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2006/11/09 [Thu] 23:33:31 » E d i t
安倍晋三首相と小沢一郎民主党代表は、11月8日、党首討論を行いました。特に憲法9条に関する憲法改正、日本の核保有議論の是非、未履修問題を含む教育基本法改正をめぐって論戦を交わしました。両氏の対決は10月18日以来、2度目となります。この点に触れた社説を紹介したいと思います。


1.東京新聞平成18年11月9日付社説

核武装論議 首相の答弁はおかしい 

 安倍晋三首相と小沢一郎・民主党代表による二回目の党首討論。首相は非核三原則の堅持を言いながら、なぜ、与党首脳らの核発言を許すのかが議題になった。首相の答弁は、おかしなものだった。

 先月の初顔合わせよりずっと分かりやすい論戦だった。テーマは憲法九条、「核武装」、教育基本法改正の三つ。小沢氏の淡々とした口調と首相の早口が対照的だった。首相答弁は説得力や迫力に欠けた。安全運転にせよ、首相はもっと言葉を磨かないといけない。

 注目されたのは「核武装」論議。小沢氏は「非核三原則を堅持するといいながら、内閣の一員や与党の政策責任者が核武装の論議くらいはしたっていいという話を度々やると、非核三原則を守るという言葉が国民にも国際社会にも素直に受け入れられなくなる」と持ちかけた。

 首相の反論は「議論をまったくできないということになれば、北朝鮮の核実験を受けて、(日米政府で)同盟による抑止力は揺るぎないものだ、という議論もできなくなる」というものだった。

 首相の発言には、飛躍とすり替えがある。「核は保有しない」「三原則を守る」と言いながら、核の議論を容認する分かりにくさが問題なのだ。小沢氏は核武装が「政治的、軍事的にも日本にプラスでない。唯一の被爆国として慎重な発言を」とたしなめた。

 騒ぎの当事者である中川昭一・自民党政調会長は当面、核武装論議に関する発言を慎む考えを示したようだ。当然だ。次は首相の番である。

 小沢氏は、首相が英紙などのインタビューに「憲法九条は時代にそぐわない」と述べたと伝えられたことをめぐって、真意を問うた。首相は憲法尊重義務を理由に多くを語らなかった。改憲を政治日程にのせると言いながら、肝心の点に国会の場で言葉を濁すのなら、そもそも外国の報道機関に軽々に語るべきでない。

 いじめ自殺や高校必修漏れ問題に関連して小沢氏は、制度に踏み込まなければ解決できないとして、教育基本法改正の政府案を出し直すよう求めた。審議引き延ばしを狙う民主党の思惑を差し引いても、同調する国民は少なくないのではないか。

 首相は、そうした問題に対応するのに必要な理念、原則が政府案に書き込んである、と反論した。防衛庁の省昇格問題と同様に、さらに論戦を深めてもらいたい。

 この二回戦は小沢氏の優位が目立った。進行中の対決型県知事選に影響が出るかもしれない。次は首相の分かりやすい主張を期待する。」




2.幾つかのポイントについて触れたいと思います。

(1) 

「首相の反論は「議論をまったくできないということになれば、北朝鮮の核実験を受けて、(日米政府で)同盟による抑止力は揺るぎないものだ、という議論もできなくなる」というものだった。

 騒ぎの当事者である中川昭一・自民党政調会長は当面、核武装論議に関する発言を慎む考えを示したようだ。当然だ。次は首相の番である。」


党首討論の前から、米中間選挙において民主党が優位にあることは、報道済みでした。そして、予想通り、民主党勝利の結果となり、そればかりか民主党は上・下両院で多数を占める結果にまでなったのです。そうなると、「ブッシュ政権のイラクや北朝鮮への強硬姿勢への批判が共和党の後退につながったため、……ブッシュ政権に米朝対話を求める圧力が高まる」(東京新聞11月9日付2面)という評価があるように、米国の対北朝鮮政策は変更せざるを得なくなりました。すなわち、米国による武力侵攻、単独行動といった強攻策はできなくなったのです。
だからこそ、本音では核武装をしたい中川昭一政調会長でさえ、中間選挙を気にして、中間選挙の結果が出る前から、核保有論議を沈黙したのです。

なのに、安倍首相は、まだ、閣僚や与党幹部という政府の方針に影響を与える立場の者による「核保有論議」をしていいというのです。日本だけが米国の北朝鮮政策と無関係に突出した行動をとる結果につながりますが、そんなことは不可能でしょう。中間選挙の影響が分からない安倍首相は、外交を職務とする内閣(憲法73条2号)の首長としての能力を欠如しているように思います。



(2) 

「首相の発言には、飛躍とすり替えがある。「核は保有しない」「三原則を守る」と言いながら、核の議論を容認する分かりにくさが問題なのだ。小沢氏は核武装が「政治的、軍事的にも日本にプラスでない。唯一の被爆国として慎重な発言を」とたしなめた。」


この批判も妥当と思います。 非核三原則を守る、核武装しないことを決定しているのであれば、核保有をしないと結論を述べ、淡々とその理由を挙げるだけでいいのです(自民党の石破議員がその趣旨の発言をしていました)。

賛否が分かれるからこそ議論・争点になるわけであって、政府内部では核保有・核武装を否定することが確定しているのですから、議論・争点にならないはずです。正確には、過去(=政府が三原則を採用する以前)においては議論・争点であったが、現在では(政府の立場では)議論・争点でないということでしょう。

小沢一郎民主党代表は、閣僚が核保有議論をすることを慎めと述べているのに、安倍首相は理解力が不足しているといえますし、安倍首相が「飛躍とすり替え」を行ったことで、安倍首相は論理的思考が乏しい人であるという証明になりました。


なお、麻生外相の一連の発言は、野党の質問に対して「国民の間で議論はあってよい。そういった議論を封殺するのはいかがなものか」と述べているのであって、閣僚や政府与党幹部の核保有議論を認めたものではないのです。中川自民党政調会長が、政府幹部の立場で、核保有論議の必要性を繰り返し述べているのとは異なるのです。

しかし、安倍首相の発言からすると、麻生外相の発言と異なり、閣僚の核保有議論を容認したことになります。麻生外相は、安倍首相の発言に呆れているのではないでしょうか?



(3) 

 「小沢氏は、首相が英紙などのインタビューに「憲法九条は時代にそぐわない」と述べたと伝えられたことをめぐって、真意を問うた。首相は憲法尊重義務を理由に多くを語らなかった。改憲を政治日程にのせると言いながら、肝心の点に国会の場で言葉を濁すのなら、そもそも外国の報道機関に軽々に語るべきでない。」

安倍首相の態度からすると、英米メディアに対して話すときには憲法尊重擁護義務(憲法99条)を遵守する必要はなく、国会で話すときには憲法尊重擁護義務(憲法99条)を遵守する必要があると理解しているようです。 
しかし、日本の統治権の範囲内であれば日本国憲法の効力が及ぶのですから(戸波「憲法」53頁)、首相は誰に話そうが、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を遵守しなければなりません。安倍首相は、憲法の理解に欠けているように思います。

大体、なぜ、国会という憲法改正論議がふさわしい場を与えられたのに、安倍首相は国会で話そうとしないのでしょうか? 「安倍首相が英米メディアに在任中の改憲意欲表明:「9条は時代にそぐわない」」や、「憲法改正論議は必要なのか?(上)~「安倍首相による憲法改正意思表明」に対する毎日新聞社説を参照しながら」で触れたことを再び引用しておきます。

「「日本国憲法の憲法改正は、日本の政治機構や日本国民の権利義務に関わることですから、まずは日本国民に対して堂々と表明すべきです。自民党総裁の任期期間を気にしているので、自民党総裁としての憲法改正意欲のようですが、日本国の首相という地位は切り離せないのですから、日本国の首相である以上、最初に、国会又は日本の報道機関に対して発表すべき問題のはずです。……

一体、安倍首相はどこの国の首相なのでしょうか? 安倍首相は、米国の州知事でしょうか? 未だに連合軍の占領下にあり、英米にお伺いを立てなければならないのでしょうか? 安倍首相が、最初に英米メディアに改憲意欲を表明するなんて、情けない気持ちになりました。」




(4) 

 「いじめ自殺や高校必修漏れ問題に関連して小沢氏は、制度に踏み込まなければ解決できないとして、教育基本法改正の政府案を出し直すよう求めた。審議引き延ばしを狙う民主党の思惑を差し引いても、同調する国民は少なくないのではないか。

 首相は、そうした問題に対応するのに必要な理念、原則が政府案に書き込んである、と反論した。」


安倍首相は、必修科目未履修問題について、学校関係者は使命感をもって望むべきだとか、教育委員会、学校現場しっかりしろといった趣旨のことを述べていました。要するにまずは精神論でなんとかしろというわけです。

しかし、精神論でできることには限界があり(夏木智「誰が教育を殺したか?」140頁参照)、教育委員会や学校側の責任にしても解決しないと思います。

16%未履修、02年に報告 研究会が文科省に

 高校での必修科目未履修問題に絡み、文部科学省の委託を受けた研究会が2002年春、全国の大学生を対象に調査を実施、回答した約3万3000人の16%が高校時代に必修科目の世界史を履修していなかったとの結果が出て、同省に報告していたことが8日分かった。

 未履修問題をめぐり同省は国会答弁などで「過去に発覚した未履修問題は、ごく一部の県の事例だったので全国調査しなかった」としており、4年以上前に報告を受けた全国的な未履修の実態を、見過ごしていたことになる。……」(東京新聞11月9日付朝刊1面



 「教育委員会には学校現場から教員が配属されていますし、少なからぬ教育委員会で文部科学省からの「出向人事」が行われていることは周知の事実です。こうした実状にあるにも関わらず、行政側が「知らなかった」として責任をもっぱら学校側に帰するのは全く不可解です。同時に、これを教育委員会の監督責任だとして教育委員会の廃止論に直結させたり、逆に、教育委員会の権限強化論に直結させ、あるいは、文部科学省のより強権的な監督の徹底を求めるのも、全くの筋違いです。

 今日の高校現場で、学習指導要領に抵触することは承知の上で、こうした「操作」をしてまでも「受験シフト」に走らざるを得ないところにまで追い込まれている、昨今の異様なまでの教育界の状況がなぜ生まれているのか、本当の原因がどこにあり、今、何が論じられるべきなのかが究明される必要があります。」( 「未履修」問題の真の原因はどこに? 教育現場の声を無視したルールと政策を押しつける文科省の統制と、新自由主義教育政策に報道のメスを 2006年11月3日  教育基本法「改正」情報センター(PDF)


要するに、文部科学省は、ずっと前から必修科目未履修問題について知っていて黙認していたのです。もっとも、伊吹文科相は、8日の衆院文部科学委員会で、「黙認したことはない」(毎日新聞11月9日付朝刊2面)と述べていますが、上のような事情からすると、その言葉を信じるわけにはいかないでしょう。
そうなると、黙認していた以上、未履修問題をいまさら問題視するのも不可解ですし、教育委員会や学校側だけの責任にすることは不合理です。

安倍首相は、「いじめ問題に対しては、道徳心や豊かな情操を養うなど大切な要素は書いてある」で済ましていましたが、そういった精神論で解決できるくらいなら、法律改正なんて不要なのです。だいたい、未履修問題において、未履修者に対して大目に見る救済策を認め、ルール違反を追認しておいて、どうして「道徳心」なんて言えるのでしょうか? このダブルスタンダードには呆れるばかりです。




3.小沢一郎民主党代表は、党首討論の最初の方で、安倍首相が、英米メディアに対し、憲法改正の第一の理由として「占領下に制定されたからだ」と述べていることに対して、

「占領下において、現在の日本国のほとんどの仕組み(法律・制度)を作ったのだから、そのすべてを否定するのか。いいものを残すのはダメなのか。」

との問い掛けをしていました。

憲法は、どこの国でも制定過程に問題を抱えています。イギリスの権利章典(成文憲法はないが、実質的に憲法の一部)が1689年に制定されたとき、ロンドン市内はオランダ軍の占領下にありました。1875年にフランスで制定された第三共和制の憲法も、パリがプロイセンの軍隊に包囲されている状況で、敗戦のなかで制定されました。1787年に制定されたアメリカ合衆国憲法も、ネイティブ・アメリカン(インディアン)が人口として算定されず、黒人奴隷は1人が「5分の3人分」の扱いで算定され、国民の意思が十分に反映しないまま制定されました(伊藤真「高校生からわかる 日本国憲法の論点」159頁)。

しかし、

「制定過程に問題があったからといって、『無効だから改正しよう』という声が上がることはありません。少なくとも近代的な立憲主義に基づく憲法を持つ先進国のなかで、それが改憲を求める根拠になっているのは日本だけです。」(伊藤真「高校生からわかる 日本国憲法の論点」159頁


要するに、近代的な立憲主義に基づく憲法を持つ先進国では、具体的に追加する条項があるからこそ改正するのであって、法の内容と無関係な制定過程上の問題は改正理由となりえないという共通理解があるのです。

憲法に限らず、法律を改正する場合、問題がある特定の条文があるから改正し、具体的な事例解決ができないから特定の条文を追加するのです。制定過程に問題があるから、という大雑把な理由で改正しないのです。

それなのに、安倍首相は、英米メディアに対して、憲法制定過程に問題があることが憲法改正理由である旨を語ったのですから、自分が憲法の知識を欠如していること・法改正のあり方の理解を欠如していることを、平然と表明したのです。憲法の理解に欠ける者が一国の代表者であるなんて、近代的な立憲主義に基づく憲法を持つ先進国の中では、日本だけだといえそうです。


党首討論において、小沢一郎民主党代表が、「いいものを残すのはなぜダメなのか」という真っ当な法的理解(憲法論・法律論)を説いても、安倍首相はまったく理解できませんでした。法律を審議し成立させる国会において党首討論を行うのですから、真っ当な法的理解のある者同士の討論であるべきです。しかし、今回の党首討論から判断すると、安倍首相が首相の地位にとどまる限り、真っ当な法的理解のある者同士の討論は難しいようです。




<11月11日追記>

「マガジン9条」さん「今週のキイ」(第26回)(今週のキー・ワード「嘘(うそ)」)によると、

 「中川氏は「私は非核3原則論を支持している。しかし、核を持つべきか否かは別問題。自由に議論すべきだ」。そして「北朝鮮が核保有を宣言した以上、日本も必要かどうかは、常に議論しておく必要がある」といった発言を繰り返している。
 しかし、ここには重大な誤魔化し、厳しく言えば「うそ」がある。
 「非核3原則を支持」しているならば、「この原則を守って、核廃絶のために我々が何をなすべきか」を議論するべきであって、「核保有の是非」を議論するというのは前提が間違っている。……

 厳しく言えば「うそ」がある、と前述したのはここである。
 中川氏も麻生氏も、ひいては安倍首相すら、本音を隠しているのだ。もし、本気で非核3原則を守り、永久に日本は核保有をしないと世界に向けて「非核平和国家」をアピールしたいのであれば、なにもこんなきな臭い時期にわざわざ世界の眉をひそめさせるような「核保有是非論」などを持ち出すことはあるまい。
 中川氏らは、今がチャンスと判断したのだ。平和な時期に「核保有論議」などを提起しても、誰にも相手にされない。しかし、現在の「北朝鮮憎し」の論調に乗ってしまえば、それほど批判はされずに持論を展開できる、との判断なのだ。……

核保有を認めよう、などという論調も雰囲気も、国民はおろか自民党内にさえまるでないにもかかわらず、この議論を繰り返すのは、どう考えても「核保有論」を認めさせたいからにほかならないだろう。
 でなければ、やはり議論は「どう非核3原則を維持し、世界にどう非核平和国家をアピールしていくか」「北朝鮮の核をいかにして破棄させるか」に議論を集中させるべきではないか。

 それをせずに、とにかく「核保有是か非かを議論しよう」というのは、どちらへ議論を誘導したいか、すでに尻尾を出しているようなものだ。
 ここが「うそ」だという論拠なのだ。」


非核三原則を保持するなら、保持を前提とした議論をするというのが論理的な考え方なわけで、当然の指摘です。だいたい、日本国はずっと前から、非核三原則の保持を表明しているのですから、今更「非核三原則」を保持する理由の説明を求める国なんてあり得ないし、理由だって明らかです。一体、非核三原則を保持する理由を誰に説明するのでしょうか? 

本音では、中川政調会長、安倍首相も核保有を望んでいて、そちらに誘導したい……という意図は、あからさまです。それにしても、中間選挙の行方は、民主党優位であることはずっと前から分かっていたのですから、「核保有是か非かを議論しよう」なんて非現実的な議論を、政府与党幹部や閣僚がする意味がないと思うのですが。

テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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