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2007/02/15 [Thu] 17:17:18 » E d i t
東京新聞2月14日付朝刊「こちら特報部」では、光畑直喜医師(58)が米国の医学雑誌に病腎移植の有効性をまとめた論文が掲載されることを含めた形で、記事を掲載していました。この記事を紹介します。

この記事は、実際の紙面とネット上のものとは違いがあります。1つはネット上の記事は見出しが少なく、もう1つは、ネット上の記事には光畑医師へのインタビュー記事がないことです。このブログでは、見出しがある方が読みやすいので、なるべく実際に紙面と同じになるように見出しを付加し、光畑医師へのインタビュー記事も載せました。
また、なお、このエントリーの表題は、東京新聞2月14日付朝刊1面での、この記事の紹介文句から引用しました。


1.東京新聞平成19年2月14日付朝刊28・29面「こちら特報部」

SOS臓器移植 『病気腎』は禁断の手術か

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らが執刀した病気腎移植手術を調査する日本移植学会などは、近く報告書をまとめる。内容次第で、国内での同手術は難しくなるが、広島大の難波紘二名誉教授(66)らは「第3の腎移植の道を閉ざすな」と論陣を張る。手術に関与した光畑直喜医師(58)も手術の有効性を論文にまとめ、米国の医学雑誌に掲載する。病気腎移植は「禁断のワザ」か「奇跡の医療か」-究極の論戦が続く。 (片山夏子、橋本誠)

■「症例の検証重ね実用化」 広島の教授有効性検証

 鹿鳴荘病理研究所の所長でもある難波紘二氏は、永久保存されている病理記録を基に万波医師らが執刀した病気腎移植を解析した。その結論として「新しい発想を生み出した万波医師らの功績は大きい」と評価するという。

 詳細を見ると-。

 現在、万波氏らが行った病気腎移植で判明しているのは四十二例。そのうち難波氏が把握していなかった六例を除く三十六例(一九九一年一月から二〇〇六年九月)を解析した。手術を二度受けた例もあり、患者は三十四人だった。

 このうち、調査委員会などが特に問題としてきたのは、腎臓がんと尿管がん、ネフローゼ症候群の患者の腎臓を使った移植手術だ。

 しかし、腎がん八例については、全例が直径四センチ以下。病理診断でも悪性度が中等度以下とされ、移植後の再発や転移はなかった。「直径四センチ以下だと、ほとんどが転移や再発はしない」と万波医師も話している。三例については移植後五年以上の追跡調査がされていたが患者は元気だった。

 尿管がん六例のうち、五例は三年十カ月から十年四カ月の追跡調査がされているが再発もなく健在。

 あと一例は、移植二年目に腎盂(う)にがんができたが、「死んでも透析に戻りたくない」という本人の希望で部分切除。後に肝臓がんで亡くなった。

 腎がんが転移した可能性については、「腎がんが肺に転移し、その後肝臓に転移したのであれば、腎がんからの転移が疑われる。だが、この患者は、肺と肝臓にほぼ同時期に見られるため、腎がんからのものとは考えにくく本人由来と考えられる」と分析する。また、この例については「手術中の迅速診断では悪性度が低いと診断され、後の病理検査で悪性度が高いと判明した。つまり、病理学的に悪性度が低いものについては再発や転移がないことが分かる」という。

 ネフローゼ症候群(高脂肪血症、低タンパク症などの症状を呈する腎疾患の総称)は、異常タンパクを作る原因が腎臓側と血液側にある時の両方があるが、ドナーはいずれも血液側に問題があった。そのため、「移植後すぐは、タンパクが出る場合もあるが、腎臓には問題がないので時間がたつにつれ出なくなる」と説明する。七例のうち、ほかの病気で亡くなった二人と拒絶反応が起きた一人を除いて健在だった。

 以上のような解析から、難波氏は「世界的にドナー不足の中、次々と病気腎移植の論文が出てきている。捨ててしまうものを有効に使う技術は、これからますます注目される」とする。

 この一月にも、がん患者からの百八例の臓器移植について、皮膚がんの合併症が起きた二例以外は再発がないとする論文が専門誌に紹介された。また、がん患者から移植を受け、その後がんとなった十七例を遺伝子解析して、全例がドナーではなく、患者本人由来のがんだったことを報告する論文もある。

 「今はまだ初めての移植が病気腎移植だった例が十二例しかないが、この実例を積み重ねて検証していくことで病気腎移植を第三の道にすべきだ。病気腎で移植の数が日常的に増え、国民の移植への拒絶意識が変わる効果も期待できる」と難波氏は主張する。

■患者ら「脱透析の希望」

 また病気腎移植の継続を望む患者の声は絶えない。

 愛媛県宇和島市の理容業男性(64)は、六十一歳のときに腎臓病がわかった。遺伝性の腎不全で父親も妹も同じ病気。妹も病気腎移植を受けた。

 昨年六月から、透析を開始。厳しい水分や食事制限で自暴自棄になった父親の姿を見ていたこともあり、不安は大きかった。移植を考えたが、妻は亡くなっており、「親が子どもからもらうなんてことは考えられなかった」。まして献腎移植は回ってくる可能性はほとんどなかった。

 男性は、医師から病気腎移植の話を聞いた時、「リスクが完全にない訳ではないが検診で兆候があればきちんと処置する」と言われ、妹が元気になったのも見ていたので了承。昨年八月に腎臓の動脈瘤(りゅう)の手術を受けた。

 移植後、透析で休みがちだった理容業を再開。「透析のままだと店を閉めるしかなかった。私のように家族がみんな腎臓病だと病気腎移植がないと移植は不可能。きちんとした検証やルールは必要だが道は閉ざしてほしくない」と話す。

 同県八幡浜市の片山剛夫さん(60)は三十七歳で腎不全に。三カ月後から週三回の透析を受けた。階段を上がるのもつらく、吐き気がひどかったため、仕事はできなくなり妻が働きに出た。水分制限も苦しかった。「苦しい上、働けず家族に世話になるだけ。自殺する人の気持ちが分かった」

 病気腎移植の話を聞き、宇和島の万波医師を訪ねた。五十歳の時、動脈瘤のドナーが出たと聞いて二つ返事で了承。「待ちに待った瞬間だった。透析だけで何年生きられたか。親族からもらうのはいろいろ問題が出る。病気腎移植は患者にとっては希望。道を閉ざしてほしくない」と話した。

■学会「全くの想定外」動揺も

 病気腎移植が明らかになった宇和島徳洲会病院(愛媛県)と宇和島市立宇和島病院(同)、呉共済病院(広島県)、香川労災病院(香川県)は調査委員会を設置。岡山、広島県の五病院で起きた六症例については、厚生労働省と日本移植学会、日本泌尿器科学会が調査班をつくっている。

 各委員会は学会が推薦した医師ら五-十人が委員を務め、調査班は専門医と倫理学者、移植者代表、病院代表の計十一人で構成。個々の症例について、カルテやエックス線検査の資料を精査している。調査班と一部の調査委では、医師や患者の聞き取り調査も始まっている。ポイントは腎臓の摘出や医療体制が適切かどうかや、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)の有無などだ。

 当初は昨年中とされていた調査結果の判明は遅れているが、厚労省などの調査班は間もなく結論を出すという。方向性はまだ分からないが、事務局である厚生労働省臓器移植対策室の担当者は「動物実験から始めて、人間に進めていくべきなのに、そうした研究の順序を無視したことが問題。移植して機能する腎臓なら、摘出する必要はない。がんの腎臓を移植しても再発しないという意見もあるようだが、それなら、これまでに広く行われているはずだ」と話す。

 日本移植学会の倫理指針は「健常なドナーに侵襲を及ぼすような医療行為は望ましくない」として生体臓器移植に厳しい条件を付けているが、そもそも病気腎移植は全く想定していなかった。このため、日本泌尿器科学会、日本腎臓学会、日本病理学会と合わせた四学会の合同会議が意見を集約中で、近日中に見解をまとめる。日本移植学会の田中紘一理事長は「事実関係を把握し、学会としてメッセージを出す」と説明。光畑医師が発表する論文については「全文を読んでいない」としてコメントを避けている。

 日本移植学会によると、万波誠医師の会員歴はない。仲間で弟の万波廉介医師は一九九一年三月に入会したが、二〇〇四年二月に退会した。

<メモ>病気腎移植問題 昨年11月、万波誠医師らが、がんなどの病気で摘出された患者の腎臓を移植治療に使ったことが判明。臓器移植法の枠外で行われた独自の医療に対し、学会や移植者団体から疑問視する声が上がった。

<デスクメモ> 同じ医者の見解がどうしてこうも食い違うのか。皆さんは不思議に思いませんか。友人の医者に聞いてみました。彼の答えは「自分たち以外の意見は排除するんだよ」。世の中にままあることですが、これでは何を信じたらいいか判断に困る。で、こう思うことにしました。患者が支持する医者を支持する。 (充)


■「科学的な検証を切に願う」■

 万波グループのひとりである光畑医師は、腎臓や尿管下部のがんの腎臓を移植した四人の症例を論文にまとめた。論文は、米国の移植専門誌「トランスプランテーション」に掲載される。光畑医師に話を聞いた。

    ■ 

 論文を書いたのは、世界的なドナー不足の現状を解消する一つの方法として、紹介できたらと思ったから。病気腎移植については、感情的に議論されるのではなく、科学的に検証されることを切に願っている。

 小さいがんで腎臓を摘出したことが非難されたが、一九九五年ごろから広く行われるようになった腹腔(ふくこう)鏡手術では、小さいがんでも部分切除が難しく摘出するのがほとんど。また、小さいがんでも摘出を望む患者はいる。ドナーとなった患者や家族が何度も話しあって摘出を希望した場合は、移植することに問題はないと思う。

 移植を受ける患者も、リスクを含めて透析を続ける生活よりも病気腎移植を希望する人が少なくない。家族から移植を受けたが生着せず、透析に戻っても、これ以上身内から提供を受けられない人はたくさんいる。がんはメカニズムが分かっていない部分があるので、今後も検証は必要だが、捨ててしまう病気腎の移植については道を閉ざすべきではない。(談)」




2.病気腎移植問題については、インフォームドコンセントを欠いていたのかどうかも問題とされてきたわけですが、この記事は、難波氏の調査結果、必要性を主張する患者の声、厚労省と日本移植学会の見解、光畑医師の論文に関する談話といったように、全体的には、病気腎移植の医学的妥当性に重点を置いた内容になっています。最初の方に

「病気腎移植は「禁断のワザ」か「奇跡の医療か」-究極の論戦が続く。」

といった文章があることもそれを示しています。

(1) 

 「調査委員会などが特に問題としてきたのは、腎臓がんと尿管がん、ネフローゼ症候群の患者の腎臓を使った移植手術だ。

 しかし、腎がん八例については……移植後の再発や転移はなかった。……三例については移植後五年以上の追跡調査がされていたが患者は元気だった。……

 尿管がん六例のうち、五例は三年十カ月から十年四カ月の追跡調査がされているが再発もなく健在。あと一例は、移植二年目に腎盂(う)にがんができたが……本人の希望で部分切除。後に肝臓がんで亡くなった。 ……この患者は、肺と肝臓にほぼ同時期に見られるため、腎がんからのものとは考えにくく本人由来と考えられる」……

 ネフローゼ症候群……は……ドナーはいずれも血液側に問題があった。そのため、「移植後すぐは、タンパクが出る場合もあるが、腎臓には問題がないので時間がたつにつれ出なくなる」と説明する。七例のうち、ほかの病気で亡くなった二人と拒絶反応が起きた一人を除いて健在だった。」


要するに、腎臓がんと尿管がん、ネフローゼ症候群の患者の腎臓を使った移植手術について、調査委員会は問題があると主張してきたのですが、調査委員会の意向と異なって、難波氏による調査結果からすると、問題がなかったわけです。特に、がん転移もないなどで健在という結果の場合にはその客観的事実を改変することは困難でしょう。

そうなると、病気腎移植は問題があるという結果にしたい、調査委員会はどういうやり方で「病気腎移植には問題がある」という結果を作成(でっちあげ?)するのか注目しています。


(2) 

 「難波氏は「世界的にドナー不足の中、次々と病気腎移植の論文が出てきている。捨ててしまうものを有効に使う技術は、これからますます注目される」とする。

 この一月にも、がん患者からの百八例の臓器移植について、皮膚がんの合併症が起きた二例以外は再発がないとする論文が専門誌に紹介された。また、がん患者から移植を受け、その後がんとなった十七例を遺伝子解析して、全例がドナーではなく、患者本人由来のがんだったことを報告する論文もある。」


世界に目を向けると、次々と病気腎移植の論文が出され、それもほとんど問題がなかったという結果のようです。そうなると、秒腎移植は、世界的に「これからますます注目される」という見方は、正しいといえそうです。

どこの国で実施されたものか分かりませんが、「がん患者からの108例の臓器移植」があるということは、その国の医学界やマスコミは、疑問を示すことはあるとしても、日本移植学会のように「がんのあった臓器移植は禁忌」と、根拠を示すことなく真っ向から否定する対応ではないのでしょう。うらやましい限りです。


(3) 

「病気腎移植の継続を望む患者の声は絶えない。

 理容業男性(64)は……昨年六月から、透析を開始……移植を考えたが、妻は亡くなっており、「親が子どもからもらうなんてことは考えられなかった」。まして献腎移植は回ってくる可能性はほとんどなかった。

 片山剛夫さん(60)は三十七歳で腎不全に。三カ月後から週三回の透析を受けた。階段を上がるのもつらく、吐き気がひどかったため、仕事はできなくなり妻が働きに出た。水分制限も苦しかった。「苦しい上、働けず家族に世話になるだけ。自殺する人の気持ちが分かった」

 ……病気腎移植は患者にとっては希望。道を閉ざしてほしくない」と話した。」


献腎移植は、日本では平均16年待つ必要があり、しかも透析患者の16年の生存率は30%未満なのですから(東京新聞平成18年11月30日)、60歳を超えて透析を始めたら献腎移植は回ってくる可能性は殆どないといえるでしょう。だからといって、子供から腎移植を受けるなんて、親としてはためらいことも多いようです。子を思う親の気持ちを考えれば。仮に、子供や親族から生体腎移植を受けたとして、もし生着しなかった場合には、ずっと悔やんでしまうのです。

 「十四年前に父親、六年前に母親から移植二回を受けた主婦(40)は、父親からもらった腎臓が拒絶反応でだめになった時、「申し訳ない気持ちでいっぱいになり毎日泣いて暮らした」という。母親が提供を申し出てくれた時も、いったんは「透析はつらいが、もういいと思った」。今も母親の腎臓がだめになったらと考えると不安は強いが、「次に妹がくれるといってももらわない」と話す。家族間だからこそ患者が負い目を感じたり不安になったりして、移植後の生着に影響することもあるという。」(東京新聞平成18年12月7日「こちら特報部:SOS臓器移植 ルールと課題提言」



患者によって透析による影響は違ってきますが、透析後気絶したり、幻覚を見ることもあるようです。透析に週数回、それも何時間もかかるのですから、とても仕事をする状況にならず、誰かに頼って生きるしかないといったことにもなりかねません。

「患者の、
なにがなんでも
どうにかして!
という気持を、医師はわかっていますか?
どうしても
生きたいと望む患者の生きる力を信じられませんか?
病気でない人や、
病気の苦しみを経験したことのない人は、
または 
生きることについて
なにも考えたことのない人は、
そこまでして、
どうして生きたいのか?
という人もいます。
理由なんてあるんですか?
理由がなければ、生きたいと望んではいけないのか?

みんながそう思っているかどうかはわかりません。
あきらめている人のほうが断然多いんです。

いったん人工透析に入れば、
二度と腎臓の機能が回復することはありません。
(まれにはいるらしいけど)
人工透析は、
治療ではなく、
延命措置なのです。
やめれば
死にます。」(「アンジェリーナ・ジョリーと世界のこと」さんの「医者と患者の間」


こういった患者の声に対して、面と向って「病腎移植はできない、病気腎移植は許されない」といえるのでしょうか? 日本移植学会の幹部は。


(4) 

「厚労省などの調査班は間もなく結論を出すという。方向性はまだ分からないが、事務局である厚生労働省臓器移植対策室の担当者は「動物実験から始めて、人間に進めていくべきなのに、そうした研究の順序を無視したことが問題。移植して機能する腎臓なら、摘出する必要はない。がんの腎臓を移植しても再発しないという意見もあるようだが、それなら、これまでに広く行われているはずだ」と話す。」


ここで引用した厚労省の担当者の意見は、病気腎移植の医学的妥当性よりも、「研究の順序を無視したこと」を気にしていることがわかります。患者のためになるような治療方法を検討するよりも、まず「順序」を気にするのですから、まさに官僚らしい発言です。

新薬を認可するためというように、副作用などの薬の弊害がまったく不明な場合には、最初に動物実験をするということは大事だと思います。しかし、生体腎移植では病気腎移植であることが珍しくなく、それで問題が生じてなかったのですから、病気腎移植であっても弊害がほとんどないことは分かっていたわけで、ずっと問題視することすらしていなかったわけです。そうだすると、少なくとも今さら動物実験をしなかったことで「研究の順序を無視している」と批判するのは、現実無視の批判であるように思います。

「移植して機能する腎臓なら、摘出する必要はない」という部分は、まだこんなことを言っているのかと唖然とします。ネフローゼ症候群は、本人では機能しないが他人に移植すれば機能するのですし、患者の肉体的負担を減らすために摘出したり、患者が希望することで摘出することがあるのですから。

厚労省の官僚としては、患者の希望を叶えるというよりも、問題になりそうなことはすべて認めないという立場なのでしょう。少しでも問題が生じると出世に影響するから、認めないようにしようとしているように感じられます。

厚労省の官僚は

「がんの腎臓を移植しても再発しないという意見もあるようだが、それなら、これまでに広く行われているはずだ」

などと批判しています。しかし、少なからぬ医師や一般人は「がんのあった臓器は移植すると、再発して他人にも転移してしまうのではないか、不安を覚える」という、根拠なく抵抗感を感じていたのですから、元から、広く行われるはずがありません。
「知らないことに対しては、不安感を覚える」という素朴な感情は、多くの人がもつ感情です。しかし、知らないゆえの不安感は、きちんと情報を与えることで解消すればよいのです。

このように、厚労省の官僚の批判は、知らないゆえの不安感を無視した批判であり、妥当ではないのです。


(5) 

「日本移植学会の田中紘一理事長は「事実関係を把握し、学会としてメッセージを出す」と説明。光畑医師が発表する論文については「全文を読んでいない」としてコメントを避けている。」


日本移植学会が、病気腎移植の医学的妥当性についても検証する意図があるなら、光畑医師が病気腎移植に関して発表する論文を呼んで判断するのが、最も適切な対応のはずです。光畑医師が発表する論文を読んで判断してほしいと思いますが、発表されるのは早くても3ヵ月後ですから、読んで判断する気はないのでしょう。

光畑医師の「全文を読んでいない」からコメントを避けるというのは、一応、合理性のある言動であるとはいえますが、読んで判断する気はないはずですから、ずっとコメントを避けるはずです。日本移植学会は、おそらく、最初っから、「(自分たちが行う病腎移植以外は)病腎移植は認めない」という結論は決まっているのですから。


(6) 

「論文を書いたのは、世界的なドナー不足の現状を解消する一つの方法として、紹介できたらと思ったから。病気腎移植については、感情的に議論されるのではなく、科学的に検証されることを切に願っている。」


患者側が感情的になってしまったするのは、むしろその置かれた状況を考えれば、当然とさえいえるのですから、何も非難できません。しかし、医師の側は感情的に議論するのは止めるべきです。

万波医師らを批判する側は、病腎移植が実施されてきたのに、最初は「病腎移植は許されない」と批判したりしていたのです。「がんのあった臓器の移植は禁忌」というのも、調査結果や最近の研究論文からすると、根拠に乏しいのです。いずれも、事実に反した批判であって、感情論にすぎません。批判する側も科学的な検証に基づいて批判すべきです。



3.この病腎移植問題についは、<デスクメモ>の記述が示唆に富んでいると思います。

 「同じ医者の見解がどうしてこうも食い違うのか。皆さんは不思議に思いませんか。友人の医者に聞いてみました。彼の答えは「自分たち以外の意見は排除するんだよ」。世の中にままあることですが、これでは何を信じたらいいか判断に困る。で、こう思うことにしました。患者が支持する医者を支持する。」


患者にとっては、満足できる結果(生活の質(QOL)を上げる)が得られることこそ、重要なことです。万波医師らを支持する患者たちは、自分の体を張って治療を受けて、現実に満足できる結果を得ているのです。

元々、生体腎移植でも病腎移植が珍しくなかったので、ある意味、病腎移植はずっと実施されてきたという実績があるのですから、病腎移植は「禁断のワザ」でも「奇跡の医療」でもないのです。

病腎移植に関して、「患者が支持する医者を支持する」という態度は、妥当であると考えます。治してくれる医師こそ信頼でき、治してくれたことを実体験で知っている患者を信用する。実に分かりやすい判断基準であると思います。


注意すべきことは、病腎移植は、ドナー側にとっては治療目的での腎臓摘出であるということであって、病腎を修復して移植することには高い技量を要するのです。ですから、万波医師ら以外の医師も病腎移植を実施していることが明らかになった以上、手術を受ける際には信頼するに値する医師かどうかをよく調べる必要があります。

何度も触れていますが、今は調査委員会の委員をしている「深尾立医師」は、過去において人体実験のような移植手術を行い、一度もしたことのない手術を行い、縫合不全とそれにまつわる炎症が原因で死亡させたばかりか、千葉大学時代には、心臓死の肝移植を行なって(常識的に脳死でない肝移植は絶対につながらないと考えられている)子どもを死なせている経験ももっているのです(「病気腎移植問題~大島伸一・移植学会副理事長は万波医師を非難する資格があるのか?」参照)。こういう悪質な医師は、病腎をもつ患者の臓器を何としても移植用に使用しようと画策しかねませんし、やたらとドナー側の臓器を摘出する可能性がありますし、不十分な修復のままの臓器をレシピエント側に移植する可能性もあります。

今後、病腎移植の実施によって、患者の命を奪いかねない危険な医師は、ずっと病腎移植を実施してきた万波医師らではなく、万波医師らを批判している、移植学会の技量が足りない大島氏や深尾氏なのです。信頼するに値しない医師は、むしろ万波医師を批判する側ではないかと思うのです。




<追記>

四国新聞平成19年2月15日には、日本移植学会の幹部が顔をしかめそうな記事が出ていました。

 「病気腎摘出4件「妥当」-香川労災病院調査委
2007/02/15 09:41

 病気腎移植問題で、腎臓四件を摘出・提供した香川労災病院の調査委員会(委員長・井上一同病院長)が十四日、香川県丸亀市の同病院で開かれ、四件の摘出が医学的に妥当だったとの見解で合意した。二月中に報告書をまとめ、厚生労働省に報告する予定。

 同問題では関連病院ごとに調査委員会を設けている。労災病院の調査委は、日本移植学会、日本泌尿器科学会の医師ら外部委員四人を含む十二人で構成。▽腎臓摘出が妥当だったか▽患者への説明・同意手続きが適正だったか―を軸に調べている。この日の会合では四件のカルテを基に、執刀した西光雄泌尿器科部長(58)からの聞き取りを行った。

 同病院では二〇〇一年と〇六年、いずれも西部長が同意書を取って病気腎四件を摘出。腎臓は宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などで移植に使われた。」


日本移植学会の幹部の意向と異なり、万波医師らの行為をすべて不当であると非難することは難しくなったようです。

テーマ:時事ニュース - ジャンル:ニュース

コメント
この記事へのコメント
役人も学会も……
春霞さま。こんばんは。

いつもながら、詳細な資料収集とコメントを公開してくださり、ありがとうございます。

>患者によって透析による影響は違ってきますが、透析後気絶したり、幻覚を見ることもあるようです。透析に週数回、それも何時間もかかるのですから、とても仕事をする状況にならず、誰かに頼って生きるしかないといったことにもなりかねません。
(……)
>こういった患者の声に対して、面と向って「病腎移植はできない、病気腎移植は許されない」といえるのでしょうか? 日本移植学会の幹部は。

http://www.geocities.jp/yu_domon/touseki.htm

によれば(ちょっと古いページのようですが)、

>財政難を理由に厚生省は、諸外国で透析膜の再利用が
>行われていることをならって、日本でも医療費節減のために
>透析膜を再利用させようという動きがあるそうです。
>しかし、通常の条件で透析を行った場合、1年間の透析患者の
>死亡率をみると先進国間であまり大きな差は出ませんが、
>アメリカをはじめとして、再利用を行っているいくつかの国では、
>死 亡 率 が 約 2 倍
>と圧倒的に大きいことがわかりました。このため
>「金のために患者を犠牲にするのか」
>透析医学会などが再利用に猛反対しています。

とのことで、政府としては人工透析にかかる医療費の削減を方針としており、そのために透析患者さんたちの負うリスクを高めようとしている訳です。その一方で、現時点では人工透析に替わる唯一の治療である移植医療について、提供できる臓器の数を画期的に増やせる病気腎移植を封印し、門戸を狭めようというのでは、国としての医療政策の不在を批判されてもしかたのない問題であるといえるでしょう。

難波紘二氏はTBSの「報道特集」で、「病気腎移植がダメだというのなら、それにかわる対策をフィロゾフィーをもって示せ」と訴えていましたが、それはまさにこのことを指しているのだと思われます。


>「厚労省などの調査班は間もなく結論を出すという。方向性はまだ分からないが、事務局である厚生労働省臓器移植対策室の担当者は「動物実験から始めて、人間に進めていくべきなのに、そうした研究の順序を無視したことが問題。移植して機能する腎臓なら、摘出する必要はない。がんの腎臓を移植しても再発しないという意見もあるようだが、それなら、これまでに広く行われているはずだ」と話す。」

この厚労省のお役人の発言は、いくつかの点で医療関係者としての不見識をあげつらわれてもしかたのないものと思えます。つまり、

(1)「移植して機能する腎臓なら、摘出する必要はない。」とありますが、もしこの担当者が自分の発言を本気で信じているのであれば、厚労省の方針として、「使える腎臓を全摘してはいけない。全摘した場合には違法治療とみなして、医療保険を適用しない」とでも定めればよろしい。「それでは治療ができない、体力的に無理な自己移植手術により患者のリスクが増す」として、現場の医師たちが大反対することでしょう。

(2)「がんの腎臓を移植しても再発しないという意見もあるようだが、それなら、これまでに広く行われているはずだ」というのは、字義通りに受けとれば、「これまで広く行われていない医療は全部ペケ」ということですから、医療における新しい治療法開発の可能性を根本から否定する発言です。厚労省の人間がこんなことを言うようでは、どんな分野であろうと現場医療の進歩など到底望めません。

現実での(かなり極端な)例を挙げれば、かつて世界的な医療事故で悪名を馳せたサリドマイド剤は、現在ハンセン氏病および癌の治療薬として再評価が行われています。これなども、上記の発言の揚げ足をとれば、「ほんとうに癌に効くのなら、最初から癌治療に使われていたはずだ」という理屈になるでしょう。(現在厚労省にたいして、多発性骨髄腫にたいする治療薬としてサリドマイドの再承認が申請されています。)


病気腎移植については、メディア・学会の流す情報がそろそろリピート・モードに入っており、新しい突っ込みどころもネタ切れという感じがします。今回はちょっと視点をかて、別の話題を私の方から振らせていただきます。

07年1月11日付けの、日本の医療関係者向け新聞『メディカルトリビューン』紙(ネット上での閲覧はできないようです)に「5組の歴史的ドミノ腎交換を実施:ホプキンス病院で非血縁者間生体腎移植」との記事がありました。これはかんたんに言えば、5人の患者がそれぞれに血縁ドナーを持ち寄り、計10人の間で最適なマッチングを検討した上で、それぞれのドナーが、その場で初めて出会った別の患者さんに腎臓を提供・移植手術を行うというものでした。アメリカはボルチモアのホプキンス病院では、「入手可能な臓器を大幅に増やし、移植ドナーとレシピエント双方に益するために、利他的ドナーと不適合レシピエントペアを組み合わせる」ことを2001年から実践しているのだそうです。(さすがに5組同時は初めてだったようですが。)

この交換移植という方法は、日本では実施の可能性が大幅に狭められています。なぜかというと、日本移植学会のコメントがでているのですが、

http://www.asas.or.jp/jst/news/news007.html

> ドナー交換腎移植は韓国など少数の国と施設において実施されている医療で、(中略)
> しかしながら、近年における移植医療技術の進歩によりこれらの条件における腎移植の成績が向上しつつあり、多くの移植専門医はドナーを交換して移植を実施しなければならないような絶対的な医学的必要性は決して大きいものではないと考えている。

というわけで、要するに学会としては「韓国なんて遅れた国!のやってる治療だぜ」「日本のほうが腎移植の成績はいいんだから、必要ないんだもんね」と言いたい訳ですね。このコメントでは、アメリカでの交換移植の実績はないものとされてますし、日本より桁違いに多くの移植手術が行われているアメリカですら切迫した問題としてとらえている「移植に使える腎臓が足りない」という現状が、全く認識されていないといえます。

おまけにこうした交換移植の抱える「倫理問題」として、

> ドナー交換腎移植においては、ドナーが直接自分の近親患者に提供するのではなく、また2つの移植の結果が同等であるという保証がない条件下で行うことから、多くの倫理的問題が存在すると認識せざるをえない。

つまり、学会は、「交換して手術したら、結果に差が出るのはまずい」と、「駆けっこで順位を付けるのは子供がかわいそうだ」というのと50歩100歩な、無意味な平等性への固執を「倫理的問題」として謳っている訳です。

私がこの話題にかこつけて何が言いたいかといいますと、日本移植学会自体が移植医療に対してどうにも本腰を入れているように思えない、新たな移植法の開発に実に消極的である、その理由のひとつが、「近親者ならタダで臓器を出すから安心だ」とか、「同時移植したら、結果も同じでなくちゃ」といった、「倫理」とは名ばかりの単なる子供の理屈であるということ。さらには、海外で行われている先端医療について、「そんなのは問題外だよ、日本のほうがずっと進んでいるんだよ」と言い張って導入しないというのが、どうやら日本移植学会の常套手段であること。この二つです。

日本移植学会副理事長の大島伸一氏は万波氏を批判して、「現代の医療は社会との関わりで行われるべきだ」と大言壮語しましたが、島国根性で海外の先端治療を省みない、また、病気腎移植の道を閉ざそうとしながら、国内の絶望的といっていい臓器不足からくる移植医療の停滞に対して、何らの方策を提案する気もない学会側のほうがよほど、「社会との関わり」を一顧だにしない時代錯誤を犯していると言わねばなりません。

それにしても、ネット時代の到来によって私のような門外漢ですらあれこれと情報を集められる時代になったから多少はいいようなものの、これが一昔前であったなら、こうした医学界の政治問題によって潰された先端医療が過去にどれだけあったことか、と思うと、ゾッとしますね。
2007/02/15 Thu 23:31:03
URL | 語学教師 #va74bd7o[ 編集 ]
はじめまして
はじめまして。
いち読者、もと医療従事者です。
記事拝読し、励まされています。
私も患者さまの信頼する医師を、指示する立場で主張していきたいと思います。
官僚や学会の、心ない発言や方針にただただ開いた口がふさがりません。血の通わない集まりのようにも感じられます。残念無念です。
2007/02/16 Fri 10:43:03
URL | rikachan #-[ 編集 ]
>語学教師さん
コメントありがとうございます。

>http://www.geocities.jp/yu_domon/touseki.htm
>によれば(ちょっと古いページのようですが)

いつもながら、情報ありがとうございます。


>この厚労省のお役人の発言は、いくつかの点で医療関係者としての不見識
>をあげつらわれてもしかたのないものと思えます。つまり、

厚労省の役人の発言に対する批判、ありがとうございます。色々批判できますね。こういう厚労省の役人の発言を聞くと、「他人事だと思ってるだろ? 自分が患者側にたったらなんて少しも考えてないだろ?」と言いたくなります。


>病気腎移植については、メディア・学会の流す情報がそろそろリピート・
>モードに入っており、新しい突っ込みどころもネタ切れという感じがします

……(^^ゞ やはり、そう思いますよね。報道機関の方は、腰が引け気味になったせいか情報も減ってきてますが、「リピート・モード」になっていることは確かです。なので、反論もまた「リピート・モード」に。

「リピート・モード」は心苦しいものがあるのですが、声をあげていないと、忘れ去られて、病腎移植はできなくなったまま……。という事態は避けたいので、書いています。


>今回はちょっと視点をかて、別の話題を私の方から振らせていただきます。

ありがとうございます。エントリーへのコメントに限らず、話題についても遠慮なく、紹介して下さい。


>07年1月11日付けの、日本の医療関係者向け新聞『メディカル
>トリビューン』紙(ネット上での閲覧はできないようです)に「5組の
>歴史的ドミノ腎交換を実施:ホプキンス病院で非血縁者間生体腎移植」
>との記事がありました

おお! これはスゴイ移植ですね!
なるべく移植の機会を増やすことが患者のためになるのにと思っても、日本移植学会はやる気がない……。困ったものです。


>「倫理」とは名ばかりの単なる子供の理屈であるということ。
>さらには、海外で行われている先端医療について、「そんなのは問題外
>だよ、日本のほうがずっと進んでいるんだよ」と言い張って導入しない
>というのが、どうやら日本移植学会の常套手段である

なるほど。
日本移植学会は、何をするにしても「倫理上問題がある」と言いたがるようですね。倫理上ダメで止めてしまったら、医学的な進歩はなかったはずでしょうに。

それに、「日本のほうがずっと進んでいるんだよ」とまで言いたいワケですか、日本移植学会は……。病腎移植問題についても、なぜだか妙に自信過剰な感じを受けるんですよね。技量の高い万波医師でさえ長時間かかるというのに、「摘出した腎臓を本人に戻すのかは短時間で可能だ」とか。根拠の乏しい自信過剰振りに、かえって怪しんでしまいます。


>ネット時代の到来によって私のような門外漢ですらあれこれと情報を
>集められる時代になったから多少はいいようなものの

ネットによる恩恵は大きいです。このエントリーで四国新聞の記事を引用しましたが、ネットがなかったら、記事の存在すら分からないのですから。
ネットがなければ、手にした新聞やテレビ報道で、日本移植学会の意見を丸呑みするだけになってしまいます。

ネットのおかげで、こうして多くの方が情報を共有でき、コメントを交わすことができるのです。


>こうした医学界の政治問題によって潰された先端医療が過去にどれだけ
>あったことか、と思うと、ゾッとしますね

同感です。
もっと昔から、医療情報が広く共有できていたら、救われた命がもっとあっただろうにと思います。
2007/02/16 Fri 23:59:40
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
>rikachan さん
はじめまして、コメントありがとうございます。


>いち読者、もと医療従事者です。

色々な方に読んで頂いているようですね。ありがとうございます。

医療に関わることも、できる限り書籍を調べ、医者・患者の発信する情報も(事前事後に)調べて書いているのですが、もと医療従事者の方からすれば、間違った記述も、あるかと思います。何かあればご指摘、宜しくお願いします。


>官僚や学会の、心ない発言や方針にただただ開いた口がふさがりません。
>血の通わない集まりのようにも感じられます。残念無念です。

仰るとおりです。
万波医師らによる病腎移植の発覚は、臓器売買事件でした。臓器売買をせざるを得ないほど、患者の状況は切迫しているわけです。

厚労省や学会のスタンス(!?)からすると、万波医師らの個人責任の追及をしたくなるのでしょう。しかし、切迫した状況にある患者のことを考えれば、「心ない発言や方針」なんてしていないで、患者のためになることをして欲しいものです。

患者のためになるような良い事をすれば、市民から絶賛されて信頼されるでしょうに、なぜそうしないのか、不思議ですね。
2007/02/17 Sat 01:08:32
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
17日の報道について
春霞さま。コメントをありがとうございます。

さて、今日の毎日新聞夕刊の記事ですが、以下にウェブから転載します。

***

 愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)らによる病気腎移植問題で、B型肝炎ウイルスや梅毒ウイルスの反応が陽性の患者、腎臓が細菌感染などで化のうする腎膿瘍(じんのうよう)の患者の腎臓が移植に使われたことが分かった。いずれも、万波医師が前任の市立宇和島病院で実施。感染症患者からの移植は移植を受ける患者への感染の恐れがあるため、避けるべきだとされており、病院の調査委員会などで検討を進めている。
 関係者によると、B型肝炎ウイルスのケースは00年12月、ネフローゼ症候群で両腎摘出手術を受けた。移植前に検査をしたが万波医師は「B型肝炎ではない」と判断して腎臓を2人に移植。その後の血液検査でB型肝炎ウイルス陽性が判明したという。腎膿瘍患者の腎臓は95年11月に移植したが腎機能が十分でなく、移植された患者はその後人工透析に戻っている。
 万波医師は毎日新聞の取材に「移植前の検査でB型肝炎ウイルスの陽性反応は出なかった。知っていて移植したのではない」と話し、腎膿瘍については「化のうした部分を切除すれば、きれいな腎臓だった。抗生物質を投与すれば問題ないと判断した」と述べている。
 一方、梅毒の抗体が陽性だったのは三原赤十字病院(広島県三原市)で03年、尿管がんの男性患者から摘出した腎臓を移植したケース。抗体反応は治ったと判断されるレベルだったため、当時の主治医は問題ないと判断。摘出手術は万波医師の実弟の廉介医師(61)が執刀し、市立宇和島病院で誠医師が移植した。
 当時の主治医は「梅毒は昔にかかったもので既に治っており、当時できた抗体が残っている状態。腎臓を移植しても梅毒がうつるわけではなく、医学的に問題はないと判断した」と話している。

***

B型肝炎および腎膿瘍については、医療上の判断に係わることでしょうから私からはコメントしません。(前者については、術前検査でひっかからなかった以上は医師側に問題はないでしょう。)

問題は梅毒ウィルス抗体反応陽性のドナーについての報道です。

「感染症患者からの移植は移植を受ける患者への感染の恐れがあるため、避けるべきだ」というのは、もちろん移植時に感染していれば、ということであって、このドナーの方については、当時の主治医が完治を確認している訳ですから、本来なら問題のしようがありません。これを問題としてとりあげて、「病歴をさかのぼって感染症があってはならない」とするならば、インフルエンザにすら罹患したことのないドナーを見つけて来いという理屈になります。

抗体が陽性であることと、梅毒のウィルスが発見されることとは別物ですし(この点、記事を書いた記者は誤解してないでしょうか)、感染症を患ったことがあるならば、完治後に抗体反応が陽性になるのは当たり前で、記事自体のトーンが、全く医学的な素養がないか、あるいは単に貶めるためにわざと無知を装っているのかのどちらかとしか考えられません。

さらにいえば、ドナーについて完治した既往症歴を報道するということは、ドナーの人権を著しく侵害する行為であると言っていいでしょう。スキャンダラスな受けを狙ってこのような人権侵害が行われるというのは、報道の常識を大きく逸脱しています。

また、この報道の論調では、「梅毒は根治しない病気である」と述べているも同然で、このような非科学的な物言いは、梅毒に罹患した人々に対する偏見を助長するだけで、マス・メディアの発言としてはあってはならないことです。

しかしながら、かなしいことにこの毎日新聞の記事は、同時に出た讀売新聞の記事よりははるかにましなのです。後者をウェブで読むと、

***

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波(まんなみ)誠医師(66)らによる病気腎の移植問題で、B型肝炎ウイルスや梅毒の反応が陽性だった患者、感染性の腎膿瘍(のうよう)の患者から摘出された腎臓が、市立宇和島病院(同市)で万波医師により4人に移植されていたことが16日、わかった。

 移植後の患者は免疫抑制剤を使うため感染症に弱く、今回のケースもB型肝炎ウイルスなどに感染した可能性がある。

 関係者によると、血液検査でB型肝炎ウイルスが陽性だったのは、2000年12月に市立宇和島病院でネフローゼ症状を理由に両方の腎臓の摘出を受けた患者(数か月後に死亡)。

 2種類の検査が陽性で、ウイルスが体内にいる状態だった。感染してB型肝炎が慢性化すると、肝硬変や肝がんになる可能性がある。移植を受けた患者2人は生存しているが、感染の有無を調べる検査は行われていなかったという。


***

これでは、前後の経緯、および梅毒の抗体反応についての説明が全く不在で、ことさらに不安を煽るのみの内容となっています。この二つの記事を読み比べただけでも、讀売の記事が一方的な悪意を持って書かれていることがミエミエです。
2007/02/17 Sat 19:57:46
URL | 語学教師 #va74bd7o[ 編集 ]
おはようございます
春霞様 語学教師様 おはようございます。
昨日のニュースは我が家でも議論していました。相変わらず、語学教師様の情報量も凄いですね。
春霞様がエントリーで取り上げになられると思いますが一言。
調査委員会が報告を出そうとしたら、学会報告あり、TBS報道特集あり、マスコミの論調に変化ありなどで、困ってきたのでしょう。
調査委員会が情報ソースと思う根拠は、日本移植学会のガイドライン:
http://www.asas.or.jp/jst/reports/guideline/ethicalguideline.html
に、きちっと則って批判しているところです。Ⅲ(基本原則)の(2)がインフォームドコンセント、(3)が勝手にやるな、(5)が今回の安全性(病気腎移植ダメ)で、「移植により伝播する可能性のある感染症等に係る情報の収集に努めなければならない。」と言うくだりです。
偶然かも知れませんし、ガイドラインは「正しい」ので「正論をもって論説すれば一致する」というのかも知れませんが。
まあ、もう直ぐ調査報告書が出るのでしょう。
今回の報道も、きっちりと根拠をもって反論すれば正当性は主張できると思います。ハチドリの精神、ですね。
ところで、前回の論文の件ですが、支援ネットの林弁護士が、詳しい内容を日本語で要約されていました。
http://www.setouchi-ishoku.info/article.php/20070208160921727
従来の「医学的見地からの」批判に、きちっと回答した形になっています。これが、権威ある「トランスプランテーション」に掲載されるのですから、調査委員会も困るでしょうね(^^ゞ。別の意味で、『interesting !!』 。
2007/02/18 Sun 08:20:19
URL | Canon #yYfDAmAg[ 編集 ]
今回の報道について
春霞様 皆様 はじめまして
いつも興味深く読ませていただいています。

公の報道を元に議論するという春霞さんのブログの趣旨にはそぐわないかも知れませんが、内部情報を知るものとして取り急ぎご報告いたします。
先日の毎日・読売新聞の記事にありましたB型肝炎のドナーからの腎臓移植の件についてです。

この件については、手術前に「肝炎は無い」との内科の診断があり、移植に踏み切ったものです。この診断そのものには、直接万波医師が関与しておらず、当時万波医師を補佐していた愛媛大学の医師3名も肝炎の感染は無かったと証言しています。
後の検査で複数の抗原について検査を行ったところ、そのうちのひとつの弱い抗原について陽性反応が出た事を、あたかも手術前に判明していたかのように報道されていますが、たとえ現在本当に肝炎になっているにせよ、当時は感染していなかったと見るべきです。
これは、万波医師らが何度も報道関係者に説明をしている事なのですが、記者達は上記の医師等に確認を取らずに学会の調査委員の証言だけで報道されたものと思われます。

この一両日の報道は、万波グループ批判の急先鋒である調査委員会の国立KB大学のK教授が、委員会の統一見解を待たずに、世論を誘導しようと意図的に情報をリークしたものと推定されています。
2007/02/18 Sun 13:48:15
URL | インサイダー #sc6rXX4c[ 編集 ]
>語学教師さん:17日の記事のこと
コメントありがとうございます。


>さて、今日の毎日新聞夕刊の記事ですが

情報ありがとうございます。別個にエントリーとして取り上げてみました。


>前者については、術前検査でひっかからなかった以上は医師側に問題は
>ないでしょう

仰るとおりです。
術前検査で検査をした(その結果陰性だった)のであれば、医師としてやるべきことをしたのですから、問題視する必要はありません。まさか、結果責任を負えというつもりはないでしょうし。


>感染症を患ったことがあるならば、完治後に抗体反応が陽性になるのは
>当たり前
>この報道の論調では、「梅毒は根治しない病気である」と述べているも
>同然で、このような非科学的な物言いは、梅毒に罹患した人々に対する
>偏見を助長するだけ

仰るとおりです。
このような記事だと、梅毒だけでなく罹患した人々への偏見が助長されそうです。完治しても病気を患ったら、いつまでも問題視されてしまうのですから。
そうなると、例えば、ハンセン病元患者に対する偏見はずっとなくならないでしょう。差別や偏見というのは、どんなに「許されない」という報道記事があっても、記者にも根強くあるのだと感じさせられます。暗澹たる気持ちにさせられる、危うい記事です。


>かなしいことにこの毎日新聞の記事は、同時に出た讀売新聞の記事より
>ははるかにましなのです

確かにマシです(^^ゞ
マシなので、比較する形でエントリーとして取り上げてみました。


>この二つの記事を読み比べただけでも、讀売の記事が一方的な悪意を
>持って書かれていることがミエミエです

確かに悪意があります。Canonさんが指摘なされていますが、調査委員会が情報ソースなのでしょうから、悪意があるのは、当然かもしれませんね。
2007/02/18 Sun 14:30:23
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
>Canonさん:2007/02/18(日) 08:20:19へのお返事
コメントありがとうございます。


>春霞様がエントリーで取り上げになられると思いますが一言

予想通り!? 取り上げてみました。17日に記事にしても良かったのですが、毎日新聞が、多少疑問視するような後追い記事を出していたので、少し待ってみました。


>調査委員会が情報ソースと思う根拠は、日本移植学会のガイドライン

そうですね。
インサイダーさんも触れていますが、調査委員会のメンバーのリークなのでしょう。


>ハチドリの精神、ですね。

おかしなことはおかしいと言わないと。何も言わなければ、何も変わりませんから。
患者はもちろん、患者になるかもしれない多数の市民の命に関わることなのですから。


>前回の論文の件ですが、支援ネットの林弁護士が、詳しい内容を日本語
>で要約されていました。

情報ありがとうございます。


>これが、権威ある「トランスプランテーション」に掲載されるのですから、
>調査委員会も困るでしょうね(^^ゞ。別の意味で、『interesting !!』 。

確かに、『interesting !!』ですね!(^^ゞ
「トランスプランテーション」への論文掲載によって、調査委員会は海外からは妙な目で見られるのに、万波医師らへの批判を繰り広げる……。すでに、妙な目で見られているのかもしれませんが。
米国など海外で腎移植に携わっている日本人医師は、肩身の狭い思いをしそうです。
2007/02/18 Sun 16:51:12
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
>インサイダーさん
はじめまして、コメントありがとうございます。


>いつも興味深く読ませていただいています。

ありがとうございます。


>公の報道を元に議論するという春霞さんのブログの趣旨にはそぐわない
>かも知れませんが、内部情報を知るものとして取り急ぎご報告いたします。

そうですね、公の報道を元に議論することが多いです。それは、第三者にも検証可能にすることで、なるべく客観性を持たせたいからです。

でも、内部情報は大歓迎です。みんなが詳しい情報を知ることになれば、病腎移植についてより深く理解して判断できるようになります。


>当時万波医師を補佐していた愛媛大学の医師3名も肝炎の感染は無かった
>と証言しています

なるほど。情報ありがとうございます。
日経新聞に出ている記事のうち「当時の複数の同僚医師」というのは、「補佐していた愛媛大学の医師3名」のことなんですね。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070218STXKG042117022007.html

「万波医師は市立宇和島病院時代に、B型肝炎感染者の腎臓を移植に使ったとされる問題にも「病院の内科医が十分に検査し、99%ウイルスがないと報告があったから移植をした。当時の複数の同僚医師もウイルスはなかったと言っている」と反論した。〔共同〕(00:23) 」


>万波医師らが何度も報道関係者に説明をしている事なのですが、記者達は
>上記の医師等に確認を取らずに学会の調査委員の証言だけで報道された
>ものと思われます。

万波医師の言うことは、聞く耳をもたないということなんですね……。補佐していた愛媛大学の医師3名に聞いて確かめることだってできるのに。関係者の意見を聞いて確かめ、報道することは、報道機関として基本事項のはずなのですが。無茶苦茶です。


>この一両日の報道は、万波グループ批判の急先鋒である調査委員会の国立
>KB大学のK教授が、委員会の統一見解を待たずに、世論を誘導しようと
>意図的に情報をリークしたものと推定されています。

情報ありがとうございます。国立KB大学のK教授によるリークですか。よく覚えておきます。
2007/02/18 Sun 16:52:48
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
訂正します
春霞様
コメントありがとうございます。

先ほど私の記事で、「国立KB大学のK教授」としていますが、元KB大学の教授でした。訂正いたします。
この方は現在、さる病院の医院長をしているそうです。
2007/02/18 Sun 22:29:21
URL | インサイダー #sc6rXX4c[ 編集 ]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2007/02/19 Mon 23:26:24
| #[ 編集 ]
>インサイダーさん:2007/02/18(日) 22:29:21 へのお返事
コメントありがとうございます。

>先ほど私の記事で、「国立KB大学のK教授」としていますが、
>元KB大学の教授でした。訂正いたします。

訂正ありがとうございます。
今後とも宜しくお願いします。


<2月20日追記>
K先生ではなく、M先生の表記の方が正しいのではないかとの指摘もあるようです。
2007/02/19 Mon 23:58:34
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ
コメントありがとうございます。

仰るとおり、どうも学会・調査委員会の言動は妙です。
そのまま受け売りで報道するマスコミの方も、どうかと思います。もっとも、学会批判をしたらリークしてくれなくなるから、批判しないのでしょうけど。
2007/02/20 Tue 07:04:10
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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