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2009/06/23 [Tue] 23:59:20 » E d i t
免田事件や島田事件など、死刑確定後、再審で無罪となった4事件の元弁護人有志が「誤判を防ぐための8つのお願い」という提言をまとめ、平成21年6月22日、東京都内の弁護士会館で発表しました。

元弁護人は、これら4事件で誤判が生じた原因には、捜査機関が自白を強要したり、「誤った鑑定」を出し、被告人に有利な証拠を隠匿したなど4つの共通点があると指摘し、裁判員になるかもしれない市民に対して、誤判を防止するために、「取り調べが適正だったか」「鑑定は適正だと確認できたか」など8点に配慮して、審理や評議に臨んでほしいと呼び掛けています(時事通信:2009/06/22-12:17)。



1.報道記事を幾つか。

(1) 共同通信(2009/06/22 12:46)

裁判員向けに「誤判防いで」 死刑冤罪事件の元弁護人が訴え

 8月から始まる裁判員裁判を前に、香川県の財田川事件など確定死刑囚が再審無罪となった冤罪4事件の元弁護人有志が22日、東京都内で記者会見し、裁判員を務める国民に向け「被告は無罪という前提で裁判に臨んでください」などとする「誤判を防ぐための八つのお願い」を公表した。

 元弁護人32人の連名で、誤判の原因には自白の強要などの共通点があると指摘。有罪の確信が持てなければ無罪にし、自白調書があっても取り調べが適正と確認できないときは信用しないよう求めている。

 さらに、(1)DNA鑑定など鑑定結果をよく理解し、その方法が適正かどうかを確認する(2)有罪、無罪の判断は、被害者の心情と離れて判断する(3)違法な捜査や信用できない証拠にはノーを唱える-などの点を強調している。

2009/06/22 12:46 【共同通信】」



(2) 朝日新聞平成21年6月23日付朝刊37面(14版)

「冤罪4事件」元弁護人 裁判員へお願い文

 裁判員裁判が実際に始まるのを前に、いったん死刑が確定した人が再審で無罪となった「冤罪4事件」で弁護人を務めた弁護士の有志が22日、裁判員となる市民に向けて「誤判を防ぐための8つのお願い」と題した緊急アピールの文書を公表した。再審開始が確実視されている「足利事件」にも触れ、 「『自白』に対する疑問を持ち続けてほしい」と訴えている。

 4事件は、80年代に再審無罪判決が出た「免田」 「財田川」 「松山」 「島田」の各事件。<1>被告が「犯人でない可能性」が残る場合は無罪とする<2>自白に至るまでの取り調べが適正だと確認できなければ、自白は「信用できない」と判断する<3>DNA型鑑定などに「専門知識がないから」とひるまず、鑑定人に質問し、資料の入手法などが適正かを確認する――といったことを要望している。

 記者会見を開いた松山事件を担当した青木正芳弁護士は「裁判員が刑事裁判の原則を理解し、裁判所の判断に厳しい目を向けていけば誤判は減っていくだろう」と裁判員制度に期待を込めた。 (市川美亜子)」


この提言は、新聞報道では、朝日新聞が少しは目に付くように見出しを大きくしているものの、他紙ではごく小さく扱っているだけですから、半ば無視されているに近いものです。「誤判を防ぐための8つのお願い」として8つの点に絞っているにもかかわらず、どこも8つを紹介することもしていないのです。

報道機関として、本当にそれでいいのでしょうか?



2.裁判員となるかもしれない市民にとって、その多くが「自分が関わった裁判で誤って有罪にすることだけは避けたい。特に、無実の者に対して死刑判決を出すことだけはしたくない」とと思っているはずです。

そうした健全な意識を持っている市民にとって、この提言は知る価値があるものといえます。新聞紙面では、ごく簡単に紹介するだけですが、「誤判(冤罪)防止コム」では、「誤判を防ぐための8つのお願い」の全文を掲載しています。そこで、このサイトから全文を紹介することにします。


-国民の皆さま、裁判員になられる皆さま-
  誤判を防ぐための8つのお願い

 死刑再審4 事件元弁護人有志のアピール

 私たちは、免田事件、財田川(さいたがわ)事件、松山事件、島田事件という死刑確定事件の再審裁判の弁護人でした。

死刑台からの生還

 これらの事件の4 名の死刑囚は、第1審で死刑判決を受けた後、約30年間獄中で死刑執行の恐怖に向き合いながら、再審裁判を闘いました。その結果、無実(罪を犯していないこと)が明らかになり、無罪判決を受け釈放されました。

誤判(冤罪)の原因は何か

 これらの事件で、誤った裁判が行われた原因には、共通点があります。
1 警察官や検察官が、被告人を長期に勾留したり、長時間の取り調べを行ったり、様々な方法で自白を強要し、ついに自分が犯人であることを認める「虚偽の自白」に追い込みました。
2 さらに、検察官は「誤った鑑定」を裁判に提出しました。
3 加えて、警察や検察官は、被告人の無罪を裏付ける被告人に有利な証拠を隠して、裁判には出しませんでした。
4 裁判所は、このような「虚偽の自白」や「誤った鑑定」を信用し、法廷での「私は犯人ではありません。」という被告人の叫びを信用せず、死刑判決を下しました。


 これらは、過去の、昔のことではなく、例えば、氷見事件(富山県)、志布志事件(鹿児島県)、足利事件(栃木県)など多くの事件において、捜査、起訴、裁判で、今でも同じような誤りを犯しています。
 誤判は絶対にあってはならないことです。

裁判員の皆さまへのお願い
 裁判員裁判においては、このような誤った裁判を防ぐために、以下の点に配慮され、審理と評議に臨んでくださるよう、お願いします。

1 「被告人は無罪」という推定の下に裁判を
 被告人は、有罪の判決が確定するまでは、「罪を犯していない人」として扱われなければなりません(無罪推定の原則)。この原則は国際的に確立し、憲法でも保障されています。
 テレビ・新聞・週刊誌などの報道があっても、皆さまは、「被告人は無罪である」という前提で裁判に臨んで下さい。

2 検察官に有罪の立証責任があります
 その犯罪が確実に被告人によって行われたことを、証拠によって証明する責任は、検察官にあります。
 皆さまは、検察官の主張と証拠を見て、「間違いなく有罪といえるか」、「確実に犯人であると言えるか」を判断してください。
 市民の目から見ても間違いないといえるのか、それを判断するのが裁判員の役割です。被告人が有罪とは言えない場合、誰が真犯人か、真実は何かを追求することは、皆さまの任務ではありません。

3 有罪の確信が持てなければ「無罪」
 もし、被告人が有罪らしく見える証拠があったとしても、皆さまの経験や知識から考えて、犯人でない可能性が残る場合には、それは「確実に犯人である」とは言えません。
 そのような場合は「有罪ではない」、すなわち「無罪」とするのが、刑事裁判の鉄則です。被告人・弁護人が、無罪であることを証明する責任はありません。

4 違法な捜査や信用できない証拠には“No!”を
 捜査は、法律で定めた厳格な手続きに従って行わなければなりません。これに違反して集めた証拠を裁判に出すことは許されません。そのような証拠は裁判を誤らせることになるからです(違法収集証拠排除の原則)。
 そのことを弁護人が主張することがあります。また、手続上は問題がなくても、いろいろな観点から信用できない、と弁護人が指摘することもあります。有罪の証拠として扱うことに疑問はないか、その証拠は信用できるかなど、皆さまの経験や知識をもとに評議で意見を述べてください。

5 取調べは適正であったかを確認しましょう
 被告人が、捜査の段階で犯人であることを認める自白調書に署名したが、裁判になって否認することがあります。その場合、検察官が、自白調書を作っている場面やその後の場面だけの録画や録音を証拠として出すことがあります。
 しかしそれでは、自白に至るまでにどのような取調べを受けたのか分かりません。場合によっては、自白の強要など、裁判員には見せたくないことがあったかもしれません。
 取調べの一部の録画・録音しか出されず、取調べの全てが適正であったことを確認できないときは、その“自白”には疑問を持ち、その疑問が晴れないときは、信用できないと判断しましょう。

6 鑑定は適正であることを確認できましたか
 DNA鑑定を含む法医学の鑑定書やその他の鑑定書、実験結果などが提出され、鑑定人が証言することがあります。わかりやすい説明が試みられるはずですから、専門知識がないからとひるまないでください。
 わからないことは法廷で鑑定人に質問し、鑑定結果をよく理解するよう努めてください。
 同時に、鑑定資料の入手・保管・鑑定人の選任・鑑定や実験の方法・鑑定(検査)技術・推論・再鑑定のための資料の保存などが、適正に行われているかどうかを十分に確認した上で、その鑑定結果が信用できるかどうかを判断してください。

7 有罪・無罪の判断は被害者の心情とは離れて
 裁判に、被害者やその遺族が参加されることがあります。その心情はくみ取っていただくべきですが、有罪・無罪の判断はこれを離れて、法廷に出された証拠から判断してください。

8 論告・最終弁論に耳を傾けてください
 全ての審理が終わった後で、検察官は論告として、弁護人は弁論として、最終的な主張を述べます。
 その裁判において調べるべき十分な証拠が出されたか、被告人に有利な証拠が未提出ではないか、排除すべき証拠はなかったか、証拠が信用できるか否か、その理由は何かなど、皆さまの判断の手がかりになることです。弁護人の弁論には、特に耳を傾けてください。
 裁判全体を通じて、少しでも気にかかること、疑問に思うことがありましたら、評議で率直に話しましょう。死刑再審4事件等においても、何気ない疑問や質問から思いがけない事実や問題点が出てきました。それは、有罪・無罪の判断に大きな影響をもたらしました。


 誤判を繰り返さないために、国民の皆さまに、裁判員になられる皆さまに、死刑再審4事件を担当した私たち弁護人は、心からお願いします。

2009 年(平成21 年)6 月22 日
死刑再審4 事件元弁護人有志(順不同)
 免田事件
  眞部勉(第一東京弁護士会)   古原進(長崎県弁護士会)

 財田川事件
  岡田忠典(大阪弁護士会)     古健司(兵庫県弁護士会)
  上野登子(第二東京弁護士会)  岡部保男(東京弁護士会)
  猪崎武典(香川県弁護士会)    嶋田幸信(香川県弁護士会)

松山事件
  青木正芳(仙台弁護士会)     犬飼健郎(仙台弁護士会)
  佐川房子(仙台弁護士会)    阿部泰雄(仙台弁護士会)
  西口徹(東京弁護士会)      岡田正之(東京弁護士会)
  袴田弘(仙台弁護士会)      橋治(仙台弁護士会)
  佐藤正明(仙台弁護士会)     増田隆男(仙台弁護士会)

島田事件
  大塚一男(東京弁護士会)     関原勇(東京弁護士会)
  西嶋勝彦(東京弁護士会)     田中敏夫(東京弁護士会)
  今村敬二(第一東京弁護士会)  佐藤博史(第二東京弁護士会)
  市川勝(静岡県弁護士会)     河村正史(静岡県弁護士会)
  阿部浩基(静岡県弁護士会)    小倉博(静岡県弁護士会)
  藤森克美(静岡県弁護士会)    黒安生(静岡県弁護士会)
  石田享(静岡県弁護士会)     津留崎直美(大阪弁護士会)

(http://www.enzaiboushi.com が近日中に開設され、このアピール全文と死刑再審4 事件の資料が掲載されます。)」


この提言を読んでみて、「初めて知ったことばかりでためになった」と思う方もいるでしょうし、他方で、「当たり前のことを書いているだけではないか」と思った方もいたかもしれません。冤罪報道に目を配っている方であれば、幾つかの点は知っていることといえるでしょうから、さほど重要な提言でないと思うかもしれません。

しかし、少なくとも、この4事件にかかわった裁判官は、この8つの点に配慮できなかったのです。それも、「これらの事件の4 名の死刑囚は、第1審で死刑判決を受けた後、約30年間獄中で死刑執行の恐怖に向き合いながら、再審裁判を闘いました」のですから、約30年間もの間、再審裁判にかかわった多数の裁判官が、「8つの点」に配慮できなかったのです。

裁判員となる市民は、「8つの点」に配慮できないかもしれない裁判官とともに事件と向き合うのですから、よほどの覚悟を持って裁判官と対峙しないと、つい審理や評議において裁判官の誘導に負けて「8つの点」を失念してしまうかもしれないのです。

裁判員となるかもしれない市民にとって、<1>自らが冤罪に手を染めてしまい、一生涯、後悔することがないように、また、<2>無実の者を何十年も獄中に閉じ込めることがないように、そして、<3>無実の者を処罰することで真犯人が処罰を免れ、被害者に悔しい思いをさせないよう、この提言をよく読んでおいてほしいと思います。


テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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