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2006/12/05 [Tue] 07:01:20 » E d i t
朝日新聞平成18年11月27日付夕刊において、評論家の加藤周一氏が、中間選挙と教育基本法の委員会採決を絡めた論説を発表しています。この論説を紹介したいと思います。


1.朝日新聞平成18年11月27日付夕刊6面

夕陽妄語:2006年11月 加藤周一

 2006年11月に太平洋の両岸でおそらく歴史に残るだろう2つの事件が起こった。米国ではいわゆる「中間選挙」での共和党の大敗、日本国では衆議院での与党による「教育基本法」(以下教基法と略記)改訂案の強行採決。前者は米国の有権者のイラク戦争政策批判を、後者は政府与党の改憲へ向けての重要な第一歩を意味する。

 ブッシュ政権の政策は――大統領の任期はまだ2年ある――少なくともかなりの程度まで変わらざるをえないだろう。日本の安倍政権がどういう政策をとるかはまだよくわからないが、教基法を改め、さらに憲法を改めようとする路線は変わらないだろう。

 ブッシュ大統領は神の声を聞いて決定を下したという。「民の声は神の声」が民主主義の原則だとすれば、決定の内容の当否は別として、少なくともその原則には反する。しかし米国の世界における影響力が大きかったのは、武器とドルによるばかりでなく、また民主主義の理想によったのである。

   ――――――――――

 9・11以来戦争目的は半ダースほどあったが、どれも達成されたとはいえない。アフガニスタンでビンラディンは見つからなかったし、アル・カイダの組織網は発見されなかった。イラクでも同じ。大量破壊兵器は見つからず、侵入した米軍を歓呼して迎える住民もいなかった。民主主義? しかし現地の住民にとっては、それより生きていることの方が大事だろう。ブッシュ大統領の支持層はまず国外で減り、次第に国内でも失われ、遂(つい)に中間選挙に及んだ。

 米国はこの機会に悪夢から抜け出すかもしれない。まだ政権交代の能力を持ち、「自由」の伝説を回復し、一度振り切った振り子を反対方向へ振り戻すかもしれない。中間選挙の結果は、21世紀の世界の問題の大部分が武力によっては解決できないという現実を理解させるかもしれない。

   ――――――――――

 日本の教基法は憲法と密接である。その前文に「この(憲法の)理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」といい、「日本国憲法の精神に則(のっと)り、教育の目的を明示」するという。憲法の根本的に改めれば教基法を改めるのが当然で、教基法を改めるには「憲法の精神」を改めることが含意される。改憲について何らかの正当な合意がない今日、教基法改訂案を強行採決するのは暴挙である。

 要するに、なし崩し、解釈改憲、軍備増強と自衛隊の活動範囲拡大路線の延長であり、加速である。日本は9・11以後の米国に鼓舞されて右寄りの政策をつづけてきた。アジアの諸国、殊に中国と韓国との摩擦はそこから生ずる。教科書問題、歴史認識、首相の靖国神社参拝、領土問題など。

 まことに米国も日本国も、殊に9・11以後、右寄りの政策をとってきたが、米国で次第に軍国主義批判の声が強まり(たとえば元大統領カーターら)、日本では過去のアジア侵略戦争の弁護を含めて右寄り傾向が強まりつつあった。その状況は、米国先導型の軍国化へ転じるのは、時間の問題であるという印象を与えた。

 2006年11月はそのことを確認するための1つの判断になったと思われる。右に傾いた米国の舟は左側に戻る。米国に追随して右に傾いた日本の政治には、そのような復元力がない。右へ傾いたままどこまでも行くか、あるいはさらなる米国追随に徹底して方向を修正するか、ということになろう。

 米国ではすでに議会の変化が起こった。議会外の大衆のブッシュ政権支持は、周知のように激減した。知識層には初めから批判的意見が多かった。小泉首相が無条件にイラク戦争を支持したのは、「米国の支持」ではなく、「時の米国政府の政策の支持」にすぎない。

 しかるに米国では、政府が変わることもあり、政府が変われば政策が変わることもある。今後イラク戦争批判の言論は活発になるだろう。そういう言論がイラク戦争を無条件に支持した外国の政府に手厳しくなっても不思議ではない。いわんや民間の言論においてをや。

 東京裁判をとりしきったのは米国である。東京裁判の全面否定に近い「大東亜戦争」肯定論の盛んな国と米国が「価値観を共有」し、「一心同体である」と主張しても、それを受けいれる米国人は少ないだろう。米国人だけでなく、一般に日本国の外でそれを受けいれる人は、おそらく稀(まれ)である。国際的孤立は深まる。

 どうすればよいか。「愛国心」は政治的に利用せず、おのずから起こるに任せればよい。

 1831年にフランスに亡命したハイネは、「昔ぼくには美しい祖国があった」とうたったことがある。そこには何があったか。高い樫(かし)の樹(き)と、やさしいスミレの花があり、信じがたいほど美しいドイツ語があったという詩である。

――――――――――

 われわれも安倍首相と共に「美しい国」をつくろう。信州のカラ松の林と、京都の古い町並みを保存し、人麻呂や芭蕉が残した日本語を美しく磨こう。そのとき愛はおのずから起こるだろう。そして尊大な、誇大妄想的な、殺伐で同時に卑屈なナショナリズムを捨てればよい。そうすれば憲法を改める必要もなくなるだろう。  (評論家)」



2.2006年(平成18年)11月での米国と日本とは歴史に残る、そして対照的な出来事があったのです。

(1) 米国の有権者は、イラク戦争政策批判の意味を込めて、「中間選挙」での共和党の大敗という結論を選びました。ブッシュ大統領の政策を改めるため、民主主義が機能したわけです。その結果、イラク戦争とその後の対テロ戦争を進めてきたラムズフェルド国防長官が責任をとる形で辞任し、中間選挙の結果、上院で民主党が多数をとり、再任人事が承認されるのは絶望的になっていたボルトン国連大使も辞任しました(朝日新聞12月5日)。有権者の意識は、確実に現実の政治に変化を生じさせています。

これに対して日本の政治では、改めるという動きはありません。

 「右に傾いた米国の舟は左側に戻る。米国に追随して右に傾いた日本の政治には、そのような復元力がない。右へ傾いたままどこまでも行くか、あるいはさらなる米国追随に徹底して方向を修正するか、ということになろう。」

日本では、復元力を働かせようとする有権者が多数になっていないのです。


(2) 教育基本法は、「個人の尊厳」、「人格の完成」、「個人の価値」、「自主的精神」を標榜し、憲法の理念を実現しようとしている準憲法的性格を有する法律です。教育基本法改正案は、この現行教育基本法の理念・精神を残してはいるのですが、改正案は前文に「公共の精神を尊び」、「伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育」との文言を盛り込むなどして、現行教育基本法の理念・精神を稀釈化し、個人の尊重をできるだけ制約しようとしている感があります(三重大学助教授・寺川史朗「有事法制と愛国心」法学セミナー2005年1月号35頁参照)。

改正案で公共の精神を強調することにより、社会科や道徳などの指導において、公共の精神を強調するような変更が加えられることになるのでしょう。しかし、憲法は個人の尊厳を理念としているのですから、公共の精神を強調するような教育は、憲法の理念に一致しないのです。


(3) 教育基本法改正案では、今後5年間の教育政策の基本方針「教育振興基本計画」の策定を義務付けています。中教審の答申からすると、5年計画で、「いじめ、校内暴力を5年で半減」など、実現可能な具体的な政策目標を盛り込むようです。

しかし、この基本計画の狙いはそういったところではなく、教育予算が削減傾向にあるので、文科省は基本計画の作成により、長期にわたる教育関係予算の獲得できるようにする(読売新聞12月2日付11面)ためが主目的であるだと思います。結局は、基本計画は文科省の官僚のためにある制度であり、国民の教育に貢献しない制度のように感じられるのです。


(4) 教育基本法改正案ですが、12月7日に参院教育基本法特別委員会で、8日には参院本会議で採決し、週内成立を目指す予定であると報道されています。おそらく、成立してしまうのでしょう。
これにより、現行教育基本法1条[教育の目的]が「真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた」という文言が削除され、「必要な資質」という文言に置き換わります。要するに自主的精神に充ちた国民の育成でなく、(国家及び社会の形成ため)必要な資質を備えた国民の育成が、教育の目的となるのです。

「日本は9・11以後の米国に鼓舞されて右寄りの政策」を続け、盲目的に米国に追随して右に傾いているのですから、とても自主的精神に充ちた政治家が多数でないわけです。今でも、自主的精神がほとんどないのですから、改正案での「自主的精神」の削除は、今の日本の現実に合わせたものとはいえるのでしょう。

しかし、自主的精神が欠けたままで、どうして「愛国心」を育てることができるのでしょうか? 

 「本当に自国を愛しているなら、それは、自国を批判する精神を持ち、自由に意見表明をする(真の友達なら悪いことは悪いと言う)ことから始める必要があるように思われる。憲法19条と21条はそのことを謳っているのであり、その意味で真に「国を愛する」ことを保障しているのである。それを否定する安直な愛国心思考は両条に真っ向から対立する。批判的精神を培った個人による自由な意思形成と、それにもとづく自由な表現を前提とした、厄介な、しかし、ホンモノの愛国心思考がいま求められている。」(三重大学助教授・寺川史朗「有事法制と愛国心」法学セミナー2005年1月号36頁)





3.現場が悪いとマスコミから叩かれ、評価で締め付けられ、教員は委縮する一方なのに、いじめ対策ばかりか、教育基本法改正により、学校側(現場)に更なる負荷がかかっていくのであり、これでは、今後は、「生徒と苦しみ悩む自由すら失われていく」(東京新聞11月3日付朝刊「こちら特報部」)ことになります。その結果、生徒の人間的な成長の手助けをするという教育本来の目的ができなってしまうのです。

本来は、善意に解釈すれば、教育基本法改正案において公共の精神を強調することで、より教育を良くしようとしているでしょう。しかし、それは今でも過剰な負担がかかっている学校側に、更なる負荷をかけるものであり、現実無視の改正です。教育基本法改正により、日本の教育はより悪化していくような気がしています。


テーマ:教育基本法 - ジャンル:政治・経済

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コメント
この記事へのコメント
まともな国を
 先日古舘君の『報道ステーション』(朝日テレビ)で、解説の人が「美しい国の前に、まともな国、をつくってもらいたいですね」と言っていました。ほんと、是非そう願いたいです。
2006/12/08 Fri 10:58:02
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん
コメントありがとうございます。

>解説の人が「美しい国の前に、まともな国、をつくってもらいたい
>ですね」と言っていました

その通りです。……が、99%あり得ないような希望を願っても、ね。と思ってしまいます。安倍首相には早々に辞めてもらう方がいいでしょう。
2006/12/09 Sat 23:43:58
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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