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2010/01/10 [Sun] 23:59:26 » E d i t
医療法人徳洲会は平成21年12月30日、がん患者などから摘出し修復した腎臓を別の患者に移植する「修復腎移植(病気腎移植)」を、臨床研究として初めて実施しました。腎臓摘出については、光畑直喜医師が担当し、所属する呉共済病院(広島県呉市)で実施しています。3年間ストップしていた「修復腎移植(病気腎移植)」が臨床研究という形で再開されることになりました。宇和島徳洲会病院は、平成21年12月31日、記者会見を行っています。

修復腎移植(病気腎移植)をめぐっては、「厚生労働省が今年1月、『(ドナーの)対象疾患に制限を設けない』と全国の都道府県などに通知し、治療の手順やドナーから摘出した腎臓の修復に問題がなければ、腎がん患者をドナーとする臨床研究が可能とする見解を示していた」(産経新聞)ことを受けて、実施したものです。徳洲会は、「5年で5例の症例を目標とし、症例が集まった時点で、先進医療や保険適用の申請を行うとしており、将来的に通常医療を目指す」(中日新聞)としています。
1月11日付追記:「5.最後に」を追記し、まとめを行いました。)



1.まずは、記者会見前の報道記事を幾つか。

(1) 中日新聞平成21年12月31日付朝刊(東京新聞平成21年12月31日付朝刊3面(12版))

宇和島徳洲会、3年ぶりに病気腎移植 臨床研究で再開
2009年12月31日 朝刊

 がん患者などから摘出し修復した腎臓を別の患者に移植する病気腎移植について、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で30日、臨床研究の1例目の移植手術が行われた。2006年11月に同病院の万波誠医師らが行っていた病気腎移植が問題化してから3年間、ストップしていた病気腎移植が臨床研究という形で再開した。

 ドナー(臓器提供者)は、直径4センチ以下の小さな腎臓がんの50代男性で部分切除など取り得る治療法の説明を受けた上で、腎臓摘出を強く希望。協力病院である呉共済病院(広島県呉市)で摘出手術が行われた。移植を受けた患者は、腎不全に苦しむ40代男性で、臨床研究での移植を希望する登録患者から、血液型や病状などから選ばれた。移植手術は万波医師らが行った。

 病気腎移植は原則禁止とされているが、厚生労働省が今年1月、小さい腎臓がんを修復した腎臓を含め、臨床研究を認める見解を示したことを受け、医療法人徳洲会の倫理委員会が7月、4センチ以下のがんを摘出した腎移植の臨床研究の実施計画書を了承した。

 患者が取り得る治療法の説明を受けた上で、摘出を希望した場合のみ協力を要請する。

 移植手術は、宇和島徳洲会病院と東京西徳洲会病院(東京都昭島市)で行う。臓器提供はこの2病院と長崎医療センター(長崎県大村市)など7病院が行う。

 ドナーや移植患者から同意を得る時は、複数の第三者の確認を必要とし、各病院に設置した倫理委員会と、外部の専門家を含む「修復腎移植検討委員会」で適切かどうかを検討する。

 徳洲会は、5年で5例の症例を目標とし、症例が集まった時点で、先進医療や保険適用の申請を行うとしており、将来的に通常医療を目指すとしている。」



(2) 産経新聞平成21年12月31日付朝刊(地方・四国)(東京版では20面に掲載)

病腎移植を再開、臨床研究1例目 宇和島徳洲会病院
2009.12.31 09:46

 治療のために摘出した腎臓を修復し、他の腎臓病患者に移植する病腎(修復腎)移植を医療法人「徳洲会」などが30日に臨床研究として再開したことが徳洲会関係者への取材でわかった。手術は万波(まんなみ)誠医師の執刀で、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で実施され、約3年半ぶりの再開となる。

 徳洲会関係者によると、30日に呉共済病院(広島県呉市)で50代の男性患者(ドナー)に対する腎臓摘出手術とがん細胞の切除が実施され、宇和島徳洲会病院へ搬送された摘出腎を万波医師らのチームが修復し、別の重度の腎臓病患者の40代の男性へ移植した。

 ドナーは小径腎がんの患者で、呉共済病院などから病状の説明を受けた本人が腎臓の全摘出に同意し、臨床研究に参加した。移植を受けた男性は徳洲会の移植事務室にレシピエント登録され、確認作業をへた上で、徳洲会の外部委員で構成される移植検討委員会でドナーの適格審査とレシピエントの最終順位決定を実施、報告を受けた宇和島徳洲会病院が手術の実施を承認した。宇和島徳洲会病院が移植を受ける男性に手術のリスク説明などを行った。

 病腎移植をめぐっては厚生労働省が今年1月、「(ドナーの)対象疾患に制限を設けない」と全国の都道府県などに通知し、治療の手順やドナーから摘出した腎臓の修復に問題がなければ、腎がん患者をドナーとする臨床研究が可能とする見解を示していた。

 病腎移植は3~18年にかけ、万波医師らのグループが計42例を実施したが、「医学的妥当性に欠く」として日本移植学会など移植関連5学会は反対を表明している。徳洲会は平成26年7月ごろまでに臨床研究手術を5例実施し、厚労省などに対し手術の保険適用に向けた働きかけを行う。」


 イ 中日・産経新聞だけは、平成21年12月31日付で報道しています。このように中日・産経新聞は、宇和島徳洲会病院が平成21年12月31日に記者会見を行う前に、報道できる内容を取材できているのですから、この2つの報道機関は徳洲会病院側と良好な関係を維持できているようです。


 ロ 「(修復腎移植)移植手術は、宇和島徳洲会病院と東京西徳洲会病院(東京都昭島市)で行う」とのことです。従来の修復腎移植は、宇和島徳洲会病院といった瀬戸内海近辺の地域に限られていましたが、今後は、「東京西徳洲会病院(東京都昭島市)」でも実施します。そうすると、今後は、関東在住の腎不全患者も移植を受けられる可能性があるといえそうです。



2.平成12年12月31日の記者会見後の記事も幾つか紹介しておきます。

(1) 朝日新聞平成22年1月1日付朝刊39面

宇和島徳洲会病院が病気腎移植「国指針に基づく研究」
2009年12月31日19時47分

 医療法人「徳洲会」(本部・東京)は31日、腎臓がん患者から摘出した腎臓を別の患者に移植する「病気腎移植」を、国の指針に基づく臨床研究として宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で実施したと発表した。同病院の万波誠医師(69)らによる病気腎移植が2006年に発覚。問題化して自粛して以来、3年ぶりの再開となった。

 徳洲会によると、30日に呉共済病院(広島県呉市)で、腎腫瘍(しゅよう)(がんの直径が4センチ以下)の50代の男性患者から腎臓を摘出し、宇和島徳洲会病院へ搬送。腫瘍を除去した腎臓を、30日夜に万波医師らが慢性腎不全の40代の男性患者に移植した。移植を受けた男性は、順調に回復しているという。

 徳洲会と呉共済病院によると、腎臓の提供側と移植を受ける側の双方から文書で同意を得たほか、呉共済、宇和島徳洲会の両病院の倫理委員会の承認を受けたという。移植を受ける患者は、徳洲会の移植事務室に登録された26人から、検討委が血液適合などを調べて選んだという。透明性の確保も課題とされていたが、再開実施を発表する会見は、手術終了から約14時間後の翌31日だった。

 万波医師は会見で「修復腎移植(病気腎移植)は捨てる腎臓の再利用で私自身は良い方法と思う」と話した。徳洲会は今後5年以内に5例前後を実施する予定という。呉共済病院は取材に、腎臓を全摘出した妥当性について「専門医の判断と、患者本人の希望との兼ね合いによると思う」とした。

 病気腎移植は、腎臓がんなどで摘出された腎臓から異常な部分を切除して、腎機能が低下している別の患者に移植する手法。万波医師らは91~06年、病気腎移植を42件実施していたことが判明。だが、実施病院内に倫理委員会がなかったり、患者の同意書もとっていなかったりしたケースもあり、厳しく批判された。日本移植学会など4学会は07年、病気腎移植は「医学的に妥当性がない」との見解を発表した。

 一方、厚労省は07年7月、臨床研究以外の病気腎移植を禁止したが、09年1月に「臨床研究で、対象疾患は特段制限していない」とする通知を出していた。これを機に、徳洲会は再開の準備を進めていた。」


この記事で気になったのは、「透明性の確保も課題とされていたが、再開実施を発表する会見は、手術終了から約14時間後の翌31日だった。」という点です。朝日新聞の悔しさがにじんでいるようです。

確かに、「再開実施を発表する会見は、手術終了から約14時間後の翌31日」であり、その時点で朝日新聞は知ったのでしょう。しかし、中日新聞や産経新聞は腎移植当日の平成21年12月30日の時点で、徳洲会に対して修復腎移植実施に関して取材ができていたのですから、(報道関係に対する)透明性の確保は十分にできていたのです。徳洲会側は、何も朝日新聞に知らせる必要はないのです。

朝日新聞がいう「透明性の確保」というのは、朝日新聞に知らせることをいうのでしょうか? 別に一報道機関が知るかしならないかで「透明性の確保」を問題視するのは実に馬鹿げています。単に、朝日新聞が徳洲会側に信頼されていないだけのことであって、朝日新聞が記者会見直前まで腎移植の実施を知ることができないとしても、それをもって透明性が確保されていないと文句とつけるのは筋違いというべきです。

朝日新聞は、「記者会見=透明性確保」という意味と理解しているようですが、本当に「記者会見=透明性確保」なのでしょうか? 記者会見も一方法であるとしても、プライバシーの確保の必要性がありますから、信頼のおける一部の報道機関の取材で発表したり、病院の倫理委員会の承認という形や医学論文の発表という形で公表することが、プライバシーに配慮しつつ、透明性を確保する方法として重要であるように思われます。



(2)MSN産経ニュース(2009.12.31 19:38)

病腎移植再開 臨床研究第1例目 宇和島徳洲会病院
2009.12.31 19:38

病腎移植を終えて記者会見で応対する万波誠医師(右から2人目)=31日午後0時58分、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院(浅野幸治撮影) 治療のために摘出した腎臓を修復し、ほかの腎臓病患者に移植する病腎(修復腎)移植をめぐり、医療法人「徳洲会」などは31日、臨床研究第1例目となる病腎移植手術を30日に実施したと発表した。手術は万波誠医師らの執刀で、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で実施され、約3年半ぶりの再開となった。万波医師は記者会見で、「患者の容体は問題ありません」と語った。

 病腎移植をめぐっては、平成3~18年にかけ、万波医師らのグループが計42例を実施したが、「医学的妥当性に欠く」として日本移植学会など移植関連5学会は反対を表明している。

 一方、厚生労働省は19年7月に臨床研究目的以外の手術を禁止したが今年1月、「(ドナーの)対象疾患に制限を設けない」と全国の都道府県などに通知し、治療の手順やドナーから摘出した腎臓の修復に問題がなければ、腎がん患者をドナーとする臨床研究が可能とする見解を示していた。

 徳洲会は26年7月までに臨床研究手術を5例実施し、厚労省などに対し手術の保険適用に向けた働きかけを行う。

 徳洲会によると、移植手術に先立って呉共済病院(広島県呉市)の光畑直喜医師らのチームが30日午前10時から、50代の男性患者(ドナー)に対する腎臓摘出手術とがん細胞の切除を実施した。冷蔵保存された摘出腎は宇和島徳洲会病院へ搬送され、同日午後7時から万波医師らのチームが修復し、透析治療を続ける重度の腎臓病患者の40代の男性患者(レシピエント)へ移植した。

 ドナーは腫瘍(しゆよう)4センチ以下の小径腎がんの患者で、呉共済病院から病状の説明を受けたドナー本人が腎臓の全摘出に同意し、臨床研究に参加した。

 一方、レシピエントは徳洲会に登録されていた26人から、同会の外部委員会が選定。連絡を受けた宇和島徳洲会病院が手術の実施を承認し、レシピエントの男性にリスク説明した上で、手術を行った。」



(3) MSN産経ニュース(2009.12.31 19:42)

病腎移植再開 万波医師が記者会見 「捨てる腎臓の再利用であり、いいことだ」
2009.12.31 19:42

 「修復腎(病腎)移植は捨てる腎臓の再利用であり、いいことだ」。約3年半ぶりの病腎移植手術から一夜明けた31日、執刀医の宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師は記者会見でこう語り、病腎移植への決意を改めて示した。

 平成18年10月、臓器移植法違反容疑で愛媛県警に逮捕された患者の腎臓移植手術の執刀が発覚したことを契機に、学会などから医学的妥当性を否定され続けた万波医師。この日の記者会見には白衣姿で臨み、臨床研究第1例目となる病腎移植手術を実施したことを公表し、「患者の容体は問題ありません」などと移植の意義を強調した。

 病院によると、移植手術を受けた40代の男性患者は術後の経過は良好で、すでに集中治療室から一般病棟へと移り、早ければ3~4週間で退院できるという。

 約3年半ぶりの病腎移植再開について、医療法人「徳洲会」の能宗克行事務総長は「修復腎移植で救われる患者さんがいる以上、今後もグループを挙げて全力で取り組む」と述べた。

 臨床研究は保険適用から除外されるが、今回の手術費用計約600万円は徳洲会が負担する。能宗事務総長は「修復腎移植に使える腎臓は年間2000件あるとも言われている。患者のため、(保険適用に向けて)移植関連学会も推進してほしい」と呼びかけた。」


 イ 産経新聞は、最も詳しい記事内容になっています。インターネット上でこうした記事を詳しい記事を読むことができるのは喜ばしいことではあります。ただ、東京版の紙面上にはこうした記事がないのは、残念でなりません。


 ロ 「病院によると、移植手術を受けた40代の男性患者は術後の経過は良好で、すでに集中治療室から一般病棟へと移り、早ければ3~4週間で退院できる」とのことのようです。後に触れる毎日新聞の記事よるとドナー側も順調な回復のようですし、ドナー・レシピエント側双方が術後の経過は良好なのは嬉しいことです。


 ハ この記事によると、「臨床研究は保険適用から除外されるが、今回の手術費用計約600万円は徳洲会が負担する」とあります。やはり保険適用外ですと手術費用は高額であり、手術後にかかる免疫抑制剤などの費用も考えると一般の市民は難しいといえます。今回、「徳洲会が負担」していますが、このように熱意と経済的な負担能力がある病院でないと、修復腎移植の実施はかなり難しいといえます。早く保険適用を認め、なるべく多くの方が修復腎移植の恩恵を受けられるようにしてほしいと思います。



(4) 毎日新聞 2010年1月1日 大阪朝刊(東京版14版では30面に掲載)

病気腎移植:愛媛・宇和島徳洲会病院で再開 3年半ぶり、万波医師執刀

 ◇臨床研究、14年まで5例計画

 医療法人徳洲会は30日、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で、がん治療などのために摘出した腎臓を別の患者に移植する病気腎(修復腎)移植を、臨床研究として再開した。病気腎移植の実施は約3年半ぶり。徳洲会は2014年までに今回を含め5例を行う計画で、5例終了時点で手術の詳細などを公表する。【柳楽未来、川上展弘】

 宇和島徳洲会病院で31日、執刀した万波誠医師(69)らが記者会見した。呉共済病院(広島県呉市)に入院しているドナー(臓器提供者)の50歳代の男性から30日に腎臓を摘出しがんの部分を切除、宇和島徳洲会病院で万波医師らが同日中に、慢性腎不全の40歳代のレシピエント(移植を受ける患者)の男性へ移植した。摘出した腎臓は直径4センチ以下の小径腎臓がんだった。術後の経過はドナー、レシピエント共に順調という。

 ドナーの男性は、27日に徳洲会の移植事務室にドナーの仮登録をした。協力関係にある呉共済病院の倫理委員会が28日にインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)に問題がないかなどを審査、承認したため本登録された。一方、徳洲会が進めていたレシピエント登録に登録していた26人から、移植事務室が候補者5人を選定。29日に外部の5人でつくる修復腎検討委員会が今回の男性を選んだ。その後、宇和島徳洲会病院の倫理委員会での手続きを経て手術を実施した。

 万波医師は「手術後すぐに尿も出て、経過に問題はない。修復腎移植は捨てる腎臓を再利用でき、非常にいい方法だと思っている」と話した。病気腎移植を支援するNPO法人「移植への理解を求める会」の向田陽二理事長は「再開を喜んでいる。一人でも多くの患者を助けるには修復腎移植しかない。捨てられる腎臓で苦しんでいる患者を助けてほしい」と歓迎している。

 万波医師らのグループは、91~06年に42件の病気腎移植をしたが07年に日本移植学会などが非難声明を発表して以後、中断していた。厚生労働省は07年7月、臓器移植法の運用指針を改正して臨床研究を除き病気腎移植を禁止し、臨床研究としては病気腎移植を制限しないことを09年1月に全国通知している。

毎日新聞 2010年1月1日 大阪朝刊」


この記事は、かなり充実しており、「術後の経過はドナー、レシピエント共に順調」という点も触れています。特に、向田陽二理事長の記者会見内容を引用していることは良い点です。

「病気腎移植を支援するNPO法人「移植への理解を求める会」の向田陽二理事長は「再開を喜んでいる。一人でも多くの患者を助けるには修復腎移植しかない。捨てられる腎臓で苦しんでいる患者を助けてほしい」と歓迎している。」





3.呉共済病院は記者会見をしていませんでしたが、その呉共済病院に対して取材した記事がありましたので、紹介しておきます。

(1) asahi.com:マイタウン・広島(2010年01月01日)

呉共済病院が病腎移植の取材に応じる
2010年01月01日

 医学的な妥当性をめぐって激しい批判を浴びた『病気腎移植』が3年ぶりに再開された。提供者の患者から腎臓を摘出した呉共済病院(呉市西中央2丁目)では31日、小野哲也院長と中山浩事務部長が、報道陣の取材に応じた。

 同病院によると、ドナーは腎腫瘍(しゅ・よう)を患った県外の50歳代の男性患者。26日に泌尿器科部長の光畑直喜医師が男性に研究計画を説明した。男性は27日から呉共済病院に入院。片方の腎臓の全摘出と移植に関する臨床研究に書面で正式に同意を得たうえで、院外の精神科医なども加わり、光畑医師からの説明に問題がなかったかを確認したという。

 28日には同病院内で倫理委員会を開き、ドナー適格基準に合致しているか、患者への説明は適切だったかなどを審査し、承認を得た。

 報道陣から、腫瘍は悪性だったか良性だったかを問われた小野院長は「がんの可能性は高いが断言できない。検査は今後する」などと述べた。

 摘出を受けた男性患者の容体は良好だという。小野院長は「腎臓を提供していただいた患者さまの善意を無駄にすることのないよう、引き続き今後の移植医療の発展に寄与していきたい」とコメントを読み上げた。(山下奈緒子)」


「報道陣の取材に応じた」とありますから、多くの新聞社が取材したようです。ただ、インターネット上で読むことができる記事は、朝日新聞だけでした。地域面では報道しているのかもしれませんが、他の新聞社も

この記事よると、「報道陣から、腫瘍は悪性だったか良性だったかを問われた小野院長は『がんの可能性は高いが断言できない。検査は今後する』などと述べた」とあります。そうすると、まだガンであったかどうかは分かっていないのですから、厳密に言えば「修復腎移植(病気腎移植)」を実施したと断言できないわけです。




4.日本移植学会のコメントが掲載されている記事としては、次のものがありました。その日本移植学会のコメントに対してコメントしていきます。

2009/12/31 16:55 【共同通信】
(1) 東京新聞平成22年1月1日付朝刊30面(11版S)

徳洲会 病気腎移植を再開 臨床研究で3年ぶり

 医療法人徳洲会は31日、小径腎腫瘍(しゅよう)の50代男性から摘出した腎臓を、慢性腎不全の40代男性に移植する「病気腎移植」を、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で30日に臨床研究として初めて実施したと発表した。同病院の万波誠医師らが記者会見した。

 病気腎移植は2006年の臓器売買事件をきっかけに、万波医師ら「瀬戸内グループ」が長年続けてきたことが表面化。医学的妥当性が疑われてストップしていたが、3年ぶりの再開となる。

 腎臓摘出は瀬戸内グループの一人、光畑直喜医師が担当し、所属する呉共済病院(広島県呉市)で実施。呉共済病院によると、腫瘍は直径3・5センチで、悪性がんの疑いが強いと画像診断で判断。患者に病状の見通しなどを十分に説明し、摘出後に腫瘍を取り除いて別の患者に移植する同意を得たとしている。実際に悪性だったかどうかは今後検査する。

 徳洲会によると30日午前、50代男性の腎臓摘出手術を開始。腫瘍を切除した後、宇和島徳洲会病院に運び、同日夜、透析を受けていた愛媛県の40代男性に万波医師が移植した。

 記者会見で万波医師は「術後の経過は順調。捨てる腎臓を再利用するのは良い方法だ」とあらためて意義を強調。徳洲会の能宗(のうそう)克行専務理事は「臨床研究を経て診断報酬が認められる医療にし、患者が最小限の費用で受けられるようにしたい」と話した。

 病気腎移植をめぐっては、万波医師を支持する患者や万波医師本人が、日本移植学会の幹部を訴える事態にもなった。厚生労働省は07年に病気腎移植を原則禁止したが、臨床研究の実施は容認。徳洲会は09年初め、臨床研究の実施方針を表明し、準備を進めていた。

◆規定に従わず遺憾

 相川厚・日本移植学会広報委員長の話 学会の倫理規定では臓器売買を禁止する目的で、第三者からの生体腎移植は実施施設と学会の倫理委員会を通すことになっている。万波氏は会員ではないが、少なくとも今回提供施設となった呉共済病院は会員施設で、規定に従わなかったのは遺憾だ。提供者に再発の可能性も含め適切に説明し、同意を得たかも気になる。」


 イ 相川厚・日本移植学会広報委員長は、「学会の倫理規定では臓器売買を禁止する目的で、第三者からの生体腎移植は実施施設と学会の倫理委員会を通すことになっている」と述べています。しかし、厚生労働省は07年7月、臓器移植法の運用指針を改正して臨床研究を除き病気腎移植を禁止したのですから、通常の医療として行うことができる生体腎移植と、病気腎移植は別個のものであって、病気腎移植と生体腎移植とを同一視する相川厚・日本移植学会広報委員長のコメントは、臓器移植法の運用指針に反するものであって、根本的に間違っています

修復腎移植を肯定する立場としては、修復腎移植は第三の道と扱うものの、生体腎移植の一種であって、臓器移植法の運用指針により病気腎移植を禁止する必要はないと考えています。ですから、修復腎移植を肯定する立場であれば、「第三者からの生体腎移植は実施施設と学会の倫理委員会を通す」という手続を採ることに賛成となります。相川厚・日本移植学会広報委員長は、いつから修復腎移植を肯定する立場に変化したのでしょうか? 修復腎移植を否定しつつ、「第三者からの生体腎移植は実施施設と学会の倫理委員会を通す」という論理は支離滅裂であって、理解できません。


 ロ 今現在、腎不全患者は、日本移植学会の幹部相手に、修復腎移植禁止を巡り損害賠償請求を求める裁判を行っています。いわば、修復腎移植を肯定する側と日本移植学会とは対立する関係にあるのです。そうした関係にあるのに、修復腎移植を行おうとする側が、日本移植学会の倫理委員会に審査を求めるわけがありません。相川厚・日本移植学会広報委員長は、悪い冗談を言っているのでしょうか。



(2) 東京新聞平成22年1月1日付朝刊30面(12版)

病気腎移植再開 透明性確保へ課題 徳洲会会見「術後の経過順調」

 小径腎腫瘍(しゅよう)の50代男性から摘出した腎臓を、慢性腎不全の40代男性に移植する「病気腎移植」を30日に実施した宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で、執刀した万波誠医師らが31日記者会見し、「術後の経過は順調。捨てる腎臓を再利用するのは良い方法だ」とあらためて意義を強調した。

 徳洲会の能宗(のうそう)克行専務理事は「この手術で救える命がある。臨床研究を経て診療報酬が認められる医療にし、患者が最小限の費用で受けられうようにしたい」と話した。

    ◇

 臨床研究という形で病気腎移植を再開した徳洲会は、腎臓を提供する患者へのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の徹底など、厳格な手続きを踏むことで社会の理解を得たい考えだが、透明性確保に向けた課題は多い。

 2006年に発覚した宇和島徳洲会病院の万波誠医師らによる病気腎移植では、記録が書面で残されていないケースもあった。厚生労働省の調査班に「病気の腎臓摘出には同意したが、他人に委嘱されるとは聞いていない」と憤る提供者もいたという。本当に摘出が必要だったか疑わしい手術も指摘された。

 徳洲会はインフォームドコンセントに複数の第三者を立ち合わせ、摘出が妥当かをダブルチェックするなど制度面での改善を強調する。しかし、日本移植学会広報委員の湯沢賢治・国立病院機構水戸医療センター医長は「このままではインフォームドコンセントがまっとうか確認できない。手術の適否など問題も多く、学会など外部の目を入れるべきだ」と話す。移植した腎臓の元の病気が原因でがんなどが起きないかを長期間、慎重に検討する必要もある。」


 イ 東京新聞が、このような日本移植学会寄りの記事を掲載するとは、ずいぶんと変わってしまったものです。このエントリーでは、平成22年1月1日付11版Sと12版をともに引用しましたが、わざわざ12版にこうした記事を掲載するとはがっかりします。

臓器移植に関する記事もすっかり減ってしまいました。臓器移植と修復腎移植に理解のある片山夏子記者が、東京新聞特報部から中日新聞・社会部の方へ移ってしまったためでしょうか。臓器移植法は改正されてはいますが、臓器移植への関心を高めるような記事がまるでなく、その結果、社会の意識が変わらずドナーが増えないままであれば、法律を改正しても意味がないのです。近時の東京新聞には、失望させられる記事が多く、残念でなりません。


 ロ 日本移植学会広報委員の湯沢賢治・国立病院機構水戸医療センター医長は「このままではインフォームドコンセントがまっとうか確認できない。手術の適否など問題も多く、学会など外部の目を入れるべきだ」と話しています。この発言も要するに「学会にみせろ、学会の手続きを通せ」というものです。

しかし、医療契約は、患者と医師側との医療行為に関する意思の合致で成立するものであって、その際、患者の自己決定権を十分に尊重するために、インフォームドコンセントが大事です。言い換えれば、インフォームドコンセントは、社会のためでも医師のために行うのではなく、もちろん、学会が納得するために行うものではなく、あくまでも患者の自己決定権を十分に尊重するためなのです。ですから、日本移植学会が「このままではインフォームドコンセントがまっとうか確認できない」としても関係がないのです。

そして、医療契約が他の契約と異なる特徴は、患者の病歴というのは他人に知られたくないというプライバシー情報ですから、プライバシーの確保が大切であるため、当事者の一方たる医師側には守秘義務(刑法134条)が課されているわけです。

移植を行う病院内の倫理委員会という内部組織であれば、医療契約上の当事者の範囲として、プライバシーの確保ができるのですが、学会というまさに外部組織に開示することは、(医療契約上の当事者でないため)プライバシー漏洩のおそれがありますから、法律上、大きな問題があります。

日本移植学会広報委員の湯沢賢治・国立病院機構水戸医療センター医長は、いかなる法律上の根拠があって、「学会にみせろ、学会の手続きを通せ」と要求するのでしょうか。むしろ、医療契約及びプライバシーの尊重の見地からすれば、学会などの外部組織に情報を流すこと自体が、法的に問題があるというべきです。

学会も東京新聞も――内容的には共同通信の配信のままに過ぎないようですが――どこまで「透明性確保」を強調するつもりなのでしょうか。修復腎移植であろうともあくまでも医療契約の一つなのですから、何よりも患者のプライバシー情報を保護するのが優先であって、透明性は二の次にすぎないのです。バカの一つ覚えのように「透明性」を強調するのは止めるべきでしょう。



(3) NHKニュース(12月31日 15時38分)

病気腎移植手術 徳洲会が実施

12月31日 15時38分
 病気の治療で摘出した腎臓を使った移植手術について、医学的な妥当性をめぐり意見が分かれているなか、医療法人「徳洲会」は、愛媛県の宇和島市で国の指針に基づき臨床研究として移植手術を初めて行いました。

 これは、徳洲会が宇和島徳洲会病院で31日、記者会見をして明らかにしました。それによりますと、30日午前、広島県呉市の病院で50代のがん患者から腎臓を摘出し、宇和島市に運んだあと、がんの部分が残っていないか確認したうえで、午後7時から愛媛県内の47歳の男性に移植したということです。

 がんなどの病気で摘出した腎臓、いわゆる「病気腎」を移植する手術をめぐっては、3年前、宇和島徳洲会病院をはじめ10の病院で40件余り実施されていたことがわかり、安全性や有効性が確認されていないとして問題になりました。これを受けて、厚生労働省は臨床研究以外でこうした手術を行うことを禁止する指針をまとめました。このため、徳洲会はことし7月、臨床研究としての病気腎の移植を行う方針を固め、準備を進めてきたということです。

 徳洲会の能宗克行事務総長は、手術までの手続きについて、「臨床研究はわれわれが責任を持ってやるべきもので、特に厚生労働省に報告する必要はない。安全性の確認のための研究なので、移植学会も臨床研究を進めるべきだ」と話していました。徳洲会では、今後5年をめどに親族間と第三者間、あわせて10例の臨床研究を行う計画です。

 移植の推進を求めてきた、患者などでつくるNPO「移植への理解を求める会」の向田陽二理事長は「移植手術が再開されてほっとしている。今後も臨床研究を重ねてもらって、助かる命があることを証明してもらいたい」と話しています。

 一方、日本移植学会の寺岡慧理事長は「病気腎移植では、移植を受けた患者ががんになったり、手術の方法によっては提供した患者にもがんが再発したりするおそれがあり、長期的な安全性が確認されていないという問題がある。また、移植を行う場合には学会に意見を聞くよう求めてきたが行われておらず、残念だ。患者への説明が適切に行われたのかなどを検証する必要がある」と話しています。」


日本移植学会の寺岡慧理事長は「病気腎移植では、移植を受けた患者ががんになったり、手術の方法によっては提供した患者にもがんが再発したりするおそれがあり、長期的な安全性が確認されていないという問題がある」と述べています。しかし、こうした言い分は真実でないとして、裁判で争われている点ですから、裁判で決着が付けられるのでしょう。

寺岡慧理事長もまた、「移植を行う場合には学会に意見を聞くよう求めてきたが行われておらず、残念だ。患者への説明が適切に行われたのかなどを検証する必要がある」と話しています。これも先に述べた日本移植学会広報委員の湯沢賢治・国立病院機構水戸医療センター医長と同じであって、「学会にみせろ、学会の手続きを通せ」と要求するものです。しかし、むしろ、医療契約及びプライバシーの尊重の見地からすれば、学会などの外部組織に情報を流すこと自体が、法的に問題があるのですから、いかなる法律上の根拠に基づいて「学会にみせろ」というのか、明確に示すべきです。



(4) 毎日新聞平成22年1月1日付朝刊(13版では31面に掲載)

病気腎移植:愛媛・宇和島徳洲会病院で再開 日本移植学会・寺岡慧理事長の話

 ◇安全性は未確立--日本移植学会の寺岡慧理事長(東京女子医大教授)の話

 がん治療と移植のための腎摘出では手術の方法が異なる。腎臓がんは治療後、長期間たって再発することがある。病気腎移植は長期的な安全性が確立されていないというのが学会としての見解だ。

 また、臓器売買を防ぐ目的で、第三者間で実施する場合、学会は事前審査することにしているが今回は申請がないまま踏み切られたのも残念だ。腎臓の提供者や移植を受けた患者に説明した内容など、さまざまな観点で検証する必要がある。

毎日新聞 2010年1月1日 東京朝刊」


日本移植学会の寺岡慧理事長も、「臓器売買を防ぐ目的で、第三者間で実施する場合、学会は事前審査することにしているが今回は申請がないまま踏み切られたのも残念だ」と述べています。これも相川厚・日本移植学会広報委員長と同様に、「第三者からの生体腎移植は実施施設と学会の倫理委員会を通すことになっている」ということなのでしょう。

しかし、厚生労働省は07年7月、臓器移植法の運用指針を改正して臨床研究を除き病気腎移植を禁止したのですから、通常の医療として行うことができる生体腎移植と、病気腎移植は別個のものであって、病気腎移植と生体腎移植とを同一視する日本移植学会の寺岡慧理事長のコメントは、臓器移植法の運用指針に反するものであって、根本的に間違っています




5.最後に。

日本移植学会幹部のコメントすべて、<a>腎臓がんの修復腎移植は問題があるので実施は止めるべきで、<b>日本移植学会の手続きを経ることを求めています。しかし、そうしたコメントは、厚労省の平成21年1月27日付の通知(健臓発第0127001号)という国側の通知を全く無視したものであって問題です。

厚労省の平成21年1月27日付の通知(健臓発第0127001号)「1 いわゆる病腎移植の臨床研究の実施に際し、対象疾患についてはガイドラインにおいて特段制限していないこと。」と「2 個別の臨床研究の実施に際しては、臨床研究を行う者等が、「臨床研究に関する倫理指針」に規定する事項を遵守し、実施するものであること。」を明記しています(「厚労省が平成21年1月27日、修復腎移植の臨床研究を正式容認~容認する「通知」受け、修復腎移植を今年中に再開へ」(2009/02/11 [Wed] 23:59:38))。

要するに、<1>臓器移植法の運用指針では、臨床研究での病気腎移植を禁止していないのに、事実上、臨床研究での病気腎移植を全面禁止にしていた、日本移植学会等関連学会の対応は不当な制限であり、事実上であっても、臨床研究での病気腎移植の実施を阻害することは許されないこと、<2>病気腎移植の実施については、その対象疾患については「制限していない」以上、腎臓がんの修復腎移植でも可能であること、<3>個別の臨床研究については、「臨床研究に関する倫理指針」のみを遵守すれば、病気腎移植を実施できるのであって、日本移植学会側が設定した手続の遵守を「通知」は要求していないこと、です。

ですから、日本移植学会幹部のコメントである<a>腎臓がんの修復腎移植は問題があるので実施は止めるべきで、<b>日本移植学会の手続きを経ることを遵守することは、かえって厚労省の平成21年1月27日付の通知(健臓発第0127001号)という国側の通知に違反してしまうのです。

日本移植学会の幹部は、なぜ厚労省の平成21年1月27日付の通知(健臓発第0127001号)に違反した行為を求めるのでしょうか? 報道機関も、なぜ日本移植学会幹部のコメントをそのまま掲載し、そのコメントが厚労省の平成21年1月27日付の通知(健臓発第0127001号)に反していると明確に指摘しないのでしょうか? 日本移植学会・報道機関も、厚労省の平成21年1月27日付の通知(健臓発第0127001号)の重みを十分に理解するべきです。

日本移植学会の幹部は、世界の移植関係者では理解のある修復腎移植に対して、いまだに否定的であるため、国の通知を無視するのでしょう。しかし、報道機関は、修復腎移植をいったい肯定したいのか否定したいのか、どちらなのでしょうか? そのスタンスがはっきりしないからこそ、いつまでも日本移植学会の幹部の誤ったコメントを鵜呑みにしてしまう原因となっているように思います。まずは、コメントの精査することぐらいはしてから、報道してほしいものです。   


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