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その前に、 テレビ報道を見ていると、北九州市長選では「つんく」と「矢口真里」と「飯田圭織」が与党推薦候補を車上で応援していました。タレント動員は、今は「無関係なのになぜ出てくるのか?」と奇異なイメージを与えるだけで、無意味だと思えるのですが……。
1.まずはニュース報道から。
(1) YOMIURI ONLINE((2007年2月5日1時58分 読売新聞))
「愛知県は与党、北九州市は野党勝ち“1勝1敗”
4月の統一地方選の前哨戦となる愛知県知事選と北九州市長選は4日、投開票された。愛知県知事選は、現職の神田真秋氏(55)(無=自民・公明推薦)が、新人で前犬山市長の石田芳弘氏(61)(無=民主・社民・国民新推薦)を小差で破り、3選を果たした。北九州市長選は、新人で前民主党衆院議員の北橋健治氏(53)(無=民主・社民・国民新推薦)が初当選した。与野党が激突した両首長選は1勝1敗となった。選挙結果は、与野党の国会攻防などに影響しそうだ。
愛知県知事選は、32年ぶりに主要政党の相乗りの構図が崩れた。
神田氏は、愛知万博、中部国際空港開港の2大国家プロジェクトの実績を強調し、堅実な人柄も評価され、自民、公明支持層を中心に幅広く支持を集めた。石田氏は、小中学校への「30人学級」導入などの教育政策や県政の変革を唱えた。終盤には、柳沢厚生労働相の失言を批判して追い上げ、接戦に持ち込んだが、及ばなかった。与野党の激突によって有権者の関心は高まり、投票率は52・11%と前回(38・91%)を上回り、28年ぶりに50%を超えた。北九州市長選では、北橋氏が、元国土交通省都市地域整備局長の柴田高博氏(57)(無=自民・公明推薦)ら新人2人を破った。投票率は56・57%で、前回(38・32%)を上回った。
(2007年2月5日1時58分 読売新聞)」
(2) 日テレNEWS24(<2/5 1:52>)
「与野党1勝1敗 今後の政局への影響は…<2/5 1:52>
4日に投開票が行われた愛知県知事選挙と北九州市長選の結果を受けた中央政界への影響について、政治部・赤堀記者が報告。
愛知県知事選挙が予想以上の接戦となったことに、与党内には危機感が強まっている。一方、野党にとっては追い風で、さらに攻勢を強める方針。
自民党の事前調査では、与党が推す神田真秋氏の圧勝ムードが漂っていた。しかし、予想以上の接戦で、柳沢厚労相の失言など安倍政権への批判が地方でも表面化した形となった。
中川幹事長は4日夜、「今回の選挙結果は、補正予算審議をボイコットした野党戦術の失敗を意味します」と強気のコメントを出した。
柳沢厚労相は4日夜、あらためて辞任する考えがないことを強調した。しかし、ある自民党議員は「完全に柳沢ショックだ」と危機感をあらわにしている。また、自民党の参院幹部は「これでは参院選は戦えない。柳沢厚労相は辞めるべきだ」と話している。
一方、野党側は徹底抗戦で補正予算案の審議には応じない方針。民主党内には、来年度予算案の審議には応じ、事務所費の問題などについて追及するほうが得策との声もあり、党首会談を開いて対応を協議する方針。5日以降の国会は与野党の激しい攻防が続くことになる。」
2.選挙結果は、与野党“1勝1敗” という結果になりましたが、投票率がかなり上がりました。
「愛知県知事選は、……投票率は52・11%と前回(38・91%)を上回り、28年ぶりに50%を超えた。北九州市長選では、北橋氏が、元国土交通省都市地域整備局長の柴田高博氏(57)(無=自民・公明推薦)ら新人2人を破った。投票率は56・57%で、前回(38・32%)を上回った。」(2007年2月5日1時58分 読売新聞)
国民主権の下では、国民は主権者として国の政治に参加する権利があり、現代国家では代表民主制が原則とされ、議会中心の政治が行われるのが通例です。そうすると、国民の政治参加のため、最も一般的で重要なものが選挙権、すなわち投票することであり、投票することで自己の政治的意見を国の政治に反映させるのですから、大事なことなのです。
そうすると、選挙結果がどうであれ、投票率が上がったことは高く評価するべきだと考えます。
3.愛知県知事選・北九州市長選ともに、38%程度であったのに、ともに50%を超えるというかなりの投票率の上昇の原因は、柳沢厚労相の「女性は子どもを産む機械」発言にあったと判断できます。地方それぞれに色々な事情があったとしても、前回と比較すると驚異的に投票率が上昇したのは、柳沢厚労相の発言以外にないのですから。
さらに、北九州市長選は、前民主党衆院議員の北橋健治氏(無=民主・社民・国民新推薦)が大差で初当選し(北橋健治氏:217,262、柴田高博氏:177,675、三輪俊和氏:56,873 )、これに対して、愛知県知事選挙は、現職の神田真秋氏(無=自民・公明推薦)が小差で当選するという、予想以上の接戦となりました。
この選挙結果も、柳沢厚労相の「女性は子どもを産む機械」発言の影響が少なくなかったようです。
「厚労相発言「考慮」は39% 愛知知事選、一定の影響
共同通信社が4日に実施した愛知県知事選の出口調査によると、柳沢伯夫厚生労働相が女性を「産む機械」と例えた発言を投票時に「考慮した」と答えた人は39・1%で、「考慮しなかった」と回答した55・8%を下回った。発言は投票行動に一定の影響を与えたものの、決定的な要因とはならなかったようだ。
男女別で見ると、「考慮した」は女性の40・5%で、男性の37・8%を上回った。「考慮しなかった」は女性の53・0%、男性の58・6%で、女性の方がやや敏感に反応したとみられる。
「考慮した」と答えた人の53・8%が民主、社民、国民新推薦の石田芳弘氏に投票。自民、公明推薦の神田真秋氏に投票した人は38・8%にとどまった。「柳沢発言」への批判票は石田氏の得票を押し上げたが、逆転するほどの効果はなかったもようだ。
(共同)
(2007年02月05日 00時02分)」(東京新聞のHP(2007年02月05日)
もっとも、出口調査がなくても、この女性蔑視発言のせいで、北橋氏が大差で当選し、本来は、圧勝のはずだったのに小差まで追い付かれたのだ、と分かるとは思いますが。
中川幹事長は、「今回の選挙結果は、補正予算審議をボイコットした野党戦術の失敗を意味します」という強気のコメントを出したようですが、柳沢厚労相の女性蔑視発言に目を背けた分析であって、現実を冷静に見つめた分析とはいえません。 何よりも28年ぶりに50%を超えたというほど、投票率がかなり上がったのは女性蔑視発言以外に要因がないのですし、愛知県知事選挙は、本来は与党側の分析では圧勝のはずだったのですから。
ですから、
という分析の方が現実を見すえた正しい判断だといえます。きっと、自民党の青木幹雄参院議員会長は、この選挙結果をみて「どんな言い訳もできない発言なのだから、更迭すべきだとあれほど言ったはずだ。参院選を大敗させる気か!」と激怒しているはずと想像しています。ずっと柳沢厚労相の女性蔑視発言は、今夏の参院選への悪影響が避けられないと危惧していたのですから。「ある自民党議員は「完全に柳沢ショックだ」と危機感をあらわにしている。また、自民党の参院幹部は「これでは参院選は戦えない。柳沢厚労相は辞めるべきだ」と話している。」
4.かつて、石原都知事が「(もう子供を産めない)ババアは有害」と発言したり、森喜朗元首相も「子供を産まない女性に年金を払う必要はない」と発言したりするなど、自民党幹部の女性観は
というものです。自民党議員の多くも同じような女性観なのでしょう。「女や子どもがわがままになったから悪いのだ。がまんして「大人の男」の言うことを聞く昔に戻ればすべてうまくいく―。」(東京新聞2月4日付朝刊25面「本音のコラム」より「柳沢発言に思う」 藤本由香里(ふじもと ゆかり) )
未だに多くの日本人男性もその女性観は、自民党幹部と似たようなものです。小池百合子首相補佐官(国家安全保障問題担当)は2月4日の民放のテレビ番組で、「女性は子供を産む機械」だと考えている日本人は、
と答えています(asahi.com「小池首相補佐官、厚労相の「産む機械」発言に不快感」(2007年02月04日18時51分))。「男性にそのたぐいの人はいっぱいいます」
しかし、自民党の青木幹雄参院議員会長は、多くの自民党幹部と異なり、柳沢厚労相の女性蔑視発言について、次のように話しています。
「「考えてもいけないこと」と青木参院会長 厚労相発言で
2007年02月03日19時53分
自民党の青木幹雄参院議員会長は3日、青森市で講演し、柳沢厚生労働相の「女性は子どもを産む機械」発言について、「大きなマイナス要因が重なった」と述べ、今夏の参院選への悪影響が避けられないとの認識を示した。
青木氏は「どんな言い訳もできない。政治家として間違った発言で、頭の中で考えてもいけないことだ」と厳しく批判。「仲間の議員としておわびする。みんなで反省の上に立って政権を担当していく」と謝罪した。」(asahi.com(2007年02月03日19時53分))
当然、参院選対策の面があるとしても、
とまで厳しく批判しているのです。民主党の小沢代表が「どんな言い訳もできない。政治家として間違った発言で、頭の中で考えてもいけないことだ」
と代表質問で述べた内容と同程度に厳しい言い方です。「何と釈明しようとも、政治家である以前に、人間として許されない。」
自民党は、良くも悪くも理想を掲げることがなく、現実を冷静に判断し、現実にあわせて機敏に対応してきたからこそ、長年政権与党として存在してきたのだと思います。青木幹雄参院議員会長の発言は、自民党の“伝統”にそった現実を見据えた発言でした。こういった意見が主流にならない今の自民党は、もはや自民党らしさを失いつつあるようです。
論功行賞にこだわって、二人目の閣僚辞任だと首相の任命責任を問われかねないので、自分を守るために辞任させない安倍首相(東京新聞2月5日付朝刊「筆洗」)。ここまで内向きな自民党総裁も珍しい気がします。
5.どうやら、柳沢厚労相は辞任する気がないようですが、もし辞任しない場合、今後柳沢厚労相の女性蔑視発言は影響するのでしょうか?
その判断として次のエピソードを紹介します。
「よみうり堂から
厚生労働相の問題発言が総スカンをくっている。あんなひどい発言とは次元が違うが、栃木の支局時代に知り合った地方紙記者のことを思いだした。彼が取材を終えて真夜中に帰宅、布団に倒れ込むと、奥さんがうなりだし、「陣痛みたい」。あんまり眠かったので、つい「明日にしろよ」と言ってしまった。それからは夫婦げんかのたびに「冷たい人」とせめられるという……。(鵜)」(読売新聞平成19年2月4日付(日曜日)19面)
妊娠出産はどの女性にとっても大変なことであって、女性によっては、このような発言をした男性と離婚する者もいるはずです。このエピソードにある記者のように、母体に対する配慮に欠けた発言は、いつまでも女性の心に残るものです。「結婚以上に出産問題はデリケート」(斉藤美奈子「AERA07年2月12日号25頁」)なのです(2月5日追記)。
そして、女性だけでなく男性も含めて投票率を上げるほど、柳沢厚労相の発言は、深く心に残ったものだったといえるのです。
そうすると、もし辞任しない場合、今後柳沢厚労相の女性蔑視発言はずっと影響すると考えます。
6.柳沢厚労相の発言は、少子化対策を巡ってなされたものでした。しかし、現実は深刻です。
「妊娠などで退職迫る企業増加
妊娠や出産を理由に女性社員に退職を迫るなどして、労働局から指導を受けた企業が、昨年度100社を超え、5年前の2倍以上に上ったことがわかりました。出産の前後に休暇を取ることが業務の停滞につながると考える企業が増えているためとみられ、厚生労働省は指導を強化することにしています。
厚生労働省によりますと、女性だという理由で不当な扱いを受けたという社員からの申し出があった企業の実態を調べた結果、労働局が指導をした企業は昨年度131社に上りました。このうち妊娠や出産を理由に女性社員に退職を迫ったり自宅待機を命じたりした企業は、全体の90%の119社に達し5年前の2.2倍に増えました。中には妊娠した女性の社員に突然希望しない部署への異動を命じて、退職するように暗に迫る会社もあったということです。妊娠や出産を理由にした解雇は男女雇用機会均等法で禁じられているうえ、ことし4月からは自宅待機や正社員からパートへの変更を強要することも禁止されることになっています。厚生労働省は「業績が回復する中で、女性社員が出産の前後に休暇を取ったり勤務時間を短くする制度を利用したりすると業務の停滞につながると考えて退職などを迫る企業が増えたものとみられる。指導を強化していきたい」としています。」(NHKニュース「妊娠などで退職迫る企業増加」(2月4日 12時4分))
企業は、法律違反であることが分かっているのに、目先の儲けを優先して、妊娠や出産を理由に女性社員に退職を迫ったり自宅待機を命じるのです。こんな企業が5年前の2倍も増えているのですから、子供が増えるはずがありません。出産後復帰が難しいどころか、「出産するなら退職しろ!」なのですから。
柳沢厚労相がどんなに、「人口増に向け各自フル稼働願たし!」(週刊新潮2月8日号29頁)と言い放ったとしても、企業側の方がそれを許さないような対応をしているのです。フランスのように出生率2.0にまで回復することは(「仏出生率が回復して2.0に〜東京新聞1月17日付」、「“愚民”相手に「作られた」問題〜東京新聞平成19年1月3日付「本音のコラム」より」参照))、夢のまた夢ということのようです。
こういった法律違反をしてまでもなされる女性差別は、長年許容する日本社会があるからこそであり、企業側が自主的に改善することはないでしょう。女性差別を改善するには、投票行動で国会に対して女性差別に拒否を示すことが重要だと思います。
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