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2009/07/28 [Tue] 23:59:23 » E d i t
森英介法相は平成21年7月28日午前、山地悠紀夫さん(25)=大阪拘置所=、前上博さん(40)=大阪拘置所=、中国籍の陳徳通(41)=東京拘置所=ら3人に対して、死刑を執行したと発表しました。

森法相の下では3度目であって合計9人を執行しています。これで、未執行の死刑確定囚は101人となっています。衆院解散中の執行は1993年に一時止まっていた死刑執行が再開されて以来、例がありません。

執行は1月29日以来半年ぶりで、鳩山邦夫元法相時代から前回執行まで続いた2~3カ月に1回のペースは途切れた格好となっていますが、森法相は会見で「執行と執行との間隔や時期などは全く意識していない」などと、お惚け発言をしています(「死刑囚3人の刑執行 裁判員制度開始後初めて」(【共同通信】(2009/07/28 12:31)))。



1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成21年7月28日付夕刊1面(4版)

3人の死刑執行 半年ぶり
2009年7月28日11時46分

 森法相は28日午前に記者会見を開き、死刑囚3人の死刑を同日朝に執行した、と発表した。死刑の執行は今年1月に4人に対して行われて以来、約半年ぶりで、森氏が昨年9月に就任してからは3回目。確定死刑囚はこれで101人となった。

 執行されたのは、05年2~6月、大阪や兵庫に住む14~25歳の自殺志願者3人をインターネットの自殺サイトで誘い出して殺害した前上(まえうえ)博死刑囚(40)▽05年11月に大阪市のマンションで27歳と19歳の姉妹を殺害した山地悠紀夫死刑囚(25)▽99年5月に川崎市で同居していた中国人ら3人を殺害し、3人にけがを負わせた中国籍の陳徳通死刑囚(41)――の3人。前上死刑囚と山地死刑囚は大阪拘置所で、陳死刑囚は東京拘置所でそれぞれ執行された。

 前上死刑囚は07年、山地死刑囚は06年にそれぞれ大阪地裁から死刑判決を言い渡され、弁護人が控訴したが、いずれも本人が控訴を取り下げて07年に死刑が確定。陳死刑囚には横浜地裁川崎支部が01年に死刑判決を宣告。東京高裁、最高裁も一審判決の結論を支持し、06年に確定した。

 死刑は、約1年の在任期間中に13人に執行した鳩山元法相の在任中、約2カ月に一度の割合で執行された。森氏も昨年9月に就任して以来、昨年10月、今年1月と比較的近いペースで執行したが、今回はそれと比べて大きく間隔が空いた形となった。」



(2) 毎日新聞平成21年7月28日付東京夕刊1面

死刑執行:3人に執行 半年ぶり--法務省

 法務省は28日、大阪市の姉妹殺害事件の山地悠紀夫死刑囚(25)=大阪拘置所=や、自殺サイトを悪用した男女3人連続殺人事件の前上博死刑囚(40)=同=ら3人の死刑を執行したと発表した。死刑執行は1月29日以来6カ月ぶりで今年2回目。森英介法相の執行命令は3回目。これで確定死刑囚は101人になった。

 執行は5月21日の裁判員制度施行後初めて。07年12月の死刑執行以降、執行はほぼ2カ月に1回のペースだったが、今回は国会審議に加え、同制度の施行準備や、足利事件の再審開始決定(6月)をめぐる対応などで間隔が空いたとみられる。

 確定判決などによると、山地死刑囚は05年11月17日、大阪市浪速区のマンションに侵入。当時27歳と19歳の姉妹を刺殺し、現金を奪い室内に放火した。

 前上死刑囚は練炭自殺を装ってインターネットの自殺サイトへの投稿者を勧誘。05年2~6月、大阪府内で、当時14~25歳の中学生や大学生ら男女3人を窒息させ殺害した。地裁公判で「半年以内に手続きを終えてほしい」と述べていた。

 陳徳通死刑囚(41)=東京拘置所=は99年5月、川崎市のマンションで同居中国人男女から家賃の未払いなどを理由に暴行されたことを恨み、当時23歳と30歳の男性2人と27歳の女性1人の計3人を殺害した。

 死刑確定から執行までの期間は、山地死刑囚が2年1カ月、前上死刑囚が2年、陳死刑囚が3年だった。【石川淳一】

毎日新聞 2009年7月28日 東京夕刊」



2.関連記事・解説記事を幾つか。 

(1) 朝日新聞平成21年7月28日付夕刊11面(4版)

衆院解散中死刑を執行 法相「職責、粛々と」
2009年7月28日15時2分

 法務省は28日、3人の死刑執行に踏み切った。政権交代をかけた衆院選の直前。野党の死刑反対派の議員からは批判の声が上がった。

 法務省内で記者会見した森法相は、半年ぶりの執行について「間隔や客観情勢との関係において、時期は全く意識していない」と強調した。衆院が解散した政治的な空白期に執行した理由を問われると「解散しても法務大臣であり、大臣としての職責を粛々と果たした」と語った。

 死刑に反対する国会議員でつくる「死刑廃止議員連盟」の保坂展人・前衆院議員は「国会議員が声を上げにくいこの時期を選んで、だれも責任を取らないような形で執行したとしか考えられない」と批判。死刑に反対する市民団体「フォーラム90」の関係者も「正直言って、総選挙前にあるとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。

 フォーラム90によると、衆院解散中の執行は93年に一時止まっていた死刑執行が再開されて以来、例がない。

 法務省は、批判を覚悟のうえで執行にこだわったようだ。鳩山元法相以降続いていた「約2カ月~3カ月に1回」という執行のペースは崩れていた。17年半ぶりに受刑者が釈放され、再審開始が決まった「足利事件」などがあり、「執行しようと思っても、見送らざるを得ない事情が続いた」(幹部)という背景があった。

 だが、初めての裁判員裁判が8月3日に東京地裁で開かれることが決まった。ある幹部は「これ以上、期間が開いてしまうと、裁判員制度を担う市民たちに死刑制度の必要性を理解してもらえなくなる」との思いを漏らした。(市川美亜子、延与光貞)

          ◇

 山地死刑囚に娘2人を殺害された上原和男さん(60)=奈良県平群(へぐり)町=28日午前、マスコミからの電話で死刑執行を知った。事件から4年近くたつが、2人の遺骨は今も自宅に置いてある。 「執行までこんなに時間がかかるなんて」と憤りが募る。一方で、「人を殺(あや)めたら死をもって罪を受け入れるのは当然のこと。肩の荷が下りたが、心はすんなりとは整理できない。2人は家に帰ってこず、声も聞こえない。死刑になったとしても物足りない」と語った。

 長谷川博一・東海学院大教授(臨床心理学)は、前上死刑囚と17回にわたって接見していた。最後に接見した07年6月に「もう会いたくない」と言われた。「『自分一番理解してくれる人に会うと次に会うのが楽しみになる。死刑を待つ苦しみが共存する毎日がつらい。僕ってそんなに強くないんですよ』という言葉が印象的だった」と振り返った」



(2) 毎日新聞平成21年7月28日付東京夕刊6面

解説:死刑執行、実情透明化を 裁判員制度施行、議論の材料に

 裁判員制度施行後初めてとなる28日の死刑執行は、前回から約半年の間隔があり、ほぼ2カ月間隔が続いた時期からペースダウンした。背景には再審請求中の死刑確定者が、現在63人と6割強に上っている現状が挙げられる。

 法務省は再審請求中の死刑執行を避ける傾向にある。確定から一定期間の後、請求準備に入る死刑確定者は多いが、ある幹部は「多くが執行逃れのための請求」と指摘する。再審請求が棄却された直後に再度、請求する動きがある一方で、請求のない死刑囚が確定から2年前後の早さで執行される実情もある。

 裁判員制度では、裁判員が死刑判決にかかわりたくないとの理由で辞退したいとの声もあり、最大の関心事となっている。森英介法相は「死刑について国民的議論が起きるのは歓迎すべきだ」と指摘している。執行順や時期がどう決まるかなど、まずは執行の現実を透明化し、議論の材料とすべきだろう。【石川淳一】

毎日新聞 2009年7月28日 東京夕刊」



(3) 読売新聞平成21年7月28日付夕刊12面(4版)

「悲しみ癒えぬ」執行の日、被害者遺族は…

 マンションに押し入って姉妹を刺殺した事件など、三つの凶悪事件の死刑囚の刑が28日、執行された。遺族は「悲しみが癒えることはない」などと語った。

 大阪市浪速区のマンションで山地悠紀夫(ゆきお)死刑囚(25)に殺害された上原明日香さん(当時27歳)と妹の千妃路(ちひろ)さん(同19歳)の父親の和男さん(60)は「肩の荷が下りた。事件からこの3年半は、長かった」と振り返った。和男さんによると、妻が仏壇に供えてある姉妹の遺骨に手を合わせて、死刑執行を報告。和男さんは昨年、脳梗塞(こうそく)を患い、「自分が死ぬのが先か、山地死刑囚の執行が先か、そればかり考えていた」と話した。

 一方、自殺サイトで知り合った前上(まえうえ)博死刑囚(40)に殺害された神戸市の男子中学生(当時14歳)の父親(42)は「毎日、息子の写真に語りかけながら、この日を待ってきた」とし、「息子は殺害される前、何時間も怖くて苦しい思いをした。最後に目の前で謝罪の言葉を聞きたかった」と語った。

 前上死刑囚は殺害時、男子中学生の声を録音し、自宅に現金を要求する電話をかけた際に流した。父親は「『助けて』と訴える息子の声が、今も耳に響いている。死刑執行は一つの区切りだが、家族を失ったやり切れない気持ちは、私が死ぬ日まで続くだろう」と話した。

(2009年7月28日15時44分 読売新聞)」



解説:確定後2~3年で執行 2人は自ら控訴取り下げで

 一般市民が死刑判決にもかかわることになる裁判員制度が5月に始まってから初めて、死刑の執行が行われた。3人のうち、山地悠紀夫、前上博両死刑囚は、自ら控訴を取り下げて刑を確定させており、山地死刑囚は確定から約2年2ヵ月後、前上死刑囚は約2年1ヵ月後の執行となった。また、陳徳通死刑囚も確定から約3年の執行で、2007年までの10年間に執行された35人の執行までの平均期間約8年と比べると、いずれも大幅に短かった。

 今回の執行で死刑確定者は101人となったが、うち再審請求している死刑囚は63人。これらの理由で執行が先に延びる死刑囚が増える一方、今回の山地、前上両死刑囚や、04年に確定後1年で執行された、大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件の宅間守元死刑囚のように、死刑を望んだり、受け入れたりしている死刑囚の執行は早まる傾向にある。

 一方、鳩山邦夫元法相以降、2~3か月間隔で執行されてきたが、今回は半年ぶりの執行だった。森法相は会見で、「前回からの間隔は念頭に置いていない」としているが、足利事件で再審開始が蹴ってしたことなども、間隔が広がった背景にあるとみられる。 (中村亜貴)」




3.従来は、確定から執行までの平均期間は約8年でした。しかし、近時は、短期間での執行が多くなっています。今回も、山地悠紀夫さんは確定から約2年2ヵ月後、前上博さんは確定から約2年1ヵ月後の執行であり、陳徳通死刑囚も確定から約3年の執行という短期間での執行となっています。山地悠紀夫さんと前上博さんは自ら控訴を取り下げて1審判決が確定したという経緯もあって、山地さんは事件発生から約3年8ヵ月、前上さんは約4年5ヵ月と、異例の短期間での執行となっています(「山地死刑囚ら3人の刑執行=姉妹殺害、確定から2年-自殺サイト殺人前上死刑囚も」(時事通信:2009/07/28-12:32))。

しかし、被害者遺族の一部にとっては、長すぎると感じています。

「山地死刑囚に娘2人を殺害された上原和男さん(60)=奈良県平群(へぐり)町=28日午前、マスコミからの電話で死刑執行を知った。事件から4年近くたつが、2人の遺骨は今も自宅に置いてある。 「執行までこんなに時間がかかるなんて」と憤りが募る。一方で、「人を殺(あや)めたら死をもって罪を受け入れるのは当然のこと。肩の荷が下りたが、心はすんなりとは整理できない。2人は家に帰ってこず、声も聞こえない。死刑になったとしても物足りない」と語った。」(朝日新聞)


もっとも、この被害者遺族は、「昨年、脳梗塞(こうそく)を患い、『自分が死ぬのが先か、山地死刑囚の執行が先か、そればかり考えていた』」(読売新聞)とのことですから、疾患を抱えているという特殊な状況下での個人的な感覚から、執行までの時間が長く感じているということのようです。

そうした事情はあるとしても、「人を殺(あや)めたら死をもって罪を受け入れるのは当然」という思想をもっており、その思想が正しいものだと確信しているのであれば、裁判をすることすら不要です。殺人罪を規定する刑法199条は、人を殺害しても死刑以外の刑罰があることを明記している以上、法的には「人を殺(あや)めたら死をもって罪を受け入れるのは当然ではない」のに、当然視してしまうのですから。

自分の子供が若くして殺害されたという親として切ない気持ち、被害者及び被害者遺族の感情の発露であるにしても、裁判不要(=私刑(リンチ)を容認)と言わんばかりの発言には困惑するばかりです。


(1) いぶかしく感じるのは、衆議院解散中の死刑執行であったということです。

 「法務省は28日、3人の死刑執行に踏み切った。政権交代をかけた衆院選の直前。野党の死刑反対派の議員からは批判の声が上がった。

 法務省内で記者会見した森法相は、半年ぶりの執行について「間隔や客観情勢との関係において、時期は全く意識していない」と強調した。衆院が解散した政治的な空白期に執行した理由を問われると「解散しても法務大臣であり、大臣としての職責を粛々と果たした」と語った。

 死刑に反対する国会議員でつくる「死刑廃止議員連盟」の保坂展人・前衆院議員は「国会議員が声を上げにくいこの時期を選んで、だれも責任を取らないような形で執行したとしか考えられない」と批判。死刑に反対する市民団体「フォーラム90」の関係者も「正直言って、総選挙前にあるとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。

 フォーラム90によると、衆院解散中の執行は93年に一時止まっていた死刑執行が再開されて以来、例がない。 」(朝日新聞)


衆議院の解散中は、政治的な空白期ですし、立候補者及び立候補者となっている国会議員は選挙運動に集中しているのですから、「国会議員が声を上げにくい」時期です。特に、衆議院選挙後には政権与党となることがほぼ確実である民主党は、「官僚政治からの脱却」を掲げていることから、今までのように法務省が独断で政治的な行為を行うことはできなくなります。政治的な空白期、民主党が政権を取る直前を狙って死刑を執行するのですから、これでは火事場泥棒そのものです。法務省はどこまでえげつないのかと、呆れてしまいます。

与野党を含めた国会による行政への抑制力が低下した、言い換えれば権力分立制の下で、国会による行政(ここでは法務省)に対する抑制が弱まっている状態を狙って、法務省が死刑を執行したことは、権力分立制の見地からして問題があるように思われます。



(2) なぜ、法務省が批判を覚悟で執行したのかというと、裁判員制度を担う市民たちに死刑制度の存在を顕示するためのようです。

 「法務省は、批判を覚悟のうえで執行にこだわったようだ。鳩山元法相以降続いていた「約2カ月~3カ月に1回」という執行のペースは崩れていた。17年半ぶりに受刑者が釈放され、再審開始が決まった「足利事件」などがあり、「執行しようと思っても、見送らざるを得ない事情が続いた」(幹部)という背景があった。

 だが、初めての裁判員裁判が8月3日に東京地裁で開かれることが決まった。ある幹部は「これ以上、期間が開いてしまうと、裁判員制度を担う市民たちに死刑制度の必要性を理解してもらえなくなる」との思いを漏らした。」


間違ったDNA鑑定によって有罪となった足利事件が再審開始が決まり、足利事件と同じ時期のDNA鑑定で有罪となって執行された飯塚事件も判明したことから、「執行しようと思っても、見送らざるを得ない事情が続いた」ことは理解できるかと、思います。もし、法務省が強行していたら、麻生政権共々猛烈な批判に晒されたことでしょう。

しかし、だからといって、裁判員制度を担う市民たちに死刑制度の存在を顕示するために、死刑を執行するのは、あまりにも人の命を軽視した扱いです。裁判員に対して死刑制度の必要性を説くのであれば、裁判で説明すれば足りるのであり、裁判員にならない市民にも向けて命を奪うというデモンストレーションをしてみせる必要性はないはずです。

法務省とすれば、衆議院解散中であり、政治的な影響力が少ない時期にこそ、死刑を執行してみせることで、死刑制度が存在することを全国民に誇示して力(=官僚の力?)を見せ付けることで、裁判員裁判での裁判員にも死刑を下すことの覚悟を促すためになしたように思われます。

しかし、死刑の運用に対する透明性の確保や死刑制度自体が見直しの対象である現状において、死刑制度が存在することを全国民に誇示してみせることは、極めて政治的な判断ですから、法務官僚が独断で実施していいこととは思えません。




4.最後に、「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」の抗議声明を引用しておきます。

(1) 「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」の抗議声明(09.7.28)

 「抗 議 声 明

 森英介法務大臣が、本日(7月28日)、陳徳通さん(41歳:東京拘置所)山地悠紀夫さん(25歳:大阪拘置所)、前上博さん(40歳:大阪拘置所)の死刑を執行したことに対し、強く抗議する。

 今回の執行は、政権交代を前にして、今後の執行が困難になることを危惧して、駆け込み的に執行を行ったものであり、同時に、裁判員裁判実施を前にして、裁判員の死刑制度に対する疑念を強引に消し去ろうとするものであって、極めて政治的な色彩の強い恣意的な執行である。しかも、衆議院の解散・総選挙という、国会の監視・監督の全くない中での執行であり、また、退任を約1ヶ月後に控え、法務大臣としての責任を負うことのない時期における執行であって、極めて無責任というほかなく、厳しく非難されなければならない。

 とりわけ、昨年の10月の執行にあっては、無実の久間三千年さんを、その無実の訴えを聞かずして無理矢理に死刑を執行するという大きな過ちを犯したにもかかわらず、その反省もせず、本年1月に続いて3度目の死刑執行を行うというのは、死刑に対する最後の歯止めとならなければならないとする法務大臣の法的責任の放棄であり、職権の濫用というほかない。

 2006年12月25日の長勢元法務大臣の死刑執行に始まり、鳩山、保岡の各法務大臣へと続く連続的な大量の死刑の執行は、わずか2年7ヶ月の間に、11回、合計35名にのぼり、森英介法務大臣だけでも、在任10ヶ月の間に合計3回、9名の執行を行っており、過去30年間に類例がなく、死刑廃止に向かう国際的なすう勢に完全に逆行するものであって、強く非難されなければならない。

 国家・個人を問わず、人の命を尊重し、如何なる理由があろうとも人の命を奪ってはならないことは、人類共通の倫理であり、民主主義の基本的な理念である。そして、それ故に、すでに世界の3分の2以上の国と地域が死刑を廃止しているし、国連は一昨年と昨年12月の2回にわたりすべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求めたのであり、これに応えて死刑存置国は死刑の執行を減少させてきたのである。

 昨年10月ジュネーブで開かれた国際人権(自由権)規約委員会において、日本の死刑制度について審査が行われ、死刑廃止を求める厳しい批判がなされた。日本政府は、この批判に謙虚に耳を傾け、死刑の廃止に向けてスタートを切るべきであったにもかかわらず、これにあえて逆らい、死刑の執行を強行したことは、国際的にも許されない。

 陳徳通さんは、日本語が不自由なために、裁判においても、十分な審理が受けられず、その結果、強盗殺人の実行行為者が誰かなど、判決には不自然・不合理な点が多々あるだけでなく、恩赦の出願も行っており、今後再審を行いたい希望も持っていたし、せめて家族と面会をさせてほしいと訴えていた。精神病にも罹患していた。

 山地悠紀夫さんと前上博さんは、いずれも控訴取り下げで確定しており、三審まで裁判を受ける権利を保障されておらず、また事件の背景をなす生育環境や人格特性について十分に審理が尽くされておらず、さらにその責任能力についても疑問があり、死刑の量刑が正しかったか否か大いに問題がある。

 以上のほか、法的に何らの義務がないにもかかわらず、死刑の執行を強いられている拘置所職員の苦痛にも心を致すべきである。

 私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また、森英介法務大臣に処刑された陳さん、山地さん、前上さんに代わり、そして、この間連続的に死刑を執行させられている拘置所の職員に代わって、森英介法務大臣に対し、強く抗議する。

2009年7月28日

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」



(2) 山地悠紀夫さんと前上博さんは、いずれも控訴取り下げで確定しており、三審まで裁判を受ける権利を保障されていませんでした。しかし、例えば山地さんの場合は、「死刑でいい」と言い張ってしまい、弁護士が意思疎通するのも難しく、はなから自暴自棄でした。そうした自暴自棄の果てに控訴取り下げに至ったのですから、慎重な裁判の結果、死刑判決が下ったわけではないのです。

死刑判決の言渡しを受けた被告人が、判決の衝撃及び公判審理の重圧に伴う精神的苦痛によって拘禁反応等の精神的障害を生じ、苦痛から逃れることを目的として上訴を取り下げた場合には(刑訴法359条)、自己の権利を守る能力を著しく制限されていたものであって、取り下げは無効であるというのが判例(最決平7・6・28刑集49・6・785)です。

このように判例は、死刑相当事件では、できる限り上訴取り下げを無効にするようにして、刑訴法359条の修正を図っているのですから、できる限り慎重な審理を行う運用を行うべきです。

山地さんの場合、16歳だった2000年7月には、金属バットで母親を殴り殺害したとして、少年院送致の保護処分を受けていたのですが、少年院では殺害に至った心理的な病巣を直すことなく、より歪みを悪化させた状態で、一般社会に出てきてしまったのです。山地さんの責任に押し付けて済む問題ではないようの思われます。



(3) 「陳徳通さんは、日本語が不自由なために、裁判においても、十分な審理が受けられ」ないということが指摘されています。このように、外国人にとっては日本の刑事手続を知らない以上、しかも日本語でなしている法廷では、どうしても訴訟手続き十分に理解できないままでの刑事裁判になりかねません。外国人が十分に理解できない法廷での審理は、適正手続の保障(憲法31条)に反しているように思われます。

ほかにも、「恩赦の出願も行っており、今後再審を行いたい希望も持っていた」ようです。自由権規約委員会は、パラグラフ16において、「死刑囚に対しては、恩赦、減刑、執行延期手続きなどがより柔軟に認められるべきである」としていることから(「国連の自由権規約委員会が「最終見解」を公表~合計34項目にも及ぶ詳細な評価・勧告」(2008/11/03 [Mon] 23:27:02))、今回の執行は、日本も批准している自由権規約上、問題があるように思われます。



(4) 今回の衆議院選挙は、政権交代選挙ですから、有権者は、長年与党であった自民党の政権下の政治すべてについて検証している状態です。法務省は政治的な空白期を狙って死刑執行をしたわけですが、このような法務官僚の独善を許すような自民党政権を維持するのかどうかも含めて、有権者は判断するべきであるように思います。

テーマ:死刑 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
「人を殺めたら死をもって罪を受け入れるのは当然」という言葉に考えさせられました。個人でなく国家だったら無抵抗な人を殺しても罪にはならないのでしょうか。
2009/07/30 Thu 20:32:29
URL | S #mQop/nM.[ 編集 ]
"「人を殺(あや)めたら死をもって罪を受け入れるのは当然」という思想をもっており、その思想が正しいものだと確信しているのであれば、裁判をすることすら不要です"
上記の主張はおかしいのでは?
なぜなら、裁判は第一義的に「被告がなにを行ったか」を判断する所です。
その結果(誰が、何を行ったか)によって、誰が何を持って罪を償うか、を決定するのです。

「人を殺めたら死を持って・・・裁判をすることすら不要」というのは裁判制度が、量刑決定のみを司るかの様な印象操作であり、(裁判を経て)犯罪者となった人、犯罪被害者の関係者はもちろん、裁判制度その物を貶めるのではないでしょうか。
2009/08/17 Mon 14:56:26
URL | トラキチ #-[ 編集 ]
承認待ちコメント
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2014/11/26 Wed 14:45:20
| #[ 編集 ]
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