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2007/03/25 [Sun] 16:54:26 » E d i t
万波誠医師(66)が、5月に米・サンフランシスコで開かれる米国移植学会議で予定していた病気腎移植についての発表が、中止されました。
この、大変残念で、驚くべき展開になったのは、日本移植学会(田中紘一理事長)が米国移植学会に対して、「日本で大きな問題となっている」と勝手に決め付けた書簡を送りつけるという嫌がらせをしたためです。 「地獄への道は善意で舗装されている」さんの「藤田士郎先生からの情報(2007/3/23(金) 午後 7:06)では、いち早く触れています。この報道についてコメントしたいと思います。(追記:紙面の頁数を追記しました)


1.報道記事から。

(1) FNN(フジニュースネットワーク)2007/03/24 12:35 取材: テレビ愛媛

病気腎移植問題 米移植学会、5月に予定されていた総会での万波医師の発表を取りやめ

--------------------------------------------------------------------------------
 万波 誠医師(66)による病気腎移植問題で、アメリカ移植学会が5月にサンフランシスコで開く総会で予定していた万波医師の発表を、取りやめることがわかった。

 万波医師は「(渡米を)中止にされたということで、大変残念だとは思います。(今後)話を聞いていただけるなら、どこへでも出て行きたい」と語った。

 アメリカ移植学会はこれまで、病気腎移植を先進的な医療として評価する姿勢を見せていたが、日本時間の24日未明、万波医師にメールを送り、「再検討した結果、時期尚早と判断した」と、総会の演題から外すことを正式に伝えた。

 日本移植学会は3月13日、アメリカ移植学会に対し、「万波医師の発表は不適切である」と指摘する手紙を送っていて、これを受け、アメリカ側が対応を一転させたものとみられている。」



(2) 毎日新聞 2007年3月24日 19時36分 (最終更新時間 3月24日 21時04分)(3月25日付13版30面で1段落目まで小さく掲載)

 「病気腎移植:万波医師の米学会発表が中止に 「時期尚早」

 病気腎移植を手がけてきた宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)が、5月に米・サンフランシスコで開かれる米国移植学会議で予定していた病気腎移植についての発表が、中止されたことが分かった。

 万波医師によると、発表を仲介した米国在住の日本人移植医に同会議側から「時期尚早」などを理由に中止を告げるメールが届いた。万波医師は24日朝に電話で知らされたという。万波医師は「突然のことで理由は分からないが、いったん決まっていたことなので残念。英語の練習もしていたのに」と話した。

 万波医師は同会議で、病気腎移植患者の術後経過などの発表を予定していた。日本移植学会は田中紘一理事長名で「論文発表は不適切」と指摘した文書を今月、会議を開く米国移植外科学会の理事長に送付。文書による患者のインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)や倫理委員会の承認がなく、日本で大きな問題となっていることを説明しており、この文書を受けて中止が決められたとみられる。【津久井達】

毎日新聞 2007年3月24日 19時36分 (最終更新時間 3月24日 21時04分)」



(3) 産経新聞3月25日付1・2面(2007/03/25 02:56)

 「米移植学会、万波医師の論文発表中止 日本学会の再考要請受け

 病腎移植問題で、日本移植学会(田中紘一理事長)が米国移植学会に対し、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らが5月に米学会で行う予定だった論文発表について再考を求める内容の書簡を送っていたことが分かった。これを受けて米移植学会は論文発表を見送ることを決め、関係者に通知した。

 日本の学会が出した書簡は、「万波医師の論文発表についての要請」の表題で、一連の病腎移植が倫理審査を経ずに行われるなど問題点が多く、現在日本で調査が進められている経緯などを説明した内容。「論文は米移植学会にふさわしくないと考えている」と結んでいる。田中理事長名で13日付で送付された。

 これを受けて、米学会側から万波医師の関係者に23日深夜(日本時間)、「時期尚早と判断した」などと論文採用の取り消しが伝えられた。

 論文は、病腎移植を受けた患者の生存率などを検証し、有効性を訴える内容。2月末に米国から採用が伝えられ、5月に米サンフランシスコで開かれる米移植学会と米移植外科学会の合同総会で万波医師らが発表することになっていた。

 米国に要請書を出した理由について、日本移植学会の関係者は、一連の移植が(1)倫理審査を経ずに行われ、患者への説明・同意の手続きの文書化もほとんどされていない(2)日本で社会問題化している-ことを米国側に知らせる義務があると判断したと説明している。

 同学会は、「瀬戸内グループ」の別の医師が米国の医学誌に投稿した病腎移植に関する論文についても、医学誌の編集部に経緯説明の書面を送る方針という。

(2007/03/25 02:56)」



「FNN(フジニュースネットワーク)2007/03/24 12:35」がいち早く報道したようです。なぜ中止になったのかについては、新聞社ではここで掲載した毎日新聞と産経新聞のみが触れていて、産経新聞が一番詳しいです。毎日新聞は、記事内容によって書き手を分けているようで、万波医師批判の場合には、科学環境部の記者主導、万波医師に有利な場合は津久井達記者が、となっています。

「万波医師は「突然のことで理由は分からないが、いったん決まっていたことなので残念。英語の練習もしていたのに」と話した。」

元々、万波医師も、きちんとした形で発表したいという意思を示していたのですから、やっと発表できるようになったと喜んでいたはずです。準備も着々と行ってきていたのに、突然中止になってしまったのですから、「残念」に留まらず、無念な思いでいるはずです。


(4) これに対して、読売新聞と朝日新聞は、なぜ中止になったのかについて、全く触れていません。中止の理由を書くと、日本移植学会が嫌がらせをしたことがバレてしまうからとはいえ、事実を隠蔽することは妥当ではありません。

 「病気腎移植、万波医師が米学会での発表中止へ

 病気腎移植問題で、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)は24日、米国・サンフランシスコで5月に予定していた米国移植学会議での病気腎移植の症例や術後経過に関する発表を中止にしたことを明らかにした。
 万波医師によると、24日未明に同学会議の担当者から米国在住の万波医師の知人に、メールで「今回は発表を見合わせてもらう」と連絡があった。詳しい理由はわからないという。
 万波医師は「準備を進めていただけに残念。世界的に臓器提供者が不足する中、移植先進国の米国で、病気腎移植がどのように評価、批判されるかを知りたかった。今後、発表が可能なら、どこへでも行きたい」と話している。
(2007年3月24日17時20分 読売新聞)」((読売新聞(2007年3月24日17時20分)(3月25日13版未掲載、14版25面で小さく掲載)


 「アメリカ移植学会で万波医師の症例発表不採用に
2007年03月24日23時20分

 宇和島徳洲会病院の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植で、万波医師は24日、5月上旬開催の米国移植学会で予定していた病気腎の症例発表が不採用になったことを明らかにした。同病院の調査委員会は万波医師の発表を踏まえて最終的な結論を出す意向を示していた。
 万波医師は病気腎移植にかかわっていた「瀬戸内グループ」の医師らと共同で抄録をまとめ、投稿。2月にいったん発表の演題に採用されたが、万波医師は24日朝、投稿の手続きをとったフロリダ大の移植医からの連絡で演題から外されることを知らされたという。「残念だけれども、受け入れられないと言われてしまったのだから仕方がない」と話している。」(asahi.com(2007年03月24日23時20分)。3月25日13版紙面には未掲載)




2.日本移植学会は、とうとう、こんなことまで仕出かしたのかという思いがしました。まさか、外国にまで妨害工作を行うなんて。どうかしているとしか思えません。

(1) 日本移植学会はかねてから、情報を公開して進めて行くべきであると述べ、読売新聞の科学部・阿利明美記者も「移植医療と同様に、調査も「オープン・フェア・ベスト」に行われなければ、日本の医療に新たな禍根を残しかねない。」として、宇和島徳洲会病院の調査委員会の調査結果を批判していました((野本・日本移植学会理事長(当時)へのNHKインタビュー読売新聞(2007年03月04日):[解説]公平「結論」ほど遠く)。

移植に関わる情報は公開すべきという主張自体は正しいのです。ならば、日本移植学会は、米国移植学会での論文発表を阻止するような書簡を送るべきではなかったのです。そして、読売新聞も、「オープン」を阻止する行動に出た日本移植学会に対して、厳しく批判すべきです。こんな矛盾した言動では、日本移植学会と読売新聞は到底信用できません。もっとも、日本移植学会の幹部は嘘つきばかりなので、いつもの行動だといえるでしょうが。読売新聞の科学部・阿利明美記者は、事実を隠蔽した自社の報道姿勢に対して恥ずかしくないのでしょうか? 

日本移植学会が日本国内で妨害工作を行ったのであれば、国内問題にとどまります。しかし、米国移植学会での病腎移植に関する論文の公表は、世界中の移植医が集まる場でしたから、世界的なドナー不足に対する一方法を示すものだったのです。日本移植学会の妨害工作は、世界の移植医療への発展を阻害し、世界中で移植を待っている患者への背信行為です。日本移植学会は、国際的に迷惑行為を行っているのです。こういう国際的に問題視される行動を行うことを黙認していては、日本人全体の名誉を毀損することになります。日本移植学会の行動は強く非難すべきものであり、二度とこのような恥知らずの行動をすべきではないのです。


(2) なぜ日本移植学会が嫌がらせ書簡を出したかについて、産経新聞(後掲)は次のように推測しています。

「要請書を出したことについて日本移植学会関係者は「インフォームド・コンセント(患者に対する説明と同意)文書なしの臨床論文は認められないのが常識だから」と説明し、強硬な姿勢だ。

一連の移植が倫理上の手続きを無視した行為だったことを米側が知らないまま、実績だけが脚光を浴びる事態を憂慮したとみられる。」

要するに、病腎移植を認めたくないという結論があるから、実績としても残したくないのです。病腎移植を行ったという客観的な事実があるのに。日本移植学会の偏狭な考え方がよく出ています。


(3) では、なぜ、米国移植学会側は中止したのでしょうか? 

学会は、学問的(医学的)発展に寄与する論文を発表する場です。ですから、日本移植学会が書簡を送ってきても、日本側の事情は米国では無関係ですし、論文に問題があったとしても会議の場で問いただせばよいことですから、発表を中止しなくてもよかったはずです。

おそらく米国移植学会としては、医学的発展に寄与する内容なのだから演題としたのに、わざわざ中止要請の書簡まで送りつけて医学の発展を妨害するような、ストーカーのような嫌がらせをする日本移植学会が、これ以上、米国移植学会に関わって欲しくないからなのでしょう。こう推測できます。




3.日本移植学会は、国際的に迷惑をかけてまで、病腎移植を否定するという結論を出すことを急いでいますが、こういう強引で独善的な行動に対しては、万波医師支援の立場以外の団体、医師からも批判がでています。

(1) 産経新聞(2007/03/25 02:57)

 「病腎問題 結論急ぎ…揺らぐ学会

 病腎移植の有効性に関する論文発表をめぐり、日本移植学会が米国移植学会に「待った」をかけた背景には、3月末に関係学会と合同で病腎移植「原則禁止」の統一見解を出す方針を固めた日本側の学会の立場がうかがえる。関係学会や移植患者団体の内部では、病腎移植の「全否定」に反発する動きも出ており、結論を急ぐ動きの足下で揺らぎも見えている。

 ■言い分

 要請書を出したことについて日本移植学会関係者は「インフォームド・コンセント(患者に対する説明と同意)文書なしの臨床論文は認められないのが常識だから」と説明し、強硬な姿勢だ。

 一連の移植が倫理上の手続きを無視した行為だったことを米側が知らないまま、実績だけが脚光を浴びる事態を憂慮したとみられる。

 これに対し、「万波論文」の発表申請を取り次いだ米国在住の藤田士朗・フロリダ大助教授は「多くの患者のために病腎移植の可能性を論じる場が奪われたのは残念だ。日本の学会は万波医師らが病腎移植を公表しなかったと批判してきたが、発表の機会を取り上げるのは矛盾している」と批判した。

 徳洲会側は、倫理面に重大な手落ちがあったことには「批判を甘んじて受ける」としているが、論文発表にまで“横やり”が入ったことには驚きを隠さない。

 ■紛糾した学会

 学会内部のおひざ元では、現場の臨床医などから「病腎全否定」に異論も出ている。

 2月28日に石川県のホテルで開かれた日本臨床腎移植学会。病腎移植について調査した臼木豊・駒沢大学法学部教授が講演の中で、「患者が病腎移植を自発的に望む場合は否定できない」との見解を述べた後、質疑応答は紛糾。会場から「オープンにやれば認めていいのでは」などの意見が出され、論争になった。

 この学会には、米移植学会の前会長が米国の移植事情についての講演を申し入れていた。講演はいったん受け入れられたが、後日取り消された。米側に伝えられた説明は「学会が近く病腎移植について結論を出すため時期が悪い」だった。米国ではドナー(臓器提供者)を拡大する動きが進み、がんの病腎移植も報告されていることが背景にあるとみられる。

 学会の関係者は「統一見解を出す前に異論を封じようとする雰囲気を強く感じる」と語る。

 宇和島徳洲会病院の調査委員会では、各学会から派遣された専門委員のうち、日本病理学会の委員が会議の場で、「10年、20年先の医療のために、病腎移植の芽を摘むべきでない」と力説していた。だが、専門委員の最終報告書にこの意見は一行も盛り込まれていない。関係した医師の間では「初めから結論ありきの論議だった」などと批判するメールが飛び交っている。

(2007/03/25 02:57)」



(2) 日本移植学会が、ともかく病腎移植を否定し、発表さえ阻止していたことは、ブログなどでは出ていました(「地獄への道は善意で舗装されている」さんの「藤田士郎フロリダ大学助教授の病気腎移植潰しに対しての見解」、「大島伸一・日本移植学会副理事長の“病気腎移植を容認できぬ理由”(東京新聞3月6日付)を検証~病気腎移植か、それとも入院患者全員がドナーか」)が、マスコミ報道されたのはこれが初めてではないかと思います。事実を隠蔽することなく報道した、産経新聞は高く評価できます。

 「学会内部のおひざ元では、現場の臨床医などから「病腎全否定」に異論も出ている。

 2月28日に石川県のホテルで開かれた日本臨床腎移植学会。病腎移植について調査した臼木豊・駒沢大学法学部教授が講演の中で、「患者が病腎移植を自発的に望む場合は否定できない」との見解を述べた後、質疑応答は紛糾。会場から「オープンにやれば認めていいのでは」などの意見が出され、論争になった。」


この記事は、愛媛新聞では、

 「臼木教授は「(病気腎移植を)法律で禁じる必要はなく、患者が本当に自発的に申し出た場合は否定できない」との考えを示す一方、他者に移植することをドナー側担当医が持ち掛ける行為は、自発的意思を担保する面から「絶対に駄目だ」と強調した。
 会場からは「患者側から摘出を申し出ることなどあり得ない」「根本的に間違った医療だ」などの声が上がる一方、「患者から申し出る『例外』もゼロではなく、オープンにやれば許される」との意見も出た。」(特集宇和島 腎移植2007年03月01日(木)付 愛媛新聞:「病気腎」を問題視 厚労省調査班員が講演 臨床腎移植学会

という紹介でした。この記事からは、紛糾したようには思えなかったのですが、日本移植学会は病気腎移植(摘出も含む)全否定の結論のために、米国移植学会への妨害工作をしたことも考慮すると、全否定できないという臼木教授の見解への反発は当然であり、質疑応答は紛糾し、論争になったという見方の方が妥当でしょう。

刑法上、治療行為が適法(刑法35条(正当業務行為))となるための要件としては、

<1>治療目的
<2>医学上の法則に従うこと
<3>患者の同意

の3点が挙げられています(前田雅英著「刑法総論講義(第4版)(2006年、東京大学出版会)308頁)。

現在では、個人の尊重(憲法13条)からすると、“自分の生き方は自分で決める”ことが基本なのですから、<3>の要件が最も重要であって、患者が、医師からこれから行おうとする医療行為について十分に説明を受けた上で、納得して同意をしたのであれば、適法であるのです(「病気腎移植問題~病気腎元患者は「摘出誘導なく、納得している」と証言」)。患者の意思の尊重こそがもっとも大事なことだということです。

そうすると、臼木豊・駒沢大学法学部教授(刑法)が講演の中で、「患者が病腎移植を自発的に望む場合は否定できない」との見解を述べたそうですが、患者が病腎移植に自発的に望むのであれば適法であるという見解は、刑法上妥当であり、臼木教授だけでなく、刑法学者なら異論なく、適法と考えているというべきです。自発的でなくても、移植を持ちかけられて情報を与えられた上で同意した場合には、それも患者の意思ですから、適法となるはずですが。それなのに、日本臨床腎移植学会では、問題視されたようです。不思議なことです。


「この学会には、米移植学会の前会長が米国の移植事情についての講演を申し入れていた。講演はいったん受け入れられたが、後日取り消された。米側に伝えられた説明は「学会が近く病腎移植について結論を出すため時期が悪い」だった。米国ではドナー(臓器提供者)を拡大する動きが進み、がんの病腎移植も報告されていることが背景にあるとみられる。

 学会の関係者は「統一見解を出す前に異論を封じようとする雰囲気を強く感じる」と語る。」

すでに、この内容は、「地獄への道は善意で舗装されている」さんの「藤田士郎フロリダ大学助教授の病気腎移植潰しに対しての見解」(この記述を引用したのが、「大島伸一・日本移植学会副理事長の“病気腎移植を容認できぬ理由”(東京新聞3月6日付)を検証~病気腎移植か、それとも入院患者全員がドナーか」))において触れていた事実ですが、マスコミ報道されたことが重要です。やっとこの事実を報道する勇気のある報道機関がでてきました。

医療は透明性が必要だ、とか、移植情報は公開すべきであると、口では言いながら、日本移植学会の幹部の息のかかった学会は、自ら、病気腎移植の発表を阻止し、病気腎移植の実情を見ようとしないのです。


この記事には出ていませんが、日本病理学会は、3月13日に開かれた学会の理事会、総会で、日本移植学会などの5学会の統一見解に「参加しない」ことを正式に決定しています(読売新聞「病気腎統一見解に病理学会は不参加」(2007年03月15日)参照)。日本病理学会も、病腎移植を全否定する日本移植学会とは距離を置くことを決めたのです(詳しくは、東京新聞3月25日付。明日紹介)。

日本移植学会が、虚偽情報を流し続けるといった「度重なる悪質な行動」を行い、病腎移植否定のため、情報公開さえも阻止するといった「強引で独善的な行動」には、批判も強くなってきていると感じます。

病腎移植に否定的な立場であっても、梅毒感染した臓器を移植したなどという虚偽情報に踊らされるマスコミ報道に惑わされることなく、今こそ冷静さを取り戻して、情報を精査して、病腎移植の法律的・医学的妥当性を考えてほしいと思うのです。

テーマ:社会ニュース - ジャンル:ニュース

コメント
この記事へのコメント
悲しい知らせです。
春霞さま。こんにちは。

今回の報道はさすがに唖然としました。以前より5月の学会発表について妨害工作が行われているとは聞いていましたが、実際にそれが成功するとは思いませんでした。

しかし、日本移植学会がこのような行動に出る、というより、出ざるを得ないだろう、全力を持って万波グループの学会発表を阻止にかかるだろう、ということは、ある程度予想できていました。

『日本医療新報』3月10日号に、「病腎移植の何が問題なのか─「二つの医療」と医師集団の責任」と題して掲載された大島伸一氏の文章を、1週間ほど前に読みました。だいぶうろ覚えのところもあり、やや主観的に要約させていただきますと(正確な文章の趣旨については、現物をご覧になってください)、

「世間の目からは、我々学会は、時代劇の悪代官のように、権威を振りかざして庶民をいじめる存在にみえるようだ。」
「我々が目指す、適正な医療はなかなか支持を受けにくい。一般の人々には、万波グループ(本文では一度も名指しされてませんが、まあ明らかです)のように、『何だか怪しげなことを行っているけれど、患者さんからは受けがよくて、病気もチョコチョコ治す』という、村のまじない師のような医者を欲しがっているのかもしれない。そう考えると、今まで正しいと思ってしてきたことが虚しい。」

というような趣旨のことが書かれていました。

うろ覚えですから、この本文には直接依拠しません(また、上記要約をそのまま引用なさることは固く遠慮させていただきます)が、それでもここには、日本移植学会側が今回の問題について一貫して主張してきた図式があらわれています。すなわち、

移植学会=中央で、最先端の医療を研究し、正しい治療を実践する医者たち
万波グループ=地方で、医学界の動向に全く興味がなく、なんやら見様見真似で不思議なことをして、それを「移植」と称している、田舎の怪しげなおじさんたち

というものです。で、この構図に則って、万波グループを批判している。

しかし、現実はどうか?かつて毎日新聞のインタビューに答えて、大阪大学の高原医師は、「日本の移植医療は世界に誇れる内容を持っている。たとえばABO血液型不適合移植などだ」と述べていました。(すいません、こちらもネットでは見つからず、うろ覚えで引用してます。)けれども、愛媛新聞の特集

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/zokibaibai/

で報告されたように、実はABO血液型不適合移植は東京女子医大と万波誠医師が時をほぼ同じくして開発した技法で、当時から万波医師は日本の移植医療の先端を行く一人であったといえます。

学会としては、そうした事実を世間の目から隠し、自分たちの描いた図式通り「正しく最先端の中央のお医者さんVS田舎の怪しげなまじない師」と断定することに、自らの批判の中心を置いており、この点がおそらく彼らの主張の生命線になります。ですから、全米移植外科学会などという公の場で、先端医療の一つとして万波グループの発表がなされると、自分たちの批判の根底が覆されることになりかねません。そのことを考えると、日本移植学会側が相当に強硬な態度に出たであろうことも、十分に首肯できます。

さて、学会発表の先行きはどうなるでしょう?今回の病気腎移植については、臓器売買事件との絡みで前倒しの公表となってしまいましたが、万波医師はおそらくもっと先になってからの発表を本来予定していたことでしょう。先に挙げたABO血液型不適合移植は、愛媛新聞によれば、90年に最初の成功例を記録した後、論文にまとめたのは2004年、つまり、「成功したからすぐに発表する」ではなく、おそらくは「成功の後、手法の行き先、患者の予後などを十分に見きわめた後に発表する」というのが、万波医師のスタンスのようです。それを考えると、万波医師本人は意外に「予定どおり、もっと先行きを見きわめてから発表すればいいことだ」とひょっとすると思っているかもしれない――とでも想像しない限りは、悔しい気持ちのやりどころのない結果ですね、今回の件は!

なお、日本移植学会側は、

「 要請書を出したことについて日本移植学会関係者は「インフォームド・コンセント(患者に対する説明と同意)文書なしの臨床論文は認められないのが常識だから」と説明し、強硬な姿勢だ。」

と主張していますが、この件について、発表者の一人である藤田士朗氏から、氏が今回の決定前にmixiにアップされた文章の引用をご快諾いただきましたので、次にそのまま掲載いたします。

*****
(冒頭段落は藤田氏に寄せられた質問文です。第2段落以降が氏の文章になります。)

疑問4、「ドナーとレシピエントがリスクと利益を完全に理解しているならば容認できる。」 まともなインフォームドコンセントの記録がないことをハワード先生にきちんと教えてあげてよ(笑)

<ハワード先生にも、十分な記載されたインフォームドコンセントが存在しない症例が含まれていることをお知らせしています。彼の回答は「実はアメリカでも有名なメイヨーク リニックなども、ほとんど患者にサインをさせるようなインフォームドコンセントは取っていないし、全く問題ないとのことでした」確かに、そういえば、前にメイヨーの先生とお話したときに、「患者はメイヨークリニックを信頼してきている。信頼できないような患者はお断りする」と言った上で、患者にあまり情報を与えていないことを教えてくれました。

アメリカはプラグマティズムの世界で、インフォームドコンセントだけは一所懸命に取って、手術がよく失敗して訴訟を受ける医者よりも、いい加減なインフォームドコンセントでも手術がうまく誰からも文句を受けない医者を大切にする国です。

いろいろな先生に聞いてみましたが、インフォームドコンセントのことを問題とされた先生はこれまでのところいません。書いたものよりも、よく患者と話して、信頼を得ていることの方がはるかに大切であることを、病院のリスクマネージメント部門もよく理解してます。

*****

少なくとも、日本移植学会が主張する「インフォード・コンセント文書の有無」が発表キャンセルの主理由ではないだろうと思われます。
2007/03/25 Sun 18:14:35
URL | 語学教師 #va74bd7o[ 編集 ]
>語学教師さん
コメントありがとうございます。


>『日本医療新報』3月10日号
>日本移植学会側が今回の問題について一貫して主張してきた図式が
>あらわれています

情報ありがとうございます。
主張どおり、妨害したというわけですね……。


>全米移植外科学会などという公の場で、先端医療の一つとして万波
>グループの発表がなされると、自分たちの批判の根底が覆されること
>になりかねません

そのあたりが、嫌がらせ書簡を出した本音なんでしょう。


>発表者の一人である藤田士朗氏から、氏が今回の決定前にmixiに
>アップされた文章の引用をご快諾いただきました

ありがとうございます。藤田氏と、許可を頂いた語学教師さんに感謝します。


>ハワード先生にも、十分な記載されたインフォームドコンセントが
>存在しない症例が含まれていることをお知らせしています。

隠さず話していたんですね。なるほど。そうなると、ATCは、知った上で演題として認めていたんでしょうね。


>彼の回答は「実はアメリカでも有名なメイヨーク リニックなども、
>ほとんど患者にサインをさせるようなインフォームドコンセントは
>取っていない
>いろいろな先生に聞いてみましたが、インフォームドコンセントの
>ことを問題とされた先生はこれまでのところいません。書いたものよりも、
>よく患者と話して、信頼を得ていることの方がはるかに大切である

患者に誠実に話して、信頼を得ることが大事なんですね。インフォームドコンセントの文書化は、必ずしも必要ないというのもうなづけるところがあります。

日本の医療過誤裁判でも、同意書や説明書があっても、医師が免責されることはなく、実際上はなんの意味もありません。インフォームドコンセントに書面が必要だという判例もありません。口頭で十分に説明したかどうかが問題になるのです。

近年、日本の医療機関はやたらと同意書や説明書を何十枚も配布していて患者はワケが分からず困っているようですが、説明することが大事なのに、勘違いも甚だしいと思います。
患者にとっては、紙でなく、出来るだけ分かりやすく説明してもらって、専門的で分からないところは委ねるしかない以上、信頼できるかどうかが重要なのに。

信頼関係よりも、文書を大事にする、日本移植学会。ここでも、日本移植学会が、医療や患者に臨む姿勢が分かります。


>日本移植学会が主張する「インフォード・コンセント文書の有無」が
>発表キャンセルの主理由ではないだろう

きっと、そうなんでしょう。そうすると、中止にした本当の理由(本音?)はどうなんでしょうね? エントリー中では推測してみましたが。
2007/03/26 Mon 21:39:13
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
春霞さん、トラックバックありがとうございました。お礼が遅くなり失礼しました。
日本移植学会の横やりは許せません。
万波先生等のアメリカ学会での中止はほんとうに残念無念です。
2007/03/30 Fri 01:44:05
URL | hiroyuki #-[ 編集 ]
>hiroyuki さん
コメントありがとうございます。


>トラックバックありがとうございました。

こちらこそTBありがとうございます。


>日本移植学会の横やりは許せません。

日本移植学会は、発表しろと言っていたのに、発表を阻止するのですから、わけが分かりません。いまだに不思議に思います。
論文発表して批判されるなら、それも医学の発展につながるのですから、より良いことなのです。また、評価されるならば、患者の利益につながります。

こうして学問研究の一環としてブログを書いている立場としては、「なぜ、学問(研究)の自由の主張がいけないのか?」、理解を超えるものです。
2007/03/31 Sat 23:58:47
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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