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2007/04/24 [Tue] 23:32:55 » E d i t
不妊の女性が他の女性から卵子の提供を受けて妊娠・出産を目指す治療について、厚生労働省の研究班が意識調査を実施したそうです。その結果は、国内で卵子提供が認められるようになった場合、「提供してもよい」と答えた女性が4分の1を超えたそうです。この報道についてコメントしたいと思います。


1.報道記事から。

(1) 毎日新聞平成19年4月19日付夕刊1面

 「卵子提供:「前向き」25% 希望報酬、平均は40万円--厚労省初調査

 不妊の女性が他の女性から卵子の提供を受けて妊娠・出産を目指す治療について、厚生労働省の研究班(主任研究者=吉村泰典・慶応大教授)が実施した国内初の意識調査の結果がまとまった。「卵子を提供してもよい」「どちらかといえば提供してもよい」と答えた女性が4分の1を超えた。卵子提供にあたり金銭など何らかの報酬を求めた女性は全体の46・5%。具体的な希望報酬額で最も回答が多かったのは10万円、極端に高額な希望を除いた平均は約40万円だった。

 調査は昨年12月、全国から選んだ20~34歳の一般女性3744人にインターネットで調査票を送り、517人から回答を得た。国内での卵子提供による不妊治療の実施については、52・6%が肯定的な答えだった。

 卵子提供に肯定的だったのは25・8%、「提供したくない」など否定的な答えは42・9%だった。肯定的な理由で最も多かったのは「不妊夫婦の役に立ちたい」、否定的な理由で多かったのは「遺伝子を引き継ぐ子の誕生への抵抗感」「家族の関係が複雑になる」だった。

 報酬に関しては、「どんな報酬があっても提供しない」が34・6%だった一方、「金銭報酬があるなら提供してもよい」が24・6%、「税控除など優遇措置があれば提供してもよい」が21・9%。「無償で提供してもよい」は15・1%にとどまった。

 卵子提供で生まれた子との関係については、「生まれた子は事実を知らされない方がよい」が45・5%に達したものの、匿名や実名での子どもとの接触を容認する人が1~2割いた。また、生まれた子が卵子提供者がだれかを知る可能性があると分かった場合でも、「提供してもよい」という人が28・2%いた。

 調査を実施した朝倉寛之・扇町レディースクリニック院長は「採卵時に副作用の可能性があるほか、1カ月以上自由を制約されるため、提供者の確保には何らかの対価が必要と考えられる」と話す。【永山悦子】

毎日新聞 2007年4月19日 東京夕刊」



(2) 毎日新聞平成19年4月19日付夕刊8面

 「解説:卵子提供・厚労省初調査 報酬など国に宿題

 加齢や病気で妻の卵巣が機能不全になった場合、他の女性から卵子の提供を受け、夫の精子と体外受精し、その受精卵を妻の子宮に戻す不妊治療が考えられる。この治療は国内では認められていない。厚生労働省の生殖補助医療部会は03年、容認する報告書をとりまとめたが、4年たった今も制度化は進んでいない。

 卵子提供をめぐっては、採卵時の副作用や時間的拘束に注目が集まりがちだが、提供女性が直面するであろう提供相手との関係を心理面からどうサポートするかが、運用では課題になる。

 報告書は、卵子提供の際は提供者は匿名とするが、生まれた子が15歳になった段階で「出自を知る権利」を認めた。同省研究班の意識調査でも、提供相手の夫婦や生まれた子との関係で、何らかの情報開示や接触を容認するという人が多かった。卵子提供時点にとどまらない長期的な支援体制の整備が不可欠なことを明確に示している。

 また、報告書は実費以外は無償の提供を条件とした。しかし、意識調査では、提供に前向きな女性に限ってみると、3分の2が何らかの報酬を求めた。研究班は「金もうけではなく、採卵に伴う拘束への対価と考えれば、もっともな要望といえる」と分析、再検討が必要になるかもしれない。

 日本学術会議は、「代理出産」に関する検討を始めた。だが、卵子や精子の提供に関しては具体的な検討の見通しはない。今回の調査結果は、制度運用にあたって多くの準備や検討の必要性を示しており、国が明確な方針を示すことが求められる。【永山悦子】

毎日新聞 2007年4月19日 東京夕刊」



(3) 東京新聞平成19年4月22日付朝刊1面

卵子提供 4人に1人『OK』 不妊治療で厚労省調査
2007年4月22日 朝刊

 不妊に悩む夫婦が別の女性から卵子提供を受け、妊娠を目指す治療について、厚生労働省研究班(主任研究者・吉村泰典慶応大教授)が初のアンケートを実施、回答した女性の26%が卵子提供に前向きな姿勢を示したことが21日分かった。

◆約半数が報酬希望

 卵子提供は日本産科婦人科学会が倫理規定で禁じているが、同省の厚生科学審議会生殖補助医療部会は2003年、報酬禁止などの条件付きで容認する見解を出した。

 調査した扇町レディースクリニック(大阪市)の朝倉寛之院長は「前向きな女性は意外に多い。提供システムは十分成り立つ可能性がある」と分析。一方で提供に報酬を求める声も目立ち、部会の見解と差があることも明らかになった。

 調査は昨年12月、35歳未満の全国の成人女性を対象にインターネットを使って実施、517人が回答した。

 提供卵子による体外受精の実施には、過半数の53%が「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答。自分の卵子を「提供してもよい」「どちらかといえば提供してもよい」は26%に達した。

 提供する場合の報酬について全員に尋ねると、47%が金銭や税金控除など何らかの報酬を期待すると回答。希望額は、飛び抜けた回答を除くと平均約41万円だった。自分の卵子提供に前向きな人に限って分析すると66%が報酬を期待した。

 厚労省は部会の見解を受けて法制化を目指したが中断している。


◇今後の検討材料に――石井美智子明治大教授(家族法)の話

 卵子提供の大変さを回答者がどの程度理解していたのかなど、疑問が残る点もあるが、潜在的な提供者がいるということは、今後の制度を考える上で検討材料になる。だが調査結果から、報酬がなければ提供者は少ないとも予想できる。お金のための提供を避けるためにも、報酬は認めるべきではない。生殖補助医療部会の報告は長い間放置されているが、生殖補助医療の在り方について、卵子提供も含めた包括的な議論がなされるべきだ。」



調査結果を簡単にまとめておきます。

(1) 国内での卵子提供による不妊治療の実施については、肯定的な答えは52.6%

(2) 自分の卵子を提供をすることについて、「提供してもよい」という肯定的な答えは25.8%、「提供したくない」という否定的な答えは42.9%

(3) (自ら卵子提供をすることを肯定する者に限らず全員に尋ねると)提供する場合の報酬については、「無償でよい」は15.1%、「金銭や税控除など何らかの報酬を期待する」のが46.5%、「報酬があっても提供しない」が34.6%。自分の卵子提供に肯定的な者に限ると、66%が報酬を期待。具体的な希望額として最も多かったのは10万円で、平均40万円。

(4) 生まれた子どもが提供者(あなた)が誰であるかを知ることができてよいか否かについては、子どもに知らされない方がよい」が45.5%(ただし、子どもとの接触を認める人が1~2割いるので、45.5%より少ない)、「知らされてもよい」が28.2%


ちなみには2003年に行われた意識調査(20代~70代まで)次のようなものです。ここでは女性が答えたものに限定して引用します。

(1) 国内での卵子提供による不妊治療の実施については、肯定的な答えは(調査票のみ)33.6%(リーフレット配布者で42.4%、リーフレット配布で高く理解した者で48.6%)

(2) 自分の卵子を提供をすることについて、生まれた子どもが提供者(あなた)が誰であるかを知ることができても「提供してもよい」という肯定的な答えは6.7%、「提供したくない」という否定的な答えは60.3%(よく理解できた者の場合には、9.5%が肯定的、66.7%が否定的)
生まれた子どもが提供者(あなた)が誰であるかを知ることができない場合には、「提供してもよい」という肯定的な答えは14.0%、「提供したくない」という否定的な答えは47.9%(よく理解できた者の場合には、20.5%が肯定的、49.4%が否定的)。

(3) (自ら卵子提供をすることを肯定する者に限らず全員に尋ねると)卵子のシェアリング制度(他の体外受精を行っている女性から採取された卵子の一部を、医療費の一部を負担することによって、提供を受けるという制度。一種の報酬といえる)については、「認めてよい」は25.4%、「認められない」が23.9%(よく理解できた者の場合には、「認めてよい」が36.9%、「認められない」が25.6%)


こうして比較すると、かなり肯定的な意見が増えていることが分かります。03年の調査結果でも、リーフレットの配布により理解があがると肯定的な答えが増えていることからしても、肯定的な考えが増えたということは、生殖補助医療についての理解が広がった結果と考えられます。

元々、年齢が上がるにしたがって、各技術について認める者の割合が少なくなり、家族観や性的役割についての考え方がリベラルであるほど各技術を認める者の割合が高いという結果がでています。とすると、日本の市民の間にだいぶ人権意識が広がり、多様な価値観を認める意識が広がりつつあることも示しているといえます。もっとも、毎日新聞だけは、多様な価値観を否定し、記者独自の価値観を振り回すという、反人権意識が根深いのですが。


石井教授は、

「卵子提供の大変さを回答者がどの程度理解していたのかなど、疑問が残る点もある」

と述べて、卵子提供の大変さを理解せずに肯定していると理解しているようです。しかし、リーフレットにより生殖補助医療について理解している者ほど肯定的になっているという結果が出ている以上、石井教授の認識は間違っているといえそうです。

また、今や不妊治療は珍しくないのですから、友人の誰かは不妊治療中であることが多く、多くの女性は負担があること(排卵誘発剤など負担や身体への影響、体内からの採卵、時間的負担)が分かっているのが通常でしょう。石井教授の「卵子提供の大変さを理解せずに肯定している」という理解は、現状認識に欠けたかなり的外れな意見です。

もし石井教授の理解が正しいとすると、なぜ、報酬を求める声が大きいのかの説明に困ることになります。というのは、卵子提供に伴う負担が分かっているからこそ、その対価を要求しているという見方(研究班や朝倉院長の意見)が合理的なのですが、石井教授の理解によると、「大変さを分かっていない=楽だと思っている」のです。そうなると、石井教授は

調査に答えた女性は楽して40万円をもうけるつもり

と言っているのと同じです。これはいくらなんでも女性に対するひどい侮辱的な偏見です。石井教授自身が女性に対して侮辱的な偏見をもっているのかもしれませんが、改めるべきですし、改めないのであれば公言しないで心の中にとどめておくべきでしょう。




2.まず、毎日新聞平成19年4月19日付報道の意識調査については、以前報道されていた意識調査の他にこういう調査があったとは知りませんでした。

以前報道されていた意識調査とは次のようなものです。

体外受精や代理出産の是非、厚労省が意識調査へ
2007年02月25日

 体外受精や代理出産に関する意識を探るため、厚生労働省は国民や産婦人科医ら計8400人を対象にした調査を実施する。タレントの向井亜紀さんの米国での代理出産をめぐる裁判などをきっかけに生殖補助医療への関心が高まっていることから、今後の議論に役立てるのが狙いだ。体外受精などで生まれた子どもの心身の健康調査に関する研究と合わせ、不妊治療の実態や意識の把握に本格的に乗り出す。

 意識調査は、無作為に抽出した一般の国民5000人、不妊治療を受けている患者2000人、産婦人科と小児科の医師1400人が対象。3月末までに結果をまとめる。

 国民と患者には、体外受精や代理出産など不妊治療の技術に関する知識や、子どもを望んでいるのに恵まれない場合、自らこうした技術を利用するか、社会的に認めるべきかどうかといった意識を聞く。昨秋、長野県の50代後半の女性が「孫」を代理出産していたことが明らかになったケースも踏まえ、代理出産を認めるなら、姉妹か、母か、第三者も含めてよいのかなども尋ねる。

 医師に対しては、どんな不妊治療をしているのかなど、現状と意識を調べる。米国やフランスなど海外の法整備や判例も現地調査する。

 一方、生殖補助医療で生まれた子どもの心身への影響については、国内に十分なデータがない。このため新年度から、公募に応じた研究チームが、誕生から小学6年生まで2000人以上を追跡する調査研究を行う。この研究では、対象者の選定や保護者からの同意取り付けの方法、調査項目、データの管理・分析方法などを検討する。」(asahi.com(2007年02月25日)



毎日新聞平成19年4月19日付報道の意識調査については、対象者は、「調査は昨年12月、全国から選んだ20~34歳の一般女性3744人」であるのに対して、朝日新聞報道の意識調査は、「無作為に抽出した一般の国民5000人、不妊治療を受けている患者2000人、産婦人科と小児科の医師1400人が対象」です。このように、年齢層限り、女性に限定した調査に対して、年齢層や男女を問わず行うものと、不妊治療患者や産婦人科医といった専門家というように幅広い対象者に行う調査という大きな違いがあります。
なので、毎日新聞平成19年4月19日付報道の意識調査と朝日新聞報道の意識調査は別個の意識調査なのだろうと思います。

朝日新聞報道の大規模な意識調査は3月末で調査は終了し、「3月末までに結果をまとめる」ことになっているのですから、「全国から選んだ20~34歳の一般女性3744人」に限った意識調査を公表するよりも、大規模は意識調査の方が重要です。しかも、代理出産の是非についての意識調査も含んでいるのですから、朝日新聞報道の意識調査の公表を早く行うべきだと思います。



3.では、本題の、今回の意識調査について検討します。

(1)  他の女性から卵子の提供を受け、夫の精子と体外受精し、その受精卵を妻の子宮に戻す不妊治療については、行政や日本産科婦人科学会はどういう対応をしているのでしょうか?

非配偶者間体外受精

 精子、卵子が採取できない夫婦において、第三者から精子または卵子の提供を受けて体外受精を行うことは可能である。平成15年4月に厚生労働省の厚生科学審議会生殖補助医療部会から指針が公表された。それによると精子、卵子の提供を認めるが、提供者は匿名の第三者に限ること、子の出自を知る権利を認めることが明言されている……。一方、日本産科婦人科学会の倫理委員会も同時期にこの件に関して委員会提案を出しており、体外受精の際に匿名の第三者から精子または卵子の提供を受けることができるとしているが、子の出自を知る権利については今後の検討課題としている。生殖補助医療部会では国が指定した機関でのみ施術を許可し、データは公的運営管理機関で一元管理するとしている。

 このように、生殖補助医療部会と日本産科婦人科学会の間で、出自を知る権利についての見解に差があるが、もし出自を知らせることを決めた場合には、精子または卵子を提供した人のプライバシーが守られなくなり、提供した人の家族にも影響を及ぼす可能性があり、提供者が減少する恐れもある。

 次に胚の提供については、厚生科学審議会生殖補助医療部会は他の夫婦の余剰胚に限り認めることにしているが、日本産科婦人科学会の倫理委員会は胚の提供を認めないとしている。その理由は、胚の提供を認めると親子関係が不明確になり、生まれてくる子の福祉を優先する立場をとった場合、混乱を生ずるおそれがあるからである。

 しかし、現在まで厚生科学審議会の「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」の内容は国会に法案として提出することが断念されており、日本産科婦人科学会の「非配偶者間の体外受精に関する倫理委員会提案」も理事会での承認が得られていないので、会告として公示はされず、両面からわが国における非配偶者間体外受精の実施はストップしている。」(青野敏博「国境を越える生殖医療」PDF


このように卵子提供について、厚生科学審議会生殖補助医療部会と日本産科婦人科学会の倫理委員会は認めているのですが、日本産科婦人科学会の理事会は「倫理委員会提案」を承認せず、結局は、「卵子提供は認めない」という会告が残ったままという状態です。

ということから、卵子提供という不妊治療は、事実上、国内では認められず、公けには実施されていないという状態で、4年たった今も実施するための制度化は進んでいないのです。



(2) 気になった点は、卵子提供に報酬(対価)を求める意見が多かった点についての評価です。
 

「調査した扇町レディースクリニック(大阪市)の朝倉寛之院長は「前向きな女性は意外に多い。提供システムは十分成り立つ可能性がある」と分析。一方で提供に報酬を求める声も目立ち、部会の見解と差があることも明らかになった。」(東京新聞)

 「調査を実施した朝倉寛之・扇町レディースクリニック院長は「採卵時に副作用の可能性があるほか、1カ月以上自由を制約されるため、提供者の確保には何らかの対価が必要と考えられる」と話す。」(毎日新聞)

 「報告書は実費以外は無償の提供を条件とした。しかし、意識調査では、提供に前向きな女性に限ってみると、3分の2が何らかの報酬を求めた。研究班は「金もうけではなく、採卵に伴う拘束への対価と考えれば、もっともな要望といえる」と分析、再検討が必要になるかもしれない。」(毎日新聞)

 「調査結果から、報酬がなければ提供者は少ないとも予想できる。お金のための提供を避けるためにも、報酬は認めるべきではない。」(東京新聞:石井教授のコメント)」


資本主義社会に限らず、負担に対して何らかの対価を求めるのが通常です。例えば、不法行為を受けたら損害賠償ができ、労働に対しては報酬が支払われるのです。「対価」に対して拒絶反応を示すことは合理的ではありません。「部会の見解と差がある」のも、当然といえるかもしれません。

無償ボランティアなどによる卵子提供は、理想的なコントロールがあれば提供者の負担は少ないですが、少なくとも有給休暇など時間・費用補償のサポートが必要(英国)です。また、有償にすることで、むしろ家族や周囲からの圧力などの要素が軽減する可能性も指摘されています。

少なくとも、石井教授のように金銭を払うことは、「お金のための提供」すなわち、卵子売買だという硬直的な考えは止めるべきです。「金もうけではなく、採卵に伴う拘束への対価」と考える方が合理的なのですから。
石井教授の論理からすると、労働契約に基づいて賃金を支払うことは、人身売買だということになりますが、その考えがあまりにも愚かしいことは明白でしょう。有償契約=売買契約ではないのです。石井教授は家族法以外の法的知識が幾分欠落しているようです。

報酬払いの声が大きい以上、その声を無視するわけにもいかないのですから、今後は、卵子提供については、何らかの報酬支払いを拒絶することなく、報酬の支払いも含めて検討すべきです。



(3) 卵子提供の是非についてはどのように考えるべきでしょうか?

卵子提供については、精子の提供と同様に認めるべきであると考えています。というのは、従来から精子提供を認めている以上、卵子提供を否定することは、合理性のない差別であって、法の下の平等(憲法14条)に反するからです。

もっとも、従来、卵子提供を認めていなかったのは、女性差別に基づくからではなく、医学上の問題点があったためです。具体的には、<1>従来、精子と異なり、卵子の凍結保存が困難だったこと、<2>精子提供と異なり、卵子提供の場合には、身体的負担が大きかったこと、からです。

ところが、現在では、卵子の凍結保存ができるようになり(読売新聞「未婚女性も卵子保存容認…産科婦人科学会」(2007年1月23日))、また、卵巣刺激・採卵にともなう負担は、経験蓄積と薬剤・器具の進歩により、近年明らかに低下しつつあり(ただし、時間負担軽減についての日本の現況は、先進諸国より遅れている)、卵子提供に伴うリスクはゼロではないが高くないとされています(埼玉医大産科婦人科・石原理「採卵を受けることはどのくらい負担になりどのようなリスクを伴うのか」PDF)。

このように、現在では卵子提供を否定するほどの医学的問題点はなくなっているといえるのです。要するに、法律的にも医学的にも、卵子提供を認めてよいのです。後は、先進諸国の事例に学び、実現可能性のある方法について、一般の理解を深めるための政策的配慮がまず必要ということのようです。

卵子提供を認める場合には、詳しい情報を提供者に知らせたうえで、インフォームドコンセントによって提供を認めていくことになります(金城清子「ジェンダーの法律学」(第2版)142頁)。精子提供と異なり、リスクはゼロではないので、詳しい情報の説明は重要です。


なお、卵子提供は、母を、遺伝的母、妊娠出産の母、社会的な母(養育の母)に分化させるのですから、子供にとって母が3人(養育するのは1人だけ)となる事実にも配慮する必要があります。養子縁組でも、母が2人となり、分化の問題が生じているので、養子縁組での取り組みを参照しながら(養子縁組も含めて)、対応していく必要があります。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
春霞様 こんばんは
>毎日新聞平成19年4月19日付報道の意識調査については、以前報道されていた意識調査の他にこういう調査があったとは知りませんでした。
私も最初「おや?」と思いましたが、調査対象や数が異なるので異なるものであることに気づきました。

毎日新聞報道の意識調査が行われた理由は理解できます。
日本産科婦人科学会倫理委員会は古くから非配偶者間体外受精には肯定的で、吉村泰典氏は古くから倫理委員会委員でした。
http://www.jsog.or.jp/kaiin/html/Rinri/rinrishingikai/inf3_1_2001.html
これは、米本昌平氏が委員長だったH15(2003)でも変わりませんでした。
http://www.arsvi.com/0a/jsog.htm#20030415
吉村氏が委員長になっても同様であり、
http://www.jsog.or.jp/about_us/view/html/kaikoku/H18_4_taigaijusei.html
いわば、吉村氏はこの問題についての肯定的推進者といえます。
ですから、吉村氏が中心となってこの調査を行ったというのは理解できます。
そうですよね、吉村氏は常に公平で先駆的だった故飯塚理八先生の後輩である訳ですから。
でも、日本産科婦人科学会には妖怪のようなお年寄りがいっぱい生息している。

>朝日新聞報道の意識調査の公表を早く行うべきだと思います。
全く同感、早く知りたいです。厚労省のHPをWatchしてますが、梨の礫です。

余談ですが、吉村氏は2003年の法制度化の専門委員会では、代理出産については肯定的ではありませんでした。
しかし、議事録を読む限り、決して反対論を声高に叫ぶようなことはしていませんでした。
彼自身の著作物、例えば
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/pdf/200505/0505-1219.pdf
を読むと、彼はかなりきちっとした研究者であり、本来は医療現場の人間であると思います。
この点では、安っぽい倫理観を説く、単なる安っぽい評論家の米本氏とは大きく異なります。
ただ、日本産科婦人科学会のお年寄りの意見に抗しきれずにいるように感じます。

昨年のテレビ朝日の公開討論会での吉村氏の意見を聞いていて、私はそう確信しました。
「一学会の日本産科婦人科学会が決定できる問題ではなく、倫理、法制度を含めた議論が必要で、法制度化が急務の問題である」と。
根津八紘医師が、「日本産科婦人科学会を代表する立場でのご意見有難うございます。」というような、ちょっと揶揄した言葉を笑みを浮かべながら掛けられていたのを見て、そう思いました。

吉村氏には、今進められている日本学術会議の検討委員会において、日本産科婦人科学会の旧態依然とした固定観念から離れ、是非現実に適応した対応をとられることを願って止みません。必ず世論が後押しすると思います。
2007/04/25 Wed 21:16:42
URL | Canon #yYfDAmAg[ 編集 ]
>Canonさん
コメントありがとうございます。


>私も最初「おや?」と思いましたが、調査対象や数が異なるので
>異なるものであることに気づきました

やはり異なるのでしょうね。朝日新聞報道の意識調査との関係に触れている記事がないので、今一歩よく分からず困りました。
最初、毎日新聞だけが報道していて、後追い記事もなかったので、真実かどうかも迷って、ずっとエントリーとして取り上げませんでした。やっとエントリーとして取り上げることができて、ほっとした気分です(汗)。


>日本産科婦人科学会倫理委員会は古くから非配偶者間体外受精には
>肯定的で、吉村泰典氏は古くから倫理委員会委員でした。

なるほど、こういう背景があったのですね。それで色々な方法で意識調査を行っているという感じでしょうか。情報ありがとうございます。
2007/04/26 Thu 23:23:25
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
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