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2007/02/23 [Fri] 23:57:21 » E d i t
「離婚後300日以内に誕生した子は前夫の子」との民法772条の認識不足で大阪地検が中国人女性を誤って起訴した問題について、関わった検事らが処分を受けました。この記事を紹介したいと思います。


1.報道記事とそれへのコメント。

(1) 毎日新聞平成19年2月22日付朝刊29面

 「民法772条問題:誤起訴した担当検察官ら処分へ

 「離婚後300日以内に誕生した子は前夫の子」との民法772条の認識不足で大阪地検が中国人女性を誤って起訴した問題で、長勢甚遠法相は21日の衆院法務委員会で担当検察官らを処分する方針を明らかにした。平岡秀夫議員(民主)の質問に答えた。

 誤った起訴にかかわった検察官について、長勢法相は「担当検事と刑事部副部長、刑事部長の3人」と明かした。そのうえで、平岡議員から「どうけじめをつけるのか」と問われると、長勢法相は「何もしないことはまずない」と述べた。【工藤哲】

毎日新聞 2007年2月22日 東京朝刊」




(2) 毎日新聞のHP(2007年2月23日21時15分)

 「民法772条:認識不足で起訴、検事ら注意処分 大阪地検

 交際相手との子を前夫の子として届け出た中国人女性を民法772条の規定の認識不足から、公正証書原本不実記載・同行使罪で誤って起訴したとして、大阪地検は23日、担当の副検事と決裁した大島忠郁刑事部長、副部長の計3人を内規に基づく厳重注意処分とした。

 同条は離婚後300日以内に誕生した子を前夫の子と推定すると規定。女性はこれに従い、前夫との離婚から5カ月後に出産した交際相手との間の男児について、大阪市港区役所に「前夫の長男」として出生届を出した。大阪地検はこれを「虚偽の届け出」と誤解。昨年10月に女性を起訴したが、公判中に誤りに気付き、今月16日に起訴を取り消していた。【日野行介】

毎日新聞 2007年2月23日 21時15分」



(3) 今回の公正証書原本不実記載・同行使罪では、犯罪事実の根幹となるのは民法772条の規定であるのに、その規定の認識不足があり、確かめることもしないというあまりに明白なミスをによって、起訴してしまったのですから、処分を受けることは当然のことです。

ミスの程度や処分の程度によるので一概に言えないのですが、処分を受けた検察官は、すぐにではなくても辞職していたりします。今回の場合、担当の副検事と決裁した大島忠郁刑事部長、副部長のうち、何時になるか不明ですが、どなたかは辞職する可能性があります。


明白なミスで起訴されてしまった女性の不利益からしても、処分することは良いとしても、民法772条の「離婚後300日規定」が不合理であることは確かです。不合理な規定であるのに、その規定があるため処分されてしまうのですから、ある意味、不合理な処分といえなくもありません。もし、「300日規定」が改正されていれば、まったく問題は生じなかったのですから。ましてや、いずれ辞職の道が待っているのですから、不合理な思いが生じてしまうでしょう。

こういう不合理な処分が起きないためにも、民法772条の「離婚後300日規定」を改正して、再婚後出生した子供は、前夫の子ではなく、現在の夫の子と推定する規定に変更することが妥当であると思います。



2.おまけとして、「嫡出:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」の誤りについて、言及しておきます。

(1) 元々、ウィキペディアは、必ずしも正しいとはいえません。最近も、次のような記事が出ていました。

ウィキペディア頼み、誤答続々 米大学が試験で引用禁止
2007年02月23日

 米バーモント州にある名門ミドルベリー大学の史学部が、オンラインで一定の利用者が書き込んだり修正したりできる百科事典「ウィキペディア」を学生がテストやリポートで引用することを認めない措置を1月に決めた。日本史の講義をもつ同大教授がテストでの共通の間違いをたどったところ、ウィキペディア(英語版)の「島原の乱」(1637~38)をめぐる記述にたどり着いたことが措置導入の一つのきっかけになった。

 日本史を教えるニール・ウオーターズ教授(61)は昨年12月の学期末テストで、二十数人のクラスで数人が島原の乱について「イエズス会が反乱勢力を支援した」と記述したことに気づいた。「イエズス会が九州でおおっぴらに活動できる状態になかった」と不思議に思って間違いのもとをたどったところ、ウィキペディアの「島原の乱」の項目に行き着いた。

 ウィキペディアに基づいて答案を書いたと思われる例は以前からあったという。「大変便利で、調べごとの導入に使うことに全く異存はないが、一部の学生は書いてあることをそのまま信じてしまう」と教授は言う。

 同大史学部では1月、「学生は自らの提供する情報の正確さに責任をもつべきで、ウィキペディアや同様の情報源を誤りの言い逃れにできない」として引用禁止を通知した。ドン・ワイアット学部長によると、「同様の情報源」とはウェブ上にあって多数の人間が編集することができ、記述の正確さが担保できない情報源を指すという。

 学生の多くは納得したが、「教員が知識を限定しようとしている」との不満も出た。他学部には広まっていないという。

 島原の乱をめぐる記述はニューヨーク・タイムズ紙がこの問題を取り上げた21日、修正された。

 ウィキペディアの創始者のジミー・ウェルズさん(40)は「慈善的に人間の知識を集める事業であり、ブリタニカと同様以上の質をめざして努力している。ただ、百科事典の引用は学術研究の文書には適切でないと言い続けてきた」と話す。 」(asahi.com(2007年02月23日)


ウィキペディアの創始者のジミー・ウェルズさんが「百科事典の引用は学術研究の文書には適切でない」と述べている通りです。法律問題についても、学術的に検討する場合、ウィキペディアを引用することは適切ではないのです。


(2) 間違いと思う記述はこの箇所です。

 「民法772条の問題点

上記のとおり、嫡出子の推定については民法772条で婚姻成立の日から200日以後婚姻解消・取消しの300日以内とされているため、離婚後300日以内に前夫以外の者を父とする子どもが生まれた場合、この子は前夫の子と推定される。この様な場合において、現在の戸籍窓口が推定規定に反する者を父とする出生届の受理を認めておらず、また、多くの法律家が前夫との親子関係を否定するためには審判が必要であると思いこんでいたために、前夫との関わりを避けたい母が出生届を提出せず、結果として無戸籍の子を生じているとの問題が指摘されている。
厳密に検討すれば、かかる事態は嫡出推定の規定により生じたと言うよりも、出生届の提出前に遺伝上の父に対して認知を求める訴えを提起するという方法を知らなかった法律家、あるいは、積極的な父の証明がある場合にさえ遺伝上の父を父とする出生届を受理しないという戸籍運用により生じたというべきであろう。

なお、戸籍がなくても住民票の交付、学校教育を受けることは可能である。ただし、日本国民という証明がない以上、パスポートの発券は不可能である。」



もっと問題のある点を絞ると、

 「かかる事態は嫡出推定の規定により生じたと言うよりも、出生届の提出前に遺伝上の父に対して認知を求める訴えを提起するという方法を知らなかった法律家、あるいは、積極的な父の証明がある場合にさえ遺伝上の父を父とする出生届を受理しないという戸籍運用により生じたというべきであろう。」

の点です。

形式的に民法772条にあたる場合でもその推定が及ばない場合があること(いわゆる「推定の及ばない子」)を認めたのが、最高裁昭和44年5月29日判決ですが、その判決は、夫から嫡出否認の訴えがなくても、実の親に対する認知の訴え(民法787条:強制認知)を提起できることを認めています(「離婚後300日問題(民法772条問題)~離婚後に出産、子供の戸籍は?」参照)。

認知の訴えは、出生届後にできるという制限はありませんから、最高裁昭和44年5月29日判決は、「出生届の提出前に遺伝上の父に対して認知を求める訴え」を認めた判例といえるのです。最高裁昭和44年5月29日判決は、「推定の及ばない子」の典型例であり、著名な判例ですので、知らない法律家はまずいません。

ですから、この問題に関わったことがある法律家(=弁護士)のうちで、

「出生届の提出前に遺伝上の父に対して認知を求める訴えを提起するという方法を知らなかった法律家」

がいるというのは、ちょっと考えにくい
です。

もっとも、家族法関係に全く疎いため、この問題について全く無知な法律家もいるとは思いますが。(なお、「認知を求める訴えを提起するという方法を知らなかった法律家」というように、認知を求める訴えを起こす側の法律家を問題にしているので、この記述における「法律家」とは、弁護士のみを意味しているのでしょう。772条を失念するような検察官であれば、「出生届の提出前に遺伝上の父に対して認知を求める訴えを提起するという方法」は知らないかもしれませんが。)


また、

「積極的な父の証明がある場合にさえ遺伝上の父を父とする出生届を受理しないという戸籍運用により生じたというべきであろう」

という点も問題です。

法解釈の最終的な決定権限は、行政権ではなく、司法権(裁判所)にありますから、裁判例に違反するような行政解釈・戸籍運用を取ることはできません。

血液型又はDNA鑑定結果が不一致である場合には、772条の推定が及ばない子と扱う裁判例(東京家審昭和52年3月5日)も確かにあります。このような裁判例によれば、「積極的な父の証明がある場合にさえ遺伝上の父を父とする出生届を受理」するという戸籍運用も可能です。

しかし、多くの判決・審決は、血液型やDNA鑑定の不一致だけでなく、家庭の崩壊や各当事者の意思を推定排除の条件としているのです(札幌家審昭和61年9月22日、東京高判平成6年3月28日)。そうすると、DNA鑑定があっても、すなわち積極的な父の証明があっても、「遺伝上の父を父とする出生届を受理する」という戸籍運用を採ることは、多くの判決・審決に反してしまいます。

そうなると、行政としては、裁判例に違反するような行政解釈・戸籍運用を取ることはできないのですから、多数の裁判例に従うことになり、「積極的な父の証明(=DNA鑑定)があれば、遺伝上の父を父とする出生届を受理する」という戸籍運用を採ることは難しいのです。

「積極的な父の証明がある場合にさえ遺伝上の父を父とする出生届を受理しないという戸籍運用」が悪いのではなく、そうせざるを得ない裁判例があるからです。そして、そういった裁判例が生じるのも、民法772条の「離婚後300日以内に出生した子は前夫の子と推定する」旨の規定があるからなのです。

ウィキペディアの記述のように、無知な法律家が悪いのでも、戸籍運用・戸籍実務が悪いのでもないのです。かかる事態は民法772条の「離婚後300日規定」により生じたという理解が妥当なのです。

なお、

「かかる事態は嫡出推定の規定により生じたと言うよりも」

の部分も誤解を生じさせるので、よくありません。民法772条による推定規定すべてが良くないというのではなく、「再婚後の出生した子を前の夫と推定する」部分が妥当でないと、言っているのです。この点を誤解してしてはいけません。もっとも、誤解している弁護士のブログもありますが(Yahooの検索ですぐ出てくるブログですね)。


ウィキペディアを読んで調べることは良いとしても、それをむやみに信用することはせず、よく確かめることが必要です。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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