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2007/03/20 [Tue] 23:36:23 » E d i t
ライブドアの連結決算を粉飾したなどとして、証券取引法違反の罪に問われたライブドア前社長の堀江貴文被告(34)に対し、東京地裁の小坂敏幸裁判長は3月16日、懲役2年6カ月(求刑懲役4年)の実刑判決を言い渡しました。この報道について紹介したいと思います。なお、判決要旨については、「≫この続きを読む 」の<追記>で引用しておきます。(3月21日追記:このブログで論じたライブドア問題について追記しておきました)


1.報道記事を幾つか。

(1) 東京新聞平成19年3月16日付夕刊1面(共同)(2007年03月16日 13時46分)

 「堀江被告に懲役2年6月の実刑 ライブドア事件で東京地裁

 ライブドア(LD)粉飾決算事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載、偽計・風説の流布)罪に問われ、無罪を主張した前社長堀江貴文被告(34)に対し、東京地裁は16日、懲役2年6月(求刑懲役4年)の判決を言い渡した。

 小坂敏幸裁判長は堀江被告関与を詳述した元取締役宮内亮治被告(39)らの供述・証言を「信用できる」とし、堀江被告の故意、共謀を認めた。

 争点のLD株売却益計上も「売却に関与した投資事業組合は脱法目的で組成され、許されない」と判断。「各犯行で中心的な役割を担った。一部を除いて首謀者とまでは認められず、粉飾も高額ではないが、結果は重大で反省も全くない」として投資家を欺いた責任を厳しく指摘した。

 一連の事件では、両被告ら7人とLDなど2社が起訴され、判決は初めて。証券取引法違反罪単独で実刑は極めて異例。堀江被告は実刑に伴って拘置され、弁護側は直ちに控訴し、再保釈を請求した。

 判決によると、堀江被告は宮内被告らと共謀の上、LDの2004年9月期連結決算で、架空の利益や、別勘定にしなければならないLD株売却益を計上し、約3億円の経常赤字を約50億円の経常黒字に粉飾した有価証券報告書を提出した。

 また同年10―11月には、関連会社の買収先の企業価値を過大評価したり、関連会社の虚偽の業績を発表したりした。

 昨年9月から始まった公判では、宮内被告らの証言の信用性やLD株売却益計上の違法性などを争点に、検察側と弁護側が攻防を続けた。

 検察側は「堀江被告が犯行を主導し、自己と会社の利益のため投資家を欺いた」と主張したが、小坂裁判長は架空利益計上以外の点で主導を認めず「個人的利益目的も認められない。宮内被告らのLD株売却益流用を立件せず、堀江被告が検察側に不公平感を抱くのも理解できないわけではない」と述べた。

 弁護側は「堀江被告の関与はなく、検察がストーリーをでっち上げた」などと主張していた。

 小坂裁判長は言い渡し後、堀江被告に勇気づけられたという障害者の母親から届いた手紙を紹介し「有罪としたが、生き方すべてを否定したわけではない。罪を償い、能力を生かして再出発してほしい」と説諭した。

 堀江被告には争点を絞り込む公判前整理手続きが適用され、昨年1月の逮捕から約1年2カ月、初公判から約半年で判決となった。

 ▽ライブドア(LD)前社長堀江貴文被告に対する証券取引法違反罪で認定された犯罪事実は次の通り。

 【有価証券報告書の虚偽記載】

 堀江被告は元取締役宮内亮治被告らと共謀し、LDの2004年9月期連結決算で、売り上げと認められないLD株売却益約37億6000万円や買収予定企業2社との架空取引による利益約15億8000万円を売上高に含め、約3億円の経常赤字を約50億円の経常黒字に粉飾した虚偽の有価証券報告書を提出した。

 【偽計・風説の流布】

 同様に宮内被告らと共謀し、同年10月から11月にかけ、ライブドアマーケティング(LDM)が出版社を買収した際、出版社の企業価値を過大評価した上、LDMの業績を虚偽発表するなどした。


 <判決骨子>

一、被告を懲役2年6月に処する

一、ライブドア株を売却した投資事業組合は脱法目的で組成され、株売却益の売り上げ計上は許されない

一、被告の故意、共謀を指摘した宮内亮治被告らの供述は信用できる

一、架空利益の計上を除き、犯行を主導したとまでは認められない

一、粉飾は高額ではないが結果は重大で、反省も全くない

 (共同)

(2007年03月16日 13時46分)」


この記事で大体の内容が分かると思います。ただ、誤解を招く記述を立たしておくことにします。それは堀江氏は、「一部を除いて首謀者とまでは認められず」としている点です。首謀者でないとなると、いかにも受身であるイメージになりますが、不正確です。
堀江氏は、「グループ内で絶大な権限を保持しており、すべての犯行は堀江被告の指示、了承なしにはあり得なかった」と指摘して、「架空売り上げの一部を除き各犯行を主導したとはいえないが、中心的な役割を担った」と述べた(日経新聞3月16日付夕刊1面)のです。このように堀江氏は中心的な役割であるため、実刑となったわけです。



(2) 日本経済新聞平成19年3月17日付朝刊3面

「異端児」断罪 3つの背景

 堀江貴文被告の実刑判決は「市場の異端児」の確信的なルール無視に断固たる姿勢を見せた。「実刑」を後押しした3つの理由は<1>情報開示をないがしろにした悪質性<2>一般投資家を欺いた倫理観の欠如<3>巧妙な手口を駆使した粉飾決算の強行。司法は軽々しい規則破りを許さないとのメッセージを送った。

 「国民経済の適切な運営と投資者の保護にとって、情報開示制度は中核に位置する」。小坂敏幸裁判長は判決理由で証券取引法第1条をあえて引用し、堀江被告が踏みにじった開示ルールの重要性を強調した。

 有価証券報告書の虚偽記載、風説の流布、義計……。同被告が問われた罪はすべて情報開示ルールを悪用したもの。企業価値を実態より大きくみせかけるため、やすやすとルールを破った。

 判決はこの点を「情報開示制度の根幹を揺るがし極めて悪質」と指弾した。さらに「投資家の犠牲の上で時価総額を短期間で拡大させる一方、株式を売って多額の資金を得た」と指摘。同被告が個人的利益を享受したのが情状面で不利に働いた。

 小坂裁判長はライブドア全体の倫理観の欠如も問題視。「虚偽情報によって翻弄(ほんろう)される投資家への配慮がみじんもない」と非難した。

 市場ルールの不備を突いた犯行手口も印象を悪くした。企業会計が未整備の投資ファンドに着目し、自社株売却益を売上げ計上した巧妙さを「まさに脱法を狙った」と批判。公認会計士の指摘を振り切って犯行に及んだ点も「強固な意思がうかがえる」と断じた。

 実刑判決について、市場関係者からは「重すぎる」との声も漏れた。53億円の粉飾額は過去の事件に比べて少なく、投資ファンドを介した自社株売却益の連結利益計上も「手元に入ってきた資金を資本勘定に計上するか損益勘定に計上するかの違いで悪質ではない」という理由からだ。

 検察幹部は狙い通りの実刑に「証券市場は経済活動に重大な役割を担っており、影響は大きいと裁判所も判断したのだろう」と納得の表情。別の幹部は「ちょっと軽いね。懲役3年以上じゃないと」と感想を述べた。」


「なぜ、堀江氏が実刑となったのか」について、この判例解説が一番よく説明されていると思います。

「「実刑」を後押しした3つの理由は<1>情報開示をないがしろにした悪質性<2>一般投資家を欺いた倫理観の欠如<3>巧妙な手口を駆使した粉飾決算の強行。司法は軽々しい規則破りを許さないとのメッセージを送った。」

この3点を明確に指摘しているのは、日経新聞のこの解説だけでした。



(3) 読売新聞平成19年3月17日付朝刊34面

実刑判決 識者はこう見た ライブドア事件 堀江被告に懲役2年6月

 証券取引法違反の罪に問われたライブドア前社長・堀江貴文被告(34)に対し、東京地裁が16日に言い渡した懲役2年6月の実刑判決の意味と影響について、識者に聞いた。<本文記事1面>


◇投資家への損害 重く見た――河上和雄弁護士(元東京地検特捜部長)

 実刑判決は当然の結果だろう。宮内被告らかつての仲間が、捜査段階での取調べや公判などで堀江被告の関与を証言しているのに、堀江被告には反省の情すらなかった。また、粉飾決算で、彼が個人的にも経済的利益を得たことを別にしても、株を使った金もうけという新しい型の犯罪であり、多くの投資家に損失をもたらした責任は重い。

 世間には「実刑は重い」と感じる向きもあるだろう。ただ、日本だけでなく周辺諸国の株式市場にまで影響を及ぼした特殊な犯罪であることなども考慮すれば、やや軽いとも言える。エンロンの粉飾決算事件のように、同種の犯罪に対して懲役10年~20年ぐらい重い刑を科す米国などから、「たった2年6月か。日本は経済事件が与える影響を真剣に考えていない」との批判が出てもおかしくないだろう。

 また、事件はメール社会で起きた。特捜部がメールのやり取りで意思決定する会社を摘発したのは、おそらく初めてだろう。特捜部は幸いサーバーを押収できたが、削除されたメールもあり、完全な捜査だったとは言えない。検察、警察は今後、インターネットに相当詳しい捜査員の配置などを考慮しなければいけない。いい教訓になったのではないか。

 戦後日本の社会の価値基準は、これまで「金銭」に置かれていた。堀江被告が逮捕された時には、「若い有望な経営者の芽を摘むのか」との批判も起きた。しかし、裁判所は、自分や会社の金もうけのために他人に損害を与えたという事実に実刑を下した。判決が「金もうけのためなら何をしてもいいわけではない。他人に迷惑をかけるのはよくないことで、ルールは守るべきだ」という別の価値基準があることを世間に示した意味は大きいだろう。


◇企業に「実態」開示迫る――黒沼悦郎・早大教授(証券取引法)

 判決は、資本市場を利用する企業の行動に大きな警鐘を鳴らすものである。これまでの証券取引法違反事件は、損失を隠ぺいする粉飾決算のように比較的単純なものが多かった。それに対し、ライブドアの行為は、グレーゾーンに属する複雑な取引を駆使して資本市場を操作し、積極的に企業の業績を向上させようという新しいタイプの行為で、合法か違法かの判断の難しい点があった。

 風説の流布については、ライブドアマーケティングが株式交換をした際、交換比率を1対1とした部分などに虚偽があるとした。株式交換比率を不正に算出したことを罪に問うもので、M&A(合併・買収)の実務に及ぼす影響は大きい。ただ、同社の株価を上昇させたのは株式の100分割であったのに、その違法性はこの裁判では問われず、一連の行為の過程で現れた比較的小さな詐欺的行為のみが罪に問われた。これが一般投資家を欺く大罪といえるのか、疑問も残る。

 粉飾決算については、違法な会計処理を隠す目的で投資事業組合を利用したとして、自社株売却益を売り上げに計上することが粉飾にあたるとした。堀江被告らは、投資事業組合の会計基準が十分整備されていなかったことを利用したともいえるが、企業内容の開示は会計基準に形式的に従っていればよいというものではなく、企業の経済実態を反映しなければならないから、判決は当然だ。

 判決は、粉飾額は過去の事例に比べると必ずしも高額でないことを認めつつ、実刑とした。自社株の売却益を売り上げに計上しようが資本に計上しようが、会社の財産に変化はない。しかし、IT企業のように成長が期待されている企業にとっては利益の額こそが、投資家の投資判断には重要であり、判決もこの点を重く見たのだろう。


◇「ルール無き自由」認めず――松原隆一郎・東大教授(社会経済学)

 ライブドア事件は、政府が進めてきた規制緩和の下で、起こるべくして起こった事件のように思える。

 戦後、政府は、規制と指導を通して民間には自由な活動を許さなかった。その一方で、株式市場に秩序と成長をもたらした。だが、1990年代以降、銀行による大蔵官僚(当時)接待が問題になるなど、官僚のモラル低下が見られるようになると、官僚が事前に指導や規制をするのではなく、自由に活動させた上で、事後的に取り締まる行政手法へ転換していった。

 市場参加者を事前規制していないのだから、当然、不良業者も交じる。こうした市場で、ライブドアは、匿名性の高い投資事業組合を利用した株の売買を通して、売却益を売り上げに計上するなど、ルールのグレーゾーンを開拓していった。

 多くの経済学者は、事後チェック型社会の先進国、米国をモデルに「不良業者には厳しい罰則が加えられ、厳しさが参加者全体に認識されれば簡単に違法行為はしなくなる」と説明してきた。しかし、日本ではライブドアの行為を「黒」と断定できるほどのルールが定まっていなかった。また、違反者が例外なく罰せられるのではなく、堀江被告が公判で「目立ちすぎて狙われた」と発言しているように、ライブドアだけが断罪されたように映った。

 ルールのない自由という無法地帯になってしまう前に、摘発に動いた検察は評価できる。判決で堀江被告の行為を違法と断じたことで、ルールもはっきりした。だが、ライブドア以外の者が「摘発されないよう、目立たずルール違反すればいい」と学んだとしたら、最悪だ。事前規制型社会に完全に戻ることはないだろうが、米国とはリスクに対する意識が異なる日本では、事前にある程度のチェックが働き、不良業者を排除できるほうが望ましいのではないか。」


この事件は、政府が進めてきた規制緩和を利用した犯罪でした。ですから、この規制緩和による弊害に対して、事後規制として刑事法・民事(商事)法としては、どのように対応すべきかが問題となりました。
河上氏は刑事法の観点から、黒沼氏は民事法(商事法)の観点から説明していますが、このような観点から考えることは重要です。




2.判決前の大方の予想通り有罪でした。ただ、実刑判決か執行猶予かの判断については、分かれていました。例えば、日大法学部の板倉宏教授は、堀江氏は反省することなく強気の法廷闘争を繰り広げてきたことから、「実刑は免れない」と推測していました。これに対して、元最高検検事で白鴎大学法科大学院の土本武司教授は、初犯で、株価の下落という被害は間接的な被害にすぎないとして、「刑は懲役3年、執行猶予5年」と判断していました(ZAKZAK 2007/03/15)。このように分かれていましたが、東京地裁は懲役2年6カ月の実刑判決を下しました。

では、東京地裁はなぜ、有罪・実刑と判断したのでしょうか? その判断の基礎となる考え方について検討してみたいと思います。


(1) 判決は、このように指摘しています。

「本件は、適時開示において虚偽の事実を公表し、また重要な事項につき虚偽記載のある有価証券報告書を提出したものであって、いずれも、情報開示制度を悪用した事案である。

 証券取引においては、個人投資家の自己責任が強く求められる一方、これら投資者に対する正確な情報開示は必須のものと位置づけられている。すなわち、一般投資者が、証券市場において、自主的で合理的な判断に基づき、自己の責任において有価証券の売買を行うためには、客観的かつ正確な情報の提供が必要不可欠である。

 証券取引法は第1条で、国民経済の適切な運営や投資者の保護を掲げ、情報開示制度を中核と位置づけ、上場会社などに対し、企業の概況、経理の状況、その他の事業の内容に関する重要な事項などを記載した有価証券報告書の提出を義務付けて開示を求めている。

 また、東京証券取引所の適時開示制度も、上場会社に対し、投資判断に影響を与える重要な情報を、遅滞なく、正確かつ公平に発表することを要求しており、この制度も、証券取引法の定める情報開示と並んで、投資家保護のための重要な制度として位置づけられる。

 本件は制度の根幹を揺るがすものであって、証券市場の公正性を害する極めて悪質な犯行であると言わざるを得ない。」


日経新聞の解説記事にもありますが、情報開示の重要性を重視したゆえ、有罪、実刑となったというわけです。証券取引法は第1条で、情報開示制度を中核と位置づけているのですから、当然の指摘であるともいえます。



(2) 

「判決は、粉飾額は過去の事例に比べると必ずしも高額でないことを認めつつ、実刑とした。自社株の売却益を売り上げに計上しようが資本に計上しようが、会社の財産に変化はない。しかし、IT企業のように成長が期待されている企業にとっては利益の額こそが、投資家の投資判断には重要であり、判決もこの点を重く見たのだろう。」(黒沼氏の指摘)


このように、ライブドアのようなIT企業の場合には、利益の額こそが投資家の投資判断には重要ですので、特に情報開示が必要ということになり、利益をごまかすような態度は特に問題視すべきことになるわけです。



(3) 

「官僚が事前に指導や規制をするのではなく、自由に活動させた上で、事後的に取り締まる行政手法へ転換していった。……多くの経済学者は、事後チェック型社会の先進国、米国をモデルに「不良業者には厳しい罰則が加えられ、厳しさが参加者全体に認識されれば簡単に違法行為はしなくなる」と説明してきた。」(松原氏の指摘)

近年、企業の競争力を強化するため、規制緩和の見地から、行政施策・立法ともに事前規制から、事後規制に変更されました。すなわち、被害を未然に防ぐのではなく、被害が生じた場合に損害賠償や刑罰で事後規制しようとすることになります。
そうすると、投資家や株主にとっては、行政や法律に代わって自ら判断する場合が増加することになるのですから、判断を決めるためには企業による情報開示の充実こそが重視されることになってきます。

情報開示の充実が重要だとすると、グレーゾーンに属する行為について、合法と判断したり、隠しても良いとなると、実質的に誤った情報を黙認してしまうことになり、情報開示の重要性に反することになってしまいます。こういった判断から、東京地裁は、グレーゾーンに属する行為も、「まさに脱法を狙った」と批判しているのです。




3.このようなに検討すると、有罪・実刑は妥当なものであるといえそうです。情報開示の重要性を重視するなら、控訴審でも無罪になる可能性は低いでしょう。


(1) 東京地裁は、「制度の根幹を揺るがすものであって、証券市場の公正性を害する極めて悪質な犯行である」という厳しい判断を示していますが、証券取引法1条の規定からすると、こういった判断は無理のない判断です。そうなると、控訴審でも同じような厳しい判断を示すことが予想されますので、控訴審でも実刑である可能性は高いと思われます。

ライブドア事件を教訓にして、昨年7月施行の改正証券取引法では、虚偽記載に対する最高刑を懲役5年から詐欺罪と同じ懲役10年に引き上ています。罰則強化の流れからすると、「堀江前社長の実刑は当然だ」(会計専門家)との声が出ているのです(東京新聞3月17日付朝刊)。堀江氏に対する実刑は、罰則強化の流れからするとおかしなものではなく、今後は、情報開示に対して罰則を強化することを明確にしたものといえそうです。


(2) 

「世間には「実刑は重い」と感じる向きもあるだろう。ただ、日本だけでなく周辺諸国の株式市場にまで影響を及ぼした特殊な犯罪であることなども考慮すれば、やや軽いとも言える。エンロンの粉飾決算事件のように、同種の犯罪に対して懲役10年~20年ぐらい重い刑を科す米国などから、「たった2年6月か。日本は経済事件が与える影響を真剣に考えていない」との批判が出てもおかしくないだろう。」(河上氏の指摘)

このように、周辺諸国では、もっと重い刑が当然であることを考えると、控訴審ではもっと重い量刑(3年以上)になる可能性すらあります。


(3) 

「裁判所は、自分や会社の金もうけのために他人に損害を与えたという事実に実刑を下した。判決が「金もうけのためなら何をしてもいいわけではない。他人に迷惑をかけるのはよくないことで、ルールは守るべきだ」という別の価値基準があることを世間に示した意味は大きいだろう。」(河上氏の指摘)



東京地裁は、「企業経営者には高い倫理観と順法精神が求められるのであって、企業利益のみを追求し、法を無視することが許されるものではない」と指摘しています。このように、会計基準や法律上、違法であることが明確でないなら、企業利益や自己の利益追求のため、金もうけのため、実行してよいということにはならないのです。

今後、企業経営はもちろん、他の分野においても、一層の高度な専門知識が必要となってきますが、高度な知識を濫用することなく、順法精神をもって行動する必要があるのです。この判決は、このような順法精神が重要である点を明確にしたことに意義があるといえると思います。



<3月21日追記>

このライブドア問題については、「1月17日におきた事件へのコメント」(2006/01/17(火) 23:45:25)「ライブドアの粉飾決算と、証人喚問での証言拒否~17日の続報」(2006/01/20(金) 00:50:02)「証券取引法158条の解釈」(2006/02/10(金) 06:35:35)「ライブドア事件の意味~毎日新聞の「記者の目」より」(2006/02/12(日) 17:36:18)「ライブドア捜査終結へ~追起訴見送り」(2006/04/29(土) 05:05:36)「変わらぬ「堀江節」に時空が歪んだ錯覚に~朝日新聞12月8日付夕刊「時評圏外」より」(2006/12/09(土) 06:00:36)でも論じています。こちらもご覧下さい。


この事件に関しては1点注意しておきます。(ご指摘を受けて追記しました。ご指摘ありがとうございます)

当初予定していた検察側の見込みは、「プロの金融犯罪グループの犯罪」だったようで、マスコミ報道も、検察側のリークによって過熱した報道を繰り広げて、踊らされていました。一番踊らされたのは毎日新聞でしょう。しかし、「プロの金融犯罪グループの犯罪」ではなかったのです。

ならば、検察側は誤解したとはいえ、株式市場に影響を与えないような方法をとるべきだったと反省すべきです(一般投資家に損害が生じたのは、捜査活動にも一因)。皮肉を言えば、見込みと違って起訴したことに対して、東京地裁はうまいこと取り繕った形で判決を書いてくれたのです。

それにもましてマスコミも誤報を繰り広げたことを猛省すべきです。あまりにも誇大妄想のような誤報だったことが過剰に株式市場に影響を与えたといえるですから。この判決について各紙解説していましたが、マスコミ報道のあり方を反省するものは皆無でした。




<追記>

各紙判決要旨を紙面に掲載しています。ネット上には朝日新聞、産経新聞、毎日新聞が掲載しています。この判決の場合、重要なのは量刑理由ですので、ネット掲載中のものでは、毎日新聞新聞(2007年3月16日 13時49分)が詳しいので、これを引用しておきます。

 「ライブドア判決:堀江前社長判決(要旨)

 東京地裁が16日、ライブドア(LD)前社長、堀江貴文被告に言い渡した判決の要旨は次の通り。

■事実認定の補足説明

<LDの自社株売却益の利益計上について>

 自社株売却益の利益計上に関し、当裁判所は、LD株の売却に関与した投資事業組合(ファンド)について、その組成目的には会計処理の潜脱も含まれており、その業務内容等も上記目的に沿っていると認定し、そのように脱法目的で組成された組合はその存在を否定すべきであるから、LD株の売却益をLDの売上げに計上することは許されないと判断した。

 また、堀江被告の故意・共謀について、当裁判所は、信用できる前財務担当取締役・宮内亮治被告、前執行役員・中村長也被告の供述によりこれを認定した。宮内、中村被告の供述が信用できる理由は、メールによって裏付けられている信用性の高い前代表取締役・熊谷史人被告の供述と符号するからである。

<LDの架空売り上げに関する堀江被告の故意・共謀について>

 架空売り上げに関する堀江被告の故意・共謀について、当裁判所は、信用できる宮内被告の供述によりこれを認定した。宮内被告の供述が信用できる理由は、稟議(りんぎ)の状況等から信用性の高い熊谷被告の検察官調書と符合するからである。

<LDMにおける虚偽事実の公表>

 株式交換に関する公表は、マネーライフ社の企業価値を過大評価して交換比率を決定しているにもかかわらず、適正な評価方法で算出された旨公表していることなどから虚偽と認めた。四半期業績についても、ライブドアマーケティング(LDM)従業員の供述等からその全額が架空であるから、公表は虚偽であると認めた。

<虚偽事実の公表についての堀江被告の故意・共謀>

 株式交換及び四半期業績に関する各公表について、当裁判所は信用できる宮内、中村、前取締役・岡本文人被告の供述によりこれを認定した。宮内、中村被告らの供述が信用できる理由は、これらがメールによって裏付けられており、あるいはメールによって裏付けられている信用性の高い元LDM代表取締役の供述と符号するからである。

<LDM株の売買の目的等>

 虚偽事実の公表は、株価下落要因を公表せず、上昇要因を公表したものであり、LDM株の売買のため及び同株価の維持上昇を図る目的をもって行われたものと認めた。

<公訴棄却の申し立て>

 弁護人の公訴棄却の申し立てについては、確かに宮内、中村被告が会社財産の一部を個人的に費消したことが強く疑われるが、宮内被告らの供述は第三者の供述やメールによって裏付けられているから、弁護人がいう黙契があったとも認められない。

■量刑の理由

 本件は、適時開示において虚偽の事実を公表し、また重要な事項につき虚偽記載のある有価証券報告書を提出したものであって、いずれも、情報開示制度を悪用した事案である。

 証券取引においては、個人投資家の自己責任が強く求められる一方、これら投資者に対する正確な情報開示は必須のものと位置づけられている。すなわち、一般投資者が、証券市場において、自主的で合理的な判断に基づき、自己の責任において有価証券の売買を行うためには、客観的かつ正確な情報の提供が必要不可欠である。

 証券取引法は第1条で、国民経済の適切な運営や投資者の保護を掲げ、情報開示制度を中核と位置づけ、上場会社などに対し、企業の概況、経理の状況、その他の事業の内容に関する重要な事項などを記載した有価証券報告書の提出を義務付けて開示を求めている。

 また、東京証券取引所の適時開示制度も、上場会社に対し、投資判断に影響を与える重要な情報を、遅滞なく、正確かつ公平に発表することを要求しており、この制度も、証券取引法の定める情報開示と並んで、投資家保護のための重要な制度として位置づけられる。

 本件は制度の根幹を揺るがすものであって、証券市場の公正性を害する極めて悪質な犯行であると言わざるを得ない。

 特に、粉飾決算について、LDでは本業であるインターネット関連事業の業績が上がっていなかったにもかかわらず、04年9月期の連結業績予想について、利益計上の許されないLD株売却益を見込み、経常利益を50億円まで上方修正する一方、同年9月期の業績について、経常損失が発生していたにもかかわらず、自己株式売却益および架空の売り上げを計上して、有望な企業の姿を装ったものである。

 本件犯行は、損失額を隠ぺいするような過去の粉飾決算とは異なり、投資者に成長性の高い企業の姿を示し、その判断を大きく誤らせ、多くの投資者に資金を拠出させたというものであって、粉飾額自体は過去の事例に比べ、高額ではないにしても、その犯行の結果は、大きいものがある。すなわち、粉飾により株価を不正につり上げて、LDの企業価値を実態よりも過大に見せかけ、株式分割を実施して、人為的にLDの株価を高騰させ、結果として、同社の時価総額を短期間で急激に拡大させたのである。一般投資者をあざむき、その犠牲の上に立って、企業利益のみを追求した犯罪であって、その目的に酌量の余地がないばかりか、強い非難に値する。

 しかもそのスキームは、企業会計が十分整備されていないファンドを悪用したものであり、脱法を企図したことは明らかである。また、公認会計士の指摘を受けて、日付をさかのぼらせて組成したファンドをスキームに介在させて複雑化するなど、粉飾の手口は巧妙である。

 また、架空売り上げの計上については、公認会計士から粉飾の指摘があったにもかかわらず、あえて強行しているのであって、強固な意思がうかがわれる。

 企業経営者には高い倫理観と順法精神が求められるのであって、企業利益のみを追求し、法を無視することが許されるものではないことは論をまたない。まして上場会社においては、廉直(れんちょく)かつ公正な、透明性のある経営が要請されている。しかるに本件は経営陣が自ら直接主導するなどして組織的に敢行されたものだ。堀江被告らは、見せかけの成長にこだわり、短期的な企業利益のみを追求したものであって、そこには、上場企業の経営者としての自覚はみじんも感じられない。

 堀江被告はLDの創業者で、当時、唯一代表権を有する代表取締役社長であり、かつ、筆頭大株主でもあって、グループの不動のトップとして君臨し、業務全般を統括するなど、グループ内で絶大なる権限を保持していたものである。

 そして堀江被告は、LDMの架空売り上げの計上については、自ら直接指示したものであって、また、それ以外についても、宮内被告らからの報告・提案を受けてこれを了承し、最終的な決定をする形で関与したもので、中心的な役割を担ったことは否めない。堀江被告の指示、了承なしには本件の実行はあり得なかった。

 また本件は堀江被告が前年を上回る業績の公表を強く希望し、その達成を推進してきた結果に他ならない。

 加えて堀江被告はLDの大株主であり、本件の実行により株式保有率自体は低下したものの、筆頭株主の地位は失わず、保有する株式の時価総額も増大し、結果的に本件の利益を享受している。現に一部の保有株を売却し多額の資金を得ており、このこと自体から堀江被告が個人的利益を得る目的で本件を行ったとまでは認められないにしても、これを量刑上、看過することはできない。

 さらに堀江被告は、共謀の成立を否定するなどして否認しており、公判でもメールの存在などで客観的に明らかな事実に反する供述をするなど、不自然・不合理な弁解に終始しており、多額の損害を被った株主や一般投資家に対する謝罪の言葉を述べることもなく、反省はまったく認められない。以上によれば、堀江被告の刑事責任は相当に重いと言うべきである。

 そうすると、LDMにおける架空売り上げの計上以外の点については、いずれも、宮内被告が中心となって計画、実行したもので、堀江被告は宮内被告らの提案などを受けてこれを了承したにとどまり、検察官が主張するように、堀江被告が最高責任者として本件を主導したとまでは認められないこと、本件発覚後、グループのすべての役職を辞め、本件により逮捕・拘置され、3カ月以上にわたり身柄拘束されたこと、マスコミなどで事件が社会的に大きく取り上げられ、厳しい非難にさらされるなど、一定程度の社会的制裁を受けていること、前科前歴がないことなど、堀江被告のためにしん酌すべき事情を最大限に考慮しても、実刑をもって臨まざるをえず、刑期についても、堀江被告の責任の重さに照らすと、主文掲載の刑は免れないと判断した。

毎日新聞 2007年3月16日 13時49分」




テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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コメント
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2007/03/21 Wed 11:29:42
| #[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ
コメントありがとうございます。

実に正しいご指摘だと思います。大変参考になりました。ありがとうございます。
2007/03/21 Wed 22:00:48
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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