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2010/01/17 [Sun] 23:58:53 » E d i t
小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」が2004年に取得した土地の購入原資4億円が政治資金収支報告書に記載されていない事件で、東京地検特捜部は平成22年1月15日夜、いずれも小沢氏の元秘書で同会の事務担当者だった、衆院議員の石川知裕(ともひろ)さん(36)=同党、北海道11区=と池田光智さん(32)を、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕しました(朝日新聞平成22年1月16日付朝刊)。

会計責任者だった公設第1秘書・大久保隆規(たかのり)さん(48)=公判中=についても同容疑で逮捕状を取っており、16日午前、政治資金規正法違反容疑で大久保容疑者を逮捕しました。

東京地検特捜部は平成22年1月13日、政治資金規正法違反容疑で、東京都港区の陸山会事務所や元赤坂の小沢氏の個人事務所、同会の事務担当だった民主党の石川知裕衆院議員(36)=北海道11区=の議員事務所、大手ゼネコン鹿島の本社など約十カ所を一斉に家宅捜索していました(東京新聞2010年1月14日朝刊)。そうした強制処分だけでなく、身柄を拘束した上での供述を得ようとしたわけです。言い換えれば、任意提出や捜索差押えよる客観的証拠での立証を半ば諦め、任意性が保障された任意での事情聴取を止めて、身柄の拘束下での自白の強要という手段に踏み切ったのです。



1.平成22年1月15日夜での民主党・衆院議員の逮捕という事態は、1月16日民主党大会が開会される直前という時期にぶつけたものであるばかりか、1月18日から通常国会が開会される直前という、議会制民主主義にとって極めて重要な時期に国会議員を逮捕したということで、極めて異常な捜査といえます。国会会期中の国会議員逮捕には、憲法50条により不逮捕特権が保障されているため、国会に逮捕許諾請求を提出して議決を得る必要があることから、その不逮捕特権を没却するやり口だからです。

そこで、まず、憲法50条の不逮捕特権と関連する規定について触れておきます。

日本国憲法

第50条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」


国会法

第33条 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。

第34条 各議院の議員の逮捕につきその院の許諾を求めるには、内閣は、所轄裁判所又は裁判官が令状を発する前に内閣へ提出した要求書の受理後速かに、その要求書の写を添えて、これを求めなければならない。

第34条の2 内閣は、会期前に逮捕された議員があるときは、会期の始めに、その議員の属する議院の議長に、令状の写を添えてその氏名を通知しなければならない。
 2 内閣は、会期前に逮捕された議員について、会期中に勾留期間の延長の裁判があつたときは、その議員の属する議院の議長にその旨を通知しなければならない。

第34条の3 議員が、会期前に逮捕された議員の釈放の要求を発議するには、議員20人以上の連名で、その理由を附した要求書をその院の議長に提出しなければならない。」



(1) 東京新聞平成22年1月16日付朝刊

◆現職議員7年ぶり 不測の事態恐れ一気

 東京地検特捜部が現職国会議員を逮捕したのは、二〇〇三年三月に政治資金規正法違反容疑で、坂井隆憲元衆院議員=有罪確定=を逮捕して以来、約七年ぶり。

 特捜部が、石川知裕容疑者の逮捕に踏み切ったのは、十四日に任意聴取した際、精神的に不安定な様子を見せていたことなどが理由の一つとみられる。過去の特捜部による捜査の過程で、関係者が自殺に追い込まれるケースが相次いだことも背景にありそうだ。

 特捜部による捜査の過程では、一九九八年二月、新井将敬衆院議員(自民)が東京都港区のホテルで自殺。新井氏は株取引をめぐり、日興証券(当時)から巨額の利益供与を受けた疑いが浮上、逮捕許諾請求が国会で議決される直前だった。

 緑資源機構の談合事件の捜査が続いていた〇七年五月には、同機構の発注業務で影響力を持っていたとされた松岡利勝農相(自民)が、港区の議員宿舎内で自殺した。

<国会議員の逮捕> 現職の国会議員は憲法50条の規定で、国会の会期中は現行犯を除いて、逮捕されない特権を持つ。会期中は捜査当局が国会に逮捕許諾請求し、犯罪にかかわった疑いがある議員が所属する議院が、逮捕許諾決議案を可決した場合は逮捕できる。今回の石川知裕衆院議員のように国会の会期前に逮捕された場合でも、石川議員が所属する衆議院が釈放の決議をすれば、捜査当局は会期中に石川議員を釈放しなければならない。」



(2) 日経新聞平成22年1月16日付朝刊38面

会期中なら不逮捕特権 議院要求あれば釈放も

 国民から選ばれた国会議員に対する不当な干渉を防ぐため、憲法50条は国会会期中の不逮捕特権を規定、その身分を保障する。所属する議院が逮捕許諾請求を認めた場合などを除き逮捕されないだけでなく、石川議員のように、会期前に逮捕された場合は所属する衆参いずれかの議院の要求があれば、会期中は釈放しなければならないと定めている。

 釈放要求は、国会法に基づき、所属する議院(石川議員の場合は衆院)の議員20人以上の連名で理由を示した要求書を議長に提出し、議決することが必要。また同法は、会期前に逮捕された議員がいる場合、内閣が議長に通知することを義務付けている。」



 イ 「全国民の代表」である国会議員は、国会での自由な活動を保障するため、不逮捕特権(憲法50条)が保障されています。この不逮捕特権の目的は、行政権による不当逮捕から議員の身体の自由を守り、議員活動への妨害を排除し、議院の審議権を確保する点にあります(戸波江二「憲法(新版)」374頁以下)。

行政権による不当逮捕はいかなる名目を使ってでも逮捕勾留を行ってきたのが歴史的事実ですから、国会法は、具体的な犯罪の中身を定めることはせずに、きわめてシンプルに「院外における現行犯罪」に限定しており、それ以外の場合はすべて「院の許諾」に委ねることとしています(国会法33条)。

この不逮捕特権を潜脱するために、(逮捕許諾請求を必要としない)会期直前に逮捕することもありうるため、会期前逮捕に対する釈放要求権も認められています(憲法50条後段、国会法34条の3)。ですから、議院による釈放請求は、会期中での不逮捕特権の保障の趣旨を徹底する意味をもつわけです。


 ロ 今回の事件のように会期直前の逮捕は、不逮捕特権を潜脱するものです。ですから、所属する議院(石川議員の場合は衆議院)の議員20人以上の連名で理由を示した要求書を議長に提出し、衆議院は釈放の決議を行うことにより、会期中に石川議員を釈放させるというのが本来のあり方といえます。

本来、不逮捕特権が予定していた事態は、政府の意向を受けた捜査機関が不当逮捕を行う場合なのですが、今回の事件は、政府の意向に反するばかりか、長期間にわたり執拗に民主党政権を捜査し続け、挙句の果てに与党幹事長の元秘書を3人も逮捕するという、現在の政府が転覆しかねない捜査であって、極めて異常な事例です。

不逮捕特権が予定していた事態とは異なりますが、経済・雇用政策、社会保障に専念しなければならない通常国会を混乱させ、議院の審議が大きく阻害されるという点で不逮捕特権を行使すべき場合と共通する以上、議会制民主主義の維持を図ることを表明するため、衆議院は釈放の議決をするべきです。



2.報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞2010年1月16日東京朝刊3面

クローズアップ2010:石川衆院議員逮捕(その1) 通常国会目前の激震
 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件は15日夜、元秘書で同党の衆院議員、石川知裕容疑者(36)ら2人が逮捕される事態に発展した。通常国会開会を3日後に控え、国会審議に影響必至のタイミング。東京地検特捜部が決断した背景には、石川議員の不可解な供述や小沢氏の聴取拒否に加え、キーマンの失跡など「捜査上やむを得ない事情」(検察関係者)があった。【岩佐淳士、大場弘行、北村和巳】

 ◇キーマン見失い決断 検察、不測の事態を防止

 一斉捜索から一夜明けた14日。特捜部は事件のキーマンである小沢氏の元私設秘書、池田光智容疑者(32)と連絡が取れないでいた。「自殺したのではないか」。内部に不安が広がった。不測の事態が起これば、事件の根幹が揺らぎかねない。

 検察当局にとって当初から、予期しない事態の連続だった。当初、任意捜査を原則に捜査を進めてきたが、12月27日の石川議員の事情聴取でもくろみが外れた。石川議員は事実経過は認めたものの「記載ミス」だと主張した。政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑の立件には故意、つまり意図的な虚偽記載であることを立証する必要がある。石川議員側は大筋で事実関係を認めたつもりでも、検察サイドには否認と映った。

 しかし、供述は年が明けても変わらない。中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)の元幹部は特捜部に、04年10月、石川議員と東京都内のホテルで会い、5000万円を渡した▽05年4月、当時の会計責任者で公設第1秘書の大久保隆規被告(48)=公判中、逮捕状=に同じホテルで5000万円を渡した、と説明した。石川議員も大久保被告も否定したが、04年の5000万円授受に近接した時期、陸山会には同額の入金記録があった。

 石川議員の説明は「小沢氏から4億円の手持ち資金を借り、土地を購入した」という内容。特捜部は資金を出したとされる小沢氏に説明を求めるため5日、任意聴取を要請した。しかし、小沢氏からは明確な返事がないまま。12日の記者会見でも「捜査中」を理由に小沢氏が説明を避けた。「このままでは真相解明できない」。家宅捜索を決断した。

 ただこの段階でも、石川議員本人に対しては任意捜査を継続する意向だった。通常国会が始まる18日以降は憲法上、議員に不逮捕特権が保障され、検察は逮捕前に衆議院に逮捕許諾請求をし許諾決議案が可決されてやっと逮捕できる。わずか3日前の15日というギリギリのタイミングで逮捕すれば「許諾逃れだ。国会で説明できない程度の証拠しかないんだろう」との批判を招きかねない。実際直前まで、法務検察幹部は「やるなら堂々と許諾請求する」と語っていた。

 そこに舞い込んだキーマンの池田元秘書失跡の情報。池田元秘書は石川議員の後任の事務担当者で内情をよく知る人物で、立証に不可欠とされる。特捜部は行方を突き止め不測の事態を防止するために身柄を確保する必要に迫られた。

 「来年度予算案が審議入りする予定の2月上旬に起訴できる。逮捕すれば国会審議に影響は出るが早ければ影響は少ない」(法務・検察幹部)。15日夜、東京・霞が関の検察庁庁舎に幹部が集まり、石川議員の逮捕を決めた。

 ◇土地購入費、4億円が焦点

 土地購入を巡り、政治資金収支報告書に記載されているのは(1)04年10月に小沢氏名義で組んだ4億円の定期預金(2)同月に小沢氏から4億円借り入れ(3)05、06年に2億円ずつ小沢氏に返済した--との内容だけ。これ以外の複雑な会計処理は、いずれも記載されていなかったり、虚偽の記載があったことが分かっている。

 判明している虚偽記載は(4)04年10月上旬に「小沢氏から借りた」と石川議員が主張し、土地購入費に充てたとされる4億円の記載がない(5)07年4月に約4億円を出金した記載がない--など。

 このうち特捜部は容疑の核心を(4)と位置づけた。(4)を隠すために(1)~(3)を記載し、あたかも(2)の借入金で土地を買ったかのように装ったのが容疑の本質とみている模様だ。また(5)については容疑の核心に密接な関係があると位置づけている。

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石川議員逮捕:通常国会目前の激震
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石川衆院議員:規正法違反容疑で逮捕…4億円虚偽記載
社説:石川議員ら逮捕 裏献金の有無が核心だ
石川議員逮捕:小沢氏進退波及も…鳩山政権またもダメージ

毎日新聞 2010年1月16日 東京朝刊」



(2) asahi.com:2010年1月16日1時15分

石川議員逮捕 鈴木宗男氏「異常としか言えない」
2010年1月16日1時15分

 石川議員の北海道帯広市内の事務所には15日午後9時半、男性秘書2人が到着し、明かりがともった。事務所を撮影しようとするマスコミに、秘書が「撮るな、撮るな」と叫ぶ場面も。「逮捕へ」のニュースが流れた直後、電話取材に「今、事実関係を確認中」とだけ答えた。

 16日の民主党大会に出席するために上京中の佐野法充・民主党北海道幹事長は「在宅起訴かとの報道もあり、逮捕はないと思っていたので、こういう事態になって大変残念で、衝撃を受けている。事実の把握に努め、推移を慎重に見守りたい」と話した。

 同じ足寄町出身で、自分自身も受託収賄罪などで有罪判決を受けて上告中の新党大地の鈴木宗男代表は、16日午前0時前、議員会館前で「15日昼に石川議員から電話があった。水谷建設(の元幹部)に会ったこともないし、金をもらったこともない。接待もないと訴えていた。検察は全く聞いてくれない、私自身大変つらいです、と泣きながら話した」と、様子を述べた。

 「家宅捜索を受け、証拠隠滅の恐れもないのになぜ身柄をとる必要があるのか。異常としか言えない。官僚政治の打破を掲げて政権交代したが、検察も官僚組織の一部。このまま民主党政権が続けば自分たちがどうなるかわからないから暴走したのだろう。鳩山政権つぶしだと受け止めている」

 自民党道連会長の伊東良孝衆院議員は「不明朗な会計処理だったので真相を明らかにすべきだ。逮捕は重大な問題。小沢さんは今、総理より偉いとさえ言われている。参考人聴取を拒否するのではなく、自分の口から説明してもらいたい」と語った。

 一方、小沢氏の地元である岩手県では、民主党県連代表の工藤堅太郎参院議員が「信じられない思いだ。国会が始まる前だから逮捕したんだろうが、逮捕できるだけの証拠があるんだろうか。無実を信じている」と話した。」


 イ 今回の事件の焦点は、「土地購入費、4億円」です。

最近までずっと4億円の記載がないという報道でしたが、1月10日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」において、元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、小沢事務所は2004年の政治資金収支報告(官報掲載)で小沢一郎氏からの4億円の借り入れをきちんと報告(官報掲載)していると暴露したしたことから、慌てた報道機関は検察側に泣きを入れて「リーク」を受けたわけです。

検察側からのリーク記事を簡潔に示せば、04年10月から07年4月の間に(約2年半)、4億円の借り入れ・返済が2本あり、そのうち1本しか記載がない点で「4億円の疑惑がある」と問題となっているわけです。

「政治資金規正法は原資の記載を要求していない」ので、「秘書の寮の購入目的で銀行から借り入れた4億の原資が小沢氏自身からの貸し付けであるとすれば、4億の借り入れは一度報告すれば十分と考えることができる」(「不可解な特捜の強制捜査 郷原信郎氏インタビュー」(ビデオニュース・ドットコム インターネット放送局(2010年01月14日))ことになります。これが小沢氏側の説明になるのでしょうが、検察側はそのうち1本の4億円の借り入れは、闇献金ではないかなどとして「怪しい」と睨んだようです。


 ロ しかし、04年10月から07年4月の間に(約2年半)、4億円の借り入れ・返済が2本あり、そのうち1本しか記載がない点で、政治資金規正法上、虚偽記載といえるのかもしれませんが、犯罪としては政治資金規正法違反どまりです。それも、単なる記載ミスであれば過失しかないことになり(過失犯)、不可罰となるため、検察側としては政治資金規正法違反さえも問えないことになります。

そのため、検察当局は焦った執拗に石川議員の事情聴取を行ってきましたが、石川議員は事実経過は認めたものの「記載ミス」だと主張し続け、仕舞いには、池田元秘書失跡の情報もあり、石川議員も自殺しかねないほどに精神的に追い込まれてしまったのです。

 「同じ足寄町出身で、自分自身も受託収賄罪などで有罪判決を受けて上告中の新党大地の鈴木宗男代表は、16日午前0時前、議員会館前で「15日昼に石川議員から電話があった。水谷建設(の元幹部)に会ったこともないし、金をもらったこともない。接待もないと訴えていた。検察は全く聞いてくれない、私自身大変つらいです、と泣きながら話した」と、様子を述べた。
 「家宅捜索を受け、証拠隠滅の恐れもないのになぜ身柄をとる必要があるのか。異常としか言えない。官僚政治の打破を掲げて政権交代したが、検察も官僚組織の一部。このまま民主党政権が続けば自分たちがどうなるかわからないから暴走したのだろう。鳩山政権つぶしだと受け止めている」」


足利事件でも明らかになったように、捜査機関側にはシナリオが決まっており、そのシナリオ通りの自白が得られるまで強要し、虚偽の自白を得るのがいつものパターンです。石川議員は、「検察は全く聞いてくれない、私自身大変つらいです」と泣きながら話したようです。またしても自殺するほどに精神的に追い込み、自白を強要しているのかと思うと、暗澹たる思いになります。


 ハ すでに述べたように「政治資金規正法は原資の記載を要求していない」ので、現在の検察が行っている「原資が闇献金かどうか」を確かめるための捜査は、政治資金規正法違反以外の犯罪捜査となります。そうなると、石川議員への逮捕は別件逮捕であり、そうなると、先に行った政治資金規正法違反での捜索差押えは、実は別犯罪摘発目的の別件捜索差押であったわけです。

別件逮捕・勾留

 (1) 意義 本件(B事件。例えば未解決の重大犯罪)について逮捕の要件がまだそなわらないのに、その取調べのため、別件(A事件。例えばたまたま発見した軽微な犯罪)で逮捕することを、別件逮捕という。勾留にまで進めば別件勾留となるが、ほとんど同種の問題が生ずるので、ここではより広く世間に通用している別件逮捕で代表させる。

 別件を使って「余罪捜査」という有利な「型」にもちこみ、本件の取調べ(身柄拘束下での取調べである)をしようとして工夫された方法で、たしかに捜査に威力を発揮する。しかし、通常の余罪捜査といえる間はよいが、その域をこえて、名を別件に借りるだけの脱法的逮捕となると違法とされる。令状主義の遵守は見せかけにすぎず、また、本件について逮捕要件がそなわっていないだけに自白強要に結びつきやすく、見込み捜査としてえん罪につながる危険もあるからである。

 問題は、「名を借りるだけ」とはどんな場合かであり、それによって適否の限界が隠される。(中略)

 (2) 別件逮捕の適否  (イ) 基準 別件について逮捕の用件がそなわっていない場合(古い事件である、起訴価値が明らかに乏しいなど、逮捕の必要性を欠く場合が多い)と、そなわっている場合がありうるが、たとえ後者であっても、別件は名目上利用されるだけで、実質上本件の逮捕と称すべき場合(すなわち、「専ら、いまだ証拠の揃っていない本件について取調べる目的で、証拠の揃っている別件の逮捕に名を借り、その身柄の拘束を利用して、本件について逮捕して取調べるのと同様な効果を得ることをねらいとした」場合(最決昭52・8・9刑集31巻5号821頁〔狭山事件〕の判文。なお、ほぼ同旨、最大判昭30・4・6刑集9巻4号66頁〔帝銀事件〕)は、違法である。

 このような場合は、<1>逮捕を自白獲得の手段視し、<2>別件による拘束の後に本件の拘束が見込まれる点で、法定の拘束期間を潜脱し、<3>令状主義に反するという理由で、違法とした裁判例がある(例えば、金沢地七尾支判昭44・6・3刑裁月報1巻6号657頁〔蛸島事件〕、東京地判昭45・2・26刑裁月報2巻2号137頁〔東京ベッド事件〕など)。これは、別件逮捕による逮捕について本件を基準にその適否を判断しているので本件基準説とよばれ、学説の多くが支持する考え方である(高田354頁、石川127頁、松尾・上98頁、鈴木81頁、田宮1・270頁など)。

 これに対して、「名を借りる」といえるのは(つまり、別件逮捕が違法となるのは)、別件について逮捕の要件を欠く場合だけだとする考え方がある(東京地決昭49・12・9刑裁月報6巻12号1270頁〔富士高校放火事件〕、福岡高判昭52・5・30判時861号125頁〔有田事件〕など。土本163頁、小林充〔別件逮捕・勾留に関する諸問題」曹時27巻12号1頁(1975年))。これを別件基準説というが、警察実務はこれによっているようである。しかし、これは狭山事件等の最高裁判例の趣旨と不協和というべきであり、また、別件に対する通常の要件審査で足りることを意味し、逮捕権の濫用という別件逮捕の脱法的本質を無視する考えである。換言すれば、「逮捕要件を欠く場合は違法」という当然のことを主張するだけであるから、「別件逮捕」の「問題」自身を抹殺する立場だといえよう(この立場では、もっぱらつぎの「取調べ」の適否が問題となる)。

  (ロ) 効果 違法とされれば、別件による逮捕状請求は却下されるべきであり(しかし、実際問題として、請求時に「本件」を基準として判断することは至難のわざである)、引き続く勾留や同延長も許されず(ただ、起訴状への影響となると微妙であろう。最決昭42・8・31刑集21巻7号890頁参照)、再逮捕や本件の取調べも違法となる。」(田宮裕『刑事訴訟法(新版)』(有斐閣、1996年)95頁以下)



別件捜索・差押え

 「本件に関係」があるとは、被疑事実に直接関連するものばかりか、関節事実や情状に関するものも含めてよいが(最判昭51・11・18判時837号104頁は、恐喝被疑事件で「暴力団を標章する……メモ」と記載した令状により、賭博に関する記録メモを差し押え、のち賭博の罪で起訴した事案について、暴力団を背景とした事件であるという事実の証拠として「本件」関連性があるとした)、むろん、もっぱら別件の証拠収集のためことさら本件に名を借りた捜索・差押えであれば、ちょうど別件逮捕と同様、「別件捜索・差押え」として違法であろう(広島高判昭56・11・26判時1047号162頁、逮捕に伴う捜索の事例あるが、札幌高判昭58・12・26刑裁月報15巻11・12号1219頁参照)。」(田宮裕『刑事訴訟法(新版)』(有斐閣、1996年)105頁以下)


04年10月から07年4月の間に(約2年半)、4億円の借り入れ・返済が2本あり、そのうち1本しか記載がない点での「不記載」であり、それも「不記載」「虚偽記載」とならない可能性があるにもかかわらず(犯罪性が不確か)、逮捕を行い、闇献金の有無という本件での逮捕・起訴を目的としたものですから、別件逮捕、別件捜索差押えにあたるものとして、今回の捜査は違法というべきです。




3.識者のコメントを幾つか。

(1) 朝日新聞平成22年1月16日付朝刊36面

裏献金なら悪質

 ロッキード事件の捜査に関わった堀田力弁護士の話 石川議員は真実を明らかにするのに非協力的で、証拠隠滅する恐れが強いということが逮捕の第1の理由だろう。特に4億円を記載しなかった動機が、報道されているような中堅ゼネコンからの裏献金という不当な資金の動きだとすれば、より問題だ。「形式犯で何で逮捕までするのか」という話があるが、中身で判断しなくてはならない。裏献金を隠そうという話であれば、逮捕に値する。小沢氏の関与も焦点になってくるだろうが、これは石川議員の供述にかかっており、検察も追及することになるだろう。

逮捕はちょっと強引

 岩井奉信・日本大学教授(政治学)の話 政治資金規正法の虚偽記載容疑で現職国会議員の身柄まで取るのは、捜査手法としてちょっと強引だと思う。一方で、4億円の原資を含め、小沢氏の資金管理団体の金の流れがあまりに不明朗であることも間違いない。ただ、小沢氏には職務権限がないため、贈収賄には問えない。となると、特捜部の狙いがどこにあるのか。小沢氏を規正法違反容疑の共犯として問うことが狙いなのだろうか。「小沢氏が任意の聴取に応じないから」というのでは、「子どものけんか」にも見える。小沢氏も特捜部も、もっと国民に説明する責任があるのではないか。

自民と同じ失望生む

 政治評論家・有馬晴海さんの話 小沢氏が事情聴取に応じない、石川議員も納得できる説明がないことに、検察の威信をかけたのだろう。西松建設に絡む政治資金事件以降、小沢氏が検察批判を続け、小沢氏対検察という構図を引きずっていたと思う。検察は政権与党の幹部に批判されても、逮捕するものは逮捕するという覚悟だろう。来週からの国会運営では、本来あるべき予算の議論ではなく、政治と金の話に終始しそうだ。国民は民主党に代わって政治が革命的に変わると信じていたのに、自民党時代と何とも変わらない金銭感覚に失望するだろう。

証拠隠し報道も影響

 元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士の話 石川議員の逮捕に至ったのは、客観的な事実関係について虚偽の説明が明らかになったからだろう。石川議員の元秘書が証拠資料隠しを手伝った、と報道されたことの影響も否定できない。石川議員が事実関係を説明し、小沢氏が事情聴取に応じていれば、事態が変わっていたかもしれないが、今の証拠関係を前提にすれば在宅ではなく逮捕が筋の案件だ。忙しいと言いながら碁を打つ対応をされたから、証拠の評価が変わるものではない。ただ、検察といっても人間の感情があるから捜査への意気込みは違ってくる。」



(2) 東京新聞平成22年1月16日付朝刊29面

国会控え異様

 岩井奉信・日本大学教授(政治学)の話 小沢氏側に政治資金の問題があるのは確かだし、聴取に応じないのも良くない。だが、国会議員の身柄を国会開会直前に、単なる不記載容疑で取るのは異様だ。西松建設の巨額献金事件の時と同じく、検察が(背後の利権など)本筋で何を狙っているのか分からない。捜査の手法がエスカレートして、検察と小沢氏による子どものけんかのようになっている。」



(3) 日経新聞平成22年1月16日付朝刊38面「識者の見方」

4億円の原資 実態解明が主眼

 元東京地検特捜部長の宗像紀夫・中央大法科大学院教授の話 今回の逮捕は、小沢氏が拠出したとされる4億円の原資の「実体」を突き止めることが主眼と思われる。規正法違反についての小沢氏の関与の有無、程度を解明するためにも必要だと判断したためだろう。石川議員は不合理な弁解に終始し、特捜はその態度に業を煮やしたのではないか。一連の家宅捜索と相まって、捜査は大きく進展するだろう。東北地方における公共工事利権の実態を明らかにしようという特捜の意気込みも感じられる。

逮捕の必要性 検察は説明を

 岩井奉信・日本大学教授(政治学)の話 与党幹事長の元秘書を逮捕するということは相当の覚悟がいるが、異様だ。検察は逮捕する必要性があることをきちんと説明しなくてはならない。一方で小沢氏にも説明が必要だ。以前の会見のような木で鼻をくくった説明ではなく、法を犯していないというのであれば、なぜ違法性がないのか、原資となった4億円の出所も具体的に説明すべきだ。参院選を控え、幹事長を辞めざるを得ない可能性もある。今回の逮捕で検察と小沢氏が全面対決に入った。」



 イ 元東京地検特捜部長の宗像紀夫・中央大法科大学院教授も指摘しているように、「今回の逮捕は、小沢氏が拠出したとされる4億円の原資の「実体」を突き止めることが主眼」なのでしょう。そうであれば、特捜部は具体的に何罪を目的として捜査をしているのでしょうか。

小沢一郎・民主党幹事長及び石川議員は、当時は野党議員であるため、与党の政策を左右する法的権限がなく、また、地元の市長・知事・県議会議員ではないため、地元の政策実施に関して法的権限がありません。ですから、岩井奉信・日本大学教授(政治学)が指摘しているように、「小沢氏には職務権限がないため、贈収賄には問えない」のです。

一体、特捜部の狙いはどこにあるのでしょうか。単に小沢氏を政治資金規正法違反容疑の共犯として問うことが狙いなのでしょうか。「小沢氏が任意の聴取に応じないから」というのでは、単に「子どものけんか」です。任意の事情聴取なのですから、事情聴取に応じる義務はなく、特に参院選を控えた与党幹事長が事情聴取に応じないのは十分に理由があることであって、法的に何の問題もないのですから。


 ロ 検察側が家宅捜索や石川議員の逮捕にまで及んだのは、闇献金が狙いであるという以上に、西松事件での焦りがあるからだと推測しています。

検察真っ青 西松事件 無罪濃厚に

 東京地検が真っ青になっている。地検が強引に立件した「西松事件」が、無罪になる可能性が強まっているからだ。

 一昨日(13日)、「政治資金規正法違反」に問われた小沢一郎の公設第1秘書、大久保隆規(48)の第2回公判が開かれ、「検察側」の証人として出廷した西松建設の岡崎彰文・元取締役総務部長(68)の尋問が行われた。

 岡崎元部長は、西松建設OBを代表とした2つの政治団体について「西松建設のダミーだとは思っていない」と、検察側の主張を完全否定。さらに、裁判官の尋問に対しても「2つの政治団体は事務所も会社とは別で、家賃や職員への給料も団体側が払っていた」と、実体があったと証言。

 大慌てした検察側が、「あなた自身が訴訟を起こされることが心配で、本当のことを話せないのでは」と聞いても、「なぜそんなことを言われるのかわからない。もともとダミーだとは思っていなかった」と話した。

 裁判の焦点は、大久保が2つの団体をダミーだと認識していたかどうかの1点だ。

 「検察側」の証人が「ダミーではなかった」と証言したことで、検察側が一気に苦しくなってる。

 地検特捜部が、国民からの批判を承知しながら、再び「陸山会」事務所の捜索に入ったのは、「西松公判」から目をそらすためだったのか。」(日刊ゲンダイ平成22年1月16日(15日発行)3面)


大久保さんに対する事件が無罪となってしまうと、検察庁に対する国民の批判は暴風雨のようになり、さらには、世論の支援を背景にして、民主党政権による検察への粛清が必至となります。「西松公判」から目をそらすための捜査であるとの疑いが十分にあるように思われます。



4.最期に。

小沢一郎・民主党幹事長の資金処理のあり方には、危ぶむ方もいるでしょう。また、民意を代弁しない検察を支持して、4億円の原資の疑惑解明のため、検察による徹底解明を希望する方もいるかもしれません。

しかし、先に述べたように不逮捕特権を保障している憲法50条は、捜査機関による議員の疑惑解明よりも、議員の身体の自由を保障し、議院の審議権を確保することを優先させているのです。今回の石川議員への国会開会直前での逮捕は、不逮捕特権を潜脱する捜査であって、与党のみならず野党も国民とともに捜査手法を批判するべきなのです。

日本市民は、捜査機関に対して憲法を尊重するように求めるのか、憲法を無視して突き進む捜査機関を野放しにするのか――。国民が権力組織に対して憲法を厳守するよう厳しく批判するかどうか、権力を持っている人々・組織を縛っているという憲法の役割を現実の政治の中でいかに図っていくのか、覚悟が求められています


テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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2010/01/28(木) 00:31:57 | ???????
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