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2006/12/08 [Fri] 23:31:34 » E d i t
腎移植については、最近は病気移植問題が取り上げられているところですが、なぜ万波医師が病気腎移植を行ったかというと、死体腎移植が増えず、生体腎移植(生体移植)にも問題点があるためです。そこで、病気腎移植問題について理解するためには、生体臓器移植の問題点について理解しておく必要があります。生体臓器移植の問題点について触れた東京新聞12月7日付「こちら特報部」の記事を紹介したいと思います。(表題は、東京新聞の1面から引用しました)


1.「東京新聞平成18年12月7日付24・25面「こちら特報部」」

SOS臓器移植 ルールと課題提言

 宇和島徳洲会病院の臓器売買事件が新たに波紋を広げている。5日の初公判で、患者と仲介役の両被告が「(執刀医の万波誠医師に)臓器提供者(ドナー)が他人であることや対価についても話した」と証言、全面否定の万波医師と真っ向から対立しているためだ。求められる生体移植のルールづくりと課題は何か。自ら透析患者で精神科医の春木繁一・青葉クリニック院長(松江市)らに聞いた。 (片山夏子)

 「移植したいと思う患者は必死だ。なかには、ドナーが夫婦や兄弟だとなりすますケースもある」。春木院長は三十四年間、東京女子医大で移植希望者や家族などのカウンセリングをしてきた経験をもとに、臓器提供者の見極めの難しさを指摘する。

 移植を希望する夫婦の相談中に「移植のための夫婦関係」という情報が寄せられ、偽装夫婦を見破ったケースや、暴力団関係者が急きょ養子縁組をして、「親子だ」と移植を希望してきたこともあった。

 「カウンセリングで偽装関係を見抜くには、病歴や家族構成や親せき関係、小さい時の愛称など、とにかく細かいことも語らせることが重要だ」という。

 臓器売買事件が起きた背景の一つには、日本では臓器売買は行われないという前提があり、「親族間でも、お礼の意味で贈り物があったりするので、金品の授受を見抜くのは医療現場では不可能。カウンセリングなどでドナーと患者の関係を見抜くしかない」と力説する。

 また、自らの臓器を提供する生体腎移植では、家族や夫婦間の移植でも複雑な感情が生まれたり、さまざまな人間関係があぶり出される。中には、離婚の原因になったり家族がぎくしゃくしたりすることもあるという。

 「母親だから提供しなくてはならないと周囲の無言の圧力を感じて、嫌だと思いつつ、ドナーになる場合もある。大切なのは、ドナーが自発的かどうか、だ」と言い切る。

 子どもへの移植手術の直前に、不安になって取りやめた母親も少なくない。「日本には、親は子どものために何でもするのが当たり前という神話が生きている」と春木院長はいう。

 子どもが腎臓病になったのは親のせいだという、しょく罪感が母親本人に働くほか、家族や親類などの周りから責められる場合もある。十代の息子から「こんな体になったのは、おまえのせいだ。責任をとって腎臓くれ」と毎日のように暴力をふるわれ、「こんな思いをするなら」とドナーとなった母親もいた。「おれは仕事があるから母親のおまえが提供するのは当然」と夫から暗に言われたケースも。逆に離婚の慰謝料がわりに娘への臓器提供を夫に求めた母親もいたという。

 夫婦間の移植では、手術前に夫婦別々に面接したところ、六十一組のうち十七組のドナー候補者が「提供したくないが、相手に言い出せない。ほかの理由で提供できないことにしてほしい」と告白したという。

 結婚している兄弟や姉妹から提供を受ける場合、さらに複雑だ。妹への移植を申し出た男性が、妻の家族から強く反対され、移植はいったん中止となった。ところが、後日、透析に疲れた妹が自殺未遂したのをみた移植医が移植を再度勧め、結局、移植手術が行われた。だが、一カ月でうまくいかなくなり臓器を摘出した。「妹の家族も男性の家族関係もしっくりいかなくなった。こういうケースは無理に移植せず、透析をしながら時間をかけて家族間で調整していくしかない」

 移植医は患者に肩入れすることが多いため、春木院長は「熱心な医者ほどそうなりやすい。だからこそ家族の心理などに詳しい専門家が、ドナーと患者双方の精神面をみることが必要不可欠」と指摘する。

 家族間の移植は、臓器の提供を受ける患者側にも重い負担を強いる。

 愛媛県で姉から腎臓をもらって移植手術を受けた四十代の女性は「離婚を考えた」と明かす。夫が提供を申し出たが夫の家族に反対されたためだ。「体がつらいだけではなく、何かにつけ、いろいろ言われて本当に苦しかった。嫁は他人だということを思い知らされた。知らない人の方が楽かもしれない」と振り返る。

 同県八幡浜市に住む片山剛夫さん(60)は肉親に移植を言い出せず、十年前、万波医師の執刀で病気腎移植を受けた。妻にも、妻の家族のことを考えると移植を言い出せなかった。「ましてや親が子どもからなんて考えられなかった」

 十四年前に父親、六年前に母親から移植二回を受けた主婦(40)は、父親からもらった腎臓が拒絶反応でだめになった時、「申し訳ない気持ちでいっぱいになり毎日泣いて暮らした」という。母親が提供を申し出てくれた時も、いったんは「透析はつらいが、もういいと思った」。今も母親の腎臓がだめになったらと考えると不安は強いが、「次に妹がくれるといってももらわない」と話す。家族間だからこそ患者が負い目を感じたり不安になったりして、移植後の生着に影響することもあるという。

 「移植への理解を求める会」の向田陽二会長は「家族や遠い親せきよりも親しい友達が申し出てくれることもある。第三者間の移植もルールを作り、選択肢の一つとして可能性が広がれば」と話す。ただ、「次はおれが提供するよと言ってくれた親友が、『何であんたがあげなくちゃいけないの』と奥さんと大げんかになった」という事例を引用しつつ「本人が提供を申し出ても本当に難しい。お金でけりがつくなら楽だと思うこともある」という。

 日本移植学会の倫理指針によると、生体臓器移植のドナーは六親等以内の血族と、結婚した相手の三親等以内の親族に限定されており、これに該当しない場合は各医療機関の倫理委員会で個別に承認を得るように規定する。

 生体移植でドナーの範囲について、シンクタンク「科学技術文明研究所」は、臓器売買につながる恐れや近親者に提供が迫られるリスクなどを挙げ、学会よりさらに限定した「二親等内の血縁者または五年以上生活をともにした配偶者ないしそれに準じるもの」と提言している。

 ドナーの身元確認は「家族以外の第三者による」ことが要件。ドナーが同じ家に一緒に住んでいる親族なら健康保険証でいいが、別所帯では「顔写真つきの公的証明書」での確認が原則。ただ運用は医療機関に任されており、共同通信の調査では、昨年十件以上の生体腎移植をした二十二病院のうち五病院が自己申告と保険証だけで身元確認を済ませている実態も明らかになっている。

 移植患者や家族らの全国組織「日本移植者協議会」の大久保通方理事長は、「本来はドナー登録者を増やして死体腎の移植を増やすことが一番。医師や医療機関も、もっと移植医療の必要性を社会に訴えてほしい」と指摘。その上で、今回の売買事件についても「いいことではないが、移植を受けた被告は糖尿病で予後も悪く、死体腎がほとんど出ない現状の中で、仲介者の内縁の妻もかなり焦る気持ちもあったと思う」と推測する。

 「(日本移植学会のルールのように)倫理委員会での認証を条件にするなどきちんとしたルールは必要だが、さまざまな形態の夫婦間も含めて、非血縁者の移植は閉ざしてはいけないと思う」と大久保さん。

 ただし、売買ではないことが担保されるためにも、「精神科などの専門家がドナーや患者の相談を受ける体制が必要」と指摘しながら、こう説く。

 「血液型や白血球の型などでも家族関係などの偽装は分かるが、ドナーが自発的に移植を希望しているかどうかも含めて、複数の専門家がドナーと患者双方から話を聞くことが必要だと思う」

<デスクメモ>生体移植でドナーの範囲を親族に限定しているのは、家族ならば、というのが根拠だ。裏返せば、親族以外の第三者なら、臓器売買につながるという考えだ。だが、売買事件は起こるべくして起きたし、親族間でも半ば提供が当然視されるデリケートな問題もある。事件は、身近な家族の在り方も問うている。(吉)」



2.まずは、生体臓器移植についての「日本移植学会倫理指針」「生体腎移植に関する補遺」(PDF)を挙げておきます。

 「〔二〕生体臓器移植

(1) 健常であるドナーに侵襲を及ぼすような医療行為は本来望ましくないと考える。とくに、臓器の摘出によって、生体の機能に著しい影響を与える危険性が高い場合には、これを避けるべきである。

  1.例外としてやむを得ず行う場合には、国際社会の通念となっているWHO勧告(1991年)、国際移植学会倫理指針。(1994年)、厚生省公衆衛生審議会による「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)(1997年)などを参考にして、ドナーに関しては以下のことを遵守する。

 (1) 親族に限定する。親族とは6親等以内の血族と3親等以内の姻族を指すものとする。
 (2) 親族に該当しない場合においては、当該医療機関の倫理委員会において、症例毎に個別に承認を受けるものとする。その際に留意すべき点としては、有償提供の回避策、任意性の担保などがあげられる。また、実施を計画する場合には日本移植学会に意見を求めるものとする。日本移植学会は倫理委員会において当該の親族以外のドナーからの移植の妥当性について審議して、その是非についての見解を当該施設に伝えるものとするが、最終的な実施の決定と責任は当該施設にあるものとする。
 (3) 提供は本人の自発的な意思によって行われるべきものであり、報酬を目的とするものであってはならない。
 (4) 提供意思が他からの強制ではないことを家族以外の第三者が確認をする。「第三者」とは移植医療に関与していない者で、提供者本人の権利保護の立場にある者を指す。
 (5) ドナーへのインフォームド・コンセントに際しては、ドナーにおける危険性と同時に、レシピエント患者の手術において推定される成功の可能性について説明を行わなければならない。
  (6) 未成年者ならびに精神障害者は対象としない。ただし、以下の条件が満たされていれば、特例として提供下限年齢未満の未成年者(16歳以上20歳未満の者)からの臓器提供が認められる場合が ある。 ・ ドナーが成人に匹敵する判断能力を有していることが精神科医等によって認められていること。
  ・ ドナーが充分な説明を受けた上で書面に同意していること。
  ・ 当該医療機関の倫理委員会が個別の事例としてドナーとなることを承認していること。
 (7) いわゆるドミノ移植の一次レシピエントは、「生体移植のドナー」として扱うが、当該医療機関の倫理委員会が個別の移植およびドナーとして承認を受けるものとする。

(2)患者の移植適応の決定とインフォームド・コンセント
  (1) 患者の移植適応については、死体臓器移植に準じて行わなければならない。
  (2) レシピエントからインフォームド・コンセントを得る場合には、ドナーにおける危険性および、レシピエントにおける移植治療による効果と危険性について説明し、書面にて移植の同意を得なければならない。意識のない患者においては、代諾者の同意を得るものとする。
  (3) レシピエントが未成年者の場合には、親権者からインフォームド・コンセントを得る。ただし、可能なかぎり未成年者のレシピエント本人にも分かりやすい説明を行い、可能であれば本人の署名を同意書に残すことが望ましい。」


 「日本移植学会 倫理指針

(生体腎移植の提供に関する 補遺)

① 提供者の「自発的意思」の確認:日本移植学会・倫理指針(平成15 年10 月改訂)に定める「家族以外の第三者による確認」を必要とする。第三者とは、「倫理委員会が指名する精神科医などの者」とする。
② 提供者の「本人確認」:同一世帯であれば基本的に保険証で確認可能であるが、別世帯の家族や親族、姻族となった場合、「顔写真つきの公的証明書」で確認する。主治医は確認したことを診療録に記載する。 「顔写真つきの公的証明書」を所持していない場合は、倫理委員会に本人確認のための資料を提出し、倫理委員会が本人確認を決定する。
③ 提供者と移植希望者との間に金銭授受などの利益供与が疑われる場合は、即座に提供に至るプロセスを中止する。

生体腎移植実施までの手順

○ 提供者は親族に限定する。親族とは6 親等以内の血族と3親等以内の姻族とする。
○ 親族に該当しない場合においては、当該医療機関の倫理委員会において、症例毎に個別に承認を受けるものとする。
その際に留意すべき点としては、有償提供の回避策、任意性の担保などがあげられる。また、実施を計画する場合には日本移植学会に意見を求めるものとする。日本移植学会は倫理委員会において当該の親族以外のドナーからの移植の妥当性について審議して、その是非についての見解を当該施設に伝えるものとするが、最終的な実施の決定と責任は当該施設にあるものとする。
○ 主治医(外来担当の移植医)が提供候補者に腎移植提供手術について文書を用いて説明する。この文書には、術前・術後の危険性についての詳細な内容が記載されている必要がある。
○ 提供候補者は腎提供に関する十分な知識を得た後で「腎提供の承諾書」に署名する。そのために、1)提供候補者が十分な時間をかけて意思決定出来るよう、一旦説明文書を持ち帰り考慮期間を設けること、2)提供候補者が質疑応答によって腎提供に関する十分な知識を得ることができる医療相談体制を整えること。それには主治医だけではなく、レシピエント移植コーディネーターや看護師、臨床心理士、MSW(メディカルソーシャルワーカー)などによる提供候補者の意思決定を支援できる医療体制を整備する。
○ 提供候補者は自発的意思で提供するという同意の上で、「生体腎移植提供承諾書」に署名する。その際、提供候補者の家族も、提供することを理解していること。
○ 最終的な提供候補者の自発的意思の確認は第三者による面接によって行う。その上で、第三者による「提供候補者の自発的意思の確認」を得る。
 提供候補者が複数の場合も同様の手順とする。
○ 組織適合性検査および提供候補者の全身状態、腎機能を検査する。この時点で提供者として不適格であることが判明した場合は主治医(外来担当医あるいは病棟担当医)が提供候補予定者にその内容を説明し、提供者から除外する。
○ 最終のインフォームド・コンセントは術前に主治医(外来担当医あるいは病棟担当医)が行う。
○ 提供候補者は提供手術が実施されるまで、提供の意思をいつでも撤回できることを、医療者は保障する。
○ ドナー候補者への心理的圧力が存在することが疑われる場合や、候補者の意思が何らかの理由で揺らいでいることが疑われる場合も同様に対応する。」




3.この記事から生体臓器移植の問題点をまとめてみます。

(1) まずは、日本移植学会指針で「健常であるドナーに侵襲を及ぼすような医療行為は本来望ましくない」と書かれているように、生体腎移植は、健常である人体を傷つけるのですから、妥当な医療行為でないという根本的な問題点があります。ですから、死体腎移植よりも生体腎移植が多いという日本の腎移植事情は、異常なものであるという意識が必要です。


(2) もう1つは、生体臓器移植を親族に限定したことから生じる問題点です。東京新聞の記事はこの点に関する問題点に触れています。なお、記事中にも出ているように、厳密には、日本移植学会の倫理指針では、「親族に限定」しておらず、親族以外の者でも、各医療機関の倫理委員会で個別に承認を得れば可能ですが、現実には殆どないようです。

  イ 臓器提供者の見極めの難しさ
 生体臓器移植を親族に限定したので、ドナーが夫婦や兄弟だとなりすますケースや、暴力団関係者が急きょ養子縁組をして、「親子だ」と移植を希望してきたケースがあることなど、なんとかして、親族を偽装しようとする人が出てくるのです。そのため、親族か非親族かを見極めることになるのですが、その見極めが難しいのです。

  ロ 家族間・親族間の人間関係を破壊するおそれ
 「母親だから提供しなくてはならないと周囲の無言の圧力を感じて、嫌だと思いつつ、ドナーになる場合もある」ので、自発的でない場合がありうるのです。死体移植が難しく、生体移植では親族に限定されている状況では、親族間同士で移植を依頼することになるため、強制の契機が生じてしまうのです。
そうなると、移植を断ると離婚の原因になったり家族がぎくしゃくしたり、また、移植依頼に応じたとしても、納得できずに移植に応じて短期間で機能しなくなった場合には、やはり関わった家族すべての人間関係がうまくいかなくなったりするのです。

 ハ 提供を受ける患者側にも重い負担
 負担としては、妻のために夫が提供を申し出たが、夫の家族に色々言われて提供に反対されたため、「妻は他人」と思い知らされたことがあります。また、家族から提供された臓器が短期間で機能不全となった場合、提供者が家族であるだけに「申し訳ない」と思ってしまうわけです。


(3) 日本移植学会の倫理指針は、親族なら頼みやすく、臓器売買のおそれもないと思って、親族に限定したのかもしれません。しかし、こういった多くの現実に生じている問題点からすると、他人から臓器提供を受ける方が気が楽ではないか、家族にも他人にも負担が生じない病気腎移植の方が気が楽ではないか、いっそのこと金銭で解決できればもっと気が楽ではないか、ということにもなるのです。

テーマ:社会ニュース - ジャンル:ニュース

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