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2007/02/20 [Tue] 06:40:45 » E d i t
宇和島徳洲会病院の専門員会の調査結果がでたとの報道がありました。2月18付の新聞紙面では、「病気腎移植は『大半は不適切』」という見出しでしたが、2月18日の合同会議を経た後の報道は、「結論先送り」でした。この報道についてコメントしたいと思います。(追記:誤植の訂正・専門委員会と調査委員会の混同の訂正とリンク先の入れ替えをしました)
3月4日追記:日経新聞の記事内容の誤りについて追記しました。専門員会は、11件すべて不適切という結論を取りまとめた事実はありませんでした)


1.まずは2月18日付と2月19日付報道記事から

(1) 日経新聞平成19年2月18日付39面

「病気腎移植 大半は不適切」  万波医師実施 専門委が報告へ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が設置した外部の医師らによる専門委員会は17日までに、万波誠医師(66)が同病院で実施した11件の病気腎移植のほとんどについて、腎臓の摘出は医学的に適切ではなく、別の患者への移植もするべきではなかったとの調査結果をまとめた。18日に大阪市で開く同病院の調査委員会との合同会議で報告される。

 専門委員からは「『初めに移植ありき』の腎臓摘出と言われても仕方がない」との厳しい指摘も出ており、専門家による詳細な検討で、病気腎移植の問題点があらためて示された。

 日本移植学会など5つの学会が17日、大阪市内で会合を開き、この問題を検討、3月末をめどに一連の移植への共同見解をまとめることを申し合わせた。

 同病院は腎臓内科や泌尿器科、病理など外部の専門家による委員会を設置し、腎臓の摘出や移植の医学的な妥当性について調査してきた。

 その結果、病気腎の摘出については「医学的には適切ではない」が7件、「適切でないか疑問」が3件、「不明」が1件だった。また摘出した腎臓の移植への使用については「移植すべきではなかった」が7件、「本人に戻すべきだった」が4件とされた。

 11件のうちの2件は、香川労災病院(香川県丸亀市)で腎がん患者から摘出した腎臓が使われたが、この摘出について同病院の調査委員会も「腎提供や移植を念頭に置いた手術方法と言わざるを得ない」と指摘している。

 また宇和島徳洲会病院の専門委員は、倫理委員会を設置せず、患者へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の記録を義務付けないなど、同病院の管理責任の欠如も厳しく指摘した。

 病気腎移植は、同病院のほか、万波医師が以前に勤務した市立宇和島病院などでも実施されたことが分かっている。」



「初めから結論ありき」 万波医師が専門委を批判

 宇和島徳洲会病院の専門委員会が病気腎移植のほとんどは医学的に不適切とする調査結果をまとめたのに対し、万波誠医師(66)は17日夜、「初めから結論ありきだ」と批判した。万波医師は「専門委員会の先生には、腎臓摘出が適切だったと説明してきた。しかし、初めからそう(不適切と)言うのだから、どうにもならん。専門委のある先生は初めから結論ありきだった」と話した。

 万波医師は市立宇和島病院時代に、B型肝炎感染者の腎臓を移植に使ったとされる問題にも「病院の内科医が十分に検査し、99%ウイルスがないと報告があったから移植をした。当時の複数の同僚医師もウイルスはなかったと言っている」と反論した。」



 「貴会は,平成19年2月17日,正午のニュースをはじめとする複数のニュース番組の中で,当病院の病気腎移植問題に関し,外部の専門家による委員会が,調査した11件の移植のほとんどについて,病気の腎臓を摘出してほかの患者に移植したのは医学的に問題があったと判断したこと,また,翌18日に開かれる当病院の調査委員会にそのような見解を報告する予定であることなどを内容とする報道を行いました(以下「本件報道」といいます。)。

 しかしながら,上記委員会において,本件報道のような結論を取りまとめた事実は全く存在しません。このことは,翌18日に専門員全員が出席して開かれた調査委員・専門員合同委員会の冒頭において改めて専門員全員により確認されております。 上記合同委員会の席上では,専門委員がそれぞれの立場の見解を示したレポートを提出し,その説明を個々に行ったに過ぎず,専門委員としての統一的見解が示されてはいません。 したがって,専門委員会としての合意や統一的見解というものは存在しません。

 また,専門委員の中で,11件の移植すべてについて医学的に問題があったとする見解を示したのは,ただ1人のみです。」(徳洲会グループの「報道内容訂正及び謝罪の要求書」から引用)




このように、2月18日に報道された、宇和島徳洲会病院の専門委員会の調査結果では、「病気腎移植は『大半は不適切』」というものでした(東京新聞では、「病気腎移植は『不適切』」)。

ところが、次で引用するように、2月18日の合同会議を経た後の報道は、「結論先送り」でした。そうすると、病腎移植は『不適切』という結論を決定しなかったのです。ならば、2月17日の段階で、病腎移植は「不適切」と見出しを打つことは、妥当な報道ではなかったといえます。
読売新聞は、2月18日の合同会議で決定されるまではっきりしないこともあってか、2月17日の専門委の結果報告については、2月18日の紙面では何も触れませんでした。賢明な判断であったと思います。


これまでのリーク報道から分かるように、専門委員が「『初めに移植ありき』の腎臓摘出」だと非難する意見を述べるのは予想できたことですし、これに対して、万波医師が専門委を「初めから結論ありき」と批判するのも、また、予想できたものといえます。

予想できた記事内容とはいえ、両当事者の意見を引用するのが、報道機関として基本的な姿勢です。万波医師の意見をきちんと引用した記事は日経新聞くらいでしたから、日経新聞以外の報道機関は、報道機関としての基本姿勢を欠いていたといえるのです。 



(2) YOMIURI ONLINE:医療と介護(読売新聞平成19年2月19日付朝刊35面)(社会面から医療と介護面の記事に張替え)

 「徳洲会病院の病気腎移植問題、調査委の結論は先送り

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らによる病気腎移植問題で、同病院の調査委員会が18日、大阪市内で開かれた。同病院で行われた11件を検討してきた専門委員会からは「医学的に容認できるものはない」との報告が出された。しかし他の調査委員から「患者の個別事情も考慮すべきだ」との意見があり、調査委の結論は、3月3日に万波医師の釈明を聞いてから出すことになった。

 同病院で万波医師は2004年4月以降、患者5人から腎臓6個を摘出(ネフローゼ、腎動脈瘤(りゅう)、腎臓結石各1人、尿管狭さく2人)。他の病院で摘出された腎臓5個(腎臓がん2、腎動脈瘤、腎臓良性腫(しゅ)瘍(よう)、血管筋脂肪腫各1)と合わせ、11人に移植していた。

 記者会見した福島安義・徳洲会専務理事によると、この日は専門委員6人が泌尿器科、腎臓内科、移植など、それぞれ専門の観点から検討した結果を述べた。

 ネフローゼ患者の両腎摘出については「内科治療が第一選択。移植すると拒絶反応が起こることもあり、摘出は不適切」との評価で一致した。他の疾患についても、尿管狭さくは「まず内視鏡で治療すべきだ」、腎動脈瘤は「大きさから判断すると、経過を見ても良い」などの批判が出た。

 さらに患者との間で書面による説明と同意がなく、カルテ記載も不十分な点に大きな問題があり、専門委員会として「残っている記録からは、医学的に適切とは判断できない」とした。

 これを受け、調査委は「十分な記録がないのは遺憾で、万波医師に反省を求める必要がある」としたが、各症例への最終評価は、万波医師の話を聞いた上で判断することにしたという。

 万波医師はこの日、支援患者らでつくる「移植への理解を求める会」が宇和島市内で開いた集会であいさつ、病気腎移植の必要性を訴えた。調査委で医学的に不適切と指摘されたことに対しては、取材に「カルテだけの調査と、患者と向き合っている移植現場にはズレがある」と話した。

(2007年2月19日 読売新聞)」




2.この報道について、いくつか気になった点に触れたいと思います。

(1) 病腎移植問題について調査は、複数の調査委員会が行っています。移植手術を実施した、宇和島徳洲会病院、市立宇和島病院、呉共済病院、香川労災病院という4つの病院は、それぞれ独自に調査委員会が存在し、調査しています。

病気腎を提出・提供した岡山、広島の5病院は、厚労省の調査班が摘出の妥当性を検討し、同様に提供のみの鹿児島徳洲会病院は、宇和島徳洲会病院の調査委に調査を委ねています(朝日新聞2月18日付朝刊34面)。

2月18日・19日に報道された記事は、これら幾つかある調査委員会のうち、宇和島徳洲会病院の専門委員会・調査委員会の調査結果を報道したものです。もっとも、その報道以前に、「病気腎移植、続く論戦~東京新聞2月14日付朝刊「こちら特報部」より」において、四国新聞の記事(2月15日付「病気腎摘出4件「妥当」-香川労災病院調査委(2007/02/15 09:41)」)という記事を引用しましたが、その記事では、香川労災病院の調査委員会は、4件の摘出が医学的に妥当だったとの見解で合意していたのです。

香川労災病院の調査委員会の調査結果は、全国紙ではどこも触れていませんでしたが、各調査員会は別個に判断しているのであり、各調査員会に優劣があるわけではないのです。宇和島徳洲会病院の調査委員会の調査結果だけをことさらに大きく取り上げるのは、読者に誤解を与える記事といえると思います。


(2) もう1つ気になったのは、患者へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)について触れた部分です。

 「患者との間で書面による説明と同意がなく、カルテの記載も不十分な点が大きな問題だとした。

 これを受け、調査委は「十分な記録が残っていないのは遺憾で、万波医師に反省を求める必要がある」とした。しかし病気腎移植に対する最終評価については「患者から口頭での同意は得ていた。医学的観点だけでなく、患者の治療歴や社会的状況などの事情も考えるべき」との意見があり、万波医師の意見を聞いた上で判断することにしたという。」(読売新聞)


病腎移植は理解が得られるのか不安があったという事情があるのですから、やむを得ない面があるとはいえ、カルテの記載はきちんとしておくべきだったと思います。カルテという、診療記録の開示は患者に求められたら原則として応じなければならないのですから(「診療情報の提供等に関する指針」参照)、患者が理解できるように書く必要があるからです。


それはともかく、調査委員会は「患者との間で書面による説明と同意」がなかった点が大きな問題であるとしています。この意味は、調査委員会は、移植手術の際には必ず書面による説明と同意が必要であると理解していることなのだと思います。では、手術の際には必ず書面による説明と同意が必要なのでしょうか? 

医師としては、形式的に、同意書に署名させれば患者の同意を得たことになり、その医療措置・手術が許されるというわけではありません。患者の同意は、医師側から十分な情報が与えられてはじめて、有効な同意となります。インフォームドコンセント(informed consent)と言われるのは、このことです。

ここで、患者の同意が有効であるための前提として、医師に要求されるのが、説明義務です。説明義務に違反した行為(そもそも必要な説明をしなかったとか、不十分な説明をしたという場合)は、自己決定権侵害を理由とする不法行為(民法709条)となります(潮見佳男著「基本講義 債権各論2不法行為法」(2005年、新生社)203頁)。

では、説明義務を尽くしたと言えるためには、どのようなことが必要でしょうか? 最高裁平成13年11月27日判決は次のように判示しています。

 「患者に対し,当該疾患の診断(病名と病状),実施予定の手術の内容,手術に付随する危険性,他に選択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後などについて説明する義務がある」


このように、説明義務を尽くしたというためには、患者に理解可能なように説明することが重要なのであって、必ず説明書が必要というわけではないのです。

もちろん、説明書(書面)があった方が通常理解を助けることになるでしょうから、書面があった方がいいことは確かです。ですが、説明書があっても、分かりにくいのであれば意味がありません。あくまでも、説明義務を尽くしたかどうかが問題なのです。

ですから、説明書があった方が望ましいとしても、法律上は、説明書がなかったからといって、問題視するのは妥当ではないのです。


また、調査委員会は、同意書という書面がなかったことでもって、万波医師を批判していますが、これは的外れな批判です。同意書の主たる目的は、何か患者に不利益が生じたときに争いを封じておくための証拠であって、存在すれば医師側に有利な書面であって、患者の利益のための書面・患者の治療に役立つ書面ではないからです。

同意書は患者の治療に役立つ書面でないのですから、同意書がなかったことで、なぜ万波誠医師を批判できるのでしょうか? 同意書を得ていないことは、論理的には、「万波誠医師が同意書を得ていれば臓器提供者と移植患者から文句を言わせずに済んだのに、惜しいことをした」と、万波誠医師を心配することにつながるのであって、万波誠医師を非難することにならないのです。

念のため、書いておきますが、有効な同意があるかどうかは、有効な意思表示をしたかどうかであって、同意書という書面に署名したからではないのです。もちろん、同意書があれば同意した証拠になりえますが、あくまで単なる証拠にすぎないので、有効な意思表示であったかどうかは別問題なのです。例えば、意識が朦朧とした状態で、同意書に署名しても有効な同意があったことにならないのです。

ですから、同意書がなかったからといって、万波医師を非難することは的外れの批判であって、妥当でないのです。


(3) 病腎移植の大半は不適切と判断したようですが、記者会見ではどのように説明したかのかというと、次のような記事がありました。

 「18日の記者会見での「不適切」との根拠は、一般的な説明にとどまった。例えば、腎がんの患者の腎臓移植は、問題発覚当初から「今の医学の常識では考えられない」と否定的な意見が相次いでいたが、今回もその常識的な判断が示されただけだった。尿から過剰なたんぱくが出るネフローゼも「摘出せず、内科的治療をすべきだ」との大まかな説明で、一つ一つの手術に関する詳細な検証結果は明らかにされなかった。

 専門委員は「診療の経過などが文書で残っていない」と調査の限界を口にした。」(毎日新聞平成19年2月19日朝刊「解説:愛媛・宇和島の病気腎移植 全件不適切、詳細な説明必要」


個々の患者のケースに応じた判断をした結果、不適切としたのではなく、相変わらず、一般論としての判断から、全てのケースを妥当でないと判断したのです。

診療の経過が文書で残っていないからという言い訳をしているようですが、診療の経過が文書で分からないのであれば、患者に直接問えば良いのに、調査しないで結論を出してしまうのです。こんな調査なのですから、万波医師が「結論ありき」と批判し、「カルテだけの調査と、患者と向き合っている移植現場にはズレがある」(読売新聞2月19日付35面)と反論するのも、当然なことといえるのです。




3.3月3日に万波医師の釈明を聞いてから判断を決めると発表しているのに、日本移植学会等5学会側は、釈明を聞く前から万波医師の言い分に対して聞く耳を持っていないようです。

 「病気腎移植は原則禁止、5学会が方針 「万波式」を否定
2007年02月19日05時59分

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植について、日本移植学会など関係5学会は、「原則禁止」の方針を打ち出すことを決めた。がんとネフローゼ症候群の患者からの移植は、免疫抑制下で「再発」の危険が高まるなどとして「絶対禁止」とし、それ以外についても例外的なケースを除いて禁止する方向で合意した。3月末の合同会議で、指針としての公表も検討する。個別症例ごとの検証結果は、同病院などに設けられた調査委員会と厚生労働省の調査班が、この方針に沿ってまとめる見通しだ。」(朝日新聞2月19日付朝刊1面


これらの記事を読み、ずっと病腎移植問題について触れてきたことからすると、次のような点に思い至るようになりました。


(1) 1つは日本移植学会等5学会には、万波医師の医療行為を判断できる能力が欠けているのではないかということです。

万波誠医師は、「ブラック・ジャック」と呼ばれるほどの技量を持ち、常に最先端の腎移植・治療を手掛けてきたのですから、日本においては他の誰よりも、腎移植・治療につき能力を有していると判断できます。だからこそ、人並み以上の豊富な移植手術数(30年で630件の腎移植数。個人ではおそらく日本一。(平成18年12月15日付広島県医師会速報の「編集室」欄・PDF))をこなしてきているのです。

これに対して、調査委員会の方はどうでしょうか? 縫合不全で死亡させてしまうなど、技量の劣る結果を残してきた深尾立医師が調査委員会の委員を務めているのです。また、ずっと触れてきたように、移植学会の幹部は、生体移植では病腎移植が行われてきたことを知らず、米国ではがんのあった臓器の移植を行っていたという論文の存在も知らずに「がんのあった臓器移植は禁忌」と唱えていました。このように、調査委員会の委員は、万波医師らより、技量も知識も劣っているのです。

そうすると、いくら専門医とはいえ、技量も知識も劣る者が、技量が優れていて、知識のある者の医療行為をどうやって判断することができるのでしょうか? 技量も知識も劣る者にとっては、技量が優れていて知識のある者の医療行為は未知の行為になってしまうのですから、同レベルもしくはより高いレベルにある者でなければ、判断することは困難であると思うのです。

しかも、調査委員会は、診療の経過がよく分からず、しかも患者に直接詳しく面談しているわけでもないのに、どうやって判断するというのでしょうか? 執拗なまでの万波医師らへの批判は、技量も知識も劣る者が、技量も知識も優れている者に嫉妬しているようにも感じられるのです。

こうも言うこともできそうです。

 「もし病腎移植が認められたりしたら、技量も知識も乏しい我々(=移植学会の会員)には到底できない。非会員である、万波医師を持ち上げるような医療を認めるわけにはいかないし、もし病腎移植を行っても、我々なら失敗してしまうから、常に訴訟になりかねない。人工透析は儲かるから、病院経営上、透析患者を減らすようなことはしたくないし、厚労省も十分に理解しているはず。マスコミには、倫理観を強調しておけば言いくるめることができるから、操縦は簡単だし、病腎移植は否定しておくのが無難ということにしよう。」



(2) もう1つは、いくらマスコミが病腎移植を否定し、万波医師を犯罪者のように扱ったとしても、日本移植学会等5学会が病腎移植を原則否定ということにしても、臓器不足の現実は少しも解消されることがなく、むしろ、病腎移植の道を閉ざすことで、患者を再び絶望させるだけとなることです。

 「病気腎移植の有用性強調/支援講演会で万波医師
2007/02/18 22:34

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)の患者や支援者ら約800人が18日、同市内で講演会を開き、参加した万波医師は「移植に使える病気腎が年間2000ぐらいある」と紹介して有用性を強調、許されるなら病気腎移植を続けたいと話した。

 広島大の難波紘二名誉教授(血液病理学)は、万波医師らの病気腎移植を自ら調査した結果を基に、がんやネフローゼの腎移植はほとんど問題がないと説明。「先進的な病気腎移植を認めなければ、海外で広まった後に逆輸入することになるだろう」と述べた。

 支援者らは19日、病気腎移植を認めるよう求める約6万人の署名を厚生労働省に提出する。」(四国新聞平成19年2月18日付



 「病気腎移植推進を国に要望 支援者ら、6万人の署名

病気の腎臓を移植した宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師の患者、家族ら同医師の支援者でつくる「移植への理解を求める会」(向田陽二代表)は19日、病気腎移植の推進を求める要望書と約6万1000人分の署名を厚生労働省に提出した。

 要望書は「中国四国の移植医療をけん引してきた先生方が今回の問題で医療活動をストップさせられることのないよう願うとともに、病気腎移植が第3の道として認められ、1人でも多くの腎不全患者が救われることを強く望む」としている。

 提出後に記者会見した向田さんは「病気腎移植は新しい分野。この移植を受けて健康で普通に生活をしている人がたくさんいる。否定する学会は患者の意見を無視している。もっと審議して、1つでも助かる命を助けてほしい」と訴えた。

(共同)
(2007年02月19日 19時53分)」(中日新聞平成19年2月20日付朝刊


いくら日本移植学会等5学会の会員が、万波医師らに対する嫉妬心から病腎移植を否定したいとはいえ、これらの患者の要望にどう答えるのでしょうか? 患者の要望を、生きたいと言う患者の要望を、できる限り叶えるよう努力することこそ、医師としての役割であると思うのです。そうしてきたからこそ、医療は進歩してきたのです。 

「もっと審議して、1つでも助かる命を助けてほしい」

という6万1000人もの願いを無碍に切り捨てるほど、日本移植学会の会員や厚労省は腐っているのでしょうか?


調査委員会が述べる批判は、「患者との間で書面による説明と同意がなく、カルテの記載も不十分な点」と、「十分な記録が残っていないのは遺憾で、万波医師に反省を求める必要がある」という点です。先に述べたように、書面の有無が問題なのではなく、説明をしたかどうかです。カルテの記載が不十分というのも、後で患者が知りたいとき以外は問題となるものではありません。そうなると、いずれの批判も、患者(ドナー側、レシピエント側)の立場に立った批判というのではなく、医師側の理屈(=訴訟になったときに医師側に不利になるようなことをするな)で批判しているように感じられるのです。


移植に使える病気腎が年間2000ぐらいあるのですから、病腎移植を否定するのであれば、病腎移植を肯定した場合と同等(=年間2000程度)の臓器提供を増やす道を提示すべきです。日本移植学会の会員や厚労省は、もし病腎移植を否定するのであれば、自己責任として、年間2000程度の臓器提供を増やす責務を負うべきであると考えます。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
理不尽
春霞さま。こんにちは。

いつもながら詳細かつ的確な分析をありがとうございます。瀬戸内グループ支援の林弁護士のサイトと相互リンクされるようになったのですね。春霞さんのように熱意のある方のサイトが関係する方々に広く紹介されることはすばらしいことだと思います。

さて、2ちゃんねるでも紹介されていたのですが、

http://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/hinyo/kanja02_06.html

順天堂大学病院のHPにある腎盂・尿管癌の治療法の説明です。これによると、腎盂・尿管に癌のあった場合、「腎と尿管をすべて摘出する腎尿管全摘除術が基本」とのことです。

つまり、泌尿器関連の病気において、腎臓に問題がなくとも腎臓を切除する手術は普通に存在するわけですね。

今回の調査委員会の会合内容について、多くのメディアで「11例の腎摘出全てが不適切」との報道がありましたが、具体的な疾病名が違うとはいえ、このような術式がある(しかも病気によっては「基本」としてある)ことを考慮すると、「全て」不適切という判定にはおよそリアリティがなく、むしろ非常に意図的な情報操作・結論誘導が行われたことを露呈している気がします。(これが「十数例中2,3例は適切だった」という判定だったら、かえって第3者的にも納得がいったかもしれません。)

何より問題なのは「自家腎移植で本人に戻すべき腎臓があった」という判定です。既にこのサイト、あるいは徳洲会のサイトでも言及があったように、自家腎移植はリスクが高く、かなり特殊な手術の部類に入るはずです。それをあたかも常識的な処置のように述べてしまうのは大問題です。

そもそも移植医自体が非常に少ない日本の外科の現状では、摘出まではできても戻す手術のできない外科医は多数存在すると思われます。今回の調査委員会の報告で、最終的に「戻せる腎臓は戻さないといけない」と謳われたとしたら、泌尿器まわりの外科手術を手がけることのできなくなる医師・医療機関が続出するのではないでしょうか。調査委員会が理不尽な万波糾弾に走るあまりに、もっと一般的な医療の停滞までも招いたとしたら、と思うとゾッとします。


>「病気腎」移植について、日本移植学会など関係5学会は、「原則禁止」の方針を打ち出すことを決めた。がんとネフローゼ症候群の患者からの移植は、免疫抑制下で「再発」の危険が高まるなどとして「絶対禁止」とし、それ以外についても例外的なケースを除いて禁止する方向で合意した。

この関係5学会とやらは、「免疫抑制下で『再発』の危険が高まる」というテーゼを具体的な資料をもとに検討したのでしょうか?それとも「たぶん高まるでしょう」と感覚的に断言しただけなのでしょうか?

http://www.tokushukai.jp/media/rt/558tr.html

には、今年1月にTransplantation誌に掲載された論文として、イタリアでの移植による癌伝播についての報告が紹介されています。これによるとイタリア国内で癌患者のドナーより移植を受けた108例について、移植由来による癌発病とみなされるものは、皮膚癌を発症した2例のみ。(イタリアは移植の調査に関するデータベースがしっかりしているためにこの報告には漏れがなく、信頼性は高いそうです。)つまり、移植がもとで癌が発症する危険が高まるとする5学会の認識に真っ向から対立する結果が出たことになります。

108例中2例という数字が多いのか、少ないのか、ですが、そもそも移植を受けたレシピエントは免疫抑制剤の使用のために自己由来の癌発症率が一般の人に比べて高いそうですから、発症リスクのトータルから見れば、決して多いとはいえないでしょう。当該の論文は「切迫した状態の移植患者が臓器を待っていて、癌のリスクを有するドナーが利用可能な場合には、極めて注意深くデザインされたリスク便益分析が必要となる。」と結論していますが、臓器ネットワークでの腎臓移植待ちが10年以上になるという日本の移植事情はまさに「切迫している」としかいいようがないわけで、患者の利益・不利益を勘案した場合、日本ではこの形態を積極的に検討しなければいけない時期に来ていると、客観的には考えるべきでしょう。

(今までの経緯から行って、移植学会としたら、「日本の現状はそれほど切迫していない」とでも答弁することでしょうね。)

まあこれは最新の論文です。最新の研究成果にあまり興味をお持ちでない学会の方々のことですから、これを読まずに上記の結論を出したとしたら、それはしょうがないのかもしれません。

しかし、同じサイトで藤田士朗フロリダ大学助教授は、この論文に対し、「これまで、散発的症例報告で予想されていた、0.02~0.2%以下であろうという推定を確認するものです」とコメントしています。つまり、この論文がでる前から、移植由来の癌発症については、かなり低い数字であろうという推測が存在しているわけです。5学会の結論はそうした予測すらないものとするわけであり、弁解の余地のない、極めて悪質なものだといっていいかもしれません。

ところで、人口6000万人に満たないイタリアですら、02~04年の3年間で臓器移植手術が8000例存在するのですね。「腎臓の移植者数を対100万人の人口比で見ると、イタリアは日本の約7倍」というのですから、この数字を見ただけでも日本の移植医療の立ち後れは明々白々です。

今回のこの騒動をめぐってあれこれと記事を検索して感じたのは、アメリカなど移植先進国が、需要に見合うだけの臓器を確保するためにさまざまな工夫をし、技法を開発することに熱心であるのに対し、日本の移植学会は「臓器が足りませんね、アハハ」というばかりで、巣の中のひな鳥のごとく、誰かがどこかから臓器を持ってきてくれると信じ込んで、自ら開拓の労を取ることなど全く頭にないということです。ひょっとしたら若い日に単身アメリカに乗り込んで移植医療を学んだ万波医師は、そうしたアメリカの空気を身につけてきて実践している、ということなのかもしれません。そんな彼からは、移植臓器を増やす工夫をしない日本の移植学会はエイリアンに見えるでしょうし、また多くの患者さんから彼が支持されるのも、そのへんの根本的な認識の問題なのかもしれません。
2007/02/20 Tue 11:29:07
URL | 語学教師 #va74bd7o[ 編集 ]
ありがとうございます
春霞さんの詳しい分析と語学教師さんの意見に励まされています。
腎不全で苦しむ方々が助かるように切に願ってやみません。
日々学び、患者さんの声を人々に伝えたいと思っています。
ありがとうございます。
2007/02/20 Tue 12:45:45
URL | rikachan #-[ 編集 ]
>語学教師さん
コメントありがとうございます。お返事が遅れてすみません。


>瀬戸内グループ支援の林弁護士のサイトと相互リンクされるようになった
>のですね。

おお! 指摘を受けて、はじめて気づきました(汗)。ありがとうございます。非常に嬉しいです。

よく考えれば、支援グループの方たちからリンクしてもらえるほど、何度も触れているってことですね。自分で言うのもなんですが、それだけ力を入れて書いているってワケですね(^^ゞ


>春霞さんのように熱意のある方のサイトが関係する方々に広く紹介
>されることはすばらしいことだと思います。

関係者の方たちにも読んでもらえるのは、気恥ずかしい気もしますが、非常に嬉しいことです。でも、関係者の方たちは、病腎移植問題がどういう問題なのか、分かっていると思うのです。

問題なのは患者の実情がよく分からない人たちです。「病気の腎臓? がん?」というだけで、不安視してしまって、否定的になってしまうわけです。一部のマスコミがその不安を増幅してしまう……。何が問題なのか、私なりに分析して明確に伝えることで、根拠なく不安視することを解消することに意味があると思っています。どれだけ効果があるか不明ですが……(汗)


>「全て」不適切という判定にはおよそリアリティがなく、むしろ非常に
>意図的な情報操作・結論誘導が行われたことを露呈している

仰るとおりです。問題のある報道です。大体、3月3日に、万波医師に聞いてから判断するというのですから、まだ結論を出していないんですから。


>自家腎移植はリスクが高く、かなり特殊な手術の部類に入るはずです。
>それをあたかも常識的な処置のように述べてしまうのは大問題です

万波医師は30年で630件の腎移植数で、個人ではもっとも多い経験を有しているようですし、移植以外も行っているので、日本でももっとも経験豊かな泌尿器科の外科医でしょう。

腎移植につき、最も経験豊かな万波医師に対して、自家腎移植は常識であるかのようなことを言うのですからね~。「自家腎移植は常識」と言う医師に対して、どれだけの腎移植実績・成功例を有しているのか、聞いてみたいです。腎移植実績・成功例が乏しい移植医であったら、単なる口だけの移植医であって、まったく信用できないのですから。


>今回の調査委員会の報告で、最終的に「戻せる腎臓は戻さないといけない」
>と謳われたとしたら、泌尿器まわりの外科手術を手がけることのできなく
>なる医師・医療機関が続出するのではないでしょうか。

怖いのは、患者が調査委員会の報告を信じて、病気腎の修復後、何が何でも自分に戻すことに固執し、技量の劣る外科医が戻すことに固執することです。患者の要望どおり、技量の足りない医師が本人に戻すことに拘り、長時間の手術、その結果、体への過重な負担から長期間の入院が必要になり、悪くすると死亡に至る……ことが、今後は増えてしまうでしょう。今のままでは。恐ろしいことです。


>移植学会としたら、「日本の現状はそれほど切迫していない」とでも
>答弁することでしょうね

マスコミは、日本移植学会の幹部に「日本の現状は切迫していないと考えているのか?」と聞いて欲しいです。
本当に、切迫していないと答えるのなら、透析患者だけでなく、みんなで罵倒するべきです。現実が分からないのなら医師失格だと。


>人口6000万人に満たないイタリアですら、02~04年の3年間で臓器
>移植手術が8000例存在するのですね

イタリアは相当努力しているのですね。日本の現状を考えても、そう簡単には臓器移植が増えるわけではないのですから。


>今回のこの騒動をめぐってあれこれと記事を検索して感じたのは、
>アメリカなど移植先進国が、需要に見合うだけの臓器を確保するために
>さまざまな工夫をし、技法を開発することに熱心であるのに対し、
>日本の移植学会は「臓器が足りませんね、アハハ」というばかりで、

仰るとおりです。
今回の騒動によって、私も多くのことを知ることができました。医療の発展に貪欲なまでに努力する米国、それに対して、慎重とか腰が引けているというよりも、新しいことをしようとする者を執拗なまでに非難して、止めさせてしまう日本移植学会と日本のマスコミ報道。あまりに対照的です。


>ひょっとしたら若い日に単身アメリカに乗り込んで移植医療を学んだ
>万波医師は、そうしたアメリカの空気を身につけてきて実践している

万波医師に限らず、日本移植学会の会員も何人かは外国へ留学しているはずですし、医学雑誌の情報からしても、外国の移植医療事情は分かっているはずなのです。いまや医者でなくても、ネットなどで医療情報は広く入手できるのです。

なので、もっと、「そうしたアメリカの空気を身につけて」いる医師が出てきて良いと思うのですけどね。日本移植学会の会員だったりすると難しいのでしょうけど……。
2007/02/22 Thu 05:06:12
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
>rikachanさん
コメントありがとうございます。お返事が遅れてすみません。


>春霞さんの詳しい分析と語学教師さんの意見に励まされています。

ありがとうございます。


>腎不全で苦しむ方々が助かるように切に願ってやみません。

ほんと、そうですね。少しでも、救われる道を探って欲しいです。万波医師らを批判したところで、ドナー不足の現実は変わらないのですから。
いま一番優先すべきことは、万波医師批判ではなく、仰るとおり、腎不全で苦しむ方々をどのような方法で、生きているうちに救うかなのです。


>日々学び、患者さんの声を人々に伝えたいと思っています。

このブログで学んでもらえるなんて、大変嬉しいことです。ありがとうございます。

患者さんの声は大事ですから、もっと多くの人に伝わって、患者に対する共感を得られたらいいと思っています。いまだに偏見に満ちた、一部のマスコミが報道内容を変更せざるを得なくなるまで、この問題については何度でも触れる予定でいます。
2007/02/22 Thu 05:08:16
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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2007/02/20(火) 21:31:58 | 晴天とら日和
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