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2010/02/04 [Thu] 02:19:26 » E d i t
小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる疑惑事件については、検察庁は平成22年2月3日、政治資金規正法違反の疑いで告発されていた小沢氏を嫌疑不十分で不起訴とする方針を固めたようです。虚偽記入したとする政治資金規正法違反の罪について、小沢氏の指示や了承などを裏付ける具体的な証拠がないと判断したのがその理由とされています。

検察当局は2月3日夕方から検事総長をトップに、最高検察庁、東京高検、東京地検の幹部らが集まり、小沢幹事長についての刑事処分を決める協議を行いました。その結果、政治資金収支報告書にうその記載をしたとする政治資金規正法違反の罪について、小沢幹事長の関与を示す具体的な証拠はないと判断し、不起訴処分とする方針が固まったのですが(TBSニュース:02月03日20:04)、そうした協議をする前に方向性は決まっていたわけです。



1.報道記事を幾つか。

「不起訴の方向」という記事を出したのは朝日新聞と毎日新聞だけで、他社は特オチしています。最高検など上級庁不起訴の見通しは、「検察リーク」、それも最高検などの検察幹部からの「リーク」なのでしょうが、朝日新聞や毎日新聞だけはそうした確かな情報源からの情報を得られたようです。

(1) 朝日新聞平成22年2月3日付朝刊1面

小沢氏 不起訴の方向 検察検討 4億円不記載で
2010年2月3日3時4分

 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、検察当局は、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で刑事告発された小沢氏については不起訴処分(嫌疑不十分)とする方向で検討していることがわかった。

■石川議員は起訴の見通し

 東京地検特捜部は、同法違反容疑で逮捕した元秘書ら3人の調べを勾留(こうりゅう)期限の4日まで続け、小沢氏と併せて処分を最終決定する方針だ。実務を担当した元秘書の衆院議員・石川知裕(ともひろ)容疑者(36)と、会計責任者だった公設第1秘書・大久保隆規(たかのり)容疑者(48)を4日に起訴する見通し。元秘書の池田光智容疑者(32)については関与の度合いを慎重に検討するとみられる。

 検察当局は、小沢氏に虚偽記載の認識などがあったかどうかの解明を進めてきた。だが、陸山会が土地を購入した原資4億円などを政治資金収支報告書に記載しなかった行為に小沢氏が関与した証拠は2日の時点では不十分とみている模様だ。

 一方、石川議員と池田元秘書は故意に虚偽の記載をした事実を認め、「大久保秘書にも報告した」と供述していたが、大久保秘書も最近になって、事実と違う記載をする旨の報告を受け了承したことを認めたことが判明した。大久保秘書は当初、「2人に任せきりで報告も来ていない。会計責任者としての報告書の署名も代筆だ」と関与を否定していた。

 ただ、石川議員ら3人は、虚偽記載に対する小沢氏の明確な関与や、4億円の原資にゼネコン側からの裏金が含まれることは否定しているという。

 3人は2004年10月、原資不明の計4億円で東京都世田谷区の宅地を約3億5千万円で購入し、07年に同額の4億円を小沢氏に戻すなどした収支を報告書に記載しなかった疑いが持たれている。小沢氏に対しても、都内の市民団体から告発状が提出されていた。」



「共犯」証拠不十分か

 検察当局は、小沢氏の立件の可否を判断するうえで、土地取引に絡む資金の出し入れなどを行った石川議員の供述を最も重視してきた。

 陸山会は、04年10月に原資不明の4億円で土地代金3億5千万円を支払った直後、預金担保を組み合わせた4億円の融資金を小沢氏個人が転貸するなど複雑な資金操作をしていた。東京地検特捜部は、これらは本来の4億円の原資を隠すための工作とみて捜査。中堅ゼネコン「水谷建設」元役員らが、「胆沢(いざわ)ダム」(岩手県奥州市)工事の受注謝礼として04年10月に裏金5千万円を石川議員に渡したと供述したため、4億円にこの5千万円が含まれる可能性があるとみて調べてきた。

 土地取引を進める中で、小沢氏と石川議員との間で、当時「土地購入原資に裏金が含まれるため、政治資金収支報告書に虚偽を記載する」といった動機面での謀議を裏付けるやりとりがあった場合、小沢氏も虚偽記載の共犯となる関係が成立する可能性が出てくるため、その解明に力を注いだ。

 しかし、石川議員は自ら虚偽記載をした事実は認めながらも、小沢氏の関与やゼネコン側からの裏金5千万円の受領を否定した。

 さらに、小沢氏が4億円は東京・湯島の自宅を売約した際の残金と家族名義の口座から引き出した「個人資産」と主張。石川議員も「活動資金が不足するため、小沢氏に相談して個人資産を借りた」と説明した。銀行融資の書類に署名するなど小沢氏が関与している部分もあるが、虚偽記載について小沢氏は、任意聴取に秘書の「独断」として自らの関与を否定しているという。

 特捜部は捜査を続けたが、現時点では、小沢氏側の主張を覆す証拠は得られていない模様だ。こうした状況から、小沢氏が虚偽記載に加担した証拠は十分に認められないとの見方を強めつつある。」



(2) 毎日新聞平成22年2月3日付朝刊1面

小沢氏団体不透明会計:小沢氏、不起訴の方向 虚偽記載、容疑不十分--東京地検

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件で、検察当局は政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で告発された小沢氏を容疑不十分で不起訴処分とする方向で検討を始めた模様だ。東京地検特捜部は最高検など上級庁と協議のうえ最終判断する。小沢氏については政治資金収支報告書に記載されなかった4億円を提供するなど一定の関与は認められるものの、現時点では虚偽記載の罪に問える明確な証拠がなく、刑事責任の追及は困難との見方を強めているとみられる。

 一方、特捜部は同法違反容疑で逮捕した当時の事務担当者で民主党衆院議員、石川知裕(36)と当時の会計責任者で公設第1秘書、大久保隆規(48)両容疑者について、拘置期限の4日、起訴する方針を固めた。石川議員の後任の事務担当者で元私設秘書、池田光智容疑者(32)は関与が従属的な面もあり、さらに検討するとみられる。

 これまでの特捜部の調べによると、石川議員は大久保秘書と共謀して04年10月、小沢氏から手持ち資金4億円を受領し東京都世田谷区の土地(代金約3億5200万円)を購入したのに、04年分の陸山会の収支報告書に記載せず、池田元秘書は大久保秘書と共謀して07年4月、小沢氏に4億円を返済したのに07年分の収支報告書に記載しなかったなどとされる。

 陸山会は土地購入直後に別の4億円で定期預金を組み、それを担保に小沢氏名義で同額の融資を受けたが、特捜部は小沢氏の4億円を隠す偽装工作とみている。小沢氏はこの融資の関係書類に署名していた。さらに、小沢氏が大久保秘書らに土地購入を指示して土地を選定しているうえ、石川議員と池田元秘書が「陸山会の総収入や支出を小沢氏に報告した」と供述したことなどから、虚偽記載への関与を捜査していた。

 しかし、大久保秘書と石川議員、池田元秘書は自らの容疑を認める一方、いずれも小沢氏の積極的な関与を否定。小沢氏は1月23日の任意聴取で「実務は秘書に一切任せていた」などと話し、同31日の再聴取でも同様の説明をしたとみられる。特捜部は、これらを覆す供述や物証が得られなければ、小沢氏の刑事責任追及は困難との見方を強めている模様だ。

毎日新聞 2010年2月3日 東京朝刊」



(3) 時事通信:2010/02/03-19:00

小沢氏、不起訴の方針=関与立証、困難と判断-4日、嫌疑不十分・東京地検

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は3日、小沢氏を不起訴処分とする方針を固めたもようだ。最高検などと同日協議した結果、衆院議員石川知裕容疑者(36)らとの共謀について、立証が不十分と判断したとみられる。
 特捜部は、拘置期限の4日に石川容疑者と小沢氏の公設第1秘書大久保隆規容疑者(48)を起訴し、小沢氏を嫌疑不十分で不起訴処分とする方針。元私設秘書池田光智容疑者(32)については、関与の程度を慎重に検討し、処分を決める。
 特捜部は1月23日と31日の2回、小沢氏から任意で事情聴取。同氏は「秘書が独断でやったことで、(虚偽記載は)知らない」などと関与を全面否認した。
 関係者によると、石川容疑者は調べに対し、「政治資金収支報告書に4億円の収入を記載しないことを、小沢氏に提出前に報告し、了承を得た」と供述したという。
 同容疑者はまた、陸山会が土地購入直後に受けた銀行からの融資について、「資金の出どころを隠す偽装工作だった」と供述。小沢氏は、この融資の関係書類に署名するなど、手続きに直接かかわっていた。特捜部は、こうした証拠を総合的に検討した上で、最高検など上級庁と協議。その結果、小沢氏が積極的に虚偽記載を指示したという供述は得られておらず、大久保、池田両容疑者が小沢氏の関与を否定していることなどから、公判で有罪を立証することは困難と最終判断したもようだ。
 特捜部は、報告書に記載されなかった4億円には、中堅ゼネコン「水谷建設」からの5000万円の裏献金が含まれるとみているが、石川容疑者は受け取りを否定しているとされる。(2010/02/03-19:00)



 
2.「報道機関は、小沢一郎・民主党代表に対する「捜査の意味」を明快に説明するべきでは?(朝日新聞平成22年1月25日付夕刊より)」(2010/01/26 [Tue] 03:52:03)において、すでに「『いずれは小沢幹事長が逮捕されるのではないか』と勘違いしている市民も多いのではないでしょうか」と書いておきました。

マスコミ報道の雰囲気は、小沢一郎氏を逮捕・起訴する方向だったのでしょうが、市民を勘違いさせていただけで、元々、小沢一郎氏を逮捕・起訴する見通しはほとんどなかったわけです。「有罪報道」で熱狂していたマスコミ報道に惑わされることなく、冷静に判断できていた方にとっては、予想通りの結果になったといえるでしょう。


(1) これらの記事を読むと、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたとする政治資金規正法違反の罪について、小沢幹事長が「共謀していない」という具体的証拠があり、検察にはそれを覆す十分な証拠がないばかりか、「共謀した」とする具体的な証拠(物証、人証)がほとんどないことが、不起訴処分の理由であることが分かります。

 「検察当局は、小沢氏の立件の可否を判断するうえで、土地取引に絡む資金の出し入れなどを行った石川議員の供述を最も重視してきた。(中略)
 しかし、石川議員は自ら虚偽記載をした事実は認めながらも、小沢氏の関与やゼネコン側からの裏金5千万円の受領を否定した。
 さらに、小沢氏が4億円は東京・湯島の自宅を売約した際の残金と家族名義の口座から引き出した「個人資産」と主張。石川議員も「活動資金が不足するため、小沢氏に相談して個人資産を借りた」と説明した。銀行融資の書類に署名するなど小沢氏が関与している部分もあるが、虚偽記載について小沢氏は、任意聴取に秘書の「独断」として自らの関与を否定しているという。
 特捜部は捜査を続けたが、現時点では、小沢氏側の主張を覆す証拠は得られていない模様だ。こうした状況から、小沢氏が虚偽記載に加担した証拠は十分に認められないとの見方を強めつつある。」(朝日新聞)


 「大久保秘書と石川議員、池田元秘書は自らの容疑を認める一方、いずれも小沢氏の積極的な関与を否定。小沢氏は1月23日の任意聴取で「実務は秘書に一切任せていた」などと話し、同31日の再聴取でも同様の説明をしたとみられる。特捜部は、これらを覆す供述や物証が得られなければ、小沢氏の刑事責任追及は困難との見方を強めている模様だ。」(毎日新聞)


「検察当局は、小沢氏の立件の可否を判断するうえで、土地取引に絡む資金の出し入れなどを行った石川議員の供述を最も重視」とあることから分かるように、今回の捜査の問題点の1つは、物証そっちのけで、異常なほど自白を偏重しすぎていた点です。

検察庁は、石川衆院議員を逮捕する前から、長時間にわたって検察庁の筋書き通りの供述を強要していましたし、逮捕後も依然として自白を強要していたのです。鈴木宗男・衆院議員は、週刊朝日2010年2月12日号19頁において次のように話していることからも分かります。

「弁護士から聞いたところ、いま検察は石川知裕議員に“虚偽の自白”を要求しているという。石川議員は、担当検事からこう言われているというのです。
 「石川さん、あなたが水谷建設から5千万円をもらっていないのはわかっている。しかし、特捜部長ら上層部はもらっていると見ている。あなたは、政治資金収支報告書の処理についてウソをついている。これを認めないと、私も上の考えに引きずられてしまう」
 そういって、“理解者”のふりをして揺さぶっている。だから、取り調べの可視化が必要なんですよ。」


こうして検察は、“虚偽の自白”を強要し続けているものの、小沢氏の関与やゼネコン側からの裏金5千万円の受領を否定しているようですし、また、小沢氏も共謀を否定しているのですから、「共謀した」という供述証拠がまったくないわけです。

仮に石川議員から「共謀」らしき供述を得られたとしても、指示をした日時・場所の具体性が必要となります。(具体的な行為についての)「虚偽記入」の共犯といえるためには、共犯といえるだけの要件(共謀ないし教唆行為)、すなわち、特定の虚偽記入に関して(指示をした日時・場所も特定して)具体的な指示が必要だからです。曖昧な指示の存在だけでは(共謀ないし教唆行為といえず)共犯といえるだけの要件を欠いてしまいます。

記事を読む限り、指示をした日時・場所を示すような物証(メモなど)は発見できなかったようですし、しかも石川議員や小沢氏の「共謀した」との供述さえもないのですから、元々、小沢氏を起訴して有罪となる見込みはほとんどなかったといえそうです。



(2) 記事では、「小沢氏の指示や了承などを裏付ける具体的な証拠がない」という立証の困難さが、不起訴処分の理由のようです。しかし、証拠だけでなく、元々、元秘書らと小沢氏との間で「共謀」自体が存在していなかったのではないでしょうか? 

 イ 週刊朝日2010年2月12日号18頁以下での「鈴木宗男(衆院議員)×藤本順一(政治ジャーナリスト)×上杉隆(ジャーナリスト)『小沢捜査の争点』」では、次のような話がなされています。

鈴木 一般の人にはなかなか理解してもらえないでしょうが、私自身、中川一郎先生の秘書だったときは、やはり5億、6億というお金を預かっていました。しかし、先生への報告は収支報告書の1枚目程度の内容です。収入がいくらで支出がいくら、翌年の繰り越しがいくらというだけで、細かい収支は見ていませんよ。

上杉 私も、鳩山邦夫議員の秘書をしていた経験から、その状況はわかります。

鈴木 先生から「ちゃんとやってるな?」と聞かれたら、「はい、間違いないです」。それで終わりです。当然、先生に迷惑をかけようと思って事務処理なんてしませんから。
 しかし、やはり後になって領収書の日付がずれていたり、数字が違ってたりすれば、修正しなくてはいけない。いずれにしても、隣に一時借りて、また後援会でカネが集まったら戻すなんていうやりくりは、当たり前のことなんですね。

上杉 小沢さん自身、1月23日の事情聴取後の会見で、「収支や残高の報告は受けたが、収支報告書や帳簿は見ておらず、内容は確認していない」と説明していますね。

鈴木 それと、ある程度の政治家になると、政治資金を手元に何千万円か置いておくものです。それは、借りにくる政治家もいるし、また、いつ選挙があってもいいように、ストックをしておく必要があるからなのです。」



小沢氏は1月23日の任意聴取で「実務は秘書に一切任せていた」などと話し、同31日の再聴取でも同様の説明をしたとみられていますが、検察はそれを疑問視し「共謀した事実」を隠していると疑っているわけです。しかし、鈴木宗男さんや上杉隆さんの発言で分かるように、実際の運用状況からすれば、小沢氏の発言は少しもおかしなことではないこと分かります。


 ロ もっとも、小沢氏の説明が実際の運用状況と一致していたとしても、「政治資金規正法上は、小沢氏の資金であろうとなかろうとすべて正確に記載するべきであって問題ある行為である」という意見もありえます。おそらく、検察側はそうした解釈をしていると思われます。

しかし、そうした検察側の解釈は、所管省庁である総務省の説明と異なる独自の見解であって採用は困難です。郷原信郎・名城大学教授は、「ニュースを斬る」(日経ビジネスオンライン・2010年2月2日(火))で総務省の回答を引用しつつ、次のように説明しています。

検察の「暴発」はあるのか(上)
郷原信郎が読み解く陸山会政治資金問題の本質

郷原 信郎 【プロフィール】

 昨年10月以降、新聞等でたびたび報道されてきた小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の不動産取得をめぐる政治資金問題は、1月13日に同会の事務所の捜索等の強制捜査、15日には、小沢氏の元秘書で同会の会計担当者だった石川知裕衆議院議員ら3名が逮捕されるなど、年明けから東京地検特捜部の捜査の動きがにわかに本格化し、23日には、小沢氏本人の事情聴取が行われた。

 昨年9月の政権交代後初めての通常国会をめぐる政局を大きく揺るがしてきたこの問題も、2月4日の石川議員らの勾留満期という大きな節目を迎える。報道されているように、検察が小沢氏の再聴取を見送る方針だとすれば、捜査は最終局面に入ったと言えよう。

 しかし、検察の捜査が順調に進んでいるとは言い難い。通常国会の3日前の夜に突然逮捕された石川氏の逮捕容疑の政治資金規正法違反事件は果たして現職の国会議員を起訴できるだけの事実なのか。小沢氏自身の逮捕または在宅起訴はあり得るのか。今回の捜査と処分が今後の政権にどのような影響を与えるのか。一方で、極めて重大な政治的影響を与えた検察捜査の結果が予想に反するものとなった場合に、検察の組織は今後どうなるのか。現時点までに報道等で明らかになっている事実を基に考えてみることとしたい。

未成熟な政治資金の会計処理

 まず、今回の問題を考える上で認識すべき根本的問題として、政治資金の収支の公開に関する会計処理が、企業会計や税会計などとは異なり、その基本原則すら確立されておらず会計処理の実務が未成熟で、資金管理団体の銀行口座の膨大な数の入出金のうち、どの範囲のものを政治資金収支報告書に記載すべきかについて明確なルールができていないという実情がある。

 政治資金収支報告書に記載が求められているのは、政治団体の銀行口座、現金の入出金すべてではない。例えば、総務省のQ&Aでも述べられているように、政治団体の職員が経費の立替え払いを行って後日精算したような場合は、職員と政治団体との入出金を記載する必要はなく、政治団体が直接支払ったような処理を行うことになる。

 政治資金規正法が「政治資金の収支の公開」を求める趣旨・目的は、政治活動の資金が、どのような個人、企業・団体から提供されているのか、政治資金がどのような用途に支出されているのか、について国民に正確な情報を開示し、その情報に基づいて国民が有権者として主体的な政治選択を行うことであり、収支報告書の作成・提出はそのために行われるものだ。

 今回、問題とされている不動産購入をめぐる政治資金収支報告書の記載について、マスコミ報道は、陸山会の口座のすべての入出金が収支報告書に記載されるべきで、それが一つでも異なっていると、すべて不記載ないし虚偽記入になるとの考え方を前提にしているように思われるが、それは政治資金規正法についての基本的理解を欠くものだ。」



「総務省」の「政治資金監査に関するQ&A(その4)資料3」(PDF)には、小沢一郎氏側が説明するような立替払いをした事例につき、総務省は次のような回答をしています。

ご質問:政治団体の事務職員が立替払で物品を購入し、その後、政治団体から物品購入相当分の精算を受けた場合、支出の年月日及び支出を受けた者はどのように記載することになるのか。

回答:政治団体の事務職員が立替払いで特定の物品を購入し、その後、政治団体から物品購入相当分の精算を受けた場合は、この精算は、政治団体内部の事務処理として、政治団体の事務職員に渡したものであると考えられます。したがって、支出を受けた者は、事務職員ではなく、物品を購入した相手方が記載され、また支出の年月日は、物品購入時点が記載されることになります。」


要するに、立替払いをしたときは、政治団体内部の問題として処理してよい、「政治団体の職員が経費の立替え払いを行って後日精算したような場合は、職員と政治団体との入出金を記載する必要はなく、政治団体が直接支払ったような処理を行うことになる」(郷原氏)わけです。

こうした総務省の説明からすれば、石川氏がすべての収支を記載していなくても適法であり、小沢氏が「実務は秘書に一切任せていた」としても適法な行為を石川氏に委ねていただけであって、何ら問題はないはずです。こうしたことから、
元々、政治資金規正法違反につき、元秘書らと小沢氏との間で(違法な行為の)「共謀」自体が存在していなかったといえそうです。 




3.朝日新聞の記事によれば、石川議員は起訴の見通しとされています。

(1) しかし、先に述べたように、総務省による政治資金収支報告書の記載の仕方に関する説明からすれば、証拠の有無の問題どころか、政治資金規正法の法解釈の見地から、石川議員は無罪となる可能性が高いといえそうです。東京地検特捜部とマスコミは、総務省の説明を知らずに「暴走」していたのでしょうが、その「暴走」の責任をどのように言い訳をするつもりなのでしょうか。

捜査機関は、犯罪を犯したと疑われる者に対して捜査をする権限があるのですから、小沢氏を疑い、捜査をすること自体は何ら問題はありません。しかし、自白の強要、無罪証拠の隠蔽・証拠の捏造を原因とした多くの冤罪事件が発生していることから分かるように、捜査機関の捜査がすべて適法・適正であるはずがないのですから、検察側が完全に正しいかのような偏った報道、小沢氏を含めた3人の元秘書を有罪視する報道はするべきでなかったのです。

マスコミは、いつも無罪推定の原則を失念して、「熱狂報道」に走ってしまい、また、権力に対する批判という報道機関の役割を失念してしまい、検察を妄信してしまう以上、市民の側が検察及びマスコミに対して、警戒感をもって望むしかありません。



(2) そこで、 【小林節・慶応大学教授の『一刀両断』】(大阪日日新聞)(平成22年1月26日付及び2月2日付)を紹介しておきます。

 イ 【小林節・慶応大学教授の『一刀両断』】(大阪日日新聞)(平成22年1月26日付)

「無罪の推定」の原則
2010/1/26

 憲法31条は、「何人も、法律の定める手続きによらなければ、…刑罰を科せられない」と規定している。

 これは「法定適正手続きの保障」と呼ばれ、私たちは誰であれ、「犯罪者」だと疑われた場合、その犯行が客観的事実により証明されない限り犯罪者だとはされない…という人権が保障されている。

 だから、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有」し(37条1項)、さらに、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」(38条1項)ことになっている。

 つまり、これが「無罪の推定」の原則である。

 ところが、今のわが国では、言論界で、この原則が逆転してしまっているように見える。

 1月23日の東京地検特捜部による事情聴取以後、「被疑者」(被告人の一歩手前)となった小沢一郎民主党幹事長に対して、論壇主流は、「説明が不十分である」「潔白が証明されていない」と批判を向けている。

 しかし、話は逆である。

 伝聞によれば、検察当局が、法と証拠に照らして、小沢幹事長に「汚職」の疑いがあると判断した…ことは多としたい。しかし同時に、当の小沢幹事長がそれを、公然と、全面的に否定している以上、その嫌疑を立証する責任は検察当局の側にある。これが憲法上の原則である。

 もちろん、検察による立証は、いわゆる「マスコミ・リーク」により世論の中で行われるべきものではなく、あくまでも、公開の法廷で主権者・国民の監視の下、堂々と、事実と論理を示して行われるべきものである。

 だから、今、小沢幹事長と検察という両当事者を除く、マスコミを含むその他国民(つまり私たち)は、事態の推移を冷静に見守るべきで、思い付きのような論評を加えるべきではない。

 政治的に民主党と先鋭に対立する自民党が民主党には自浄能力がない…と決め付けるのは、戦略的にあり得ると思われる。しかし、公正な報道を旨とするメディアがそれを言ってしまっては、それはもはや報道ではなく、政争の当事者になってしまう。

 石川知裕衆院議員の拘留期限が来れば検察の処分も明らかになる。それまでは、実は「小沢事件」の争点も定まってはいない。だから、論評はそれから始めればよい。

 (慶大教授・弁護士)」



 ロ 【小林節・慶応大学教授の『一刀両断』】(大阪日日新聞)(平成22年2月2日付)

だれが立法者なのか?

2010/2/2

 小沢一郎民主党幹事長にまつわる政治献金疑惑に関するテレビ討論に参加して、不可解な問題を発見した。

 それは、政治資金規正法を作った(そして作り直すこともできる)国会議員たちが、それを運用(適用)する検察官(であった弁護士)たちに対して、不安げに、どうしたら違反になるか?と尋ねている事実である。

 政治資金規正法に限らず、それに違反したら刑罰を科せられる法令については、憲法(31条)の要請として、その内容が明確でなければならない…とされている。それは、思えば当然で、何をしたら犯罪になるかならないかの基準がはっきりしない社会では、私たちは、いつ捜査当局の恣意(しい)で摘発されるか分からず、不安の中に生活し続けなければならないことになる。だから、文明諸国に共通する法原則のひとつとして、明白性の原則があり、刑罰法令は、国民にとって、行為前に、許される行為の限界をはっきり示していなければ、いわば「落し穴」(罠)で、危険であるから、違憲・無効とされる。

 だから、政治資金規正法に従って資金の収支を公開した報告書に誤記載があった場合に、かつては「修正」で済んでいたものが、ある時期から、それは故意(悪意)の虚偽記載だと疑われ、家宅捜索を受け担当者が逮捕され拘置されて取り調べを受ける…と、(立法を経ずに)法律の内容が変更されたとしたら、政治家と秘書はたまったものではない。

 時々、報道で、政治資金規正法に対する検察の考えがある時点で変わった…と言われる。しかし、それはおかしい。

 刑罰を科されることは、即ち、人権を剥奪(はくだつ)されることである。だからこそ、その根拠は、人権の持ち主である主権者・国民の直接代表たる国会が定めた法律でなければならず、法律を一次的に執行する行政庁の考えの変更であってはならない。これが法治主義の大原則である。

 今回の小沢献金疑惑を大きな教訓として、国会は、党派を超えて、政治献金の取り扱いについて、できる限り検察に大きな裁量の余地を残さない、明確な基準を定めるよう真剣に努力すべきであろう。

 その際に、過大な会計事務が政治活動の障害にならぬよう、実態に即した安直な基準を立て、その他の点は選挙による判断に委ねる制度にしたら良いはずだ。

 (慶大教授・弁護士)」




(3)イ 捜査段階の被疑者も、公判段階の被告人も、いまだ犯罪者と確定されたわけではありません。刑事手続では、「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する」(人権B規約14条2項)のです。この「無罪の推定」(憲法31条、刑訴法336条)は、刑事手続のすべての段階において妥当する原則なのです(田口守一『刑事訴訟法(第5版)』(弘文堂、平成21年)20頁)。

マスコミが小沢氏に対して「説明が不十分である」「潔白が証明されていない」と批判を向けていたとしても、「話は逆」なのです。「その嫌疑を立証する責任は検察当局の側にある」のであって、「これが憲法上の原則」なのです。市民の側は、憲法上の原則に反したマスコミの主張は断固として拒絶し、批判的な目を向けるべきです。


 ロ マスコミは、現在は政治資金規正法で逮捕・起訴するようになってきていると報道し、そうした検察による法運用を無批判に受け入れてしまっています。

しかし、「刑罰を科されることは、即ち、人権を剥奪(はくだつ)されることである。だからこそ、その根拠は、人権の持ち主である主権者・国民の直接代表たる国会が定めた法律でなければならず、法律を一次的に執行する行政庁の考えの変更であってはならない」のです。「何をしたら犯罪になるかならないかの基準がはっきりしない社会では、私たちは、いつ捜査当局の恣意(しい)で摘発されるか分からず、不安の中に生活し続けなければならないことになる」こと自体が、おかしなことなのです。

こうした「法治主義の大原則」からすれば、検察という一行政機関の、一種の恣意的な法運用を無批判に受け入れることはやめるべきです。市民の側は、法解釈や法運用は、国民の直接代表たる国会にこそ権限があることを自覚し、検察による恣意的な法解釈や法運用を排除するべく、国会による明確な基準を作ることを要求するべきです。官僚主導だった自民党政権と異なり、民主党政権では市民の声を反映した政治主導での法改正が可能でしょう。


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推定無罪の原則
立証義務を果たせなかったのは検察であって、小沢氏に批判を向けるのは明らかに筋違い。 自分達が思い込んだ主観通りの結果にならなかったからと言って、次は道義的責任を持ちだして来るマスコミはなんなんだろうかって思う。

野党は更に証人喚問とか参考人招致をやろうとしてますが、何を基にして証人喚問するんでしょうかね? 立法府はいつから司法府を兼ねる様になったんでしょうか・・
やったところで、検察に話した事と同じ事しかしゃべる訳ないですよ。 それで検察は不起訴にした訳ですから。 正に時間の無駄だし、立法府の意味をはき違えてます。

ただ、この手の話しは民主党が野党だった時代にも言える事です。 三権分立の原則に基づいて国の仕組みが成り立っている以上、司直の手に委ねるべき事は委ねて立法府はその義務を遂行する事が一番大事な事だと思います。
2010/02/08 Mon 17:23:31
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2010/02/04(木) 12:02:41 | ?Ĺ
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2010/02/05(金) 22:15:30 | ???ξ?
 所謂「西松問題」から約1年の長きに渡って続いた民主党小沢幹事長の失脚を狙った東京痴犬特騒部の暴走であるが、4日ついに 小沢幹事長は「不起訴」石川衆院議員等3名が政治資金規正法違反(虚偽記載)で起訴という事で一つの転換点 を迎えた。  国家公務員法違反の?...
2010/02/06(土) 00:10:53 | ステイメンの雑記帖 
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2010/02/06(土) 01:33:58 | SEOХå??å???ŪHTMLκ?????-???
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2010/02/15(月) 12:07:32 | μ??
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