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2006/11/30 [Thu] 05:20:53 » E d i t
最近、代理出産問題についての記事・論説が多く出ています。例えば、「【正論】米本昌平 代理母は例外ケース以外禁止に (11/25 05:07)」などがありますが、読売新聞の「論点」欄における、森崇英・京大名誉教授の論説を紹介します。


1.読売新聞平成18年11月29日付15面

論点:生殖医療 法整備に現場の声 必要

 10月15日、諏訪マタニティークリニック(長野県)の根津八紘院長は、50歳代の女性が娘夫婦の受精卵を使って代理出産した事例を公表した。同院長が以前公表した、姉妹間の卵子提供による体外受精に続く今回の代理出産は、非配偶者間の生殖補助医療が議論の段階を越え、実施ルールの法整備の検討段階に入ったことを示している。

 代理出産は、医学的には実施可能であるにもかかわらず、倫理・法律面で社会的認知が得られていない生殖補助医療の典型である。代理出産について、厚生労働省案では「ヒトを生殖手段とすることになるので禁ずる」、日本産科婦人科学会も指針で「子の福祉を最優先する」としてやはり禁止している。

 しかし、筆者は「生殖の尊厳」という基本理念を提唱し、その理念の下に、代理出産など非配偶者間生殖補助医療の包括的ルールを作るのが良いし、可能だと考えている。「子が生まれること、子を産むこと自体の尊さ」というのが、生殖の尊厳の考え方である。

 厚生労働省や日本産科婦人科学会の見解は崇高ではあるが、夫婦に認められるべき「生殖の尊厳」を認めないことになり、代理出産を禁止する絶対的な根拠とはなり得ない。もし今回の事例の夫婦が実施を得る機会を奪われたとしたら、その夫婦は一生悔いるであろうし、それに対し社会は責任をとることが出来るのだろうか。

 代理出産の社会的認知度を意識調査でみると、一般国民を対象とした2003年の厚生労働省調査では「利用する」「配偶者が認めれば利用する」が合わせて41・2%に達した。一方、不妊治療中の患者を対象とした日本受精着床学会の2003年調査では、4人のうち3人までが容認し、3分の1の患者が、それしか治療法がないのなら治療を受けると回答している。不妊患者の意識とはなお開きがあるにしても、一般国民にも理解が広がっている。

 今回の事例に関しては、代理出産した女性の医学的チェックがとりわけ問題となりうる。閉経後の女性であれば、妊娠中毒症、流・早産は高率に発症するので、医学的リスクが大きい。

 当事者へのカウンセリングも重要になる。生殖医療の専門家の間では、不妊夫婦の悩みを解決するべく積極的にカウンセリングを行っており、ここ数年、専門学会の設立や専門カウンセラーの養成など急速に充実してきている。今回のような例でも、例えば極端な場合、生まれてくる子供に先天異常がある場合や両親の離婚時などの対処について、事前の話し合いがおろそかになってはならない。

 これまでこの種の生殖医療については、「社会的合意形成のため、もっと議論を」と先送りの繰り返しであった。「代理出産を支持する世論もみられる」との厚生労働大臣の発言もあって、今後本格的なルール作りが始まるであろうが、ぜひ生殖医療の現場の実態と意見を積極的に吸い上げるべきである。

 そのために、政府が独立した常設の生殖医学機構(仮称)を創設することを求めたい。関係各層から任期制で専任担当者を充てるが、患者や現場の医療従事者を必ず参加させ、政策決定過程に意見を反映させる。

 体外受精児は、今や出生児65人に1人の割合にまで達し、少子化対策としての社会医学的意味も大きくなりつつある。今回の事例を機に、夫婦間の生殖補助医療を含めて、現場主義の立場からもう1度も見直して法整備を急いでいただきたい。

森 崇英(もり たかひで) 京大名誉教授、国際体外受精学会長
徳島大、京都大両教授(産婦人科)、日本不妊学会理事長などを歴任。73歳。」



2.この論説には、良い指摘が幾つか含まれています。

(1) まず、

「「生殖の尊厳」という基本理念を提唱し、その理念の下に、代理出産など非配偶者間生殖補助医療の包括的ルールを作るのが良いし、可能だと考えている。「子が生まれること、子を産むこと自体の尊さ」というのが、生殖の尊厳の考え方である。

 厚生労働省や日本産科婦人科学会の見解は崇高ではあるが、夫婦に認められるべき「生殖の尊厳」を認めないことになり、代理出産を禁止する絶対的な根拠とはなり得ない。」

という点です。代理出産を否定すると、夫婦に認められるべき「生殖の尊厳」を認めないことになるとしているので、「生殖の尊厳」と「生殖に関する自己決定権」とは類似する考えのようにも思えます。

ですが、憲法論を知っている人なら「自己決定権」は違和感がないとしても、そうでない人たちに対しては、「自己決定権」という法律的な用語よりも、「生殖の尊厳」という一般社会的になじみやすい用語の方が、代理出産に対する抵抗感を変える切っ掛けになるかもしれません。その意味では、有用な提唱であるように思えます。


(2) もう1つは、

「今後本格的なルール作りが始まるであろうが、ぜひ生殖医療の現場の実態と意見を積極的に吸い上げるべきである。

 そのために、政府が独立した常設の生殖医学機構(仮称)を創設することを求めたい。関係各層から任期制で専任担当者を充てるが、患者や現場の医療従事者を必ず参加させ、政策決定過程に意見を反映させる。

 体外受精児は、今や出生児65人に1人の割合にまで達し、少子化対策としての社会医学的意味も大きくなりつつある。今回の事例を機に、夫婦間の生殖補助医療を含めて、現場主義の立場からもう1度も見直して法整備を急いでいただきたい。」

という点です。要するに、法整備に当たっては、生殖医療の現場の実態と声を反映してほしいということです。

不妊治療中の患者を対象とした日本受精着床学会の2003年調査では、4人のうち3人までが容認するという、現実に差し迫った状態にある不妊治療中の患者の声があり、そういった生殖医療の現場の実態と声があるのですから、それを無視して欲しくないのです。
また、代理出産を認めるとしても、医学的チェックや当事者へのカウンセリングも重要なのですから、一般の生殖医療において必要とされることと同様に、生殖医療の現場に配慮した法整備をして欲しいというわけです。

どんな問題であっても、現場の実態と声を無視した法整備をおこなった場合には、実行されなかったり、軋轢を生じたりするのですから、代理出産の場合も、生殖医療の現場の実態と声を反映してほしいということは、ごく自然な提言であると思います。



3.代理出産に関する読売新聞の立場は、明確ではなかったと思います。ですが、これから再検討を始めようとする時期において、代理出産に肯定的な主張を掲載するのですから、読売新聞と政府のスタンスとは殆ど一致していることをも考慮すると、政府の方針はこの論説に沿った意見を採用する方向であること、読売新聞もこういう方向での主張を好ましいと思っているものと推測しています。

代理出産を肯定する意見というと、新聞紙上では根津医師ばかりでしたが、根津医師以外医師の方からも、肯定的な論説が出てくるようになったのです。意識の変化を感じます。



<追記>

「朝日新聞平成18年11月30日付39面」

慶応大名誉教授の飯塚理八さん死去 女児産み分け法開発
2006年11月30日02時15分

 飯塚 理八さん(いいづか・りはち=元日本産科婦人科学会会長、慶応大名誉教授・産婦人科)は29日、呼吸不全で死去、82歳。通夜は12月4日午後6時、葬儀は5日午前11時から東京都港区南青山2の33の20の青山葬儀所で。喪主は妻登代子(とよこ)さん。

 終戦直後から人工授精を手がけてきた慶応大病院で中心的な役目を果たし、多くの子どもを送り出してきた。凍結精子による人工授精を開発。精子の分離(パーコール法)による女児産み分けも手がけ、社会的な論議を呼んだ。82年には体外受精などを研究する日本受精着床学会を発足させ、初代会長に。不妊治療推進に向けて、積極的に発言する医師としても著名だった。」


「代理出産、医大生の7割が賛成~毎日新聞11月27日付より」で、飯塚氏のコメントを取り上げた直後であるだけに、訃報に驚いています。このコメントは、生涯最後のコメントだったかもしれません。
飯塚氏は、代理出産についてもコメントをしていただけに亡くなられたことは大変残念です。ご冥福をお祈りします。
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