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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2009/09/26 [Sat] 23:59:36 » E d i t
犬や猫など動物を飼っている方は、その飼い犬・飼い猫に対して色々な想いがあると思います。例えば、「週刊朝日」の投稿欄「犬ばか猫ばかペットばか」には、多くの飼い主の思いが綴られています。(現在、そうした投稿は、週刊朝日編集「やっぱり私はイヌが好き」(朝日新聞社、2005年)週刊朝日編集「やっぱり私はネコが好き」(朝日新聞社、2005年)という形で書籍化もされています。)

「週刊朝日」の投稿欄は、一般の方ばかりですが、作家の方なども飼っている動物について何らかの文章を綴っていることはご存知だとは思います。作家の道尾秀介さんも、ご自分が飼っていたネコについて愛情溢れるコラムを書いていましたので、紹介したいと思います。
9月27日追記:9月20日から9月26日までのまとめを追加しました。)




1.日経新聞平成21年9月25日付夕刊7面「プロムナード」

葬式の理由――道尾秀介

 もうすぐ飼い猫のヒメが死んで2年になる。彼女と出会ったのは、ちょうどいまから10年前の夏だった。

 当時、住宅設備の販売会社で営業マンをやっていた僕は、溢(あふ)れるエネルギーのほとんどを仕事をサボることに注いでいた。段ボール箱の中で小鳥みたいにピーピー鳴いていた彼女を発見したのも、木陰に営業車を停(と)めてアイスか何かを食べていたときのことだ。その日は午後から雨の予報だったので、こりゃまずいなということで僕は彼女を一人暮らしのアパートへ連れ帰った。真っ白くて、なんだかティッシュペーパーを丸めたみたいで、でもどこか気品のある奴(やつ)だった。

 コンビニで買ったキャットフードをやってみたが、空腹のはずなのに、彼女はツンとすまして一向に食べようとしない。首をひねりながらも、そのまま放っておいた。あとでそっと覗(のぞ)いてみたら、こっそり食べていた。――気取りやがって。名前はヒメに決まった。

 いっしょに暮らしはじめると、ヒメはしだいに心をひらきはじめた。2週間ほど経(た)つと、いつも僕の後ろをついて回るようになった。食卓、ソファー、デスク、トイレ。風呂に浸(つ)かっているときは浴槽の縁に饅頭(まんじゅう)のように座り込み、恍惚(こうこつ)と目を閉じてミストサウナを楽しんでいた。夜は僕の布団に入って眠った。しばしば首まで這(は)い上がってきては僕を窒息寸前まで追い込み、危ういところで目を醒(さ)まして押しのけると、こんどは肛門(こうもん)を鼻先に押しつけて、ふたたび僕を窒息寸前にまで追い込んだ。テレビで総合格闘技の絞め技を見て、あれはもしかしたら臭(にお)いで落とそうとしているのかもしれないと考えるようになったのは、その頃(ころ)のことだ。

 僕が作家になってからも、身体は大人なのに、中身は赤ん坊のままだった。パソコンに向かって原稿を書いていると、彼女はしきりに邪魔をした。にゃ、と短く鳴いてみたり、僕の手を噛(か)んでみたり、それでも無視していると、デスクに飛び乗ってキーボードの上を歩行した。原稿が無茶苦茶になってしまうので、そこでいつも僕はとうとう音を上げるのだった。

 2年前の夏、彼女は急に僕のあとをついて回らなくなった。床に腹ばいになり、何もないところをぼんやりと、いつまでも見つめていた。様子がおかしいので獣医に連れていったのだが、さんざん身体をいじくり回されたあげく、とくに悪いところはなさそうだと言われた。納得のいかないまま家に連れ帰ってきた翌朝、彼女は冷たくなっていた。

 僕は泣いて泣いて、ずっと泣いて、食事も、仕事も、何もすることができなくなった。立っていることすら難しかった。涙が止まってからも、きっと自律神経がやられていたのだろう、ひどい頭痛と腹痛がつづいた。ところが数日後、動物霊園でヒメを火葬し、お骨を家に持ち帰ってきたとき、不思議なことが起きた。体調がふっと回復したのだ。

 お葬式というものは、やっぱり必要らしい。僕は少し寂しい気持ちでそれを実感した。

 去年、庭にヒメシャラの木を植えた。根元にはヒメのお骨が埋めてある。夏になると真っ白な花をつけるはずなのだが……今年は咲いてくれなかった。ヒメのことだから、あとでこっそり咲いていたりするかもしれない。 (作家)」




2.ヒメとの出会い、ヒメと過ごした楽しい日々のこと――。このコラムで綴られた出来事だけでなく、きっと、もっと多くの出来事がヒメと道尾秀介さんの間であったに違いありません。ペットを飼っている方、ペットを飼っていた方は、自分の場合とを比較して懐かしんだ方もいると思います。


(1) このコラムを読んでいて気に留めた点は、次の箇所です。

「2年前の夏、彼女は急に僕のあとをついて回らなくなった。床に腹ばいになり、何もないところをぼんやりと、いつまでも見つめていた。様子がおかしいので獣医に連れていったのだが、さんざん身体をいじくり回されたあげく、とくに悪いところはなさそうだと言われた。納得のいかないまま家に連れ帰ってきた翌朝、彼女は冷たくなっていた。」


ヒメの疾患は、どの獣医にとっても判断困難な疾患だったのかもしれません。獣医に見せた翌朝に亡くなったのだとしたら、治療困難だった可能性もあります。しかし、翌朝亡くなるほど悪化していたのに、何も疾患を発見できない獣医というのは、獣医としての能力が著しく劣っていたのではないでしょうか。

犬や猫を何匹も長年飼っていた方は実感として分かっているとは思いますが、動物は、治療しなければすぐに亡くなってしまう疾患であっても、治療により意外と生き延びることが少なくありません。疾患を治療した後の快復力は、目を見張るものがあります。

もちろん、老齢化した動物の場合は、そう簡単に治療によって快復するわけにはいかないでしょうが、このコラムに出てきたヒメは、まだ8歳ですから、適切な治療さえ受けていればすぐに快復しまだ生きていたのではないでしょうか。ヒメが、十分に能力のある獣医による適切な治療を受けることができなかったことは、 とても残念に思います。

人と同様に、飼い犬・飼い猫にどのような病気が何時発生するか分かりません。疾患が深刻になってからどの度物病院に行こうか迷うようでは遅いのです。予防注射などで何度か動物病院に行くことはあるのですから、飼い主は、普段から動物病院に通うことを心がけ、能力のある獣医かどうかを判断し、かかりつけの獣医を持っておくべきです。動物自身は、どの獣医に能力があるのか判断できないのですから。



(2) もう1点気になったのは、このコラムの主題と直接関係する部分です。

 「僕は泣いて泣いて、ずっと泣いて、食事も、仕事も、何もすることができなくなった。立っていることすら難しかった。涙が止まってからも、きっと自律神経がやられていたのだろう、ひどい頭痛と腹痛がつづいた。ところが数日後、動物霊園でヒメを火葬し、お骨を家に持ち帰ってきたとき、不思議なことが起きた。体調がふっと回復したのだ。

 お葬式というものは、やっぱり必要らしい。僕は少し寂しい気持ちでそれを実感した。」


道尾秀介さんは、ヒメが亡くなってからペットロスに陥っていたようです。それが、お葬式を済ませたことで、体調が快復したようです。ペットの葬式は、ペットのためであると同時に、飼い主の精神的な苦悩を軽くさせ、心の安定を回復させるという意義があったことがわかります。

ペットを動物ではなく、家族の一員として捉える家庭が増えてきたことが、ペットロスを生じさせる要因となっているとは思います。ペットロスといった精神的な苦悩から快復するために、ペットを供養することは大切であるといえるのです。

仏教の世界観では、動物にも霊があり人間と同様に供養の対象です。そして、それのみならず、動物の供養は飼主である信者の信仰に基づくものとされています(もちろん、仏教の宗派により違いはありますが)。言い換えれば、動物の供養は飼主による宗教行為であって、寺院側の読経などの供養は動物のみならず飼主に対する宗教行為でもあるわけです。

ペットの葬式をすることでペットロスが快復できたことも、葬式の必要性を語ることにはなるでしょうが、かなり現実的なメリットを語っただけとも評価されてしまうかもしれません。ですから、ペットの葬式の意義は、飼主に対する宗教行為であるという宗教的な側面――仏教に限りませんが――からも評価をしておくべきではないかと思うのです。



(3) 9月20日~26日が動物愛護週間であることを切っ掛けにして、今年は、「平成21年秋季彼岸会・犬猫小鳥等家畜総回向」を始まりとして、今回のエントリーに至るまで集中的にペットに関する問題を取り上げてみました。最初からの意図ではなかったのですが、くしくも供養で始まり供養で終わる形になりました。

「平成21年秋季彼岸会・犬猫小鳥等家畜総回向」(2009/09/21 [Mon] 15:54:44)
「飼い主側の姿勢は? ペット業界の姿勢は?~動物愛護週間(9月20日から26日)を契機として」(2009/09/22 [Tue] 23:59:38)
「ペットフード安全法、6月1日施行~ペットにも“食の安全”を確保」(2009/09/23 [Wed] 23:35:29)
「日本のペットは危機に直面している~ニュースJAPAN(フジテレビ)「時代のカルテ~命の現場」より」(2009/09/25 [Fri] 02:50:43)


こうしたエントリーを読み何かしら意識が変わることによって、今後ペットの存在をより良いものにしていこうという意欲と実行につながることを期待しています。

有権者が持つ選挙における一票によって政権交代が実現し、多くの良い変革が生じつつあります。こうしたことと同じように、良い変革をもたらすことができるか否かは、私たち市民の側に委ねられているのです。

テーマ:政治・時事問題 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
回向院事件
回向院事件について、私見を書いてみました。
http://tadaoka.tkcnf.com/pc/free3.html
2009/12/03 Thu 21:20:20
URL | 忠岡博 #1Nt04ABk[ 編集 ]
道尾さんありがとう!
アメリカ在住です。この記事を国際版で読みました。2009年7月4日アメリカ独立記念日に突然愛犬を亡くしました。私も同じ全く同じ経験をしました。遺灰を取りに行ってから急に自分の様子が変わりました。悲しくて泣こうとするとスーッと悲しみが身体から消えていくのです。コラムを切り取って大切に保管しています。ありがとうございます!
2010/01/11 Mon 14:13:02
URL | のんちゃん #/R0VTkRc[ 編集 ]
>忠岡博さん(2009/12/03 Thu 21:20:20)
お久しぶりです。
私事により、コメントへのお返事が遅れてしまい、大変申し訳ありません。


>回向院事件
>回向院事件について、私見を書いてみました。
http://tadaoka.tkcnf.com/pc/free3.html

貴重なご見解をありがとうございます。
ただ、紹介してくださったアドレスですと、拝見できないようです。
検索したところ、↓の方を見つけましたので、こちらで拝見させていただきました。
http://www.tadaoka.com/pc/free3.html

私のエントリーと異なり、「『信教の自由』の視点からではなく、税法の視点から、この判決について考察」されたとのことで、実に充実した論稿ですね。大変勉強になりました。ぜひ参考にさせて頂きます。
2010/01/14 Thu 23:47:52
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
>のんちゃんさん(2010/01/11 Mon 14:13:02)
はじめまして。コメントありがとうございます。


>アメリカ在住です。この記事を国際版で読みました
>コラムを切り取って大切に保管しています

良いコラムですよね。「大切に保管」しておくだけの価値があります。
遠く離れたアメリカでもこのコラムに惹かれた方がおられたなんて、非常に嬉しいです。


>2009年7月4日アメリカ独立記念日に突然愛犬を亡くしました
>遺灰を取りに行ってから急に自分の様子が変わりました
>スーッと悲しみが身体から消えていく

家族の一員というか、言葉を交わすことができなくても心が通じ合った存在を失うのは、心が欠けたように感じます。弔うことは、欠けた心・悲しみを暖めてくれるものなのかもしれませんね。

ところで、「遺灰を取りに行ってから~」というと、アメリカでのペット葬儀はどのような形なのでしょうか?
供養のような形態は行っているのでしょうか? インターネット上では、「アメリカのペット葬儀は、アメリカのペットの死後処置は、一般にペット火葬と自宅の庭への埋葬が一般的」という記述があるくらいですけれど。
2010/01/14 Thu 23:51:09
URL | 春霞 #ExKs7N9I[ 編集 ]
お返事ありがとうございます。
お返事ありがとうございます。ドメインの移転により、旧URLでは見ることができなくなり、申し訳ございませんでした。

私も、この事件のことを春霞さんのブログからたいへん勉強させていただいております。今後ともよろしくご教示ください。
2010/01/20 Wed 17:53:19
URL | 忠岡 博 #1Nt04ABk[ 編集 ]
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