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2007/04/03 [Tue] 01:04:42 » E d i t
愛媛・宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる病気腎移植問題で、日本移植学会など4学会は3月31日、統一見解をまとめ、記者会見を行いました。そこでは、まず「実験的な医療が医学的・倫理的検討を加えられず、閉鎖的な環境で行われていたことは厳しく非難されるべきだ」と指摘し、その上で、「現時点では、医学的に妥当性がない」とする統一見解を示しました。(日テレNEWS24「病気腎移植 4学会「医学的に妥当性ない」」<3/31 21:45> )。この報道についてコメントしたいと思います。


1.4学会が言いたいことは、万波医師らを非難したことと、「現時点では妥当性なし」と統一見解をまとめことです。もっとも、毎日新聞の記事( 病気腎移植:万波医師らの医療 4学会が非難の声明(毎日新聞 2007年3月31日 21時08分)病気腎移植:ドナーの治療軽視 問題と背景(毎日新聞 2007年4月1日 0時46分 (最終更新時間 4月1日 0時48分)))のように、さっぱり分からないものもあります。記事は、野田武記者、大場あい記者、津久井達記者(万波医師擁護の部分を担当)が担当しています。野田武記者、大場あい記者担当の部分は酷く、事実を端的に伝える能力に欠けています。殆どが以前書いた記事内容ですから、読む価値がありません。


(1) 産経新聞平成19年4月1日付朝刊1・3面

病腎移植 「現時点では妥当性ない」 関連4学会が非難声明
4月1日8時0分配信 産経新聞

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らによる病腎移植について、日本移植学会など4学会は31日、「実験的な医療が閉鎖的な環境で行われていたことは、厳しく非難されるべきだ」とする声明を出した。また、病腎移植の医学的可能性については、「現時点では妥当性がない」とする統一見解を出した。

 共同声明に参加したのは、日本移植学会、日本透析医学会、日本泌尿器科学会、日本臨床腎移植学会の4学会。日本腎臓学会は理事会の承認が得られ次第、声明に加わる予定。日本病理学会は声明に参加しなかった。

 声明は、病腎が移植された際、インフォームドコンセント(患者への説明と同意)の文書化や倫理委員会の審査が欠如しており、不透明だったと指摘した。統一見解の根拠には、一部の病院のケースに限ると、腎臓の生着率や患者の生存率が通常の移植より劣ることなどを挙げている。

最終更新:4月1日8時0分」(産経新聞4月1日付朝刊1面


「日本移植学会などは、今回、岡山や広島で実施された6件の摘出手術について検証した厚労省調査班と、市立宇和島病院で実施された摘出20件、移植25件について検証した同病院調査委の調査結果を参考に声明をまとめた。

 日本移植学会の田中紘一理事長は「現時点では病腎移植に医学的妥当性はなく、実施すべきではない」と強調した。」(サンケイネット上のみ最後の段落にこの部分を掲載)



病腎移植 先延ばし、揺れた方針 学会「原則禁止」から後退
4月1日8時1分配信 産経新聞


 病腎移植について日本移植学会など4学会が出した統一見解は、「現時点では妥当性がない」と将来の容認に含みを残し、繰り返し「原則禁止する」と発言していた学会首脳らの方針から後退したものとなった。

 日本移植学会の副理事長らは病腎移植の是非について1月以降、「関連5学会で原則禁止の統一見解を出す」と再三発言。当初は2月中旬の合同会議で見解を取りまとめる予定だったが、下旬に延期。さらに、学会首脳らの任期満了ぎりぎりの3月末まで先延ばししていた。

 臨床現場の医師や患者団体から、病腎移植の容認を求める声が上がる中で、方針が揺れたことをうかがわせる。

 最終的には、見解の内容が後退したうえ、当初予定されていた5学会のうち日本病理学会、日本腎臓学会が今回は参加を見合わせた。代りに、日本移植学会副理事長が以前理事長だった日本臨床腎移植学会が参加する「数合わせ」で、権威を維持した形だ。

 ただ、日本腎臓学会も31日の合同会議には加わっており、今後、学会の理事会で了承されれば名を連ねるとしている。

 声明は、万波誠医師(66)が以前勤務した市立宇和島病院(愛媛県宇和島市)などの調査結果をもとに、4学会の連名でまとめた。

 大阪市内で開かれた合同会議の後、日本移植学会の田中紘一理事長は、ルールにのっとったものであれば将来の病気腎移植の可能性は否定しない、との考えを示した。

 また、移植医療の新しい診断方法や治療方法について今後、病院の倫理委などで審議した後、日本移植学会でさらに審議する体制を整備するとしている。

                   ◇

 田中理事長の話「(病腎移植は)想定外のことだった。少なくとも現時点ではあり得ない。移植をやる人は学会に入ってほしい。学会で決まったことはすべてお知らせするので、万波先生にもぜひ入っていただきたい」

最終更新:4月1日8時1分」(産経新聞4月1日付朝刊3面



病腎移植 万波医師反論「患者の利益」
4月1日8時1分配信 産経新聞

 日本移植学会など学会の声明の発表を受け、万波誠医師は31日、産経新聞の取材に「患者の利益になると思ってやったこと。患者側の意見をもっと聞いて判断してほしかった」と話した。

 また、学会側が生体腎移植に比べて病腎移植の生着率の低さを指摘していることについて、「(生体腎移植と病腎移植では)母集団の数が違う。公平な比較にはならない」と反論。「確かに同意文書などは残していないが、患者と十分話し合ったうえで移植した。患者の利益になっていると思う」と従来の主張を繰り返した。

 一方、同病院の貞島博通院長も同日、院内で会見し、「臨床研究というかたちでも病腎移植を残してほしい」と訴えた。学会の調査方法については「患者たちの意見をあまり聞くことなく、拙速に物事が運びすぎている感じがする」と不満を口にした。

最終更新:4月1日8時1分」(産経新聞4月1日付朝刊3面



 「移植学会など声明要旨

 第三者からの病腎移植は想定していなかった。実験的な医療が、医学的・倫理的な観点から検討されずに閉鎖的な環境で行われていたことは、厳しく非難されるべきだ。実施した病院は、手続きを含め体制が極めて不備だった。

 移植医療ではドナーの意思が尊重され、権利が守られねばならない。一連の病腎移植では、医学的見地からの問題や、インフォームドコンセントや倫理委員会審議の欠如や不透明さが判明、移植医療として多くの問題があった。

 臓器移植の新しい治療法を推進するのは、厚生労働省の倫理方針にのっとって行わなければならない。日本移植学会は、臓器提供を必要とする移植医療では、この方針に加え、新しい診断方法や治療方法などの提案を審議し推進できる体制を整備するのが方針だ。臓器提供の範囲の拡大も、学会、社会での十分な議論を経て行っていく。

 今回の病腎移植を、移植医療全体の教訓として生かし、わが国の移植医療の適正運用に努め、臓器不全に悩む多くの人々が恩恵を受けられるように尽力する。」(産経新聞4月1日付朝刊3面)




(2) 読売新聞平成19年4月1日付朝刊1・38面

 「病気腎移植を全否定、4学会が「実験的医療」と非難

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らの病気腎移植について、日本移植学会、日本泌尿器科学会など関連4学会は31日、「病気腎移植は、実験的な医療であり、現時点で医学的に妥当性はなく、認められない」と全面的に否定する声明をまとめ、公表した。

 今回の声明で一連の病気腎移植調査は大きな山を越え、厚生労働省は、臓器移植法の運用指針を改定、病気腎の扱いを盛り込む。

 4学会と日本腎臓学会は、この日、大阪市内で会合を開き、万波医師らがかかわった病気腎移植42件について、これまでの厚労省や同学会員らの調査資料などを詳細に検討。医学的な妥当性、提供・移植両患者に対するインフォームド・コンセント(医師の十分な説明と患者の同意)などについて声明をまとめた。

 声明ではまず、「病気腎移植は、移植医療として多くの問題があったと言わざるをえない」と指弾。その上で、「良性疾患」「悪性疾患(がん)」の摘出の医学的妥当性について、それぞれ「他の治療を受ける機会が与えられるべき」「がんが移植患者に持ち込まれる危険性がある」と否定した。移植についても、生存率が劣ることを根拠に認められないとした。

 また、多くの症例でインフォームド・コンセントが十分に行われず倫理的に問題があるとした。

 移植学会は、万波医師らのような実験的な医療に歯止めをかけるため、「新しい移植医療は臨床研究ととらえ、学会外の研究者や医師も含め、施設と移植学会の二重の倫理審査を行う体制を整えること」を声明に盛り込んだ。

 田中紘一・日本移植学会理事長は「病気腎移植という実験的医療が、医学・倫理面での検討もなく、閉鎖的な環境で行われたことは厳しく非難されるべき」と指摘した。ただ、将来的な病気腎移植の可能性については明言を避けたが「新たな治療法は今後も開発される」と含みを残した。

(2007年3月31日23時20分 読売新聞)」



 「病気腎移植「万波式、現状では不可能」 4学会一部委員、容認論も

 「提供者の権利が全く守られていない」「現時点では不可能」。日本移植学会など4学会が31日出した声明は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らの病気腎移植を完全否定した。これを受けて、厚生労働省による臓器移植法の指針改定、関係病院に対する行政処分の検討が始まるが、学会幹部からは「良性疾患に限り一部は認めても良いのではないのか」という声もあり、その場合、手順など今後詰めるべき課題は多い。〈本文記事1面〉

 4学会が「これまで想定していなかった」(田中紘一・日本移植学会理事長)とした病気腎移植は、昨年秋に臓器売買事件の院内調査で判明し、その後、5県10病院で計42件も実施されていることが分かった。厚労省や日本移植学会は早くから否定の姿勢を打ち出した。移植学会が、会合前日の30日に急きょ会見を開き、病気腎移植の生着率と生存率の成績が悪いデータを公表したのも、万波医師らの病気腎移植は認められないという強いメッセージの表れだ。

 一方、「苦しむ患者を助けるためにやった」と主張する万波氏を、移植を受けた患者や学者の一部が擁護。透析患者の増加や慢性的な臓器提供不足の実情を指摘し、病気腎移植を「第三の道」として容認を求める声も出た。

 この日の合同学会でも、一部の委員から病気腎移植の容認を求める発言が出た。だが、日本移植学会が押し切り、統一見解をまとめるに至った。

 国は今後、臓器移植法の運用指針を改定し、摘出した病気腎の取り扱いについて規定を盛り込む方針。学会も、二重審査体制と国の指針などの監視体制を強化し、実験的な医療に歯止めをかけたい考えだ。ただ、声明で「学会員も非学会員も新しい治療法の提案を審議できる体制を整備する」として、将来的に病気腎移植の可能性に含みを残した。

 一方、万波医師は31日夜、報道陣の取材に対して「最善の選択だった。間違っていなかったと思っている」と主張した。患者への説明が不十分との指摘についても「患者とは十分に相談した。病気腎はいつ出るか分からず、一番話の分かる患者を選んだ」と話した。その上で「学会の見解に沿って国が禁止したら、もうしない」と話した。(以下、省略)」読売新聞4月1日付朝刊38面



4学会声明の骨子

▽良性疾患、悪性疾患(がん)を含め腎摘出の医学的妥当性はない
▽多くの症例で、摘出や第三者に移植するという説明がなされ、書面で同意が得られている(インフォームド・コンセント)ことが確認できなかった
▽病気腎移植の生存率は、(生体移植、死体移植に比べ)劣るとのデータがあり、医学的に妥当性がない
▽病気の治療のための摘出でなく、明らかに移植を前提とした手術法が選択された例もあった
▽レシピエント(移植患者)の選択に一定の基準はなかった
▽多くの場合で、倫理委員会からの病気腎移植の承認は得られていない」(読売新聞4月1日付1面)




2.この報道から幾つかコメントしてみます。

(1) 

 「病腎移植について日本移植学会など4学会が出した統一見解は、「現時点では妥当性がない」と将来の容認に含みを残し、繰り返し「原則禁止する」と発言していた学会首脳らの方針から後退したものとなった。」


日本移植学会の幹部は、ずっと「全面禁止、原則禁止」と言いふらして来たのですが、結局は、「現時点では妥当性がない」に後退した結果になってしまいました。

産経新聞が指摘するように、「臨床現場の医師や患者団体から、病腎移植の容認を求める声が上がる中で、方針が揺れた」のかもしれません。


ただ、「現時点では妥当性がない」というだけであって、「移植医療の新しい診断方法や治療方法について今後、病院の倫理委などで審議した後、日本移植学会でさらに審議する体制を整備するとしている」ことからすると、日本移植学会主導で病腎移植を実施したいのだと推測しています。日本移植学会の幹部の中には、“人体実験医師”がいるのですから、やりたい意欲があることはよく分かります。

日本移植学会の幹部は、内心、万波医師の診療記録が楽しみだったはずです。病気腎移植は優れた技量を必要としますから、診療記録を見ることで、盗むことができると思っていたはずだからです。
ところが、カルテの記載は不十分で、よく分からなかったため、盗むことができませんでした。そのため、深尾立調査委員長は、「調査ができない」と厳しく非難したわけです。分かりやすい言動でした。将来を考えると、病腎移植をやりたいのです、実は。


今後は、日本移植学会は、形式だけは整えた上で、病気腎移植を実施するのでしょう。非難しているのは、今だけです。もしかしたら、ほとぼりが冷めた頃、1~2年後には実施している可能性もあります。全面禁止ではなく、あくまで「「現時点では妥当性がない」といっているだけで、書面と倫理委員会と学会のお墨付きがあれば問題ないのですから。

もっとも恐ろしいのは今後のことです。日本移植学会は万波医師が病気腎移植を実施することは認めないでしょうから、今後は、技量の劣った(日本移植学会の)移植医が病気腎移植を実施することになるだろうということです。現時点において、万波医師が実施した病気腎の摘出・移植の妥当性を判断できていないのですから、本来、実施できるはずがないのですが。

ただでさえ難しい病腎移植なのですから、技量の劣った移植医が実施するとなると、病気腎移植により、術後、すぐに縫合不全などで死亡する患者がでてくることは必至です。万波医師では考えられなかったことです。


(2) 

 「「苦しむ患者を助けるためにやった」と主張する万波氏を、移植を受けた患者や学者の一部が擁護。透析患者の増加や慢性的な臓器提供不足の実情を指摘し、病気腎移植を「第三の道」として容認を求める声も出た。

 この日の合同学会でも、一部の委員から病気腎移植の容認を求める発言が出た。だが、日本移植学会が押し切り、統一見解をまとめるに至った。」


31日の合同学会では、出席者の誰もが、誰もいなくても「病腎移植否定」という結論が決定されていると分かっていました。誰もわかっていたのに、患者を救いたいという医師の本分をもった方が、あえて批判を声を上げたのです。学会という学問(医学)発展に寄与する場という意義を貫くならば、批判があったのですから、もっと検証した上で結論を出すというのが本来的な学会のあり方でした。

しかし、医師の本分からの声も無視して、本来的な学会のあり方に反して、「日本移植学会が押し切り、統一見解をまとめるに至った」のです。医師の本分からの声も無視し、本来的な学会のあり方に反した行動に対して、(産経新聞を除く)マスコミは非難しようしないのですから、不思議なことです。



(3) 

 「最終的には、見解の内容が後退したうえ、当初予定されていた5学会のうち日本病理学会、日本腎臓学会が今回は参加を見合わせた。代りに、日本移植学会副理事長が以前理事長だった日本臨床腎移植学会が参加する「数合わせ」で、権威を維持した形だ。

 ただ、日本腎臓学会も31日の合同会議には加わっており、今後、学会の理事会で了承されれば名を連ねるとしている。」

日本移植学会は、強引に結論を出したかったのですが、それにひきづられるようでは“学会”の名が泣きます。ですから、日本病理学会は、学会の本来のあり方を貫いて、調査が不十分で結論出すことは止め、参加を見送りました。

結局は、「日本移植学会副理事長が以前理事長だった日本臨床腎移植学会が参加する「数合わせ」で、権威を維持」したというみっともない態度を露呈してしまいました。こんな分かりやすいことさえ、「数合わせ」と皮肉ったのは産経新聞だけでしたから、いかにマスコミ報道がおかしくなっていることがわかります。



(4) 田中理事長は、

「移植をやる人は学会に入ってほしい。学会で決まったことはすべてお知らせするので、万波先生にもぜひ入っていただきたい」

などと述べています。

病腎摘出移植の術式を良し悪しを判断できない医師集団に入っても、万波医師には何もメリットはありません。病腎移植発表を阻止するような、学問の自由、表現の自由の侵害でさえ、厭わない名ばかりの学会なのです。「決まったことを知らせる」だけなら、意味がありません。ただ入るだけなら、犬や猫でも十分です。

田中理事長の誘いは、実に不可解です。




3.万波医師らは、書面や倫理委員会などのルールを欠いていた場合があったため、日本移植学会にまんまとつけこまれてしまいました。

しかし、倫理委員会はそれほど大層なものなのでしょうか? 

読売新聞は、大学病院や、その母体の大学医学部などを対象に倫理委員会の調査を行っていました(87施設が回答で、回収率85%。読売新聞平成19年3月13日付朝刊27面)。

 「承認率は全般に高く、委員会平均で93%に達する。……情報公開では、誰でも会議を傍聴できるのは、名古屋大の医学部倫理委員会と、大阪府立成人病センターの倫理委員会だけ。57%は病院内部の人も傍聴不可だった。」 

 「倫理審査の対象は、各種の研究、個別の医療行為など幅広い。計70項目のテーマを選び、「すべて申請が必要」「申請があった時だけ審査する」「審査なしで実施可能」などの選択肢から答えてもらった。……

……個別の医療行為の扱いは……「従来行われていない手術方法」は、義務付けが46、申請主義が28だった。

 生体肝移植を実施する69施設では、24施設が全例を個別審査しているのに対し、22施設は審査なしで実施。親族間の腎移植は8施設が個別審査を行う一方、50施設は「保険適用される通常の医療」などとして審査なしで認めている。」


日本移植学会やマスコミが強調する倫理委員会も、大学病院の倫理委員会でさえ、ほとんど承認し、ほとんど非公開で、腎移植では親族間でもほとんど審査していないのです。
こんなあってないがごときの現状なのに、倫理委員会がなかったことを非難するのですから、苦笑せざるを得ません。


<追記>で、宇和島徳洲会病院の専門委員会委員を努めた、日本病理学会理事の堤寛(ゆたか)・藤田保健衛生大学医学部教授の「良心の手紙」を掲載した記事(産経新聞)を引用しました。

この記事によると、堤寛教授は、「手を尽くした末の最後の手段としてしか病腎の摘出を選択しなかった」のではないかと力説したのに、新聞報道では、病腎移植の「全員一致で全症例が否定された」とゆがめて報じられました。病腎移植否定という「結論ありき」だったのです。


「結論ありき」で万波医師らを非難したところで、ドナー不毒の現状はまったく改善されません。法的拘束力はないとしても、今回の声明によって病腎移植は「現時点」では実施されず、その結果、移植を受けられる患者が減ってしまいました。より悪化したのです。

「断罪して幕引きを図るだけ」(中国新聞平成19年4月2日付社説)

では、誰も救われないまま、ただ日本移植学会が優越感に浸っただけなのです。




<追記>

産経新聞平成19年3月31日付朝刊31面には、宇和島徳洲会病院の専門委員会の病理医が出した「良心の手紙」の内容が掲載されています。

 「病腎移植の芽「残したい…」 病理医が「良心の手紙」

 2月下旬、病腎移植の再開を求める活動をしている岡山市の弁護士(54)に1通の手紙が届いた。差出人は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で行われた病腎移植について医学的検証を委嘱された病理医。万波誠医師(66)が行った一連の病腎移植に厳しい見解を示した専門委員会の一員だが、手紙では「病腎移植の芽をつぶしてはいけない」と本心を語り、厳しい見解への「違和感」もつづっている。医師が発した「良心の声」は、医学界の揺れる立場を映している。(石塚健司)


ゆがめられた報告書…「結論ありきだった」

 手紙を書いたのは、日本病理学会理事の堤寛(ゆたか)・藤田保健衛生大学医学部教授(55)。産経新聞の取材に「多くの患者さんのために、私が発言しなければならない」と語り、手紙の公表に承諾した。

 堤教授は、宇和島徳洲会病院の調査委員会が病腎移植症例の検証のため関係各学会などに派遣を受けた専門委員会(6人)に参加。昨年12月からカルテ閲覧や聞き取りなどの調査を進めてきた。

 専門委が2月18日、調査委に出した報告書は、「倫理的にも科学的にも許されない」(移植担当委員)、病腎の摘出も「移植目的の手術で全症例が不適切」(泌尿器科担当委員)など否定的なものだった。

 だが、堤教授が見た万波医師の実像は、調査前に持っていたイメージと違うものだったという。

■   ■

患者に向かう姿勢に深い共感

 「万波医師の患者に向かう姿勢に深い共感を持っております。『すごい人がいる』が私の実感です。彼は患者に寄り添っています。よほどの自信と信頼がなければできないことです」

 病腎移植を受けた患者の多くが、親族からの生体腎移植を受けた後に病気を再発し、しかも通常移植より高齢で、病腎以外にドナー(臓器提供者)を得られない身だったこと。都会の医療を受けられる経済状態ではなく、透析生活のつらさに耐えられず、移植を強く望んでいたこと。患者たちの生存率が、年齢や健康状態のわりには死体腎、生体腎に劣らないこと。それらの事実に心を動かされ、「患者さんの経済状態を考慮し、最小限の検査で診療したことも痛いほど分かりました」とも記している。

 ただ、万波医師は病腎移植にあたって倫理審査を行わず、カルテの記録もずさんで、患者やドナーへのインフォームド・コンセント(説明と同意)の手続きを文書化していなかった。これらは、新しい医療を行う上で致命的な誤りというしかなかった。

 「彼にもう少し欲があれば、科学的志向性が強ければ、まったく違う展開になったでしょう。残念です。でも、それがあの人の人となりなのでしょう」

■   ■

 堤教授は専門委の討議の場でも、こうした考えを力説した。だが、報告書には盛り込まれず、翌日の新聞では「全員一致で全症例が否定された」とゆがめて報じられた。

 「びっくりしました。一体どうなっているのでしょう。私の認識と随分違うからです。学会とは融通のきかないものですね。それに輪をかけてマスコミはひどい」

 関係学会による病腎移植「原則禁止」の統一見解に向けた根回しが進む中で、学会の会合が開かれるたび、「万波医師がB型肝炎感染者の腎臓を移植した」などと、事実と異なる情報が流布されたことに不快感を示している。

 専門委では、移植に使われた腎がんの腎臓の摘出3例について、「4センチ未満の腫瘍(しゅよう)は摘出しないのが常識」との理由から「移植ありきの不必要な手術」と断じられた。

 この「常識」を「現実離れしている」と感じた堤教授は今、各地の医師たちにメールを送り、腎がんの摘出例についてのデータを募っている。既に多くの病院から、4センチ未満でも大半が摘出されていることを示す報告が寄せられている。

 「初めから結論ありきという雰囲気の検証作業だった」と振り返る。

 万波医師は、手を尽くした末の最後の手段としてしか病腎の摘出を選択しなかったと堤教授は確信している。だが、専門委は万波医師に、質問に答える以外は発言を許さず、「教科書にない」「記録がない」などの理由で主張を退けた。

 万波医師は確かに日本の移植医療のルールを無視した。だが、「患者さんのためだけを思い、名誉欲などみじんもない医者をいじめてどうするのか」。学会に対する思いだ。

 日本移植学会などは31日、病腎移植に関する統一見解を取りまとめる。

 「基準を甘くしろとは言いません。でも、患者さんたちの声にもっと耳を傾けるべきではないでしょうか」

 堤教授はそう訴えている。

(2007/03/31 13:33)」





テーマ:社会ニュース - ジャンル:ニュース

コメント
この記事へのコメント
基準
こんばんは。
新聞報道で流された学会見解が条件付き否定に後退していたのは自分も苦々しい思いで眺めました。将来を見越してのアリバイ作りとしか読めません。
どうせ彼らには病腎移植なぞできないだろうと思っていましたが、できない輩に手出しをさせる体制を構築する力が学会にはあるわけです。軽々しく当てつけるものじゃありませんね。反省。

大島伸一氏は3年ほど前にも日本醫事新報に専門職能集団として学会が何をすべきかといった記事を書いています。(『日本醫事新報』4165、2004.2.21、73~76頁)
腹腔鏡手術失敗による患者死亡事故(2002年11月)が明るみに出たのが2003年9月、それを受けて書かれた記事です。当時かれは日本Endourology・ESWL学会理事長、日本内視鏡外科学会及び日本泌尿器科学会の理事で、移植学会の幹部ではなかったのですが、ちょっと気になる記事でした。
文中で医療を受ける側と提供する側、双方の立場を併記し、いろいろ悩ましい状況にあるのだと書いた上ではありますが、結論としては、
「医療事故は今後も減らせない、できることはいかに事故を少なくするかであるが、充実した教育プログラムを医学生から専門医にいたるまで準備し実行するのは時間がかかる、むしろ事故の際の検証作業とフィードバックが最重要かつ優先度が高い課題であり、これを成せる仕組みの構築が急務であって、それには専門職能団体の参加が不可欠だ。医療事故に遭った者の救済は重要な課題だが刑罰強化が事故防止と医療の質的向上に益するかどうか慎重に考えるべきで、補償は自動車保険で整備されているような無過失賠償制度を含めた制度設計を」と述べています。
移植学会副理事長として文書によるインフォームドコンセントというものを極めて重視する(まるでそれが法的根拠を有しているかのような)見解をばらまき続けるいまの姿勢と通底するものが現れているように思えます。
彼が「医療事故の報道を受けて医師が萎縮しかねない、我々(かれら)が後顧の憂いなくのびのびと手術できるようにしなくちゃならん」と言っているようにも見えます。同意書が医者側を守るものだというこのサイトでの見解はじつに正しい。
また、教育プログラム充実による事故の「予防」ではなくて、起こった後の対処内容を充実させるべきと言っている。かかるコスト(時間・予算)の事だけを考えれば一面においては正しいのでしょう。起こってしまう事故の下で命や人生が失われていく事を無視できさえすれば。
さらに不安に思えるのは、本文前段部分で大島氏が述べているガイドライン策定に関する議論のくだりです。
腹腔鏡下手術(前立腺全摘)のガイドライン策定において、「術者としての充分な技量を求めるのか、最低の基準を定めのか」で議論が大きく分かれ、最終的に「独立して腹腔鏡下手術を行うのに必要な最低の基準を定める方向で決着が付いた」のだそうです。
彼自身の見解がどちら側だったのかは明確にされていませんし、最低基準で決定されたという指針の内容を客観的に評価する力を私は持ちません。よってこれを彼の責に帰するのはお門違いだとは思うのですが、難しい技術を要する術式のガイドライン策定で最低基準を採用した先例に関わっていた人物が移植学会の重鎮となり、今度の学会見解作成に臨んでいたのは私のような素人をなんとなく不安にさせます。
そこで今回の報道に戻ると、産経報道にみえる田中コメント「ルールにのっとったものであれば将来の病気腎移植の可能性は否定しない」。
上記のような先例に関わった人々が同じような理屈に基づいて、技量が充分でない医者にもできる病気腎移植のルールを策定してしまうかも知れないのですよね。
これは妄想ですが、そのとき彼らは「患者が求めたことを専門職能団体(大島語彙)として真摯に議論し医療手段として確立したものを提供している」、お前たちが望んだことだナニが悪い、と開き直るんではないでしょうか。
万波医師らが現役を退いた後で政治家みたいな医師が会議でガイドラインを決め、それも高等技術をもつ者にしかやらせんのではなくて最低限必要な技量の大枠だけ決めて、その結果下手糞がよってたかって腕試しに乗り出す。悪夢です(縫合不全なんて下手の証のような気が…)。
妄想のついでにもう一つ。
「腎移植の認定医制度創設へ 日本臨床腎移植学会」
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20070301010007411.asp
この認定医制度と連関させてルールを決めれば、万波医師らには関与させずに自分達で病気腎移植を行える環境が整います。懲罰的選択により、万波医師らを認定医から外した上で、病気腎移植は学会が定める一定の基準(最低限の技量水準のことですが)を満たす認定医にのみこれを認める、とすれば良いのですし。

学会が専門家集団として認知され信頼を得るためには、学術集団として医学の発展に寄与するという内に向けての役割だけでなく、専門職能集団を自認する団体として、社会に対する役割と責任を果たさねばならぬ(前掲論文)、と大島氏は言います。「提供する医療内容は科学的根拠に基づくものでなければならず、これを行う医師は一定水準以上の技術を有している必要がある」(同)とも。
私は本件報道にあらわれる日本移植学会の姿勢をみてこの学会を専門家集団として信頼する気にはなれません。
本件について移植学会が自分達主導による病気腎移植を考えているすれば、彼らは今後その「一定水準」をどこらへんにもってくるでしょうか? また、科学的根拠をちゃんと理解し自覚できているのか?
今後の情勢には注意を払わないといけませんね。

(論文については掲載媒体が一般誌ではない=医療従事者向け記事であること、ならびに私は素人なので読み方がなっとらん可能性を付記します)
2007/04/03 Tue 23:17:29
URL | 東雲 #-[ 編集 ]
>東雲 さん
コメントありがとうございます。


>新聞報道で流された学会見解が条件付き否定に後退していたのは自分
>も苦々しい思いで眺めました

「現時点では妥当でない」なんて、「なんだそりゃ?」と思いました。一体、何をしたいのか疑問に思い、このようなエントリー内容となりました。

新聞報道といえば、新聞の見出しは、「全否定」と「現時点では妥当性なし」に二分されてましたが、内容的には、「現時点では妥当性ない」というものでした。毎日新聞を除けば。


>大島伸一氏は3年ほど前にも日本醫事新報に専門職能集団として学会
>が何をすべきかといった記事を書いています。
>(『日本醫事新報』4165、2004.2.21、73~76頁)

情報ありがとうございます。


>最終的に「独立して腹腔鏡下手術を行うのに必要な最低の基準を定める
>方向で決着が付いた」のだそうです。
>上記のような先例に関わった人々が同じような理屈に基づいて、技量が
>充分でない医者にもできる病気腎移植のルールを策定してしまうかも
>知れない

確かに共通性がありますね。本来は、優れた技量を必要とする手術であるのに、病腎移植も最低の基準で実施ということになるのでしょうね……。憂鬱です。


>万波医師らが現役を退いた後で政治家みたいな医師が会議で
>ガイドラインを決め
>最低限必要な技量の大枠だけ決めて、その結果下手糞が
>よってたかって腕試しに乗り出す。悪夢です

万波医師は、パワフルな人ですから、普通の医師よりも長く現役でいられるとは思いますが、それほど長期に現役というわけにはいかないでしょう。日本移植学会が、問題点はあっても、病腎移植推進の道を選んでいたら(考えにくいですが)、技術を継承して、より良い未来が待っていたでしょうに。

仰るとおり、病腎移植を実施しても、およそできる能力がない医師が実施することになるでしょうから、まさに「悪夢」ですね。


>「腎移植の認定医制度創設へ 日本臨床腎移植学会」
>懲罰的選択により、万波医師らを認定医から外した上で

情報ありがとうございます。仰るとおり、万波医師は認定医にはなれないでしょうね。

一定の技量を確保しようということ自体は良いことだと思います。
でも、患者が必要としているのは、優れた技量と実績のある医師が必要なのですから、患者にとってはあまり意味がないものです。万波医師らが認定医でなくても、優れた技量と実績があるのですから、万波医師らにとっては、認定医なんて関係ないですね。


>私は本件報道にあらわれる日本移植学会の姿勢をみてこの学会を専門家
>集団として信頼する気にはなれません。

今回の日本移植学会の対応を見ていると、専門医といってもこれほどの差があるのかと驚きでした。腎全摘が主流であるのに、それを知らずに戻せという発言をするようでは、専門医の医療水準を満たしているとは思えません。これでは、医療過誤があったら、日本移植学会の医師は敗訴確実になってしまいそうです。

もう1つは、こんなにも患者の意見を無視する医師が多いのかということです。医療というのは患者のためだと思っていたのですが、根本的に覆された思いでした。


>彼らは今後その「一定水準」をどこらへんにもってくるでしょうか?
>また、科学的根拠をちゃんと理解し自覚できているのか?

一定水準は、一般の移植医程度……ならまだいいのですが、もっと低いんでしょうね。将来の病腎移植が学会主導で行うことに、ひどく憂鬱な気分になりました。
2007/04/04 Wed 23:15:58
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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