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2007/05/31 [Thu] 23:59:33 » E d i t
がんの疑いのある腫瘍があった腎臓の移植手術について、執刀医の秋田大学医学部付属病院の羽渕友則教授と溝井和夫病院長が、5月28日、記者会見を行いました。羽渕友則教授は、「当時は倫理的に問題があると思わなかった。社会問題化した今では第三者機関や倫理委員会などの審査にはかる必要があると思う」と話しました。この報道について紹介したいと思います。
「秋田大学医学部付属病院で、がん疑いの腎臓移植を実施」の記事の続報となります。


1.まず報道記事から。

(1) YOMIURI ONLINE(地域 秋田)(2007年5月29日)

「当時はベストな方法」 がん疑いの腎移植

◆秋田大付属病院 執刀医ら強調

 秋田大学付属病院で、がんの疑いのある腫瘍(しゅよう)が見つかった腎臓を親子間で移植した問題で、執刀した羽渕友則教授が28日、同病院で記者会見し、手術の経緯や、病院内の倫理委員会に申請しなかった理由などを説明。「ベストな方法だった」と妥当性を強調した。一問一答は次の通り。

 ――なぜ倫理委にかけなかったのか

 「(学会指針で申請対象外の)親子間の移植であり、諮るべき課題があるとは考えなかった。当時は医学的にベストな方法を考えれば、それで良いと考えていた」

 ――過去に倫理委にかけた例は

 「多くの症例があるので、結石や奇形といった例はあります。生体間移植の場合、臓器提供者を守るために、悪い方の腎臓を提供するのが普通です。だから、倫理委に通さなくても良い。腫瘍(しゅよう)が見つかった例は今回が初めて」

 ――今回の移植に問題はなかったのか

 「医学的には妥当だと考えています。宇和島徳州会病院(愛媛)の事件がなければ、医学界で議論があるだろうとは思います。今回は社会が注目しているので、透明性が必要になるのは仕方がない。移植医療自体が間違ったことをしているわけではない。こういった事例が移植医療の足を引っ張るということにならないように祈っている」

(2007年5月29日 読売新聞)」



(2) 秋田魁新報(5月29日)

「当時の判断妥当」、がん疑いの腎移植 秋大病院、執刀医ら説明

 秋田市の秋田大学医学部付属病院でがんの疑いがある腎臓を60代の母親から30代の息子へ移植していた問題で、執刀した羽渕友則教授が28日、同大医学部で会見し、「母親の腎臓を摘出した段階で腫瘍(しゅよう)が良性と分かったため、患者の同意を得て移植に踏み切った」と説明した。

 羽渕教授は、事前に倫理委員会を開かなかったことについて「患者も移植を強く望んでおり、われわれがベストな判断をしてあげればいいと思った」と振り返った。

 ただ、移植は宇和島徳洲会病院(愛媛県)の万波誠医師らによる病気腎移植が発覚した昨年11月以前に行われており、「当時は移植専門医と高度な医学的判断をした上でゴーサインを出した。社会問題となった現在は、第三者機関などへの相談が必要と考えている」と述べた。

 会見に同席した溝井和夫病院長は「当時の判断としては妥当」とした上で、今後、特殊な生体腎移植を行う場合は移植専門の第三者機関に相談し、さらに院内の倫理委員会で是非を判断するという2段階の審査を行う方針を示した。

(2007/05/29 08:30 更新)」



(3) 朝日新聞は報道しないのかと思っていましたが、asahi.com(マイタウン秋田)(2007年05月29日)で掲載しましたので、紹介しておきます。

腎臓 母子間で移植
2007年05月29日

 秋田市の秋田大学付属病院(溝井和夫院長)で昨年9月、がんの疑いのある腫瘍(しゅ・よう)が見つかった母親の腎臓を、腫瘍を取り除いて息子に移植する手術をしていたことがわかった。「良性の腫瘍でも、絶対安全とは言えない」などと説明し、同意を得ていたという。腫瘍はその後がんでないことが確定し、2人の経過は良好だという。同院が28日記者会見し、「当時としては最良の選択だった」と説明した。

 同院によると、手術は昨年9月26日に行われ、60代の母親の左腎臓を、腎不全だった30代の息子に移植した。

 同院は手術前の昨年6月、CT検査で母親の左腎臓にがんの疑いがある腫瘍(直径約2センチ)を発見。ただ臓器提供者がほかにいなかったほか、米国の文献などから、腫瘍が良性なら、移植しても問題ない場合が多いとして移植を決めた。

 母親の右腎臓には腫瘍がなかったが、腫瘍のある方だけ残せば母親に影響が出るとして、左腎臓を移植することにしたという。

 手術は泌尿器科の羽渕友則教授らが担当。手術の前に、通常の同意手続きに加えて特別な書面をつくり、息子から署名で同意を得た。院内の倫理委員会などには諮らなかったという。

 同院は母親から腎臓を摘出後、迅速病理診断で「悪性でない」と判断。再度息子に口頭で説明して移植した。腫瘍が悪性なら移植をやめ、破棄することにしていたという。腫瘍はその後、がんでなかったことが確認された。

 男性は05年に腎不全となり、06年4月以降は週3回の血液透析を受けていた。仕事をしていたことなどから、腎移植を強く望んでいたという。

 愛媛県の宇和島徳洲会病院では、万波誠医師が、病気がある腎臓を治療目的で患者から摘出し、別の腎臓病患者に移植して問題となった。

 今回は、腎臓を息子に提供したいという母親の腎臓に腫瘍が見つかったというもので、万波医師らのケースとは異なるという。

 羽渕教授は「迷う症例だったが、当時は医学的にベストな方法を選べばいいと思い、倫理委員会にかけるといったことは考えなかった」と説明。その上で、「この事例の後、(病気腎移植が)社会的に問題になったので、今後は倫理委員会にかけるべきものかもしれない」と話している。」



2.幾つかの点について触れていきます。

(1) 

「羽渕教授は、事前に倫理委員会を開かなかったことについて「患者も移植を強く望んでおり、われわれがベストな判断をしてあげればいいと思った」と振り返った。」(秋田魁新報)


この点が、一番のポイントかと思います。

移植手術が妥当かどうかは、<1>患者が移植を希望する意思があることと、<2>(優秀な)医師がベストな判断をすることの2点だということです。この2点さえ十分であれば、倫理委員会は必要なく、透明性も不要なのです。

<1>の点は、どのような医療行為を選択するかは患者の自己決定権に委ねられているから必要であり、<2>の点は、(優秀な)移植専門医と高度な医学的判断を行って妥当性があれば、医学上問題がないからです。さらに言えば、医療契約は医師と患者との間の契約ですから、倫理委員会は契約上無関係だからいらないのです。

<1><2>の点は、今回のような特殊な生体腎移植の場合について述べたものですが、病気腎移植(治療目的で摘出した腎臓の移植)でも同じでしょう。特殊な生体腎移植も病気腎移植も、移植を受ける側としては「病気腎」の移植を受ける点では全く同じだからです。

「手術は泌尿器科の羽渕友則教授らが担当。手術の前に、通常の同意手続きに加えて特別な書面をつくり、息子から署名で同意を得た。院内の倫理委員会などには諮らなかったという。

 同院は母親から腎臓を摘出後、迅速病理診断で「悪性でない」と判断。再度息子に口頭で説明して移植した。」(朝日新聞)


がんの疑いがあったため特別な書面もつくっていますが、迅速病理診断で「悪性度の高い紡錘細胞がんではない」と判断し、最後は、口頭の同意で移植したのですから、インフォームドコンセントとして重要なことは、書面化することではなく、口頭での説明と同意であるという意識があるのだと思います。

これに対して、日本移植学会の幹部は、ともかく書面化することだけこだわって、書面がないとして万波医師を非難していましたが、そういう書面へのこだわりは、インフォームドコンセントの意義を根本的に間違えているのではないでしょうか? 


(2) 

「会見に同席した溝井和夫病院長は「当時の判断としては妥当」とした上で、今後、特殊な生体腎移植を行う場合は移植専門の第三者機関に相談し、さらに院内の倫理委員会で是非を判断するという2段階の審査を行う方針を示した。」


今後は、2段階の審査を行うようです。

しかし、手術は「まず母親の左腎を摘出して腫瘍をくり抜き、顕微鏡による迅速病理診断を実施」して、悪性度の高い紡錘細胞がんではないことが分かって、「改めて長男に口頭で説明。同意を得た上で移植した」(産経新聞平成19年5月26日付朝刊1面)のです。時間があったら迅速病理診断に止めることはないのですから、移植専門の第三者機関に相談する時間があるのだろうかと、思います。そうなると、手術実施前に、大雑把に審議してもらうだけになるだけで、形式的な審議にとどまるかと思います。意味があるのか否か不明ですが。

問題は「移植専門の第三者機関」の審査を求めるとのことですが、この第三者機関とは日本移植学会のことかもしれません。もしそうだとすると、病腎移植問題について日本移植学会から派遣された医師らは、臨床経験が乏しく十分な専門的知識を備えているとはいえなかったので、「移植専門の第三者機関」の審査は、無意味のように思えます。

「今回は社会が注目しているので、透明性が必要になるのは仕方がない。」


病腎移植問題をやたらと騒ぎ立てた日本移植学会と報道機関により、透明性確保というお題目を満たすため、「仕方なく」無意味な手続きを経ることになるようです。
コメント
この記事へのコメント
システム作りを
春霞さん、いつも的確なご見解、ありがとうございます。

レシピエントにとっては「病気腎移植」であることには変わりはありませんね。

移植を推進するならば、「治療を目的とした病気腎」と「移植を目的とした病気腎」を、きっちりとシステム化する必要があると思います。

それなのに、厚労省の打ち出した全面禁止という指針は全くおかしい。

そして、臨床医の意見こそ貴重です。
1)患者が移植を強く希望した。
2)患者をよく知る医師が高度な医学的判断でもって妥当とした。

それで、十分だと思います。

第3者の検証は、この確認をすればこそで、患者にとってのベストとされる判断をかき混ぜかき乱すものではないでしょう。

おふたりの術後の経過がよろしいとのこと、嬉しく思います。

「病気腎」移植の関心が今後深まり、高度な技術が一般のこととなるようにと願います。

羽渕教授も今回の件では、大変お疲れ様でした。
2007/06/01 Fri 10:48:11
URL | 五月晴れ #-[ 編集 ]
春霞様
いつもありがとうございます。
春霞様のブログで私の勘違いが分かりました。運用指針は「移植目的」の場合は規定していないのですね。

>特殊な生体腎移植も病気腎移植も、移植を受ける側としては「病気腎」の移植を受ける点では全く同じだからです。

がんの腎臓の移植は禁忌中の禁忌との大島副理事長の見解は、移植目的では例外となるのですね。私には全く理解不能の説明です。納得できません。

>そういう書面へのこだわりは、インフォームドコンセントの意義を根本的に間違えているのではないでしょうか? 

全くそのとおりです。文書がなかったことを批判のためにわざわざことさら取り上げてきた学会やマスコミはどう説明してくれるのでしょう。
これも秋田大は例外でしょうか。


南海放送の3894人のアンケート結果が、万波医師支持43% 日本移植学会18%となったことに対して、
>人間誰でも自分のことを考えれば他のことなんてどうでもよくなるから、そういう状況になった時に、自分が本当に苦しい状況になったときにエゴがやっぱりはっきり出てくるという状況になるのかな。
とコメントされる大島副理事長です。
病腎移植の道を残してほしいと求める声等を最後は「エゴ」と平気で言ってしまう方です。許し難いコメントです。

2007/06/02 Sat 13:18:44
URL | hiroyuki #-[ 編集 ]
「エゴ」は、どっち?
hiroyukiさんのHP拝見しています。大島さん、ほんとにこんなこと言ったんですか。目がまーるくなりました。

もし本当だとしたら、「エゴの塊はどっちですか」と問いたい。

みんな「いのち」を真剣に考えている結果だと思うのに。

2007/06/02 Sat 18:03:55
URL | 五月晴れ #-[ 編集 ]
>五月晴れさん:2007/06/01(金) 10:48:11と2007/06/02(土) 18:03:55へのお返事
コメントありがとうございます。

>レシピエントにとっては「病気腎移植」であることには変わりはありませんね
>移植を推進するならば、「治療を目的とした病気腎」と「移植を目的とした病気腎」を、きっちりとシステム化する必要があると思います。

日本移植学会の意向どおりだと、「治療を目的とした病気腎」は禁止、「移植を目的とした病気腎」は生体腎移植の処理手順を行えば自由ですが、違いありすぎて不合理です。


>それなのに、厚労省の打ち出した全面禁止という指針は全くおかしい。

死体腎移植は善意だけに頼っているものですが、善意だけではドナー不足には到底追いつかないため、海外へ移植を求め、臓器売買も行われるわけです。
難波先生が仰っていましたが、病気腎移植といったように提供する側にメリットのある場合を認め、それが増えることで善意の提供者が増えていくのだと思います。

今後はどんどん健康的でない腎臓が増えていくのでしょうから、病気腎移植を禁止することは、今のままだと結局は死体腎移植さえも減少させていくのだと思います。


>第3者の検証は、この確認をすればこそで、患者にとってのベストとされる判断をかき混ぜかき乱すものではないでしょう。

第三者の検証は、事後検証として行えば足り、一番必要なのは事後の患者の健康状態を追って検証する方だと思います。移植手術は、その移植前や移植時ですべて終わるのでなく、生着しているかどうかなど事後こそ大事だと思いますので。


>おふたりの術後の経過がよろしいとのこと、嬉しく思います。

少しだけしか情報が出ていませんが、移植を実施した甲斐があったようで良かったと思います。


>羽渕教授も今回の件では、大変お疲れ様でした。

「移植を目的とした病気腎移植」事例を執刀した医師の記者会見は初めてですね。日本移植学会がどうであろうと、自己が正しいと理解する移植医療方針を説明し、妥当性を唱えたのですから、尊敬に値する態度であったと思います。
2007/06/03 Sun 23:56:34
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>hiroyuki さん
コメントありがとうございます。


>春霞様のブログで私の勘違いが分かりました。運用指針は「移植目的」の場合は規定していないのですね。

そうですね。運用指針の改定案では、「移植目的」の場合は規定していません。「移植目的」の場合は、生体腎移植と同じ扱いになるようです。

ただ、今後規制することも考えられますが、日本移植学会の大島氏や高原氏が秋田大病院の事例につき「問題ない、通常の治療内容」と強調しているところからすると、日本移植学会が規制に乗り気でないようですから、規制はしないつもりではないかと思います。


>>人間誰でも自分のことを考えれば他のことなんてどうでもよくなるから、そういう状況になった時に、自分が本当に苦しい状況になったときにエゴがやっぱりはっきり出てくるという状況になるのかな。
>とコメントされる大島副理事長です。

これは、苦しい状況にある腎不全患者が移植を希望するというのは正当な主張であるのに、その希望を踏みにじり、不快にさせる発言ですから、「ドクターハラスメント」にあたると思います。

虚偽情報をリークし、古い医学的知識にしがみつき、インフォームドコンセントとは「書面に署名させること」と勘違いしている、大島氏らしい態度です。大島氏にとっては、「ドクターハラスメント」という言葉さえ、新しすぎて知らないのでしょうね(苦笑)
2007/06/04 Mon 00:10:24
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
お詫び
ご無沙汰しております。
皆様方、コメントありがとうございました。
実は、先日の書き込み直後から、私の父が体調を崩し入院しております。また、父の友人で移植を受けられた方が先週の頭に亡くなられました。そのため、しばらくネットにアクセスすることができませんでした。どうもすいません。
頂いたコメントの回答については、もう少し待っていただけばと思います。
どうもすいません。
2007/06/06 Wed 00:13:02
URL | Haru #-[ 編集 ]
>Haruさん
コメントありがとうございます。お返事が遅れてすみません。


>実は、先日の書き込み直後から、私の父が体調を崩し入院しております。
>しばらくネットにアクセスすることができませんでした。
>頂いたコメントの回答については、もう少し待っていただけばと思います

早くご回復なされることをお祈りしています。多くの心労を抱えたままでは、なかなかコメントをする気持ちにならないと思います。

こちらへのコメントはいつでも構いません。気にかける必要はありません。またお待ちしています。
2007/06/10 Sun 23:49:49
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
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