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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2006/12/28 [Thu] 18:16:16 » E d i t
政府は平成18年11月30日、代理出産など生殖補助医療の在り方について、日本学術会議(会長・金沢一郎国立精神・神経センター総長)に審議を要請し、日本学術会議は、日本学術会議の運営に関する内規11条1項の規定に基づき、「生殖補助医療の在り方検討委員会」を設置しました(日本学術会議:生殖補助医療の在り方検討委員会)。設置期間は、平成18年12月21日から平成20年1月31日までです。ほぼ1年間です。


1.まず、生殖補助医療の在り方検討委員会の「設置の必要性及び審議事項」について、触れておきます(設置提案書(PDF))。

 「(1) 委員会設置の必要性・期待される効果等

 生殖補助医療の在り方、生殖補助医療により出生した子の法律上の取扱いについては、以前より多くの議論が提起されてきた。本年に入り、代理懐胎が大きな話題となり、その明確な方向付けを行うべきという国民の声が高まっていると指摘されている。

 こうした状況の中、法務省及び厚生労働省から、代理懐胎を中心に生殖補助医療をめぐる諸問題について審議を依頼されており、これに答える必要がある。


(2) 審議事項

 代理懐胎が生殖補助医療として容認されるべきか否かなど、代理懐胎を中心に生殖補助医療をめぐる諸問題について、従来の議論を整理し、今後のあり方等について調査審議を行う。」



2.「生殖補助医療の在り方検討委員会」の構成員も掲示されています(構成員(PDF))。
(1) 

 「職務:代理懐胎を中心に生殖補助医療をめぐる諸問題について、従来の議論を整理し、今後のあり方等について調査審議する。

設置期限:平成18 年12 月21 日~平成20 年1 月31 日

氏 名 所 属 ・ 職 名 備 考

五十嵐 隆 東京大学大学院医学系研究科教授 第二部会員
加藤 尚武 鳥取環境大学客員教授 連携会員
鴨下 重彦 東京大学名誉教授 連携会員
久具 宏司 東京大学大学院医学系研究科講師 特任連携会員(予定)*
佐藤 やよひ 関西大学法学部教授 連携会員
水田 代 九州大学病院病院長・教授 第二部会員
辻村 みよ子 東北大学大学院法学研究科教授 第一部会員
西 希代子 上智大学法学部講師 特任連携会員(予定)*
町野 朔 上智大学法学研究科教授 第一部会員
水野 紀子 東北大学大学院法学研究科教授 連携会員
室伏 きみ子 お茶の水女子大学理学部教授 連携会員
吉村 泰典 慶應義塾大学医学部産婦人科教授 連携会員
米本 昌平 ㈱科学技術文明研究所長 連携会員」



(2) 一人一人検討を加えてみます。

●五十嵐 隆 東京大学大学院医学系研究科教授


「Yahoo!ヘルスケア - 家庭の医学:五十嵐隆 - プロフィール」より引用。

「名前: 五十嵐隆 (いがらし たかし)
肩書き: 東京大学大学院医学系研究科生殖・発達・加齢医学専攻小児科学教授/東京大学医学部附属病院
出生年: 1953年
卒業校名: 東京大学(1978年卒)
専門: 小児科学
得意分野: 小児腎臓病
症例数: 2005年症例数:120例 累積症例数:580例
外来日: 毎週木曜(午前・午後)。予約は必要。原則として紹介状が必要(ない場合もOK。ただし加算あり)。
メモ: 患者さんと親御さんにやさしく、ていねいに、説明はわかりやすくを心がけています。趣味は散歩、読書、B級グルメ。
長所: 親切、ていねい。
短所: 気が短いほう。」


医師という立場にあるのですから、代理出産問題を含め生殖補助医療について医学的な議論が可能です。ただ、小児科が専門ですし、著書も小児疾患といった分野に限定されていますので(「小児腎疾患の臨床」など。論文はもっと専門的。)、生殖補助医療、特に産科婦人科の分野に関わる代理出産についてどれほど十分に議論できるかどうか不安があります。代理出産の是非の医学的検討は、基本的には依頼者や代理母という成人の身体・精神に関わることであって、小児疾患は関係が薄いのですから。

プロフィールを読むと、気が短いそうです。日本国民の一大関心事ですし、不妊患者が真剣に注目しているのですから、激高することなく、落ち着いて議論して欲しいものです。



●加藤 尚武 鳥取環境大学客員教授


「加藤尚武-Wikipedia」を読むと、加藤氏は哲学者ですし、生殖自体は、1980年代にバイオエシックス(生命倫理学)を日本に輸入した立役者そうです。代理出産の是非については、法律や医学的観点だけでなく、倫理的な観点からの検証が必要ですが、単なる倫理観では漠然としてしまうので、哲学の観点からの検証は必要です。

「文藝春秋編 日本の論点PLUS」の「論点 代理母は許されるか 2004年版」をみると、「代理母禁止が「隠れ出産」を招く恐れあり」と判断しているようですから、代理出産肯定派の論者のようです。



●鴨下 重彦 東京大学名誉教授



「日本学術会議生命科学の全体像と生命倫理特別委員会 報告」(PDF)を読むと、生命倫理特別委員会の委員長代理に就任していたようですから、生命倫理の観点から議論を行うと思います。

この「報告書」を一部引用しておきます。

「( 7 ) 体外受精

 人工授精は受精を目的として精子を人工的に子宮腔内に注入することである。注入する精子が夫のものである場合と夫の無精子症などのために夫以外の第三者のものである場合があり、それぞれ「配偶者間人工授精(AIH=Artificialinsemination with husband's semen)」と「非配偶者間人工授精(AID=Artificial insemination with donor's semen)」と呼ばれている。疾患によっては、精子を濃縮や選別したり、卵管内に直接入れるなどの方法も取られる。AID は外来で可能な不妊治療法として適応患者に古くより広く行われている。米国では1980 年代前半で既に30 数万人を超えていると言われる。日本では1948 年に慶応大学病院で初めて行われて以来、人工授精児は現時点で既に1万人を超えると言われている。

 一方、体外受精(IVF-ET=In vitro fertilization and embryo transfer)は精子と卵の両方を採取し、体外で受精させ、その受精卵(胚)を子宮腔内に移植することである。1978 年に英国医師R.エドワード(R.Edwards)とP.ステップトゥ(P.Steptoe)によって行われた最初の例がメディアで‘試験管ベービー第1号の誕生’とセンセーショナルに取り上げられて以来、この体外受精―胚移植技術は不妊に悩む夫婦のために次第に広く行われるようになっている。我が国では、1983 年に東北大学でその最初の試みがなされ子供が誕生している。最近では、卵の採取の際の排卵誘発剤(78 )服用や卵の体外操作などによる母体や胚への障害の可能性や多胎妊娠発生率の上昇はあるものの、排卵誘発剤により得た卵子を、体外の試験管内で精子と受精させ、その2-5 日後に胚が分割した頃に、3 個以内の胚を経膣超音波下で子宮に戻して(胚移植)、あとは通常の妊娠過程に委ねるという方法が主に用いられるようになっている。

 しかし、本法による周期当たりの出生率が約15.6%と低率にとどまっている上、多胎妊娠(79 )発生は完全には避けられず、また、十分な数の卵を確保するために多量の排卵誘発剤を用いることから、慎重な運用が必要である。このために、日本産科婦人科学会では1983 年に会告を出して、安易な施行の防止を呼びかけている。しかし、不妊治療受診者には朗報であり、体外受精―胚移植が年間59,100 件行われているのが現状である(日本産科婦人科学会、1999年度)。ただ、これらの不妊治療は全国に約285,000 人もいると推計される中には、夫婦間の治療には限界があり、生殖行為において配偶者以外の第三者が関わってくる可能性が出てきている。我が国でも精子についてはともかく、1998 年に妻の実妹の卵を使い、妻が出産した例も初めて報告されている。このような場合、生まれてくる子供には出自を知る権利という基本的人権が保障されなくてはならない一方で、実際にその子供が出自を知った場合に不自然な親子関係がその子供に心理的動揺を与えたり、それが契機で社会的な問題までに至ることがありえるという、対立する問題が存在する。とくに、卵や精子の提供者が近親者である場合はそれが契機で家族関係が混乱してしまうことが容易に想像されるところである。第三者の精子を用いることは非配偶者間人工授精18(AID)で既に広く行われており、生まれてくる子供が親を知る権利に関する問題は現実に浮上しているのはよく知られていることである。過去に認められたことが現在も正しいとは言えないことは誰もが知っていることである。この問題については下り坂現象に陥らないようにすべての人が真剣に考え続ける必要があろう。

 子宮に関しては、配偶者である女性の子宮や卵巣に障害があり妊娠不可能な場合には第三者の子宮を借りること(代理母)により発生する問題がある(人工授精では卵子も代理母のものを用いるので遺伝上の母でもある。そのために、体外受精の場合の代理母と区別して、サロゲートマザー-人工授精型代理母-と呼ばれている)。この場合、代理母となる第3 者の女性に妊娠、出産という負荷が及ぶことになり、出生児との離別の精神的負担は余りにも大きい。とくに、親子関係の乱れ、人間関係の錯綜と混乱、出生児のアイデンティティの阻害、夫婦関係の乱れ、などの複雑な問題を巻き起こすことになる。我が国でも、姉妹の子宮を借りた例が2001 年に発表され物議を醸している。

 これらの技術を安易に許せば、優秀な子供を残したいがためにこれら第三者の精子や卵を用いる生殖補助技術を利用しょうとする人たちや、精子や卵子、受精卵を売買する人たちが現れることも危惧されている。それだけではなく、高齢女性の体外受精、代理母出産、着床前診断による胚選別など、とても考えられなかったことも行われ始めていると言われる。ちなみに、米国では代理母によって70 年代と80 年代に4,000 人が誕生したとされているが、その米国では誰が親かが法廷で争われたベビ- M 事件(1988 年)(80)が起こっている。これを契機に米国では代理母の賛否をめぐって激しい論争が沸き起こっただけでなく、それが国際的にも波紋を起こし代理母を禁止する法律が制定された国も少なくない。

 我が国では学術団体である日本産科婦人科学会は、生殖医療技術が安易に利用されることがないように、早くから度々、見解、会告、指針を出してきた。すなわち、比重遠心法による男女の産み分けに関する見解(1986 年)、AID 人工授精の承認(1996 年)、AID 体外受精禁止の指針、多胎妊娠に関する見解(1996 年)、代理母の禁止(1998 年)、体外受精実施施設の認定(1999 年)である。現在、学会としては、第三者による受精卵の提供については親子関係が複雑になるとして禁止の姿勢は崩していないが、第三者の卵子の提供は厚労省の見解に合わせるように調整している。また、男女の産み分けに関しては、日本医師会生命倫理懇談会では、それを医学的適応があるものに制限されるべきという見解を出している(1986 年)。」


これを読むと、特に目新しいことを書いているわけではないので、このままでは、代理出産禁止の立場を主張することになりそうです。



●久具 宏司 東京大学大学院医学系研究科講師


経歴を探すと、「外来の不妊相談 最新不妊治療ビデオシリーズ」 で、「5.不妊と子宮内膜症」の原案・指導を行っています。不妊治療を理解している立場で議論を行うことになりそうです。



●佐藤 やよひ 関西大学法学部教授


国際私法の教授です。「外国で「代理母」を利用して出生した 子をめぐる母子関係の決定について」(PDF)という論文もあるくらいなので、代理出産についておおよその理解はできているはずです。

国際私法の学者が構成員に入った理由はただ1つです。外国で代理出産を行った日本人夫婦についての裁判例が2つあることから、その裁判例を詳しく説明し、今後の最高裁の結論の行方を説明するためです。

ただし、上で引用した論文を見ると、設問が米国での代理出産の事例にしていますが、米国で代理出産を行う場合は、裁判所の関与がある以上、殆どの場合において外国判決の承認の問題となるはずです。しかし、この論文では、外国判決の承認の問題に全く気付くことなく論じているのです。こういう状態では、代理出産が問題となった裁判例について、どれほど十分な説明ができのだろうかと疑問視しています。

代理出産を認めている国については、日本医師会が発行している「盛岡恭彦・畔柳達雄監修『医の倫理-ミニ事典』(平成18年)の「不妊症の治療―代理懐胎」(担当:雨森良彦(あめのもり よしひこ)元日赤医療センター副院長)の項目117頁によると、

 「代理母(代理懐胎)が合法的に認められている国は、オーストラリアの一部、カナダ、ブラジル、ベルギー、フィンランド、ハンガリー、イスラエル、オランダ、英国、米国などで、非合法とされている国は、フランス、ドイツ、イタリア、スイスなどである。また、同じ米国内でも州により事情は異なり、アリゾナ、ミシガンなど違法とされている州もある。しかし、アリゾナ州最高裁では1994年に合法と結論されるに至っていて、事態は流動的である。」


とされています。
この書籍は、日本医師会雑誌第134巻第12号・平成18年3月号付録として刊行されたものをそのまま単行本化したものですから、この内容は多くの医師が知っている事実なわけです。ところが、国際私法の論文では、代理母を認める国はこれほどは出ていません。このように、代理母に関する世界の法制度の状況については、国際私法の学者よりも、医師たちの方が知っているのです。こういう状況では、国際私法学者の頑張りに期待したいところです。



●水田 代 九州大学病院病院長・教授



「九州大学病院 小児外科 生殖発達医学講座 小児外科学分野」で論文が出ていますが、ほとんどが小児外科ばかりです。医学的観点からの議論はできるでしょうが、五十嵐隆氏と同様に、代理出産の是非については、どれほど十分な議論が出来るかは不安が残ります。



●辻村 みよ子 東北大学大学院法学研究科教授


この構成員の中で唯一の憲法学者であり、ジェンダー法学について関心の高い学者でもあります(2003年学術大会/統一テーマ報告要旨参照)。
今まで、代理出産問題が、生殖に関する自己決定権(憲法13条)や選択の自由に関わる問題なのですから、憲法の専門家として十分に説明するが求められているということだと思います。そうなると、自己決定権に関する日本の憲法学の立場は、自己決定権を重視するのが多数説ですから、代理出産肯定という流れになるはずです。


ジェンダーやフェミニズムの観点から論じる場合、学者により結論は一致していません。ジェンダー学者である江原由美子氏(東京都立大学人文学部教授)は「代理母は、女性を出産の道具として扱う技術」であるとして認められないと説くものもいるのです(最先端技術に翻弄されないための12のヒント 第4回<代理母>)。

しかし、「フェミニズムや法(法哲学)は、本来、マイノリティが自由を獲得し、不当に権利侵害されている状況に疑義を呈するための有力な根拠を提示する」(2003年学術大会/統一テーマ報告要旨のうち「性と生殖に介入する医療における『正義』―フェミニズムと法は、誰の権利を守るのか―」齋藤有紀子(北里大学)」)のですから、ジェンダーやフェミニズムの観点からは、いまだ少数者である不妊患者・代理出産希望者を尊重するのが本筋であると考えます。

辻村氏がこういった、自己決定権の尊重、ジェンダーやフェミニズムの本筋からの意見を言えるかどうかがこの会議の行方を左右するものと感じています。



●西 希代子 上智大学法学部講師


上智大学の教員の主な研究テーマには次のようなことが書かれています。

 「少子高齢化社会における民法

●講師 西 希代子
扶養・介護と相続をめぐる問題が凝縮された形であらわれる遺留分制度が現在の主たる研究対象である。人工生殖子の法的地位等を念頭に置き、民法上の各種親子関係の成立要件・効果を組み直して親子制度全体の再構築を目指す研究も続けている。」


生殖補助医療に関して関心が高い、民法学者です。もし、本当に、 「人工生殖子の法的地位等を念頭に置き、民法上の各種親子関係の成立要件・効果を組み直して親子制度全体の再構築を目指す」のであれば、夫婦間の自然出産のみを念頭においた現行法維持には無理があるということですから、現状維持的な「代理出産否定論」ではなく、意識が代理出産肯定という意識であると思われます。



●町野 朔 上智大学法学研究科教授


厚生科学審議会生殖補助医療部会委員でしたから、その代弁者として存在すると思われます。町野氏は、医事法関係についての審議会の委員となっていることから、罰則の妥当性などの意見を述べることになるのでしょう。

もっとも、刑法学者としては異端の存在であり、異端としてある程度の存在感があるのですが、かなり無理のある解釈論・判例評釈を行うため、あまり高く評価されている学者とは言いがたいと思います。代弁者ですから、代理出産の是非についてきちんと議論できるかどうか、あまり期待していません



●水野 紀子 東北大学大学院法学研究科教授


水野氏は、家族法の第一人者です。代理出産については「代理母の契約は、日本では公序良俗違反で法的には無効なものと評価されるだろう」(「不妊症治療に関連した親子関係の法律」)としているので、代理出産否定派といえます。

代理出産の是非にあたり否定派でもいいのですが、問題は自己決定権に対する理解です。

 「自己決定という概念を絶対視することには限界がある。人間は自分を取り巻く社会に考えさせられるように考えるのだから、厳密な意味での自己決定とははなはだ危ういものであり、自己決定をどこまでも追い求めていくことは、ときとしてタマネギの皮むきのような虚しい努力になりはしまいか。また、自由の伝統をもつアメリカ社会と異なり、女性の地位が低く共同体の抑圧も大きい日本社会においては、自由と自己決定の尊重は、もちろん今後とも強調されるべき価値ではあるが、その反面、自己決定が万能の口実となることの危険性も大きいように思われる*5。たとえば経済的にも肉体的にも負担の大きい不妊治療を受け続け、ドナーとの生殖医療によっても子を持つことを求める日本人女性の自己決定は、はたして産まない自由を真に保障された上での自己決定だろうか。」(「人工生殖における民法と子どもの権利」


このように、自己決定権に対して否定的ともいうべき持論を持っているのです。日本は自己決定権を行使できるほど成熟した社会でもないし、女性の地位は低くく周囲に意思決定を左右されやすいので、自己決定権を抑制した方が女性の利益になるというわけです。

しかし、未成熟とはいえ、代理出産依頼夫婦と代理母希望者の3者が、代理出産を希望しているのですから、そういった「希望」(権利)をなぜ最初から全面否定してしまうのが疑問なのです。権利は最初から十分に保障されているのではなく、少数者が苦労して主張して初めて獲得されるものだからです。憲法97条は、

「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」


と規定しています。基本的人権でさえ、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果によって保障されるに至ったのです。未成熟な社会だからとか、日本女性は自由を十分に行使できないからなどといって否定していたら、基本的人権は認められることはなかったのですし、新しい人権なんて全く認められなくなるという不当な結論になるのです。民法学者だから仕方がないとはいえ、水野氏は、権利とは何かという法学知識や憲法知識が乏しいのではないか、との疑問を感じます。水野氏に対して、辻村氏が「権利とは何かという法学知識や憲法知識」を十分に説明することを期待します。



●室伏 きみ子 お茶の水女子大学理学部教授


「お茶の水学会事業会」では、

 「室伏 きみ子 むろふし きみこ
お茶の水女子大学教授 理学部長
細胞増殖・分化のメカニズムなど、生命の基本的なしくみから最先端の生命科学の話題まで、わかりやすくお話します。 →詳細

◇専門分野 細胞生物学、生化学
◇講演テーマ
生命科学の未来
細胞のメカニズムの不思議
ライフワールド・ウォッチセンターの目指すもの」

と記載してありました。
生命倫理の問題について色々と発言をなさっているようです。ただ、代理出産の是非についての発言を探してみましたが、見つからなかったので、どのように考えているか分かりませんでした。もし、発言していないとすると、決まった結論に従うだけの存在かもしれません。



●吉村 泰典 慶應義塾大学医学部産婦人科教授


厚生科学審議会生殖補助医療部会委員でしたから、その代弁者として存在すると思われます。産婦人科の専門としての知識は生かすことになるとは思いますが、代弁者ですから、代理出産の是非についての議論につき、あまり期待できません



●米本 昌平 ㈱科学技術文明研究所長


米本氏は、生殖補助医療に関して論説を発表しており、毎日新聞と産経新聞でよく論説を見かけます。
「【正論】米本昌平 代理母は例外ケース以外禁止に」では、次のように書いています。

 「先回りして私の考えを言えば、代理母に関係する金銭授受や無秩序な拡大を防ぐために原則禁止とし、たとえば家庭裁判所の審判を経た例外的なケースだけを認める程度にとどめるべきだと思う。」


原則禁止という考えのようです。しかし、代理出産に関してもっとも盛んに行われている英米では、代理出産に関して裁判所が関与する手続を採用しています。また、日本では普通養子縁組は裁判所が関与しませんが、比較法的に見れば、子の福祉や人身売買を防止するため、養子縁組では裁判所が関与するのが普通なのです。

そうすると、「家庭裁判所の審判を経た例外的なケースだけを認める程度にとどめるべき」という法制度を採用するのが、普通の代理出産制度といえるのです。とすれば、米本氏は、例外的に家裁の審判を経る場合だけ認めるとするのですが、比較法的にみれば、米本氏の考えは原則代理出産否定派ではなく、代理出産原則肯定派に属すると考えられます。




3.こうして構成員について検討すると、生命倫理に関して真っ当な議論が出来そうです。また、代理出産肯定派の立場もいるようですが、厚労省の代弁者が2人いて、頑強な否定論者(水野氏)がいることから、否定派の方が多いようです。このような人選だと、予測しがたい面がありますが、自己決定権につき正しい理解ができ、不妊治療・代理出産の現状につき共通理解が深まれば、代理出産肯定という結論になると予測しています。

強調したいことは、1つです。どんな結論であろうとも、「権利とは何かという法学知識や憲法知識」を十分に理解した上で、憲法学上恥ずかしくない論理と結論を出して欲しいと思います。辻村氏と加藤氏の力量に期待しています。



<12月29日追記>

加藤氏も厚生科学審議会生殖補助医療部会委員でしたから(コメント欄参照)、代理出産肯定の理論的根拠を説明してくれそうな人物は辻村氏一人のようです……。一人でどれだけ頑張れるか、なかなか難しそうです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
ありがとうございます
早速お纏め頂き有難うございます。
私は明確な肯定派が少ないことに一抹の不安を感じています。

厚労省のかつての科学審議会のメンバーは、加藤氏、町野氏、吉村氏の3名です。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/0107/s0716-2.html
しかし、議事録を見る限り皆さん明確な肯定論を展開されていた訳ではありません。
(例:http://www.mhlw.go.jp/shingi/kousei.html#k-seisyokuの第27回議事録)
唯一加藤氏は、
「私は代理懐胎について、この文案だと、永久にこれはいかなる場合にもいけないとい
う結論になってしまって、それはこの委員会の判断としてやりすぎではないか。」
と2003年報告書のやりすぎを指摘されましたが、結果として
「将来、代理懐胎について再度検討するべきだとする意見もあった」
という文言が入れられただけでした。
また、町野氏は刑法学の立場から
「処罰すべきではないという考え方」
を唱えられ、代理出産の罰則化に一貫して反対されましたが、自己決定権を肯定されていたわけではありません。
吉村氏は日産婦の代表の立場で一貫しています。

また、米本氏は2001年より日産婦の倫理審議会の委員長を勤めていて、倫理面から代理出産に反対する立場です。
http://www.arsvi.com/0w/ynmtsuhi.htm
今回、彼が表に出てきたことに大きな不安を感じましたが、春霞様が仰るように、
「比較法的にみれば、米本氏の考えは原則代理出産否定派ではなく、代理出産原則肯定派に属する」
ことを願って止みません。
少なくとも水野氏とともに反対論を強硬に推し進めるような展開はあって欲しくないと思います。

今年も残り少なくなりましたが、良いお年をお迎え下さい。
2006/12/29 Fri 04:56:12
URL | Canon #yYfDAmAg[ 編集 ]
>Canonさん
コメントありがとうございます。

>厚労省のかつての科学審議会のメンバーは、加藤氏、町野氏、吉村氏
>の3名です

加藤氏がメンバーの一人だったことを失念していました。ありがとうございます。<追記>で追加し、幾つか訂正しました。加藤氏が最後には腰を引いてしまう人なら、代理出産肯定派であっても、いないのと同じです。


>私は明確な肯定派が少ないことに一抹の不安を感じています

確かに、明確な肯定派は少ない(いない!?)ですね。民法学者で明確な肯定派は、小野 幸二・前大東文化大学法学部教授ですが、こういった方が構成員でないのに対して、頑強な否定派(水野氏)がいるのですから、バランスが悪く、問題があります。


>また、町野氏は刑法学の立場から
>代理出産の罰則化に一貫して反対されましたが、
>自己決定権を肯定されていたわけではありません。

↓は「妊娠・出産をめぐる自己決定権を支える会」のHPです。
http://www.japanfrom.org/

代理出産の是非については、自己決定権の理解こそもっとも大事ですが、町村氏も自己決定権を主張していなかったんですね。刑法学者も憲法の知識がある人物なんてほとんどいないから、やむを得ないですが。

今回やっと自己決定権について十分な理解ができている(はず)の人物(辻村氏)が構成員となったので、これで少しは真っ当な議論ができるかもしれません。


>少なくとも水野氏とともに反対論を強硬に推し進めるような展開は
>あって欲しくないと思います

そうですね。
反対論を強硬に推し進めるようだと、みんな海外で行うだけです。現実をきちんと見つめて議論をして欲しいですね。
2006/12/30 Sat 22:42:08
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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女性は40代後半から50歳頃に、避けては通れない閉経を迎えますね。そして、閉経に伴い更年期障害の症状が出てくる人もいますね。そんな閉経を終えた、もう10数年経った後に...
2007/01/02(火) 07:32:58 | 救急最前線!!
??ξ??Ĥ?ξ?
2009/11/05(木) 14:11:24 | ???
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