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2007/04/26 [Thu] 07:33:52 » E d i t
宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる病気腎移植をめぐり、厚生労働省の臓器移植委員会(委員長・永井良三東京大教授)は4月23日、臓器移植法の運用指針を改訂して生体移植に関する規定を新たに設け、「病気腎移植の原則禁止を盛り込むことで大筋合意」(東京新聞4月24日付朝刊30面)したそうです。この「大筋合意」という微妙な表現に意味があるわけです(後述)。

改訂案では、病気腎移植を「治療上の必要から摘出した腎臓を移植に用いる」行為と規定し(東京新聞4月24日付朝刊30面)、日本移植学会などが発表した声明を受け「現時点では医学的妥当性がないとされている」とした上で、原則として実施を認めないこととしています。この報道についてコメントしたいと思います。


1.読売新聞や毎日新聞も改訂案についての記事を掲載してますが不正確です。なので日経新聞と産経新聞を引用しておきます。まずは、日経新聞から。

(1) 日経新聞平成19年4月24日付朝刊42面

 「病気腎移植、原則認めず 厚労省審議会 指針案で大筋合意

 宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる病気腎移植問題を受け、厚生労働省の臓器移植委員会は23日、同省の指針案に病気腎移植を原則認めない方針を盛り込むことで大筋合意した。ただ条件次第で将来的に移植の道を残すかどうかについては意見がまとまらなかったことから、表現などはさらに検討する。

 同省が定める臓器移植法の運用指針は現在、11項目。書面による意思表示ができる年齢や、脳死判定の具体的手順などのガイドラインを示しており、移植医療の従事者はこれを順守することが求められている。同省は12項目目として、新たに生体からの臓器移植の取り扱いを追加し、その中で病気腎移植に触れる方針だ。

 この日の委員会は、病気腎移植を含む生体臓器移植のあり方を議論。日本移植学会などの声明に沿う形で「現時点で医学的に妥当性はないとされている。有効性・安全性が予測されるときの臨床研究以外では行ってはならない」との案が出された。

 委員からは「病気腎移植を容認しているように受け取られるのではないか」との意見や、逆に「国が全面禁止とするのは不適切」などの意見が出て、会議は紛糾。結局、万波医師のグループのように同意書を取っていなかったり、病院の倫理委員会にかけない病気腎移植を否定することでは一致したが、再度、指針案の文言などを詰めることになった。

 一方、臓器売買を防ぐための方法を指針案に盛り込むことでは合意した。臓器のドナーが患者の親族の場合、公的な証明書で身元を確認することや、親族以外の第三者がドナーになるときは、倫理委員会で個別に検討することなどを定めた。指針案は5月中にもまとめて公表する方針。


 ▼病気腎移植 腎がんやネフローゼなどの腎臓病患者から摘出した腎臓を使った生体移植。宇和島徳洲会病院の万波誠医師を中心とする「瀬戸内グループ」が手掛けてきた。

 万波医師らは「生体腎、死体腎移植に続く第三の道」と正当性を主張したが、日本移植学会などは3月、「医学的な妥当性がなく、手続きにも問題があった」との批判声明を出した。」



(2) この記事では、委員会の様子を少し掲載しています。

委員からは「病気腎移植を容認しているように受け取られるのではないか」との意見や、逆に「国が全面禁止とするのは不適切」などの意見が出て、会議は紛糾。結局、万波医師のグループのように同意書を取っていなかったり、病院の倫理委員会にかけない病気腎移植を否定することでは一致したが、再度、指針案の文言などを詰めることになった。」

要するに、病腎移植否定派は、お上によって「異論がないような文言で全面禁止を願う」という情けない主張をしたのに対して、病腎移植否定懐疑派は、「患者のため医学の発展を行い、患者に対して責任を負っているのは医師であって、国が医学の発展を阻害することは許されない」として、国が全面禁止をするのは不当だという真っ当な主張をしたため、会議は紛糾したわけです。

会議が紛糾したからこそ、「大筋合意」しかできなかったということになったのです。この会議が紛糾した様子については、次に引用する、産経新聞がもっと詳しく掲載しています。




2.最も詳しい記事は産経新聞でした。この記事を読まないと、今回の経緯の真実が分からないと言っていいと思います。

(1)産経新聞平成19年4月24日付朝刊1・29面

病腎移植を原則禁止  厚労省指針 臨床研究には道残す

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らによる病腎移植問題で、厚生労働省の臓器移植委員会は23日、臓器移植法運用指針に、病気治療のために摘出された腎臓を他人に移植する病気腎移植を原則禁止とする項目を設けることで大筋合意した。ただ、病気腎移植の臨床研究までは禁止せず、研究対象として行う道に可能性を残した。

 厚労省がこの日の同委員会に、生体移植に関する規定を追加する運用指針の改正案を提案した。

 改正案は、日本移植学会など4学会が3月に示した声明に沿い、「病腎移植は現時点では医学的に妥当性がないとされている」と指摘し、「有効性、安全性が予測されるときの臨床研究として行う以外は、行ってはならない」と規定。臨床研究を行う場合は、厚労省が平成16年に告示した「臨床研究に関する倫理指針」を守ることとした。

 また、宇和島徳洲会病院での臓器売買事件を受けて、生体移植の際の臓器提供者の意思確認のあり方などについても規定。戸籍抄本、住民票、世帯単位の保険証などで患者の身元や親族関係を確認するほか、家族や移植関係者以外の人が臓器提供者の意思を確認する▽臓器提供にともなう危険性などを説明し書面で同意を得る▽親族以外が提供者となる場合は病院の倫理委員会で個別に承認を受ける―などの手続きが必要としている。

 厚労省は改正案の文言を一部修正のうえ、近く国民からの意見を聞き、運用指針を改正する。」



 「病腎移植 臨床研究  実施に高いハードル「可能性ほとんどなし」

 臓器移植法運用指針をまとめた23日の厚生科学審議会臓器移植委員会(委員長・永井良三東京大教授)は、解釈によっては病腎移植を条件付きで容認するとも受け取れる指針内容だけに、議論が白熱した。大筋で一致したのは「万波医師らの実施した移植は一般医療として認められない」ことと、「移植医療としての研究の道は閉ざさない」という点だった。

 病腎移植を原則禁止とする是とも非とも読める厚労省の指針案に対し、正面から意味を問うたのは国立循環器病センター総長の北村惣一郎委員。「臨床研究倫理指針に沿って適切な対応をした場合は病腎移植を認めるということか」と質問すると、委員会の雰囲気ががらりと変わった。

 指針案を提案した厚労省臓器移植対策室の原口真室長は、病腎移植は一般的医療ではなく実験的医療だとの日本移植学会などの判断を強調。「まずは臨床研究として始めるべきだと整理した」と述べた。

 日本移植学会副理事長の大島伸一委員は「医学的に必要と判断され、十分なインフォームドコンセント(説明と同意)があり、患者本人が望めば、摘出せざるを得ない。その経緯は明示できるようにしなければならない」と病腎摘出の条件を説明。

 その上で、「病腎移植容認といわれると困るが、私自身、一律に全面禁止することは不適切だと思っている」と述べ、医学、医療の進歩のために臨床研究の道を残すことに賛同する意見を述べた。

 移植患者らでつくる日本移植者協議会の理事長、大久保通方委員も「万波先生のやった病腎移植は認められないが、(病腎移植の)可能性がゼロでない以上、研究を続けてほしい。そして発表し、検証してほしい」と、患者の思いを語った。

 しかし、臨床研究として実施するには、実施機関をはじめ、学術的、倫理的な多くの審査を受ける必要がある。会議後、大島委員は「専門家がみている将来は5年、10年、もっと先。手続きだけ考えても、現時点では実質的に病腎移植が実施される可能性はほとんどないと思う」と話した。」



(2) 委員会で病腎移植を巡る記述について質したのは、国立循環器病センター総長の北村惣一郎委員でした。
 

「病腎移植を原則禁止とする是とも非とも読める厚労省の指針案に対し、正面から意味を問うたのは国立循環器病センター総長の北村惣一郎委員。「臨床研究倫理指針に沿って適切な対応をした場合は病腎移植を認めるということか」と質問すると、委員会の雰囲気ががらりと変わった。

 指針案を提案した厚労省臓器移植対策室の原口真室長は、病腎移植は一般的医療ではなく実験的医療だとの日本移植学会などの判断を強調。「まずは臨床研究として始めるべきだと整理した」と述べた。……

 移植患者らでつくる日本移植者協議会の理事長、大久保通方委員も「万波先生のやった病腎移植は認められないが、(病腎移植の)可能性がゼロでない以上、研究を続けてほしい。そして発表し、検証してほしい」と、患者の思いを語った。」


このように、病腎移植否定派と思われる、国立循環器病センター総長の北村惣一郎委員は、病腎移植を全面禁止を求めようとしているのに対して、日本移植者協議会の理事長、大久保通方委員は、病腎移植の全面禁止を阻止する主張をしたのです。

病腎移植によって利益も不利益も直接受するのは移植者ですし、深刻な臓器不足においては必要性が高く、米国では(死体からの)病腎移植は実施され、政府の方針として、できる限りすべての臓器を移植にしようとしているのですから、移植者団体の主張は当然の主張です。北村惣一郎委員は、患者の意見を無視し、現在の日本の移植事情から目を逸らし、米国の移植事情を全く知らないのですから、その主張は不当です。



(3) 相変わらず平気でうそをついて悪びれないのが、大島氏です。この記事にはその嘘つき振りが明確に出ています。なお、日本移植学会のHPを見ると、役職は、理事長と理事しかなく、副理事長という役職は見当たらず、大島氏は単なる「理事」の一人に過ぎないのです。なので、今度から、自称“日本移植学会副理事長”の大島氏と表記することします。
 

「日本移植学会副理事長の大島伸一委員は「医学的に必要と判断され、十分なインフォームドコンセント(説明と同意)があり、患者本人が望めば、摘出せざるを得ない。その経緯は明示できるようにしなければならない」と病腎摘出の条件を説明。

 その上で、「病腎移植容認といわれると困るが、私自身、一律に全面禁止することは不適切だと思っている」と述べ、医学、医療の進歩のために臨床研究の道を残すことに賛同する意見を述べた。……

 しかし、臨床研究として実施するには、実施機関をはじめ、学術的、倫理的な多くの審査を受ける必要がある。会議後、大島委員は「専門家がみている将来は5年、10年、もっと先。手続きだけ考えても、現時点では実質的に病腎移植が実施される可能性はほとんどないと思う」と話した。」


自称“日本移植学会副理事長”の大島氏は、委員会では患者団体に色目を使って

、「『一律に全面禁止することは不適切だと思っている』と述べ、医学、医療の進歩のために臨床研究の道を残すことに賛同」

などと、心にもないことを恥ずかしくもなく言ってしまうのです。

ところが、会議が終わると一変します。

「5年、10年、もっと先。手続きだけ考えても、現時点では実質的に病腎移植が実施される可能性はほとんどない」

と、10年近く病腎移植は実施できないのですから全面否定する内容と変わらないのに、会議後、こういう発言を平気で言ってのけるのです。要するに、病腎移植の可能性を認めた委員会での発言は実質的に虚偽であって、委員会に出席した者全員が虚偽発言に騙されたのです。さすが、羞恥心のない、自称“日本移植学会副理事長”の大島氏です。会議後すぐに発言を翻したのと同様な発言をするのですから。




3.改定案について幾らか検討を加えておきます。
特集宇和島 腎移植2007年04月24日(火)付 愛媛新聞「臓器移植法運用指針改正案要旨」

 「臓器移植法運用指針改正案要旨

 厚生労働省が二十三日の臓器移植委員会に提案した、「生体からの臓器移植の取り扱い」を新たに盛り込んだ臓器移植法運用指針改正案の要旨は次の通り。
  ×   ×   ×

 生体からの臓器移植は健常な提供者に侵襲を及ぼすことから、やむを得ない場合に例外として実施されるもの。生体臓器移植を行う場合は、同法の規定を順守するため以下の通り取り扱う。

 臓器提供の申し出は、任意で他からの強制でないことを、家族や移植医療に関与する者以外で、提供者の自由意思を適切に確認できる者が確認しなければならない。

 提供者には、摘出術の内容を文書で説明するほか、臓器提供に伴う危険性、移植患者の手術で推定される成功の可能性を説明し書面で提供の同意を得なければならない。

 移植患者に移植術の内容、効果、危険性を説明し書面で同意を得る際、併せて提供者における臓器提供に伴う危険性も説明しなければならない。

 提供者が移植患者の親族の場合、親族関係や親族本人であることを、公的証明書で確認することを原則とする。公的証明書で確認できない時は院内倫理委員会などで関係資料に基づき確認する。

 <細則>本人確認のほか親族関係を戸籍抄本、住民票または世帯単位の保険証で確認する。別世帯だが戸籍抄本などでの確認が困難な時は、少なくとも本籍地が同一であることを公的証明書で確認すべきだ。

 <細則>倫理委員会などの構成員にドナー(臓器提供者)・レシピエント(移植患者)の関係者や移植医療の関係者を含む時は、これらの者は評決に加わらず、また、外部委員を加えるべきだ。

 親族以外の第三者から臓器提供される場合、院内倫理委員会などで有償性の回避及び任意性の確保に配慮し、症例ごとに個別に承認を受ける。

 <細則>生体腎移植では、提供者の両腎のうち状態の良い方を提供者にとどめることが原則。この結果、親族以外の第三者から摘出の必要のない軽度の疾患を有する腎臓が提供される場合にも、本項が適用される。

 疾患の治療上の必要から腎臓が摘出された場合で、摘出された腎臓を移植に用いるいわゆる病気腎移植は、現時点では医学的に妥当性がないとされている。従って病気腎移植は、医学・医療の専門家が一般的に受け入れられた科学的原則に従い、有効性と安全性が予測される時の臨床研究として行う以外は、これを行ってはならない。また、当該臨床研究を行う者は「臨床研究に関する倫理指針」に規定する事項を順守すべきだ。」




(1) この「運用指針」の位置づけについて明確にしておきます。自称“日本移植学会副理事長”の大島氏は、この指針を「法律に準ずる」と述べています(特集宇和島 腎移植2007年04月24日(火)付 愛媛新聞「研究の抜け穴化危惧 委員「制約必要」提起も 臓器移植法改正案 万波医師―残念だがもうやらない 患者ら―実績積み重ね道開いて」)。

しかし「運用指針」は、臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)や臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年厚生省令第78号)とは別個のものです。運用指針を「十分御参照の上、臓器の移植に関する法律及び同法施行規則の適正な施行」をお願いするというものですから、法律や規則の一部と理解することも困難です。

ですから、「運用指針」は、法律でもなく厚労省の省令(規則)でもないのですから、法ではなく、尊重を求めるという趣旨の規定にすぎません。なので、自称“日本移植学会副理事長”の大島氏は、法律に準じるものと言っていますが、そういう規定ではないというべきです。



(2) 

「生体からの臓器移植は健常な提供者に侵襲を及ぼすことから、やむを得ない場合に例外として実施されるもの。生体臓器移植を行う場合は、同法の規定を順守するため以下の通り取り扱う。……

 提供者には、摘出術の内容を文書で説明するほか、臓器提供に伴う危険性、移植患者の手術で推定される成功の可能性を説明し書面で提供の同意を得なければならない。」


要するに、医師には、臓器提供者に対して説明書を示す義務を課し、臓器提供者から同意書をとる義務を課したということです。説明や同意を行うことはすべての医療行為で行うことですから、生体移植では書面が必須になったことに意味があります。

説明書という書面を要求することは、患者にとって理解を助ける面があることから好ましいともいえます。しかし、ともかく書面を出すことが義務になったのですから、本来、患者にわかり易く納得できるだけの説明をすることよりも、分かり辛い書面を多数配布することを助長し、今後は説明が疎かになりかねない面もあります。言い換えれば、説明書が同意書をとっておけば、日本移植学会の某会員のように、医師の医学知識や技量が乏しくても、訴訟で有利になるようにしておくということです。移植学会の会員にとって実に親切な規定です。

ちなみに、米国での運用は、

「ハワード教授は“インフォームドコンセント(十分な説明と同意)”について「有名なメイヨークリニックをはじめ、同意書に患者さんのサインを求めない病院は少なくありません。つまり病院ごとに方針が異なり、治療方法の多くは医師の裁量にゆだねられています」と説明した。」(大阪・東京で 国際腎不全シンポジウムを開催 「移植への理解を求める会」が主催「徳洲新聞 2007年(平成19年)4月30日 月曜日 No.567 1面より」

となっています。要するに、患者が十分に納得した医療を受けることが第一であって、十分に説明することに重点が置かれていて、同意書を取ることは義務ではなく、医師の裁量に委ねられているのです。実に合理的です。



(3) 

「親族以外の第三者から臓器提供される場合、院内倫理委員会などで有償性の回避及び任意性の確保に配慮し、症例ごとに個別に承認を受ける。

 <細則>生体腎移植では、提供者の両腎のうち状態の良い方を提供者にとどめることが原則。この結果、親族以外の第三者から摘出の必要のない軽度の疾患を有する腎臓が提供される場合にも、本項が適用される。」


この部分は結構恐ろしいと感じました。「生体腎移植では、提供者の両腎のうち状態の良い方を提供者にとどめる」のが通常、というよりも当然の運用だったのですが、この指針だと、「生体腎移植では、提供者の両腎のうち状態の良い方を提供者にとどめることが原則」としていて、良い方を提供することもありうることを示しています。生体臓器移植は、必ずしもレシピエントの側で機能するわけではないのですから、生体腎移植の結果、ドナー側、レシピエント側双方腎不全となる可能性を増やす指針となったのです。

また、倫理委員会の承認を得るのは、「親族以外の第三者から臓器提供される場合」ですから、反対解釈によって、親族から臓器提供される場合には倫理委員会の承認は不要となります。従来、親族間腎移植については、倫理委員会を承認を求める例が少なかったので、その現状を追認したということになります。
しかし、この指針が出されると、反対解釈によって、親族間腎移植についても倫理委員会の承認を行っていた病院も、承認をしなくなるはずですから、それでよいのだろうかという疑問があります。



(4) 

「疾患の治療上の必要から腎臓が摘出された場合で、摘出された腎臓を移植に用いるいわゆる病気腎移植は、現時点では医学的に妥当性がないとされている。従って病気腎移植は、医学・医療の専門家が一般的に受け入れられた科学的原則に従い、有効性と安全性が予測される時の臨床研究として行う以外は、これを行ってはならない。」


よく分からないのは、親族からの提供された腎臓に疾患があった場合、移植されるのかどうかです。元々、理想的な臓器(18~25歳でクレアチニンが正常で高血圧などの疾患を持たないなどの条件を満たすのは全体の15%にすぎない。米国の調査による。)はほとんどないのですから、病気の腎臓であることも少なくありません。今までは、病腎であっても、程度によっては移植していたのですが、今度からは移植をするのかしないのか不明確です。

おそらく臓器提供をする手術の前に、親族からの提供された腎臓に疾患があった場合には、「病気腎移植」の定義に該当してしまうのでしょうから、移植できないことになるのでしょう。そうなると、今まで万波医師以外も行ってきた、「親族からの提供された腎臓に疾患があった場合での移植手術」も閉ざされる結果となります。
要するに、提供しようと思って手術を受けたら、ただ摘出しただけで移植されずに終わった、という例が増えることになります。ドナーとなった親族にとってやり切れない思いとなるでしょう。

「摘出するだけだったら手術しなければよかった。救ってあげたい思ってたのにできずに移植さえできずに終わるなんてあまりに悲しすぎる、(レシピエント側を)ぬか喜びさせてしまった責任をどうしてくれるのか!」

と。この指針によって、生体腎移植の可能性が狭まってしまい、より臓器不足は深刻さを増すことになりました。




4.国際腎不全シンポジウムでの演目とパネルディスカッションの内容は、米国政府や医師の合理的な方針と現実的な対応がよく分かります。「病腎移植の妥当性とその可能性を探る 国際腎不全シンポジウム」(徳洲新聞 2007年(平成19年)4月30日 月曜日 No.567 4,5面より)から、一部引用します。

でき得る限り、すべての臓器を移植に用いるべき
演題 「腎臓移植、ドナーを増やすために」
演者 リチャード・ハワード・米移植外科学会元会長


 日本での病腎移植問題に対して「ドナー(臓器提供者)とレシピエント(移植を受ける人)がそのリスクと利益を完全に理解しているならば、病腎移植は容認できると思います。特に移植できる腎臓の数に限りがあるような地域においては、容認される行為であると思います」とのメッセージを寄せたハワード教授。今回の講演では、国際的なドナー拡大策を概説した。

 「世界初の腎臓移植成功例は1954年にボストンで行われたもの。レシピエントは22年生存し、心臓発作で亡くなりました。一方腎臓を提供した兄弟は70歳代で今でも健在です。ここから我々の長い道のりは始まっていますが、腎臓移植の成績は非常に向上し、成功率も当初の約40%から90~95%と高くなってきました。現在、アメリカのみならず世界各国で重要となっている課題は、いかにより多くのドナーを得るかということです。アメリカ国内では腎臓の移植待機者が7万人を超え、それに対して脳死ドナーは1万件のみです」

 さらに、移植に使われている腎臓に関して、18~25歳でクレアチニンが正常で高血圧などの疾患を持たないなどの条件を満たすのは全体の15%にすぎないことがわかっていることなどから、「ほとんどが理想的な状態ではない。そこで移植可能な腎臓の限界とはどこであるのかという考え方が必要」と指摘。

 同教授は「待機者が急増しドナーが増えていない実情を考えれば、ありとあらゆる臓器を使うということが必要で、我々はでき得る限りすべての臓器を移植に使用しなければならない」との考えを明らかにした。

 米国政府は2003年より「臓器ドナー現状打破共同作戦」を開始、より高齢者、乳児、C型肝炎やB型肝炎、糖尿病の患者、同性愛者、麻薬中毒者、さらにはがんの既往のあるドナーからの臓器を移植に利用し始めており、米国医学協会も「予期されなかった者を含む心停止後のドナーからの腎臓も使用するように」と提唱しているという。

「病院では潜在的なドナーの家族に臓器提供の意思を尋ねなければならない。運転免許を更新する際には臓器提供の意思があるかどうか尋ねなければならないなどのルールができ、全米58の臓器獲得機関に対して政府が達成目標を決定し、最低限の要求を満たさなければ、資格を失います。さらにはドナー家族へのフォローアップ、各種の啓蒙活動も行われてきています」とその具体的な取り組みを紹介した。

 ハワード教授は日本の現状にも言及、「約26万人の透析患者がおられ、1万2000人が腎臓移植を希望し、約120人が中国など海外で移植を受けていると聞いています。今後は不足しているドナーをいかに増やしていくのか、まだまだ方法がありそうに思います」と呼び掛けた。


臓器確保に国を挙げて懸命な努力
演題 「ドナーを増やすためのUNOSの努力と役割」
演者 ティモシー・プルート米国臓器配分ネットワーク(UNOS)会長


 昨年行われた米国での腎臓移植は1万7092例で、そのうち死体腎が1万659例、生体腎は6433例。それでも、現在の腎臓移植の待機者は7万870人を数える。

 一方、臓器を提供するドナー数は、06年で死体ドナーが約8000例、生体ドナーは約7000例に過ぎない。しかも死体ドナーは増加しているが、生体ドナーは増えていないというのが現状だ。

 米国では、国の機関である米国臓器配分ネットワーク(UNOS)がデータベースを用いて、ドナーと臓器提供を受けるレシピエントを引き合わせている。ティモシー・プルート会長によれば「データベースには、移植を待つ人の名前が組織型とともに登録され、臓器が入手可能になると、その情報が入力されマッチングが行われます。米国の多くの州では、自動車登録をする際に臓器提供の意思表示ができ、その意思は運転免許証に記載されます」と語る。

 臓器を確保するために、標準的ドナーよりもさらに基準を拡大した標準逸脱ドナーを取り入れるようにしているのだ。その結果、移植に用いられる臓器が増加している。

 臓器有効利用委員会からUNOSに出された勧告では、糸球体硬化率が15%以下の腎臓はすべて使用すべきであり、15~20%のものでも糖尿病や高血圧の既往がなければ使うべきとしている。さらに20%を超えるものは、単独で用いずに両腎を使う方向を示して、プルート会長は死体腎の還流保存によって、標準的ドナー、標準逸脱ドナーの臓器廃棄率が低下していることも報告した。

 米国ではドナー不足を解消するために、同国政府の強い後押しで腎臓確保のための懸命な努力が払われてきた。現在、全米で58の臓器獲得機関が稼働しており、移植コーディネータが病院への臓器提供を呼び掛け、ドナーの家族の支援も行っている。プルート会長は「使えるのに、病院で廃棄されている臓器を減らすのが課題」と話しているが、現在は廃棄対象になっている臓器の中に使えるものはないか検討する努力を払っているという。


パネルディスカッション 要旨
司会:藤田助教授
パネリスト:ハワード教授、プルート会長、難波名誉教授、林弁護士、堤教授


藤田 「万波医師は、移植学会の会員ではない」との批判があった。
ハワード 米国では、ASTS(米国移植外科学会)会員でなくても臓器移植はできるし、問題はない。

藤田 学会による学会員の行動制限はどうか?
ハワード 米国の学会がルールを定めることはないし、それには反対だ。医学は進歩できなくなる。
難波 日本でも学会に属さなくても医療はできる。日本移植学会の主張そのものが、医師法違反だ。

藤田 書面によるインフォームドコンセントは必要か。
ハワード フロリダ大学病院では書面にサインを求めているが、ルールは病院ごとに異なる。世界的に有名なメイヨークリニック(米国)などでは、書面は必要ない。

藤田 「臓器移植ネットワークを通じてレシピエントを選択しなかった」との批判がある。
ハワード 臓器が死体由来の場合、配分法はUNOSの基準に従う。生体由来で「利他的なドナー」(他人に差し上げようという好意ある健康なドナー)がいる場合などは、医師の裁量で自由にレシピエントを決定できる。
プルート 基本的に決まった順番で臓器は配布されるが、医学的な判断が優先され、移植医の裁量だけで自由に移植されることもある。

藤田 5月に米国移植外科学会で万波誠医師が発表する予定だったが、日本移植学会の手紙でキャンセルとなった。
 非常にショックだった。私たちは抗議運動を起こし、厚労省と移植学会に約1000通の抗議文を送付した。
 学会の幹部が手紙を送るなど前代未聞。強い違和感を覚える。
難波 言論・学問研究の自由は、世の中で最重要の原則だ。圧殺しようとした日本移植学会は暴挙としか言いようがない。
ハワード 発表されるべきデータだった。異議があるのならば、発表の場で議論を戦わせればよかった。
 病腎移植は犠牲者のない、皆が幸せになる医療になり得る。今こそ、移植を受ける権利を患者が声高に叫ぶ時だ。
 現在の法律やルールが絶対正しくて、それが未来永劫ずっと続くはずがない。納得いかないところがあれば、変えていけばいい。」



世界の流れは、(死体からの)病腎移植を行っていて、できる限り移植できる臓器を使おうとしているのであり、制限する意図はなく、学会もルールを定めて制約したりしないです。

しかし、日本では、世界の臓器不足解消方法の流れに反した改定案を出すのです。世界中が、臓器不足解消のために取り組んでいるのに、逆行した態度をとっても少しも羞恥心を感じることもなく、平気なのです。少しは、効果的な臓器不足への対応策を考えるべきなのですが、自称“日本移植学会副理事長”の大島氏などが患者そっちのけで臓器不足解消を邪魔している以上、将来、より深刻な事態を迎えることになりそうです。

テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
記事と全く関係無い、個人的なことで申し訳ないのですが、リンクを切って頂きたく思います。
ご存じかもしれませんが、こちらのブログからこのブログへのリンクを諸事情により切りました。そちらからのリンクだけを残すのは、申し訳ないですから。
誠に勝手ながら、よろしくお願い致します。ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございません。
2007/04/26 Thu 23:19:44
URL | 鞍縞 #-[ 編集 ]
トラックバックありがとうございます。

決定の経過がよくわかりました。

MIXIの万波コミュニティーにリンクさせていただきます。

2007/04/27 Fri 07:55:55
URL | ほっちゃれ #-[ 編集 ]
春霞様トラックバックありがとうございました。大島副理事長の一見理解のあるようなコメントが、実は実質移植が当分の間出来ない、凍結との見通しの上で見せかけだけの言葉であることが分かりました。
患者のためなど考えていないお方であることに改めて憤りを覚えます。
2007/04/27 Fri 22:19:07
URL | hiroyuki #-[ 編集 ]
>鞍縞さん(追記しました)
コメントありがとうございます。


>リンクを切って頂きたく思います。
>こちらのブログからこのブログへのリンクを諸事情により切りました
>誠に勝手ながら、よろしくお願い致します。

申し出は了解しました。いずれリンクからはずしておくことにします。


ただ、リンクについて少し書いておきます。
誰をリンク集に載せるか、ということもその人の表現行為の一方法ですから、表現の自由(憲法21条)として尊重されるものです。なので、他人が行っているリンクというものは、本質的に「他者の言論行為」に属するものですから、それを止めろと言って規制できるものではないのです。

「リンクしないでほしい」と思っていても、自ら世界に向けて情報公開している以上、いわゆるハッキングを除き、自分の気に入らない仕方でアクセスされたりリンクを張ったりされたとしても仕方がないのです。

↓はかなり過激な言い方ではありますが、内容自体は真っ当です。
http://www38.tok2.com/home/linkfree/

「法律なんか持ち出されても分からない」と思っているかもしれません。しかし、法律を知らなくても法律から逃れることはできず、免責されないのです。そのことはよく理解しておいて下さい。


<追記>

鞍縞さんのコメントは楽しかったり、考え方がよいので良いですね。リンクは外しても、これからもコメント、宜しくお願いします。
2007/04/27 Fri 23:40:19
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>ほっちゃれ さん
コメントありがとうございます。


>決定の経過がよくわかりました

経過が分からないと「大筋合意した」の意味がよく分からないんですよね。なので、日経新聞と産経新聞の記事を引用してみました。

ご存知とは思いますが、経過については愛媛新聞にも出ています。
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/zokibaibai/ren101200704249555.html

ただ、愛媛新聞さんは、聞いたまま、咀嚼できた部分だけを掲載しただけで、改正案の意味が分かっていないような感じですね~。改正案は、「臨床研究は閉ざすべきではない」ことを盛り込んだと本気で思っているのが、素直すぎて失笑してしまいます。
2007/04/28 Sat 00:29:52
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
> hiroyuki さん
コメントありがとうございます。


>大島副理事長の一見理解のあるようなコメントが、実は実質移植が
>当分の間出来ない、凍結との見通しの上で見せかけだけの言葉

産経新聞さんは、意義あるコメントを聞き出したと思います。大島氏は、改定案がどうであろうと、病腎移植を凍結するつもりだということが分かります。

この大島氏のコメントを見たら、厚労省の役人(=厚労省臓器移植対策室の原口真室長)は、「4学会の共同声明どおりの改定案にしたのに、凍結するつもりだったの? 4学会の共同声明にはそんなこと書いていないのに。困るね」と戸惑うでしょうね。
2007/04/28 Sat 00:49:02
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
このコメントが最後です
確かに、わかりません。法律のことではなく、そもそも何故、この話に法律論を持ってくるのかが。
私は、「リンクを切れ」と強制的に言った覚えはありません。自分の勝手を承知の上でお願いしたのですが、どうやらそれをご理解頂けなかったようですね……残念です。
正直、遠回しに「『リンクを外せ』と強制的に言った」と言われてるみたいで、あまり良い気はしないです。

それと、申し訳ありませんが、自分のブログのコメント欄を閉じましたので、私も今後、原則他人様のブログ・サイトにはコメントしません。
なのでこれが、最後のコメントになるでしょう。今までありがとうございました。
2007/04/28 Sat 22:14:29
URL | 鞍縞 #-[ 編集 ]
>鞍縞さん:「このコメントが最後です」へのお返事

>そもそも何故、この話に法律論を持ってくるのかが。

法律論を出したのは、この話に関係があるからですし、法律は物事の道理の1つだからです。法律系ブログですので、なんでも法律論はでてきてしまうのです。


>正直、遠回しに「『リンクを外せ』と強制的に言った」と言われてる
>みたい

法律論=強制、みたいなイメージがあるようですね。別に法律論がすべて「強制」につながるわけではありません。


>私も今後、原則他人様のブログ・サイトにはコメントしません。
>最後のコメントになるでしょう

分かりました。が。

振り返ると、ここまでの経緯がどうにもよく分かりません。「(将来も)言い過ぎない」という約束なんて、フツー、誰でもそんな難しい約束はできませんよ。よほど大人しい人ならともかく、誰だって言い過ぎた経験はあるのですから。
友達や教師とかに聞いてみると良いと思います。友人や教師は言い過ぎていたりしませんか? 

言葉を大事にするという姿勢は良いことですけどね。なかなか、難しいことです……。いつでもコメントOKですので、また何時か。
2007/04/30 Mon 00:36:41
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
ゴメンなさい。最後にしようと思ったのですが、ちょっと勘違いされたようなので、補足しておきます。


>法律論=強制、みたいなイメージがあるようですね。別に法律論がすべて「強制」につながるわけではありません。

書き方が悪かったです。
“鞍縞が、「リンクを外せ」と強制的に言ったんだ、と春霞さんは思われたのですか? もしそうならば、違います”
ということなのですが……伝わりましたでしょうか……
法律全てが強制に繋がるとは、さすがに素人の私でも思っていません。


>振り返ると、ここまでの経緯がどうにもよく分かりません。
>「(将来も)言い過ぎない」という約束なんて、
>フツー、誰でもそんな難しい約束はできませんよ。

この件は以前のコメントとは全く関係ありません。
最初からお話すれば良かったのですが、最近、ブログの閉鎖を検討しているのです。
なのでその準備として、皆様にお願いをして回っているのです。
もし閉鎖しなくても、恐らく2度とリンク、コメント欄を元に戻すことはしません。
その理由は個人的なことでして、先日のコメントの件は全く関係ありません。
言葉足らずだったとは言え、そう勘違いされてしまったことが、非常に残念です。

では、今度こそ最後です。今後一切コメントはしませんが、たまにまた拝見しに来ます。
2007/04/30 Mon 22:25:16
URL | 鞍縞 #-[ 編集 ]
青山淳平氏の新刊をめぐって
春霞さま。お久しぶりです。

4月に入ってからこちらに全く顔を出さずじまいでしたが、3月にちょっとがんばり過ぎて疲れが出たのと、mixiに参加してあちらをあれこれ徘徊していたのと、何より本業がかなり忙しかったのと、いくつも理由が重なったせいです。ご無沙汰して申し訳ありませんでした。

この間私も個人的にはあれこれと勉強し続けていました。とくに大阪で開かれた国際腎不全シンポジウムは途中出席ながら聴講し、またその席での出会いを通じてあれこれと情報を仕入れたりもしました(移植の「日本における権威」でいらっしゃるT先生のおられる某O大学では、外向けのホームページでは「年間移植数60例」と謳っているけれど、移植学会の統計では毎年20例にも満たないとか、そのくせドナー連れでO大の門をたたいて、移植カウンセリングと称して通院拘束されている患者さんが200人ぐらいいるとか)が、ここでの議論には馴染まないようにも思いますので、また追々にそうしたことにも言及できれば、と思っています。

さて、ノンフィクション・ライターの青山淳平氏が、『腎臓移植最前線』(光人社:本体1600円)という本を上梓しました。内容的にはおそらく東京女子医大で国内最大の移植施設を立ち上げた太田和夫氏を政治的に追い落としたUS腎移植問題を採り上げる予定で書き始められ、途中で時事問題である病気腎移植問題を追加した、というもののようですが、前文付言をみると、

「3月24日、アメリカ移植外科学会は、万波誠医師たちのアメリカ移植学会総会における発表を突然キャンセルした。
 アメリカの学会が病腎移植を否定したわけでは決してない。キャンセルの理由はすべて日本の側にある。本書をご一読下されば、万波医師の発表を封じ込めたものの正体がよくお分かり頂けるものと思う。
 私たちの国は、まだこの程度の文化と民主主義のなかにいる。」

と述べています。

日本の移植医療の立ち後れについて、よく「和田心臓移植が元凶」との発言がありますが、実は和田移植を口実として、日本の移植医療界が自ら発展の可能性を摘み取ることにばかり腐心してきたというのが真相で、なかでも象徴的だったのが、臓器移植ネットワークから距離を置いたまま突出した成績を残した臨床医を政治的に抹殺しようと、90年代にマスコミを大きく操作して作り上げられた「US腎移植問題」でした。これは、国内での死体腎不足を補うために、全米臓器ネットワーク(UNOS)に交渉して、アメリカから死体腎を空輸して移植していた、そのことを問題とされて、「アメリカで捨てられた、使えない腎臓を移植している」と騒がれたというものです。その犠牲となったのが太田医師で、この本を読むと、今回の病気腎移植問題が、その12年ほど前のUS腎問題とほとんど同じ推移を辿っていることが得心できます。(唯一違いがあるとすれば、今回は厚労省が積極的に潰しにかかっていることでしょうか。)

例えば、当時の報道での、「最初から機能が期待されていない欠陥腎を移植」あるいは、「肝炎ウィルスに感染していることを理由に捨てられた腎臓が日本に入ってきた」、「臓器移植ネットワークを介さずに移植するのはルール違反」という煽り、あるいは生着数に関する誤報道、臓器移植ネットワークとの不和など、見る人が見れば、今回の宇和島事件はUS腎事件のビデオテープを再生しているとしか思えないに違いありません。

(先日宇和島市民病院で病気腎移植についての最終報告――じゃあ3月の発表は何だったんだ、と誰もが突っ込みたくなるところですが、擁護派の委員を排除でもしてまた再審議したんでしょうか――でやはりB型肝炎の感染が取り沙汰されていましたが、報道されている内容を見る限りでは、どうも抗原抗体反応の読み方について、調査委員会がメディアを煙に巻いているように思えます。少なくとも、B型肝炎の判定がたったひとつの検査で行われるものではないこと、その一連の検査のプロセス、ウィルスマーカーの読み方などについて、十分な情報をメディア側に与える努力を故意に怠っていることは確かです。この点については、

http://www.bkanen.net/info_05.html
http://www.bkanen.net/info_08.html

が分かり易い解説を提供しています。US腎問題でもやはり肝炎ウィルスの有無が問題とされたということは、レトリックとしてこれら2件に同じ手口が用いられた可能性がありますが、当時の新聞報道など、参照する時間がありませんでしたので、とりあえず問題提起のみしておきます。)

今回の病気腎移植報道で、「和田移植云々」というメディアがあっても、US腎問題を引き合いに出したメディアはほとんどありません。(毎日新聞が、万波医師がUS腎を移植に利用したことがある旨を採り上げていましたが、まるで彼が単独でUS腎を扱ったかのような論調で、背景にある太田事件には全く触れずじまいでした。)本書を読んで感じたのは、「非難の論調も、経緯もまるきり同じで、US腎移植問題に今触れれば、学会が同じことを同じように繰り返しているのみだということが赤子の目にもまる分かりなので、学会の尻馬に乗ったメディアは、敢えてUS腎問題を掘り起こすことができないのではないか」ということです。

(US腎問題については、一部メディアが誤報道を訂正する記事を掲載し、太田医師の名誉を回復する方向で事件が終結したように青山氏は述べていますが、ネットで検索する限り、誤報道の影響はいまだに大きいようです。
 また青山氏の著作では、一連のメディアの報道の影で、情報のリークなど暗躍した関係者がいたとの指摘がありますが、個人的に情報を集めたところ、この「情報源」というのもまた、ビデオテープを再生するがごときといいますか、あの誰かさんのようです。)

先に私は、「病気腎移植問題は、九大での交換腎移植問題とセットで論じられるべきだ」とこの場を借りてコメントさせていただいたことがありますが、それはどうも勉強不足な発言でした。これら2件に、さらにUS腎問題を含めて、3点セットでの議論が、事態を正確に把握させてくれることでしょう。一連の問題は、移植医療を推進しようとする現場の臨床医と、自らがコントロールしない範囲での医療をシステマチックに潰そうとする移植学会および臓器移植ネットワークとのせめぎ合いです。第1ラウンド、第2ラウンドは臨床医側の完敗に終わりましたが、現在形勢不利な第3ラウンドについてぐらいは、なんとか臨床医側を勝たせてあげたいものです。

それにしても、12年前のUS腎、今回の病気腎移植の学会発表妨害と、アメリカの移植医療界からみれば、日本の移植学会は札付きのゴロばかりにみえるのではないでしょうか。
2007/05/02 Wed 18:44:35
URL | 語学教師 #va74bd7o[ 編集 ]
>鞍縞さん:2007/04/30(月) 22:25:16へのお返事
コメントありがとうございます。


>書き方が悪かったです。
>ということなのですが……伝わりましたでしょうか……

違って理解してしまったようです。申し訳ありません。なかなか、誤解なく理解することは難しいですね。


>この件は以前のコメントとは全く関係ありません。
>最初からお話すれば良かったのですが、最近、ブログの閉鎖を検討して
>いるのです。

あ! そうだったんですか、勘違いしました。すみません。でも、余計なことを書いたおかげで、真実の理由が分かったので、書いてよかったと思っています。

ブログ閉鎖は残念です。ブログは鞍縞さんの気晴らしになっていたと思いますし、お約束していた、鞍縞さんの小説が読めないままになってしまいますし。
もっとも、鞍縞さんは最終学年ですし、色々とあるでしょうから、ブログは一時止めておくのも良いとは思います。


>今後一切コメントはしませんが、たまにまた拝見しに来ます

またぜひ見に来てください。宜しくお願いします。でも、ブログを閉鎖するなら、気晴らしも兼ねて、色々なブログでコメントしてみてもいいと思いますよ? 
2007/05/02 Wed 22:48:17
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>語学教師さん
コメントありがとうございます。


>4月に入ってからこちらに全く顔を出さずじまいでしたが、3月にちょっと
>がんばり過ぎて疲れが出たのと……
>ご無沙汰して申し訳ありませんでした。

頑張りすぎると続きませんので、ご無理のない限度でお願いします。だいたい、こちらも2、3、4月はエントリーを多く出しすぎて疲れました(^^ゞ 


>移植の「日本における権威」でいらっしゃるT先生のおられる某O大学
>では、外向けのホームページでは「年間移植数60例」と謳っている
>けれど、移植学会の統計では毎年20例にも満たないとか
>また追々にそうしたことにも言及できれば、と思っています。

お、面白い話ですね~。本当に専門医だろうかという疑問は、「統計資料」にも出ているわけですね。では「追々」ということで、お願いします。


>ノンフィクション・ライターの青山淳平氏が、『腎臓移植最前線』
>(光人社:本体1600円)という本を上梓しました

この本、読みました。仰るとおり、私も、同じように「この本を読むと、今回の病気腎移植問題が、その12年ほど前のUS腎問題とほとんど同じ推移を辿っていることが得心できます」という感想をもちました。この本は必読ですね。


>12年前のUS腎、今回の病気腎移植の学会発表妨害と、アメリカの
>移植医療界からみれば、日本の移植学会は札付きのゴロばかりにみえる
>のではないでしょうか

12年前のUS腎があるからこそ、アメリカの移植学会は、万波医師らの学会発表を取り消したんでしょう。この本を読んでやっと、本当の理由が分かったように思いました。
2007/05/04 Fri 23:55:33
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
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