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2010/02/07 [Sun] 03:14:06 » E d i t
小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、東京地検特捜部は平成22年2月4日、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で、同会の事務担当だった民主党衆院議員の石川知裕さん(36)、陸山会の会計責任者だった小沢氏の公設秘書大久保隆規さん(48)、事務担当だった元私設秘書池田光智さん(32)ら三人を起訴しました。小沢氏については「共謀を立証する証拠がなかった」として、嫌疑不十分で不起訴としています。これで、昨年3月の西松建設事件以降、約1年間も続いた陸山会をめぐる「一連の捜査は終結」(東京新聞平成22年2月5日付朝刊1面)しました。

東京地裁は平成22年2月5日、3被告人の請求を受けて保釈を決定し、検察側は決定を不服とする準抗告をしなかったため、石川知裕さん、大久保隆規さん、池田光智さんは、5日夕方、小菅の東京拘置所を出ています(共同通信:2010/02/05 18:27)。


 

1.報道記事を。

(1) 毎日新聞平成22年2月5日付東京朝刊1面

小沢氏団体不透明会計:小沢氏は不起訴 虚偽記載、容疑不十分 石川議員ら3人起訴

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件で、東京地検特捜部は4日、当時の事務担当者で同党衆院議員、石川知裕容疑者(36)ら3人を政治資金規正法違反(虚偽記載)で起訴した。虚偽記載額は約21億6900万円に達する。同法違反容疑で告発されていた小沢氏については容疑不十分で不起訴処分とした。

 ほかに起訴したのは、当時の会計責任者で公設第1秘書、大久保隆規(48)と石川議員の後任の事務担当者で元私設秘書、池田光智(32)両被告。

 起訴状などによると、陸山会が04年10月に東京都世田谷区の土地を約3億5200万円で購入した際、石川議員と大久保秘書は共謀して原資となった小沢氏からの借入金4億円を同年分の政治資金収支報告書に記載しなかったなどとされる。また、大久保秘書と池田元秘書は共謀し、07年5月に小沢氏に返済した4億円を同年分の収支報告書に記載しなかったなどとされる。

 特捜部は土地購入費に充てられた4億円を「小沢氏の手元に集まった金」と認定。虚偽記載は、この4億円を隠す経理操作と判断。4億円の原資について「公判で明らかにする」とする一方、「隠ぺい工作の執ようさ、額の大きさから起訴すべきだと判断した」と述べた。

 これまで中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)元幹部らが「土地購入直前に5000万円を石川議員に渡した」と供述。石川議員らは授受を否定しているが、特捜部は立証を目指す。一方、小沢氏について特捜部は、虚偽記載の意思や共謀関係を立証するだけの証拠はないと結論づけた。

 小沢氏の不起訴処分については、告発した市民団体などが検察審査会に不服を申し立てる可能性がある。

毎日新聞 2010年2月5日 東京朝刊」



(2) 東京地検特捜部は、昨年3月の西松建設事件以降、約1年間にわたり執拗に小沢一郎氏・民主党を狙い撃ちした捜査を行い、民主党への選挙妨害を繰り広げるだけでなく、「検察リーク」により、証拠もないのに様々な疑惑――例えば、贈収賄、脱税、談合、闇献金など多数――を垂れ流して世論操作を行ってきました。最後は、国会開会直前に衆議院議員を逮捕するといった不逮捕特権(憲法50条)を潜脱し、任意とはいえ国民の代表者である議員であり、政権与党の幹事長である小沢氏に2度も聴取を行い、国会審議を大きく阻害するという国会軽視の行為までやったのです。

 イ しかし、起訴状などによると、「陸山会が04年10月に東京都世田谷区の土地を約3億5200万円で購入した際、石川議員と大久保秘書は共謀して原資となった小沢氏からの借入金4億円を同年分の政治資金収支報告書に記載しなかった」ことと、「大久保秘書と池田元秘書は共謀し、07年5月に小沢氏に返済した4億円を同年分の収支報告書に記載しなかった」だけで、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪のみでの起訴であって、それ以外の多数取り上げられた罪はすべて起訴事実にありません。

今回の捜査は、足利事件を髣髴とさせるような、長期間小沢一郎氏・民主党を付け狙った異常な捜査でした。また、多くの報道機関が、「検察リーク」を無批判に垂れ流し、いわゆる「光市母子殺害事件」と同様に、極めて感情的で「有罪視」した報道を行っており、またしても刑事手続の大原則である無罪推定の原則(憲法31条)が大きく損なわれました

異常な捜査も小沢一郎氏の秘書・元秘書を次々と逮捕したのも、ともかく小沢一郎氏を起訴したいという一念であったことは誰の目にも明らかです。しかし、約1年間にわたって検察と報道が一体となってバカ騒ぎした挙句、結局は、本来、入り口にすぎなかったはずの、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪のみの起訴で「一連の捜査は終結」(東京新聞平成22年2月5日付)したのです。

もっとも、特捜部は土地購入費に充てられた4億円を「小沢氏の手元に集まった金」と認定し、「虚偽記載は、この4億円を隠す経理操作と判断」し、「隠ぺい工作の執ようさ、額の大きさから起訴すべきだと判断した」と述べています。しかし、所詮は、入り口にすぎなかった政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪を大きく見せているだけであって、「張子の虎」にすぎないのです。見込み捜査の失敗をこうした言い訳で取り繕うことは、捜査機関の常套手段ですから、また同じことの繰り返しをしているのかと、うんざりする思いです。


 ロ 政権交代により、やっと利権と腐敗にまみれた自民党政権と決別し、民意が尊重される社会に変え、格差社会の是正を図りつつあるのに、また元に引き戻そうとする検察と報道機関にはうんざりする思いです。米国さえも次のような記事にあるように、小沢氏が起訴されることを望んでいなかったのです。

小沢幹事長、春の訪米検討 キャンベル氏の要請うけ
2010年2月5日21時3分

 民主党の小沢一郎幹事長が4月末から5月上旬の大型連休中に訪米することを検討している。来日したキャンベル米国務次官補が2日、小沢氏と国会内で会談した際、民主党の大規模な訪米団を編成するよう要請。小沢氏は即答を避け、検討する姿勢を示したという。

 鳩山由紀夫首相は5月末までに、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を決定すると明言している。キャンベル氏が求めた訪米時期は決着期限に近く、小沢氏が訪米した場合、移設問題が協議される可能性もある。」(朝日新聞平成22年2月6日付朝刊4面


このように、「来日したキャンベル米国務次官補が2日、小沢氏と国会内で会談した際、民主党の大規模な訪米団を編成するよう要請」していることから分かるように、米国は小沢一郎・民主党幹事長を日米関係において重要な役割をもつ人物と評価しています。2月2日といえば、小沢氏を起訴するか否か最終決定される直前であり、その時期に小沢氏に対して訪米を要請しているのですから、ある意味、米国が日本国に対して(いい加減に「バカ騒ぎ」と「暴走する検察」は止めさせて)小沢氏を不起訴にすることを強くアピールしていたといえます。

「小沢氏は即答を避け、検討する姿勢を示した」とありますが、もし「検察と報道機関が一体となったバカ騒ぎ」がなければ、訪米することを即答できたはずです。「バカ騒ぎ」は、実に無駄な時間を費やしていると感じます。

2月2日に米国が訪米要請という事実からすれば、米国は、日米双方の国益にとって、小沢氏が政治的に失脚することを望んでおらず、早く日米間の政治問題を解決してほしいかがよく分かります。こうした米国の明示的な行動を目にすると、「検察と報道機関が一体となったバカ騒ぎ」は、米国側も苦々しく思っており、日米双方の国益を害するものであったように感じられるのです。 



2.異常な捜査も小沢一郎氏の秘書・元秘書を次々と逮捕したのも、ともかく小沢一郎氏を起訴したいという一念であったことは誰の目にも明らかです。では、<1>なぜ、小沢一郎・民主党幹事長を逮捕・起訴できもしないのに、憲法で保障された不逮捕特権(憲法50条)を潜脱してまで石川議員を逮捕したのでしょうか? また、<2>石川議員の供述に対しては、各報道機関で異なりましたが、どちらが正しかったのでしょうか?  

小沢幹事長資金問題 特ダネか、早合点の勇み足か

 連日報道が続く小沢資金問題。民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体が土地を購入した際に動いた現金4億円について、2004年の政治資金収支報告書に記載しなかった問題で、小沢幹事長の元秘書の石川知裕衆議院議員が逮捕されました。
 東京地検特捜部の捜査の内容が詳しく報道されることに関して、特に民主党議員から、「リークではないか」という指摘が出されていますが、報道各社はこれを否定しています。苦労して得た情報を、まるで苦労なく得たリーク(情報漏洩(ろうえい))であるかのように言われるのは、大変屈辱だと感じるからです。
 ただ、取材者が苦労して得た情報であっても、その情報を伝える側にも思惑があるはずだという洞察を忘れないでほしいと思うのですが。
 東京地検特捜部は、石川容疑者を逮捕して、石川容疑者が現金4億円を報告書に記載しなかったことを小沢幹事長が了承していたかどうか調べています。
 この点に関して、読売新聞1月20日夕刊1面トップに「小沢氏 4億円不記載了承」という見出しが大きく躍りました。
 石川容疑者が東京地検特捜部の調べに対し、現金4億円を「政治資金収支報告書に記載しない方針を小沢氏に報告し、了承を得ていたと供述していることが、関係者の話で分かった」というのです。
 さあ、これなら小沢幹事長が、政治資金規正法違反の共謀の罪に問われる可能性が高くなりました。
 ところが朝日新聞は、こう書いています。翌21日朝刊で、東京地検特捜部の調べに対し、石川容疑者は「『報告書は小沢氏の了解を得て提出した』と説明したことがわかった。ただ、記載内容まで了承を受けたかどうかは話していないという」。
 小沢氏の了解を得て報告書を提出したことは認めたけれど、4億円を記載しないことにするという中身の方針についてまで了解を得たかどうかは話していないというのです。これでは、小沢氏を政治資金規正法違反の共謀の罪に問うのはむずかしいでしょう。
 さて、どちらなのか。
 読売新聞の記事について、民主党議員が「誤報の可能性がある」と言うと、読売新聞は21日夕刊で、「読売新聞は確かな取材に基づいて報じている」と記者が署名入りで反論しました。
 本当のところはどうなのか。読売新聞の特ダネなのか、それとも早合点の勇み足なのか。まもなく明らかになるはずです。 (ジャーナリスト)」(朝日新聞平成22年2月1日付夕刊3面「池上彰の新聞ななめ読み」)


石川議員の供述は、「読売新聞の特ダネ」どおり、「4億円を記載しないことにするという中身の方針についてまで了解を得た」のでしょうか、それとも読売新聞の「早合点の勇み足」だったのでしょうか? これらの点に触れた記事を2つ紹介することにします。


(1) 毎日新聞平成22年2月5日付朝刊3面「クローズアップ2010<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>」

小沢氏不起訴 共謀の物証なく

 ◇具体性欠く「石川供述」 検察幹部「真っ黒だが、司法の限界」

 不可解な資金移動は暴かれたが、「頂点」には届かなかった。小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件は、同党衆院議員、石川知裕容疑者(36)ら3人が起訴される一方、小沢氏は不起訴処分に。石川議員らの逮捕後、小沢氏の関与が焦点だったが、東京地検特捜部の「主戦論」は、証拠の弱さに屈した。小沢氏側とゼネコンの関係を巡って特捜部は3年以上前に情報をつかみ、昨年3月にゼネコン各社への一斉聴取に乗り出していた。

 小沢氏を立件するには共謀関係の立証が不可欠で、それには逮捕した3人の供述がポイントだった。特捜部は、特に小沢氏から4億円を直接受領した石川議員を重視した。

 石川議員は「小沢氏に『不動産の取得時期を都合があってずらす』と伝えた」「小沢氏からの4億円を隠すため『銀行から同額の融資を受け、土地購入に充てた形にする』と小沢氏に報告した」などと小沢氏の関与についても一定の供述はした。しかし、虚偽記載についていつ、どこで、どのような相談をしたか、具体性に欠けた。他の2人の供述は「石川議員以下」(法務検察幹部)で、共謀を裏付ける物証もなかった。

 土地購入費の原資を「銀行からの融資」から「個人の資産」と変更するなど、小沢氏の説明には不可解な点が多々ある。石川議員の供述とともに「状況証拠と突き合わせれば立件は可能」とする主戦論が特捜部内にはあったが、大勢は「『石川供述』は詳細さを欠き、共謀を示す証拠とは言えない」との評価だった。陸山会の代表である小沢氏には政治資金規正法上、会計責任者への選任・監督義務があるが、選任・監督双方の過失が要件とされ、適用は困難。不起訴を選ぶほかなく、ある幹部は「心証は真っ黒だが、これが司法の限界」と振り返った。

 特捜部にとって厳しい結果だが、公判でもハードルが待ち構える。「4億円のうち5000万円は水谷建設からの闇献金」であることを立証しなければならないからだ。石川議員らの説明通り「小沢氏の個人資産4億円を隠した」のなら悪質性は低い。虚偽記載を「闇献金の資金洗浄」とみる特捜部にとって譲れない一線だ。

 特捜部は水谷建設元最高幹部、元幹部らの供述などから立証に自信を見せる。しかし、石川議員は受領を否定している。

 特捜部は5日以降もゼネコン幹部からの事情聴取を継続し、公判に向けた準備に入る方針だ。当初の在宅起訴方針を変え、捜索、逮捕と異例の経過をたどった捜査手法には疑問の声もある。払しょくするには「ゼネコンマネー」の立証が不可欠だ。【小林直、岩佐淳士】(以下、省略)

毎日新聞 2010年2月5日 東京朝刊」



(2) 朝日新聞平成22年2月5日付朝刊2面

検察崩れたシナリオ

 「粛々と詰めていけば――」。小沢一郎氏の資金管理団体の土地取引事件をめぐり、検察側は、逮捕した元秘書の衆院議員・石川知裕(ともひろ)容疑者(36)の供述次第では小沢氏本人の立件もあり得るとみて捜査を進めていた。焦点は、4億円の「真水」にゼネコンの裏金という「汚水」が入っているかどうか。だが、逮捕から21日間の攻防で、供述は得られなかった。

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■「確実に自供する」逮捕を決断

「4億円すべてがゼネコン資金だと裏付けられれば、100点で逮捕。4億円のうち水谷建設の5千万円を石川(知裕)議員が認めれば50点で在宅起訴だ。起訴できると判断すれば即、自宅を捜索する」

 1月15日の石川議員の逮捕に先立ち、この方針が最高検など上級庁から東京地検特捜部に伝えられた。捜査の信仰次第で小沢氏の立件が視野に入った場合の判断基準だ。期限は、石川議員の勾留(こうりゅう)期限となる2月4日とされた。

 検察当局は、100点は現実的に難しいとみていたが、50点を取る自信は持っていた。幹部は「粛々と詰めていけば小沢氏を追い詰められる」と意気込んだ。つまり、石川議員はほぼ確実に「割れる(自供する)」と踏んで逮捕に踏み切った。

   ■   ■

 すべての端緒は昨年3月3日。西松建設からの違法献金事件の際に実行した陸山会の家宅捜索だった。

 特捜部は、押収した通帳記録の分析などで、04年10月に石川議員が都内の土地の購入原資として、2週間で数千万円ずつ計4億円を陸山会に分散入金していたことを突き止めた。政治資金収支報告書には一切記載がなかった。

 特捜部は、「小沢ダム」と称される「胆沢(いざわ)ダム」工事受注に絡むゼネコン各社からの裏金だと疑った。昨夏ごろ、水谷建設の複数の元役員は「10月15日に都内のホテルで石川議員に5千万円渡した」と供述。出金の事実は堅く、銀行の翌営業日には同額が陸山会に入金されていた。

 政治資金規正法違反は明白だった。しかし、小沢氏側に「単なる記載ミスで形式犯」と言わせないためには、「ゼネコンの裏金を隠すための虚偽記載」という実質犯的な悪質性の証明が必須だった。検察当局は小沢氏立件の条件として、こうした動機面をめぐる石川議員と小沢氏の謀議の立証を自らに課した。大前提として、裏金受領という石川議員の供述を直接証拠として得るしかなかった。

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■「先生が了解」供述の評価対立

 特捜部は昨年12月末から石川議員の任意聴取を始めた。特捜部は当時から「絶対権力者である小沢氏主導の事件」の疑いがあるとみていた。その事実があるかどうかを判断するためには、資金の出し入れを担っていた石川議員の逮捕が不可欠と考えていた。だが、上級庁は裏金に関する証拠不足などを理由に逮捕を許可せず、在宅起訴の方針がいったん決まった。

 しかし、小沢氏が年明けの聴取要請を拒否し、石川議員らも渋るようになった。

 1月13日、特捜部は陸山会、石川議員事務所、胆沢ダム工事の談合調整を仕切ったとされる大手ゼネコン「鹿島」などの家宅捜索に踏み切った。一方で、小沢氏を容疑者とする意思表示となる小沢氏の自宅は外しており、「本気」の捜索とは言えなかった。小沢氏側、ゼネコン側への圧力の意味合いが強かった。

 翌14日、事態は急変する。石川氏が3回目の任意聴取で、虚偽記載の外形的事実をほぼ認めた。石川議員の落胆した態度を見た検察当局は「半分落ちたような状態。これはしゃべる」。15日午後10時6分、逮捕状を執行した。

   ■   ■

 4日後の19日夜、石川議員は「報告書は小沢先生の了解を得て提出した」という調書に署名した。

 特捜部は色めきたち、弁護側には緊張が走った。

 しかし、検察内部では、この供述の証拠としての評価が分かれた。あくまで総収入や総支出を説明したという、抽象的で一般的な報告の域を出ることはないとするのが消極派。虚偽事実の内容を含めて小沢氏の了解を得たととらえ、小沢氏の共謀が十分問えるとするのが積極派だった。

 「5千万円、もらっているのだろう」

 「絶対ない。本当に知らない。認めろと言われてもしゃべりようがない」

 石川議員を取り調べる検事は、途中で特捜部の若手から、福部長に代わった。小沢氏の任意聴取を担当したのは特殊1班キャップの検事だったが、さらにその上司が自ら聴取に乗り出すほど、石川議員の供述は重要だった。

 最後の最後まで、質問は、水谷建設の裏金5千万円の授受に集中した。同社元役員が授受の当日に乗ったとする東京行きの新幹線のチケット類も見せた。

 だが、「割れる」はずだった石川議員の返事は21日間、変わらなかった。弁護士は「核となる証拠がないことを露呈した調べ。石川議員も笑っている。裏金の事実があるとはとても思えない」と余裕すら見せた。

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■「客観証拠では無理」立件断念

 4日、検察内部の対立の軍配は消極派に上がり、特捜部は小沢氏の起訴を断念した。

 ある幹部は「今得られている客観的証拠を積み重ねても公判で必ず有罪を取るのは難しい。小沢氏が事件の中心だという絵は描けても、供述が付いてこないとどうしようもない」と、言い聞かせるように話した。小沢氏側の関係者は「真水に汚水が混じっている立証ができなければ、個人資金を団体に入れただけの形式犯で、石川議員もせいぜい自宅起訴で良かった」と批判した。

 検察内部にはなお、4億円もの不記載を形式犯とは言えない▽口裏合わせを防ぐためにも逮捕の必要性はあった▽水谷建設の5千万円は、石川議員の供述がなくても状況証拠から公判で十分立証可能――との声が聞かれる。一方で、別の幹部はこうも漏らした。「逮捕後、石川議員の供述は実質0点だった」」



(3) 朝日新聞平成22年2月5日付朝刊35面

語らぬゼネコン 裏金、そろって否定 連日の聴取、空振り

 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体が次々と不動産を購入したことに端を発した政治資金規正法違反事件は、小沢氏本人が刑事責任を問われることなく幕を閉じた。土地購入の原資に疑いの目を向けた東京地検特捜部は、ゼネコン各社に対して大がかりな捜査を展開したが、決定的な証拠は得られなかった。(中略)

 「小沢氏 不起訴の方向」と新聞が報じた3日も、ゼネコン本社には特報部から胆沢(いざわ)ダム(岩手県奥州市)などに関する資料の追加提出を求める電話があった。任意聴取は2日夜まで続いていた。「執念を感じた。あのとき以来だな、これほど大がかりな調べは」。自身も聴取を受けた元役員が、同じ東北地方が舞台だったゼネコン汚職捜査(1993~94年)に例えた。

 ゼネコン関係者の一斉聴取は1月5日から始まった。出頭要請を受けた各社はあわてて社員名簿を繰った。2005年12月に大手が「談合決別」を申し合わせて以来、談合担当者は他部門、全国各地に異動となった。退職者も多い。連絡をとって東京に呼び寄せ、ホテルを確保した。

 特捜部は、小沢氏の資金管理団体「陸山会」が04年10月に宅地を購入した原資4億円にゼネコンの裏金が含まれるとみていた。中堅ゼネコン「水谷建設」の元役員らが胆沢ダム工事の受注謝礼として同時期、裏金5千万円を秘書だった衆院議員の石川知裕容疑者(36)に渡したと供述していた、元請けだった鹿島の本社(東京都港区)と東北支社(仙台市)に捜索が入ったのは1月13日。水谷建設とともに下請けに入った中堅ゼネコン2社もその6日後、捜索を受けた。「水谷建設に裏金を持って行かせたのではないか」「同じように小沢事務所に裏金を持って行ったのだろう」。聴取は連日続いた。

 同じダム工事を受注した大手も軒並み呼び出しを受けた。一部は社長経験者も含まれた。小沢事務所の影響力は認めつつ、裏金については各社とも否定した。石川議員も裏金受領は認めなかった。

 「検事は事前にストーリーを組み立てていた。それに沿った供述を引き出したい、という本音が見えた。『よく思い出せ』『当時の手帳はないのか』の繰り返しだった」とゼネコン社員が語った。(以下、省略)」



(4)イ まず、1点目。<1>なぜ、小沢一郎・民主党幹事長を逮捕・起訴できもしないのに、憲法で保障された不逮捕特権(憲法50条)を潜脱してまで石川議員を逮捕したのでしょうか? 

政治資金規正法は資金管理団体などの収支報告書の記載について、責任を持つのは会計責任者と規定していることから、(政治家自らが直接記入することは少ないので)、政治家をも罪に問うためには、報告書作成者との「共謀」(=政治資金規正法違反の共同正犯)を立証する必要があります。

東京地検特捜部は、必ず「共謀はある」と決め付けて捜査をしていたのですが、石川議員「他の2人の供述は『石川議員以下』(法務検察幹部)で、共謀を裏付ける物証もなかった」(毎日新聞)のです。物証という客観的証拠がないまま見込みで捜査を続けたこと自体にも問題があったのですから、そこで止めればよかったのです。

しかし、約1年間にわたり執拗に小沢氏を捜査しておきながら、ほとんど客観的証拠がなかったため、小沢氏を逮捕・起訴するには石川議員の供述証拠しかないと焦っていた東京地検特捜部は、1月14日の石川議員の供述を切っ掛けにして、ついに冷静さを完全に失ってしまい、石川議員の自白を得ようとして逮捕にまで及んだのです。

「翌14日、事態は急変する。石川氏が3回目の任意聴取で、虚偽記載の外形的事実をほぼ認めた。石川議員の落胆した態度を見た検察当局は「半分落ちたような状態。これはしゃべる」。15日午後10時6分、逮捕状を執行した。(中略)
 だが、「割れる」はずだった石川議員の返事は21日間、変わらなかった。弁護士は「核となる証拠がないことを露呈した調べ。石川議員も笑っている。裏金の事実があるとはとても思えない」と余裕すら見せた。(中略)
 検察内部にはなお、4億円もの不記載を形式犯とは言えない▽口裏合わせを防ぐためにも逮捕の必要性はあった▽水谷建設の5千万円は、石川議員の供述がなくても状況証拠から公判で十分立証可能――との声が聞かれる。一方で、別の幹部はこうも漏らした。「逮捕後、石川議員の供述は実質0点だった」」(朝日新聞)


東京地検特捜部は、21日間、長時間にわたって自白を強要し続けたのですが、「逮捕後、石川議員の供述は実質0点だった」(検察幹部)というように、幸運にも石川議員は虚偽の自白をせずにすんだのです。
客観的な証拠からして、秘書であった石川議員と小沢氏の共謀が推測できると判断して、石川議員の供述を求めることをしていれば、見込み捜査にならずにすんだのですが、最初から「小沢氏の立件ありき」を目的として執拗に捜査をし続けていたため、冷静さを失っていたのです。冷静に考えれば、冤罪の危険性がある「共犯者の自白」である以上、1つの供述だけで「共謀」を認め有罪にできるはずがないのですが、つい目がくらみ、違法捜査の一種である、自白強要目的の逮捕に及んでしまったのです。

なぜ、小沢一郎・民主党幹事長を逮捕・起訴できもしないのに、憲法で保障された不逮捕特権(憲法50条)を潜脱してまで石川議員を逮捕したのかについては、最初から「小沢氏の立件ありき」で、約1年間にわたり執拗に捜査をし続けていたのに、客観的証拠がほとんどなく焦っていたところに、1月14日の石川議員の供述が「半分落ちたような状態。これはしゃべる」とつい、冷静さを完全に失ってしまい、逮捕に及んだのです。


 ロ 2点目。<2>石川議員の供述に対しては、各報道機関で異なりましたが、どちらが正しかったのでしょうか? すなわち、石川議員の供述は、「読売新聞の特ダネ」どおり、「4億円を記載しないことにするという中身の方針についてまで了解を得た」のでしょうか、それとも読売新聞の「早合点の勇み足」だったのでしょうか? 

 「4日後の19日夜、石川議員は「報告書は小沢先生の了解を得て提出した」という調書に署名した。
 特捜部は色めきたち、弁護側には緊張が走った。
 しかし、検察内部では、この供述の証拠としての評価が分かれた。あくまで総収入や総支出を説明したという、抽象的で一般的な報告の域を出ることはないとするのが消極派。虚偽事実の内容を含めて小沢氏の了解を得たととらえ、小沢氏の共謀が十分問えるとするのが積極派だった。」(朝日新聞)


こうした経緯からすると、検察内部で判断の分かれる供述だったことが分かります。それなのに、読売新聞は、そうした内部対立が分からぬまま、検察の積極派からのリークのまま垂れ流したわけです。これに対して、朝日新聞を含む他社は、情報源としていた検察関係者に聞きだしたところ、判断の分かれる供述と説明され、どこも読売新聞に追随しなかったのでしょう。

石川議員は、「総収入や総支出」の虚偽記載で逮捕されたのですから、本来、個別の4億円の不記載につき、しかもその点について小沢氏による関与まで述べたかは、そう簡単に言えないはずです。そうなると、報道する前に、石川議員の弁護人側の情報を確かめる必要がありました。

石川容疑者の弁護人“完オチ”は「完全な誤報」

 逮捕された石川容疑者の弁護人は20日、石川容疑者が小沢氏の事件への関与を認める供述をしているとの一部報道について、「完全な誤報」とする文書を報道各社にファクスで送付した。弁護人は安田好弘、岩井信両弁護士。連名で「石川氏がそのような供述をしたことは全くない」としている。

[ 2010年01月21日 ]」


この石川議員の供述を最もよく知る立場である弁護人側からのFAXは、決定的でした。このFAXの内容からすれば、「4億円を記載しないことにするという中身の方針についてまで了解を得た」という判断は無理です。ちょっと考えれば、仮に「4億円を記載しないことにするという中身の方針についてまで了解を得た」と読めるような供述調書であっても、法廷においてそうした意味で供述したわけではないと言えば、どちらが正しいのかはっきりしてしまうのです。

石川議員の供述に対しては、各報道機関で異なりましたが、読売新聞の報道が間違っていたというべきです。すなわち、石川議員の供述は、「読売新聞の特ダネ」どおり、「4億円を記載しないことにするという中身の方針についてまで了解を得た」のではなく、読売新聞の「早合点の勇み足」だったのです。

ジャーナリストの池上彰さんは、、「取材者が苦労して得た情報であっても、その情報を伝える側にも思惑があるはずだという洞察を忘れないでほしいと思うのですが」と述べています。検察の積極派は、消極派を押さえ、起訴に持ち込もうとする世論を沸きたてようとする意図で、読売新聞にリークしたのでしょう。読売新聞は、そうした情報を伝える側の思惑に対する洞察を忘れてしまったようです。


ハ 東京地検特捜部は、建設会社の迷惑を顧みることなく、国の費用を湯水のように使い、大がかりな捜査を展開しています。しかし、「小沢事務所の影響力は認めつつ、裏金については各社とも否定した」のですし、「石川議員も裏金受領は認めなかった」のです(朝日新聞)。このように裏金につき双方が認めておらず、物証もないのですから、裏金はなかったと判断するしかありません。

ところが、中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)元幹部だけが、奇妙なことに「土地購入直前に5000万円を石川議員に渡した」と供述しているのです。そうすると、もしかしたら、検察側は、土地購入日や小沢氏側が5千万円を振り込んだ日などと水谷建設の幹部に知らせ、何らかの利益誘導をした上で、虚偽の供述をさせただけなのではないでしょうか?

ゼネコンの社員は、「検事は事前にストーリーを組み立てていた。それに沿った供述を引き出したい、という本音が見えた。『よく思い出せ』『当時の手帳はないのか』の繰り返しだった」と語っています。このように、証拠から事件の流れを判断するのではなく、頭の中での筋書きにこだわった捜査をし、ある意味、(供述)証拠の捏造を目論んでいたことが良く分かるエピソードです。

見込み捜査、客観的証拠を軽視した自白偏重・自白強要の捜査、(供述)証拠の捏造をも厭わない捜査、捜査情報のリークによる世論操作――。冤罪事件の典型例に出てくる捜査と同じことをしていたのが、今回の捜査だったのです。こんな捜査ばかりしていれば、冤罪が多発するのは必然とさえいえるでしょう。




3.無罪推定の原則からすれば、説明責任を果たすべき義務があるのは、被疑者とされた小沢氏側ではなく、検察側にこそあります。では、今回、一連の捜査を終結するに当たり、十分な説明責任を果たしたのでしょうか? その点に触れた記事を紹介しておきます。

(1)朝日新聞平成22年2月5日付朝刊33面

小沢氏不起訴  説明責任 検察は

 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐっては、二つの説明責任が問題になった。ひとつは小沢氏。そしてもう一つは東京地検特捜部だ。特捜部は4日、約1時間20分という異例の長さにわたって記者会見を開いた。ただ起訴内容の詳細については、「公判で明らかにする」などと明言を避けた。検察はどこまで説明責任を果たすべきなのか。

■起訴内容、詳しく語らず

 東京地検のある霞が関の合同庁舎6号館。午後6時からの記者会見には、谷川恒太次席検事と佐久間達哉特捜部長が出席した。

 記者「小沢氏への聴取は何回行ったのか」

 部長「言わない」

 記者「土地購入の原資は、ゼネコンマネーが含まれているのか」

 部長「お答えを控えたい」

 主に在京の新聞、通信、テレビ各社が加盟する司法記者会の記者約50人を前に、一般論では答えるものの、肝心のところははぐらかす光景が繰り返された。事件の発表などは次席検事が普段から行っているが、核心的な証拠に触れるような質問には答えを控える対応が常態化している。

 一方で、小沢氏を狙い撃ちしたという検察批判に対しては「長い間、捜査したからといって、特性の政治家を狙い撃ちしているとはいえない」「国会審議に影響を与えないように捜査できれば良かった」と言葉を重ねた。

 検察は、他の霞が関の省庁とは違って公開の法廷で証拠を通じて被告に説明責任を果たせば、それで良い――と伝統的に考えてきた。刑事訴訟法で「裁判官に予断を与える」ことが禁じられていることなどが理由だ。

 司法記者会は今回、カメラを入れた会見とするように申し入れていたが、当日検察から拒否すると返事があった。

 じつは、1976年のロッキード事件などでは、検事正ら地検幹部がテレビカメラの前で記者会見をしている。しかし93年の金丸信・元自民党副総裁の所得税法違反事件を起訴したころを境に、はっきりした理由は不明だが、カメラを入れることは禁じられるようになった。

 地検によると、会見には、フリーライターや雑誌記者らからも出席許可を求める申し出が事前に相次いだという。だが「司法記者会の加盟社以外の出席は認めない」と断ったという。

■「捜査に異論」本次々

 「アメリカ人のみた日本の検察制度」の著書で、ハワイ大学のデビッド・ジョンソン教授は「多くの地方検事が選挙で選ばれる米国と違い、日本の検察官は直接有権者への説明責任があるわけではない。継続中の事案について検察が語れば、起訴前の人物に烙印(らくいん)を押したりする恐れもある。あまり語らないのはやむを得ないことだ」と語る。

 しかし、こうした考えに異論を唱える人が、ここ数年増えている。その急先鋒(きゅうせんぽう)が、かつて東京地検特捜部などの取り調べを受けた本人たちだ。法廷で対決するだけでなく、「国策捜査だ」などと世論に訴える本を次々と出版している=表(省略)。

 中でも、2005年に出た佐藤優氏の「国家の罠(わな) 外務省のラスプーチンと呼ばれて」は、単行本と文庫本を合わせて29万4千部発行され、同年の毎日出版文化賞特別賞を受賞。反響を呼んだ。

 出版ジャーナリストの塩澤実信さんは「反検察本というジャンルが明らかに出来上がった」と語る。

 ジャーナリストの田原総一朗さんは「こうした著著などを通して、多くの人は検察の描く筋書きや取り調べのあり方に反感を募らせてきた。そのことが、検察の説明責任に対する批判の高まりの背景にある」と語る。」



国民から負託 応えるのは当然――ジャーナリスト・大谷昭宏さん

 いま多くの人はニュースの第一報をテレビやインターネットで知る。それなのに、特捜部は記者会見の撮影も許可しない。警察の記者会見はテレビで流れるのに、これほど大きな事件の会見がなぜ見られないのか。そんな率直な疑問の声が国民から上がるのは当然だ。

 東京地検特捜部は、国政や地方行政、経済システムを揺るがすような巨悪を暴くべく、強大な権力を持っている。権力が大きいほど、それを行使する際は国民の目に耐えられる理由がなければならず、可能な限りすべてを白日の下にさらす必要がある。

 相次ぐ検察批判本の出版に、検察がいちいちムキになって反論する必要はない。しかし、折に触れて捜査の目的や過程をできる限り説明していけば、後々こうした本が出ても「我々はあの時にこう説明した」と言える。それをしないがために、鈴木宗男氏のように影響力の大きい人の著作を読んだ人は、検察があたかも冤罪づくりを繰り返す組織であるかのようにとらえてしまう。

 捜査機関は「捜査に支障をきたすので」と説明を拒むのが定番だが、現在までに行われた捜査の過程を説明することと、今後の捜査に支障をきたすこととは分けて考えるべきだ。

 説明不足が冤罪を生む温床になるという面も重視すべきだ。どんな人がどんな容疑をかけられているのかが分からなければ、真相を知っている人も声のあげようがない。

 検察にいま一度認識してもらいたいのは、強大な権力は国民から負託されているものである、ということだ。預かっているものを使う時に持ち主に説明するのは当然のことだ。検察の説明責任を問う声が国民から多く聞かれるのは、そうした認識が高まっているためでもあるだろう。」



(2) 東京新聞平成22年2月5日付朝刊1面「解説」

◆検察は国民に説明を

 東京地検特捜部は石川知裕被告ら三人を起訴、小沢一郎民主党幹事長を不起訴として、小沢氏の資金管理団体をめぐる捜査を終結した。特捜部長は「土地購入の原資の隠ぺいを図った犯罪だ」と明言しながら、原資を明示しなかった。事件の核心部分を公表せず、「実質犯だ」と事件の悪質性を強調しても、これでは国民の納得は得られまい。

 政治資金規正法違反は決して形式犯ではない。二十億円を超える虚偽記入があれば、十分に処罰価値はあるだろう。政治資金に絡んで現職や元職の秘書が三人も逮捕、起訴された事実は重く、小沢氏の政治責任は大きい。

 規正法は資金管理団体などの収支報告書の記載について、責任を持つのは会計責任者と規定している。政治家自らが直接記入していない限り、報告書作成者との共謀を立証する必要があり、特捜部には乗り越えねばならない壁が二つあった。

 一つは、小沢氏から石川被告らへの虚偽記入の指示などを明らかにすること。もう一つは、虚偽記入しなければならなかった理由を明らかにすることだ。

 捜査の結果、前者は、小沢氏の明確な指示などを確認できなかった。問題は後者だ。原資にゼネコン資金が含まれていたため虚偽記入したとの特捜部の見立てが、正しかったのかどうか。それがはっきりしない。

 「土地購入費の原資は何だったのか」との大疑問を明らかにすることこそが、今回の捜査の最大の意義だったはずで、国民の関心もこの点にあった。

 刑事訴訟法四七条は、公判前の訴訟関係書類を公表することを禁じている。しかし、特捜部は小沢氏の事務所や複数のゼネコンも捜索した上、国会開会直前に国会議員を逮捕してまで捜査を進めた。

 これだけ影響を及ぼした捜査の結果について、刑事訴訟法を盾に口をつぐんだままでいられるはずはない。特捜部にとって有利、不利を問わず、国民に最低限の説明を果たす責務があるはずだ。

  (社会部司法キャップ・飯田孝幸)」



「特捜部は4日、約1時間20分という異例の長さにわたって記者会見を開いた」ことは、約1年間にわたり小沢氏を狙い撃ちした捜査をしておきながら、不起訴に終わったことに対する、検察批判に危機感を抱いたためでしょう。しかし、佐久間特捜部長は「土地購入の原資の隠ぺいを図った犯罪だ」と明言しながら、原資を明示しなかったのですから、結局は、何も語っていないのと同様です。

「特捜部は小沢氏の事務所や複数のゼネコンも捜索した上、国会開会直前に国会議員を逮捕してまで捜査を進めた」のですから、「これだけ影響を及ぼした捜査の結果について」国民に十分な説明をするべきです。

ともかく、検察は、公判で明らかにすると述べているようですから、おそらく、西松建設の国沢幹雄元社長の政治資金規正法違反などの事件では、冒頭陳述で、小沢氏側による「天の声」があったなどと述べたことと同じようなことを繰り広げる予定なのでしょう。

しかし、東京地裁平成21年7月17日判決は、そうした「天の声」があったといった認定はしなかったのです。「検察側が行った詳細な主張立証が、国沢被告人に対する起訴事実の立証に必要な範囲を大幅に逸脱していることが根本的な原因」と判断できるからです(郷原信郎「「無条件降伏」公判でも認定されなかった「天の声」」(日経ビジネスオンライン・2009年7月24日(金))。

そうすると、石川議員ら3人の裁判でも、裁判所は「土地購入の原資」を認定しない可能性が十分にあるのです。なぜなら、政治資金規正法は「原資」が何を問題にしておらず、単に収支報告書の虚偽記載を立証できるか否かだけが問題となっているのですから。

すでに述べたように、4億円すべてが闇献金であると思い込んで捜査したにもかかわらず、結局は、水谷建設の元幹部である水谷功・元会長の証言を基にして、5千万円だけを原資とするしかなかったのです。しかも、佐藤栄佐久前福島県知事の収賄事件(佐久間達哉特捜部長が、副部長時代に手がけた事件)では、水谷功・元会長は「実刑を回避しようと、検察から言われたままを証言した」として偽証しているのですから、他の裁判で証言としたとしても、「またしても検察側が偽証させた」と疑われることは必至です。検察は、偽証といった証拠を捏造するような行為は、いい加減にやめるべきです。




4.解説記事を幾つか紹介しておきます。

(1) 毎日新聞平成22年2月5日付朝刊1面

小沢氏団体不透明会計:小沢氏不起訴 進退、有権者が決める=政治部長・小菅洋人

 検察捜査は時の政治状況に大きな影響を与えてきた。ロッキード事件、金丸脱税事件など、検察は巨悪を眠らせない正義だった。

 野党が脆弱(ぜいじゃく)だった自民党一党支配の時代、検察の力で政界は一時的にも浄化され、与党が膿(う)んでいても実質的に選挙で政権を選べないうっぷんを晴らしてくれた。

 ところが、昨年の西松献金事件から今回の検察捜査に対して、かつてないほどの懐疑の目が向けられるようになった。

 悲惨な冤罪(えんざい)事件が起きていることや、既成の権威に対する厳しい視線が注がれ出した社会状況もあるだろう。

 もう一つ加えれば、政権交代だ。

 検察が疑いを持ち、捜査を始め、証拠を得れば立件するのは当然のことだ。しかし、自らの手で政権を代える実感を覚えた有権者は、検察捜査が政治を変えてしまうことに違和感を持ち始めたのではないか。起訴、不起訴は判断材料であっても最終的には自分たちで決めたいという思いだ。

 だからこそ政党も政治家も、常に信を失えば野党に転落してしまうという緊張感の中に身を置き、今まで以上に自浄作用を追求すべきなのだ。

 この間、小沢一郎幹事長に対して遠巻きにしか物を言えず、ただ検察やマスコミ批判を繰り返す民主党には失望した。

 今回、直接問われたのは政治資金規正法違反だが、本質的な問題は、東北地方で「天の声」と称されるゼネコンと小沢事務所の関係であり、野党時代も温存された小沢事務所の金権体質ではないか。議員の知らないところで何億ものカネが動き、政治資金で土地を買うことにも疑問を持った。

 起訴された秘書たちは集票・集金マシンの一翼を担ったとも言え、それが小沢氏の政治活動を支えてきた。監督責任が問われるのは当然だ。

 選挙に勝って数を確保し派閥化する。票とカネは、「政官業」のトライアングルの中からひねり出す--こういう旧田中派型手法と、公開を大原則にし、カネには縛られない本来の民主党の体質は相いれない。物言わぬ民主党に「小沢化」の懸念を強く持った。

 小沢氏の身の処し方も含めて、民主党の事件に向き合う姿そのものが選挙で有権者に判断されるのだと思う。

毎日新聞 2010年2月5日 東京朝刊」



(2) 毎日新聞平成22年2月5日付東京朝刊3面

小沢氏団体不透明会計:小沢氏不起訴 「大山鳴動」否めず=社会部副部長・松下英志

 小沢氏の資金管理団体を巡る今回の事件は、刑事責任が本人に及ばなくとも摘発の意義が失われるものではない。立件分以外も含めると虚偽記載は約30億円となり、関連団体との不透明な資金のやりとりも見えてきた。それでもなお、今回の捜査については「問題なし」とは言えない。

 検察は起訴権限を独占するとともに、本来は警察が担う1次捜査権まで持ち、東京地検特捜部の強大な権限は際立つ。その権限行使には慎重さが求められる一方、ひとたび発露されれば過去の実績からも、一挙手一投足に国民の注目が集まる。端的に言えば、石川議員を1月15日に逮捕したことで、焦点は「小沢氏の関与」に絞られたと言える。このため意義ある捜査にもかかわらず、「大山鳴動しながら……」との印象は否めなくなった。

 結果として小沢氏に届かない捜査で、なぜ逮捕を選択したのか。証拠関係はいったん在宅起訴の方針を決めた昨年12月28日とほぼ変わらない。特捜部は逮捕理由として石川議員の自殺の懸念を挙げたが、石川議員は15日、検察庁に近い帝国ホテルに滞在し、弁護士との連絡も取れ、翌16日の聴取に出向くことを伝えていた。むしろ、14日に初めて故意の虚偽記載を認めながら、15日の聴取予定をキャンセルしたことで、検察側が「口裏合わせ」を懸念し、一歩踏み込んだのではないか。そこに「焦り」はなかったか。

 ある特捜OBは「着手の段階でその先が見えてなければ逮捕はない」と手厳しい。加えて「小沢マネーの原資はゼネコンから流れ込んだ金との基本的な考えが検察にあるが、それがほとんど立証されていない段階で突っ込んだのではないか」と指摘する。実際に逮捕後になって後追いの家宅捜索も行われ、ゼネコン各社幹部からの広範な聴取も続いた。

 昨年の西松事件から続く小沢氏周辺への捜査も、複数の特捜OBは懸念する。「結果的に1人の政治家をターゲットにした通年捜査とみられてしまう。これでは国民に『政治的意図がある』との憶測すら生む」。長い捜査の果てに、検察への期待がしぼむことを恐れる。

毎日新聞 2010年2月5日 東京朝刊」



 イ 利権と腐敗にまみれていた自民党政権下では、自浄作用がないため、「検察の力で政界は一時的にも浄化され」るという効果があったことから、検察の捜査に賛同する国民も多かったのです。政治資金規正法を広く適用することに賛同していたのも、職務権限がありながら証拠が乏しく収賄罪で摘発できないことの補完となっていたためです。

しかし、政権交代により、今までの利権構造は断ち切られました。小沢氏が推し進めている方策を徹底すれば自民党が壊滅してしまい、今までの利権構造は完全に消滅してしまいます。要するに、有権者の力で政界を浄化できるようになったのであり、贈収賄罪や政治資金規正法を使った、検察の力によって政界を浄化していた時代は、政権交代によってもはや過去のものになったのです。

それなのに、検察は過去の栄光が忘れられないのか、その権力を振りかざしているのです。民主党が政権を獲得できたのは、小沢一郎氏の力なくしてはできなかったことであり、民主党政権はまだ安定したものとはいえません。そうした現状において、小沢氏を執拗に狙い撃ちした捜査は、結果として、利権と腐敗にまみれた自民党政治を復活させようとするものであって、国民にとっては有害なだけです。


 ロ 毎日新聞は、民主党の議員は「この間、小沢一郎幹事長に対して遠巻きにしか物を言えず」と批判しています。しかし、小沢氏が無実を主張しているのですから、それを最初から疑うように批判を繰り広げることは、刑事手続の大原則である「無罪推定の原則」に反するものであって、好ましくないのです。無罪推定の原則を無視することを当然視する毎日新聞の方こそ、常軌を逸した主張であって、極めて不当な考えです。

もっとも、前原国交相や野田佳彦財務副大臣らは、批判を繰り広げてきたのですから、毎日新聞の批判は元々的外れです。ただ、前原氏や野田氏は毎日新聞らマスコミと同様に、小沢氏の起訴を前提に話をしていたのですから、偽メール事件と同様に、またしても大恥をかいた結果に終わりました。


 ハ 「『大山鳴動しながら……』との印象は否めなくなった」とか、「結果として小沢氏に届かない捜査で、なぜ逮捕を選択したのか」などといった批判は当然のことでしょう。しかし、散々、検察と一体となって「有罪報道」を繰り広げておきながら、他人事のように検察を批判するのはまったく無責任です。

本当は、石川議員の自殺の懸念がなかったのに、特捜部は自殺のおそれがあるかのような口ぶりを記者会見で示し、毎日新聞はそのまま垂れ流しています。それなのに、毎日新聞は、「石川議員は15日、検察庁に近い帝国ホテルに滞在し、弁護士との連絡も取れ、翌16日の聴取に出向くことを伝えていた」と書くだけで、誤報であったことのお詫びをすることもありません。

今回の検察捜査に対して、かつてないほどの懐疑の目が向けられるようになった原因として、毎日新聞は「悲惨な冤罪(えんざい)事件が起きていること」をあげています。その点自体は、妥当な指摘だとはいえますが、冤罪はマスコミの「有罪報道」も原因であることを失念しているのではないでしょうか。

約1年間にわたって小沢氏を狙い撃ちした捜査をし続け、衆議院選挙前、民主党大会直前、国会開会前という議会制民主義にとって重要な事柄の前に、狙ったように捜査や逮捕を行い、国会審議を保障するための不逮捕特権(憲法50条)を潜脱した逮捕までも行ったのですから、議会制民主主義に対する挑戦と受け取られてもしかたのない捜査だったのです。マスコミは、こうした検察の異常な捜査こそ、激しく批判するべきなのです。


 ニ 政党や政治家は、あらゆる点で政治的責任や道義的責任・説明責任を負うことは確かでしょう。しかし、刑事責任が問題とされた事件で、証拠がなくて起訴できなかった場合、無罪推定の原則からすれば、被疑者は「白」であって「灰色」ではないのです。「灰色」だから疑惑が払拭できていないから「政治的責任や道義的責任」はあるなどと言うのは、無罪推定の原則を潜脱するものであって妥当ではありません

3人の秘書が逮捕・起訴されていることから、「政治的・道義的責任はある」(朝日新聞2月5日付「社説」)とする主張もあるようです。しかし、無罪推定の原則がある以上、裁判で判決が確定する前に、小沢氏が勝手に責任を取る行動をとってしまえば、それこそ3人の秘書に対して有罪視する意識を植え付けるものであって問題があります。

小沢氏の進退については、国民の代表者である議員の問題なのですから、検察が決めることでなければ、マスコミが決めることでもないのです。政権交代が可能になった以上、「有権者が決める」ことなのです。検察の謀略に惑わされ、小沢氏を政治的に失脚させて、再び利権と腐敗にまみれた自民党政治を復活させ、官僚の天下りを維持させ、社会保障をさらに減らし続け、格差社会を拡大させるのかどうか――。

検察の謀略とその謀略を垂れ流すだけのマスコミに惑わされてしまい、再び自ら首を絞める道を選ぶのか、それとも、国会審議を妨害し「説明責任」も果たさない東京地検特捜部は解体させるべく行動するかどうかも、有権者が決めることなのです。


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2010/02/09(火) 12:32:21 | ?Ģ
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