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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2007/01/16 [Tue] 17:17:12 » E d i t
厚労省が世論調査を「本年度中」に実施することを決定したそうです(共同通信、日経新聞)。この報道についてコメントしたいと思います。


1.日経新聞平成19年1月15日付夕刊16面

 「代理出産 世論調査へ  関心の高まり受け厚労省

 妊娠できない妻の代わりに第三者の女性に出産してもらう「代理出産」などの生殖補助医療について、厚生労働省は15日までに、国民の現時点での賛否や考え方を探るための意識調査を本年度中にも実施することを決めた。

 代理出産については、厚労省の専門部会が2003年に「禁止する」との報告書をまとめ、日本産科婦人科学会も指針で禁止している。しかし「認めるべきだとの世論が増えている」との見方もあり、実際に世論が変化しているかどうかを調べる。

 政府から生殖補助医療の在り方についての検討を要請された日本学術会議は、17日に初会合を開く予定で、調査結果は会議の議論にも影響を与えそうだ。

 調査関連の費用が本年度の補正予算案に盛り込まれた。厚労省は具体的な調査方法や質問項目、調査対象などを早急に検討する。代理出産だけでなく、第三者の精子や卵子を使った体外受精などの技術についても考え方を聞く予定。

 生殖補助医療についての意識調査は1999年と2003年にも厚労省の研究班が実施。03年の調査では、夫婦の精子と卵子を使った代理出産について「認めてよい」が46%、「認められない」は22%。一方「子供に恵まれない場合、この技術を利用するか」については「配偶者が賛成したら」との条件付きを含め「利用したい」が43%だったのに対し、「配偶者が望んでも利用しない」が57%に上った。

 昨秋、米国人女性に代理出産を依頼したタレント向井亜紀さん夫婦の例や、がんで子宮を失った娘に代わり50代後半の母親が「孫」を出産した例などが大きな関心を集め、柳沢伯夫厚労相も「世論を慎重に見極めての検討が必要だ」と述べていた。


代理出産  妻が子宮を摘出するなどして子供を持てない夫婦が、別の女性に子供を産んでもらうこと。夫婦の精子と卵子を体外受精させて女性の子宮に移植する方法や、夫の精子を女性の卵子と人工授精させる方法がある。妊娠、出産にかかわるリスクを第三者に負わせる点や、生まれた子供をめぐり夫婦と女性の間でトラブルが起きる恐れがあることなどから、日本産科婦人科学会は代理出産を禁じている。厚生労働省の専門部会も罰則付きの法律で禁止すべきだとする報告書を2003年にまとめたが、法制化は見送られた。」




2.平成18年1月17日の閣議後会見において、柳沢厚労相は「(代理出産を)支持する世論もみられるようになった」と指摘して、「学会の方針を法律で固定化するのではなく、もう少し違った形の方向を探っていく」と述べ、禁止の方針の見直しを含め、その法整備も視野に検討することを明らかにしていました(読売新聞平成18年10月17日付夕刊:「代理出産(代理母)による法律関係~「代理出産禁止」を見直しを含め再検討へ」参照)。
このように述べていたのですから、どれだけ世論が変わったのか実際に世論調査をしてみようというわけです。

分かりやすい問題ならともかく、多くのブログを読むと代理出産を含む生殖補助医療問題についてまだよく分かっていない人たちが多いように感じます。世論調査をするといっても、ある程度の基礎知識がないと判断できないと思います。そこで、生殖補助医療のうち、特に代理出産を判断するに当たって必要とされる基礎知識を挙げてみることにします。


(1) 代理出産とは?

代理出産とは、妻が子宮を摘出するなど子宮機能が欠損しているため子供を持てない夫婦が、別の女性に子供を産んでもらうことです。依頼する夫婦の精子と卵子を受精させる方法と、夫の精子と第三者の卵子を受精させる方法の2つがあり、前者は依頼夫婦ともに遺伝的につながりのある子を持つことになりますが、後者は夫とだけ遺伝的つながりのある子を持つことになります。いずれにしても、不妊に悩むカップルが相手の子(相手と血のつながりのある子)を持ちたいという希望を叶えるための手段です。

注意すべきことは、代理母となる者は、自由な意思で代理母となるのであって、代理母になることを強制されるわけではありません。もし事実上であれ強制的に行う場合は、強要罪(刑法223条)に該当しますので、強制は許されないからです。現在の米国では、代理母希望者は「依頼夫婦に子供を持つ喜びを与えたい」という意図で、代理母となっています(平井美帆著「あなたの子宮を貸してください 」参照)。



(2) 子供を持つこととはどういうことなのか?

代理出産の是非を判断するについては、「子供を持つということはどういう意味なのか」が根本問題です。このどちらかの考え方が妥当と考えるかによって、結論が分かれてくるのですから。

イ:生殖自体、生物としての人(ヒト)の最も基本的な営みであり、子供を持つことは生殖として人間として本源的な欲求である→個人の自由の問題であるため、原則として代理出産は肯定

ロ:生殖問題は知識のある医師又は国家が患者に温情的に実施すべきものであり(パターナリズム=父権主義)、子供を持つことは国家・社会政策の一環である→国家の統制下・自由裁量下におかれる問題であるため、代理出産は原則として否定(又は全面否定)


イのように生殖は個人の自由であるとすると、その反面、子供を育てるのは基本的に親の責務ということになります。他方で、ロのように、生殖は国家統制によるとすると、子供を育てるのは基本的に国の責務ということになります。

ロの考え方は、「人体の処分は本人の意思があっても許されない」から規制するという考え方でもあります(法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会第1回議事録)。そうなると、レシピエント側は臓器を失い死のリスクさえある生体肝移植・生体腎移植は、絶対許されないことになるはずですが……。はて? もちろん、イの考え方は、個人の自由を重視するので、生体肝移植・生体腎移植を認める現状と合致します。



(3) 生命倫理学及び憲法学からはどう考えるか?

代理出産の是非の結果は、法的親子関係を認めるか否かに結びつくことから、民法学の議論でもあります。ですが、生命・人権に深く関わる立法論なのですから、単なる民法解釈で解決できる領域ではないのです。そこで、生命倫理学及び憲法学上の議論が必要です。

 生命倫理学では、自己決定が基調になるべきだと考えられており、(a)自律尊重原理、(b)無危害原理、(c)仁恵原理、(d)正義原理、という相対的に独立したこの4つの原理を基礎として考えるということで一致している(今井道夫・札幌医科大学医学部教授著「生命倫理学入門〔第2版〕(2005年、産業図書)3・11頁~)。


憲法学では、次のように理解されています。

 「わが国でも、憲法13条を根拠に自己決定権(人格的自律権)を人権の1つとして認める説が有力である。

 自己決定権の具体的な中身は…①「自己の生命、身体の処分にかかわる事柄」、②「家族の形成・維持にかかわる事柄」、③「リプロダクションにかかわる事柄」、④「その他の事柄」に分けて考える説が有力である。

 子どもを持つかどうかを決定する権利は、アメリカの判例・学説上プライバシーの権利の中心的な問題として争われてきた。この権利が「基本的権利」だとされ、それに対する規制は「やむにやまれぬ政府利益」の基準という、きわめて厳しいテストによって司法審査に付されることは、すでに触れたとおりである(*)。わが国でも、リプロダクションにかかわる事項は、個人の人格的生存に不可欠な重要事項であることには変わりないので、基本的には、同様に解してよい問題と思われる。」

 *リプロダクションにおける自己決定が保護され、それが厳格審査による理由は、「それが個人のライフ・スタイルのあり方に決定的な影響を及ぼすからだというだけでなく、より広く、個人にとって自己実現の場であり、かつ、社会の基礎的な構成単位である『家族』の意義が重要視されなければならないからだ…。家族のあり方を個人が自律的に決定する権利を保障することによって、はじめて民主主義の基盤である社会の多元性の確保が可能となるからである。」(芦部信喜「憲法学2」(1994年、有斐閣)391頁~)


憲法学からすると、子を持つかどうかを決定する権利、すなわちリプロダクション(生殖活動)に関する自己決定権は、憲法13条により、憲法上保障されており、代理出産により子を持つ権利を強く規制することは妥当でないことになります。

なお、自己決定権の重視・生殖補助医療は選別につながる優生思想であるとして、すべて否定的に捉える考え(松原洋子・立命館大学教授)もあります。しかし、自己決定権の中心は選択の自由であり、人権行使すべて自己決定の結果といえるものですから、松原教授のような考えは人権自体を否定するものといえます。「カップルの自己決定に一切委ねること、これが現在の先進国の社会が到達した課題への解答である」(米本他著「優生学と人間社会」(2000年、講談社現代新書))と理解されています。



(4) 代理出産の実情

各国の実施状況は次のようなものです。

 「代理母(代理懐胎)が合法的に認められている国は、オーストラリアの一部、カナダ、ブラジル、ベルギー、フィンランド、ハンガリー、イスラエル、オランダ、英国、米国などで、非合法とされている国は、フランス、ドイツ、イタリア、スイスなどである。また、同じ米国内でも州により事情は異なり、アリゾナ、ミシガンなど違法とされている州もある。しかし、アリゾナ州最高裁では1994年に合法と結論されるに至っていて、事態は流動的である。」(盛岡恭彦・畔柳達雄監修『医の倫理-ミニ事典』(平成18年)の「不妊症の治療―代理懐胎」(担当:雨森良彦(あめのもり よしひこ)元日赤医療センター副院長)の項目117頁)


FROM第6回総会報告(平成15年11月29日)によると、代理母の動向については「アメリカ各州の法規制と世界の動き、そこには緩和の兆しが見える」と書かれています。

注意すべきことは、欧州では各国陸続きであるため、代理出産を禁じられているドイツ国民は、ベルギーに行って代理出産を実施してくる(第14回厚生科学審議会生殖補助医療部会 議事録)わけです。もちろん、米国には、日本人だけでなく、ドイツ人、フランス人など各国から集まってくる状態です(平井美帆著「あなたの子宮を貸してください 」参照)。

こういった状態なので、欧米では代理出産を禁じていても、認める国がある以上、どの国でも代理出産を認めているのと同然の状態ということになります。フランスでは代理出産につき刑事罰を設けていますが、全然作動していないとされていますが、欧米の状況を考えるとその意味がよく理解できるかと思います。



(5) 代理出産の禁止理由の検討

代理母を生殖の手段として道具のように扱うものであり、代理母の人格を否定するものである


(批判)
代理母の自由意思で協力することが代理出産実施の前提ですから、自由意思である限りは、代理母は「道具」でない。自由意思なのにどれを「道具」扱いすることは、かえって、代理母の意思(自己決定)や人格を無視するパターナリズムである(金城清子委員の意見「第25回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録参照)


代理出産は安全性に欠ける


(批判)
・医療技術が発展しており、出産経験があり、十分な休養がとれ、医学的なサポート体制が整っていれば、代理出産のリスクは、自然妊娠と同じかそれ以下である(金城清子委員の意見「第25回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録、平井美帆著「あなたの子宮を貸してください 」参照)。
・安全を確保するにしても、出産のリスクは完全には払拭できないが、代理母はそのリスク(危険)は同意している以上、危険が生じることを認識して同意していれば法的責任を負わないとする「危険の引き受け」という法理論の適用が可能である。そのため、法的には問題とならないリスクと評価できる。


子供のアイデンティティーが混乱する、依頼夫婦と代理母との間のトラブルの可能性が生じるおそれがあるなど子供の子の福祉に反する。


(批判)
・養子縁組では親が4人になるため、アイデンティティーが混乱する問題が生じていますが、養親(又は双方の親)が子供に真摯に接することで解消している以上、代理出産でも同じ対応で解消できる
・死後生殖から生じた子について父子関係が争われた事例について、最高裁は父子関係を否定したが、これは父と認めて欲しいという子のアイデンティティーを否定したものである。この結果は、子供のアイデンティティーが絶対的なものではないことを示している。
・トラブルの可能性は、2000年中に米国で実施された代理出産は2万件であったが、依頼者が子供を引き取らないとか、代理母が子供の引渡しを拒絶したケースは8件にすぎず、発生率は0.04%にすぎず、トラブルはごく稀なケースである。


*明らかに妥当でない禁止理由
親子関係を築くには、母親がお腹の中に10ヶ月間子供を宿している期間が必要である(安藤広子(岩手県立大学看護学部助教授)委員・才村眞理(帝塚山大学人文科学部助教授)委員・石井美智子(東京都立大学法学部教授)の意見「第25回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録)


(批判)
父親は子を宿す可能性がないが当然に親子関係を築くことを予定しており、養子縁組は第三者の子供を育てることを前提とした法制度であるから、法的父子関係や養子縁組制度を真っ向から否定する考えである(平山史朗(広島HARTクリニック不妊症カウンセラー)委員の意見「第25回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録参照)



(6) 近時の世論調査の結果

最近の調査としては、浜松医大の学生という将来の専門家に対する調査と、朝日新聞の調査があります。

 

「04年4月~昨年9月に、浜松医大医学部5年の男女174人を対象に調査した結果、代理出産については、70%の学生が「社会的に賛成できる」と答えた。」(毎日新聞平成18年11月27日付夕刊2面)(「代理出産、医大生の7割が賛成~毎日新聞11月27日付より」参照


将来の医師の立場としては、多くの人たちが代理出産を実施することに賛成し、さほどの違和感がないということです。代理出産につき医の倫理(生命倫理・医療倫理)に反しているという理解をしていないとも理解できます。

 「「代理出産は認められるべきだと思いますか?」

 この問いかけにbeモニターの皆さんの意見もほぼ真っ二つに割れました。1387人が反対したのに対して、賛成も1309人いました。 」(朝日新聞be(平成17年11月11日

朝日新聞の調査では、認めるのが49%、認めるべきではないというのが51%となっています。相半ばする国民意識があるとすれば、全面禁止は半数の意見を否定することになりますので、困難だといえそうです。



(7) 医療現場の実情

「代理母(※注1)を介した方法については、制度が整備されている米カリフォルニアを日本や韓国から不妊治療のために訪れるカップルの数は増え続けている。しかし、分娩した女性を母親とみなす「分娩母ルール」が原則の日本において最近、顕著になってきているケースは、カップルが海外に渡航し(首都圏で見れば、渡航先のほとんどがアメリカ合衆国、たいていコーディネーターも同じだ)、代理出産を選択せずに、卵子提供を受け、妊娠が成立した時点で、帰国するケースである。本人が日本国内で分娩するのであるから、民法上の親子関係(嫡出児の推定)がクリアされる、というわけだ。

 しかし、このような症例で問題となるのは、母体の年齢と加齢に伴う合併症なのである。生殖年齢をはるかに超える妊婦も決して珍しくない。「今そこにある危機」とは、こうした海外での卵子提供における妊娠・出産に絡む諸問題が近年、増えつつあることである。そして、その影響は、日本の産科医療現場に深刻な問題を投げかけているのである。」(~特別レポート~わが国の産科医療が直面する「今そこにある危機」-海外での卵子提供による不妊治療-:澤 倫太郎 日本医科大学生殖発達病態学・遺伝診療科 講師)


要するに、合併症の危険といった母子の生命の保護や医療訴訟のおそれの観点から見ると、法律上(条文はないが判例・行政対応)は出産で母子関係を決定するため、法律上は問題視されていない卵子提供の方がリスクが大きく、代理母を限定する代理出産の方がはるかにリスクが少なく安全であるというわけです。代理母の母体よりも卵子提供を受ける母体の方が生命の危機にあるのであって、今の医療現場では「分娩のリスクを考えれば代理母のほうがずっとまし」という現実があるのです。




3.何か他にも色々とあるとは思いますが、代理出産の是非を判断するに当たって必要とされる基礎知識といえるものを挙げてみました。これらは、「Because It's There「代理出産」問題」のエントリー及びコメント欄からまとめたものです。詳しくはこちらをご覧下さい。このエントリーには、コメント欄にコメントされた方々の助けられています。感謝します。


念のため、追記します。

代理出産を含む医療問題すべてを個々人の道徳観や倫理観から考えようとする新聞社もあります(「「異端」の2医師の「独自の道徳観」は許されないのか?~毎日新聞11月20日付の記事批判参照)。もちろん、個々人が道徳観や倫理観を持つこと自体認めるべきことです。

しかし、ここでは、立法論を議論しているのですから、単に個々人の道徳観や倫理観を根拠とすると、道徳観や倫理観を法的に強制することになってしまいます。道徳観や倫理観を法的に強制することは、思想良心の自由を保障する憲法19条に違反するものとして許されないはずです。法規制の有無の判断に当たっては、道徳観や倫理観と離れた論議、現状を踏まえた現実的な論議が必要なのです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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