だと、全体にはそういう仕組みになっているわけですから、そういう意味で株主平等の原則に反するという批判は当たらない。こういう趣旨でございます。」((北畑経済産業事務次官の事務次官等会議後記者会見の概要:19年6月25日(月))


このように経済産業省という行政当局が、が株主平等原則に反しないとの見解を示した以上、裁判所もそう無視できません。

法律的には、原則があれば例外もあり、本来は例外は狭く扱うのが基本なはずですが、株主平等原則の例外は広く認められ(会社法109条2項)、しかも「具体的適用は微妙な問題が少なくない」(江頭著「株式会社法」126頁)のです。スティールによる「買収防衛策は株主平等原則に反する」との主張を認めることはかなり難しいのです。

なお、経済産業省の「8割の株主が賛成をしたというのは、新しい会社法の精神から言っても、株主の自治によってそれを決めたわけですから、株主平等の原則に反するものではない」という説明は、問題があります。株主平等原則は、「支配株主の資本多数決の濫用による差別的扱いから一般株主を守る作用を営むもの」(江頭憲治郎著「株式会社法」125頁)ですから、いわば8割という多数者から保護することにこそ、意味があるからです。



(2) もう1点は、スティールが「濫用的買収者」(グリーンメーラー)に当たるかどうかです。

東京地裁の決定では、「スティールがブルドックに株式の買い取りを求めたことの証明はなく、グリーンメーラーと認めるに足りない」としたのですが、これに対して、東京高裁は、「濫用的買収者」と判断しました。

スティールは、多くの会社、すなわち、金属加工油剤大手のユシロ化学工業と、毛織物染色のソトー、明星食品に対して敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛け、いずれも不成立でしたが、大幅増配や、売却益を得ています。このような実績からすると、「グリーンメーラー」と言われても仕方のない行動でした。

ですから、経済産業省の北畑隆生次官は平成192月19日の定例記者会見で(その後の記者会見ででも同様の見方)、「スティールの日本でのこれまでの行動から見ると、(株を買い集め、高値でその会社や関係者に引き取らせる)グリーンメーラー的な動きをした会社」との見方を示していましたが、それも納得できることでもあります。

鬼頭季郎氏が述べるように、「危機を直接証明するもの」を出すのではなく、「例えば、買収者がファンドの場合、その投資スタイルやこれまでの買収のやり方など、『危機』が推測できるような事例を出せばいい」のです。

そうすると、おそらくは東京高裁の段階で多くの資料を追加したでしょうし、その違いもあるとは思いますが、「危機を直接証明するもの」を出すことを要求したのかどうかにより、判断が分かれたのだろうかと思います。

東京地裁の決定は、スティールの経営を著しく阻害するおことを避けるために「濫用的買収者」と認定しなかった面もあるとは思います。結論としては、本当にスティールを「濫用的買収者」と認定してよかったのかどうかの評価は分かれているようです。そうだとしても、日本におけるスティールの行動からすれば、ブルドックソースの買収防衛策・その発動については適法と判断した結論自体は妥当であったと思います。


今後、裁判所によって「濫用的買収者」と認定されてしまったスティールは、日本においては事業活動(=敵対的買収!?)が極めて困難になりました。
本当にスティールを「濫用的買収者」と認定してよかったのかどうかの評価は分かれるとしても、裁判所の判断が出てしまった以上、スティールは、それを前提にするしかありません。そうなると、今までの経営方針を転換するしかないのですが、転換できないとなると撤退する可能性も出てきたと思います。
 



3.ブルドックソースの買収防衛策は、昨年買収防衛策導入を見送ったのに、いざ買収の危機になってから慌てて導入しようとしたものです。今までの日本企業のように全く無防備で企業防衛について対策が十分でなかったことにも問題があり、企業買収や投資ファンドがすべて良くないというわけでもありません。

 「敵対的買収というと「悪」のイメージがあるが、「善」の場合もあり得る。日本には、身分にあぐらをかいて非効率な経営を続ける経営者もいる。経営陣が反対しても会社の価値が高まる買収なら、従業員や取引先も歓迎するはずだ。こうした、経営者だけが反対する買収が実現するようになれば、日本の会社の意識も大きく変わると思う。

 投資ファンドは、こうした変化を起こすのに一役買うだろう。同業他社が買収しても事業再建を進めてもいいが、ライバル社同士だと、支配する側とされる側という意識が強く働き、うまくいかない面もある。ファンドは中立的な立場から再建に取り組める。

 一方、ファンドにも大きな責任が伴う。米投資ファンドのスティール・パートナーズは、ブルドックソースの株式を最大100%公開買い付け(TOB)しようとしたが、経営権は握らないとして経営方針を示さなかった。また、他の株主にはTOBへの賛同を求めるメッセージを出したのに、従業員や取引先に対しては何も発信しなかった。

 これには「冗談じゃない」と思った。過半数の株式を取得すれば、経営陣を変えることができ、数%を保有するだけの株主と違い、社会的責任が生じる。……

 さまざまな考え方のファンドがあり、経営者はその実態を見極めなくてはいけない。(以下、略)」(朝日新聞平成19年7月8日付朝刊4面「耕論:M&A時代のカイシャ論」の、M&A助言会社「GCA」代表取締役・佐山展生さんへのインタビュー記事より一部引用)





4.資料参照の意味で、ブルドックソースの防衛策に関する東京地裁と東京高裁の記事を引用しておきます。

(1)まずは、東京地裁の記事。

 「ブルドックに軍配 東京地裁がスティールの申請却下
2007年06月29日

 米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンがブルドックソースの新株予約権の発行による買収防衛策の発動差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁は28日、スティールの申請を却下する決定をした。鹿子木(かのこぎ)康裁判長はブルドック側の買収防衛策について「株主総会の特別決議に基づくもので、株主平等原則に違反しないし、不公正な方法で決められてもいない」と判断した。スティールは同日、不服として東京高裁に即時抗告を申し立てた。

 裁判長は「株主総会は会社の最高意思決定機関であるから、買収者への対抗手段の必要性の判断は株主総会に委ねられるべきだ」と指摘。スティールが全株取得後の経営方針を明示しないことを理由に株主総会が対抗策が必要と判断したことを「合理性を欠くものとは認められない」と是認した。

 また、全株主に1株あたり3個の新株予約権を割り当て、スティールには行使を認めない見返りに現金約23億円(1株396円)を支払うという防衛策の内容については「経済的利益が平等に確保されている」として、株主平等原則に違反しないと結論づけた。

 スティールは5月18日からブルドック株の株式公開買い付け(TOB)を実施している。対して、ブルドックは今月24日の株主総会で8割を超える株主の賛同を得て、買収防衛策を承認した。

 買収防衛策をめぐっては、ニッポン放送や制御機器メーカーのニレコの新株予約権の発行が司法判断で差し止められているが、いずれも株主総会の承認を得ておらず、取締役会の決議で発行を決めたものだった。

 ●「株主の意思を尊重」「平等原則に反する」評価割れる

 東京地裁がブルドックの新株予約権の発行にお墨付きを与えたことで、スティールのブルドック買収シナリオはさらに厳しい状況に追い込まれた。今回の地裁の判断について識者の間では「妥当」と評価する声がある一方、批判的な見方も出ている。

 地裁決定の一報を受けたブルドック関係者は「よかった」と胸をなでおろした。多数の株主の賛同を得て導入した買収防衛策。認められる、とある程度の自信はあったものの、さすがにほっとした様子だ。

 スティールを、高値で買い取らせることを目的に株を買い占める「グリーンメーラー的」などと大臣を筆頭に批判してきた経済産業省も「有事に導入された買収防衛策でも、入念な手続きをすれば認められるという画期的な判決だ」(幹部)と決定に大喜び。甘利経産相は28日、記者団に「株主の意思が尊重されたということで、妥当な判決」と述べた。

 一方、スティールのウォレン・リヒテンシュタイン代表は、決定を遺憾とし「日本の株式市場に対する海外投資家からの不信を招くものである」などと痛烈に批判するコメントを出した。

 今回の決定について横山淳・大和総研制度調査部統括次長は「株主意思を尊重する一方で、行き過ぎにも配慮している。比較的穏当な判断が示された」と評価する。上村達男・早大教授は「スティールは会社の破壊者となる可能性が高く、決定は妥当だ。株主平等原則は一部の株主による専横的支配を防止するためにあり、その精神にむしろ合致した決定だ」と絶賛する。

 一方で、弁護士でもある阪大の末永敏和教授は「株主が会社を支配する利益を無視して、金銭補償だけで排除できるとした点は条文上の根拠もなく大問題。株主平等原則にも違反し、上級審で覆る可能性は高い」と、決定に批判的だ。

 ブルドックは株式公開買い付け(TOB)を仕掛けられた後に、株主総会の特別決議で買収防衛策を導入した。現在、日本企業の間で主流になっている事前警告型の買収防衛策は、TOB前に取締役会の決定や株主総会の普通決議で導入している。今回の決定はある意味「特殊」なもので、事前警告型にお墨付きが出たわけではない。このためスティールに買収を仕掛けられている企業は「うちとは立場が違う。粛々と対処していく」(サッポロホールディングス)と淡々としている。

 市場関係者も冷静だ。ある市場関係者は「スティールのようなファンドは投資を控える動きにつながるかもしれないが、それは一部。外国人投資家全体に与える影響は限定的だろう」と話す。」(asahi.com(2007年06月29日)


 「「株主平等に違反せず」…ブルドック防衛策「適法」判断

「抜かずの宝刀」発動も

 米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンがブルドックソースの買収防衛策発動の差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁は株主総会の判断を重視する決定を下した。スティールの主張は主な争点でことごとく退けられた。「抜かずの宝刀」だった買収防衛策の発動が実現する可能性が高まったことで日本企業の買収防衛策のあり方に大きな影響を与えそうだ。(岩城択)

■総会決議の重み

 地裁は決定の中で、「株主総会として、株主全体の利益保護の観点から(買収に対し)相当な対抗手段を採ることが許容される」とした。株主総会の意思を尊重する姿勢を明確にしたものだ。

 とりわけ、ブルドックが今回、防衛策の導入にあたり、出席議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議とし、実際に88・7%の賛成を得た点を重視した。

 ブルドックが新株予約権の発行に踏み切れば、株数の増加から1株当たりの価値が減少することから、株価が下がると見込まれる。また、スティールの株式公開買い付け(TOB)に応募する機会が失われる可能性もある。

 スティールはこうしたことが株主に不利益を与えかねないと主張したが、今回の決定は、「(大多数の株主が防衛策の導入を支持した以上)不測の不利益を与えるものとは言えない」と結論づけた。

 今回の決定について、M&A(企業の合併・買収)に詳しい葉玉匡美弁護士は「株主総会の決定内容が著しく不合理でない限り、裁判所は株主総会の判断に立ち入らないとの考え方を示したものといえ、一つの標準として企業に受け止められる可能性がある」との見方を示す。

■防衛策の合理性

 一方で、東京地裁は、防衛策などの対抗手段が特別決議で承認された場合であっても、「買収者の支配権の取得を妨げる目的を超え、(買収者を含む)株主の利益を損なうことは許されない」と指摘した。

 さらに、対抗手段が妥当かどうかは、「対抗手段をとるに至った経緯や、対抗手段が株主に与える不利益の有無や程度」などを総合的に判断すべきだとして、経営陣が保身のために防衛策を導入することにはクギを刺した。

 両者の言い分を裁判所が聞く審尋で、スティールは、取得株式を高値で発行会社に買い取らせる「グリーンメーラー」ではないから、防衛策の発動には正当性がないと主張した。

 決定では、「スティールがブルドックに株式の買い取りを求めたことの証明はなく、グリーンメーラーと認めるに足りない」とした。

 その上で、スティールが経営方針などを示さない以上、「企業価値を損なうのではないかという疑念を(他の株主や現経営陣に)抱かせるのも無理からぬもの」と認定。グリーンメーラーであるか否かは、今回の判断に関係ないとした。

■今後の展開

 決定を受け、スティールは東京高裁に即時抗告した。「地裁の判断は誤りで、まことに遺憾。日本の企業社会に関する法制度に多大な影響を与える。TOB制度に従いブルドックにさらに投資し、支援していく行為が妨げられるべきではない」などとする談話を発表した。

 ブルドックの池田章子社長は「防衛策が適法、適正と認めた今回の決定は妥当だ。(高裁でも)全面的に争う」としている。

 ブルドックは、スティールが7月4日までにTOB(株式公開買い付け)を撤回した場合は防衛策の発動を行わないとしている。

 東京高裁は早ければ同日までに判断を示すとみられるが、新株予約権の割り当て対象を確定する7月10日ごろまでずれ込む可能性もある。

 東京高裁が新株予約権の発行を認めた場合、「スティールが新株の代わりとなる約23億円の代償を得て引き下がれば、それこそ、『グリーンメーラー』と自ら認めることになりかねない」(牛島信弁護士)との指摘もある。

 このため、スティールが再度、TOBを仕掛けて巻き返しを図る可能性があるとの見方も出ている。

 ただ、80%を超える株主が防衛策に賛同した中で、スティールがTOBでブルドックの経営権を握るのは難しいとみられる。


◆東京地裁決定理由の要旨

 【買収防衛策は、株主平等原則に反しないか】

 差別的な行使条件や取得条項のために、新株予約権の無償割り当てによって、特定の株主が持ち株比率の低下という不利益を受けるとしても、〈1〉少なくとも株主総会の特別決議に基づいて割り当てられた〈2〉株主の保有株数に応じて適正な対価が交付され、株主としての経済的利益が平等に確保されている――ときには、株主平等原則に違反しない。

 【買収者への対抗手段は著しく不公正な方法か】

 特定の買収者が公開買い付けの制度に基づき買収手続きを進めている場合でも、買収者による支配権の取得により企業価値を損なう恐れがあると株主総会が判断する場合は、対抗手段が許容される。

 対抗手段の必要性の判断は、原則として株主総会に委ねられるべきだ。スティールが公開買い付けで発行済み株式全部の取得を目指しているにもかかわらず、経営権取得後の経営方針や投下資本の回収方針を明らかにしないという態度を根拠に、対抗手段が必要とした株主総会の判断は、明らかに合理性を欠くとはいえない。

 スティールが「株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で買収を行っている」グリーンメーラーか否かは、当裁判所の判断を左右するものではない。

(2007年6月29日 読売新聞)」(読売新聞(2007年6月29日)



(2) 次に東京高裁の記事。まだ解説記事は十分にありませんが、一応。

 「東京高裁、スティールの抗告を棄却・濫用的買収者と認定

 米投資ファンドのスティール・パートナーズがブルドックソースの買収防衛策の差し止めを求めた仮処分決定の即時抗告審で、東京高裁は9日、申し立てを却下した東京地裁決定を支持、スティールの抗告を棄却した。藤村啓裁判長は、スティールを「濫用(らんよう)的買収者」と初めて認定。今後の日本企業買収にも影響しそうだ。

 スティールは最高裁への特別抗告なども可能だが、ブルドックは10日に新株予約権を発行するため、仮処分の請求維持は厳しく、日本で初めて新株予約権を使った防衛策が発動される。その結果、スティールの持ち株比率は約10%から3%以下になる見通し。(22:02) 」( NIKKEI NET(7月9日22:02)


 「ブルドックの買収防衛策、東京高裁も「適法」判断

 米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンがソース最大手ブルドックソースによる買収防衛策発動の差し止めを求めた仮処分申請で、東京高裁(藤村啓裁判長)は9日、スティールの即時抗告を棄却し、ブルドックの防衛策発動を適法とする決定をした。

 決定では、スティールを企業価値を破壊する「乱用的買収者」と認定し、防衛策には正当性があると結論付けた。さらに、株式会社のあり方について、「株主利益のみを考慮する考えは採用できない」との判断を示した。

 ブルドックは計画通り11日、全株主に1株あたり3個の新株予約権を発行する。早ければ今月27日にもスティール以外の株主に普通株を交付して、スティールの株式保有比率を現在の10・52%から2・86%へ強制的に引き下げる。

 日本企業が買収防衛を目的に新株予約権を発行する初のケースとなる。

 スティールは高裁決定に対し、法解釈に問題があり不服だとして、最高裁に抗告する方向で検討している。ただ、高裁がスティールを「乱用的買収者」と認定したことにより、他の企業もスティールに対する防衛策をとりやすくなるとみられ、日本国内での投資活動に影響が出る可能性が高まった。

 一方、決定は、投資ファンド全体が「様々な策をろうして短中期的に株式を転売し」「(買収)対象の資産処分まで視野に入れて」「自らの利益のみを追求する」存在とも受け取れる、踏み込んだ解釈を示した。この点については、識者の間から「経営に対する監視機能など投資ファンドの利点を否定する解釈で、海外からの投資が鈍りかねない」と懸念する声も出ている。

(2007年7月9日23時44分 読売新聞)」(読売新聞(2007年7月9日23時44分)


 「スティールを乱用的買収者と認定 ブルドック防衛策容認2007年07月09日19時38分

 米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンがブルドックソースの買収防衛策の発動差し止めを求めた仮処分申請で、東京高裁は9日、スティールの申し立てを却下した東京地裁決定を支持し、スティールの請求を棄却した。藤村啓裁判長はスティールを「乱用的買収者」と認定したうえで、「ブルドックが企業価値を守るために自己防衛手段をとることは理由がある」と判断した。

 高裁の決定を受け、ブルドックは11日、日本企業で初めての新株予約権を使った買収防衛策を発動する。スティールが裁判所に乱用的買収者と認定されたことで、今後の投資活動に影響が出る可能性が出てきた。スティールは最高裁への許可抗告を東京高裁にする方向で検討中だ。

 藤村裁判長は、スティールが株式公開買い付け(TOB)を仕掛けた過去の事例を検討。「様々な策を弄(ろう)して専ら短中期的に対象会社の株式を転売し、ひたすら自らの利益のみを追求しようとしている乱用的買収者と認めるのが相当」とした。そのうえで、今回の買収を「不当なもの」と指摘。ブルドックの防衛策の内容については「著しく不公正な方法によるものともいえない」と判断した。

 東京地裁は、スティールが乱用的買収者にあたるとは判断していなかった。」(asahi.com(2007年07月09日19時38分)





<追記>

 「スティール、日本の防衛策批判

経産次官「事実誤認」

 スティール・パートナーズのウォレン・リヒテンシュタイン代表が、日本企業が導入する事前警告型の買収防衛策を「他国なら違法行為」と批判したことについて、経済産業省の北畑隆生次官は14日の定例記者会見で「全くの事実誤認」と反論した。

 事前警告型の買収防衛策は、経産省が2005年5月にまとめた「買収防衛策に関する指針」に盛り込んだ。北畑次官は、指針は米国の判例やフジテレビとライブドアによるニッポン放送株争奪戦の際の東京高裁判決などを踏まえたと説明。その上で「国内でも合法だし、国際基準にも沿ったものだ。米国の主要上場企業の4000社のうち4割はこういう措置を導入している」と語った。

 北畑次官は今年2月、スティールについて「(株を買い集め高値でその会社や関係者に引き取らせる)グリーンメーラー的だ」と述べた。この日の記者会見でも「行動から見てグリーンメーラーと疑われても仕方がない。スティールが手がけた買収案件で企業価値の向上につながった部分はないのではないか」と批判した。

(2007年6月15日 読売新聞)」(読売新聞(2007年6月15日)


東京高裁が「スティールを濫用的買収者」と認定したため、経済産業省は大喜びでしょう。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

裁判例 *  TB: 6  *  CM: 4  * top △ 
コメント
この記事へのコメント
御願いのこと
 少しご無沙汰しました。お元気でいらっしゃいますか。
 いつも御願いの時ばかりお訪ねして、申し訳ございません。
 たった今、TBさせていただいたのですが、そのエントリーに「司法記者」だと名乗られる方からコメントがありました。ちょっと読んでみて戴きたいのです。それだけのことなのです。
 今「年報 死刑廃止」という本を拙HPになぞっていっていますが、妙に胸が騒いでならない。熱くなってならないのです。ゆうこ
2007/07/10 Tue 23:15:30
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん
コメントとTBありがとうございます。


>たった今、TBさせていただいたのですが、そのエントリーに「司法記者」だと名乗られる方からコメントがありました。ちょっと読んでみて戴きたいのです。

拝見しました。その感想みたいなものですが、コメント欄にコメントさせて頂きました。
2007/07/11 Wed 23:55:15
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
ありがとう
 コメントして頂いて恐縮でございます。裁判員制度・犯罪被害者参加制度を考えますと、闇夜に灯火の消える思いです。この事件と裁判、メディアにも相当規制がかかっているらしいです。取材を受けて答えた内容も、都合のいいように調整されるようです。
2007/07/13 Fri 08:58:53
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん:2007/07/13(金) 08:58:53へのお返事
コメントありがとうございます。お返事が遅れてすみません。


>裁判員制度・犯罪被害者参加制度を考えますと、闇夜に灯火の消える思いです

裁判という公開法廷で行われていた事実について、その事実を報道できないようでは、どうして一般市民が裁判のことを理解でき、判断できるのだろうかと思います。

裁判員制度が始まると、一般市民は、法廷に出てくる被告人に対して、判断を間違えたら冤罪に直接関与したことになり、冤罪によって人生を滅茶苦茶にし、死刑にしてしまう可能性もあるのです。判断する方もそれだけの「業」を背負う覚悟が必要なのですが。


>取材を受けて答えた内容も、都合のいいように調整されるようです

報道する方も読者の過剰な批判を避けるために「調整」するのですね。ゆうこさんにカゲキな批判が来ないようにするためでもあるかもしれません。
2007/07/16 Mon 22:53:40
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/462-e894b0ac
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
マックロケ、の、ウソ800円の問題ではなく!*農水相・事務所費問題 一国の首相が「800円」連呼1)赤城山の件ではアベシがウソ800円の光熱費がどうのこうの言っていますが、これこそ目くらましで、本来の疑問?実家を事務所として、1996年~2005年....
2007/07/10(火) 20:11:01 | 晴天とら日和
http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/9d99c153636f9572eb09904ad90922c6 へのコメント(被告と弁護団を配慮なさって円様からご要望があり、円様のコメントを削除しています。=来栖) Unknown (DH)  2007-06-02 00:50:54  こんばんは。円様:仮に傷害
2007/07/10(火) 23:08:56 | 来栖宥子★午後のアダージオ
10日夜、テレ朝の「報道ステーション」用意致しましたとも、ナ~ンちゃって・・・・・【ニコニコ動画】報道ステーション 07・7・10放送●報道ステーション 07・7・10放送(28分10秒) ゲスト:アベシ=年金問題 【ニコニコ動画】報道ス....
2007/07/11(水) 21:36:15 | 晴天とら日和
10日夜、テレ朝の「報道ステーション」用意致しましたとも、ナ~ンちゃって・・・・・【ニコニコ動画】報道ステーション 07・7・10放送●報道ステーション 07・7・10放送(28分10秒) ゲスト:アベシ=年金問題 【ニコニコ動画】報道ス....
2007/07/11(水) 21:36:21 | 晴天とら日和
流石! お見事! お役所仕事!農水省と北海道庁で責任の擦り合い!ってことより、農水省のいい加減さが際立ったと思う。農水省の「ダレベェ~さん」が、道庁の「田吾作ドン」に00年00月00日ナン時に手渡し致しました。と言うのが普通だと思います。農水省....
2007/07/12(木) 22:30:38 | 晴天とら日和
Ltd.)は、日本最大の証券会社であり、東京都中央区 (東京都)|中央区日本橋一丁目9番1号(日本橋本社・本店)に本拠を構える。.wikilis{font-size:10px;color:#666666
2007/07/25(水) 15:37:26 | 証券会社完全ガイド
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。