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2007/03/19 [Mon] 00:41:16 » E d i t
政府は3月13日、犯罪被害者が刑事裁判で被告人に直接質問を行う「被害者参加制度」や、犯罪被害者などによる損害賠償請求について刑事手続の成果を利用する「付帯私訴制度」を盛り込んだ刑事訴訟法改正案などを閣議決定し、改正案は国会に上程されました。この改正案の施行は「公布後1年6カ月以内」とされているので、今国会で成立すれば、裁判員制度より半年ほど早い08年秋ごろにスタートする見通しだそうです(毎日新聞 2007年3月13日 12時44分)。

この改正案はかなり色々な改正(<1>被害者側に公判記録の閲覧・謄写を原則認める<2>性犯罪などの公判で被害者の名前や住所などを明らかにしないことができる<3>民事裁判で性犯罪などの被害者が法廷外からモニターを通じて証言できる)を含みますし、それぞれ論じることがあるのですが、このエントリーでは、「被害者参加制度」についてのみ触れたいと思います。<追記>として、幾つかの資料を掲載しておきます。


1.東京新聞平成19年3月17付朝刊「こちら特報部」

 「厳罰化に拍車? 「被害者裁判参加制」に懸念

 刑事裁判で被害者や遺族が直接、被告を質(ただ)すことが可能になる「被害者参加制度」導入などに伴う刑事訴訟法改正案が国会に上程された。法案の是非に被害者たちの反応は二分。法曹関係者の間でも「厳罰化促進の材料では」「被害者の心のケアにつながるのか」といった疑問は少なくない。

 被害者参加制度は犯罪被害者や遺族が検察側を通じて申告し、裁判所が許可すれば、証人尋問のほかに被告人に対する直接質問、さらには検察官の論告と同じような最終意見陳述ができるという制度。対象となる事件は故意や過失で人を死傷させた罪や強制わいせつ、逮捕および監禁罪、誘拐や人身売買などだ。

◆「推定無罪」の原則どうなる

 この新制度について、都内の弁護士の一人は「疑わしきは被告人の利益にという『推定無罪』の原則を覆しかねない」と懸念する。

 「被害者や遺族の声が無視されがちという批判は分かるが、これまでも被害者らの意見陳述は法廷で可能だった。問題は新制度が裁判の公正さを崩しかねない点だ。裁判中は被告人が有罪か否か、故意か過失かは分からない。正当防衛が絡めば、被害者と加害者が逆転する場合も出てくる。それなのに被害者の先入観や感情が法廷に持ち込まれれば、偏見が幅を利かせ冷静な判断を妨げかねない」

 こうした視点から、法曹界の一部では新制度導入の前提として、被害者らが参加しない事実審と、被害者もかかわる量刑審に分ける必要も指摘されている。

 ただ、量刑が被害者や遺族感情で左右されること自体を懸念する声がある。死刑廃止運動に携わる弁護士の菊田幸一氏は「当局には新制度により司法の厳罰化の流れを加速させる狙いがあるのでは」と疑う。

 厳罰化の流れは数字からも明確だ。2006年版「犯罪白書」によると、一般刑法犯の数は03年から減少傾向で、殺人など凶悪犯も増えていない。一方、1990年以降の、その年の死刑確定者数は、03年まで年間一けただったが、04年は14人、05年は11人、06年は21人と急増中だ。

 菊田氏は「犯罪の増加も治安の悪化もない。となれば(厳罰化の)支えは社会に受け入れやすい被害者感情になる。この論調には判事も人の子なので逆らえない。私的な報復を禁じる近代刑法の根幹を揺るがされている」と危惧(きぐ)する。

◆遺族ら「癒しになるか疑問」

 一方、被害者や遺族は法廷に登場し、厳罰化を進めることで癒されるのか。

 積極論に立つ遺族らがいる半面、慎重論をとる遺族もいる。「親告罪と同様に遺族らが出廷しないことで被害者感情が薄いと誤解されかねない」と話すのは、1997年に二男をひき逃げ事故で失った片山徒有(ただあり)氏だ。

 「積極論の方々は法廷に立つ緊張やストレスを知らないのでは。被告が沈黙を続け、弁護士が反論する。これだけで遺族には大きなストレスが襲う。言い過ぎれば、その言葉をまた背負ってしまう。『殺してやりたい』と言っても、人はいつまでも憎しみだけで生きられるものではない」

◆「自助組織こそ充実を」

 米国で被害者遺族と死刑囚家族が一緒に旅し、死刑廃止を訴えたルポ「癒しと和解への旅」の著書で、京都文教大助教授の坂上香氏(メディア文化論)は「米国では以前から(被害者参加制度が)導入されているが、実際の遺族感情は多様。でも、厳罰(死刑)を望む声は通りやすく、メディアも取り上げがちだ。だが、冤罪(えんざい)の多発により、近年は厳罰化の流れからの揺り戻しが起きている」という。

 「(新制度導入は)遺族たちのためと触れ込まれているが、法の枠内で完全に癒されることなどあり得ない。むしろ、医療や福祉、自助組織など別の分野の充実が必要ではないのか」

 片山氏はこう続けた。「多くの遺族が事件のショックから法廷に立てないのが実情。国はどこまで遺族の現実を調べたのか。国民の総意とほど遠い法案提出はあまりに拙速だ」」



2.被害者参加制度は、犯罪被害者や遺族が刑事手続に参加または関与する制度です。

(1) 犯罪被害者や遺族が刑事手続に参加または関与する目的は、全国犯罪被害者の会(あすの会)の「訴訟参加制度案要綱」12頁に

「被害者が、事件の真相を知り、名誉と失われた尊厳を回復し、適正な刑罰の実現と、公正な裁判を求めて刑事司法に参加することは当然の権利であるといわなければならない。」

とあるように、<1>事件の真相(名誉の回復)と、<2>適正な刑罰です。「事件の真相」とは、事件に関する情報をできる限り得たいということであり、「適正な刑罰」とは、量刑の問題であって、被害者の応報感情を満たしたいという意味であると思われます。


(2) 東京新聞の記事にあるように、犯罪被害者参加制度の問題点として、大きく2点を挙げることができると思います。

まず1点。

 「この新制度について、都内の弁護士の一人は「疑わしきは被告人の利益にという『推定無罪』の原則を覆しかねない」と懸念する。

 「被害者や遺族の声が無視されがちという批判は分かるが、これまでも被害者らの意見陳述は法廷で可能だった。問題は新制度が裁判の公正さを崩しかねない点だ。裁判中は被告人が有罪か否か、故意か過失かは分からない。正当防衛が絡めば、被害者と加害者が逆転する場合も出てくる。それなのに被害者の先入観や感情が法廷に持ち込まれれば、偏見が幅を利かせ冷静な判断を妨げかねない」」


今度の刑事訴訟法改正案では、公判記録の閲覧謄写の範囲を拡大するとはいえ、被害者や遺族は検察官ほど事件に関する資料に接するわけではありませんし、被害者の記者会見を見れば分かるように、冷静さを欠き感情のままに述べる可能性がかなりあるはずです。当然ながら、被害者は、無罪推定の原則があるにも関わらず、被告人を加害者であると思い込んでいるのが通常です。

感情的になったり、被告人が加害者であると思い込むのはやむを得ないとは思いますが、それでは、被害者の先入観や感情が法廷に持ち込まれ、偏見が幅を利かせ、裁判官の冷静な判断を妨げかねません。そうすると、裁判の公正を崩すことにつながり、無罪推定の原則が空洞化しかねません。これでは、より有罪を前提とするような訴訟になってしまいますが、有罪率が99%を超えている現在では、より有罪の方向を目指すよりも、無罪推定の原則に適うような法制度・運用を図る方が重要です。いまでも重大事件や痴漢事件において、深刻な冤罪事件が後を絶たないのですから。

このようなことから、被害者参加制度は、裁判の公正、無罪推定の原則の観点から問題があるように思います。特に裁判員制度が導入されると深刻です。一般人が裁判の公正、無罪推定の原則を十分に考慮に入れて判断することができるのか、一層危惧されるからです。


もう1点。

 「量刑が被害者や遺族感情で左右されること自体を懸念する声がある。死刑廃止運動に携わる弁護士の菊田幸一氏は「当局には新制度により司法の厳罰化の流れを加速させる狙いがあるのでは」と疑う。

 厳罰化の流れは数字からも明確だ。2006年版「犯罪白書」によると、一般刑法犯の数は03年から減少傾向で、殺人など凶悪犯も増えていない。一方、1990年以降の、その年の死刑確定者数は、03年まで年間一けただったが、04年は14人、05年は11人、06年は21人と急増中だ。

 菊田氏は「犯罪の増加も治安の悪化もない。となれば(厳罰化の)支えは社会に受け入れやすい被害者感情になる。この論調には判事も人の子なので逆らえない。私的な報復を禁じる近代刑法の根幹を揺るがされている」と危惧(きぐ)する。」


「あすの会」の訴訟参加制度案要綱にあったように、「適正な刑罰」を求める、すなわち厳罰を求めたいというのが、犯罪被害者の要望です(もちろん、異なる意見もあり)。裁判所の量刑判断において、被害者の被害感情を考慮することは確かですが、被害者の被害感情で無期懲役が死刑になることはなく、一要素にすぎないというのが、今の裁判所の運用です。
ですから、裁判所が被害者感情を量刑判断の一要素にすぎないという姿勢を崩さなければ、被害者参加制度によって被害者が何を言おうと厳罰化されることはないことになります。たとえ、直接法廷で被告人に感情的に質問しようとも。

しかし、被害者感情が量刑判断の一要素にすぎないとしても、国民の厳罰化の要請を受けて、厳罰化している現実があるのですから、被害者が直接法廷で被告人に質すことになれば、その被告人の対応、報道の仕方によっては、国民がより一層、厳罰化を要請する可能性があります。そうなると、結局は、被害者参加制度によって、より厳罰化する可能性が高いと思われます。

特に裁判員制度が導入されれば、より厳罰化する可能性が高くなると予想できます。例えば、弁護士の堀田力氏は、「中央公論」2007年4月号の「特集『この判決は何だ?」において、「裁判所は社会の拠り所となれるか」という表題で次のように書いています。

 「厳罰化は、世界の先進国において日本に特有の傾向といえるだろう。途上国は、どこも応報感情をむき出しにしたような判決を出す。貧しい国では窃盗や汚職でも死刑になる。人間の復讐心をそっくりそのまま仕組みに移したものだからだ。しかし、文化の成熟とともに、犯罪者の人権も考えるようになる。だから、世界の先進国を百年単位で見れば、刑罰はどんどん軽くなっている。ヨーロッパの国々が次々と死刑を廃止していることからも明白だ。

 もちろん、日本も明治時代に比べれば刑罰はどんどん軽くなっている。ところが、神戸市で「酒鬼薔薇聖斗」と名乗る14歳少年が、小学校を殺害したあたりから、国民の間に厳罰化を望む声が高くなり始めた。……

 2009年までに裁判員制度が導入され、一般市民が裁判官と一緒に重大犯罪の被告を裁くことになる。これによって、日本はさらに厳罰化が加速する可能性もある。

 例えば、検察官が不起訴処分にした刑事事件については、その処分が適切だったかどうかを「検察審査会」で判断するのだが、審査会における一般市民の意見は極めて厳しい。……一般市民にとっては、犯罪が新鮮に感じられるということだ。そうした市民が刑事裁判に加わるのだから、日本はこの先10年くらいは、他の先進国の流れに反して厳罰化の傾向をたどることになるだろう。」(「中央公論2007年4月号」246頁)


厳罰化によって、被害者や遺族の溜飲が下がり、心の安定につながるのかもしれません。しかし、厳罰化により、処罰を避けるため逃亡する加害者が増加する可能性がありますし(交通事故では、ひき逃げの増加といった傾向が顕著になっている)、厳罰化によって加害者の社会復帰も遅れることになってしまいます。すでに近年、刑罰規定が厳罰化され、判決自体も厳罰化され、もはや厳罰化も限界にきていると思えるのです。

重要なことは、厳罰化したところで、将来における犯罪防止につながるわけではないのです。被害者にとって望ましいのは、厳罰化によって、加害者に対する厳罰化(極刑や長期間の収監)なのか、それとも、将来における犯罪の防止につなげることによって、同じような被害者や遺族が生じないようするのと、どちらなのでしょうか?




3.被害者や遺族にって、本当に「被害者参加制度」は望ましいのでしょうか?


(1) 公判記録の閲覧謄写の範囲が増加して、被害者が「訴訟の当事者」になることで、より事件の真相を知ることは可能になるのですから、「被害者参加制度」にも良い面があることは確かです。厳罰化によって復讐心を満たすこともでき、ある面心の安定につながるかもしれません。

しかし、被害者参加制度は、被害者を刑事手続において、「訴訟の当事者」のように扱うことによって、加害者と直接対決させることによって(もし対決しないと自ら避けたことになる)、刑事手続に関与したゆえに被害者に自己責任を負わせるものです。一層の厳罰化によって、加害者を長期に収監させ、死刑判決を増やすことで、犯罪によって生じた問題点を訴訟だけで済ませてしまうものといえます。被害者は自己責任を負った以上、どんな判決も認めるしかなく、もはや国に対して文句は言えないことになります。

また、被害者が証人や被告人に質しても、素直に答えてくれればよいのですが、被告人に反発されやり込められ、より精神的ショックを受けたとしても自己責任ということになります。また、感情的な質問に対して、被告人が黙りこくってしまい、一層、真相究明ができなくなる可能性も生じますが、それも被害者の自己責任ということになります。

被害者にとって、「被害者参加制度」によって自己責任を負わされることは、本当に望ましいことなのでしょうか?


(2) 加害者が犯罪を犯してしまったことは、理由があるのです。加害者の生い立ち、犯行に至る経緯、動機があり、加害者にとってはそれなりの事情があるのです。そういった事情を、加害者の口から引き出すことが重要です。

そうすることによって、加害者が再び犯罪を犯さないよう、2度と同じような加害者が生じないよう、日本社会や社会制度を変化させ、将来の犯罪防止・予防につなげることができるからです。将来の犯罪防止・予防につながるのであれば、被害者はもちろん、加害者の一生を台無しにすることもなくなるのです。

 

「オウム真理教による地下鉄サリン事件で夫を失った高橋シズエさん(60)も、「被告は法廷で謝罪、反省の態度を見せる。だが、その気持ちを刑務所から出てくるまで持ち続けられるのか、法廷で直接問いただしたかった」と振り返り、被告への質問を可能にする制度に賛成する。」(読売新聞平成19年3月13日付夕刊18面)

この高橋シズエさんは、ただただ自分が被告人に問い詰めたい意欲に溢れていて、将来の犯罪防止・予防と関係なく、自分が直接、被告人が反省しているか問い詰めたいのです。感情の赴くまま問い詰める法廷が本当にいいことなのでしょうか?


(3) 

◆「自助組織こそ充実を」

 米国で被害者遺族と死刑囚家族が一緒に旅し、死刑廃止を訴えたルポ「癒しと和解への旅」の著書で、京都文教大助教授の坂上香氏(メディア文化論)は「米国では以前から(被害者参加制度が)導入されているが、実際の遺族感情は多様。でも、厳罰(死刑)を望む声は通りやすく、メディアも取り上げがちだ。だが、冤罪(えんざい)の多発により、近年は厳罰化の流れからの揺り戻しが起きている」という。

 「(新制度導入は)遺族たちのためと触れ込まれているが、法の枠内で完全に癒されることなどあり得ない。むしろ、医療や福祉、自助組織など別の分野の充実が必要ではないのか」」


このように、被害者にとっては、「医療や福祉、自助組織など別の分野の充実が必要」であるように思うのです。被害者参加制度のように、裁判に慣れていない被害者が、訴訟手続に参加してより神経をすり減らして疲弊するよりは、犯罪被害の回復は、被害者自身に対して手厚く行うべきなのです。

被害者自身に対して手厚く行うことは、多大な費用と人員が必要であって大変なことですから、国はなるべく実施したくないのです。だからこそ、被害者参加制度を国側が認める要因でもあります。しかし、犯罪被害の回復を、被害者の訴訟参加という自己責任と刑罰に委ねることは、国にとって非常に楽なことであって、被害者参加制度によって、本当に必要とされる「医療や福祉、自助組織など別の分野の充実」がなされなくなるでしょう。もっとも必要なことについての国の怠慢を助長させてしまうことは、被害者にとって本当に望ましいことなのでしょうか?


情状に関してのみ証人尋問でき、被告人質問を認め、検察官よりも重い量刑請求を認めるなどの、犯罪被害者や遺族を「訴訟の当事者」とするような「犯罪被害者制度」は問題があると考えます。




<追記>

1.「損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度及び犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の新設等のための要綱案」から、犯罪被害者参加制度のみを引用しておきます。

第四  犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度

 一  被告事件の手続への被害者参加

  1  裁判所は、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつ及び強姦の罪、業務上過失致死傷等の罪、逮捕及び監禁の罪並びに略取、誘拐及び人身売買の罪等に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続に参加することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して相当と認めるときは、被害者等又は当該被害者の法定代理人が被告事件の手続に参加することを許すものとすること。

  2  1の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならないものとすること。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとすること。

  3  1の許可を受けた者(以下「被害者参加人」という。)又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができるものとすること。

  4  公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならないものとすること。

  5  裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、その全員又は一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができるものとすること。

  6  裁判所は、審理の状況、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができるものとすること。

  7  3の規定により被害者参加人が公判期日に出席する場合において、裁判所は、付添い(刑事訴訟法第百五十七条の二)及び遮へい(同法第百五十七条の三)の措置を採ることができるものとすること。

  8  3から7までの規定は、公判準備においてする証人の尋問又は検証について準用するものとすること。

  9  裁判長は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする二の1の規定による尋問、三の1の規定による質問又は四の1の規定による意見の陳述が法律上許されない事項にわたるときは、これを制限することができるものとすること。

  10  被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についての刑事訴訟法の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができるものとすること。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならないものとすること。

 二  証人の尋問

  1  裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとすること。

  2  1の申出は、検察官の尋問が終わった後(検察官の尋問がないときは、被告人又は弁護人の尋問が終わった後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならないものとすること。この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとすること。

  3  1の規定により被害者参加人が証人を尋問する場合において、裁判所は、付添い(刑事訴訟法第百五十七条の二)及び遮へい(同法第百五十七条の三)の措置を採ることができるものとすること。

 三  被告人に対する質問

  1  裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が刑事訴訟法第二百九十二条の二第一項又は四の1の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であって、審理の状況、申出に係る質問を発する事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対して質問を発することを許すものとすること。

  2  1の申出は、あらかじめ、質問を発する事項を明らかにして、検察官にしなければならないものとすること。この場合において、検察官は、当該事項について自ら質問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとすること。

  3  1の規定により被害者参加人が被告人に対して質問を発する場合において、裁判所は、付添い(刑事訴訟法第百五十七条の二)及び遮へい(同法第百五十七条の三)の措置を採ることができるものとすること。

 四  証拠調べが終わった後における弁論としての意見陳述

  1  刑事訴訟法第二百九十二条の二第一項に規定するもののほか、裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは、公判期日において、同法第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、その意見を陳述することを許すものとすること。

  2  1の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならないものとすること。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとすること。

  3  1の規定による陳述は、証拠とはならないものとすること。

  4  1の規定により被害者参加人が意見を陳述する場合において、裁判所は、付添い(刑事訴訟法第百五十七条の二)及び遮へい(同法第百五十七条の三)の措置を採ることができるものとすること。


「あすの会」の訴訟参加制度案要綱」には、犯罪被害者が、検察官と独立して訴因を設定できる(例えば、検察官が傷害致死で起訴したのに、被害者は殺人で裁判して欲しい請求できる)とか、犯罪被害者自身が上訴できるという制度も規定していました。まさに、検察官と並ぶ「訴訟の当事者」そのものだったのですが、法務省の要綱だけからすると、そこまでは認めていないようです。



2.法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会第3回会議(平成18年11月14日開催)より、「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度(諮問事項第四)に関する資料」の一部

 「犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度」を検討するに当たり,刑事裁判における犯罪被害者等の地位や関与の在り方について,どのように考えるか。
 例えば,次のような考え方があり得るのではないか。
○ 犯罪被害者等が加害者の処罰を求める権利を行使するために,検察官とは別個独立に,一定の訴訟活動を行うという考え方
○ 「犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」ことを踏まえ,「事件の当事者」としての特別の地位に基づいて,一定の関与を行うという考え方
○ 「事件の当事者」としての立場から,被害に関する心情を中心とする意見を主体的に陳述することにより,刑事裁判に関与するという考え方


「訴訟の中で被害者はどういう地位にあるのか」という点が、被害者に関する訴訟制度を創設する上で、もっとも基礎になることです。



3.「制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会第8回会議(平成19年1月30日開催)」の第8回配布資料より、「2007年1月30日 要綱骨子(案)に関する意見書」の一部。

第4 諮問事項4(犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することができる制度)について

1 結論
犯罪被害者や遺族に「被害者参加人」という法的地位を付与し、「公判期日への出席、被告人質問、情状事項に関する証人尋問、弁論としての事実、法律の適用(求刑も含む)に関する意見陳述」などの訴訟活動を直接行わせることには強く反対する。

2 犯罪被害者や遺族に訴訟活動を行う法的地位を付与することについて
(1)「被害者参加人」たる法的地位と訴訟活動を認めることは訴訟手続の当事者性を付与し、刑事訴訟の構造を大きく変容させる

①「事件の当事者」から「訴訟の当事者」へ

 部会においては、事務当局の整理した資料で「加害者の処罰を求める権利を行使する」ことのできる地位にもとづいて「一定の訴訟活動」を行うという立場と、「事件の当事者」としての特別の地位にもとづいて「一定の関与」を行うという考え方が二つの立場として整理されていた。

 そして、部会審議では、後者の考えを前提に検討がすすめられ、具体的な訴訟活動として、公判期日への出席、被告人質問、情状事項に関する証人尋問、弁論としての事実、法律の適用(求刑も含む)に関する意見陳述を認める方向となった。ついで、その訴訟活動を認める被害者や遺族に「一定の法的地位」を付与するかが議論となり、要綱骨子(案)では、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(未遂含む)、強制わいせつ及び強姦の罪、業務上過失致死傷等の罪、逮捕及び監禁の罪並びに略取、誘拐及び人身売買の罪等に係る被告事件について、被害者と遺族の参加申出にもとづき、裁判所が参加を許可した場合は、被害者と遺族に「被害者参加人」たる法的地位を与え、上記の訴訟活動を認めることとされた。

 これらの活動は、検察官の訴因の範囲でという限定がつけられているものの、「事件の当事者」や「関与」という法的位置づけが曖昧な用語では説明がつかないほど裁判所の判断に影響を及ぼす重要な訴訟活動に拡大している。これは、加害者の処罰を求める「権利」を直接に認める形をとってはいないものの、加害者の処罰を求める「目的」で、被害者に被告人質問、証人尋問、求刑などの実質的な有罪追求の訴訟活動をすることを認めている。これは、さきの「事件の当事者」であるとの位置づけすら越えて、被害者や遺族に「被害者参加人」という名の訴訟当事者またはそれに準ずる地位を容認したものと評価せざるをえない。


「被害者参加制度」を導入することによって、被害者が「事件の当事者」から「訴訟の当事者」へと変貌してしまうことは、妥当ではないという主張です。
裁判官や検察官も事件に関わる場合には、判断の公正を担保できないので訴訟から外れるのに、被害者は、この制度によって、被害者に被告人質問、証人尋問、求刑などの実質的な有罪追求の訴訟活動を行うのです。やはり、どうしても無理があるように思うのです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
 春霞様。
 エントリー、ありがとうございます。大変、お骨を折らせてしまいました。立派な、言い尽くしたエントリーですね。

 実は、姑が17日に亡くなりまして、20日に葬儀を致しました。昨日自宅へ戻りまして、今エントリーを拝見したところです。まだ、全部は拝見しておりません。ともかくコメントを、と。

>「訴訟の当事者」
>自己責任
>被害者参加制度のように、裁判に慣れていない被害者が、訴訟手続に参加してより神経をすり減らして疲弊
>被害者自身に対して手厚く行うことは、多大な費用と人員が必要であって大変なことですから、国はなるべく実施したくないのです。だからこそ、被害者参加制度を国側が認める要因でもあります。しかし、犯罪被害の回復を、被害者の訴訟参加という自己責任と刑罰に委ねることは、国にとって非常に楽なことであって、被害者参加制度によって、本当に必要とされる「医療や福祉、自助組織など別の分野の充実」がなされなくなるでしょう。もっとも必要なことについての国の怠慢を助長させてしまうことは、被害者にとって本当に望ましいことなのでしょうか?


 問題の根本を指摘してくださっていて、よくわかりました。やっぱり、やっぱり、春霞さんだぁ♪
 私も民事提訴をしたことがありますが、裁判とか訴訟ほど神経を消耗させるものは他にないですね。
 そうですか、国は逃げて安上がりに済ませようとしている。酷いですね。

 またまた、虫のいい厚かましいお願いになりますが、拙HP http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/ 
 へ、そのまま上げさせて戴けないでしょうか。この前のように。よろしくご諒解、お願いします。すみません。
2007/03/22 Thu 09:36:28
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
すみません。
 服喪というほどではなかったのですが、暫くお休みするつもりでした。なのに、春霞さんのエントリーに嬉しくなって、HPにupしちゃいました。すみません、ちゃんとお許し戴いてないのに。
 拝読して、よく判りました。付帯私訴なども、一律2000円とか報道されたように記憶しますが、有罪とか無罪とか、何もわからない状態で、随分杜撰な問題の多い制度であると思います。
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/column18higai.htm
2007/03/22 Thu 16:41:01
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん:2007/03/22(木) 09:36:28・16:41:01へのお返事
コメントありがとうございます。


>実は、姑が17日に亡くなりまして、20日に葬儀を致しました

具合を悪くされていたとのエントリーを読んで心配していました。お亡くなりになったとのこと、皆様の寂しさもひとしおとお察しいたします。
安らかにお眠りになりますよう、心からお祈りします。



>立派な、言い尽くしたエントリーですね。
>問題の根本を指摘してくださっていて、よくわかりました

ありがとうございます。本来なら、ゆうこさんのように、もっと前に論じておくべきことでしたのに、かなり遅くなってしまいました。

問題点は色々ありますが、このエントリーで挙げたことが最も問題となる点であると思います。


>そのまま上げさせて戴けないでしょうか
>HPにupしちゃいました。すみません、ちゃんとお許し戴いてないのに。

取り上げて下さってありがとうございます。元々、ゆうこさんから依頼を受けて書いたのですから、許可を求めるまでもなく、構いません。


>付帯私訴なども

刑事手続の成果を利用することで、刑事と民事で一致させ、被害者側が立証を軽減したいという気持ちは分かる制度です。同じ裁判なのだからということで。

しかし、これも問題の多い制度です。

お金がある被告人なら早々に示談をして支払ってしまいますから、この制度の意味がありません。他方で、お金がない被告人なら、付帯私訴で賠償判決を得たとしても、お金を払えず、判決は無意味です。どっちにしても、意味のない制度です。

本当に被害者を救済したいのなら、国が被害者補償制度を充実させて、被害者に十分な補償を行うべきなのです。この制度を創設することで、結局は、国が本当にすべきことをしないで済むのです。被害者参加制度と同じですね。

一番の問題は、お金に困っている被告人は、付帯私訴の審理についての代理人を選任するお金がないのです。しかも、刑事施設に収容されているので、付帯私訴の審理の全てに出ることができません。
そうすると、被告人は十分な防御ができずに、お金を払うことが決まってしまうという不合理が生じるのです。

制度を創設しても意味がなく、しかも不合理ときては、なんて制度だと思います。
2007/03/22 Thu 23:35:34
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
はじまして
はじめまして。
被害者参加制度について思うことを書かせていただきます。

私は、死刑廃止論者ではありませんが(ただし、死刑の適用は慎重かつ限定的に行うべきだとは思っています)、このような制度は、死刑や絶対的終身刑(=仮釈放のない終身刑)を廃している国、または、そのような制度があっても国民がそれなりの法的知識を持ち、制度に対する国民的合意があり、マスコミも偏向報道をしないという国でこそ、うまく機能するのだと思います。
日本のような、マスコミの異常性が際立っている国では、被害者参加制度も裁判員制度も機能しないと思います。
2007/03/24 Sat 16:26:31
URL | nanashi #sq4QJOk.[ 編集 ]
被害者参加制度推進論者は、ヨーロッパにおいてこのような制度が存在することを、制度導入の必要性の根拠の一つとして挙げていますが、ヨーロッパの多くの国では死刑も絶対的終身刑もありません。

「このような制度は、死刑や絶対的終身刑という究極の刑を廃してこそ、成り立つ」「復讐的要素の強い刑罰をなくすことと引き換えに、そういった権利が被害者に与えられており、いわば被害者に対するせめてもの配慮である」と見ることもできます。
他の国の厳しいところばかり見習っていては、しまいには裁判制度そのものがリンチとなってしまいます。「死刑制度を存置する国における遺族中心かつ市民が参加する裁判」・・・裁判員制度・被害者参加制度・・・このような制度が、近く開始されるなんて、考えただけでゾッとします。しかもこのような制度が水面下での結論ありきの拙速な議論によって成立しているのですから、救いようがありません。重大事件で、検察が20年を求刑、遺族が死刑を求刑というケースも多く出てくるでしょうが、そうなった際は、マスコミによる「検察バッシング」さえ行われるかもしれません。検察の求刑もますます厳しくなることでしょう。すごい勢いで刑事裁判制度改革が進んでいますが、このままいけば、いずれ、被害者に刑事裁判における上訴権まで付与されるかもしれません。
裁判員制度にせよ、被害者参加制度にせよ、その賛否についてもっと議論を尽くすべきです。それぞれ1年半後、2年後に施行なんて早すぎます。
2007/03/24 Sat 16:29:38
URL | nanashi #sq4QJOk.[ 編集 ]
裁判員制度は、国民の8割が否定的立場に立っており、被害者参加制度も国民の半数近くが反対しています。
その両方を拙速に導入しようとする国の姿勢には全く賛同できません。

↓は私のblogです。お読みください。

http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070315
http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070320
http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070309
http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070318
2007/03/24 Sat 16:41:41
URL | nanasi #-[ 編集 ]
2007/03/24 Sat 16:42:01
URL | nanasi #-[ 編集 ]
もう一つ書かせていただきます。

「無期懲役=10年」みたいな誤解も広く蔓延していますが、そんな状況では、裁判員制度など成り立つわけがないと思います。
今のような状態では、死刑か無期かの判断が微妙な事案で「無期は実質10年であり、軽すぎるから」という理由で死刑の意見を述べたり、無期しかありえないような連続強姦致傷事件や連続強盗殺人未遂事件で「無期は軽すぎるから」という理由で長期有期刑の意見を述べたりする裁判員が続出する虞も極めて高いです。
裁判員制度を実施するなら、マスコミの偏向報道を規制するとともに、無期懲役刑が「絶対的不定期刑」ではなく「相対的終身刑」であるということを広く世間に知らしめなければならないでしょう(裁判官が裁判員に時間をかけて詳しく説明するなら別ですが)。
2007/03/24 Sat 16:44:55
URL | nanasi #3fayZaE6[ 編集 ]
◇無期懲役刑の現状について
○2005年の無期刑仮釈放者の平均在所年数は27年2ヶ月である。
○2000年以降では20年未満で仮釈放を許されることは極めて例外的である。具体的には、51人中3人。
○最近3年間(2003年~2005年)に仮釈放を許された無期囚のうち在所20年未満の者は、いない。
○以上のデータはいずれも仮釈放者のデータであり、仮釈放されてない者のデータにも着目する必要が
ある。
○平均27年と聞くと、遅くとも30数年で出れるように思われがちだが、2002年5月31日衆議院法務委員会
会議録によれば、無期刑長期在所者上位5名の在所年数は、長い順に52年10ヶ月、52年0ヶ月、48年3ヶ月
、48年1ヶ月、47年2ヶ月とのことである(データは2002年2月末現在。現在も存命中であれば+5年)。
○日本の無期懲役刑は「仮釈放の(可能性の)ある終身刑(相対的終身刑)」である。

以上が日本の無期懲役刑の実際の運用ですが、裁判員制度をどうしても実施するというならば、これら事実を、国民に広く知らしめる必要があります。

資料(特に一番上のURLは必読です)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1211078237
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000415420020531015.htm?OpenDocume
nt
http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070312

長文失礼いたしました。
2007/03/24 Sat 16:48:28
URL | nanasi #-[ 編集 ]
#日本においては、一般的に絶対的終身刑のみが「終身刑」と認識されることが多く、このため、外国の終身刑が過大評価されるなど、様々な誤解が生じていますが、多くの国(特にヨーロッパ)における終身刑は日本の無期懲役刑と同様の相対的終身刑なのです。

無期刑の「無期」とは、無期謹慎などの「無期」とは違い、「期間を決めない」という意味ではなく、「満期がない」という意味であり、満期が来ることがない以上、刑自体は受刑者が死亡するまで続きます。※仮釈放は刑の終了を意味せず、無期刑の受刑者は原則として死ぬまで「仮」のままです。

絶対的終身刑のみを終身刑と呼び、無期懲役を「期間の定めのない懲役刑」などとするならば、例えば懲役15年は「懲役5年以上15年以下の不定期刑」と呼ばなければ、整合性が取れません。
懲役○年を「懲役○年」と呼ぶ以上、絶対的終身刑のみを終身刑と呼ぶなどあってはならないことです。
2007/03/24 Sat 16:59:48
URL | nanasi #-[ 編集 ]
http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070324
無期刑仮釈放者および長期在所者等のデータ

http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070322
よくわかる無期懲役刑
2007/03/25 Sun 23:05:22
URL | nanasi #-[ 編集 ]
>nanasiさん:2007/03/24(土) 16:26:31~16:59:48 へのお返事
はじめまして、コメントとTBありがとうございます。


>重大事件で、検察が20年を求刑、遺族が死刑を求刑というケースも
>そうなった際は、マスコミによる「検察バッシング」さえ行われるかも

当然、被害者による求刑も詳しく報道されるでしょうし、検察バッシングはあるでしょうね。どこまで国民や裁判員が冷静でいられるのか、怖い気がします。


>私のblogです。お読みください。
>◇無期懲役刑の現状について
>資料(特に一番上のURLは必読です)
>多くの国(特にヨーロッパ)における終身刑は日本の無期懲役刑と同様
>の相対的終身刑

情報ありがとうございます。大変参考になりました。


>無期刑長期在所者上位5名の在所年数は、長い順に52年10ヶ月、
>52年0ヶ月、48年3ヶ月、48年1ヶ月、47年2ヶ月

ここまで長期間になると、もし出所できても社会復帰は困難です。どうするのでしょうね。
2007/03/25 Sun 23:40:05
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
返事どうもありがとうございます。

宇治学習塾女児殺害事件では、遺族が「完全に責任能力あり。計画的かつ冷静に行動しており、死刑が相当だ」と事実上の論告・求刑を行いましたが、死刑求刑でなかったためにマスコミから批判的に報道されました。http://www.youtube.com/watch?v=b5MiSGhLemk

また、これは結果の重大性からある程度仕方ないかもしれませんが、ブロードキャスターでは、大澤孝征という元検弁護士が、尾上力被告に対する求刑を痛烈に批判し、被害者への求刑権の付与を強く主張していました。
被害者参加制度・裁判員制度が実施されれば、検察の求刑がマスコミに批判されるケースはますます増えることは間違いありません。
私はどちらも廃止すべき(実施すべきでない)と思いますが、少なくとも、せめてどちらか片方にしてもらいたいものです。

>ここまで長期間になると、もし出所できても社会復帰は困難です。どうするのでしょうね。

将来はともかく現時点で在所通算年数が四十数年や五十年以上となる在所者の大半は、身元引受人がおらず、精神面または社会性にも問題がある者だと言われており、彼らには仮釈放の可能性は事実上存在していませんので、彼らは刑務所で死ぬことになります。
今更仮釈放されても社会で生きていけませんし、それが必ずしも妥当とは思いませんが、多少仕方ない面もあると思います。
http://d.hatena.ne.jp/youhei2007/20070324
2007/03/26 Mon 01:13:52
URL | youhei #ntbreMG6[ 編集 ]
>nanasiさん(2007/03/25(日) 23:05:22)とyouheiさんへのお返事
コメントありがとうございます。


>無期刑仮釈放者および長期在所者等のデータ
>よくわかる無期懲役刑

情報ありがとうございます。


>ブロードキャスターでは、大澤孝征という元検弁護士が、尾上力被告に
>対する求刑を痛烈に批判し、被害者への求刑権の付与を強く主張
>検察の求刑がマスコミに批判されるケースはますます増えることは間違
>いありません。

番組構成上、大澤弁護士はそういう役回りを演じているのでしょうけど、今後はより過激になってしまいそうです。


>被害者参加制度・裁判員制度
>私はどちらも廃止すべき(実施すべきでない)と思いますが

被害者参加制度は、いいものだと思っている(勘違いしている?)市民が多いのではないでしょうか? こういう状態ではと、悲観しています。自民党議員の多数が「理解」すれば、被害者参加制度法案は成立しないのでしょうけど……。 
2007/03/26 Mon 21:18:28
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
無題
こんな話ばっかりしているから司法の常識が一般常識から乖離しているって問題視されてるんですよ。。
期待ギャップの責任を一般人側ばかりに押しつけずにもう少しそちらも歩みよっては如何ですか?

司法は専門家の独壇場かも知れませんが立法の方は違うんですから。。
このままだと,多分もっとこの手の制度の整備が進むと思いますよ。
その前に,自らの手で自浄作用を見せられるべきではないですかねぇ・・・
まあ,自覚がないのに自浄も無いでしょうが・・・
2007/09/25 Tue 23:16:25
URL | 七誌 #-[ 編集 ]
>七誌さん:2007/09/25(火) 23:16:25
コメントありがとうございます。


>司法は専門家の独壇場かも知れませんが立法の方は違うんですから

議員立法であっても、法律案の作成は、両議院にそれぞれ設置された議院法制局が協力します。与野党の委員会審議も、必ず弁護士資格又は法律に熟知した議員が質疑を行います。しかも、最後には、ほとんどすべての法案について内閣法制局がチェックを行うのです。

不当な法律は、国民に害を与えるのですから、法律も専門家が十分に関与して成立するのです。ですから、「立法の方は違う」というのは、誤った認識なのです。



<9月28日追記>

>こんな話ばっかりしているから司法の常識が一般常識から乖離しているって問題視されてるんですよ。。

ちょっと素っ気ないお返事だったので、追記します。

このエントリーで主張したのは、被害者にとっては、「医療や福祉、自助組織など別の分野の充実が必要」、言い換えると、被害者参加制度を認めるよりも、心のケアや経済的援助の更なる充実という裁判外の充実を図る方がより良いのだ、ということです。しかし、今回の改正ではそんなことは一切していません。

被害者参加制度って本当に、被害者にとってより良い制度なのでしょうか? 

ある犯罪が発生し、事件が発覚すると、被害者家族の自宅には多くのマスコミが押しかけ、朝昼晩と電話やベルが鳴りっぱなし、勤め先の会社にまで問い合わせがあり、特に重大犯罪だとどの新聞・テレビ局もずっと紹介し、そこでは近所の人や見知らぬ者が友人だと名乗って被害者ばかりか家族のことまで語り始める……。被害者家族のプライバシーなど全く無視され、全国から監視されているのと同然の扱いになってしまいます。

そういう中で、「被害者参加制度ができました、さぁ法廷で検察官の横で証人や被告人に尋ねることができますよ」と言われても、「何を聞けばいいのか、法的知識もないのに」となるでしょう。しかも、何かを喋ったら、おそらくそれが逐一マスコミ報道され、コメンテーターが良し悪しを評価し、果ては態度や服装はどうだったまで、話し始めるでしょう。またもや、全国への晒し者になり、ノイローゼになるほど精神的に負担になる……。マスコミで二次的被害を受け、法廷でさらに被害を受けることになってしまいます。一体、どれほどの被害者が、被害者参加制度で「晒し者」になることを望むのでしょうか?

裁判は、裁判官、検察官、弁護人という法律のプロが関与して進行しているのですから、被害者参加制度によって、「お客さん」にならずに訴訟に参加できる被害者は、法律のプロ並みでしかも精神的にタフな被害者でないと、実際上、無理に近いと思うのです。
もっとも、法律のプロ並みの被害者であっても、どこまでタフでいられるのか疑問ですが。エントリーで触れたように、今でさえ、ある被害者は法廷に立つストレスは相当なものだと述べているのですから。

本当に被害者参加制度は、多数の被害者にとって、本当に良い制度なのですか? かえって被害者に無理を強いることになってしまうのではないのですか? ここで書いた現実の「被害者の実態」、現実の「被害者参加制度」をよく考えてみて下さい。


<さらに追記>

そういえば、被害者遺族自らが、被害者のプライバシーを暴露することもありました。あの本村氏ですが。著書の「天国からのラブレター」では、「実在してる方の個人情報を晒し、自身の犯罪、故人の日記や手紙の内容」まで暴露ですから、本村氏自ら弥生さんの尊厳を害しているとさえいえますね。
2007/09/26 Wed 21:32:17
URL | 春霞(9月28日追記しました) #ExKs7N9I[ 編集 ]
被害者参加 裁判員制度
 今晩は。こんな時刻にパソコンするのは、あまりないことです。まして、コメントなんて。夜分にすみません。
 11月も半ばが過ぎてしまい、気になっていました被害者参加制度が目前です。新聞に弁護士さんが端的なことを書いていらっしゃいましたので、ブログにエントリしました。http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/7668d37485f511c13c272ed1d79eb7f4
 一昨年でしたか、橋下氏が「裁判は誰のためにあると思いますか」と問い、「被害者のためにあるんです」と御自分で答えていました。頭がくらくらしました。
 裁判員裁判になりますと、控訴審まで裁判員の判断に従わされるとか。こんな無茶が現実に起こりうるものでしょうか。暗澹としてしまい、春霞さんにコメントしたくなりました。http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/aaa94853a5f7b8053123ae2d1f61b541
2008/11/17 Mon 02:00:59
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん:2008/11/17 Mon 02:00:59
コメントありがとうございます。


>気になっていました被害者参加制度が目前です

被害者参加制度については、12月になる前にエントリーにする予定です。


>新聞に弁護士さんが端的なことを書いていらっしゃいましたので

情報ありがとうございます。東京新聞ではその記事は掲載していませんでした。

裁判員制度は、何か市民の司法教育のために実施しているようです。有罪か無罪か判断を下される被告人の防御の利益への配慮はどうなっているのだろうか、被告人は教育のための実験台なのだろうかと、憂慮するばかりです。

今、法曹三者は裁判員制度実施へ向けて、色々なイベントを行っており、法曹関係者のほとんどが止める状態にありません。弁護士会だけが、無罪推定の原則があることを強調する書籍を出している始末ですから、裁判員制度では、無罪推定という刑事訴訟の基本原理はあまり徹底されないのでしょう。


>一昨年でしたか、橋下氏が「裁判は誰のためにあると思いますか」と問い、「被害者のためにあるんです」と御自分で答えていました

橋下氏はもう、相変わらずですね。弁護士として必要な法的知識はほとんど失っているようです。そういえば、橋下氏は、朝日新聞に「弁護士失格だから辞めたら」と指摘されたために、なんだか反論していましたが、弁護士失格といえる発言ばかりですから、反論できないと思いますけどね。


>裁判員裁判になりますと、控訴審まで裁判員の判断に従わされるとか。

この記事ですね。

「来年5月に始まる裁判員制度で、焦点になっていた控訴審のあり方について、最高裁司法研修所は11日、「国民の視点、感覚などが反映された結果をできる限り尊重しつつ審査に当たる必要がある」との原則を示し、1審判決を破棄するのは例外的なケースに限るとする研究報告書を発表した。
 国民の社会常識を反映させる制度の理念に沿った基準で、報告書に拘束力はないが、裁判官の実務の指針になるとみられる。」

報告書というだけであって、法律によって控訴審の判断を拘束するわけではないので、この報告書がどこまで拘束するのか分からないところです。法的な根拠はなくても、最高裁は内部的な指導のような形で、高裁に尊重を求めるという感じなのかもしれません。

この報告書の効果は、今一歩よく分からないところですが、もし「裁判官の実務の指針になる」のだとしたら、それこそ裁判員は真剣に裁判に臨んでほしいです。裁判員の判断でほぼ有罪か無罪か、死刑か無期懲役か、冤罪で処罰してしまうのか否か、決してしまうのですから。その責任の重さをよく見つめてほしいです。
2008/11/18 Tue 23:32:37
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
「被害者本人」と「遺族」の区別
いつも詳しくかつ分かり易い記事をまとめていただいて、ありがとうございます。

前にゆうこさんのところでもコメントした問題ですが、一連の犯罪被害者をめぐる議論で、やっぱり被害者その人と被害者遺族とがきちんと峻別されていないことが多いように感じます。そこを分ける必要があると私は思っているのですが、法律の方では、どうなっているのでしょうか。不勉強で「被害者遺族とは何親等までで云々」など定義があるのか、知識がありません。被害者参加制度については大抵「被害者や遺族が…」と一括りに述べられていて、まさかと思いますが法的にも同等に扱われているとしたら、おかしいですよね。春霞さんはどうお考えですか。
 法律に関するブログでこんなことを言うのも場違いかもしれませんが、実は、「ある死者に対して、誰が権利を持っているのか」を法律で定めるということ自体に無理があると思っていたりします。
2008/11/21 Fri 14:04:09
URL | 村野すもも #QA8CHp.o[ 編集 ]
>村野すももさん:2008/11/21 Fri 14:04:09
コメントありがとうございます。


>いつも詳しくかつ分かり易い記事をまとめていただいて

ありがとうございます。


>被害者その人と被害者遺族とがきちんと峻別されていないことが多いように感じます。そこを分ける必要があると私は思っているのですが、法律の方では、どうなっているのでしょうか。
>「被害者遺族とは何親等までで云々」など定義があるのか……
>被害者参加制度については大抵「被害者や遺族が…」と一括りに述べられていて、まさかと思いますが法的にも同等に扱われているとしたら、おかしいですよね。

法律上、被害者と、被害者の遺族とは区別しています。折角ですから、被害者参加制度の場合について説明しておきます。

1.まず、条文を。
「刑事訴訟法第三百十六条の三十三 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
 一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
 二 刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百十一条第一項、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪
 三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
 四 前三号に掲げる罪の未遂罪
② 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
③ 裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。) が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。」

このように、被害者参加制度においては、刑事手続に参加できる被害者は、「被害者参加人」と表記しています。また、条文で規定しているように、被害者はすべて刑事手続に参加できるのではなく、「犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるとき」に限られます。


2.この被害者参加人の範囲について、立法解説(白木功、飯島泰、馬場嘉郎『犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を解説する法律(平成19年法律第95号)』の解説(2)・法曹時報第60巻第10号46頁以下)を引用してきます。


参加の申出を行うことができる者の範囲

 被告事件の手続への参加の申出を行うことができる者は、本項各号に掲げる罪に係る被告事件の被疑者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士である。
 「被害者」とは、告訴権者について規定する刑事訴訟法第230条の「犯罪により害を被った者」と同様に、当該犯罪により直接の害を被った者をいう。もっとも、前述したとおり、本制度は、個人の尊厳の中核をなす生命、身体又は自由に害を被った被害者を対象とするものであることから、本項の「被害者」には法人は含まれないと解される。また、本制度の対象犯罪のうち、例えば、強盗致死傷罪については、生命又は身体に害を被った者と財産に害を被った者とが異なる場合があり得るが、本制度の趣旨にかんがみれば、本制度により被告事件の手続に参加することができるのは、生命又は身体に害を被った者に限られるものと解される。
 「被害者等」とは、被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう(第290条の2第1項)。被害者の配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、被害者の近親者であって、被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合には、被害者に匹敵する多大な精神的苦痛を被り、その原因となった刑事事件に係る裁判の課程及び結果に深い関心を有することが通常であると考えられることから、被告事件の手続への参加の申出を行うことができることとしたものである。
 「当該被害者の法定代理人」とは、民放の規定により当該被害者の法定代理権を有する者をいい、これに当たる者としては、例えば、強制わいせつの被害者である幼児の未成年者後見人(民放第839条以下)等が考えられる。法定代理人は、本人の意思を代弁するとともにその権利利益を保護する立場にあり、本人が被害を受けた刑事事件に係る裁判の推移及び結果に深い関心を有することが通常であることから、被告事件の手続への参加の申出を行うことができるものである。
 「これらの者から委託を受けた弁護士」とは、被害者等又は当該被害者の法定代理人から被告事件の手続への参加を申出を行うことの委託を受けた弁護士をいう。」


「被害者遺族とは何親等までで云々」など気にされたわけですが、村野すももさんのようによく考える方であれば、当然に気になる疑問でしょうね。

法律上、刑事手続に参加できる被害者遺族は、被害者の配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹に限っています(刑訴法第290条の2第1項)。ちなみに「直系の親族」とは、親→子→孫といった婚姻によらない血縁関係のうち、6親等内の血族のことです(民法第725条1号)。このように、被害者の親戚だからといって、誰もが参加できるわけではないわけです。

また、立法解説からすると、被害者参加制度では、刑事手続に参加できる「被害者」は、生命又は身体に害を被った者に限っており、より限定しているわけですね。


>一連の犯罪被害者をめぐる議論で、やっぱり被害者その人と被害者遺族とがきちんと峻別されていないことが多いように感じます。

被害者と被害者遺族とは、加害者との関わり、生活の実態などが異なっていますから、自ずと加害者に対する感情が異なっているはずです。「あの時ああしていれば、事件を防ぐことができ、家族の命は失われずに済んだのではないか」などと、被害者遺族特有の感情も生じるでしょう(全国被害者支援ネットワーク編集『犯罪被害者支援必携』(東京法令出版、平成20年)127頁参照)。ですから、被害者遺族であれば、より加害者に対する復讐感情が熾烈になってしまうのかもしれません。

本来、「被害者その人と被害者遺族とがきちんと峻別」した方がいいのでしょうが、あまり峻別した議論はしてないのが現実ですね。


>実は、「ある死者に対して、誰が権利を持っているのか」を法律で定めるということ自体に無理があると思っていたりします。

人はあの世に旅立つとき、何も持っていくことはできませんので、現世に色々な物を残します。価値のある物であればいいのですが、借金を残すこともあります。もし、何百億円もの財産を日本だけでなく、海外にも残っていれば、その財産を欲しい親戚はたくさんいるでしょう。反対に、何百億円もの借金が残っていれば、その借金から逃げたい親戚もまたたくさんいるでしょう。

こうした紛争について、血縁関係に関係なく親しい者が権利義務を有するべきであって、法律なんか要らないと考えることもできるかもしれません。本来、死亡した方の遺志を尊重すれば、その方が妥当なようにも思います。

しかし、法律で明記しないと、納得しない者が出てきていつまでも血で血を洗うような揉め事が続いてしまうかもしれません。被害者参加制度についても、多数の親族が参加を希望することもあるかもしれませんが、何十人もの親族が刑事手続に参加して、証人尋問をするわけにもいかないでしょう。やはり、紛争をなるべく生じないように、画一的・明確な基準を法律で明記しておくことが妥当であるように思います。
2008/11/23 Sun 00:14:36
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
ありがとうございます
春霞さん、適確な資料と解説のお返事、ありがとうございます。よく分かりました。

ご明察の通り
>血縁関係に関係なく親しい者が権利義務を有するべき
…というのが正に私の感覚で、前のようなコメントになりました。それでも
>紛争をなるべく生じないように、画一的・明確な基準を法律で明記しておくことが妥当
…との考え方も確かに有効と思います。何と言うか、法律とは皆に少しずつ不満を覚えさせるものであることにおいて公正なのかな、と、考え始めています(最大多数の最小不満足?)。
2008/11/23 Sun 10:52:39
URL | 村野すもも #BGeZgrM.[ 編集 ]
>村野すももさん:2008/11/23 Sun 10:52:39
コメントありがとうございます。


>適確な資料と解説のお返事

「白木功、飯島泰、馬場嘉郎『犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を解説する法律(平成19年法律第95号)』の解説(2)・法曹時報第60巻第10号」まで挙げる必要はなかったのでしょうけど、まだ誰も立法解説まで言及した方はいないようなので、紹介してみました。


>ご明察の通り
>>血縁関係に関係なく親しい者が権利義務を有するべき
>…というのが正に私の感覚で、前のようなコメントになりました

死亡した方の関係者の多くが円満でお互いに思い遣ることができる間柄であれば、法律がなくても「血縁関係に関係なく親しい者が権利義務を有する」ということでも、うまく死後の整理が円滑にいくのだと思うのです。しかし、人間関係は色々ですから、法律なしではうまくいかないケースは多々生じるわけです。

そうはいっても、法律で画一的に割り切ることは、当事者はもちろん、国民感情としてもそぐわないのです。そのため、遺言を残すことで、死者の遺志にそった整理をすることができますし(民法960条以下)、死者と特別な縁故で結ばれた者に相続財産の一部又は全部を分与する制度(民法958条の3)などを設けて、ある程度は調整を図っています。


>何と言うか、法律とは皆に少しずつ不満を覚えさせるものであることにおいて公正なのかな、と、考え始めています(最大多数の最小不満足?)。

「法律とは皆に少しずつ不満を覚えさせるものである」「最大多数の最小不満足」という理解は正しいと思います。多くの利害関係者がいて、すべての者が満足できるわけではないのですから。

特に、「ある死者に対して、誰が権利を持っているのか」という身分関係については、家族関係の変化が大きいために、法律と現実社会とのズレが大きく、むしろ誰もが不満を抱いているように思います。

ズレているという非難を家族法学者や(訴訟という形で)当事者は常に訴えているのですが、裁判所は理解せず、国会もなかなか法改正をしないでいるというのが現状です。最近でも、離婚後300日問題は、多数の報道記事により問題視したことで、最近になってやっとある程度の救済策が行われましたが、いまだ法改正には至っていません。誰もが満足できるような法改正は可能であるのにしないでいるのですから、実に不思議なことです。
2008/11/24 Mon 21:35:46
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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2008/11/25 Tue 15:06:23
| #[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ:2008/11/25 Tue 15:06:23
コメントありがとうございます。
非公開ですので、幾らか修正した形で引用します。


>民事では、法律上の血縁関係か否かで判断せざるを得ないように思います。例えば、戸籍上の妻と内縁の妻がいる場合、死亡した者の財産を相続できるのはやはり戸籍上の妻……
>しかし、民事は仕方ないとしても、刑事訴訟において、法律上、民事的利害が生じるにすぎない被害者遺族に、権利を与えるのは問題があるのでは?

心情としては、村野すももさんや非公開コメントさんと同じ思いはします。

刑事手続に参加する犯罪被害者遺族の範囲に関して言えば、血縁関係に関係なく親しい関係にあるような者こそ、直接被害者類似の立場にあるのですから、「被害者遺族である」とみるべきだと思います。

問題は、範囲を明確にできないため、裁判所が判断しづらいという点と、刑訴法290条の2第1項では「被害者等」の「等」の部分で遺族の範囲を明確化してますし、こういった他の法令も血縁関係を判断基準にしていることとのバランスでしょうね。

もちろん、政府や国会の側が、いまさら直接の被害者と被害者遺族は別個という扱いはできないという点もあるのでしょうが。
2008/11/27 Thu 22:05:06
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/column18higai.htm     ↑春霞さんのブログからHPにupしたもの。今朝(3月23日)春霞さんのブログに行ってみたところ、以下の応答が遺されていた。-------------------------->ゆうこさん:2007/03/22
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