FC2ブログ
Because It's There
主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
04« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31.»06
スポンサーサイト 
--/--/-- [--] --:--:-- » E d i t
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 *  TB: --  *  CM: --  * top △ 
2009/06/18 [Thu] 23:58:58 » E d i t
衆議院は平成21年6月18日午後の本会議で、臓器移植法改正4法案のうち、脳死後の臓器提供の年齢制限(現行法で15歳以上)を撤廃するA案を賛成多数で可決、参院に送付しました。

衆議院本会議では、4つの改正案の採決が提出されたA・B・C・Dの順に始まり、採決は記名投票で行われました。その結果、欠席・棄権を除いたA案への投票総数430票のうち、賛成263票、反対167票であり、欠席・棄権は48人でした。A案の可決により、その他の3案(B・C・D案)は採決されずに廃案となっています。

与党や民主党などは「死生観にかかわる」として党議拘束をかけず、議員個人の判断で投票しています。そのため、麻生太郎首相、民主党の鳩山由紀夫代表、公明党の太田昭宏代表がA案に反対票を投じ、一方、自民党の小泉純一郎元首相・福田康夫前首相、民主党の小沢一郎代表代行は賛成票を投じ、自民党の安倍晋三元首相はD案を支持してA案の採決を棄権するといった、個々人で異なる投票行動をとっています(時事通信:2009/06/18-13:45、毎日新聞)。なお、他の政党とは異なり、共産党は(党議拘束をかけ)「審議が尽くされていない」として棄権しています(いずれの案の採決も棄権する方針でした)。



1.報道記事を幾つか。

(1) 朝日新聞平成21年6月18日付夕刊1面(4版)

「脳死は人の死」可決  0歳から移植容認

臓器法改正 A案が衆院通過 参院に慎重論
2009年6月18日13時24分

 衆院は18日午後の本会議で、臓器移植法改正案を採決し、原則「脳死は人の死」とし、臓器提供の拡大をめざすA案を賛成多数で可決した。残りのB、C、D各案は採決されないまま、廃案となった。ただ、参院では、多数を占める民主党内に臓器移植の要件緩和に慎重な議員が多く、独自案提出の動きもある。A案がそのまま成立するかどうかは不透明な情勢だ。

 衆院議員は現在、欠員を除き478人。採決は記名投票で行われ、欠席・棄権を除いたA案の投票総数は430(過半数216)、賛成263、反対167だった。共産党は「採決は時期尚早」として本会議には出席するが採決は棄権する方針を決定。自民、民主など他の主要政党は「個人の死生観」にかかわるとして党議拘束をかけずに採決に臨んだ。97年に成立した現行法の改正案が採決されたのは初めて。

 本人の意思が不明な場合でも家族が同意すれば臓器提供できるとするA案では、小児を含むすべての年齢で臓器提供が可能となる。移植学会や患者団体も推しており、最も多くの支持を集めているとみられていたが、原則「脳死は人の死」とすることなどに抵抗感も根強く、過半数確保のメドは立っていないとされていた。

 朝日新聞が5月に衆参両院の全議員を対象に行ったアンケートでも、7割近くが回答せず、回答者のなかでも「わからない・検討中」が2割超を占めるなど、多くの議員が態度を決めかねている様子が浮き彫りになった。A案が可決された背景には、今国会で改正が実現しなければ、当分、改正の機運が遠のくとの議員心理が働いた可能性もある。

 採決は国会提出順に、A、B、C、D各案の順で行われ、いずれかの案が投票総数の過半数の賛成を得た時点で、残りの案は採決されずに廃案になるルールだった。より広範な支持を集めようと、折衷案としてつくられたD案も、採決されないまま廃案となった。」



(2) 読売新聞平成21年6月18日付夕刊1面(4版)

移植法A案 衆院通過 年齢制限は撤廃

賛成263、反対167 参院審議、曲折も

 臓器移植法改正案は18日午後、衆院本会議で採決され、脳死を「人の死」とすることを前提に、現行では禁止されている15歳未満からの臓器提供を可能とすることを柱としたA案が賛成多数で可決された。

 審議の舞台は参院に移るが、A案の成立に消極的な意見や慎重審議を求める声が出ており、成立までには曲折も予想される。

 採決は記名投票で行われ、投票結果は賛成263、反対167だった。投票総数は430だった。共産党は時期尚早との理由で採決を棄権し、そのほかの政党は個人の死生観や倫理観に基づく問題であるとして、党議拘束をかけず議員個人の判断に委ねた。

 A案は脳死が「人の死」であることを前提として、臓器提供の条件について、書面による生前の意思表示と家族の同意を必要としている現行制度を大幅に緩和した。本人意思が不明でも生前の拒否がない限り家族の同意で臓器提供できるよう改める。現行では臓器提供の意思表示ができる年齢を15歳以上としているが、本人意思が不明でも臓器提供が可能になることで年齢制限は撤廃され、乳幼児からの臓器提供が可能となる。また親族への臓器の優先提供についても本人の意思表示ができると定めている。

 国会に提出された四つの改正案のうち、最も臓器移植の機会を拡大する可能性があり、患者団体や日本移植学会などが支持していた。

 残る3案は、臓器提供可能年齢を現在の「15歳以上」から「12歳以上」に引き下げるB案、脳死の定義を厳格化するC案、15歳未満について家族の同意と第三者による審査を条件に可能とするD案だったが、最初に採決されたA案が過半数の支持を得たため、採決されないまま廃案となった。

 A案は同日中に参院に送付され、参院厚生労働委員会で審議が行われる見通しだ。参院の民主、社民両党の有志議員はC案の考えに近い新案を参院に提出する構えを見せており、西岡武夫・参院議院運営委員長は「参院でまだ何の議論もしていない。この問題は慎重にあらゆるケースを考えないと禍根を残す」として、一定期間の審議が必要との認識を示している。

 現行の臓器移植法は1997年6月に成立した。施行後3年の見直し規定があり、臓器提供条件の緩和や15歳未満の臓器提供を認めるよう、患者団体や日本移植学会が法改正を求めてきた。2006年にA、B両案が与党の有志議員によって国会に提出された。C案は両案の対案として、野党の有志議員によって07年に提出されたが、長らくたなざらしの状態が続いていた。

 昨年5月、国際移植学会が自国外での臓器移植自粛を求めた「イスタンブール宣言」を採択し、世界保健機関(WHO)も臓器移植の自国内完結を促す指針を取りまとめる方向となった。このため、15歳未満の臓器提供が禁止されている日本の小児患者は臓器移植を受ける道が閉ざされる可能性が出てきたことから、にわかに同法の改正論議が活発化した。

(2009年6月18日 読売新聞)」




2.各新聞社の解説記事も幾つか、紹介しておきます。

(1) 朝日新聞平成21年6月18日付夕刊1面(4版)

家族の承諾で可能に
2009年6月18日13時32分

 臓器移植法の改正A案は06年、脳死になった人からの臓器提供を増やすことを目指す自民党の中山太郎衆院議員らが提出した。最大の特徴は、脳死を人の死とすることだ。そうすることで、脳死になった時に臓器を提供しようと考えていたかどうかがはっきりしない人からも、家族の承諾で提供できるようにする。

 現行法では、本人があらかじめ提供の意思を書面に示していなければ、脳死になったとしても、家族も医療機関も、提供の手続きを進められない。つまり、人が脳死になっても、必ずしも死んだことにならないと整理している。本人の意思が書面という確かな形で残されているかどうかがポイントだ。

 現在の制度は、脳死をめぐる様々な立場の人たちが議論を重ねて一致点を見いだし、97年に制定された。それだけ高いハードルを設けてある。A案は、提供を拒む権利を認めるものの、死を巡る基本的な立ち位置を変える。

 これまで脳死での臓器提供は年に10件前後だった。本人の意思を確かめる手立てとして用意された意思表示カードが思うように普及せず、臓器提供が大きく増えなかったとされている。昨年の内閣府世論調査では「脳死になったら臓器提供する」と記した人は約4%だった。

 A案が参院でも支持を集めて成立すれば、カードがなくても臓器提供できるようになるので、提供件数が増えると、移植にかかわる医師らはみている。ただ、衆院で「脳死を死とすることに社会的合意がない」といった反対意見が相次いだように、参院でも厳しい議論が予想される。」



(2) 読売新聞平成21年6月18日付夕刊1面(4版)「解説」

待機患者の希望膨らむ

 15歳未満の臓器提供に道をひらくA案が衆院で可決された。参院での審議が残っており、この法案がこのまま成立するかは不透明だが、臓器移植以外では助かる見込みのない待機患者たちは、参院での可決も待ち望んでいる。

 日本臓器移植ネットワークに登録している待機患者は6月1日現在、1万2000人以上。現行法は1997年に施行されたが、現在までの臓器提供はわずか81例、年間でも10例前後にとどまっているからだ。

 現行法は施行後3年をめどに見直しするとされていたが、以降11年以上もたなざらしにされていた。今国会で今年5月以降、審議が進んだ背景に、「日本の小児患者が渡航移植して他国の待機患者の移植機会を奪っている」とする国内外の批判が強まったことがある。

 「脳死が人の死であるとは、国民合意ができていない」との批判も根強いが、世界の大半の国は「脳死を人の死」と規定している。「良識の府」とされる参院でも、患者の置かれた現状を見据え、真摯(しんし)な審議を期待したい。(科学部 木村達矢)

(2009年6月18日 読売新聞)」



(3) 日経新聞平成21年6月18日付夕刊1面(4版)「解説」

「人の死」難しい定義

 衆院本会議で可決された臓器移植法改正案のA案は本人に拒否の意思表示がなければ、家族の承諾で脳死移植が可能となる。海外頼みだった小児の脳死移植が国内で実施できるだけでなく、意思が不明な場合が多い15歳以上も臓器提供が増える可能性がある。ただ提供の前提となる「人の死」の定義を巡り、参院で修正される余地も残っている。

 一般的な「心臓死」では心臓など多くの臓器は移植できない。このため1997年6月に成立した現行法は、臓器提供の場合に限り、脳死を「人の死」とすることとし、「臓器を提供したい」という本人の意思表示を条件の1つとした。

 現行法は衆院を通過した段階では「脳死を一律に人の死とする」と規定していた。しかし参院で脳死を定義する条文に「臓器移植に限定する」という趣旨の文言を付け加えた経緯がある。

 今回のA案は「脳死を一律に人の死とする」という考えに立ち、この文言を削除している。内閣府の世論調査などで約6割が受容していることなどが根拠だが、「時期尚早」という声も根強い。

 このため衆院審議で法案提出者は「現行法と同じく臓器移植に限定している」と“解釈”。だが「それならばなぜ削除するのか」という質問に法案提出者の一人が修正の余地を示唆するなど判断が揺れる場面もあった。

 今回、新たにD案が提出された最大の理由もA案との「人の死」の定義の違いだ。

 現行法と同様、脳死を「人の死」と受容する人に限定するD案はA案支持者の一部も支持しており、参院での審議が注目される。」



(4) 毎日新聞平成21年6月18日付東京夕刊1面「解説」

国民的合意へ議論を

 脳死を人の死とする臓器移植法改正案のA案が可決され、衆院を通過した。A案は4案の中で明確に脳死移植を増やすことを目的にし、15歳未満からの臓器提供を可能にするものだ。海外での移植に頼ってきた子どもの国内での移植に道を開く意義は大きいが、克服すべき課題も多い。

 毎日新聞が今月行った世論調査では、15歳未満の臓器提供については、親の承諾を条件に「賛成」と答えた人が57%に上った。しかし、小児科医の間からは子どもの脳死判定の難しさや、虐待児の見極めがどこまで可能かなどの課題が指摘されている。

 また、脳死を一般的な人の死とすることについては、毎日新聞の世論調査でも現行法通り「臓器提供の意思を示している人に限るべきだ」が52%と過半数を占め、脳死は「人の死と認めるべきだ」は28%にとどまった。脳死を人の死とすることについて国民的な合意が得られていると言えず、今後、参院での審議などを通じてさらに幅広い議論が求められる。【関東晋慈】

毎日新聞 2009年6月18日 東京夕刊」




3.臓器移植法改正「A」案が衆議院で可決されたことは、素直に喜びたいと思います。

(1) 「衆院議員は現在、欠員を除き478人。採決は記名投票で行われ、欠席・棄権を除いたA案の投票総数は430(過半数216)、賛成263、反対167だった」(朝日新聞)のですから、意外とA案への賛同は多かったことになります。過半数216ぎりぎりではなく、賛成263票もあったのですから過半数をかなり上回っていたのですから。

朝日新聞が5月に衆参両院の全議員を対象に行ったアンケートでは、「7割近くが回答せず、回答者のなかでも『わからない・検討中』が2割超を占めるなど、多くの議員が態度を決めかねている様子が浮き彫りになった」とされ、A案が原則「脳死は人の死」とすることなどに抵抗感も根強いのだとして、どの改正案も過半数確保のメドは立っていないとされていました。

しかし、A案には賛成263票もあったのですから、「過半数確保のメドは立っていた」と見るべきであって、朝日新聞のアンケート結果とは一致しません。これに対して、朝日新聞は、「A案が可決された背景には、今国会で改正が実現しなければ、当分、改正の機運が遠のくとの議員心理が働いた可能性もある」として、不一致になった結果に対して、下手な言い訳をしています。

どちらかというと、朝日新聞のアンケートに対して、7割以上の国会議員が回答しない・わからないという形で本心を明かさなかったと捉えるのが適切であろうかと思います。「死生観に関わる問題について、マスコミに正直に答える馬鹿はいない」ということかもしれません。



(2) 衆議院で可決されたA案の特徴としては、3点挙げることができます。

「<1>現行法が臓器移植する場合に限って脳死を「人の死」とするのに対して、A案は、移植推進の立場から一律に「脳死は人の死」と踏み込んだものであること、

<2>現行法が脳死後の臓器提供は15歳以上という条件に加えて、本人が生前に書面で意思表示した場合のみ可能となっているのに対して、A案は、年齢制限をなくすとともに、本人の意思が不明でも家族の同意があれば提供できること、

<3>現行法では基本的理念の1つとして、「移植術を受ける機会の公平性」を掲げており、提供先の指定を認める規定はありませんが(禁止規定はないが事実上禁止)、A案は、一定限度で提供先の指定を認め、「親族」に限り臓器の優先提供を認めていること(本人の意思表示で可)」


です(時事通信:2009/06/18-13:33)。

これらの点につき、あまり報道されていない点を指摘しておきます。

 イ:A案が成立すれば、「臓器提供意思表示カード」がなくても臓器提供できるようになります。これは、本人の意思を確かめる手立てとして用意された意思表示カードが思うように普及せず、昨年の内閣府世論調査では「脳死になったら臓器提供する」と記した人は約4%にすぎないのですから(朝日新聞)から、A案は、「臓器提供意思表示カード」の必要性を失わせるものといえます。

ということは、今後は「臓器提供意思表示カード」は、積極的に臓器提供の意思を示す点は変わらないとはいえ、臓器を提供するためというよりも、(臓器移植を拒否する欄に印をつけることで)臓器移植を拒否する意思を示すカードとして、重要な意味を持つことになります。

そうなると、今後は、「臓器提供意思表示カード」を持つように推進する活動は、半ば意義を失い、縮小する可能性があります。例えば、6月13日に試合中に亡くなったプロレスラー三沢光晴さん(46)は、臓器移植の支援や法改正に向けた啓発活動に熱心でした。例えば、「創業したプロレス団体「ノア」が全国へ興行に行けば、会場で選手たちが募金活動やドナーカードの配布に協力。時には協会のメンバーらを試合に招待し、リング上で募金を寄付するセレモニーもしてくれた」のです(「三沢さん 採決見守って 臓器移植を生前、強力に支援」(東京新聞2009年6月17日夕刊))。臓器移植に対する啓蒙活動自体は、なくなることはないにしても、今後はドナーカードを配布する意義があるのかどうか、見直しがなされる可能性があります。


ただし、A案では、親族に優先的に臓器を提供することが可能になるため、親族に優先して提供して欲しいのであれば、臓器提供意思表示カードなどに記せることになります。この点では、臓器提供意思表示カードに大きな意義があります。


 ロ:また、A案が成立すれば、一定限度で臓器の提供先の指定ができるようになるため、臓器移植法2条(基本理念)で規定する「移植術を必要とする者に係る移植術を受ける機会は、公平に与えられるよう配慮されなければならない」といういわゆる「移植術を受ける機会の公平性」の例外を認めることになります。

本人や家族の心情だけではなく、移植を待つ患者のことも考えるべきことが公平であるという点や病気の家族がいると提供への重圧がかかる可能性があるという点で、提供先の指定を否定することも妥当な面もあることは確かです。しかし、死を迎えるに際して、自分の臓器について、身近にある親族に臓器を提供したいという、遺言に近い心情を尊重しない方が問題があります。また、臓器移植法は本人の意思を重視している以上、「本人の意思で提供先を指定すること」を否定することは論理一貫しません。

生体腎移植の場合は、(原則として)親族間で移植を行うのですから、そこには元々「移植の公平性」はなく、脳死からの臓器提供のみ「移植術を受ける機会の公平性」を維持する理由は乏しいといえます。さらにいえば、厳格に「移植の公平性」を維持したために「かえって移植の普及にブレーキをかけたともいえる」(「病気腎移植の波紋<下> 法の壁」(中国新聞 '07/4/4))のです(「病気腎移植問題~病気腎移植の波紋:封印へ(中国新聞の特集記事より)」(2007/04/07 [Sat] 07:32:51)参照)。

A案は、「移植術を受ける機会の公平性」の例外を認めた点でも、臓器移植の推進に積極的になったわけです。

この「移植術を受ける機会の公平性の例外」の論理を肯定した以上、その影響は臓器移植法だけにとどまりません。同じく臓器移植という点で共通する「修復腎移植」に関して、「移植医療を不公平なものに貶めてはならない」「公平さを取り戻さねば国民の不信はぬぐえない」などと、厳しい批判がなされていましたが(「病気腎移植問題~病気腎移植の医学的妥当性(2)」(2006/12/31 [Sun] 01:14:29))、批判の根拠となった条文が変更されたため、批判として殆ど成り立たなくなったことになります。

日本の報道機関は、万波医師たちの修復腎移植に厳しく批判を行っていたのですから、A案が「移植術を受ける機会の公平性」の例外を認めた以上、A案は絶対に認められないとなりそうですが、なぜか、そこまでの批判はなされていません。修復腎移植を厳しく批判している日本移植学会に至っては、A案を推進するという論理性のなさです。臓器移植問題については、不可思議なことばかりです。



(3) 臓器移植法改正による臓器移植の増加を期待して、「臓器移植以外では助かる見込みのない待機患者たちは、参院での可決も待ち望んでいる」(読売新聞)ことは確かです。

期待はしたいところですが、今のままでは、実際上、臓器移植が増加するかどうかは難しいところだと思います。臓器提供者の提供意思を生かせる態勢の整備など、移植医療体制全般に目を向けて全体的な考察が必要ですし、いまだ臓器提供した家族に対して「いくだで売ったのか」などと中傷する声があるほど臓器移植への理解が乏しいからです。また、A案は、小児の臓器移植の道を開くものですが、「子どもの脳死判定の難しさや、虐待児の見極めがどこまで可能かなどの課題」(毎日新聞)が指摘されているからです。

その点は、<1>「臓器移植法施行から10年~法改正の審議も必要だが、提供意思を生かせる態勢は?」(2007/10/20 [Sat] 16:54:52)、<2>「命の選択~臓器移植法改正を問う(東京新聞5月26日~30日連載)」(2009/06/11 [Thu] 23:59:43)、<3>「臓器移植法改正問題:脳死再定義、あなたはどう考える?(朝日新聞5月10日付「耕論」より)」(2009/06/12 [Fri] 23:57:21)でも触れたとおりです。



(4) 今後は、参議院での審議と採決に焦点が移ります。

「A案の成立に消極的な意見や慎重審議を求める声」が出ていますので(読売新聞)、参議院で修正される可能性があります。「現行法成立の際には衆院を通過した法案が参院で修正された経緯があり、今回も参院内で独自案を検討する動きがある。参院で修正されれば衆院で再び可決する必要」(日経新聞平成21年6月18日付夕刊1面)があります。

ですから、「A案がそのまま成立するかどうかは不透明な情勢」であることは確かでしょう。今国会で突如としてD案が提案されるなど、共産党は「審議が尽くされていない」として棄権していることにも、一定の理解を示す市民も少なくないと思います。

短時間の審議で終わった衆議院と異なり、参議院においては、十分に議論を尽くして市民に対して臓器移植に関する正しい情報を提供を行い、脳死状態からの臓器提供家族に対する誹謗中傷を止めさせるともに、法改正により「脳死が人の死」とされたとしても、脳死状態での臓器提供をしない家族が誹謗中傷を受けることがない方策をとるべきです。ですが、臓器移植医療を阻むことがないよう、臓器移植推進を前提としたA案の特徴・骨格を失うような修正をすることだけは、くれぐれも止めてほしいと思います。


テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

コメント
この記事へのコメント
春霞様

慢性腎不全患者を持つ家族としては、今回のA案可決は大変ありがたく感謝しています。言うまでもなく移植の機会が拡大することが期待されるからです。

>市民に対して臓器移植に関する正しい情報を提供を行い、脳死状態からの臓器提供家族に対する誹謗中傷を止めさせるともに、法改正により「脳死が人の死」とされたとしても、脳死状態での臓器提供をしない家族が誹謗中傷を受けることがない方策をとるべきです。ですが、臓器移植医療を阻むことがないよう、臓器移植推進を前提としたA案の特徴・骨格を失うような修正をすることだけは、くれぐれも止めてほしいと思います。

同感です。
移植医療に対する誹謗中傷を聞くと、とても悲しくなります。それがなくなることを期待します。

また私は、臓器提供した遺族側と移植を受けた患者側との情報提供について、トラブルを避けるためとの理由で現在かなり制限していますが、提供を受けた家族の純粋な感謝の気持ちが、提供者側にもっと伝わってもいいはずです。今後の施策としてあわせて見直しを検討してほしいと思います。そうすることで臓器提供という善意の気持ちがお互いに伝わり、移植医療のすばらしさを国民の間でもっと実感できる社会になるものと思います。

なお、朝日新聞6/18付け記事の
「これまで脳死での臓器提供は年に10件前後だった。本人の意思を確かめる手立てとして用意された意思表示カードが思うように普及せず、臓器提供が大きく増えなかったとされている。昨年の内閣府世論調査では「脳死になったら臓器提供する」と記した人は約4%だった。」
ですが、

昨年の「臓器移植に関する世論調査」
http://www8.cao.go.jp/survey/h20/h20-zouki/3.html
Q9〔回答票10〕 あなたは,仮に,ご自分が脳死と判定された場合,心臓や肝臓などの臓器提供をしたいと思いますか。この中から1つお答えください。

(22.5) (ア) 提供したい
(21.0) (イ) どちらかといえば提供したい

という結果になっています。それによると、提供したいは、22.5%です。どちらかといえば提供したい21.0%であわせて43.5%です。

朝日さんの約4%はどこからの数値なのでしょうか。たぶん朝日新聞の誤報ではないかと思います。
2009/06/20 Sat 08:48:04
URL | hiroyuki #DSEt5LQg[ 編集 ]
>hiroyukiさん:2009/06/20 Sat 08:48:04
コメントとTB、ありがとうございます。


>>脳死状態からの臓器提供家族に対する誹謗中傷を止めさせるともに、法改正により「脳死が人の死」とされたとしても、脳死状態での臓器提供をしない家族が誹謗中傷を受けることがない方策をとるべき
>移植医療に対する誹謗中傷を聞くと、とても悲しくなります。それがなくなることを期待します

同感です。脳死状態からの臓器提供をするいう本人の意思の意思を家族が尊重することをなぜ、誹謗中傷するのか、違和感があります。本人の意思の尊重は、言い換えれば自己決定を尊重すること、脳死での臓器提供を選択した意思を尊重することですから、他人が批判すべきことではないはずなのに。

(脳死状態での)移植医療に対する誹謗中傷を聞くと、他人にも脳死状態での臓器提供を認めないという行動を取っているとしか思えません。日本人は、何か他人が変わった行動を取ると、誹謗中傷する癖があるのかもしれません。

つい、修復腎移植という選択肢を認めて欲しいという願いを阻害する人たちを連想してしまいます。選択する意思の妨害という点で同じですから。


>朝日さんの約4%はどこからの数値なのでしょうか

これは、トランブプラント・コミュニケーション〔臓器移植の情報サイト〕の「1. 臓器提供と意思表示カードについて」を見ると、分かりやすいように思います。一部引用してみます。
http://www.medi-net.or.jp/tcnet/navi/qa/qa_01.html

「2000年に5月に総理府(現内閣府)が行った「臓器移植に関する世論調査*」によると、意思表示カードを持っている人の割合は9.4%でした。……ただし、カードを持っている人の全員が臓器提供の意思表示をしているわけではありません。持っていても記入していない人が53%、「提供しない意思」を記入している人が4%あります。「提供する意思」を記入している人は43%です。したがって臓器提供する意思を記入したカードを持っている人の割合は、全体の約4%ということになります。」

朝日新聞の記事を一見すると、hiroyukiさんが仰るように、「提供する意思がある人が約4%」と読めそうです。それだと、確かに間違いとなります。

朝日新聞の記事の文章が読み難いのだろうと思いますが、明快に書き換えると、「臓器提供意思表示カードに『臓器提供する意思』を記入した人は約4%にすぎない」ということなのでしょう。hiroyukiさんのご指摘を受けて、かなり焦りましたが、朝日新聞がいう「約4%」には、朝日新聞としては、根拠があるように思います。
2009/06/21 Sun 00:56:21
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
春霞様

>朝日新聞の記事の文章が読み難いのだろうと思いますが、明快に書き換えると、「臓器提供意思表示カードに『臓器提供する意思』を記入した人は約4%にすぎない」ということなのでしょう。

解説ありがとうございました。意味がわかりました。朝日新聞の誤報ではと書いたのはおわび訂正させていただきます。

なお、移植先の優先的な指定について、ご指摘のとおり身内に移植の必要がある患者を抱える人が、その身内を優先的に提供先として指定することが今回盛り込まれました。
私はこれは移植の公平性以前の人間の心情に配意した妥当な改正内容だったと思っています。
仮に子供が透析を続けており、親が脳死となって臓器提供をする機会がおとづれた際に、子供への移植がほったらかしにされてどこかへ腎臓がいくとすると、子供も亡くなった親もさぞ無念なことだろうと思います。また優先提供のケースはまれでしょうから、公平性うんぬんを目くじらたてることもないと思います。
それよりも日本人としての寛容な考えも取り入れたある意味すばらしい改正案です。
今後これらを含め参議院で本改正案の趣旨が骨抜きになるようなことだけはないようにしてもらいたいです。
2009/06/21 Sun 21:00:20
URL | hiroyuki #XkXcK/6o[ 編集 ]
優先移植の項目
 A案で優先移植の項目があった事を私は初めて知りました。 この話題は色々とニュースを読んでたのですが、過去に優先移植の話が出た時に立ち消えになった様な話もあったので・・

 臓器の優先提供は私的には大いにアリだと思います。 無償にして人生最後ののボランティアである臓器移植ならば、ドナーの意志を汲む事は当然是認されて良いと思うからです。

 マスコミはこの内容を殆ど報道してませんが、もしこの項目が出て来ればドナーの掘り起こしに繋がるかもしれませんね。
2009/06/22 Mon 13:35:27
URL | 迷い猫 #HfMzn2gY[ 編集 ]
>hiroyukiさん:2009/06/21 Sun 21:00:20
コメントありがとうございます。


>優先提供のケースはまれでしょうから、公平性うんぬんを目くじらたてることもないと思います

仰るとおりマレなケースだと思います。脳死状態での臓器移植の場合、あらかじめ脳死となるような事故を予測することは困難ですから(自殺とか妙なことをされると困りますが)、親族優先を確実に実現することは、実際上はかなり難しいといえるのですから。

臓器移植を希望する者の親族等に精神的重圧を与える可能性があるといった点で、提供先の指定は疑問とする声もあるようです。しかし、脳死状態自体がそうあることではないですから、あまりに少ない可能性を問題視するのはどうかと思います。


>今後これらを含め参議院で本改正案の趣旨が骨抜きになるようなことだけはないようにしてもらいたいです

同感です。

改正論議は大事ですし、臓器移植法改正に慎重になる心情は尊重したいと思います。しかし、A案での改正であっても、現在の医療体制を考慮すれば、実際上は臓器移植が増加することはかなり難しいはずです。ドナー家族へのケアも不十分ですし。

A案に批判的な方も、改正ばかりに目を向けないで、実際上具体的に必要なこと(医療体制、ドナー家族のケア)を早く実現してほしいと思うのですけどね。
2009/06/24 Wed 01:23:39
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
>迷い猫さん:2009/06/22 Mon 13:35:27
コメントありがとうございます。


>A案で優先移植の項目があった事を私は初めて知りました

一部の報道でしか触れていないので、「優先移植」規定があること自体、知らない方も結構いるのではないでしょうか。報道機関としては、問題視するような規定でないから報道しないのか、全面的に賛同しているから触れないのか、よく分かりませんけれど。

なお、A案で規定している「優先移植」規定を引用しておきます。

「(親族への優先提供の意思表示)
第六条の二 移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。」
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g16201038.htm


>臓器の優先提供は私的には大いにアリ
>無償にして人生最後ののボランティアである臓器移植ならば、ドナーの意志を汲む事は当然是認されて良いと思うから

そうですね。親族優先であるとしても、臓器提供したいという「ドナーの意志(遺志)」は大事ですし。


>マスコミはこの内容を殆ど報道してませんが、もしこの項目が出て来ればドナーの掘り起こしに繋がるかもしれませんね。

同感です。親族への臓器提供であれば、本人はもちろん家族としても、心理的な負担が少しは軽減されるでしょうし、また、親族間での移植であれば、他人から「臓器を幾らで売ったのか」という誹謗中傷も受けないでしょう。

臓器移植が増えるためには、まずは、市民の間で臓器移植の理解を広げ、ドナー家族の心理的な負担を軽減させることが大事だと思います。
2009/06/24 Wed 01:35:10
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
Aダッシュ案
 ようやく妥協に耐えうる案が出てきた気がします。 命の自己決定権と言う問題は有りますが、ドナーのケアや死生観の尊重を取り入れたAダッシュ案が現実的な案だと私は思います。

 ドナー家族とレシピエントの双方を尊重するこの法案を今国会で成立させて、問題があれば3年後に見直す形で良いのではないでしょうか。
2009/07/08 Wed 11:18:24
URL | 迷い猫 #HfMzn2gY[ 編集 ]
A案で参議院も可決
 結局、欠点ばかりで国民の半数が否定的な死生観を任期間もない議員の手で押しつけられる事になってしまいました。
 党議拘束外して個人の意志を尊重すると良いながら、参議院はボタン採決という姑息な手を使って誰が賛成したか分からない様にしましたがね。w

 ドナーを顧みない法案によって、ドナーが本気で増えると思ってるなら余程の馬鹿なんでしょうね。 もしくは超楽観主義者なのか・・
 今後は脳死判定をされて、健康保険の適用を止めるような動きが出て来るかもしれないですね。 ある意味臓器提供の強制化。 まぁ、そうなったら善意のリレーとかいう言葉も終りですけどね。

 人の死を定義するのに何時間議論したんだろうか・・ そんな大きな権限を4年前の選挙で無制限に与えた訳ではないのにな。 まぁ、これが日本の民主主義なんでしょう。 代議士になれば国民の意見なぞどうでもいいといった体質は今後も変わらないのだと思う。

 施行後に予想以上に臓器提供が増えない事で驚く姿が目に浮かぶ・・ 増えた所で20件あるかどうかでしょう。
 何故ドナーが増えないのかという本質を見誤ってる限り、どんな法律を作っても無意味だといずれ気付くのは何時なんでしょうかね。(^^;;
2009/07/13 Mon 14:08:44
URL | 迷い猫 #HfMzn2gY[ 編集 ]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/tb.php/1828-bae7e6fc
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
A案提出の自民・中山氏「命のともしびついた」 臓器移植法改正 2009/06/18 19:27 更新 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/living/health/267782/ 臓器移植法改正A案の衆院 本会議 可決を受け、提出者の中山太郎元外相(自民)は18日午後、国会内で記者会見し「大...
2009/06/20(土) 07:45:19 | 修復腎移植推進・万波誠医師を支援します
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。