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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2007/04/19 [Thu] 21:09:56 » E d i t
4月17日午後7時50分ごろ、長崎市の伊藤一長(いとう・いっちょう)市長(61)が、JR長崎駅前にある同市大黒町の選挙事務所前の歩道で、短銃を持って待ち伏せしていた男に背後から数発撃たれ、出血多量のため収容先の長崎大付属病院で死亡しました。17年前、長崎市では当時の本島等市長が右翼団体の男に銃撃されて、重傷を負ったのですから、凶行が再び繰り返されたのです。
その前日、4月16日朝(日本時間同日夜)に、米バージニア州南西部ブラックスバーグのバージニア工科大学で銃乱射事件が発生し、少なくとも死者32人が死亡し、銃を使った事件が起きたばかりでした。
この長崎市長に対する銃殺事件について、コメントしたいと思います。


1.まずは事件の概要から。

(1) asahi.com(2007年04月18日03時48分)

 「銃撃された伊藤長崎市長が死亡 出血多量で
2007年04月18日03時48分

 17日午後7時50分ごろ、長崎市のJR長崎駅前にある大黒町の選挙事務所前の歩道で、短銃を持って待ち伏せしていた男に背後から数発撃たれた同市の伊藤一長(いとう・いっちょう)市長(61)が18日午前2時28分、出血多量のため収容先の長崎大付属病院で死亡した。銃弾2発が胸に撃ち込まれていた。伊藤市長は22日投開票の市長選に4選を目指して立候補していた。

 長崎県警は殺人未遂の疑いで現行犯逮捕していた同市風頭町、指定暴力団山口組系「水心会」会長代行、城尾哲弥容疑者(59)の容疑を殺人に切り替えて調べる。

 伊藤市長は、同市初の戦後生まれの市長。原爆投下の2週間後に疎開先の山口県で生まれた。長崎市議、県議を経て、95年に本島等氏を破って初当選した。

 就任後は、被爆地の市長として国際会議などでも発言してきた。当選した年の11月、オランダ・ハーグの国際司法裁判所での証言で、広島市長とともに「核兵器の使用は国際法に違反していることは明らか」と陳述。「違反とまでは言えない」との立場の外務省からは、文言をめぐって直前まで働きかけが続いたが、曲折の末、「違法」を明言した。

 02年8月には「原爆の日」の「平和宣言」で、同時多発テロ後の米国の核政策を「国際社会の核兵器廃絶への努力に逆行している。こうした一連の独断的な行動を断じて許すことはできない」と述べ、初めて米国を名指しで批判した。

 05年5月、米ニューヨークの国連本部で開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議の本会議場で発言。長崎の原爆で黒こげになった少年の写真を掲げ、「核兵器と人類は共存できない」と訴えた。

 今年3月、前年に続いて被爆地・長崎の反対の声を押し切り、米海軍のイージス艦が長崎港に入港。「核搭載の疑惑もある軍艦なので、残念の一言に尽きる」と語った。

 市役所内の裏金問題で自らの減給処分を決め、4月の市長選へ出馬を表明。不正に終止符を打つ構えを示した。

 伊藤市長の死亡に伴い、公職選挙法の規定により、18日から19日まで長崎市長選の補充立候補を受け付ける。同市長選には、亡くなった伊藤市長のほか新顔3人が立候補している。」



「17日午後7時50分ごろ、長崎市のJR長崎駅前にある大黒町の選挙事務所前の歩道で、短銃を持って待ち伏せしていた男に背後から数発撃たれた同市の伊藤一長(いとう・いっちょう)市長(61)が18日午前2時28分、出血多量のため収容先の長崎大付属病院で死亡した。銃弾2発が胸に撃ち込まれていた。」


選挙期間中ですから、有権者と接するため無防備になりやすく、しかも選挙事務所に帰ってきたところを背後から胸に撃ったのですから、計画的に待ち伏せし、確定的な殺意を持っていたことが分かります。

「長崎県警は殺人未遂の疑いで現行犯逮捕していた同市風頭町、指定暴力団山口組系「水心会」会長代行、城尾哲弥容疑者(59)の容疑を殺人に切り替えて調べる。」


犯人として現行犯逮捕された者は、指定暴力団山口組系の会長代行という幹部でした。暴力団員ゆえ、銃を入手しやすい立場にあったわけです。

「就任後は、被爆地の市長として国際会議などでも発言してきた。」


伊藤市長は、就任前と異なり、就任後は被爆地長崎の市長として核廃絶運動の先頭に立ち続けてきたのですから、この事件によって反核の発言をしたために撃たれたのではないかと疑念が持たれ、「容疑者の動機がなんであれ、反核運動が萎縮(いしゅく)するのではないかと心配」(朝日新聞4月18日付「社説」)されています。



(2) 朝日新聞4月18日付夕刊1面

 「長崎市の対応に恨みか 容疑者は市と複数のトラブル
2007年04月18日16時03分

 長崎市の伊藤一長市長(61)を銃撃した殺人未遂の疑いで逮捕された指定暴力団山口組系「水心会」の会長代行、城尾哲弥容疑者(59)が長崎県警の調べに対し、自らがかかわっていた市との複数のトラブルについて説明していることが18日、わかった。こうした供述に加え、事前にマスコミに郵送していた文書の内容などから、県警は、動機に暴力団の組織的な背景はなく、同容疑者が市の対応に個人的な恨みを募らせて市長を狙ったとの見方を強めている。

 県警は同日未明、城尾容疑者宅や組事務所など5カ所を同容疑で家宅捜索したが、伊藤市長の死亡を受けて容疑を殺人に切り替えた。同容疑者は調べに対し、「市長を撃って、自分も死のうと思った」と供述。さらに、市発注の歩道工事の現場にあったくぼみに車が転落した事故に対する補償交渉に市が応じなかったことへの不満や、知人の会社への融資などをめぐって市とトラブルになっていた経緯などを話しているという。

 一方、18日未明に記者会見した市側の説明によると、城尾容疑者からは03年2月に起きた車の転落事故をめぐり、当初はバンパーの修理代として市に60万円の支払い要求があった。その後、「ホイールが悪くなった」などと主張はエスカレートし、結局、総額二百数十万円を求めてきたという。市は「賠償する責任はない」として拒否したが、電話や面会は04年秋までに約50回に及んだ。

 この問題について市は「軽微なトラブル」と判断し、伊藤市長には報告しなかったとしている。

 また、関係者によると、同容疑者は知人が社長をしていた同市内の土木会社が02年、市の制度を利用して銀行から融資を受けようとして断られた際にも、「市の対応が悪い」などと周囲に語っていたという。

 同容疑者を知る弁護士は取材に対し、「融資が断られた件で、城尾容疑者は市への恨みをかなり抱いていた。事故の話も聞いており、腹を立てている感じだった」と話している。

 城尾容疑者は犯行前、こうした不満について記した文書をテレビ朝日あてに郵送。消印は今月15日で、冒頭には「ここに真実を書いて自分の事は責任を取ります」との表現があった。県警は、この時点で銃撃を決意していた可能性もあるとみて経緯を調べている。

 城尾容疑者は「水心会」の前身の組の幹部だった89年7月、「公表すれば問題になる写真を持っている」として当時の本島等長崎市長から1000万円を脅し取ろうとした恐喝未遂事件の容疑者の1人として逮捕されている。」


今のところ、犯行動機は次の2点のようです。

「城尾容疑者からは03年2月に起きた車の転落事故をめぐり、当初はバンパーの修理代として市に60万円の支払い要求があった。その後、「ホイールが悪くなった」などと主張はエスカレートし、結局、総額二百数十万円を求めてきたという。市は「賠償する責任はない」として拒否したが、電話や面会は04年秋までに約50回に及んだ。……

 また、関係者によると、同容疑者は知人が社長をしていた同市内の土木会社が02年、市の制度を利用して銀行から融資を受けようとして断られた際にも、「市の対応が悪い」などと周囲に語っていたという。」

要するに、市道の陥没で自分の車に傷がついたとして、賠償を求め拒絶されたことと、知人が社長をしていた同市内の土木会社が02年、市の制度を利用して銀行から融資を受けようとして断られたことを恨んだためでした。前者は、工事中だから入らないで欲しいと言ったのに入ったのですし、後者は、「(市の)公共事業から外された」という不満と絡んでいるようですが、元々この会社は入札資格がなかった(日本テレビ報道による)のですから、いずれも逆恨みとしか言いようがありません。


このような行政機関に不当な利益を要求することを「行政対象暴力」と言います。このような「行政対象暴力」については、次のような記事があります。

長崎市長死亡 「行政」暴力団の資金源

 長崎市の伊藤一長市長が銃撃された事件は、暴力団幹部が市の対応に不満を募らせ犯行に及んだ疑いが強まっている。警察庁によると、行政対象暴力に関する相談は年間2000件以上に上り、暴力団の資金源にもなっている。全国暴力追放推進センター(東京)では「不当要求は担当者任せにせず、組織で対応し、警察やセンターに早めに相談してほしい」としている。

 かつて日本中がバブル景気を謳歌(おうか)していたころ、潤っていたのは民間企業だけでなく、暴力団や総会屋、右翼団体など反社会勢力も恩恵を享受していた。しかしバブル経済の崩壊による景気低迷、そして大手証券会社などによる総会屋への多額の利益供与事件(平成9年)がきっかけで警察の取り締まりが厳しくなり民間企業からの不当な資金提供はシャットアウトされた。

 その結果、暴力団のターゲットは行政機関へ。警察庁は14年、全国の警察本部に実態を把握するよう通達を出した際、「行政対象暴力」という用語を初めて使用した。

 行政対象暴力は、行政窓口での公務員のささいな不手際や個人的なスキャンダルをネタに利益を要求するほか、暴力団などの関係企業が公共工事に参入するほか、暴力団などの関係企業が公共工事に参入できるように強要するなどの行為だ。生活保護を受けられるよう要求するケースもあり、利益のためになりふり構わぬ姿が浮かび上がる。

 17年8月に行われた行政機関への不当要求についてのアンケート(有効回答3790通)では、暴力団などの不当要求を受けた経験が「ある」との回答は831件(約22%)。このうち「最近1年間に要求があった」との回答は594件に上った。

 主な要求内容は物品購入、機関紙の購読、寄付金の提供、公共工事の入札、指名、受注などの便宜供与。不当な要求に応じてしまった行政機関もあり、理由として「断るのが困難」(27件)▽「要求が少額だったから」(14件)▽「トラブル拡大を恐れた」(12件)―を挙げている。

   ■     ■

 行政機関側は近年、不当要求に対抗する条例を策定するなど対策強化を図っている。警察の厳しい取り締まりもあり、摘発件数は15年・87件、16年・50件、17年・43件と減少傾向にあった。それだけに、市への不満から市長が暴力団幹部に銃撃されるという今回の事件は、数多くの権限を持つ自治体の首長に波紋を広げた。

 「暴力団が『おれたちが手を出せば、このくらいのことはできる』と見せしめのようにアピールしているような犯罪に思えて仕方がない。決して許せない行為だ」。8年10月、産業廃棄物処分場の建設計画を見直していた最中、暴漢に襲われて一時重体になった岐阜県御嵩町の柳川喜郎町長(74)は怒りをあらわにする。

 元神奈川県逗子市長で龍谷大の富野暉一郎教授(地方自治論)も市長時代、山林開発をめぐる問題で暴力団関係者と面会。不当な要求を断った際、「こちらにも覚悟があります」と言われた。露骨な脅迫の言葉はなくにも、にじみ出る雰囲気にものすごい威圧感を覚える。暴力団関係者が職員の家族にも圧力を加えるようになり、組織として対応しなければ職員もつぶれてしまう―と思ったという。

 富野教授は「暴力を根絶することは難しい。だが、まず行政が組織として権限を適正に行使し、たとえ首長であっても不適正な処理はできないという意識を、社会全体に定着させていく必要がある」と話している。」(産経新聞4月19日付朝刊3面)


注目すべき点は、「暴力団が『おれたちが手を出せば、このくらいのことはできる』と見せしめのようにアピールしているような犯罪に思えて仕方がない」という点です。個人的に市とトラブルがあったという都合のいい理由があり、2年前からは容疑者は市と接触していなかったのに、突然凶行に及んだのですから、見せしめの疑いが強いと推測しています。




2.この事件についての解説を紹介

(1) 朝日新聞平成19年4月18日付朝刊1面「解説」

 「民主主義への攻撃

 今回の事件が日本の政治にもたらす最大の危険性は、開かれた選挙のもと、しかも選挙事務所前で、有権者の審判を仰ごうとした候補者が、物理的な暴力によって、その被選挙権という民主主義の根幹の権利を奪われた点にこそある。

 何より選挙の告示期間中は、政治家が有権者に自己の政策や信条を直接訴えるという政治活動が最大限保障されなければならない時期である。犯行の動機は現段階では個人的なトラブルの可能性が高いとはいえ、被選挙権者に当然保障される選挙活動に脅威を与えた行為だったことは間違いない。加えて、長崎市長が襲われるのはこれで2回目だ。言論の自由、政治活動の自由が損なわれることがないよう、政治家も国民も毅然(きぜん)とした態度をとる必要がある。

 今回の事件を受けて政界の反応は、麻生太郎外相が「これまでの選挙のさなかに現職の候補者が銃撃されるという事件は聞いたことがない。理由が私憤であれ、公憤であれ、政治家や世間を萎縮(いしゅく)させるのが目的であることははっきりしている」と指摘したように、選挙に立候補する民主主義の基本前提を崩しかねない危険性に集約されつつある。民主党の鳩山由紀夫幹事長が「選挙中の候補者に対する考えられない事件であり、断じて許すことができない」とコメントを出したのも、同じ危機感からだろう。

 そうであるなら、今後の捜査も含め、政界全体が、この事件にどう向き合い、結果的に「言論テロ」とでもいうべき事態をもたらした社会情勢をどう改善していくのか。問われているのは政治家の個々人である。(森川愛彦)」


命を奪ったこと。それが一番非難すべきことですが、この凶行を厳しく非難すべき点は、次の点です。

「今回の事件が日本の政治にもたらす最大の危険性は、開かれた選挙のもと、しかも選挙事務所前で、有権者の審判を仰ごうとした候補者が、物理的な暴力によって、その被選挙権という民主主義の根幹の権利を奪われた点にこそある。」


代表民主制では、代表者となるべく立候補する者がいなければ存立しえません。今回のように立候補者を銃撃し、立候補者を消してしまうと民主制が成り立たなくなってしまいます。民主主義に対する攻撃、民主主義の危機であるといえるのです。

「何より選挙の告示期間中は、政治家が有権者に自己の政策や信条を直接訴えるという政治活動が最大限保障されなければならない時期である。犯行の動機は現段階では個人的なトラブルの可能性が高いとはいえ、被選挙権者に当然保障される選挙活動に脅威を与えた行為だったことは間違いない。」


政治活動・選挙運動の自由は、民主主義社会では最も尊重されるべき自由の1つです。特に、選挙の告示期間中の運動次第で当選するか否か決してしまうことも多いのですから、選挙の告示期間中の選挙運動の自由は、特に重要視すべきものです。ところが、今回の事件のように、選挙の告示期間中、選挙事務所に帰ったところを狙われるようだと、十分に選挙運動の自由を行使することができなくなってしまうのです。政治活動・選挙運動の自由を著しく委縮させる恐れがあるという点でも、今回の事件は許しがたいのです。

このような民主主義への攻撃・破壊への憤りを訴え、言論の自由、政治活動・選挙運動の自由が損なわれることがないよう、政治家も国民も毅然とした態度で、絶対に許されない行為であると、意思を表明すべきであるのです。



(2) 読売新聞4月18日付朝刊1面

 「卑劣なテロ 根絶を――社会部長・五阿弥宏安

 時計の針が逆戻りしたかのようだ。統一地方選のさなか、選挙運動中の伊藤一長・長崎市長が凶弾に倒れた。17年前の右翼団体幹部による市長銃撃事件を、思わず頭に浮かべた人が多かっただろう。

 首長候補者に向けられた凶弾の衝撃は、極めて甚大だ。議会制民主主義の根幹である選挙そのものを、揺るがしかねない。

 政治や言論の自由を暴力で封殺しようとした卑劣なテロ行為は、社会への重大な挑戦であり、断じて許すことはできない。

 まして、平和の象徴ともいうべき「ナガサキ」の地で繰り返された悲劇に、心から怒りを覚える。

 今回の犯人は、闇勢力の代表的存在である指定暴力団山口組系の幹部だった。警察は、事件の動機と背景の解明を急ぐとともに、さらなるテロ行為の連鎖を断ち切るため、背後に潜む暴力団への徹底的な捜査をすべきだ。

 暴力団の解体を目指し、1992年に暴力団対策法が施行されたが、暴力団の勢力はほとんど衰えていない。暴力団を封じ込める法整備が不十分な上、暴力団を利用する企業などの存在が、闇勢力の増殖を許す結果となっている。

 テロ行為は人々を畏怖させ、恐怖の連鎖を生む。だが、決して委縮してはならない。それこそ、卑劣な犯人の思うつぼである。

 暴力がはびこる土壌を、今度こそ払拭することができるかどうか。我々の社会の成熟度が試されている。」


今回の犯人は、暴力団の幹部でした。

「今回の犯人は、闇勢力の代表的存在である指定暴力団山口組系の幹部だった。警察は、事件の動機と背景の解明を急ぐとともに、さらなるテロ行為の連鎖を断ち切るため、背後に潜む暴力団への徹底的な捜査をすべきだ。

 暴力団の解体を目指し、1992年に暴力団対策法が施行されたが、暴力団の勢力はほとんど衰えていない。暴力団を封じ込める法整備が不十分な上、暴力団を利用する企業などの存在が、闇勢力の増殖を許す結果となっている。……

 暴力がはびこる土壌を、今度こそ払拭することができるかどうか。我々の社会の成熟度が試されている。」

今回の事件は、暴力団員であるからこそ容易に銃を入手でき、銃を使って犯行に及んだのです。暴力団を封じ込める法整備が不十分で、暴力がはびこる土壌を払拭できずにいたことが、今回の原因の1つと言っていいかと思います。銃の更なる徹底的な取り締まり、暴力団に対する効果的で徹底的な規制が必要とされているのです(ただし、3.の宮崎学氏のコメントに注意する必要があります。)。




3.首相や識者のコメントを幾つか紹介します。

(1) 政治家のコメントとして対照的なのはこのお二人です。

 「「発言控える世の中にしてはいけない」加藤紘一元幹事長
2007年04月18日01時23分

 自民党の加藤紘一元幹事長は17日夜、長崎市の伊藤一長市長が銃撃されたことについて、国会内で記者団に「非常に深刻な話だ。これで政治活動をおさえたり、発言を控えたりするような世の中になっては絶対にいけない。政治活動が萎縮(いしゅく)すればこの国が暗くなり、危ういものになる感じを、みんな持ってしまう」と述べた。

 さらに「暴力に訴えて発言や行動をとめることがあってはならないという怒りをもっと強く共有しないとこういう事件は続発する。政治家や国民やメディアがどうとらえるのか。そこが問われる」と語った。

 加藤氏は実家と事務所を昨年8月15日の終戦記念日に放火された。逮捕された右翼団体幹部は「加藤氏の政治姿勢に不満があった」と供述している。加藤氏はこの体験をもとにして、言論に対するテロが生まれる土壌を考察した「テロルの真犯人」を出版。「言論とテロ」をテーマに発言を続けている。」(朝日新聞4月18日付朝刊2面


「これで政治活動をおさえたり、発言を控えたりするような世の中になっては絶対にいけない。政治活動が萎縮(いしゅく)すればこの国が暗くなり、危ういものになる」と述べ、さらには「暴力に訴えて発言や行動をとめることがあってはならないという怒りをもっと強く共有しないとこういう事件は続発する」と述べています。これ以上、的確な発言はないでしょう。このコメントは、誰もが納得できるものです。多くの報道機関がこの発言を取り上げ、高く評価しています。

これに対して、案の定というべきか、安倍首相は加藤議員ほどの意見は述べていません。安倍首相の発言は2つあります。

 「首相「真相究明望む」 長崎市長銃撃
2007年04月17日21時25分

 安倍首相は17日夜、長崎市の伊藤一長市長が銃撃されたことについて「捜査当局において厳正に捜査が行われ、真相が究明されることを望む」とするコメントを発表した。首相は同日午後8時3分、首相秘書官を通じて事件の報告を受けたという。」(朝日新聞4月18日付朝刊1面


まるで普通の事件と同様な談話です。この事件の深刻さが全く分からない、危機感に欠けたものであり、民主主義国の首相としての適性に欠けた内容で、これが日本国の首相かと思うと恥ずかしいほどです。まさに安倍首相らしい内容ですが。

奇妙なのは、7時50分ごろ事件が発生してから、10分ほどで談話を発表したことです。極めて機敏に対応した……ともいえるのですが、余りに早すぎて、不自然であるという評価がなされているようです(須田慎一郎「金融コンフィデンシャル:2051・長崎市長射殺の官邸対応」夕刊フジ4月18日発行4面)。

「『極めてスピーディーな対応といえば聞こえはいいが、現実問題として110番通報を受けてから10分以内に“談話”を発表することなど不可能だ。そもそも、その時点では官邸サイドに事件の基礎的な情報すら伝わっていなかった可能性すらある。にもかかわらず、総理談話を発表してまうとは、あまりにも乱暴な話ではないか』(自民党幹部)……

 『官邸の情報伝達の仕組み、システムから考えて、そんなに短時間で対応することは不可能だと言っていい。あるとすれば、官邸が第1報を受けた段階ですぐさま自動的に“談話”を作成。それができあがるのを待って、すぐに発表という手順を踏んだケースだ。それだって10分以内に作業が完了するかどうか怪しいところだ』(官邸スタッフ)……
 
 『従って、安倍総理が“談話”に目を通したのかどうか非常に疑わしい。……』(官邸スタッフ)」


要するに、シンプルな“談話”だったのも安倍首相が見ることなく自動的に作成されたからであり、須田氏によると「“談話”に対する安倍総理のチェックは、『事後』だった可能性が高い」ようです。事後チェックというと聞こえがいいですが、安倍首相に構わず官邸側の人物が勝手に出したのであって、安倍首相はそれを後で聞いただけということなのでしょう。事後チェックもしたかどうか疑わしいのですから。

「民主主義への挑戦許さぬ」 安倍首相
2007年04月18日10時28分

 安倍首相は18日朝、銃撃された長崎市の伊藤一長市長が亡くなったことについて「県会議員時代から存じ上げていた。ご冥福を衷心よりお祈りしたい。選挙期間中、選挙運動中の凶行は民主主義に対する挑戦であり、断じて許すわけにはいかない。こうした暴力を断固として撲滅をしていかなければならないと思う」と語った。公邸前で記者団の質問に答えた。」(朝日新聞4月18日付夕刊(asahi.com(2007年04月18日10時28分))


これは、おそらくは新聞報道などを読んで、事の重大さに気づき、他の政治家や識者コメントを参照して、このようなコメントを出した内容であると推測しています。「暴力を断固として撲滅」と言うだけなら誰でもいえますが、具体的にどうするのかを述べるのが、本来の首相の役割なのですが、安倍首相はそこまで言わないのです。



(2) 今回の事件は、暴力団員だからこその銃の使用という面があります。次の指摘があります。

組の武装化が進む――藤本哲也・中央大法学部教授(犯罪学)の話

 今の暴力団は組員全員が拳銃を持つといわれるほど武装化が進んでいる。背景には旧ソ連など周辺地域の軍組織が弱体化し、日本にも簡単に銃が流入しやすくなったことがある。警察による摘発強化だけでなく、外交努力で外国にも取り締まりの強化を求めていかなければ、銃による社会への脅威は一層強くなる。」(日経新聞4月18日付38面)


現在の日本の状況を考えると、暴力団の武装化の解体はかなり困難のようです。


(3) いずれにせよ、暴力団規制の強化ということになります。

ショックと怒り――昨年1月、元山口組系幹部らに長男を傷つけられたノンフィクション作家、溝口敦さんの話

 かつて本島等市長が銃撃された長崎で、2度とあってはならない事件が再び起きてしまったことに、ショックと怒りを感じる。山口組直系組織の最高幹部による犯罪であり、山口組全体の問題としてとらえる必要があるだろう。実行犯だけを処罰したのでは、言論に対する暴力という重大犯罪を根絶できないからだ。今回の事件で警察は、実行犯の背後にある組織的犯罪性を徹底的に追及すべきだ。伊藤一長市長の被害を無駄にしてはならない」(産経新聞4月18日付朝刊30面)



暴力団排除社会全体で――日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員長の尾崎毅副委員長の話

 動機には不明な点があるが、背景には公共工事がらみの不満も考えられる。公共工事は長く暴力団の大きな資金源となってきたため、官民あげて制度的に排除する仕組みを作っている最中に起きた事件だ。行政側には不当な要求をはねのける毅然(きぜん)とした対応が求められてきただけに、事件でひるむようなことがあってはならない。担当者がトラブルに巻き込まれる可能性が高いことを考えると、警察や弁護士会が背曲的にかかわり、組織としてバックアップできるシステムをさらに工夫する必要がある。暴力団を排除していく機運を社会全体で作っていくべきだ。」(朝日新聞4月18日付夕刊15面)



警察の失点 原因着目を――作家・宮崎学さんの話

 長崎市長が銃殺されたことは警察にとって失点だ。警察は、容疑者が所属する山口組や傘下の水心会への締め付けを強めるだろうが、山口組はそのたびに規模が拡大してきた。暴力がいけないという意味では異論がないが、今回の事件の原因についても目を向けないといけない。容疑者の年齢(59歳)だと、生きて社会に復帰するのは不可能と分かっていてやったのだろう。根底には、ヤクザには、法の下の平等が行き渡っていない状況があったのかもしれない。」(朝日新聞4月18日付夕刊15面)


今回の事件を切っ掛けとしてもっと暴力団規制を行う必要があるようですし、「行政対象暴力」対策の充実も必要となっているようです。

もっとも、規制を行うにしても、今までの暴力団規制の仕方では、山口組の規模の拡大に繋がっているというわけです。暴力団規制とともに、暴力団から脱退するするほうが良いような手段を講じ、大きい組織ほどより規制を厳しくするような方法が必要になっているようです。

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コメント
この記事へのコメント
トラックバックどうも有り難うございました
 記事の中で触れておられる官邸の発表による第一回目の「談話」ですが、安倍総理自身が祖父の岸信介の時代からを捕虜九段と癒着関係にあることを考えますと、実は伊藤市長への銃撃を予想できる立場にいたために予め用意されていたのではないかという主張も散見されます。
 「談話」ではありませんが真相の究明が絶対的な責務ではないかと思います。
2007/04/19 Thu 22:24:24
URL | アッテンボロー #.8F7RpF2[ 編集 ]
容疑者の手紙
>城尾容疑者は犯行前、こうした不満について記した文書をテレビ朝日あてに郵送。消印は今月15日で、冒頭には「ここに真実を書いて自分の事は責任を取ります」との表現があった。<


春霞様

いつも感謝と共に拝読しています。

容疑者の上記の行動が、事前にあったことを知りました。このことを電話一本入れて頂いていたら、と思うことももう空しく、この時、容疑者の心理状態をある程度、考察できなかっただろうかと悔やまれてなりません。

心のどこかで、「犯行に及ぶ自分を止めてほしい」という気持ちが、百分の一でもあったのでは、と思えるから。

ご遺族に慰めが豊かにありますようお祈りいたします。
2007/04/20 Fri 02:03:05
URL | rikachan #-[ 編集 ]
>アッテンボローさん
コメントとTBありがとうございます。


>実は伊藤市長への銃撃を予想できる立場にいたために予め用意されていた
>のではないかという主張も散見されます。

そういう見方もあるんですね。
手際が良すぎたことは確かです。


>真相の究明が絶対的な責務ではないかと思います。

仰るとおりです。
市とのトラブルだけで射殺に至るという動機としてはかなり不自然ですし、付近に怪しげな人物もいたそうですから、真相究明は不可欠です。
2007/04/21 Sat 06:32:48
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>rikachanさん
コメントありがとうございます。


>いつも感謝と共に拝読しています

ありがとうございます。


>このことを電話一本入れて頂いていたら、と思うことももう空しく

そうですね。
そういったことがあったら、もしかしたら事件は防げたかもしれない、少なくとも死なずにすんだかもしれない、と思ってしまいます。
起こってしまったことは取り返しがつかないと分かっていても、命が奪われたことを思うと、なんとかならなかったのだろうかと、考えてしまいますね。
2007/04/21 Sat 06:40:30
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
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選挙中の市長を銃撃するとは「卑劣」それ以外の言葉が・・・ 前市長本島等氏も右翼団体に銃撃され重傷を負わされている。 私が身体・心が病んだ時に「小浜・雲仙温泉」行く道筋が犯行現場・・・ 何とも気が重い。遣り切れない。 ご冥福をお祈り申し上げます 本島元市長「暴
2007/04/19(木) 22:18:18 | 競艇場から見た風景
 本日未明、昨日暴力団員によって銃撃を受けた長崎市長伊藤一長(いとういっちょう)
2007/04/19(木) 22:25:26 | アッテンボローの雑記帳
私の前ブログ「秘書課、村野瀬玲奈です。」で2006年11月17日に載せた記事です。理不尽な暴力でつぶされた民主主義と平和への希求の思いを新たにし、理不尽な暴力に斃れた人を追悼し、その意思を引き継ぐ思いを新たにする
2007/04/19(木) 23:35:04 | 村野瀬玲奈の秘書課広報室
銃撃された伊藤一長長崎市長がお亡くなりになりました。この暴力を糾弾し、このような暴力は容認する余地が全くないということを表明し、伊藤一長さんの冥福を心からお祈りいたします。さて、このニュースを知った時に
2007/04/19(木) 23:35:23 | 村野瀬玲奈の秘書課広報室
  書きたいことが山ほどあるのだが、時間とスペースに限りもあって、何を優先して書いていったらいいのか、アタマを抱えてしまっている。<例の信販系カードのCMで、15枚ぐらいのカードが目の前に広げられている感じかも。・・・どうする、mew?! 皿皿皿 (・・;)> 
2007/04/20(金) 00:28:18 | 日本がアブナイ!
   長崎市の伊藤一長市長(61)が、17日の夜に暴力団幹部に銃撃され、本当に残念なことに、18日の未明に他界した。 95年に本島氏を破って市長に就任。すでに3期12年を務め、4期めを目指して市長選の選挙活動を行なっている最中の出来事だった。 伊藤市長は
2007/04/20(金) 00:28:56 | 日本がアブナイ!
さあ、そこで、放送法改正の話です。すでに見たように、日本ではメディアを巡って非民主的なシステムが多方面で張り巡らされています(ここ←参照)。そもそも、政府が直接、放送行政を担うことは先進国ではありえない話です。ところが今回の放送法改正では、第五十三条の八
2007/04/20(金) 07:26:10 | 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士
安倍晋三は、伊藤一長長崎市長が銃弾によって死亡した件で、事件の翌日に「ご冥福を衷心よりお祈りしたい。ご家族の悲しみや怒りを察すると余りある。選挙中の凶行は民主主義に対する挑戦で、断じて許すわけにはいかない。こ
2007/04/20(金) 11:04:26 | らんきーブログ
伊藤市長狙撃事件の際の安倍晋三の談話の件にしつこく絡むが、事件が起きたのは7時50分ごろという事だ。そして数十分で「捜査当局において厳正に捜査が行われ、真相が究明されることを望む」という例のどんな事件にでも適応
2007/04/20(金) 14:36:36 | らんきーブログ
 ここ数日、疲れとかでブログの更新をしてなかったが、その間に「銃」にまつわる痛ましい事件が続いている。米国ヴァージニア工科大の銃乱射事件、伊藤一長・長崎市長射殺事件、そして今日相模原市及び町田市で起こった銃殺・立
2007/04/20(金) 23:02:05 | Re:F's blogroom
城尾哲弥容疑者:18年前にヤミ金融、ねずみ講、恐喝などで実刑        ▼ 本島前長崎市長を脅し実刑報道ステーション・オープニング ▼●youtube【テレビ朝日】報道ステーション4/17●youtube【テレビ朝日】テレビ朝日へ長崎市長襲撃した...
2007/04/20(金) 23:59:16 | 晴天とら日和
城尾哲弥容疑者:18年前にヤミ金融、ねずみ講、恐喝などで実刑        ▼ 本島前長崎市長を脅し実刑報道ステーション・オープニング ▼●youtube【テレビ朝日】報道ステーション4/17●youtube【テレビ朝日】テレビ朝日へ長崎市長襲撃した...
2007/04/20(金) 23:59:40 | 晴天とら日和
 宮崎県の東知事の就任の第一声で「宮崎に裏金はありませんか」と幹部職員に質問したことは有名。 案の定、裏金が先日出てきた。 驚いたのは、長崎市。襲撃事件で市の職員が市長になったわけだが、長崎市の裏金は「不正経理約千二百万円、随意契約の不正約一万五千件(総
2007/05/26(土) 08:18:12 | てらまち・ねっと
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