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そのため、想定していた新生児でないという「目的外」に利用されたため、「当初からあった『安易な育児放棄を助長しかねない』との批判が再燃しそうだ」(朝日新聞5月15日付)とか、「『捨て子を助長する』と設置に慎重だった人たちからは、『恐れていた事態が現実になった』」(読売新聞5月15日付夕刊)などと、声高に騒ぎ立てて非難の大合唱状態です。この問題についてコメントしたいと思います。
なお、「こうのとりのゆりかご」問題については、「「こうのとりのゆりかご」(いわゆる「赤ちゃんポスト」)問題〜厚労省は慈恵病院による設置申請を容認へ」、「「こうのとりのゆりかご」設置間近〜問い合わせ既に20件に」でも触れています。ご覧下さい。
1.まず報道記事から。
(1) 東京新聞平成19年5月15日付夕刊1面
「赤ちゃんポストに男児 3歳ぐらい 運用初日、父預ける
2007年5月15日 夕刊
親がさまざまな事情で育てられない新生児を匿名で受け入れようと、熊本市の慈恵病院が設置した国内初の「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)に、運用開始初日の今月十日午後、三歳ぐらいの男の子が預けられ保護されていたことが十五日、分かった。健康状態に問題はないもよう。
ポストについては「命を救う取り組み」として評価の声がある一方、「子捨てを助長する」などと批判も根強いが、実際に子どもを受け入れたのは初めて。慈恵病院の蓮田太二理事長は「事実だとしても、そうでないとしても、医療人としてコメントできない」としている。
慈恵病院は熊本県警や児童相談所などに通報。県警は保護責任者遺棄に当たらないかなどを調べている。警察庁幹部は「個別の判断が必要だが、生命を脅かすような危険なところでなければ(同罪には)当たらないのではないか」としている。
一方、柳沢伯夫厚生労働相は「あってはならないというのが大前提だが、児童相談所などでしっかりと世話をしなければならない」と述べた。
関係者によると、男の子が預けられたのは十日正午に運用が始まって間もない同日午後三時ごろ。熊本県外から父親に手を引いて連れて来られ、自分の名前も話しているという。
熊本市の幸山政史市長は事実関係の公表はできないとした上で、「市としては『まずは相談を』という姿勢は変わらず、(市の窓口の)周知を徹底したい。(ポストの)運営について変更は考えていない」と話した。
<メモ> 慈恵病院の「赤ちゃんポスト」 正式名称は「こうのとりのゆりかご」。経済的な事情などで子育てができない親から新生児を匿名で受け入れる。ドイツなど欧州での同様の取り組みを参考に、熊本市の慈恵病院が5月10日から運用を始めた。本格的な施設は国内初で、熊本市は国との協議を踏まえ「許可しない合理的な理由はない」として設置を認めたが、安倍晋三首相が「大変抵抗を感じる」と発言するなど賛否は分かれている。」
(2) 東京新聞平成19年5月15日付夕刊11面
「【関連】“揺りかご”『3歳』想定外 赤ちゃんポスト 児童養護施設引き取りか
2007年5月15日 夕刊
熊本市の慈恵病院の赤ちゃんポストに預けられた男児は三歳ぐらいとみられ、「親が育てられない新生児を受け入れる」という病院などの想定とは異なる。新生児の場合は通常、乳児院に移されるが、原則として二歳を過ぎた子は児童養護施設に引き取られることになる。
「ポスト」の中心的設備は保育器などの医療機器。生まれて間もない赤ちゃんの場合、体温を保つことが特に重要なためだ。熊本市などは新生児が預けられた場合、一週間程度は慈恵病院が保護して健康状態などを確認。その後二歳ごろまで乳児院で養育することを想定していた。
一方、今回の男児のようなケースでは、児童養護施設で育てられるのが普通で、この間に生みの親が名乗り出れば引き取られる。
だが、親が不明の場合や、現れても養育が困難な場合は、そのまま養護施設にいるか、里親に育てられる。将来は特別養子縁組が行われる可能性もある。
育児放棄防いだ
湯沢雍彦・お茶の水女子大名誉教授(法社会学)の話 病院や県、国は一歳未満の乳児がポストに入れられることを想定し、言葉を話せる幼児が預けられるとは予想していなかっただろう。三歳ぐらいという年齢からみても、まさに「捨て子」に当たると考えられ、病院は幼児をどう扱うか、判断に困っているのではないか。ただこの一件だけで捨て子を助長したとは言えない。むしろ、虐待や育児放棄による子どもの被害を防いだと受け止めるべきだ。
捨て子助長制度
才村真理・帝塚山大教授(児童福祉)の話 病院は幼児が預けられる可能性も考えなければならなかった。三歳ならば置き去りにされた記憶が残り、心の傷になることが考えられる。本来なら相談機関で受けるべきであり、今回のケースを見てもこの制度は捨て子を助長していると言える。」
(3) まずは、父親から病院に預けられた(捨てられた?)男児の「健康状態に問題はない」そうですから、そのこと自体は良かったと思います。いかなる事情があったのかは不明ですが、ともかくは健康に育てられていたようです。「熊本県外から父親に手を引いて連れて来られ、自分の名前も話している」そうですから、名前、地域、年齢が分かるので、その情報からいずれは親の身元が判明する可能性があります。
県外に住む父親が、山中に捨てたり、育児放棄などで虐待することなく、他の病院とかに捨てるのではなく、男児を慈恵病院に連れてきたのは、男児の命と健康を確実に保障してもらえると確信していたからでしょう。捨てたとしても、そこには「健康に生きてほしい」と願う親としての情愛が感じられます。
イ:
<追記>で引用したように、報道機関が殺到して記者会見を要求し情報公開を求めたようですが、慈恵病院はコメントしなかったようです。読売新聞は、「今回の事態が明らかになった15日、慈恵病院には早朝から報道陣が殺到した。応対した田尻由貴子看護部長は「事実関係は一切コメントできない」、蓮田院長も「コメントすることはない」と繰り返した。」などと書いて、コメントしなかったことを非難しているようです。「ポストについては「命を救う取り組み」として評価の声がある一方、「子捨てを助長する」などと批判も根強いが、実際に子どもを受け入れたのは初めて。慈恵病院の蓮田太二理事長は「事実だとしても、そうでないとしても、医療人としてコメントできない」としている。」
しかし、慈恵病院としてはコメントしないことは当然の反応です。 医療機関は患者の秘密を秘匿する義務があるのですから、本人の同意なく患者の医療情報を公表することはできず、3歳の男児には同意能力が欠ける以上、「医療人としてコメントできない」のですから。
読売新聞の記者は、患者の情報を勝手に公開していいと思っているのでしょうか? 「医療ルネッサンス」という記事を盛んに宣伝していたりしますが、病腎移植問題では患者の医療情報を勝手に暴露していますし、読売新聞の記者は医療契約の基本的な事項さえ理解していないようです。
ロ:
厚生労働省によると、2000年までの統計で、日本では年間200人前後の「捨て子」があるそうですし、お茶の水女子大子ども発達教育研究センターの榊原洋一教授によると、「育児放棄など虐待も少しずつ増加。年間50人の子どもが虐待で命を失っている」とのことです。だから、今回の事件は「捨て子」の一例すぎないのであって、わざわざ記者会見を行い「あってはならない」などと言い立てるほどのことではないのです。「あってはならない」などと言ったところで、現実に起きていることに対して何の対策にもなりません。言うだけなら誰だっていえるのです。具体策を講じるのが国の役割であり、国には役割を応じる義務があるのです。「一方、柳沢伯夫厚生労働相は「あってはならないというのが大前提だが、児童相談所などでしっかりと世話をしなければならない」と述べた。」
ハ:この一例から、「こうのとりのゆりかご」制度をどう判断すべきでしょうか?
「育児放棄防いだ
湯沢雍彦・お茶の水女子大名誉教授(法社会学)の話 病院や県、国は一歳未満の乳児がポストに入れられることを想定し、言葉を話せる幼児が預けられるとは予想していなかっただろう。三歳ぐらいという年齢からみても、まさに「捨て子」に当たると考えられ、病院は幼児をどう扱うか、判断に困っているのではないか。ただこの一件だけで捨て子を助長したとは言えない。むしろ、虐待や育児放棄による子どもの被害を防いだと受け止めるべきだ。
捨て子助長制度
才村真理・帝塚山大教授(児童福祉)の話 病院は幼児が預けられる可能性も考えなければならなかった。三歳ならば置き去りにされた記憶が残り、心の傷になることが考えられる。本来なら相談機関で受けるべきであり、今回のケースを見てもこの制度は捨て子を助長していると言える。」
才村真理・帝塚山大教授は、たった一例、しかもまだ開始したばかりなのに「今回のケースを見てもこの制度は捨て子を助長していると言える」と言ってしまうのです。欧州では、日本で実施する前から実施されており、そこでは「捨て子を助長する」といった断定はなされていないのに、欧州の実施状況や判断を無視して勝手に「捨て子を助長する」と断定してまうのです。才村真理・帝塚山大教授の意見は、あまりに短絡的で冷静さに欠けた判断です。
湯沢雍彦・お茶の水女子大名誉教授が述べるように、「ただこの一件だけで捨て子を助長したとは言えない。むしろ、虐待や育児放棄による子どもの被害を防いだと受け止めるべき」といった判断の方が、冷静で思慮に富んだ判断であって妥当だと考えます。
2.では、この男児を慈恵病院に預けてきた父親は、保護責任者遺棄罪(刑法218条)に当たるのでしょうか?
(1) 東京新聞(2007年5月16日 01時11分)
「父親の刑事責任問わず 赤ちゃんポストで熊本県警
2007年5月16日 01時11分
熊本市の慈恵病院が設置した「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)に3歳ぐらいの男児が預けられていた問題で、熊本県警は15日、男児を同病院に連れてきたとみられる父親の刑事責任を問わない方針を固めたもようだ。
預けられた時の状況などについて調べた結果、保護責任者遺棄罪に当たるような危険な状況ではなかったと判断したとみられる。
関係者によると、男児はポストの運用が始まったばかりの10日午後3時ごろ、父親に同病院に連れてこられポストに預けられた。
病院の通報で県警は捜査を開始。男児は自分の名前を話したり、手を引かれてきたことは話したものの、身元や住所の特定につながる詳しい話はできなかったとされる。
県警は慈恵病院関係者からの事情聴取で、健康状態に問題がなかったことや、男児を保護するための病院の態勢が機能していたことを確認。今回の父親の行為に事件性はないとみている。
(共同)」
(2) 毎日新聞(2007年5月16日東京朝刊)
「赤ちゃんポスト:3歳男児預け入れ 遺棄罪には慎重意見
◇育児支援を/道義的に責任/相談所併設も
熊本市の慈恵病院に設置されている「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」に3歳とみられる男児が預けられていたことを受け、熊本県警や県児童相談所などの関係機関は、男児を連れてきた父親の特定を急いでいる。ただ、県警は、父親が安全確保のための設備が整った「ポスト」に男児を預けていることなどから保護責任者遺棄罪に当たる可能性は低いとみている。
男児が預けられたのは、今月10日正午にポストの運用を始めてからわずか3時間後の同日午後3時ごろ。病院はこの日、蓮田太二理事長が朝から「ポスト」前で会見に応じ、正午ごろまでは取材する報道陣が病院周辺に多数詰めかけていた。ただ、その後、報道関係者は現場から引き揚げ始め、父親が男児を連れてきたころには、かなり数が減っていた。
◇
内田博文・九州大大学院法学研究院教授(刑法)は「遺棄罪は遺棄された子供の生命、身体が危険になることが成立要件だが、赤ちゃんポストの設置自体が子供の生命を守ることを目的としているため、警察・検察庁も同罪での捜査をしないのではないか」とみる。その一方で「赤ちゃんが成長し、生みの親を知りたくなったとき、どう応えるのか。一番の問題は、母親が育児と仕事を両立できない環境が放置されていること。母親が安心して子育てができる環境整備が急務だ」と指摘した。
土本武司・白鴎大法科大学院長(刑法)も「遺棄罪には当たらないと考えるが、親の道義的、倫理的責任は残るだろう。そもそも受け入れ段階で、年齢制限など何らかの条件を設ける必要があったのでは」と話した。
前田雅英・首都大学東京法科大学院教授(刑法)は「従来の形式論から言えば遺棄罪で処罰するほどの危険性はないが『それでいいのか』という議論は出てくる。子育て放棄を遺棄罪の中に踏み込んで考えることも出てくるだろう」と話した。
一方、大阪市中央児童相談所元所長の津崎哲郎・花園大教授(児童福祉論)は「男児は『自分が預けられた』という状況を理解しているだろう。それをどう受け止めるかが心配だ。(児童相談所など)公的機関に相談すれば一時保護もしてもらえるし養護施設もあり、子供にとって最善の方法を相談できたのではないか」と話した。
海外の事例に詳しい阪本恭子ノートルダム清心女子大講師(生命倫理学)は「ドイツでも00年のポスト開設当初に父親が3歳女児を預けたケースがあった。それをきっかけに家族問題全般に関する相談所をポストに併設する改善措置がとられた」と指摘。「育児について女性だけでなく若い父親なども悩みを抱えていることを考え、今後、病院は家族問題の相談機関と連携することを考えてはどうだろうか」と提案した。
◇「相談所活用を」−−首相がコメント
安倍晋三首相は15日夕、「赤ちゃんポスト」に男児が預けられたことについて「子供を置いてくる前に、児童相談所をはじめ相談する体制がある。万一の悩みがあれば相談してもらいたい」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。【近藤大介】
毎日新聞 2007年5月16日 東京朝刊」
(3) 「「こうのとりのゆりかご」(いわゆる「赤ちゃんポスト」)問題〜厚労省は慈恵病院による設置申請を容認へ」において、保護責任者遺棄罪(刑法218条)を検討しました。
そこで述べたことを少し繰り返しますと、保護責任者遺棄罪の性質についてのどのような見解でも、被遺棄者に対して何らかの危険の存在が必要であるとされています。そのため、「いずれの見解からも、保護が確実に見込まれる場合には犯罪の成立が否定」(山口厚著「刑法各論」31頁)されると理解されているのです。
そうだとすると、県警が述べるように「父親が安全確保のための設備が整った『ポスト』に男児を預けていることなどから保護責任者遺棄罪に当たる可能性は低い」という判断は妥当です。男児の健康状態も問題ないのですから、何らかの危険があったということはできません。
内田博文・九州大大学院法学研究院教授(刑法)、土本武司・白鴎大法科大学院長(刑法)、前田雅英・首都大学東京法科大学院教授(刑法)など、刑法学者はすべて保護責任者遺棄罪が成立しないと判断しています。
土本武司・白鴎大法科大学院長(刑法)は「親の道義的、倫理的責任は残る」と述べていますが、刑法学者は法的責任を語るべきで、倫理的責任を語るべきではないでしょう。
また、土本氏は、「そもそも受け入れ段階で、年齢制限など何らかの条件を設ける必要があったのでは」とも言っていますが、新生児を予定していると分かっているにも関わらず、3歳児を密かに預けにくる人へどうやって規制することができるのでしょうか? 非現実的なことを述べてみても意味がありません。
(4)
「海外の事例に詳しい阪本恭子ノートルダム清心女子大講師(生命倫理学)は「ドイツでも00年のポスト開設当初に父親が3歳女児を預けたケースがあった。それをきっかけに家族問題全般に関する相談所をポストに併設する改善措置がとられた」と指摘。「育児について女性だけでなく若い父親なども悩みを抱えていることを考え、今後、病院は家族問題の相談機関と連携することを考えてはどうだろうか」と提案した。」
やはり、ドイツでは経験済みのことのようです。ドイツの先例に見習って、「家族問題全般に関する相談所をポストに併設する改善措置」を採るとか、「今後、病院は家族問題の相談機関と連携」するなどの対応をするとよりよいといえそうです。ただ、これでは病院に負担がかかりすぎます。まずは、もっと国による相談所の充実、実効的な育児支援こそが必要であるというべきです。
ちなみに、思慮の浅い安倍首相は、「赤ちゃんポスト」に男児が預けられたことについて「子供を置いてくる前に、児童相談所をはじめ相談する体制がある。万一の悩みがあれば相談してもらいたい」と述べるだけで、具体的な対応は少しも考えないのです。思慮が浅く知恵が足りない安倍首相には無理なことは分かっているとはいえ、情けない限りです。
<追記>
読売新聞としては、どうしても「こうのとりのゆりかご」を否定的に扱いたいような見出しと記事内容です。読売新聞5月15日付夕刊15面(2007年5月15日13時19分 読売新聞)を紹介しておきます。
「赤ちゃんポストに3歳児、「捨て子助長」の懸念が現実に
熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が設けた「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」に最初に預けられたのは、新生児ではなく、言葉も話せる「3歳児」だった。
親が養育できない新生児の受け入れを想定していた病院の担当者は、予想外の事態に固く口を閉ざしたまま。これに対し、「捨て子を助長する」と設置に慎重だった人たちからは、「恐れていた事態が現実になった」と改めて疑問の声が上がった。
今回の事態が明らかになった15日、慈恵病院には早朝から報道陣が殺到した。応対した田尻由貴子看護部長は「事実関係は一切コメントできない」、蓮田院長も「コメントすることはない」と繰り返した。
病院側は設置当初から、「個別の事案についてその都度公開することは差し控えたい」とし、運用開始から半年を経た時点で利用の有無、件数などを公表する方針を明らかにしていた。
厚生労働省は15日朝の段階で、市、県、病院のいずれからも報告を受けておらず、報道機関などからの問い合わせへの対応に追われた。藤井康弘・家庭福祉課長は「赤ちゃんではなかったとは、信じられない。事実とすればとんでもない話だ。事実関係を含め、県、市に情報を求めるかどうか検討したい」と驚きを隠せない様子で語った。
同省雇用均等・児童家庭局の大谷泰夫局長は「現場で個別に判断して対応すべき話で、市、病院の対応を注視したい」としながらも、「3歳ぐらいの子供なら、児童相談所に相談すべき事例。安易に子供を置いていってしまう場にされるのではという、心配していたことが起きた」と話した。
赤ちゃんポストを巡っては、施設設置の許可権者である熊本市が、児童虐待防止法など関連法に照らして違法性はないかどうか見解を厚労省に求めた経緯がある。これに対し、同省は「違法とは言い切れない」と容認する考えを示した上で、〈1〉ポスト付近に児童相談所などに相談するよう親に呼びかける掲示をする〈2〉預かった場合は児童相談所に通告する〈3〉親が考え直した場合に引き取ることができる仕組みを考える――などを要望していた。
橋山吉統(よしのり)・福岡県弁護士会子どもの権利委員会委員長の話「今回に限れば、設置が悪い方向に出た。子どもの命を守るという意味では趣旨にかなっているが、自分で育てられないから何歳でも預けていいんだという結果を招いたとすれば残念だ。家庭環境などに事情があれば、児童養護施設に一時保護してもらうなどの手続きがあり、今回はそれを逸脱してしまった」
高橋史朗・明星大教授(臨床教育学)の話「子供の命を守るという点では、赤ちゃんポストの役割は間違っていない。しかし、親がこうした制度に安易に頼ってしまうと、親子の結びつきが弱まることにつながりかねない。新生児ではなかった今回のケースは、この懸念が現実になったとも言える。ポストの意義は否定しないが、まず何よりも、子育てをする親を支援する仕組みを社会全体で作っていかなくてはならない」」
橋山吉統氏は「今回に限れば、設置が悪い方向に出た」と述べていますし、高橋史朗・明星大教授も「子供の命を守るという点では、赤ちゃんポストの役割は間違っていない……ポストの意義は否定しない」と述べています。このように、「こうのとりのゆりかご」を否定的に扱いたいような発言ではありません。記事の見出しと識者のコメントとはちぐはぐな感じを受けます。
<5月17日追記2>
「個人情報保護」は国であろうと県であろうと同じですし、個人情報を多く抱えた国こそ特に尊重する必要があります。なぜ厚労省は事実照会したのでしょう? 熊本県側は拒否するのは当然の対応だと分かっていていいはずなのに。「厚労省が事実照会断念 赤ちゃんポストに幼児
熊本市の慈恵病院が開設した「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)に3歳ぐらいとみられる男児が預けられていた問題について、厚生労働省は16日、詳細な事実確認ができないまま、児童相談所業務を担当する熊本県への照会作業を取りやめた。「個人情報保護」を理由に県側から情報が伝わらないためだが、赤ちゃんポストの運用実態の把握に課題を残した。
厚労省は男児が預けられていたことが発覚した15日から、熊本県に事実関係について電話で問い合わせてきたが、同県は「情報公開条例に基づき、個人情報を保護する義務が県職員にはある。相手が国であっても、子どもが預けられたかどうかも含めて伝えることはできない」として、照会に応じなかったという。
厚労省家庭福祉課は「県から国への報告義務はなく、熊本県の考えを尊重する。現地から相談があればいつでも応じる」としているが、想定外の幼児が預けられた今回の事例を国が独自に検証することは難しくなった形だ。
=2007/05/17付 西日本新聞朝刊=
2007年05月17日14時54分」(西日本新聞(2007年05月17日14時54分))
テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済
前例があれば人の心は閾値を越えやすくなってしまうという懸念は分からなくもないです。
まだ1例ですが、これを皮切りに増加する可能性もまた否定できません。
匿名でしかも病院スタッフとの接触も無しに行われる現在の方法はいささか疑問です。
外部に情報を漏らさないことを大前提として、親の情報は取得しておくべきではないかと思います。親の病歴などは子供にとって重要になると思いますし。
URL | 名無しさん #wr80fq92[ 編集 ]
けれど、生命・倫理といった深遠な問題を、安倍さん体よくあしらっていますね。
>消極的賛成だけど運営方法は変えるべき
「消極的賛成」という点は、私も同意見です。「こうのとりのゆりかご」がなくてもよい世の中であればそれが望ましいのです。
>「3歳児でも預かってもらえる」前例を作ってしまったことの方が
>大きいのでは?
>前例があれば人の心は閾値を越えやすくなってしまうという懸念は
>分からなくもないです
保護が確実に見込まれる場合には保護責任者遺棄罪の成立が否定されます。なので、慈恵病院でなくても病院に“預けた”場合は、通常、犯罪不成立なのです。
そうなると、今回のケースが「前例」になったというわけではなく、ずっと前から前例はあるのです。
だから、「赤ちゃんポストが……『3歳児でも預かってもらえる』前例を作ってしまった」ということではないのです。
それに、現在、年間200人ほどの捨て子がいるのですが、前例があれば捨て子しやすいというほど、親子関係は希薄になっているとは、ちょっと思えません。
「前例があれば人の心は閾値を越えやすくなってしまう」から子供を捨てるのではなく、その親子自体に捨てるような原因があることこそが問題だと思います。
>匿名でしかも病院スタッフとの接触も無しに行われる現在の方法は
>いささか疑問です
日本でも子捨て・子殺しを避ける制度はあるのですが、いずれも匿名での出生を認める制度ではありません。子捨て・子殺しを少しでも減らすためには、匿名性を確保した方法も必要です。赤ちゃんポストは、匿名性を保証することで、存在価値・存在意義を与えるのです。
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-306.html
>まだ1例ですが、これを皮切りに増加する可能性
今後も新生児以外の子供をおいてくることはあるでしょう。でも、これは今までの「捨て子」と同じで、単なる一例にすぎないのです。
もし増加するとしたら、「こうのとりのゆりかご」のせいではなく、日本人の親子意識自体に問題があるのではないでしょうか。
>外部に情報を漏らさないことを大前提として、親の情報は取得しておく
>べきではないかと思います。
慈恵病院は預かった子供を養育監護するわけではないので、個人情報保護の観点から、親の情報を求める理由が乏しいと思います。
>親の病歴などは子供にとって重要になると思いますし
人の病気治療は基本的に本人の身体で判断するはずです。なので、「親の病歴」は「子供にとって重要」というのは難しい気がします。
慈恵病院が親の病歴を知ったところで、預かった子供を養育監護するわけではないですし。
それぞれに言うに言えぬ事情があると考えられないのでしょうか。
URL | 五月晴れ #-[ 編集 ]
>Sr.阪本さんの意見、妥当だと思いました
そうですね。現実的で有効な方法です。
もっとも慈恵病院は、「こうのとりのゆりかご」設置を機に「新生児相談室」を新設し、カウンセリングのできる担当者が24時間電話相談に乗る対策を採っています。また、熊本市は福祉総合相談室を11人に増強し、24時間態勢で妊娠の悩みを聞く電話相談を始めて、ゆりかごが使われることがないような努力をしています。県も、望まない妊娠などに悩む女性のための専用相談ダイヤルを県中央児童相談所内に1回線新設。3月29日からはポスターやカードで県内の相談窓口のPRを始めたそうです。
http://kumanichi.com/iryou/kiji/yurikago/ukezara02.html
それでも、「こうとりのゆりかご」に連れてくるのですから、子捨て対策は難しいですね。
>けれど、生命・倫理といった深遠な問題を、安倍さん体よくあしらっていますね
安倍首相は「こうとりのゆりかご」を批判した以上、あしらわないで対案を提示すべきなのですが……。
この女性、育てられないって、行政に相談に行っていたらしいです。
でも、行政は、調査が必要だと、数ヶ月ほおっておいて、今回の事件が起きました。
彼女のことを鬼畜と言いますが、もしゆりかごがあれば、そっちに捨てていて、助かったでしょう。
それを否定する人は、同じ鬼畜以外のなにものでもないのでは?
もっともっと為政者は、現場の苦悩を見て、発言して欲しいです。
URL | ほっちゃれ #-[ 編集 ]
>ひとこと言わせていただくなら、(周囲は)騒ぎすぎだと思います。
そう思います。取材陣が殺到し、首相、厚労相、官房長官が「相次いで批判的な声」を上げるなんて。
http://news.tbs.co.jp/20070515/newseye/tbs_newseye3563011.html
現に熊本県知事は、新生児以外の利用も想定していたと述べているのですから、みんなでおたおたする必要がないんですけどね〜。日本人は精神的に脆いのでしょうか……(^^ゞ
「熊本県知事「新生児以外の利用も想定」
熊本県知事は「新生児以外の利用についても想定していた」とした上で次のように述べました。
「公の立場が“子供の命のとりで”という役割を、本当に児童相談所を含めてやってきたのかということが問われているんじゃないかと思うんです。匿名であっても、公の機関はしっかりと私たちは対応していくということの責務を改めて思いました」(熊本県・潮谷義子知事)
(15日20:02) 」
http://news.tbs.co.jp/20070515/newseye/tbs_newseye3563106.html
>それぞれに言うに言えぬ事情があると考えられないのでしょうか。
そうですね。
初日にすぐに県外から、3歳児を預けにくるのですから、よほどの事情があるのでしょうね。「こうのとりのゆりかご」に3歳児を預けたという事実よりも、預けるに至るほどの事情を解消する手立てを考える方が重要です。
>この女性、育てられないって、行政に相談に行っていたらしいです。
>でも、行政は、調査が必要だと、数ヶ月ほおっておいて、今回の事件が
>起きました。
>もっともっと為政者は、現場の苦悩を見て、発言して欲しいです
この事件では、女性は児童相談所に相談に行ったのに、積極的に動くに至らずに、結局は子どもの命が奪われてしまいました。
安倍首相は「子供を置いてくる前に、児童相談所へ」と言ってますが、肝心の児童相談所が十分に機能していないわけです。安倍首相は、現実を無視して、ただ言うだけなんですよね……(-_-;)
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