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2007/04/04 [Wed] 05:49:16 » E d i t
向井亜紀・高田延彦夫妻が代理出産でもうけた双子の男児(3)の出生届受理を東京都品川区に求めた裁判で、最高裁第二小法廷は3月23日、受理を命じた東京高裁決定を破棄、法的な実の親子関係は認められないとの決定をし、出生届は受理されないことになりました。この最高裁決定について、幾つか社説が出ている中から真っ当な社説を紹介するとともに、野田議員へのインタビュー記事を紹介したいと思います。


1.産経新聞平成19年3月25日付「社説」

【主張】代理出産 速やかな対応を求めたい

 「出産していない女性を実母と認めることはできない」。代理出産で双子をもうけた向井亜紀さん夫妻に対する最高裁の判断である。

 夫妻は出生届を受理するよう東京都品川区に求めていた。最高裁はあくまで現行法制度の枠組みの中で判断しただけで、代理出産そのものを否定したわけではない。

 むしろ、代理出産という法の想定していなかった事態が起き、国に「立法による速やかな対応が強く望まれる」と要望している。

 代理出産には、夫婦の精子と卵子による受精卵を移植して出産してもらう「借り腹」と、夫の精子を妻以外の女性の卵子と受精させて産んでもらう「代理母」とがある。向井さんのケースは借り腹で、遺伝子上の父と母は向井さん夫妻である。

 不妊の夫婦に子供が持てるようにする生殖補助医療は、代理出産以外には精子を女性の体内に注入して受胎させる人工授精や、体外で精子と卵子を受精させて受精卵を子宮内に戻す体外受精などがある。どれも、その進歩はめざましく、法整備が追いついていないのが現状である。

 向井さんはがんで子宮を摘出後、米国人女性に代理出産を依頼、その女性が米国ネバダ州で男児の双子を産んだ。ネバダ州は双子を向井さん夫妻の子供とする出生証明書を発行した。

 代理出産の事実を伏せて区役所に出していれば、出生届は受理されたはずである。実際、海外の代理出産で生まれた100人以上の子供が、実の子供として受理されているという。

 向井さん夫妻は代理出産の事実を公表した。隠していれば、実子となり、正直に申請すると、親子になれない。向井さん夫妻は、こうした矛盾点に一石を投じた。

 日本産科婦人科学会は代理出産を禁じている。米国は州によって異なり、欧州では法律で規制している国が多い。日本では昨秋、祖母が孫を産む代理出産が明らかになった。

 不妊の夫婦が子供を持つ権利を保障する手段なのか。生まれてくる子供の福祉をどう保障すればいいのか。日本学術会議は代理出産の是非についてすでに審議を始めている。政府は最高裁決定を真摯(しんし)に受け止め、法整備にあたってもらいたい。

(2007/03/25 05:03)」




(1) 

 「「出産していない女性を実母と認めることはできない」。代理出産で双子をもうけた向井亜紀さん夫妻に対する最高裁の判断である。

 夫妻は出生届を受理するよう東京都品川区に求めていた。最高裁はあくまで現行法制度の枠組みの中で判断しただけで、代理出産そのものを否定したわけではない。

 むしろ、代理出産という法の想定していなかった事態が起き、国に「立法による速やかな対応が強く望まれる」と要望している。」


最高裁は、現行民法の解釈では、「出産していない女性を実母と認めることはできない」としただけで、代理出産そのものは否定しませんでした。それどころか、違法視することなく、代理出産は立法に委ねる問題であるとしたのです。この2点の指摘は重要です。

この事案は、日本で代理出産を実施した場合でなく、外国で代理出産を行い、ネバダ州裁判所によって実子と判断された事案です。これは、その外国裁判所で認めた扱いを承認するかどうか、すなわち、外国判決の承認(民事訴訟法118条)の問題です。
そうすると、日本の国内問題である、代理出産の是非については検討する必要はありません。この意味では、最高裁決定は、代理出産の是非を議論することなく、代理出産の是非を判断しない態度を表明したのは賢明な判断でした。当然とさえいえるでしょう。


身分関係の確定は、家族関係上生じるあらゆる法律関係の基になるのですから、立法で明確にしておくというのが、正しいあり方ではあります。

「生殖補助医療は、代理出産以外には精子を女性の体内に注入して受胎させる人工授精や、体外で精子と卵子を受精させて受精卵を子宮内に戻す体外受精などがある」。どれも、法整備はしていないままです。かなり昔から実施している人工授精による親子関係でさえ、法整備を怠ってきたのです。

そうすると、最高裁決定が、国に「立法による速やかな対応が強く望まれる」と要望するまでもなく、立法が必要だったといえると思います。



(2) 

 「代理出産の事実を伏せて区役所に出していれば、出生届は受理されたはずである。実際、海外の代理出産で生まれた100人以上の子供が、実の子供として受理されているという。

 向井さん夫妻は代理出産の事実を公表した。隠していれば、実子となり、正直に申請すると、親子になれない。向井さん夫妻は、こうした矛盾点に一石を投じた。」


最高裁決定によって、「隠していれば、実子となり、正直に申請すると、親子になれない」ことに確定してしまいました。要するに、「正直者が馬鹿をみる」ことになったのです。これで誰も正直に申告する夫婦は皆無になりました。この点の指摘も重要です。

先ほど述べたように、身分関係の確定は、家族関係上生じるあらゆる法律関係の基になるのです。そして、最高裁決定も指摘するように「民法の実親子に関する現行法制は,血縁上の親子関係を基礎に置くもの」です。であれば、身分関係の形成について、正直に申告することを奨励する判断を示すべきでしたし、しかも、血縁主義に忠実な判断を示すべきでした。

親子法制では、法的に具体的に養育できる親を確保することが出発点なのですが、最高裁決定によると、実親はネバダ州にいる代理母夫婦であり、(ネバダ州)法的にも具体的にも養育しない者が親になってしまいました。子供に対して、具体的に養育できる者(向井高田夫婦)から親たる地位を奪い、養育しない者を親とするのですから、親子法制の基本的な考えに明らかに反するのです。この点においても、最高裁決定は妥当性に欠ける判断でした。



(3) 

 「不妊の夫婦が子供を持つ権利を保障する手段なのか。生まれてくる子供の福祉をどう保障すればいいのか。日本学術会議は代理出産の是非についてすでに審議を始めている。政府は最高裁決定を真摯(しんし)に受け止め、法整備にあたってもらいたい。」


今後も、代理出産に関しては、外国判決の承認の問題は生じるとしても、今後は、国内問題としての立法問題が議論されることになります。産経新聞は、判断指針として、「不妊の夫婦が子供を持つ権利を保障する手段なのか。生まれてくる子供の福祉をどう保障すればいいのか。」という2点を指摘しています。

生殖医療に関して言えば、そもそも「子供を持つこととはどういうことなのか」という極めて基本的な事柄を議論する必要があります。「子供を持つこととはどういうことなのか」といえば、「子供を持ちたいというのは人間として非常に本源的な欲求」なのです。
この欲求も無制約とはいえませんが、子を持ちたいというのは本源的な欲求ですから、それを制限するには十分に合理的な理由が必要となるというべきでしょう(「「不妊治療、統一ルール作り急務」なことは確かですが……。~毎日新聞1月11日付「記者の目」を紹介」「代理出産の是非を判断するに当たって必要とされる基礎知識~厚労省、「代理出産」で意識調査実施へ(日経新聞平成19年1月15日付)」参照)。




2.東京新聞平成19年4月1日付朝刊9面

 「代理出産認めて 生まれた子を大切に
2007年4月1日

 タレントの向井亜紀さん夫妻が、米国人女性に代理出産を依頼して生まれた双子について、最高裁は3月末、実の親子と認めない決定を出した。代理出産を認める方向で議員立法をめざして活動する野田聖子衆院議員(46)は、不妊治療を約5年間にわたって受けてきた経験がある。野田議員に、めざす法のあり方について話を聞いた。 (吉田瑠里)

 ――最高裁の決定を聞いてどう思うか?

 私たち立法府の責任だと思う。最高裁は、今ある法律でしか裁けない。早く立法をという言及を受け止めたい。ここまで頑張った向井さんにエールを送りたい。

 ――不妊治療を通じ、代理出産を望む気持ちに共感した?

 不妊治療をして学んだことが二つある。一つは、技術のすごさ。卵子を体内から取り出し、外で精子と合体させたり注射で合体させるといったことが、当たり前に行われている。代理出産もあり得ると思う。自然出産した人には想像を絶する世界。二つ目に、子どもが欲しいという母性は理性では抑えられない。理屈で割り切れない心を満たしたい。

 ――厚生労働省の審議会は二〇〇三年、代理出産を禁止するよう提言、法改正に向け論議されたが頓挫した。この時は?

 「きわめて危険」と反対した。AID(第三者の精子を使った人工授精)は認めるのに、近親間の卵子提供はダメでは根拠がない。ダメ、ダメって限定するのは法律じゃない。

 ――代理出産には、受け取り拒否の可能性や代理母の家庭が崩壊する可能性など、さまざまなリスクが考えられるが?

 ルールを決め、家族の理解が十二分にある人が代理母になれる。なぜリスクを先に考えるのかな。国の役割は頼む側、頼まれる側両方の厳格なハードルをつくり契約がほごにされないよう見守る仕掛けと、生まれた子が守られる法律をつくることだけ。

 ――規制すべき点は

 原則規制なし。営利目的や悪いことに使った人に厳罰、という方が良い。提供者はすべてボランティアに。ただ、日本では、極端なことはおきないと思う。治療したくない人から見れば、私がしてきた体外受精は異様かもしれない。代理母を望むほど追いつめられている人はそう多くない。

 ――精子卵子両方とも提供された、遺伝子上のつながりのない子も実子に?

 養子を堂々と自分の子として育てるのが究極のあり方。子どもを幸せにすることで自分も幸せになりたいと思うなら、みな実子でいい。告知の時期は親が判断する。一律に何歳になったら開示しろ、というべき話ではない。生まれた子を出自にかかわらず大切にする社会をつくりたい。これからの日本は、家庭のあり方として「血のつながりも否定しないが、それがすべてではない」という合意をつくるべきだ。


民主は条件付き容認

 代理出産は、日本産科婦人科学会の会告(一九八三年)により自主規制されてきたが、長野県の諏訪マタニティークリニックの根津八紘(やひろ)院長が五例の代理出産を公表、論議を呼んでいる。

 生殖補助医療の法制化については、野田議員らの勉強会のほか、民主党内にも作業チームがある。「医学的理由で不妊になった場合のみ、第三者が無償で行い、夫婦の受精卵での代理出産は認める。親族による代理出産は認めない」など、中間報告の条件付けは厳しい。座長の西村智奈美衆院議員は「個人的には全面禁止にしたいが、目の前に生まれた子どもがいる。何の規制もなければ安全の確保ができない」と話す。

 二〇〇三年の厚労省調査では、夫婦の精子と卵子を使った代理出産を「認めてよい」が46%、「認められない」は22%。

 のだ・せいこ 元郵政相。2001年鶴保庸介参院議員と事実婚、現在は解消。民主党の小宮山洋子衆院議員らと超党派で生殖補助医療の勉強会をつくっている。自身の不妊治療について著書「私は、産みたい」(新潮社)がある。5期目。岐阜1区。」


野田議員に対するインタビュー記事は、以前にも紹介したことがありますが(「野田聖子議員が語る「代理出産は認めるべき」~nikkeiBPnet(12月1日)より」)、最高裁決定後のインタビュー記事はこの東京新聞の記事がはじめてではないかと思います。以下、幾つかコメントしていきます。


(1) 

 「 ――最高裁の決定を聞いてどう思うか?

 私たち立法府の責任だと思う。最高裁は、今ある法律でしか裁けない。早く立法をという言及を受け止めたい。ここまで頑張った向井さんにエールを送りたい。」


「私たち立法府の責任」というのですから、実にシンプルな発言です。最高裁は立法して欲しいとして丸投げしたのですから、後は立法府の責務ということです。

多くの中傷にも負けずに裁判を行い、裁判所から多くのものを引き出し、問題意識の薄かった市民への啓蒙の役割を果たしてきた、向井さん、高田さんへのエールも欠かさないのですから、配慮のある発言です。


(2) 

 「――不妊治療を通じ、代理出産を望む気持ちに共感した?

 不妊治療をして学んだことが二つある。一つは、技術のすごさ。卵子を体内から取り出し、外で精子と合体させたり注射で合体させるといったことが、当たり前に行われている。代理出産もあり得ると思う。自然出産した人には想像を絶する世界。二つ目に、子どもが欲しいという母性は理性では抑えられない。理屈で割り切れない心を満たしたい。」


「技術のすごさ」は、代理出産でも同様です。

「委員の一人、久具宏司(くぐこうじ)東大講師(産婦人科)は、「代理出産の技術は確立しており、患者からの需要もある。医療現場では患者の同意があれば実施を容認する意見もある。(禁止か容認か)早く方向付けをしてほしい」と全国の医師の思いを代弁する。」(読売新聞(2007年1月19日): 「[解説]不妊治療のルール作り」

いまや、日本では殆ど実施していないのに、日本の医師でさえ、代理出産の技術は確立しているというくらいまで、技術は進歩しているのです。

野田議員は、「こどもが欲しいという母性は理性では抑えられない」と述べていますが、男性にとっても同じであるということを補足すれば、正しい指摘です。最高裁決定も「遺伝的なつながりのある子を持ちたいとする真しな希望」に配慮することを求めています。子を持ちたいという自然な欲求に答えることが重要なことなのです。



(3) 

 「 ――代理出産には、受け取り拒否の可能性や代理母の家庭が崩壊する可能性など、さまざまなリスクが考えられるが?

 ルールを決め、家族の理解が十二分にある人が代理母になれる。なぜリスクを先に考えるのかな。国の役割は頼む側、頼まれる側両方の厳格なハードルをつくり契約がほごにされないよう見守る仕掛けと、生まれた子が守られる法律をつくることだけ。」



トラブルの可能性は、2000年中に米国で実施された代理出産は2万件でしたが、依頼者が子供を引き取らないとか、代理母が子供の引渡しを拒絶したケースは8件にすぎず、発生率は0.04%にすぎず、トラブルはごく稀なケースなのです。
そうすると、ごく稀に生じるリスクを殊更に重視して否定的に捉えるのは、立法政策としても妥当ではありません。立法政策は多数派の状況を原則としつつ、少数へも配慮するものだからです。

「なぜリスクを先に考えるのかな」

という言葉は、立法に携わる議員として適切な発言といえると思います。

この質問内容は、いまだにベビーM事件をはじめとする極端な事例から脱却できないでいる人たち(最高裁の裁判官も含む)の考えです。いい加減に極端な事例から、脱却すべきです。

だいたい、最高裁決定によって、今現実にいる双子から、法的具体的に養育する親を奪っておいて、他方で、ごく稀なケースの将来の子供のことを思って代理出産を危険視するのは、あまりに不合理な判断です。



(4) 

 「 ――規制すべき点は

 原則規制なし。営利目的や悪いことに使った人に厳罰、という方が良い。提供者はすべてボランティアに。ただ、日本では、極端なことはおきないと思う。治療したくない人から見れば、私がしてきた体外受精は異様かもしれない。代理母を望むほど追いつめられている人はそう多くない。」


原則規制なしは、(代理出産依頼者、代理母双方の)自己決定権や、子供を持つことは生殖として人間として本源的な欲求であるということにそった判断です。

日本人は、何かあると騒ぎすぎの傾向があるように感じます。向井高田夫妻に対して、多数の中傷が行われましたが、数ある代理出産の1例に過ぎず、今後もどこかの夫婦が実施することなのです。もっと冷静であるべきです。野田議員が述べるように、日本では極端なことはそう起きないでしょうし。



(5) 

 「 ――精子卵子両方とも提供された、遺伝子上のつながりのない子も実子に?

 養子を堂々と自分の子として育てるのが究極のあり方。子どもを幸せにすることで自分も幸せになりたいと思うなら、みな実子でいい。告知の時期は親が判断する。一律に何歳になったら開示しろ、というべき話ではない。生まれた子を出自にかかわらず大切にする社会をつくりたい。これからの日本は、家庭のあり方として「血のつながりも否定しないが、それがすべてではない」という合意をつくるべきだ。」

この質問は、精子卵子両方とも提供された場合も、代理出産を認め、実子と扱うのかどうか? という問いかけです。答えは、代理出産を認め、実子でいいということです。

AIDの場合も、父子関係は実子と扱うのが戸籍及び判例上の運用なのですから、遺伝子上のつながりのない子も実子になっています。AIDでは、父親として相応しい者が父親になっているのであって、遺伝上のつながりのない子を「実子」から排除することは、現行法も妥当ではないのです。
AIDでは、遺伝上のつながりのない子を「実子」と認めるが、代理出産では認めないという扱いは不合理ですから、この質問はかなりナンセンスです。

1973年、米国の統一親子関係法がAIDに同意した妻の夫を父として以来、それにならう法制が世界的な広がりをみせました。その結果、母の夫を父とする法的根拠は、父性推定から夫の意思へと変わってきたようです(新版注釈民法(23)25頁〔島津一郎〕)。意思に基づいて認める養子縁組、同意という意思によって父と認める法制、これらと同様に考えれば、代理出産も代理母契約というお互いの意思によって生じることから、代理母依頼者が母となります。養育する意思のある者こそ親である、というわけです。
野田議員は、

「子どもを幸せにすることで自分も幸せになりたいと思うなら、みな実子でいい」

と述べていますが、養育する意思のある者こそ親であるという意味だと思われます。これは、世界的な法制の流れにそった適切な考えであり、理解の深さがうかがえます。


よく考えると、この質問は、自己矛盾をはらんでいて面白い問いかけです。吉田瑠里記者は理解していて質問したのか分かりませんが。

最高裁決定は、「出産していない女性を実母と認めることはできない」としたので、「遺伝子上のつながりのない子」が、代理母夫婦の「実子」になってしまいました。
「遺伝子上のつながりのない子も実子にするのはおかしいのでは?」という問いかけは、代理出産を否定する側(代理母依頼者との母子関係否定)にこそ当てはまるのです。

代理出産否定者は、やたらと、生まれた子の出自を気にしますが、野田議員は、

「告知の時期は親が判断する。一律に何歳になったら開示しろ、というべき話ではない。生まれた子を出自にかかわらず大切にする社会をつくりたい」

という反論をしています。確かに、こういった親子の心情の問題は、本来的に法が関与すべきなのかさえ問題があることから、法でいちいち口を出すのではなく、親が判断するべき問題でしょう。

養子縁組であっても、出自の問題は生じますが、告知の時期なんて法で規制していません。どちらかといえば、養子縁組の方が、「両親が実親でなかった」ことを聞いたときのショックは大きいと推測しています。血縁関係がないのですから。

ところが、代理出産の場合は、(精子卵子両方とも提供された場合は養子と同じ)告知を受けても、今いる親が遺伝的にも実親なのですから、子供にとっては代理母が親という意識は乏しいはずです。養子縁組よりもずっとショックは受けないと考えられます。

 「15年前に代理出産で生まれた、双子のアリスさん(15)とオリバーさん(15)は、誰が母親か混乱はなかったという。アリスさんは「私たちの母は、ただ一人です。代理母とも親しくしてはいますが」と話し、オリバーさんは「代理出産があって、産んでもらえて良かった」と話している。」(日テレNEWS24<4/2 7:03>:代理出産 試行錯誤続く英国の場合は…<4/2 7:03>

この1例だけで速断できませんが、代理出産であることを聞いて混乱しない実例があることは確かです。




<追記>


日テレNEWS24<4/2 7:03>

代理出産 試行錯誤続く英国の場合は…<4/2 7:03>

 代理出産で生まれたタレント・向井亜紀さん夫妻の子供をめぐる最高裁の決定から1週間がたった。アメリカやイギリスでは、代理出産の子供でも、自分の子供とすることが認められている。イギリスの例をロンドン支局・桂知子記者が取材した。
 先月31日、「自分の子供を産みたい」と願う女性たちが集まった。イギリスには、彼女たちを支援する団体「サロガシーUK」があるのだ。

 イギリスでは、代理出産の「商業化」が禁止されているものの、生まれた子供を「実の子」として登録できる制度が90年以降、確立している。

 15年前に代理出産で生まれた、双子のアリスさん(15)とオリバーさん(15)は、誰が母親か混乱はなかったという。アリスさんは「私たちの母は、ただ一人です。代理母とも親しくしてはいますが」と話し、オリバーさんは「代理出産があって、産んでもらえて良かった」と話している。母親・リンダさん(51)は、流産した後、代理出産を決断した。友人である女性に依頼した時のことを振り返り、「代理出産は最後の手段でした。産んでくれる女性との関係が大切です。9か月間、おなかの中にいるわけですから」と語った。

 「友人同士のきずな」でうまくいった例もある一方で、代理母が子供を手放さず、トラブルになった例もある。代理出産の法制度に詳しいロンドン大学のエミリー・ジャクソン教授によると、契約に法的拘束力はなく、代理母が引き渡しを拒否したり、依頼側が受け取りを拒否したりできるという。

 あくまで「信頼関係」で結ばれる代理出産の約束。代理出産を行う女性と依頼する女性のそれぞれに悩みがある。代理出産を行うある女性は「人間関係も大変だし、薬を飲むと体調が崩れます。自分の子ではないので、妊娠しているとは感じませんが、それでも気持ちは複雑です」と話している。一方、代理出産を依頼したいある女性は「まだ産んでくれる女性を探せていませんし、不安で聞きたいことが山ほどあります」と話した。

 年間約50件実施されている代理出産については、イギリスでは支援団体の最低限の宣伝を認めるかどうかなど、今も試行錯誤が続けられている。」



気になった点を1つ。

 「契約に法的拘束力はなく、代理母が引き渡しを拒否したり、依頼側が受け取りを拒否したりできる」

ということになると、おそらく強制力がない(裁判所で強制執行を求められない)だけでなく、損賠賠償請求もできないということなのでしょう。しかし、これでは代理出産を依頼しても子供が得られるのか不安定であって、結局は、代理母の意思次第になってしまいます。何の法的拘束力がないと、かえって混乱を招くように感じます。

テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
「代理母」は
「産む機械」ですか?
2007/04/06 Fri 00:37:03
URL | イングラム #OARS9n6I[ 編集 ]
>イングラムさん
はじめまして、コメントありがとうございます。


>「代理母」は「産む機械」ですか?

代理出産は、代理母の自由意思で協力することが代理出産実施の前提ですから、代理母は「産む機械」ではありません。自由意思で行うのに「機械」扱いすることは、かえって、代理母の意思(自己決定)や人格を無視するパターナリズムであるといえます。

日本の医師でさえ、代理出産の技術は確立しているというくらいまで、技術は進歩していて、容認化したら実施できるというほど、産婦人科医には抵抗感はないのです。要するに、今や産婦人科医には代理母を「産む機械」扱いする意識はないといえるのです。

代理出産の現実は、代理母希望者の選別、依頼と契約締結、代理母も様々な注射を打ち続け、体を受精卵を受け入れる事ができるようにし、そして、受精卵を着床、1回で着床しなければ、また受精卵受け入れのための準備を行い、受精卵の着床を行い、着床し、順調に育てば妊娠期間を経て出産となります。これらの期間は少なくとも、全体として1年はかかります。
さすがに、拘束をしているわけでもないのに、1年間も自由意思なしで他人の意思を抑圧できませんから、自由意思のない代理出産を行うことは不可能です。要するに、「代理母」を「産む機械」扱いすることは、現実的にも不可能なのです。

このように理論的にも、産婦人科医の意識としても、現実的にも、「代理母」は「産む機械」ではないのです。
2007/04/07 Sat 08:00:52
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
大変な意志の力を要するのですね。
>代理母も様々な注射を打ち続け、体を受精卵を受け入れる事ができるようにし、

 そうでしたか。人間の体には免疫反応というか、拒絶反応も備わっているでしょうし、大変な努力の結実なのですね。
2007/04/07 Sat 20:52:35
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん
コメントありがとうございます。


>大変な意志の力を要するのですね
>大変な努力の結実なのですね。

仰るとおりです。

向井さんの著作本によると、向井さんと代理母の体のサイクルを(薬や注射により)3ヶ月コントロールして受精卵が着床しやすいようにしたそうです。
向井さんが、代理出産について2002年春に挑戦をはじめて、3回目に成功して、2003年11月28日に代理母が出産しました。結局、1年半ほどかかったのです。

代理出産の是非の議論はどうであっても、「産む機械」か否かと関係なく、代理出産は、実際上は大変な意思と努力が必要なのです。

この問題の事の本質は、「産む機械」かどうかではなく、他人の意思や存在を尊重しているのか、他人を思いやる気持ちがあるのかどうか、なのだと思うのです。
例えば、相手を尊重せず、思いやる気持ちがない男性にとっては、代理母はもちろん、自分の恋人・妻であっても、単なる「機械」なのです。妻を「機械」扱いしている男性は、いまだにかなり多いのではないでしょうか。

代理出産の実情を知り、議論を知ったうえでなお、代理母を機械と思うかどうかは、その人の人間性によるのではないか、と思っています。
2007/04/08 Sun 05:30:38
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
こんばんは。

>妻を「機械」扱いしている男性は、いまだにかなり多いのではないでしょうか。

自分のことを言われているようで、ドキッとしました。

ただ、代理母を批判する者が人間性に問題があるかの如き仰り様には疑問を覚えます。
2007/04/08 Sun 19:54:13
URL | DH #-[ 編集 ]
>DH さん
コメントありがとうございます。


>自分のことを言われているようで、ドキッとしました。

そうでしたか。
まずは隗より始めよ、という感じでしょうか。


>代理母を批判する者が人間性に問題があるかの如き仰り様には
>疑問を覚えます。

代理出産否定の根拠には色々とありますが、ここでは、「代理母は産む機械である」と主張して代理出産を否定する者を念頭において、批判しています。

さて。
代理出産には、代理母の自由意思だけでなく、代理母の夫、代理出産にかかわる医療関係者数名(代理母依頼者及び代理母双方)、代理母コーディネイター(日米双方)数名、といった多くの意思・存在に支えられています。

このように、多くの人に支えられて実施できるのにもかかわらず、「代理母は産む機械である」として代理出産を否定する方は、これらの意思・存在を否定して、すべて「機械」及び「機械を手助けする者」とみなすのです。
そうなると、「代理母は産む機械である」として代理出産を否定する方はは、多くの人の意思・存在をわざわざ否定するという価値観・人間性を有している人物ではないかと思うのです。

どういう価値観・人間性も内心に秘めているのなら自由です。しかし、憲法は、個人の尊厳を尊重しているのですから(憲法13条)、他人の意思・存在を否定することを主張することは、妥当ではないのです。

また、AIDでは、男性を「機械」扱いすることはないのに、女性の場合だけ「代理母は産む機械である」と評するのですから、そのこと自体、女性蔑視の意識を感じてしまいます。

向井高田夫妻の代理出産裁判についても、高田さんも同意しているのに、向井さんだけに誹謗中傷が殺到するというのも(さらには代理母のシンディさんにも)、女性軽視の意識が感じられてなりません。
2007/04/09 Mon 19:26:22
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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