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2007/04/14 [Sat] 16:04:25 » E d i t
国内で唯一、いわゆる「代理出産」を公表して行っている長野県の産婦人科医・根津八紘医師が4月12日午後、会見を行い、成功例とは別に「孫」代理出産が試みられていたことを明らかにするとともに、代理母になるボランティア女性を募集することを明らかにしました。その会見では、国内のケースでは初めて、当事者本人が心情を述べ、国内で代理出産を認めてほしいと訴えました(日テレ<4/13 10:55>) 。この報道についてコメントしたいと思います。(4月16日追記:根津院長への処分についての記事を補充しました)(4月18日追記:毎日新聞記事を追加)


1.記者会見での発言に触れた報道記事について紹介します。

(1) 産経新聞平成19年4月13日付朝刊26面

 「「孫」代理出産 他にも1例 妊娠には至らず

 娘夫婦の受精卵を使い母親が産む「『孫』代理出産」の成功例を昨年10月に公表した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)で、成功例とは別に「孫」代理出産が試みられていたことが12日、分かった。妊娠には至らなかったという。

 根津八紘(やひろ)院長と依頼した30歳代の女性が都内で記者会見し、明らかにした。代理出産を試みた当事者が会見するのは初めて。女性は「子供を産めない運命の人の声を聞いて考えてほしい」と訴えた。

 また、根津院長は「私の元であきらめざるを得ない患者をつくるわけにはいかない」として、代理出産を望む夫婦のためにボランティアの代理母を公募する意向を明らかにした。

 この女性は子宮がなく、夫と米国での代理出産を計画していたが費用などの面から実現せず、根津院長を訪ねた。常々「私が産んであげたい」と話していた50歳代の母親が代理母となり、夫婦の受精卵を子宮へ移植する体外受精を平成17年から約2年間続けたが、妊娠しなかったという。

 女性は「結果は残念だったが、チャレンジできたことはすばらしい経験になりました。代理出産をエゴと非難する人がいることも知っています。ただ、好きな人の子供をこの手に抱きたい」と話した。

 会見にはこの女性のほか、病気などのために代理出産や非配偶者間体外受精などの生殖医療を必要とする患者3人が出席し、こうした生殖医療の必要性を訴えた。

 日本産科婦人科学会は非配偶者間体外受精や代理出産を禁じている。今月14日に開かれる予定の同学会の総会では、死後生殖を禁止する方針だ。

 根津院長は「学会は産科医療の進歩のためにあるはずなのに、率先して目の前の患者を切り捨てている」と話した。」

*日本産科婦人科学会は会告によって非配偶者間体外受精は禁じているが、非配偶者間の人工授精はできる。奇妙なことだが。



記事の中から幾つか。

「この女性は子宮がなく、夫と米国での代理出産を計画していたが費用などの面から実現せず、根津院長を訪ねた。常々「私が産んであげたい」と話していた50歳代の母親が代理母となり、夫婦の受精卵を子宮へ移植する体外受精を平成17年から約2年間続けたが、妊娠しなかったという。」

生殖補助医療すべてにいえるのでしょうが、代理出産も実施すれば確実に成功するわけではありません。それでも日本において生殖補助医療を行うのは、「配偶者との間の子供が欲しい」という自然な欲求があるからです。

「女性は「子供を産めない運命の人の声を聞いて考えてほしい」と訴えた。……女性は「結果は残念だったが、チャレンジできたことはすばらしい経験になりました。代理出産をエゴと非難する人がいることも知っています。ただ、好きな人の子供をこの手に抱きたい」と話した。」


「好きな人の子供をこの手に抱きたい」といった気持ちは、人としてごく自然な感情だと思います。こういう自然な感情に基づく以上、無視して代理出産をすべて禁止することは難しいのです。代理出産については、こういう自然な感情にどう答えるのかが必要なのです。

「根津院長は「学会は産科医療の進歩のためにあるはずなのに、率先して目の前の患者を切り捨てている」と話した。」


産婦人科医は、患者のために医療を行うのですから、産科婦人科学会もなるべく患者の希望を叶えるよう努めるのが本来のあり方だと思います。ですから、「目の前の患者を切り捨てている」という主張は妥当なものだと考えます。

「委員の一人、久具宏司(くぐこうじ)東大講師(産婦人科)は、「代理出産の技術は確立しており、患者からの需要もある。医療現場では患者の同意があれば実施を容認する意見もある。(禁止か容認か)早く方向付けをしてほしい」と全国の医師の思いを代弁する。」(読売新聞(2007年1月19日): 「[解説]不妊治療のルール作り」)

このように、医療現場では十分に実施可能であって、患者の要望もあるのです。医療現場は学会の意向とは異なっているようです。そうなると、学会は何のためにあるのか、その意義が問われています。



(2) 読売新聞平成19年4月13日付朝刊39面

1組でも多く“親”に…「孫」代理出産の依頼者ら訴え(紙面では、「「主人の子供抱かせて」 娘会見、法整備を訴え」)

 子宮がなく子供を産めない30歳代の女性に代わり、50歳代の実母が代理出産を試みていた問題で、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長と、代理出産を依頼した女性ら4人が12日、都内で記者会見し、代理出産を認めるよう政府や日本産科婦人科学会などに訴えた。

 国内での代理出産を依頼した当事者が会見するのは初めてで、30歳代女性は「代理出産を依頼するかしないかは本人が決めること。代理出産を『選択』できる国になり、子供がほしいと強く願う夫婦が、1組でも多く『親』になれる法整備をしてほしい」と訴えた。

 会見に出席したのは、根津院長のほか、代理出産や非配偶者間の体外受精以外に子供を得る方法のない不妊患者やその配偶者ら4人。

 30歳代女性は、「大好きな主人の子をこの手に抱きたい。その思いを理解し、手を差し伸べてくれた母にすがるのはいけないことでしょうか」と泣きながら代理出産に理解を求めた。

 また、数年前にがんで子宮を摘出した別の女性は、米国での代理出産は経済的な面で現実には困難とし、政府が代理母をあっせんする仕組みを作ることを要望。「少子化の時代に、一日も早く子供がほしいと願う患者の苦しみや世論、医療技術を考慮して、時代にあった結論を出してほしい」と訴えた。

 会見した患者らは、代理出産や非配偶者間体外受精を会告(指針)で認めていない日本産科婦人科学会に対し、14日に京都市で行われる総会の場で直接会告の見直しを訴えるため、出席を申し入れていた。しかし、「学会の定款上、会員以外は出席できない」として認められず、記者会見に踏み切ったという。

 代理出産は03年の会告で禁止された。また、精子提供による非配偶者間の人工授精は50年以上の歴史があるため実施が追認されているが、同じ精子提供でも、体外受精は会告で配偶者間で行うとされているため実施できないという矛盾が生じている。学会は生殖医療の進歩に対応するため、昨年4月、5年ごとに会告を見直す方針を打ち出したが、代理出産と非配偶者間体外受精が容認される見通しは立っていない。

 また、この日会見した不妊患者らで作る患者団体「扶助生殖医療を推進する会」と根津八紘院長らは12日、「生殖補助医療を享受する権利は、原則として、国民の憲法上の権利だ」として、代理出産や亡夫の精子を使った死後生殖、非配偶者間体外受精などの生殖補助医療が国内で受けられるよう、医療と法の改革を求める要望書を安倍首相や日本産科婦人科学会、日本学術会議などに郵送した。

          ◇30歳代女性の発言要旨

 30歳代女性の発言要旨は次の通り。

 昨年末まで根津先生のもとで代理出産のチャレンジを行ってきたが、代理母は私の実母。しかし、残念ながらよい結果は出ず、約2年間にわたるチャレンジで妊娠には至らず、この手に我が子を抱くことは、かなわなかった。

 実母は、私が出産できない体だと知った日からずっと、「私はあなたの子どもを産む」「私の子宮を娘に移植してほしい」と、泣きながら医師に懇願してきた。根津先生から「実母でも可能」という言葉を聞いた母は、もう産む気になっていた。

 大きなおなかを抱えて歩き、出産の痛みに耐え、おっぱいを飲ませ、不眠不休の子育てがしたい。でも、神様は私にその体を授けてくださらなかった。代理出産をわがままだと批判する人がたくさんいることも知っている。反対意見にも真摯(しんし)に向き合いたいと思う。

 現在、私たち夫婦は、国内で代理出産が可能になる日を夢に見て、凍結受精卵を残すことを考えている。批判や国での議論、学会で門前払いをする前に、このように苦しんでいる人の声を聞き、もう一度考えてほしい。どうか「子供がほしい」と強く望む夫婦が、1組でも多く「親」になれる法整備をお願いしたい。

(2007年4月12日22時41分 読売新聞)」


読売新聞のみが代理出産を依頼した女性の発言要旨を掲載していました。国内での代理出産を依頼した当事者が会見するのは初めてなのですから、貴重な発言です。こうして要旨を掲載することは良いことだと思います。

「会見した患者らは、代理出産や非配偶者間体外受精を会告(指針)で認めていない日本産科婦人科学会に対し、14日に京都市で行われる総会の場で直接会告の見直しを訴えるため、出席を申し入れていた。しかし、「学会の定款上、会員以外は出席できない」として認められず、記者会見に踏み切ったという。」


代理出産依頼者は、日本産科婦人科学会による、代理出産禁止によって影響を受ける当事者なのです。どんな手続であっても、「告知と聴聞」を受ける権利を保障する(憲法31条に含む)のが通常です。これは、公権力が個人に不利益を課す場合には、予め当事者にその内容を告知し、当事者から意見・弁解を聴かなければならないという原則です。その目的は不利益を受ける個人の権利保護にあります。

日本産科婦人科学会は、公権力ではありませんが、その決定によって著しく不利益を受ける個人が生じるのですから、「告知と聴聞」を受ける権利の保障を及ぼすべきであって、当事者から意見を聞くべきでした。にもかかわらず、日本産科婦人科学会は、当事者たる代理出産依頼者の申し出を拒絶したのですから、妥当な判断ではありません。

「この日会見した不妊患者らで作る患者団体「扶助生殖医療を推進する会」と根津八紘院長らは12日、「生殖補助医療を享受する権利は、原則として、国民の憲法上の権利だ」として、代理出産や亡夫の精子を使った死後生殖、非配偶者間体外受精などの生殖補助医療が国内で受けられるよう、医療と法の改革を求める要望書を安倍首相や日本産科婦人科学会、日本学術会議などに郵送した。」


根津院長は、「生殖補助医療を享受する権利は、原則として、国民の憲法上の権利だ」と述べています。生殖に関する自己決定権(性と生殖の権利:リプロダクティブ・ライツ)は、憲法13条によって保障されているのですが、その権利の保障が及んでいるため、「生殖補助医療を享受する権利」は、国民の憲法上の権利=人権だと主張しているのです。

根津院長は、代理出産を希望する側の権利について述べているのですが、代理母となる女性も自己の意思で決定するのですから、代理母となる女性にとっても、生殖に関する自己決定権があると主張することになります。




2.公募したことに対して、次のような批判的な記事があります。

(1) 毎日新聞のHP(2007年4月12日 21時27分 (最終更新時間 4月12日 23時41分))(4月13日付朝刊26面)

 「代理出産:根津院長が暴走?ボランティア女性公募を発表

 諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長が12日、東京都内で会見し、不妊の夫婦の受精卵で、妻に代わって出産する「代理出産」を引き受けるボランティア女性を公募すると発表した。根津院長は「緊急避難的な実施が必要な患者さんもいる。少しでも患者の役に立ちたい」と訴えたが、専門家からは「代理出産する女性には危険が伴い、公募は問題だ」などの批判が上がっている。

 根津院長は5例の代理出産を実施したことを明らかにしている。不妊の夫婦の体外受精した受精卵で、夫婦の姉妹や母が妊娠・出産してきたが、姉妹に妊娠・出産の経験がなかったり、母が高齢の場合は実施してこなかったという。

 根津院長は「こうした夫婦に力を貸しても良いという方を募り、子どもを持ちたい夫婦を助けるシステムを作りたい」と語った。妊娠・出産中の事故に対応する補償制度についても保険会社などと検討するという。

 根津院長も会員の日本産科婦人科学会は現在、代理出産を認めていない。生命の危険もある妊娠・出産を他人に任せる問題や、女性の体の「道具化」につながる恐れがあるためで、厚生労働省の生殖補助医療部会も刑罰付きで禁止することを求める報告書をまとめた。

 日本学術会議は、代理出産の是非を含めた生殖補助医療のあり方について検討している。

 科学史家の米本昌平さんは「近親者による代理出産なら、代理出産する女性に危険があっても許される例があったかもしれないが、広く公募するとなると話は違い、大きな問題だ。厚生労働省が事情を聴くなど、政府としての対応も必要ではないか」と話す。【永山悦子】

毎日新聞 2007年4月12日 21時27分 (最終更新時間 4月12日 23時41分)」



公募、すなわち代理出産について親族でない者からの希望を募ることは、なぜ、「根津院長が暴走?」ということになるのでしょうか? 

 「代理出産など生殖補助医療のあり方について検討している民主党の作業チームは、代理出産を一定条件下で容認する中間報告をまとめた。ただし、容認するのは妻が医学的理由で子を産めない場合に限り、法律で「代理母」に親族がなることや報酬の支払いを禁じるなど極めて高いハードルを設けた。」(毎日新聞平成18年12月17日付朝刊1面)(「民主党、代理出産を一定条件下で容認へ……しかし、ニュースとして意味があるのだろうか?」参照)


この民主党の作業チームの案は、第三者に無償で代理母になってもらうというものですから、当然ながら「公募」で「無償」という意味になります。誰であってもその意思に反して代理母を強制することは許されないのですから、代理母希望者が行うことになるからです。

この中間報告を公表したときには、毎日新聞は一切、「民主党が暴走?」といった表題にしませんでしたし、批判的な記事にしていませんでした。民主党の場合には批判せず、根津院長が公募をしたときだけ批判することは、公平性を欠いた報道であって、著しく妥当ではありません。

永山悦子記者は、代理出産問題についてずっと記事を書いていながら、公平性を欠いてしまうのですから、結局は何時までたっても代理出産について理解していないのです。もう、記者を辞めた方がいいのではないでしょうか?

「科学史家の米本昌平さんは「近親者による代理出産なら、代理出産する女性に危険があっても許される例があったかもしれないが、広く公募するとなると話は違い、大きな問題だ。厚生労働省が事情を聴くなど、政府としての対応も必要ではないか」と話す。」

このコメントには驚きました。近親者であろうとなかろうと、人間として生命身体を保護すべきことはまったく変わらないのに、「近親者なら危険があってもよいが、第三者に危険が生じるのはダメ」と、合理的理由のない差別を平然と言い放つのですから。

代理出産には、多くの身体的危険(傷害のおそれ)は生じますが、それは近親者か第三者か問わず同じことです。その身体的危険があっても、代理出産が法律上許される(違法性を阻却する要件)ためには、<1>代理母希望者の同意と、<2>代理母希望者の医学的な検診(適格性)という2つの要件が必要ですが、これは第三者であっても同じことです。もちろん、近親者であればこの2つの要件を欠いてよいことにもなりません。

法的には近親者か第三者か問わないはずなのに、それを第三者の場合を認めないと述べるのですから、米本氏はなぜ代理出産が法律上許されるのかについて、合理的な根拠を持ち合わせていないと考えられます。


米本昌平氏の主張にはもう1つ問題があります。米本氏は、代理母の対象を近親者に限定する意図ですが、そうすると腎臓移植問題で生じているように、近親者に対して大きなプレッシャーをかけることになってしまいます。

しかも、腎不全の場合には移植でなくても透析といった方法をとり得るに対して、「血のつながりのある子が欲しい」という希望は(養子でも叶えられず)他の方法がありません。また、「血のつながりのある子が欲しい」という希望は当の夫婦だけでなく、「孫が欲しい」という祖父母の希望であることがかなり多いのです。

近親者に限定すると、近親者には腎臓移植の比でないほどのプレッシャーになるはずです。そうなると、近親者の同意を欠いたままの代理出産のおそれも生じてきます。「代理母の対象を近親者に限定する」べきという米本昌平氏の主張は、現実的妥当性を欠いたものであると考えます。
このような米本氏の主張を引用するのですから、毎日新聞の代理出産に対する理解は極めて浅いものといわざるを得ません。



(2) NIKKEI NET(4月13日)

 「「代理母」引き受け手を公募、長野の根津医師が表明

 代理出産の容認を訴える諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長は12日、都内で記者会見し、代理出産を希望する夫婦の要望に応えるため、ボランティアで代理母を引き受ける女性を公募する考えを明らかにした。謝礼については「必要経費程度の金額で応じていただける方」と説明した。

 代理出産は、妻の子宮摘出などで子供を持てない夫婦の受精卵を使い、別の女性に子供を出産してもらう。国内では日本産科婦人科学会が指針で禁止している。代理母となる女性に妊娠・出産時のリスクがあるほか、生まれた子供を巡り奪い合いなどのトラブルが起きる可能性もあり、公募は議論を呼びそうだ。

 根津医師は妻の姉妹や母親を代理母とした代理出産を手がけてきた。代理母となる親族がいない場合もあるため、第三者のボランティアを公募することにしたという。(07:01)
[4月13日/NIKKEI NET]」


この記事には、代理母に依頼する条件が書かれています。

「謝礼については「必要経費程度の金額で応じていただける方」と説明した。」

幾らかの金額を払う形になるようです。この記事にはありませんが、代理母の対象年齢を40歳代から50歳代としていました。50歳代というのは、さすがに50歳代前半という意味でしょうが、それでも出産可能年齢ぎりぎりであって医学的にはかなり問題があると思います。



「代理母となる女性に妊娠・出産時のリスクがあるほか、生まれた子供を巡り奪い合いなどのトラブルが起きる可能性もあり、公募は議論を呼びそうだ。」

この記事に出ているように、現実に代理出産を実施するに当たっては、諸外国の過去の経験を踏まえると、トラブルを避ける手立てが必要です。

根津院長はすでに代理出産法制化への私案を公表していますから(「根津八紘院長が代理出産法制化への私案を公表」参照)、この私案にそってトラブルを避ける手立てを講じて対応するのだと思います。この私案を遵守するともに、代理母契約において細かい点まで織り込んで明確にしておくことになると思います。もちろん、悪用を避けるため契約内容は非公開が望ましいと考えます(例えば、向井亜紀さん高田延彦さん一家の場合も、契約書は非公開)。




3.公募後の状況についても記事が出ています。
毎日新聞(2007年4月14日 3時00分)

 「代理出産:「7、8人が応募」根津院長へ電話やメール

 諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長が、不妊夫婦の受精卵で妻に代わって出産する「代理出産」ボランティアを公募すると明らかにした問題で、根津院長は13日、複数の応募があったことを発表した。根津院長は「電子メールなどで7、8人の応募があった」と語った。また「この気持ちを生かせるようにしたい」とし、応募女性による代理出産に前向きな姿勢を見せた。【池乗有衣】

 日本産科婦人科学会は現在、代理出産を認めていない。根津院長は12日に東京都内で開いた会見で「必要としている患者さんがいる」などとして代理出産のボランティア募集を発表し、専門家から批判の声が上がった。

 根津院長によると、直後から13日までに同院には電話や電子メールでボランティアの申し出があったという。「ニュースで募集を知り、切実な願いを持つ人の役に立ちたい」(根津院長)という女性からだった。

 会見では「募集は40代から50代」としていたが、応募者はほとんどが30~40代で、「30代ではいけないのか」という問い合わせもあった。根津院長は「代理出産を願う人がいながら外国に依存している現実をおかしいと思い、危険を顧みず、声を上げてくれたことに感謝している」と語った。

 また、柳沢伯夫厚生労働相が公募に否定的な考えを示していることに根津院長は「日本人が海外でする代理出産を国は看過していた」と反論した。そのうえで「公募は時間的な猶予のない患者さんのために決断したもので、思いつきではない」と語った。

毎日新聞 2007年4月14日 3時00分」



もうすぐ直後に7、8人の応募があったようです。もっとも、読売新聞(2007年4月14日14時30分)によると、「私のもとに、代理出産のボランティアに応じたいとのメールが約20件届いている」そうですから、かなりの人数が公募に応じてくれそうです。

「電子メールなどで7、8人の応募があった」と語った。……応募者はほとんどが30~40代で、「30代ではいけないのか」という問い合わせもあった。」

30代の女性は、記者会見を行った女性と同じ世代ですから特に共感するものがあったのだと思います。出産経験のある30代が医学的には一番望ましいのでしょうから、根津院長には、30代の代理母希望者も含めて検討してほしいと思います。


「柳沢伯夫厚生労働相が公募に否定的な考えを示していることに根津院長は「日本人が海外でする代理出産を国は看過していた」と反論した。そのうえで「公募は時間的な猶予のない患者さんのために決断したもので、思いつきではない」と語った。」

高田家の代理出産訴訟においては、最高裁は代理出産自体を公序良俗違反としたのではなく、立法によるとしたのですから、日本において、国が個人の代理出産をとめる法的根拠はありません。柳沢伯夫厚生労働相が公募に否定的な考えを示していても、それは単なる希望に過ぎません。

立法の検討は、日本学術会議の審議が終わってからということになりますから、まだ何時のことになるのか未確定です。それに予め全面否定することが決定しているのならともかく、今は立法内容は白紙の状態ですし、特に許容するのであれば、今、個人の行為を止めるのも不合理です。憲法上、生殖に関する自己決定権が保障されているのですから、その行使を制限することはできません。

根津院長や代理母希望者は、柳沢伯夫厚生労働相の発言に臆することなく、実施することができると思います。ただし、日本産科婦人科学会の会告では禁止しているため、会告に違反することになりますが、最高裁が違法視していない以上、日本産科婦人科学会が「厳重注意」(2007年4月14日14時30分 読売新聞)以上の処分をすることは不可能でしょう。




<4月16日追記>

日経新聞平成19年4月14日付(20:40)

 「代理出産で根津院長に厳重注意・日本産科婦人科学会

 日本産科婦人科学会は14日、京都市で開いた理事会で、会告(指針)で禁止する代理出産を実施した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長を、厳重注意処分とすることを決めた。

 同学会は同日の総会で、死亡した夫の凍結精子を使う「死後生殖」を禁止するため、凍結精子は本人の死後に廃棄することを正式に指針に盛り込んだ。

 代理出産は妻の子宮摘出などで子供を持てない夫婦が別の女性に子供を産んでもらう不妊治療。同学会は2003年に指針で禁止したが、賛否両論あり現在、日本学術会議が検討を始めている。根津院長は昨年10月、子宮のない女性の実母を代理母とする代理出産を実施したと公表した。

 除名ではなく5段階ある処分のなかで最も軽い厳重注意にとどめた理由について、同学会の吉村泰典・倫理委員長(慶応大学教授)は「学術会議での結論がまだ出ておらず、代理出産に対する学会の方針も今後、変わる可能性があるため」と説明した。 (20:40) 」


「根津院長の処分の理由は、代理母の公表以外にも、代理母ボランティアの公募を表明したため」(読売新聞4月15日付)、会告違反だからですが、やはりもっとも軽い処分となりました。



<4月18日追記>

毎日新聞のHP

 「代理出産:20人から応募あった…根津院長

 不妊夫婦の受精卵で妻に代わって出産する「代理出産」を引き受けるボランティアを公募した諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長は17日、約20人から応募があったことを明らかにした。根津院長は「来月中に応募者に家族の理解などを問うアンケートを送付し、書類選考を経て面談をしたい」と話している。

 根津院長によると、応募したのは20代後半から50代前半で全員が出産経験者。「子供を授かる喜びを分かち合いたい」「望んでいる人がいるなら役に立ちたい」などと話しており、家族と相談の上で応募した女性もいるという。近日中に代理出産に伴うリスクを補償する「代理母保険」などのシステム構築を目指し、大手保険会社に協力を要請する。

 根津院長は「約20人も応募があったのは予想外のことだ。多くの人が代理出産を理解してくれた結果と思っている。彼女たちの思いを受け止め、実施できればうれしい」と話した。【池乗有衣】

毎日新聞 2007年4月18日 3時00分」


20人ほど応募がきているという情報は、すでに読売新聞が報じていましたが、どうやら20人でほぼ確定したようです。「応募したのは20代後半から50代前半で全員が出産経験者」だそうですから、年齢層はかなり広がったようですし、「出産経験者」ということで、代理出産についてある程度理解している方が応募しているようです。ある程度理解しているとはいえ、後々トラブルがないようして実施して成功に至ることを期待しています。

テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
代理母は女性を『産む機械』として扱うものですね。
2007/04/14 Sat 18:27:20
URL | 名無しの権兵衛 #eYj5zAx6[ 編集 ]
予想外です
春霞様 こんばんは
根津医師の公表や公募は正直少しびっくりしましたが、信条を貫く並々ならぬ信念と熱意を感じました。
日本学術会議の生殖補助医療の在り方検討委員会のメンバである米本昌平氏が斯様な発言をすることは予想されましたが、
流石の厚労相も、あのようなお粗末な「生む機械」発言をした手前、これ以上世論を敵に回して積極的な発言は出来ないでしょう。
同じく構成員である久具宏司先生やその他の構成員の方々におかれましては、こういった皮相的な倫理観に振り回されること無く、
現状を深思熟慮し、仁義礼智信を弁えた判断をして頂くことを望んで止みません。
ところで、「7、8人が応募」、「応じたいとのメールが約20件」ですか。
正直、もっと少ないだろうと予想していました。大外れでした。そんな予想をしていた自分が恥ずかしい。日本も捨てたものではありません。
改めて日本人に生まれた誇りを保てる喜びに浸っています。今日は少しお酒も美味しく感じられるお話をお聞かせ頂きました。
有難うございました。
2007/04/14 Sat 20:13:22
URL | Canon #yYfDAmAg[ 編集 ]
>名無しの権兵衛さん
コメントありがとうございます。


>代理母は女性を『産む機械』として扱うものですね。

最近、同じ内容のご質問にお答えしましたので、同じ答えを書いておきます。


代理出産は、代理母の自由意思で協力することが代理出産実施の前提ですから、代理母は「産む機械」ではありません。自由意思で行うのに「機械」扱いすることは、かえって、代理母の意思(自己決定)や人格を無視するパターナリズムであるといえます。

日本における代理出産の公表例は少ないのに、日本の医師も、代理出産の技術は確立していると述べています。もはや日本でも容認化したら実施できるというほど、産婦人科医には抵抗感はないのです。要するに、今や産婦人科医には代理母を「産む機械」扱いする意識はないといえるのです。

代理出産の現実は、代理母希望者の選別、依頼と契約締結、代理母も様々な注射を打ち続け、体を受精卵を受け入れる事ができるようにし、そして、受精卵を着床、1回で着床しなければ、また受精卵受け入れのための準備を行い、受精卵の着床を行い、着床し、順調に育てば妊娠期間を経て出産となります。これらの期間は少なくとも、全体として1年以上かかります。
さすがに、拘束をしているわけでもないのに、1年以上も自由意思なしで他人の意思を抑圧できませんから、自由意思のない代理出産を行うことは不可能です。要するに、「代理母」を「産む機械」扱いすることは、現実的にも不可能なのです。

このように理論的にも、産婦人科医の意識としても、現実的にも、代理母は女性を『産む機械』として扱うものではないのです。
2007/04/15 Sun 05:59:42
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>Canonさん
コメントありがとうございます。


>根津医師の公表や公募は正直少しびっくりしましたが、信条を貫く
>並々ならぬ信念と熱意を感じました。

確かに、代理出産を依頼した女性とともに記者会見、さらには公募まで、ですから思い切ったことをしたと思います。仰るとおり、「信念と熱意」があればこそなのでしょう。


>厚労相も、あのようなお粗末な「生む機械」発言をした手前、これ以上
>世論を敵に回して積極的な発言は出来ない

厚労相もあの発言をしたので、強いことを言いにくいですね。ただ、国側は、白紙状態で日本学術会議に任せたのですから、本来、厚労相は何もいえないはずなのですが。


>「7、8人が応募」、「応じたいとのメールが約20件」ですか。
>正直、もっと少ないだろうと予想していました

予想をしたりはしてなかったのですが、記者会見から1、2日なのに20件も来たことには驚きでした。このまま代理出産が実施できて、成功例となるといいですね。
2007/04/15 Sun 07:19:44
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
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代理母公募、慎重対応を 柳沢厚労相 東京新聞2007年4月13日 12時05分>「医者の立場だけでなく倫理の立場も含め(日本学術会議で)議論していただいている。そういう経緯を尊重していただきたい」倫理。これ以降述べるすべての肯定することが倫理そのものである。倫理とは
2007/04/14(土) 17:35:14 | 乱世の影憂(らんせいのえいゆう)
代理母公募、慎重対応を 柳沢厚労相 東京新聞2007年4月13日 12時05分>「医者の立場だけでなく倫理の立場も含め(日本学術会議で)議論していただいている。そういう経緯を尊重していただきたい」倫理。これ以降述べるすべての肯定することが倫理そのものである。倫理とは
2007/04/14(土) 17:46:32 | 乱世の影憂(らんせいのえいゆう)
東京都議会場◆ゲンダイネット2007年04月14日10時00分「石原知事2年で辞める」説 東京都知事選で楽々3選を決めた石原慎太郎知事(74)。記者会見で気に入らない質問をする相手に食ってかかる“石原節”も復活だが、3期目の都政は難問山積で波乱含み。任期途....
2007/04/14(土) 19:05:44 | 晴天とら日和
確かに、この報告を聞くと、リスクが高いことがわかりました。ただそれでも、体外受精して子供が欲しいという人は、現われるだろう。この選択は、本人達が選べばいいことであって、関係ないものが、ああだこうだいって、法的に規制したり、批判するのはどうかと思う。当人達
2007/04/15(日) 13:37:36 | 地獄への道は善意で舗装されている
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