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2006/11/05 [Sun] 07:34:05 » E d i t
最近、安倍首相は、英米メディアに対して、在任中に憲法改正をする意思があることを示しました。では、本当に憲法を改正する必要があるのでしょうか? 今回は、まず、「安倍首相が英米メディアに在任中の改憲意欲表明:「9条は時代にそぐわない」」)。に対する毎日新聞(平成18年11月3日付)の社説について紹介してから、論じていきたいと思います。


1.「毎日新聞平成18年11月3日付社説」

 「社説:憲法改正問題 国民理解を求めるのが先だ

 憲法公布から60年がたった。昨年は戦後60年の節目で盛り上がりをみせた改憲論議は、いまは下火だ。そんな中、安倍晋三首相が英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、自民党総裁の任期中に憲法改正を目指すと明言した。

 発言は「自民党総裁としての任期は3年で、2期までしか務められない。任期中に憲法改正を目指したい」との内容。2期6年の任期を全うする中で憲法改正を実現したいという願望の表明だろう。

 憲法9条については「時代にそぐわない条文の典型だ。日本を守る観点や国際貢献を行ううえで改正すべきだ」と述べた。

 首相が内閣の目標を明確に語るのは結構なことだ。しかし、先の所信表明演説では触れなかった具体的な改憲スケジュールを海外メディアを相手に初めて語ったのは腑(ふ)に落ちない。

 首相は自民党総裁選での政権構想に「新たな時代を切り開く日本にふさわしい憲法の制定」を掲げ、「戦後レジームから、新たな船出を」と訴えた。先月の参院本会議でも「いかに中身が素晴らしいものであっても、基本法である以上、制定過程にはこだわらざるをえない」と改憲意欲を強調している。

 今回の発言に他意はない、持論を述べただけ、というのが首相の気持ちかもしれない。しかし、国の基本法である憲法を一国の指導者が6年以内に変えたいという重要な話なのだから、まずは日本の国民に語りかけてほしい。

 首相の改憲意欲はわかるが、発言と現実との落差は否定できない。世論が盛り上がらないのは、格差社会の是正や教育の立て直し、医療・介護・年金問題など国民生活にとって切実な問題が山積しているからだけではない。

 改憲手続きを定める国民投票法案は成立の見通しが立っていないし、自民党が昨年まとめた新憲法草案も前文などの手直しが必要だと首相自身が認めている。どのように書き直したいのか、自民党総裁として語ってほしい。

 首相は所信表明演説で「与野党で議論が深められ、方向性がしっかりと出てくることを願っている」と述べたが、来夏の参院選を前にして各党の動きは鈍い。

 民主党は昨年、憲法提言をまとめたが、小沢一郎氏が代表に就いてからは自民党との対決姿勢を強めている。公明党は今後2年間の運動方針で憲法問題に触れているが、自衛隊保持と積極的な国際貢献の規定を追加すべきかどうかを論議するという範囲にとどめている。共産、社民両党は一貫して憲法改正に反対している。

 国民投票法案についても(1)投票の対象を憲法改正に限定するか、国政の重要課題にまで広げるか(2)投票者の年齢を20歳以上とするか、原則18歳以上とするか(3)国民の承認を有効投票総数の過半数とするか、投票総数の過半数とするか--などで与党と民主党の意見が対立している。

 憲法論議を高めたいのなら、首相は改正の必要性を正面から語り国民の理解を求めるのが先決だ。

毎日新聞 2006年11月3日 0時41分」



2.この社説では、

「先の所信表明演説では触れなかった具体的な改憲スケジュールを海外メディアを相手に初めて語ったのは腑(ふ)に落ちない。…… 国の基本法である憲法を一国の指導者が6年以内に変えたいという重要な話なのだから、まずは日本の国民に語りかけてほしい。…… 憲法論議を高めたいのなら、首相は改正の必要性を正面から語り国民の理解を求めるのが先決だ。」

として、日本国の基本法である憲法を改正する問題は、日本の問題であるから、まず日本国民に対して話すべきだ、その点のみを強調して批判しているわけです。

「安倍首相が英米メディアに在任中の改憲意欲表明:「9条は時代にそぐわない」」において、

「日本国憲法の憲法改正は、日本の政治機構や日本国民の権利義務に関わることですから、まずは日本国民に対して堂々と表明すべきです。自民党総裁の任期期間を気にしているので、自民党総裁としての憲法改正意欲のようですが、日本国の首相という地位は切り離せないのですから、日本国の首相である以上、最初に、国会又は日本の報道機関に対して発表すべき問題のはずです。……

一体、安倍首相はどこの国の首相なのでしょうか? 安倍首相は、米国の州知事でしょうか? 未だに連合軍の占領下にあり、英米にお伺いを立てなければならないのでしょうか? 安倍首相が、最初に英米メディアに改憲意欲を表明するなんて、情けない気持ちになりました。」

と批判したように、毎日新聞による批判は、当然のことだと思います。




3.毎日新聞による批判は正当であるとは思いますが、安倍首相による「改憲意欲表明」に対して最も批判すべき点は、9条改正論と、憲法改正論議自体であると思います。


(1) この点も「安倍首相が英米メディアに在任中の改憲意欲表明:「9条は時代にそぐわない」」において触れていますので、今回は、憲法学者の文献、すなわち、長谷部恭男・東京大学大学院法学政治学研究科教授著「憲法とは何か」岩波書店 (2006-04-20出版)から引用してみることします。

9条改正論

 憲法9条の改正論についても同じことがあてはまる。従来の政府解釈で認められている自衛のための実力の保持を明記しようというだけであれば、何の意味もない『改正』である。これに対して、従来の政府解釈で設けられているさまざまな制約――たとえば集団的自衛権の否定――を吹っ飛ばそうというのであれば、吹っ飛ばした後、どう軍の規模や行動を制約していくつもりなのかという肝心の点を明らかにすべきである。どう制約するのか先の見通しもなく、どこの国とどんな軍事行動について連携するつもりなのか――アメリカが台湾を実力で防衛するとき、日本はアメリカと組んで中国と戦争するつもりはあるのか――さしたる定見もないままに、とにかく政治を信頼してくれでは、そんな危ない話にはおいそれと乗れませんとしかいいようがない。そこまで政治が信頼できるという前提に立つのであれば、憲法などもともと無用の長物である。」(20頁)


なぜ厳格か

 憲法がなぜ、通常の法律よりも変えにくくなっているかといえば、意味のないことや危なっかしいことで憲法をいじくるのはやめて、通常の立法のプロセスで解決できる問題に政治のエネルギーを集中させるためである。不毛な憲法改正運動に無駄なエネルギーを注ぐのはやめて、関係する諸団体や諸官庁の利害の調整という、憲法改正論議より面倒で面白くないかも知れないが、より社会の利益に直結する問題の解決に、政治家の方々が時間とコストをかけるようにと、憲法はわざわざ改正が難しくなっている。あたかも、憲法の文言を変えること自体に意味があるかのような振りをするのはやめて、文言を変えたその結果はどうなるのか、というあまり面白くないが、肝心な問題に注意を向けるべきときが、そろそろきているように思われる。」(21頁)



9条改正論議にしても、「日本を守る」とか「国際貢献を行う」といった抽象論ではなく、どう軍の規模や行動を制約していくつもりなのか、国際貢献という名目でどこまでの軍事行動を行うつもりなのか、法律的・政治的・経済的観点からの妥当性の有無、そして、充分に検討した結果、日本国が可能な自衛隊の行動は、9条を改正しないとできないことなのかどうか、について検討することの方こそ大事なのです。


(2) もし9条を改正した場合、どういう事態になるのでしょうか?

「日本が安全保障条約を締結するアメリカは、もともと他国の憲法が自国の利害と合致しないと考えるならば、武力の行使あるいはその脅威を通じて、憲法の変更を迫ることにさしたる躊躇いを感じない国家である。9・11以降のアメリカは、独裁体制を打倒し、自由を他国へと押し広げることが、自国における自由の保持に直結するとし、盟友を守るためであれば、武力行使を厭わないと宣言している。」(長谷部恭男「憲法とは何か」58頁)


9条を改正して従来の政府解釈の下での歯止めを取り払うことは、日本は、結局は、こういったアメリカの価値観やアメリカの国益のために戦うことになってしまうでしょう。

しかし、武力行使を厭わないアメリカの行動によって、「アルカイダと関係が不明な組織が、アルカイダを模倣した攻撃を繰り返し、テロがなくなるどころか拡散してしまった」(「9・11米同時多発テロから5年」)のですし、

日本とアメリカとの価値観は違う」(品川正治著「9条がつくる脱アメリカ型国家―財界リーダーの提言」青灯社 (2006-10-15出版)189頁

のです。9条を改正して、国家の意思までも、こういったアメリカの価値観・国益に従属させる必要はないというべきです。


憲法の文言を変えること自体に意味があるかのような振りはやめるべきであり、不毛な憲法改正運動に無駄なエネルギーを注ぐのはやめるべきなのです。9条を改正して従来の政府解釈の下での歯止めを取り払うことも、妥当だとは思えません。

毎日新聞はもちろん、国民の側も、自民党や安倍首相がいくら憲法改正の意欲を示しているとしても、「憲法改正遊び」に付き合う気はないことを意思表明すべきであると考えます。

テーマ:憲法改正論議 - ジャンル:政治・経済

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コメント
この記事へのコメント
「自己中心的」なのは誰なのか...
春霞さん、こんにちは。

このように整理された論を見ると、ジダン・マテラッツィ事件のエントリーの時のように、深夜にもかかわらず、やはり時間のたつのも忘れて読みふけってしまいます。(^^;

結局、政府与党は、「文言を変えたその結果はどうなるのか、というあまり面白くないが、肝心な問題」をていねいに論じて決めていくのがめんどうだから、「憲法は国家をしばるものである」という立憲主義をこっそりとゆるめて、好きなように政治をやりたい、好きなようにやった結果の責任もできるだけとりたくない、ということのように見えます。

憲法や教育基本法のせいで戦後の日本人が自己中心的になった、と主張しながら実は政府与党自身が自公中心的になったのではないかという疑いをどうしても払いのけることができない私です。

いじめ自殺、耐震強度偽装も日本の今の問題点の凝縮だと私には思えます。そちらのエントリーもまた読ませていただきます。
2006/11/09 Thu 02:26:33
URL | 村野瀬玲奈 #6fyJxoAE[ 編集 ]
>村野瀬玲奈さん
コメントありがとうございます。

>このように整理された論を見ると、

ありがとうございます。


>好きなように政治をやりたい、好きなようにやった結果の責任もできる
>だけとりたくない

きっと、仰るとおりなんでしょう。政府の意図は。
よく考えると、結構妙に思うのです。「好きなように政治をやる」としても、その影響を予め考えておかないと、意図通りにならない可能性があるわけです。だから、よく考えておいた方が、得なわけです。だけど、政府は考えない。そんな政府を賛成する有権者がいる……。

政府が自己中心的であるとしても、なぜ、深く考えないのか、今の政府与党の言動を不思議な思いで見ています。
2006/11/10 Fri 17:41:53
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
TB、おじゃましました。
小泉前総理の靖国参拝発言もそうですが、公私の区別がまったくついておらないように感じます。
 本島さんの「戦争責任」発言、思い出しました。名前を出して、公的発言と明言する。清清しいです。納得できます。
2006/11/15 Wed 11:19:57
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん
コメントありがとうございます。

>小泉前総理の靖国参拝発言もそうですが、公私の区別がまったくついて
>おらないように感じます。

そうですね。公私の区別をする、ということは、人が生活していくうえで身に付けておくべき社会的ルールだったはずです。政治家であれば、特に首相であれば24時間公人ですから、公私の区別につき、慎重さが必要なはずです。
日本の政治家は社会的なルールを身につけなくなっているのに、国民に対して、規範意識の欠如を説くのですから、滑稽に感じます。
2006/11/15 Wed 20:08:19
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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