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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2006/12/01 [Fri] 00:33:55 » E d i t
政府は、代理出産などの生殖補助医療に関する法整備に着手する方針を固めたようです。この報道について触れてみたいと思います。


1.報道記事から。
(1) 「時事ドットコム」(2006/11/30-17:57)

 「2006/11/30-17:57 代理出産、学術会議に審議要請=法整備の必要性検討-政府

 政府は30日、代理出産など生殖補助医療の在り方について、日本学術会議(会長・金沢一郎国立精神・神経センター総長)に審議を要請した。同会議の答申を受け、生殖補助医療に関する法整備が必要かどうか検討する。答申の期限は定めていない。

 厚生労働省の辻哲夫事務次官は、同日の定例記者会見で「(代理出産をめぐる問題は)非常に幅の広いデリケートな問題。最も幅の広い日本の有識者がそろっているのは学術会議。(審議の内容は)幅広い観点から、代理出産をこれからどのように目指していくのかという基本論になると思う」と話した。

 代理出産については、厚労省の生殖補助医療部会が2003年4月、罰則付きで禁止すべきだとの結論をまとめたが、法制化されず、その後議論は止まっている。」


政府が法整備を考えている場合、通常、法制審議会で検討する(とはいえ、最近の法制審議会は官庁や経済界主導で行っており、委員の意見を考慮することはありません。)のですが、日本学術会議に審議を要請しているのですから、かなり珍しい例であると思います。

日本学術会議に審議を要請した理由は、代理出産をめぐる問題は非常に幅の広いデリケートな問題なので、最も幅の広い日本の有識者がそろっている学術会議において、幅広い観点から検討して欲しいことのようです。

時事通信社の報道によると、「答申の期限は定めていない」そうです。


(2) 「読売新聞平成18年11月30日付夕刊1面」

 「代理出産 法整備へ  法相、厚労相 学術会議に審議要請

 政府は、代理出産などの生殖補助医療に関する法整備に着手する方針を固めた。長勢法相と柳沢厚生労働相が30日、日本学術会議に対し、代理出産の是非や基本的なルール、民法上の親子関係のあり方などについて、審議を要請する。政府はなるべく早く答申を得たうえで、適切な生殖補助医療のあり方を定める新法などの検討に入る考えだ。

 不妊に悩むカップルの増加に伴い、代理出産などを希望する人も増え、生殖補助医療の技術も進歩している。しかし、現在、代理出産などのルールを定めた法律はないことから、さまざまな問題が浮上している。

 最近では、タレントの向井亜紀さん夫婦が、米国女性に代理出産を依頼して生まれた双子の出生届を東京都品川区に提出したが、不受理となった。東京高裁は受理を命じる決定をしたが、同区が抗告し、最高裁で審理されることになった。

 長野県では、子宮を摘出して子供を産めなくなった30歳代の女性に代わり、50歳代の母親が「孫」を代理出産。家族関係が複雑になるとして問題になった。

 このため、法務、厚労両省は産婦人科などの学会だけでなく、法律、倫理などの観点から幅広く議論する必要があるとして、多方面の学識者で構成される日本学術会議に議論を求めることにした。答申の期限は定めない。

 同会議では、医療、生命科学、法律など各分野の専門家が集まり審議を重ねる方針だ。具体的には、〈1〉代理出産の是非〈2〉代理出産が認められる場合、どういうケースか〈3〉代理出産により生まれた子供をめぐる親子関係、法律上の地位――などが話し合われる見通しだ。

 現行の民法には、親子関係について詳細な規定はない。最高裁判例では、分娩(ぶんべん)の事実をもって母子の親子関係が発生するとしており、民法に新たな規定を設けるかどうかなどが焦点となる。

 生殖補助医療 子供ができにくい「不妊カップル」を補助する目的で行われる医療。〈1〉別の女性が代わって出産する代理出産〈2〉精子を人工的に女性の体内に注入する人工授精〈3〉体外で精子・卵子を受精、分割させて、受精卵を子宮内に移植する体外受精――などがある。

(2006年11月30日 読売新聞)」


この記事でも、日本学術会議に審議を求めた理由が書かれています。それによると、「法務、厚労両省は産婦人科などの学会だけでなく、法律、倫理などの観点から幅広く議論する必要があるとして、多方面の学識者で構成される日本学術会議に議論を求めることにした」ようです。もっとも、厚労省の生殖補助医療部会の「報告書」においても、法律・倫理面からの検討を行っていましたから、幅広く議論をするというのも妙なことです。

ただ、法律面の検討をしたといっても、厚生科学審議会生殖補助医療部会について(第2回厚生科学審議会(平成13年6月11日開催)において設置決定))(PDF)を見ると、東京都立大教授(当時)・石井美智子氏は家族法を専門とする民法学者あり、この方が関与したとしても、憲法、国際私法、国際民事訴訟法を専門とする学者が関与した形跡は見当たりませんでした。
また、法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会では、部会長は学習院大学教授(当時)・野村豊弘氏ですが(ジュリスト1243号(2003年、有斐閣)6頁参照)、野村氏は家族法の分野についての論文・著作が殆どなく、とても家族法を専門としているといえない人物なので、もしかしたら家族法の面の検討も十分でなかったかもしれません。
「報告書」からすると、憲法、国際私法、国際民事訴訟法の検討が不十分であったのですから、改めて法律面につききちんとした検討が必要でしょう。

答申の時期は、政府はなるべく早く答申を得たいようですが、「答申の期限は定めない」ようです。


(3) 「読売新聞平成18年11月30日付夕刊2面」

 「【解説】代理出産 法整備検討  既成事実化に危機感

 政府が今回、代理出産などの生殖補助医療に関する法整備に踏み切る背景には、出産に関する技術進歩に、法律が追いついていない現状がある。法務、厚生労働両省には、妊娠と出産の法的ルールがないまま、「既成事実化」が進んでいくと、混乱がさらに深まるとの危機感がある。

 不妊カップルの女性に代わって別の女性が子どもを宿す代理出産は、生殖補助医療が抱える問題点の典型例だ。出産を希望する不妊カップルやその相談を受ける現場の医師らが、生殖補助医療に望みをつなぐ気持ちを否定はできない。

 しかし、感情論だけで法制化を進めるのは危険だ。倫理、法律、医学的な安全性など多方面から議論を深める必要がある。これまで政府は、生殖補助医療のあり方については厚生労働省、出生児の法律上の親子関係については法務省で縦割りの検討をしてきた。日本学術会議に審議を依頼するのは、省庁間の垣根を超え、より高いレベルで議論を深めることが不可欠だと判断したためだ。

 代理出産の是非は、諸外国でも判断が分かれている。フランスのように基本的に禁止している国もあれば、英国のように安全性確保や非営利を前提に容認している国もある。出生児の未来、少子化に悩む社会を考えれば、早急なルール作りが必要だ。(政治部 久保庭総一郎)

(2006年11月30日 読売新聞)」


1面の記事と2面の記事は同じ記者が書いた記事ですが、政治部の記者が書いたものです。代理出産問題であれば、普通は、社会部や科学環境部が扱うはずですが、政治部が扱ったのですから、異例の扱いのように思えます。

「出生児の未来、少子化に悩む社会を考えれば、早急なルール作りが必要だ」と結論付けていることからすると、政治部としては、少子化対策の一環として、代理出産を認める方向にあるといえそうです。高齢者に限らず、若い世代であっても子供が産まれにくくなっている状態にあり、若い世代からのがん発生率が高まっていることからすると、政治家の意識としては、代理出産は少子化対策の1つであると考えていると思われます。


(4) 「毎日新聞のHP」(11月30日 20時42分)

 「代理出産:日本学術会議に審議要請 法相・厚労相

 長勢甚遠法相と柳沢伯夫厚生労働相は30日、日本学術会議(金澤一郎会長)に対し、不妊の夫婦に代わって別の女性が妊娠・出産する代理出産の是非など生殖補助医療に関する審議を要請した。代理出産については、厚労省の審議会が禁止を求める報告書を03年にまとめたが、米国など海外での出産例や、国内での実施例が相次いでおり、改めて幅広い専門家による検討を求め、今後の制度作りに生かす。

 学術会議は年内にも、法律、哲学、生命倫理、産婦人科、小児科などの専門家による委員会を設置する。両省の審議会で生殖補助医療について議論をした経緯はあるが、各分野の専門家に偏っていたため、幅広い分野の専門家に参加してもらうことにした。約1年間の審議で論点を整理し、代理出産の是非などについて取りまとめる。

 金澤会長は「大変重要な問題であり、法整備を前提とするのではなく、学術的・総合的観点からきちんと議論していきたい」と話している。

 厚労省は「報告書は約5年半の議論を経てまとまったもので、尊重してもらえるものと考えている。その上で、学術的な立場から議論し直す意義はある」と話している。

 代理出産を巡っては、タレントの向井亜紀さん夫妻が米国で実施し、その双子の出生届に関する裁判が続いているほか、今年10月には、長野県下諏訪町の諏訪マタニティークリニックで、50代の女性が娘夫婦の受精卵を妊娠・出産した例が明らかになるなど、問題化している。【永山悦子】

毎日新聞 2006年11月30日 20時34分 (最終更新時間 11月30日 20時42分)」



時事通信や読売新聞の記事と異なり、毎日新聞の報道のみ、「約1年間の審議で論点を整理」するとしています。この報道は真実なのでしょうか? どういうルートでこういう情報を得たのでしょうか? よく確かめてみる必要があります。


この記事には、興味深い点が2つあります。
1つは、

「金澤会長は「大変重要な問題であり、法整備を前提とするのではなく、学術的・総合的観点からきちんと議論していきたい」と話している。」

の点です。
法整備を前提として答申を求めているのに、法整備を前提としていないと答えているのです。後々、問題を生じてしまうのではないでしょうか?

もう1つは、

「厚労省は「報告書は約5年半の議論を経てまとまったもので、尊重してもらえるものと考えている。その上で、学術的な立場から議論し直す意義はある」と話している。」

の点です。
厚労省は、「報告書を尊重しろ」というのですから、どうやら厚労省は、代理出産を容認する気がないようです。

しかし、「報告書」は、憲法・国際私法・国際民事訴訟法について知らない者ばかりで作成されたものでした。なので、向井夫妻の代理出産訴訟について、東京高裁決定は「報告書」を検討したうえで、出生届受理を命じたのです。厚労省は、東京高裁決定についてまるで理解できていないようです。

厚労省は、自己決定権・生殖の尊厳の見地を無視し、医療現場の実態や声も無視し、代理出産を認める国民がかなりの人数を占めていることを無視するようです。官僚というものは、国民の意見を聞かない者、見直すということをしない者ばかりのようです。




2.代理出産は、生殖に関する自己決定権に密接に関わるものですが、日本国憲法は米国憲法に由来している面があり、解釈論も米国の議論を採用することが多いのです。そうなると、憲法論的には、米国(の一部の州)では代理出産を認めている以上、日本国憲法下において代理出産を全面禁止することは難しいように思います。

日本で代理出産を禁止しても、代理出産を禁止しているEU諸国の国民が米国に行って代理出産を行っているのと同様に、日本人が米国で代理出産を行うことは減るはずがなく、日本と米国との関係は軍事面に限らず、人的交流が盛んであり、社会的・経済的にも密接であることからすると、今後一層増えるはずです。米国で代理出産を認めている以上、日本法で代理出産を禁止しても、無意味に近いのです。

厚労省が代理出産を禁止した「報告書」の尊重を求めても、それは現実から目を背けたものであり、官僚らしい責任回避の行動にすぎないのです。

テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース

コメント
この記事へのコメント
春霞様
酒の香りに誘われてふらふらと夜の街を彷徨している間に、何だか急に色々とあったようです。

飯塚理八先生 絶句しました。他界されたその日に
http://www.arsvi.com/0w/iizkrhc.htm
を読んで先生の足跡を眺めていたばかりです。言葉が見つかりません。
謹んでご冥福をお祈り致します。

やっと法整備に向けて動き出しましたか。学術会議に審議要請したのは正しい判断と思います。
ゼロから審議のやり直しがなされるべきです。現実を真摯に直視した公正な議論を期待します。
できれば、春霞様のように理路整然と正論を述べられる先生に加わって欲しいと思います。
ところで、審議過程は公開されるのでしょうか。捜してみようと思っています。

毎日新聞のN記者さん、また偏見から脱却できない記事を書いたようですね。
ここまで来ると、報道記者と言うより、個人的に何か思うところがあるのかも知れませんね。

ただ、確かに法務・厚生労働両省は期限を決めずに審議要請したようですが、
「約1年間の審議」というのは、比較的公平な記事を書いておられる読売新聞さんの本日付けの記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061130-00000314-yom-pol
にありますように、どうも学術会議側の意向として「1年をメドに議論をとりまとめたい」ようですね。

但し、日本学術会議の会長の公式コメントでは期間は言及されていません。
また、似たような文章ではありますが、「法整備を前提とするのではなく」など書かれていません。
少なくとも、これはこれは何処からきたのでしょうね?
http://www.scj.go.jp/

>日本人が米国で代理出産を行うことは減るはずがなく
仰るとおりだと思います。当然だと思います。
15歳未満の小児の臓器移植も、国内法で認められていないので、結局米国へ行っています。

しかし、代理出産を法的に条件付で認めても、まだ解決できない問題があると思います。
ボランティアの精神が十分浸透しているとは言い難い社会基盤が影を落とし、国内での代理母希望者が少ない可能性があると思います。
万波医師の場合も、腎臓提供(2006年:162件)が腎臓移植希望者(同:11,732人)と比べて2桁も少ないことも背景にあると思います。
http://www.jotnw.or.jp/)〔臓器提供意思表示カードの更なる普及を・・・〕

ですから、法整備は当然重要ですが、ボランティア精神の更なる普及啓蒙活動も重要と思います。
法整備されても、結局米国に代理母を頼みに行くというような社会現象も起こり得ると思います。

日本人が本当の意味で村社会から脱皮し、責任ある真の国際社会の一員として、民主主義に立脚した日本固有の大人の社会を構築する必要があると思います。
春霞様が仰る国際私法に対する理解の普及も、まさにその問題と思います。

また、代理母のメンタルケア、いじめの問題も含めた新生児のケアなど、真に人に優しい社会システムの構築も平行して模索して頂きたいと思います。これは代理出産に限らず、AIDの場合でも、出自を知る権利の行使も含めて同様だと思います。
また、養子縁組の社会基盤構築も重要な課題であると思います。この分野の公的な組織が必要と思います。
2006/12/01 Fri 19:00:21
URL | Canon #-[ 編集 ]
>Canonさん
コメントありがとうございます。

>学術会議に審議要請したのは正しい判断と思います。

そう思います。昔なら法制審議会の方が断然良かったのです。例えば、国際私法の分野では、法制審議会の見解=通説=法律へというくらい重みがあり、官僚の意見は参考程度だったのです。
しかし、昔と異なり、今の法制審議会は常設機関でなく、審議会委員も軽い存在になってしまい、多くは官僚が仕切っている状態です。学術会議の方が真っ当な審議が期待できますね。


>ゼロから審議のやり直しがなされるべきです。現実を真摯に直視した
>公正な議論を期待します。

そうですよね。今、代理出産を希望する不妊治療患者がかなり多く、現実的にも実施しているという現実を直視した議論をして欲しいです。


>できれば、春霞様のように理路整然と正論を述べられる先生に加わって
>欲しいと思います。

ありがとうございます。私のようにかどうかはともかく、法律面でも幅広い視点から十分に検討して欲しいですね。


>約1年間の審議」というのは、比較的公平な記事を書いておられる
>読売新聞さんの本日付けの記事
>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061130-00000314-yom-pol
>どうも学術会議側の意向として「1年をメドに議論をとりまとめたい」

情報ありがとうございます。読売新聞の続報記事(12月1日付朝刊)に、期間が載ってました。そうすると、期間については確かなのでしょう。
それにしても、読売新聞は、11月30日夕刊に続き、次の日の朝刊でも報道しているので、関心が高いようです。元々、読売新聞は医療関係の記事は充実しているのですが。


>しかし、代理出産を法的に条件付で認めても、まだ解決できない問題が
>あると思います。
>ボランティアの精神が十分浸透しているとは言い難い社会基盤が影を
>落とし、国内での代理母希望者が少ない可能性があると思います。
>また、代理母のメンタルケア、いじめの問題も含めた新生児のケアなど、
>真に人に優しい社会システムの構築も平行して模索して頂きたいと
>思います。

まさに仰るとおりです。
日本で代理出産が可能になるとしたら、代理母候補者をどう集め、代理母や子供へのカウンセリングを実施するのか、実施する場合の法整備・人的確保など、本格的に実施しようとするなら、困難と思えるような現実的問題が生じます。
困難だからしり込みして止めるか、それとも前向きに取り組むのか、日本人の意欲が問われる問題といえそうです。


>養子縁組の社会基盤構築も重要な課題であると思います。この分野の
>公的な組織が必要と思います。

日本では、他人の子供(夫婦間の連れ子でない子供)との養子縁組はなかなか大変です。
↓こちらは、特別養子縁組を行ったご家族ですが、大変さがずっと綴られています。
http://plaza.rakuten.co.jp/magumagumagu/

ちなみに、このご家族は、アエラ10月30日号の「養子縁組はどうなのか」といった趣旨の記事で紹介されたご家族ですね。↓
http://plaza.rakuten.co.jp/magumagumagu/diary/200610230000/
2006/12/02 Sat 06:06:34
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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