なお、「≫この続きを読む」以降に、東京新聞と読売新聞の記事を引用しておきました。 「こうのとりのゆりかご」問題についての議論がよく分かると思います。(追記:参考になるサイトを追記しました)
1.読売新聞平成19年2月23日付朝刊39面
「熊本「赤ちゃんポスト」厚労省が容認の意向
熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が、親が養育できない新生児を預かる国内初の「赤ちゃんポスト」の設置を同市に申請している問題で、厚生労働省は22日、「現行法では明らかに違反とは言い切れない」として設置を認める考えを示した。これを受けて熊本市は、申請を認める方向で最終調整に入る。
ただ同省は今後、同様の施設設備を設置する動きが出たとしても、「一律に容認する訳ではない」との方針。乳児がただちに適切な看護を受けられ、生命や身体が危険にさらされることのない環境かどうかを個別に検証し、児童虐待防止法などに抵触しないかどうかを個別のケースごとに慎重に判断するとしている。
赤ちゃんポストを巡っては、「失われる命が助かる」と評価する一方、「捨て子を助長しかねない」との批判もあった。また<1>新生児を手放すことが児童虐待防止法の虐待にあたらないか<2>病院は刑法の保護責任者遺棄罪のほう助に問われないか――などの法的問題が浮上していた。
これらの点について熊本市の幸山政史市長が22日、厚労省を訪れ、見解を求めたのに対し、同省は、「安全な病院内で直ちに適切な看護が受けられるなら、虐待に当たるとは言い切れない」と説明。保護責任者遺棄罪については、「ケースバイケースで判断され、直ちに法に抵触するとは思われない」と述べた。
ただ同省は、設置を同市が許可する場合には、<1>ポストの付近に、児童相談所などに相談するよう親に呼びかける掲示をする<2>赤ちゃんを預かった場合は必ず児童相談所に通告する<3>赤ちゃんの健康と安全への配慮を徹底する<4>親が考え直した場合には、引き取ることができるような仕組みを考える――の4点を検討するよう要望した。
一方、同省の辻哲夫次官は22日の記者会見で、同病院の申請した赤ちゃんポストが「医療法や児童福祉法に違反しているということは言えない」と述べ、「申請を認めないという合理的理由はない」との考えを明らかにした。
設置を認める厚労省の見解について、慈恵病院の蓮田太二・副院長は、「うれしく思う。命の尊さを理解してそう話されたのだろう。病院内で設置に向けて話し合い、市との協議も重ねていきたい」と語った。
一方、幸山市長は「今後は、出来るだけ早い時期に申請について判断していくことになると考えています」とのコメントを出した。
<赤ちゃんポスト> 熊本市の慈恵病院が昨年11月に設置計画を公表。「新生児相談室」の壁の扉を外から開け、温度管理された特製保育器に匿名で新生児を預けてもらう。新生児が保育器に置かれるとセンサーで感知し、医師らが駆け付ける。ドイツでは約80か所で運用されているという。
大日向雅美・恵泉女学園大教授の話 「捨てられていく命、助からない命を目の当たりにして、一つの方法として踏み出さざるを得ない現実があったのだろう。今後は、救った命をどう守っていくかというハード・ソフト両面のケアが必要になる。『子育ては社会全体で行うもの』と言われるようになったが、救われた命が本当に助かって良かったと思えるかどうか。日本の子育てに対する真価が問われると思う」
才村純・日本子ども家庭総合研究所ソーシャルワーク研究担当部長の話 「赤ちゃんポストは捨て子を助長することになる。匿名で捨てられた子どもが成長した時に、自分の出自を知る権利が損なわれる危険性もある。最終的に親が育てないという選択肢を取るにしても、親との話し合いを経ることが必要。相談内容が記録に残る児童相談所など、公的機関の敷居を低くすることを先にやるべきだ」
(2007年2月23日0時4分 読売新聞)」
「こうのとりのゆりかご」を設置するに当たっては、様々な法律違反の可能性があったわけですが、主として、<1>新生児を手放すことが児童虐待防止法の虐待にあたらないか<2>病院は刑法の保護責任者遺棄罪の幇助に問われないか、法律上問題になったわけです。
厚労省は、検討した結果、「安全な病院内で直ちに適切な看護が受けられるなら、虐待に当たるとは言い切れない」として、児童虐待防止法に違反することにならないとしました。また、保護責任者遺棄罪の幇助の成否についても、厚労省は「ケースバイケースで判断され、直ちに法に抵触するとは思われない」と述べて、 保護責任者遺棄罪の幇助の成立を認めるのは困難であるとして、刑法上問題はないとしたわけです。要するに、慈恵病院による設置要請に関しては、法律上は問題はないと判断したわけです。
ただし、<1>ポストの付近に、児童相談所などに相談するよう親に呼びかける掲示をする<2>赤ちゃんを預かった場合は必ず児童相談所に通告する<3>赤ちゃんの健康と安全への配慮を徹底する<4>親が考え直した場合には、引き取ることができるような仕組みを考える――という4点を満たすように要求しました。
この4点を簡単に言えば、「こうのとりのゆりかご」に入れに来る親に対して、止めさせるような動機付けを明示すること、赤ちゃんの生命を確保すること、に努める条件を出したのです。
2.「こうのとりのゆりかご」はドイツで導入されている制度を参考にしたそうですが、ドイツやフランスにおける制度について説明しておきます。
「匿名出産とBabyklappe
望まない子、育てることができない子を妊娠した者が中絶したり、産み捨てたり、殺害することを避けるために、生母を明らかにしない形で出生の届出をすることができてもよいのではないか。
ヨーロッパでは中世以来、育てられない子を修道院などに捨てること(養育付託)が慣行として行われていたが、日本でも同様の事情はあったであろう。身分関係の国家的把握に熱心な近代国家では認めがたい慣行ではあろうが、フランスではこれを法律上認めている(匿名出産 accouchement sous X)。
ドイツでも2000年にハンブルクの子箱(Babyklappe)のことが話題になった。キリスト教会、病院、民間施設などに設置された箱(中は清潔安全なベッド)に赤ちゃんを入れて扉を閉めると設置者にそれが伝わり、すばやく対応できるようになっている。
血縁主義的親子観の強いドイツでは匿名出産には否定的であるが、一部にはこれを認めようとする動きもある。逆に、フランスでも、子どもの出自を知る権利の観点から見直しの声もあるようである。」(高橋朋子・床谷文雄・棚村政行著「民法7親族・相続」(2004年、有斐閣)130頁)
ドイツでは、ハンブルクの子箱(Babyklappe)と呼ばれているのですが、こういった制度が導入されているのは、ヨーロッパでは中世以来、育てられない子を修道院などに捨てること(養育付託)が慣行であったことに由来しているわけです。だから、設置に付き議論があったとしても、伝統的に受け入れる余地があったといえるのです。
今回の日本では、慈恵病院だけに設置するのですが、ドイツでは、病院に限らず、「キリスト教会、病院、民間施設」において設置しているのですから、保護できるだけの設備があれば、かなり広く設置機関を認めています。
注意したいことは、フランスは法律上、公式に匿名での出生を認め(匿名出産)、ドイツでは、密かに「ハンブルクの子箱」に入れる形で、実質的に匿名での出生を認めていることなのです。要するに、フランス・ドイツでは、匿名性を確保することで、少しでも「望まない子、育てることができない子を妊娠した者が中絶したり、産み捨てたり、殺害することを避ける」ことが可能になると判断しているのです。
日本では、事情があって親元で育てられない子を里親に養育してもらう「里親制度」(児童福祉法)があり、また、1973年に、産婦人科医が子捨て・子殺しを防ぐため、100人以上の新生児を実子として、子どもを望む夫婦に斡旋していたことが発覚したことを切っ掛けとして、特別養子縁組制度が1987年に新設されました。他にも、児童相談所もあります。
このように、日本でも子捨て・子殺しを避ける制度はあるのですが、いずれも匿名での出生を認める制度ではなく、日本では匿名性を確保する形での出生を認める制度はないのです。そのため、子捨て・子殺しを少しでも減らすため、「生母を明らかにしない形で出生の届出をすることができてもよいのではないか」との主張がなされているのです。慈恵病院が設置を求めている「こうのとりのゆりかご」は、こういった主張にそう一手段であるわけです。
3.「こうのとりのゆりかご」を設置するに当たっては、主として、<1>新生児を手放すことが児童虐待防止法の虐待にあたらないか<2>病院は刑法の保護責任者遺棄罪の幇助に問われないかが、法律上問題になりますが、ここでは、<2>の「病院は刑法の保護責任者遺棄罪の幇助に問われないか」について説明しておきます。
(1) 病院に対して保護責任者遺棄罪の幇助犯が成立するためには、(a)捨てた親に保護責任者遺棄罪(刑法218条)の要件を満たしていること、かつ、(b)幇助犯(刑法62条)の要件を満たしていることが必要です。
親が乳児を病院の新生児室のベッドに捨てたような場合、保護責任者遺棄罪が成立するかについて、昔から議論がなされていて、従来は、保護責任者遺棄罪の性質の違いによって結論が分かれるとされてきました。
・被遺棄者の生命・身体に対して抽象的な危険が生じれば足りるとする説(抽象的危険犯説)→保護責任者遺棄罪が成立
・被遺棄者の生命・身体に対する具体的な危険が生じている必要があるとする説(具体的危険犯説)→保護責任者遺棄罪は不成立
ただ、現在では、どういう説であっても、被遺棄者に対して何らかの危険の存在が必要であるとされています。そのため、「いずれの見解からも、保護が確実に見込まれる場合には犯罪の成立が否定」(山口厚著「刑法各論」31頁)されると理解されているのです。
そうすると、慈恵病院が予定している「こうのとりのゆりかご」は、内部が適温に保たれた保育器であり、ここに赤ちゃんが置かれると、待機中の看護師のブザーが鳴って駆けつけるのですから、「保護が確実に見込まれる」のです。
とすれば、慈恵病院が予定している「こうのとりのゆりかご」に子どもを入れる親には、保護責任者遺棄罪が成立しないことになります。
この問題につき、保護責任者遺棄罪が成立するかのようなことを述べる刑法学者もいますが、一昔前の学説に基づいてそのような結論を述べているといってよいでしょう。
(2) 仮に、慈恵病院が予定している「こうのとりのゆりかご」に子どもを入れる親に、保護責任者遺棄罪が成立するとしても、設置した病院に「幇助犯」の成立を認めることは困難です。幾つか理由が考えられます。
・特定の人物に対して幇助しているのではなく、不特定人に対する幇助になることから、「幇助」といえない可能性がある。
・病院にとって赤ちゃんの生命を守ることは、病院としての義務であることから、「こうのとりのゆりかご」は義務を履行するための1手段にすぎず、病院の日常的な業務の1手段といえる(いわゆる「日常的行為と幇助」の問題。この「日常的行為と幇助」の議論につき、「ウィニー著作権法違反裁判〜京都地裁平成18年12月13日判決へのコメント」、「ウィニー(Winny)著作権法違反裁判〜京都地裁判決に関する弁護士の解説の比較」を参照)。
・「こうのとりのゆりかご」は、あくまで赤ちゃんの生命を守るための緊急避難の手段して設置するものであるから、幇助する意思がないとして「幇助犯」の要件を欠くか、また、緊急避難(刑法37条)として違法性を阻却する。
3.才村純氏が述べるように、「赤ちゃんポストは捨て子を助長することになる。匿名で捨てられた子どもが成長した時に、自分の出自を知る権利が損なわれる危険性もある」という面はあるでしょう。
しかし、現に子捨て・子殺しは存在する以上、赤ちゃんの命を救うために、命を救済する手段を増やすことは意義のあることだと思います。「こうのとりのゆりかご」の設置の結果、出自を知る権利が損なわれる子供が出てくるとしても、まずは命があればこそです。命が失ってしまっては、死後、出自が分かっても無意味です。
慈恵病院が「こうのとりのゆりかご」を設置することは妥当であると考えます。
<追記>
外国の事情について触れた文献として、雑誌『医療・生命と倫理・社会』(オンライン版)があります。
この文献中に、「雑誌『医療・生命と倫理・社会』Vol.2 No.1(オンライン版)2002年9月20日刊行:「ひとは如何にして子どもを「捨てる」か――ドイツにおける「捨て子ボックス」――阪本恭子」、『医療・生命と倫理・社会』(オンライン版)Vol.5 No.1/2 2006年3月20日刊行:「オーストリアにおける捨て子ボックスと匿名出産に関する2001年7月27日の法令 ――阪本恭子」(PDF)があります。
この文献中から、一部引用しておきます。
「匿名性を保証することが,ボックスに存在価値を与える.それは,ボックスをめぐる論争の中心問題でもある.……
「「生命」(life)に対する固有の権利と「生存」(survival)の権利(第六条).ボックスが子どもに確約する権利である.
たしかにボックスは,母親に匿名性を保証する一方で,子どもには,出自を知ることができない苦境をもたらす.一面的で一時的な救済措置である.けれども,生きのびてこそ子どもは,親の名前を知りたいという欲求や,捨てた親への怒り,憧憬を抱く.これらを,捨てられた子どもは生きる権利とともに得た.彼らが,隠された母親の名前と引き換えにして生き続けていることの,鮮明な「証拠」である.
ボックスの外と内に分かたれる母と子の「苦境」.子どもはそれを,生きのびる権利と同じく固有の(inherent)ものとして母から受け継ぐ(inherit)ことのないように.子どもが,不幸は,捨てられたことではなく,生きていなかったかもしれないことだ,と自分の「必然性」[6]を肯定できるように.ボックス運営者には,そうした配慮のもとで子どもを養護する責任がある.子どもにとってボックスはいわば「拡大家族」(第五条)の入り口である.」
匿名性こそが重要であり、子供に生きる権利を与えることに意義があるのです。
これらの文献を知ったのは、「ふたつとない日常」さんの「赤ちゃんポストを利用するのは誰なのか」です。感謝します。このエントリーでは、「ポストを設置したら育児放棄が増える」のかどうかについて検討なされています。ぜひご覧下さい。
<追記>
1.東京新聞平成18年11月17日付朝刊「こちら特報部」
「『赤ちゃんポスト』渦巻く賛否
事情があって親が育てられない新生児を受け入れる、いわゆる赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を、熊本市の慈恵病院が設置する計画を進めている。ドイツではすでに導入しているが、実現すれば、国内初となる。子どもの命を守る試みか、安易な育児放棄を招く結果となるのか。同病院にも賛否両論の意見が多数寄せられているという。設置の狙いは何か。同病院の蓮田太二理事長(70)に聞いた。
「誤解されやすいが、こうのとりのゆりかごは、あくまで赤ちゃんの生命を守るための緊急避難の手段。ゆりかごに置いた後でも、母親が名乗り出て了解すれば、里親の元に行くのも早い。赤ちゃんさえ無事なら、母親にも冷静に考える時間ができる」
三年がかりで構想を温めてきたカトリック系の慈恵病院理事長の蓮田氏は、その狙いをずばりこう話す。
若すぎる。結婚していない。お金がない−。赤ちゃんを育てられない事情は、さまざまである。同病院では五年前、必ずしも望まない妊娠に悩む女性から相談を受ける「妊娠かっとう相談窓口」を設置。どうしても育てられないという場合は、出産の前後から里親の候補者を引き合わせ、円滑に特別養子縁組をさせる試みを続けてきた。
それがゆりかごにつながったのは、熊本県内でも新生児置き去り事件が何件も発生したことだ。蓮田氏は「赤ちゃんは社会の宝。その生命だけは守らねば」と決意。多くの保育園や病院が新生児を匿名で預かり、里親の窓口になっているドイツを視察するなどして、構想を練ってきた。
すでに警察や市役所などに何度も足を運び、近く保健所に病院の一部を用途変更する許可を申請する段階にまで来た。では、ゆりかごのシステムはどういうものか。
■目立たぬ所に保育器を設置
ゆりかごは人目につきにくい病院東側に扉(縦四十五センチ、横六十五センチ)をつくり、内部には適温に保たれた保育器を設置する。ここに赤ちゃんが置かれると、待機中の看護師のブザーが鳴って駆けつける。
扉の前と保育器には母親にあてて「秘密は必ず守る。とにかく病院を信じてまず相談を」という内容のお知らせと手紙も置く予定だ。母親が名乗り出て、自ら育てるか、親権放棄して里親に引き取ってもらうかを決めてもらう。これが大原則。名乗り出てくれない場合は、警察や市役所、児童相談所などと連絡を取った上で施設に引き渡す。
現実には、赤ちゃんを置いた母親が名乗り出る可能性は決して高くなさそうだが、蓮田氏はこのステップを非常に重視している。同病院ではこれまでに数件、妊娠相談の一環で、母親が育てられないと親権放棄に同意し、生後間もない赤ちゃんを里親に引き渡したことがあった。その時の経験が大きい。
「真の親が分からないということは親権放棄の同意も不明確になる。里親の元に行くにしても非常に時間がかかり、あまりうまくいかない。同意があれば、赤ちゃんが退院する生後五日目くらいには引き渡せる。里親には泊まり込みで育児教育も受けてもらったが、その喜びようはかぐや姫の物語のようで、里親の本当の子どものようになれる。愛情の持ち方がまるで違う」
構想は今月九日に報道され、その後、賛否両論を合わせメール六十通、電話は田尻由貴子看護部長が受けただけで二十件を超えた。
「赤ちゃんのごみ箱を作るつもりなのか」「子どもを捨てられると安易に喜ぶ若者を増やす」「中途半端に助ければ、かえって不幸を招く」
捨て子を容認、助長するとの反対論も多いが、「よく勇気をふるって決断してくれた」「支援させてほしい」と募金も数多く寄せられているという。
蓮田氏は「ドイツでも賛否両論ある。まして前例のない日本でいろいろな反応が出るのは当然。とにかく医療の原点は生命の尊さにあり、この構想は実現しなければいけないという気持ちに変わりはない」。
では、ゆりかごに収容された後の赤ちゃんの法的位置付けはどうなるのか。
熊本県子ども家庭福祉室によると、現行法では「捨て子」の場合、発見者が警察などを通じて二十四時間以内に市町村長に連絡。同時に児童相談所に通告する。市町村長は二週間以内に赤ちゃんの名前をつけて戸籍をつくる。児相は乳児院などへの入所措置を決める。
また、母親が判明した場合でも、児相が乳児の状況や家庭環境などを踏まえて、乳児院など施設入所の措置をとるのが多いという。
吉田勝也・同室長は「置いていった母親が保護責任者遺棄罪に問われないのか、という問題もある」と話す。その上で「効果や是非については何とも言えない。推移を見守りたい」。
病院から施設の用途変更の許可申請相談を受け、熊本市は「どの法律に触れるのか否かも分からないので、どうすればいいかを検討している」。
子どもをゆりかごに入れた親は保護責任者遺棄罪に問われないのか。筑波大学の土本武司名誉教授(刑法)は「赤ちゃんが生存するために適切な措置をする病院に置いてくるので、通常、発見されないような山に捨てるなどとは違い、同罪には当たらないと考えられる」。
その上で「今回の設置が法的に認められ、全国の病院にゆりかごができたら、苦労しても育てるという通常あるべき努力を放棄してしまう可能性がある」と懸念も示す。
現在、里親約百数十組が登録し、これまでに約二百九十件の特別養子縁組をしている岡山県医師会の「岡山県ベビー救済協会」の堀章一郎理事長は「母親が名乗り出なければ協会では特別養子縁組はできない。熊本のゆりかごでは、母親は名乗り出ないことが多いのではないか。結局、病院で受け入れただけで、後は行政による施設行きになるだろう。また、諸外国のように後ろ盾がないので、経済的にも病院が単独で運営していくのは大変だろう」と指摘する。
■先行ドイツはすでに80施設
「養子と里親を考える会」代表で、お茶の水女子大の湯沢雍彦名誉教授(法社会学)によると、ドイツでは六年前から「赤ちゃんポスト」がスタート。現在、八十近くの施設があるという。背景には「設置前年に遺棄された約四十人の子どもの半数が亡くなったことがある」という。
ドイツでは乳児を保護した後、里親に八週間預け、その間に養子縁組を探すシステムになっているという。「日本でも、子どもがほしい親はたくさんいる。児相はもっと積極的に養子縁組を進めるべきだ。まず赤ちゃんの命を救うという点で、今回の取り組みは評価している」と話す。
厚生労働省によると、二〇〇〇年までの統計で、日本では年間二百人前後の「捨て子」があるという。
お茶の水女子大子ども発達教育研究センターの榊原洋一教授は「育児放棄など虐待も少しずつ増加。年間五十人の子どもが虐待で命を失っている。育児力が十分ない若い夫婦も一定程度いる」と指摘しながらも、「育児支援の一つとしての試みとして賛成する」と評価する。
そして、こう指摘する。「ぎりぎりまで踏ん張り、最後は病院に置けるということが、親の心の余裕につながる可能性もある。日本に根付くかどうかは分からないが、始める前から反対すべきではない」
<デスクメモ> 世の中にはさまざまな事情があって子育てができない親がいる一方、子どもに恵まれない親もいる。その窓口役として両者を結ぶ選択肢が広がることは歓迎だ。ドイツでは母子の救済につながった事例もあると聞く。セーフティーネットのひとつの在り方として、こうした試みがあってもいいのではないか。 (吉)」
2.読売新聞平成18年12月5日付朝刊15面「論陣 論客」
「「赤ちゃんポスト」計画
熊本市の病院が、事情があって育てることができない新生児を受け入れることができない新生児を受け入れる「赤ちゃんポスト」を計画している。意義はなにか。問題はないのか。(聞き手・生活情報部 伊藤剛寛 森谷直子)
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●経緯●
「赤ちゃんポスト」(正式名称は「こうのとりのゆりかご」)を計画しているのは、熊本市の慈恵病院。親が養育できない新生児を匿名でも受け入れる。実現すれば、国内初の試みだ。
病院の外壁に扉(縦45センチ、横65センチ)を設け、体温に近い36度に保った保育器を置く。新生児が置かれると院内のブザーが鳴り、医師らが駆けつける。
「捨て子の命を救う」ことが目的だが、「安易な養育放棄を助長する」「保護責任者遺棄罪のほう助に当たるのでは」などの疑問の声も出ている。
同病院は年内にも導入したい考えで、近く医療法に基づき、施設の用途変更届を熊本市に提出する。市は国、県と協議して対応するという。厚生労働省は「安全性が保たれれば、医療法上、変更届を許可しない理由はない」としている。
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◆捨て子助長にならない 蓮田 太二(はすだ たいじ)氏
――なぜ、「赤ちゃんポスト」の設置を決めたのか。
蓮田 慈恵病院では2002年から、予期せぬ妊娠に悩む女性の相談に乗る「妊娠葛藤(かっとう)相談」を行ってきた。相談に乗った上で、どうしても育てられない場合は、岡山県の養子縁組あっせん事業者と連携して、養子縁組を支援している。
その中で、例えば、親にも打ち明けられずにいる中学生など、もしこの「相談」がなかったら、産んだ赤ちゃんを捨ててしまっていたのでは、と思われる深刻な事例をいくつか経験した。
実際、昨年から今年にかけ、熊本県内で捨て子事件が相次ぎ、命を落とすケースがあった。そうした赤ちゃんの命を救うため、設置を決めた。
――ポストの中には、母親への手紙を入れると聞いた。
蓮田 ポストはあくまでも「緊急避難」のためのもの。母親、赤ちゃん双方にとって最も望ましい解決方法を一緒に考えることができる。
しかし、赤ちゃんを捨てる母親は精神的に追いつめられていて、冷静な判断ができない状態になっている。そんな時に、とりあえず赤ちゃんを託す場所があれば、後で冷静になって考え直し、やはり自分で育てたいと思えば、名乗り出て赤ちゃんを引き取ることもできる。そのために「手助けをするから、後からでもいいから、名乗り出てほしい」と母親に呼びかける手紙を入れる。
育てられない場合でも、名乗り出てくれると、養子縁組が迅速に進み、赤ちゃんの健やかな成長に役立つ。
――名乗り出る母親は少ないのでは。
蓮田 名乗り出てくれない場合、養子縁組手続きに時間がかかってしまうが、少なくとも赤ちゃんの命は救える。
――国内に「赤ちゃんポスト」はこれまでなかった。
蓮田 ドイツではすでに「赤ちゃんポスト」の取り組みが広がっており、2004年に視察した。ハンブルグの保育園が00年に設置したのが最初で、現在は約80か所の病院や保育園などに導入されている。ポストに入れられる赤ちゃんの数は、全国で1年で約40人だという。
――捨て子を助長するという批判があるが。
蓮田 妊娠から出産までには長い時間がある。大きなおなかを抱えた不自由な生活に耐え、胎動を感じるうちに、我が子だという気持ちが母親の中に育ってくる。よほどのことがない限り、我が子を捨てようとは思わないものだ。
我々が相談に乗る女性たちも「自分で育てられないから」と養子縁組を申し出てきても、別れの時には涙を流す。ドイツでも、ポスト設置で捨て子が増えたという話は聞かない。捨て子を助長することにはならないと思う。
――保護責任者遺棄罪をほう助することにならないか。
蓮田 何人かの法学者に確認したが、赤ちゃんをポストに入れるのは「安全が確保される場所に置く」ことなので、同罪には当たらないとの判断だった。
――国や自治体など公的な機関が行うべきことだとは思わないか。
蓮田 病院には、ポスト設置に賛成するメールが31件、反対が17件寄せられた。世論は分かれているので、公的な機関が行うのは難しいのではないか。
*蓮田 太二(はすだたいじ)氏 熊本市の医療法人聖粒会慈恵病院理事長。熊本大医学部卒。日本産科婦人科学会認定医。専門は産科、更年期、思春期。70歳。
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◆養子縁組の議論が必要 奥田 安弘(おくだ やすひろ)氏
――計画中の「赤ちゃんポスト」をどう見るか。
奥田 ドイツの実情を視察して、医学的な安全性は十分検討したようだが、ドイツと日本では事情が違う。
――どういう点か。
奥田 まず「望まない妊娠」に対する考え方が日本とは大きく異なる。ドイツでは、望まない妊娠をした母親が、出産を秘密にする権利にも一定の理解を示す意見がある。
特に赤ちゃんポストが広がってからは、病院でも匿名で出産できる「匿名出産」を認めるべきかどうか、激しい議論がなされてきた。これは、病院が母親の姓名を書かずに、子供の出生届を出すことを認めよというもの。子供は生まれた病院で保護される。
「匿名出産」を認めるための法案も提出されている。ただ、子供が自分の出自を知る権利を侵害するなどの批判もあり、成立していない。
一方、日本では「匿名出産」についての議論はない。望まない妊娠では、事情を問わずに親を責める風潮も強い。
――ドイツの赤ちゃんポストでは子供はどう育つか。
奥田 ドイツでは多くが養子として引き取られる。これがもう1つの大きな違いだ。
子供はやはり家庭で育てられる方が望ましい。ポストに置かれた子は、最初は日本の児童相談所に当たる「青少年局」に預けられるが、8週間後には法律上の養子縁組手続きが取られ、新しい家族のもとで育てられる。キリスト教の伝統もあり、恵まれない子を養子に引き取る例が多い。養子縁組を進めるシステムもしっかりしている。
これに対し日本は施設に預けられる場合が多いだろう。施設に預けられた要保護児童は3万2000人に上るが、家裁への養子縁組の申し立ては年2000件足らずだ。
――病院側は養子あっせん事業者と連携し、養子縁組を目指したいようだ。
奥田 要保護児童を見つけた場合、児童福祉法に基づき、病院は児童相談所に通告する必要がある。ポストに託された子供は全員通告し、児童相談所の判断を仰ぐことになり、病院側が養子縁組に関与することは事実上無理だろう。ただ、児童相談所は3000件程度の里親委託はしているが、養子縁組について十分機能しているとは言い難い。
――自分の子は自分で育てるべきだという声も強い。
奥田 望まない妊娠には、レイプなど様々な事情がある。無理をしてでも自分で育てるべきだとは言えない。
ただ、そのような事情がないのに、遠方から赤ちゃんをポストに置きにくるケースも考えられる。妙な“流行”にならないか心配している。
――望まない妊娠で生まれた子や、その親にどう対応すべきか。
奥田 医療関係者だけでなく、児童福祉や法律の専門家などが連携して対応しなければならない。その意味で、赤ちゃんポストはいろいろな選択肢の中の1つにすぎない。
日本には、養子あっせんについて、専門家がそろった機関や情報のネットワークがない。社会福祉法は、事業者に都道府県・政令市への届け出を義務付けているが、これを改正し、許認可制にして専門機関を育てるべきだ。専門機関があれば、望まない妊娠で生まれた子を、施設でなく家庭で育てていくことも可能になる。今後は、養子縁組の問題についての議論を高める必要がある。
*奥田 安弘(おくだ やすひろ)氏 中央大学法科大学院教授。専門は国際家族法。主な著書に「家族と国籍」「国籍法と国際親子法」がある。53歳。
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●寸言●
問われる家族観
「赤ちゃんポスト」という呼称に、赤ちゃんを物扱いしているようで、抵抗を覚える人も多いのではないだろうか。病院では「こうのとりのゆりかご」と名付けていることを知って、少しほっとした。
説明を聞くと、赤ちゃんの命を緊急避難的に救うため一定の役割を果たすだろうことは理解できる。ただ、育児放棄を助長するのではといった疑問や、救った赤ちゃんの育て方などについては、もっと議論されるべきだと感じた。
この問題は、乳児院や養子縁組のあり方、ひいては家族観までを私たちに問うことになるかもしれない。 (伊藤)」
両方の記事に出ていますが、「こうのとりのゆりかご」に、どんな手紙を置くのかと言うと、まだ、試案に過ぎないのですが、次のような報道がなされていました。
「こうのとりのゆりかご」に置かれる手紙(案)
看護部長から お母さんへ
私たちは、今日あなたが赤ちゃんを預けられたのは、
決して軽い気持ちからではないことを十分に知っています。
私たちは、力の及ぶかぎり、あなたの赤ちゃんのお世話を
させていただきます。どうか安心してください。
もし、あなたがこのことで心配なことが起きたり、
あるいはもう1度赤ちゃんを引き取りたいと思われる時は、
私たちを信頼して、いつでも連絡してきてください。
お母さんと赤ちゃんが一緒に暮らせるように、私たちは
よろこんでお手伝いをいたします。
電話:0120−***−***
法の視点より、学ぶことができたと思います。ありがとうございます。
ケースはさまざまでしょうが、子と母親のみの問題ではなく、男性への性の学習や認識を深めることも大切だと感じています。
せっぱ詰まった母親に「考える時間」を与え、まだ何もできず何も分からない赤ちゃんに「第一歩の希望」を与えてくれる点において、私も賛成の立場です。
URL | ゆりかご #-[ 編集 ]
>子と母親のみの問題ではなく、男性への性の学習や認識を深めることも
>大切だと感じています。
そうですね。
子供の問題は、女性だけでなく、そのパートナー側である男性にも責務があるのですから。
>せっぱ詰まった母親に「考える時間」を与え、まだ何もできず何も
>分からない赤ちゃんに「第一歩の希望」を与えてくれる点において、
>私も賛成の立場です
賛成ありがとうございます。
「こうのとりのゆりかご」によって、生きることが出来た子供も出てくるはずです。生きること、これが赤ちゃんの「第一歩の希望」ですね。
親を非難したとしても、この赤ちゃんの希望を奪うべきではないと思います。
アベシが反対してるっていうじゃんか。
坊ちゃんはお家で大人しく寝てたらいいハナシなのにねぇ・・・
賛否どうこうじゃぁ〜なく、とにもかくにも「生きなきゃ!」「生きてなきゃぁ!」ですよねぇ。
生きてこそです。
生かせてこそです!
URL | とらちゃん #-[ 編集 ]
>アベシが反対してるっていうじゃんか
確かに反対、批判的態度ですね。
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070223AT3L2305J23022007.html
「安倍首相「大変、抵抗感じる」、「赤ちゃんポスト」関連で見解
安倍晋三首相は23日夕、熊本市の慈恵病院が親が育てられない新生児を引き受ける国内初の「赤ちゃんポスト」設置を計画し、厚生労働省が事実上容認する見解を熊本市側に伝えていた問題について、「私は基本的には匿名で子供を置いていけるものを作るのがいいのかどうか、私は大変抵抗を感じる」と批判的な見解を示した。
批判的な理由としては、「ポストという名前に大変抵抗を感じる。やはり、子供を産むからには親として責任を持って産むということが大切ではないか」と指摘。また、低所得者らの事情については「いろんな事情にある方についての対応は考えなければならないと思う」と配慮を示しながらも、「基本的には既にそういうお子さんたちに対応するための施設等もある」と訴えた。
首相官邸で記者団の質問に答えた。〔NQN〕(18:21) 」
産む者としての責任が大切という建前をいくら言ったところで、子捨て・子殺しがあるのです。安倍首相は、現実に向き合った対応が必要であるということが、よくわかっていないようです。
>生きてこそです。
>生かせてこそです!
仰るとおりです。
捨てる親を非難して否定するのではなく、肯定することで、救われる命があることに目を向けて欲しいです。
3月2日のニュース23の蛙男劇場を
御覧になりましたか。
蛙男劇場は、TBS「ニュース23」内でオンエア中の、
世相を反映したストーリーを展開中の社会風刺アニメだそうです。
3月2日は、「ポスト」という題で放映されました。
場面:ケロ山議員事務所
男性秘書が新聞を読んでいる。
新聞には、「赤ちゃんポスト 容認」「赤ちゃんを守れ」の見出し
秘書「赤ちゃんを入れるポストですよ。世の中大変なことになりましたね、先生。」
ケロ山「そんな下らんことに気を回している場合か。それより首相のポストを手に入れるために、もう少し頭を使え。」
秘書「やれやれ、この人は、ポストはポストでも首相のポストを狙っているのか。」
場面:愛人宅……
ケロ山「ケロ子ちゃ〜ん、今帰ったよ〜。」
ケロ子「お帰りなさい、ケロ山さん。相談があるんだけれど。」
ケロ山「どうしたんだい。」
ケロ子は赤ちゃんをケロ山に渡す。
ケロ山「あ〜、なんだこれは。」
ケロ子「私とケロ山さんの子どもよ。」
ケロ山「う〜ん。こんなスキャンダルが発覚したら、私の政治生命は終わりだ。」
ケロ子「え〜っ。」
ケロ山「う〜ん、そうだ。赤ちゃんポストだ。赤ちゃんポストに入れてこい。」
ケロ子「実の子どもを見捨てる気なの。」
ケロ山「うるさい。さっさと入れてこい。」
こうして赤ちゃんはポストに入れられてしまう。……以下略
養子縁組等には、赤ちゃんポストに捨て子する必要はありません。
相談窓口を拡充するのが先決でしょう。
婚外子を親の都合で、親に責任を負わせることなく、捨てさせる装置だという考えが放映されました。
だれが、赤ちゃんポストを必要としているのか。
無責任な父親を救済する装置であると、
ニュース23は、放送しました。
どのようにお考えになりますか。
御教示下さい。
赤ちゃんを連れてくるのは
確実に母親ですか?
母親が、誰かに強要されていることは
ないのでしょうか?
これらをどうやって防ぐのですか?
お教え下さい。
URL | アクエリアス #-[ 編集 ]
>3月2日のニュース23の蛙男劇場を
御覧になりましたか。
>蛙男劇場は、世相を反映したストーリーを展開中の社会風刺アニメ
ニュース23の蛙男劇場は知っています。ですが、残念ながら、3月2日放送は見ていません。
>養子縁組等には、赤ちゃんポストに捨て子する必要はありません。
>相談窓口を拡充するのが先決でしょう。
相談窓口を拡充した方がいいとは思います。では、現状をご存知でしょうか?
「現実の状況は厳しい。私の勤める児童相談所では、連日の虐待通告への対応だけで職員は息つく暇もない。里親のサポート、施設のスタッフとの相談も、大切だと分かっていても、時間が取れない上心身疲れきっている。……児童養護施設はどこも定員いっぱいで、スタッフはくたくただ。日本の児童福祉の基盤は依然として貧弱だ。」(朝日新聞平成19年3月8日付朝刊14面「声」欄への「児童心理司」の投書)
日本の児童福祉は全然不足しています。「相談窓口を拡充」したとしても、とても足りないのです。
ですから、「相談窓口を拡充するのが先決」か「こうのとりのゆりかごが先決」かではなく、「相談窓口の拡充」も「こうのとりのゆりかご」も両方必要だということだと思います。
>3月2日は、「ポスト」という題で放映されました。
>無責任な父親を救済する装置であると、ニュース23は、放送しました。
>どのようにお考えになりますか。
>御教示下さい。
現行法において、子どもを手放す場合の典型が特別養子縁組です。その意味で、「こうのとりのゆりかご」を考える際には、特別養子縁組の状況を考えてみるとよく分かると思います。現実の状況は、↓がよく分かります。
http://www.web-reborn.com/books/book/sonokowokudasai.html
特別養子縁組を利用する女性には、色々な事情があるとはいえ、無責任な男性側の要因も大きいようです。男性側に育てる資力がないのに避妊に協力しない、妊娠後、自分の子ではないと逃げてしまう男性などです。結果として、途方に暮れた女性は一人悩むことになってしまい、女性側主導で、特別養子縁組を利用することになるわけです。
このように、特別養子縁組も、「無責任な父親を救済する装置」という面があるわけですね。「こうのとりのゆりかご」だけが、「無責任な父親を救済する装置」というわけではないのです。
では、「無責任な父親を救済する装置」という面があるのに、なぜ特別養子縁組が創設されたのでしょうか?
それは、幼児を抱えた女性が困って、子捨て・子殺しをしていまい、それに見かねた産婦人科医が密かに他人の夫婦に実子として斡旋していたことが発覚したからです。
「こうのとりのゆりかご」を設置しようとしている産婦人科医院も、「実際、昨年から今年にかけ、熊本県内で捨て子事件が相次ぎ、命を落とすケースがあった」からです。特別養子縁組を創設した状況と似ていますね。
このように考えると、日本の児童福祉が全く不足している状況において、1つでも命を救う方法を認めることは良いことだと思います。
>赤ちゃんを連れてくるのは確実に母親ですか?
特別養子縁組の現実からすると、男性は逃げているので、赤ちゃんを連れてくるのは母親でしょうね。
「確実に母親」かどうかは分かりませんが。実施していませんし。ただ、「ベビーハッチ」がある欧州では、捨てるのは男性か女性かは問題にされていないようです。
>母親が、誰かに強要されていることはないのでしょうか?
特別養子縁組の現実からすると、男性は逃げているので、「強要」はなさそうです。
>これらをどうやって防ぐのですか?
男性からの強要を防ぐには、男性から逃げることです。
蛙男劇場では、ケロ子さんはケロ山議員から逃げればいいのです。それに、ケロ山さんは議員ですから、確実に養育費は払ってもらえるでしょうし、ネタを週刊誌などに売って今後の生活費を稼ぐことも可能でしょう。ドラマの(表の)オチでは、「こうして赤ちゃんはポストに入れられてしまう」ということですが、この設定では、赤ちゃんポストに入れられることはありません。
蛙男劇場の「ポスト」では、「このドラマの設定では、元々、ポストに捨てる必要はないんですよ、 皆さん分かりますよね?」という裏オチがあるのでしょうね。裏オチがあるから笑えるのではないかと思います。
実際上は、ケロ子さんのように、お金を出してくれる相手はいないから、困るわけです。
なるべく「こうのとりのゆりかご」を利用しないような状況になるのが望ましいことは確かです。そのためには、(特別養子縁組の現状を考えると)男性側の教育が重要です。
>それに見かねた産婦人科医が・・・・発覚したからです
昭和48年(1973年)の菊田昇医師の「赤ちゃん斡旋事件」ですね。
特別養子縁組制度もそうですが、最近それらの制度が出来た背景や事情とかけ離れてそうした制度を引き合いに出し、また、当時や現在における実情についてよく知らずに、表面的な(上っ面の)倫理観や感情論だけで議論する人が増えています。
議論をする事自体決して悪い事ではなく、問題意識を高めるためには議論は非常に大切な事です。WEBでそうした事が地理的な問題を超えて自由に出来るようになったのは、素晴らしい事です。本質的には、よく調べもせずに偏った報道をするマスコミに大きな責任があると思います。
例えば、病気腎移植や代理出産問題などで、殆ど現状や経緯を調べることなく、一方的な先入観や権力側のリーク情報に基づいて偏った報道を頻発している大手新聞各社、具体例を出すと、毎日新聞科学環境部の女性記者(特に、大場あい、永山悦子記者)などです。特に大場あい記者は、余りに非科学的な記事を連発するので、鹿鳴荘病理研究所の難波紘二所長が苦言を呈しています。
http://www.tokushukai.jp/media/rt/549.html#line19
ぼやきも長いと顰蹙ですので、特別養子縁組制度が生まれたきっかけである「赤ちゃん斡旋事件」について、概要と補足の意味で僭越ながら解説を少し。
>幼児を抱えた女性が困って、子捨て・子殺しをしていまい、それに見かねた
というのは、ほんの少しだけ正確さを欠いているかも知れません。正確には、子捨て・子殺しではなく、人工妊娠中絶の問題です。
「赤ちゃん斡旋事件」とは、昭和48年、宮城県石巻市の菊田昇産婦人科医師が、妊娠中絶希望で来院した女性達に命の大切さを訴え、19年間で220人以上の赤ちゃんを出産させ、違法を承知の上で子どもを欲している夫婦に実子として斡旋して「虚偽の養子縁組」を行わせたことが発覚したものです。
菊田医師は産科婦人科学会を除名処分となり、医師法違反で優生保護法指定医取消、6ヶ月の医業停止処分を受けました。
しかし、菊田医師は自らのガンと闘いながら、「実子特例法」の制定を説きつづけ、「特別養子縁組制度」が制定されました。
更に生命重視の功績によリ、国際生命尊重連盟国際会議から、マザーテレサに次いで世界で2人目の「世界生命賞」が菊田医師に贈られました。
http://www.trkm.co.jp/souzoku/06051701.htm
http://www.rescue-children.org/main/arigato.html
では何故、菊田医師は違法である事を知りながら虚偽の養子縁組を進めたのでしょうか。決して薄っぺらい倫理観からではなかったと思います。
次のサイトの最初のグラフをご覧下さい。ピンク色の線が出生数に対する人工妊娠中絶件数の推移です。現在の少子化問題に少なからず影響がある問題の一つです。
http://deztec.jp/design/05/fertility.html
1973年から19年前というと1954年です。
ピルなどの避妊具の普及が十分ではなかった頃で、1948年の優生保護法施行を経て人工妊娠中絶が急増、そしてピークを迎えた時代です。
当時の産婦人科医は堪らなかったと思います。命とは何か、と現場の医師は自問自答していたであろう事は想像に難くありません。
以前、米国シカゴの科学産業博物館で各成長過程における胎児の標本がずらっと並んでいるのを見て、私も嗚咽を禁じ得ませんでした。
そんな世相の中で「赤ちゃん斡旋事件」は起こり、昭和62年(1987年)の民法改正で特別養子縁組制度ができました。
中絶件数の増加の反動を受けて1980年代に水子供養が急増し、盛んに報道されたことも当時の世論に大きく影響しました。
このように、特別養子縁組制度は、春霞様が仰っているように、赤ちゃんポストと同じく、様々な理由から現実問題として消えていく命を救おうといのが本来の趣旨であったことは厳然とした事実です。命はかけがえのないものです。
赤ちゃんポストや病気腎移植、代理出産のような問題が浮上すると、現実の問題をよく追求せず、また、過去の経緯を振り返ることなく、余りにも薄っぺらい倫理観だけで報道するマスコミが多すぎます。
例えば、代理出産で申しますと「代理出産は親のエゴ、遺伝子に拘らず養子縁組せよ、そのために国は特別養子縁組を推奨している」という批判をよく耳にします。この点について、春霞様は法制度の観点から明快な解説をされています。
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-157.html#comment
これは私がこちらにお邪魔するようになった頃、悶々としたもやもやを吹き飛ばして頂いた解説の一つです。
時事問題に関心をもつ真面目な若い世代の方々も、一歩踏み込んで今現実に起こっている事実や背景・経緯を知ろうとすると、本当のあるべき姿が見えたり、論点が変わる事があると思います。
その意味で春霞様のこのサイトは大変勉強になります。どうかこれからも宜しくお願いします。
URL | Canon #yYfDAmAg[ 編集 ]
>昭和48年(1973年)の菊田昇医師の「赤ちゃん斡旋事件」ですね。
その通りです。
>当時や現在における実情についてよく知らずに、表面的な(上っ面の)
>倫理観や感情論だけで議論する人が増えています。
>議論をする事自体決して悪い事ではなく、問題意識を高めるためには
>議論は非常に大切な事です。WEBでそうした事が地理的な問題を超えて
>自由に出来るようになったのは、素晴らしい事です。
ネットによって多くの知識を得ることが可能になりましたし、より誰とでも議論が可能になりました。良い点もあるのですが、「表面的な(上っ面の)倫理観や感情論」が蔓延するようになったため、それに影響された人が増えてしまったのは、良くない点ですね。
>本質的には、よく調べもせずに偏った報道をするマスコミに大きな
>責任があると思います。
そうですね。
ネット社会になった以上、毎日新聞のようにネットの危険性を煽っても、現実的ではありません。そうなると、マスコミは、「表面的な(上っ面の)倫理観や感情論」に負けないだけの事実や論理を提供する必要があるのですが。なかなか……。
「よく調べもせずに偏った報道」をされると困ります。このブログでも、マスコミの「間違い探し」(例えば、病気腎移植報道)をしていますが、不毛に思うのです。
>特に大場あい記者は、余りに非科学的な記事を連発する
そういえば、最近あまり、大場記者の署名記事を見かけませんね。
>正確には、子捨て・子殺しではなく、人工妊娠中絶の問題です。
フォローありがとうございます。
>「赤ちゃん斡旋事件」とは
>「特別養子縁組制度」が制定されました。
詳しい解説ありがとうございます。こちらからも少し。養子縁組というと、子供の保護のためと思っている人が多いかもしれません。諸外国ではそうなのですが、日本では違います。
「特別養子縁組」は原則として離縁を認めず、子供のみが対象ですが、欧米の養子制度はそれが普通です。菊田医師のおかげで、やっと、子供の保護を図る本来の養子制度が出来たわけです。
ただ、2002年次の縁組届出数は85674件ですが、そのうち未成年養子(普通養子縁組と特別養子縁組を含む)は1310件で、1.5%にすぎません(二宮周平著「家族法」192頁)。
江戸時代の養子縁組は家の承継を目的としていましたが、現在の日本では後継ぎや扶養を目的とする成年養子が多く(未成年養子では家族関係安定を目的とする連れ子養子が多い)、江戸時代とさほど変わりません。相変わらず、日本では養子縁組は子供の保護のために使われていないのです。
養子縁組が子供の保護として機能していないのですから、他にも子供の保護手段(例えば「こうのとりのゆりかご」)を増やした方が良いといえそうです。
>この点について、春霞様は法制度の観点から明快な解説をされています。
ありがとうございます。
>一歩踏み込んで今現実に起こっている事実や背景・経緯を知ろうとすると、
>本当のあるべき姿が見えたり、論点が変わる事があると思います。
仰るとおりです。本当は、「今現実に起こっている事実や背景・経緯」を知らないと、ろくな議論にならないんですけどね(汗)
>その意味で春霞様のこのサイトは大変勉強になります。
>どうかこれからも宜しくお願いします。
ありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします。
halです。
TB返しとコメントありがとうございました。
柔軟で暮らしやすい世の中になるといいなと、いつも思っています。
こちらのBlogでは時事問題を現実的に解説されていて、とても参考になりました。
これからも勉強させてください。
>柔軟で暮らしやすい世の中になるといいな
そうなると良いですね。
柔軟に考えるべきことでも、ギスギスしがちだったりしますし。
>こちらのBlogでは時事問題を現実的に解説されていて、とても参考になりました。
>これからも勉強させてください。
ありがとうございます。
現状に流させるままは良くないので理想は捨てることなく、現実的に考えること重要だと思っています。
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