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2009/06/07 [Sun] 23:59:44 » E d i t
「足利事件」で、無期懲役が確定し、服役していた菅家利和(すがや・としかず)さん(62)は平成21年6月4日、千葉市若葉区の千葉刑務所から釈放されたという報道記事について、各紙で異なった様相を呈しています。そこで、何紙か引用しており、今回は朝日新聞です。


1.朝日新聞平成21年6月5日付

(1) 朝日新聞平成21年6月5日付朝刊1面(14版)

逮捕から17年「謝ってほしい」 足利事件 菅家さん釈放
2009年6月5日3時25分

 90年に栃木県足利市で女児が殺害された事件で00年に無期懲役が確定し、千葉刑務所で服役していた菅家利和(すがや・としかず)さん(62)が4日午後、釈放された。菅家さんが「犯人」とされた最大の根拠はDNA型鑑定だったが、菅家さんの再審請求に基づく再鑑定で、女児の肌着に残った体液の型と菅家さんの型が「一致しない」とする結果が出たことを受け、検察側が刑の執行を停止した。

 法務省によると、再審請求中の受刑者について刑の執行が停止されるのは初めて。

 再鑑定は、再審請求の即時抗告審を行う東京高裁が昨年12月に実施を決定。検察側、弁護側がそれぞれ推薦する鑑定人が鑑定し、5月、いずれも「一致しない」との結果が高裁に報告された。これを受けて東京高検は4日、「肌着から抽出されたDNAが、真犯人の体液によるものだった可能性が否定できない」として、菅家さんの無罪を事実上認める意見書を高裁に提出。高裁は、検察側、弁護側双方の意見書の内容を踏まえ、再鑑定結果が「無罪を言い渡すべき明らかな証拠の新たな発見にあたる」として再審開始を決定するとみられる。

 91年12月の逮捕・勾留(こうりゅう)以来17年半にわたって身柄を拘束されていた菅家さんは、釈放後、千葉市内のホテルで記者会見した。「真犯人にされ、ずっと我慢してきたが、間違ったではすまない。当時の警察官、検察官を絶対に許さない。私と亡くなった両親、世間の皆様に絶対に謝ってほしい」と話した。

 菅家さんの公判では、一審・宇都宮地裁判決(93年)、二審・東京高裁判決(96年)とも無期懲役とした。弁護側は上告中の97年、独自に依頼した鑑定でDNA型が異なる結果が出たとして最高裁に再鑑定を請求。しかし最高裁は00年、捜査段階の91年に行われた鑑定の「一致する」との結果を裁判の証拠として認める判断を示し、上告を棄却した。02年に始まった再審請求審でも、宇都宮地裁は再鑑定を実施せずに08年に請求を棄却していた。

 再審開始が決定すると、一審の宇都宮地裁で再審が開かれる。検察側は有罪を裏付ける証拠がないとする意見を述べるとみられ、その場合、裁判所が無罪を言い渡す公算が大きい。弁護側は、再審で無罪が確定した場合、刑事補償法に基づく補償を国に求めていくとしている。

    ◇

〈おことわり〉 これまで「菅家利和受刑者」と表記してきましたが、刑の執行停止や釈放などを受け、今後は「菅家利和さん」と改めます。」




(2) 朝日新聞平成21年6月5日付朝刊1面(14版)

旧式鑑定の試料保管へ 最高検通達 再審請求に備え

 最高検は近く、足利事件と同じように、旧来のDNA型鑑定をもとに立証した事件について、残った体液の試料などの証拠品を保管するよう全国の地検に通達する。足利事件のDNA型鑑定の結果が一致しなかったことを受けて、他の事件でも再審請求が出されることに備えるものだ。

 4日午後、緊急の記者会見を開いた最高検の鈴木和宏刑事部長が明らかにした。最高検は併せて、特別チームを発足させて足利事件の捜査・公判の問題点の検証を始める。鈴木部長は「受刑者を釈放するに至った深刻な事態にかんがみ、捜査公判の問題点を早急に検討する」と述べた。複数の最高検検事を投入して捜査や公判での全証拠と記録を精査。検証結果については概要を公表する予定だという。

 足利事件で立証の柱とされたDNA型鑑定は、16個の塩基配列が繰り返される回数に個人差があることを利用した「MCT118」と呼ばれる検査法。警察庁科学警察研究所による鑑定当時は「1千人に1.2人」の確率で識別が可能とされた。

 03年以降はこの検査法に代わって「STR」と呼ばれる検査法が導入され、その当初は「1100万人に1人」、現在は「4兆7千億人に1人」の識別が可能になっている。このため、最高検は、03年以前にDNA型鑑定を立証に利用した事件すべてについて、関連する証拠品を保存することを指示する。

 刑事確定訴訟記録法は、判決文や裁判記録の保管期間を定めているが、証拠品についてはこうした規定はない。」



(3) 朝日新聞平成21年6月5日付朝刊2面(14版)「きょうがわかる」

検察 DNAに完敗 足利事件釈放
■旧鑑定「二重のミス」

 「科学的捜査」の代名詞だったはずのDNA型鑑定。足利事件で菅家利和さんを「有罪」とする根拠とされた旧鑑定は、約20年を経て、誤りだったことがほぼ確実となった。検察側は捜査員の汗などのDNA型を誤って検出した可能性も探ったが、ついに折れて釈放を決めた。他の事件への影響も、ささやかされ始めた。

 弁護側が推薦した鑑定人の本田克也・筑波大教授(法医学)が今春の再鑑定で最初に手がけたのは、91年に行われた旧鑑定と同じ「MCT118」という方法を、もう一度試みることだった。

 本田教授は当初、女児の肌着に残る体液のDNA型と菅家さんのDNA型は一致するだろうと思っていた。 「これまでの裁判で、そう認められているのですから」

 菅家さんの型は「18-29」というタイプ。しかし何度実験しても、肌着の体液からは、そのDNA型が検出されない。むしろ「18-24」という別の型がはっきりと出た。

 自分が間違えているのではないか。鑑定書を裁判所に提出する前日まで実験を繰り返した。 「国が一度出した結論を、簡単に『間違っている』と否定できるわけがありません。でも何百回試しても、一致しませんでした」

 旧鑑定では、肌着の体液と菅家さんのDNA型はともに「16-26」で一致すると結論づけていた。

 有罪の決め手となったこの旧鑑定について、本田教授は「二重の誤り」を指摘する。

 一つは、菅家さんのDNAの型番がそもそも違うこと。もう一つは、肌着の体液と菅家さんのDNA型を同じだとしたことだ。 「前者は、技術に限界がある頃の話で、責めるつもりはない。でも後者は、勇み足だったのでは」

 というのも、旧鑑定書にはDNA型を示す帯グラフのような写真が添付されており、これが判断の根拠とされていたが、写真を見た本田教授は「これでよく同じ型と言えたな」と感じたからだ。

 旧鑑定からの約20年間で、DNA型鑑定は精度が高まる一方、適用件数も増えてすそ野が広がった。

 「DNA型鑑定は革新的な手法で、多くのケースで正しい結論を導くことは間違いない。しかし、残された試料の量が少なかったり、質が悪かったりするケースでは、今でも判定が難しいことに変わりはない。鑑定人の技能などで結論は左右される」と本田教授は話す。

■同時期の事件に波及か

 「東の足利」が覆った今、「西の飯塚」はどうなるのか――。弁護士らがささやく事件がある。

 92年に福岡県飯塚市の女児2人が殺された事件だ。市内に住む久間三千年(くま・みちとし)元死刑囚(08年に刑執行)が94年に逮捕された決め手の1つは、やはり導入間もないDNA型鑑定だった。

 県警は逮捕前、任意で採った元死刑囚の髪の毛と、女児の体に付いていた真犯人のものとみられる血液を警察庁科学警察研究所(科警研)に持ち込んだ。科警研が使った複数の鑑定法のうち、足利事件と同じ「MCT118」で一致したとされる。元死刑囚は一貫して否認したが、最高裁は06年に鑑定の証拠能力を認め、他の状況証拠とあわせ死刑判決を導き出した。

 だがこの事件では、検察側が逮捕前、帝京大の石山夫(いくお)教授(法医学)=当時=にも別のDNA型鑑定を依頼。こちらは試料から久間元死刑囚と一致するDNA型は検出されなかった。

 この結果も一審の公判途中から証拠採用されはした。弁護側が「科警研の鑑定と矛盾している」と主張したが、判決は「科警研の鑑定で試料を使い切っていた可能性もある」と退けた。

 「同じ方法の足利が誤っていたと証明できれば、飯塚でも十分な証拠になりうる」。3月末に再結成した弁護団はこれを新証拠とし、名誉回復の意味合いが強い死後再審の準備を始めた。

 2つの事件と同じ鑑定方法は03年まで主流だった。特に90年代初めの導入初期のころは技術的に不安定だったとみられ、この時期を中心に足利事件と同じようなケースが今後も出てくる可能性がある。

 すべての死刑囚や懲役囚にDNA型鑑定を受ける権利を認めたアメリカ。精度の高い方法での再鑑定で、08年までに計237人が再審無罪判決を受けている。鑑定で無罪を勝ち取った元死刑囚や市民団体の求めで04年10月に成立した「イノセンス・プロテクション・アクト(無実を守る法律)」に基づくものだ。鑑定で犯行が裏付けられた場合は偽証罪に問われるものの、申し立ては相次いでいるという。

 海外の刑事司法に詳しい伊藤和子弁護士は「刑罰を決めるだけでなく誤った判決を防ぐのも国の責務」と、同様の制度の必要性を訴える。」



検察側 世間意識し釈放を決断

 検察側はぎりぎりまで釈放をためらっていた。東京高裁が再審請求の即時抗告審で、DNA型の再鑑定を行う見通しとなったのが08年10月。弁護団は勢いづいたが、法務・検察はまだ余裕を見せていた。ある幹部は「新たに鑑定しても負けない根拠はある」と語った。

 しかし、再鑑定の結果は、弁護側、検察側がそれぞれ推薦した鑑定人が、いずれも「DNA型が一致しない」。検察側の自信は、もろくも崩れた。

 検察幹部は「釈放しなければならないかもしれない……。ただ、被害者がいるから簡単には引き下がれない」と漏らした後「やれることをやって犯人ではないということになれば、釈放する方が潔い」。

 「やれること」とは、栃木県警の当時の捜査員ら数十人のDNA型との照合作業。鑑定には女児の衣服に残った体液が試料として使われたが、旧鑑定で中心部分が使われたため、再鑑定では周辺部分が使われた。そのため他人が触って、犯人とは別人の汗などのDNAが混ざった可能性があった。だが検察関係者によると、先月下旬、捜査員らのDNA型とは一切一致しないとの結果が突きつけられた。

 再鑑定に対する東京高裁への意見書の提出期限は今月12日。検察当局は4日午前、最終的な会議を開催。反論できる余地がなくなったため、期限まで1週間以上を残して、事実上無罪であることを認める意見書を提出するとともに、刑の執行を停止する手続きをも取って「白旗」を掲げることを決定した。

 「世間の目だよ」。検察関係者はそれを意識して「釈放は早い方が良く、12日まで待つべきではないと判断した」と明かす。スタートした裁判員制度を念頭に、検察が公正な組織だとアピールしたいとの思惑があったとの見方も、内部にはあるという。」



【MCT118】 DNA型鑑定の方法の1つ。89年に国内で初めてDNA型鑑定を導入した警察庁科学警察研究所が当初、採用していた。髪の毛根や皮膚など人間の細胞の中に必ず含まれるDNAの一部に着目。塩基という成分の並び方の繰り返しパターンを調べて、435通りの型のどれにあてはまるかなどを識別する。現在主流の方法に比べ、多くの試料が必要で、精度の低さが問題視されていた。」



(3) 朝日新聞平成21年6月5日付朝刊35面(14版)

「無実 人生返して」 足利事件 菅家さん釈放
■「捜査間違った、ではすまぬ」

 足利事件の容疑者として逮捕されてからの17年半は、もう戻らない。DNA型が一致しないとする再鑑定結果を受け、4日に釈放された菅家利和(すがや・としかず)さん(62)は、支援者や弁護団と喜びをかみしめ、記者会見に臨んだ。 「警察官や検察官を許すことはできない。謝ってほしい」。絞り出すように何度も繰り返した。

 午後3時48分、菅家さんを乗せたワゴン車が千葉市若葉区の千葉刑務所の門をくぐった。「おめでとう」。支援者の呼びかけに、菅家さんは車の窓から手を振りながら、満面の笑みで応えた。

 釈放を告げられたのはこの日午前。朝食後、工場で作業をしていたところ、刑務官に呼ばれた。釈放後、同市内のホテルで記者会見した菅家さんは「最初はきょとんとしていましたが、そのうち、ああ良かったと思った」。

 釈放後、大好きなコーヒーを飲んだという。刑務所内でも飲んだというが、「ひと味もふた味も違います」。さらに、「刑務所内ののど自慢大会では2票差で負けた。カラオケにもぜひ行きたい」と笑顔を見せた。

 しかし、会見で当時の警察や検察の捜査に質問が及ぶと、表情が険しくなった。「私は犯人ではありません。全く身に覚えがありません」と改めて無実を訴えた。「自分の人生を返してほしい。間違ったではすまないんです」

 菅家さんは91年春まで栃木県足利市内の幼稚園に勤めていた元バス運転手。空き時間には園児とよく遊んでいて、人気者だったという。

 逮捕からの17年半で、取り巻く環境は大きく変化した。「警察に捕まり、おやじがショックで亡くなった。母も2年前の4月に亡くなった。母もつらかったと思う」。1日でも早く父母の墓参りに行きたいと願っている。被害者の女児の墓参りにも行くつもりだ。 「おじさんは犯人ではないよと伝えたい」

 菅家さんは獄中から、朝日新聞記者に何度か手紙をつづっている。手紙は毎回、 「拝啓」で始まり、記者の体を気遣う言葉で終わる丁寧な書きぶり。 「頑張ってまいります」と再審請求への意欲を見せていた。

 今春の手紙でも、 「毎日元気で(刑務所での)作業を頑張っております」と日々の生活を語り、 「私は無実」 「ぜったいDNA再鑑定は一致しないと信じていた」と繰り返していた。

 菅家さんは捜査段階で「自白」している。なぜ、やってもいない罪を自白したのか。菅家さんは「髪の毛を引っ張られたり、け飛ばされたり。刑事の取り調べが厳しく『白状しろ』 『早くしゃべて楽になれ』と言われ、どうしようもなくなって自分がやったと言ってしまった」と説明。「冤罪をなくすためには、取調室は密室ではなく、テレビを設置するなどして室内を監視してほしい」と訴えた。

 事件は既に公訴時効の15年を経過している。真犯人について問われると、 「絶対に許せません。真犯人には時効があっては絶対になりません」。

 会見には、支援者が用意してくれたブレザーを着て臨んだ。 「本当に感謝しています。支援がなかったら今日という日はありませんでした」。生まれ育った足利に戻って暮らしたいと願う菅家さん。「今後は自分と同じように、冤罪に苦しむ人たちの支援をしていきたい」と話した。」



なぜ誤った自白 解明訴え 記者会見で弁護側

 「なぜ誤った自白がなされたのかを解明しなければ、この事件は終わらない」

 弁護団の佐藤博史弁護士は記者会見でこう話した。再審でh、虚偽の自白が引き出された経緯を明らかにするよう検察側に求めるという。

 DNA型の再鑑定では、検察側と弁護側それぞれが推薦した鑑定人2人が同じ鑑定結果を出した。しかし、検察側はこの日に東京高裁に提出した意見書で、捜査当時の鑑定は誤りだったと指摘した弁護側推薦の鑑定については「信用性に欠ける」と主張した。

 佐藤弁護士は「検察は『当時のDNA型鑑定は正しかった。捜査も正しかった。自白したから有罪になったのは仕方がない。誰も悪くなかったんだ』と言いたいらしい」と検察側の態度を批判した。

 佐藤弁護士は「菅家さんは年金を納めることもできず、生活の基盤を完全に奪われている」として、刑事補償法に基づく補償金の支払いを求める考えを示した。

 菅家さんの再審開始に向けて支援する日本弁護士連合会の宮崎誠会長は「検察官が再審開始を容認し、身柄を解放したことは高く評価する。冤罪者でも容易に自白に至る現実を改めて明白にしたもので、取り調べの全面可視化の要請は一層強まったというべきだ」との談話を出した。」



(4) 朝日新聞平成21年6月5日付朝刊34面(14版)

自白偏重 繰り返す冤罪  批判、裁判員制度の一因に

 日本の刑事裁判の有罪率は約99.9%。最高裁に統計が残る79年から現在まで、ほとんど変わっていない。一方で、足利事件と同様に、捜査当局がつくった「自白調書」に頼った結果の冤罪も繰り返されてきた。そのことへの批判が「司法への市民参加」を求める声を高め、裁判員制度が実現する一因ともなった。

 「開かずの扉」と言われた再審開始の可能性を広げたのは、75年に最高裁が示した「白鳥決定」だ。 「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審にも通用されると判断し、再審開始のハードルを下げた。

 その後の80年代。免田、財田川、松山、島田の4事件で相次いで死刑囚の再審開始が認められ、無罪判決を受けた。戦後の混乱期のすざんな自白調書が問題となった。

 刑事法学者の平野龍一・元東京大総長(故人)は80年代半ば、自白調書に頼りがちな刑事裁判を「絶望的」と論文に書いた。 「有罪判決慣れ」した裁判官を批判する弁護士や学者、市民から「市民のまっさらな目」による新しい刑事裁判のかたちを切望する声が上がり始めた。

 だが、再審開始のハードルは、90年代に入って再び高くなったとの指摘もある。重大事件で認められたのは「布川事件」(検察側が最高裁に特別抗告中)などわずか。 「名張毒ブドウ酒事件」もいったん名古屋高裁が再審開始を認めたが、同高裁の別の裁判官が異議審で取り消した(弁護側が最高裁に特別抗告中)。近年も富山の強姦(ごうかん)事件や鹿児島の選挙違反事件など、自白偏重による冤罪は起きている。

 日本弁護士連合会などが求めてきた司法への市民参加は、裁判員制度として結実した。DNA型鑑定の精度に問題があったとはいえ、新制度がスタートしたばかりのこの時期に「足利事件」の再審無罪の可能性が高まったことは、改めて裁判員となる市民に「慎重に判断をしなければ、大変なことになる」との意識を強く抱かせる結果となった。」



捜査幹部淡々「適切に対応」

 菅家利和さんの釈放決定を受け、栃木県警の白井孝雄刑事総務課長は4日午後、取材に応じ、 「重く受け止めている。今後、東京高裁の審理の推移を見守り、適切に対応したい」と高田健治刑事部長名の談話を淡々と読み上げた。

 逮捕の決め手となったDNA型鑑定について「当時の方法に従って適正に行われたと考えている」と述べた。記者からは「菅家さんが再審無罪になった場合、真犯人をどう考えるか」 「誤認逮捕したという認識は今もないのか」 「自白させた当時の取り調べ方法は適正だったのか」と質問が矢継ぎ早に飛んだ。そのたびに「審理を見守り、適切に対応したい」との発言を繰り返した。

 警察庁の吉村博人長官も同日の定例会見で「このようなことになったことについて厳粛に受け止める」。森法相は「個別の事件について所感を述べることは差し控えるが、検察当局は事態を重く受け止め、今後の刑事裁判手続きに適切に対処するものと思う」とのコメントを発表した。」



(5) asahi.com(2009年06月05日)

「支援者に感謝」 足利事件 菅家さん釈放
2009年06月05日

 足利事件で無期懲役刑に服していた菅家利和さん(62)が4日、一転して釈放された。弁護団や支援者が喜びを爆発させる一方、捜査関係者は「信じられない」と言葉を失った。発生から19年。足利市の現場周辺では、DNA型鑑定に翻弄(ほん・ろう)された事件に、当時を知る人たちが思いを巡らせた。

◇「犯人ではない」強調

 千葉市内のホテル。菅家さんは「私は犯人ではありません」と1時間にわたって力強く話した記者会見の最後、事件当初から支援を続けてくれた西巻糸子さん(59)に向かって、「本当に感謝しています。西巻さんがいなければ、今日という日はこなかった」と話した。

 西巻さんは「菅家さんを支える会・栃木」の代表。釈放の瞬間を「夢のようだった」と振り返った。

 足利市に住む西巻さんは、菅家さんが幼稚園バスの運転手をしていた当時、別の幼稚園で送迎バスの運転手をしていたという。「子どもが好きなのと、子どもが好きで殺してしまうのは違う。菅家さんは、そんな人じゃないとずっと思っていた」と、独自に支援を続けてきた。

 月1回のペースで面会を続け、この日は弁護士とともに、千葉刑務所内の部屋で菅家さんを待った。握手を交わし、肩を抱き合って涙を流したといい、「本当にうれしい」。

 菅家さんが会見で着ていた洋服は、西巻さんの家族が用意したものという。西巻さんは会見後、「支援に参加してくれた人の励ましが大きかった。弁護士もとても精力的に取り組んでくれた。(DNA型再鑑定した)科学者はすごい。感謝しています」と何度もうなずいた。

 菅家さんは会見で、今後について「足利市は私の故郷だから、やっぱり帰りたい」と語った。西巻さんは「これからは、地元に受け入れてもらうことを最優先にしていきたい。わだかまりを持たずに『よかったね』と言ってほしい」とうなずいた。

 一方、会見に同席した弁護団の佐藤博史弁護士は「検察の英断に感謝したい」。刑務所を出る時、多くの刑務官から「ご苦労様でした」と言われて送り出されたことを明かし、「15年間、無実だと信じてきたことが受け入れられた。こんなにうれしいことはない」と笑った。

◇凶行から19年 現場付近では/「真犯人どこ?」不安

 足利市の中心街を流れる渡良瀬川の河川敷――。事件から19年がたち、現場となったこの場所に惨劇をうかがわせるものは残っていない。「菅家さん釈放」という急展開に、近くの住民や関係者は一様に驚きの表情を見せた。

 4日、河川敷には背丈ほどの草が生い茂り、隣の渡良瀬運動公園では散歩やランニングを楽しむ人が行き交っていた。最高裁で無期懲役が確定した判決によれば、90年5月12日の夕方、菅家さんはこの公園を突っ切り、女児とともに遺棄現場の河川敷に向かったとされている。

 女児が通っていた龍泉寺保育園の源田俊昭園長(67)は「DNAで犯人にされ、DNAで釈放されたようなもの」と表現し、菅家さんの境遇に思いを巡らせた。逮捕から釈放まで、菅家さんの身柄の拘束は17年半に及ぶ。「人生を棒に振って大変気の毒。この人生をどのように回復させるのか」

 一方、女児の住んでいたアパート近くに住む主婦(69)は「菅家さんが犯人でないとすれば、(女児の)ご両親もかわいそう。本当はやっていないのだとしたら、菅家さんはどうして自白してしまったのか」と語った。

 菅家さんの釈放は、菅家さんが再審無罪になる公算が大きくなったことを意味する。住民らが気がかりなのは「では、真犯人はどこにいるのか」ということだ。

 近くに住む別の主婦(59)は「逮捕当時から、菅家さんは犯人ではないのではないかといううわさはあった」と明らかにする。「当時は自分にも小学生の子どもがいて不安だった。もし菅家さんが犯人でないとするとほかに真犯人がいることになり、怖い」。源田園長も「彼が犯人でないなら、誰が(女児を)殺したというのか」と話した。

 菅家さんが事件当時にバス運転手として勤めた市内の幼稚園の園長は「20年近く前の話で当時の園長も昨年に亡くなった。関係者に迷惑をかける心配もあるので一切コメントできない」と話した。

◇元捜査員「証拠あり逮捕」

 「菅家さん釈放」の知らせに、当時の捜査幹部の1人は「信じられない」と驚きを隠さなかった。「彼以外に犯人はあり得ない。彼が犯人ではないと思ったことは一度もない」

 この元捜査幹部は、菅家さんの取り調べにも携わったという。「彼は自ら犯行を再現した。本人しか再現できないような迫力があり、何ら疑いを持たれたことはない」。この日も改めて捜査の正当性を強調した。

 逮捕の決め手となったDNA型の「一致」が、再鑑定では一転して「不一致」となったことについては「自白があり、疑う要素はない」と言い切った。

 別のある元捜査員は「まだ結果が出たわけじゃない。静かに見守りたい」と静観の構え。「当時の鑑定の真偽についてはよく分からないが、そもそも、導入されたばかりで『DNA』がどういうものかを認識していなかった」とした上で、「逮捕に踏み切った理由は(DNA以外に)確かな証拠があった」と話した。

 今回の釈放で、菅家さんは再審で無罪を勝ち取る公算が大きくなった一方、事件は発生から15年後の05年5月に公訴時効が成立している。もう真犯人がいたとしても逮捕できず、事件の真相が闇に埋もれる可能性は高い。」




3.最後に、朝日新聞の社説を。

(1) 朝日新聞平成21年6月5日付(金)「社説」

足利事件―DNA型一致せずの衝撃 

 がくぜんとする。刑事裁判の歴史にまた汚点が加わることになりそうだ。

 栃木県足利市で1990年、4歳の女児が殺害された。警察は幼稚園バス運転手だった菅家利和さんを逮捕した。その菅家さんがきのう、逮捕から17年半ぶりに釈放された。

 逮捕の決め手となったのは、捜査に導入されてまもないDNA型鑑定だった。被害者の衣服についていた犯人の体液と菅家さんの体液の型が一致したとの鑑定結果が出たのだ。

 取調官から鑑定結果を突きつけられ、菅家さんは犯行を自白したという。一審公判の途中で「DNA型鑑定で虚偽の自白を迫られた」と否認に転じたが、一審も二審も最高裁も、DNA型鑑定と「自白」の方を信用して有罪とし、無期懲役の判決が確定した。

 獄中の菅家さんと弁護団は再審を請求し、再鑑定を求めた。事件当時は千人に1.2人を識別できる程度だった鑑定の精度が、いまでは4兆7千億人に1人にまで向上しているからだ。

 東京高裁が依頼した再鑑定の結果は一転して、犯人と菅家さんのDNA型は一致しないというものだった。

 東京高検は、この結果が「無罪を言い渡すべき証拠に当たる可能性が高い」との意見書を東京高裁に出した。高裁は早く再審決定をするべきだ。

 衝撃的な事態である。DNA型鑑定は多くの事件で実施されてきた。初期の鑑定の信用度が揺らぐ影響は計り知れない。92年に福岡県飯塚市で起きた女児2人殺害事件では、DNA型鑑定が証拠となって死刑判決の確定した男性が昨年、刑を執行されている。

 再審請求の裁判でDNA型を再鑑定したのは異例だ。この際、DNA型鑑定で有罪となったほかの事件についても再鑑定を実施すべきではないか。

 精度があがったとはいえ、DNA型鑑定だけに頼り過ぎるのは危うい。捜査段階で犯人以外のDNAが紛れ込む可能性がある。警察はDNAを適正に採取するだけでなく、将来再鑑定できるだけの分量をきちんと保管することを徹底してほしい。

 裁判所にも猛省を促したい。DNA型鑑定を過信するあまり、無理やり引き出された「自白」の信用性を十分検討せず、有罪との判断に陥った面はなかったか。再審裁判ではこの点を厳しく検証しなくてはならない。

 自白の強制を防ぐためには、取り調べの可視化が重要だ。取り調べの録画は一部にとどまっているが、すべての過程の録画が必要だ。このことを今回の問題は改めて示している。

 プロの裁判官といえども判断を誤ることがある。私たち国民も法廷や評議の場に裁判員として参加する時代になった。常識を働かせて自白や証拠を遠慮なくチェックする。その責任の重さを思う。」




(2) 引用した分量から分かるように、「足利事件」について、かなりの紙面を割いて記事にしています。注目するべき点は、<1>旧鑑定は二重のミスがあるといった致命的な欠陥があったという指摘、<2>処刑してしまった「飯塚事件」への影響に言及するなど、重要な点について報じていることです。すでに取り返しが付かない「飯塚事件」のことを考えると、――言及していませんが――死刑制度を存続してよいのかどうかにまで影響する問題となるわけですから、避けることができない問題です。

社説において、「裁判所にも猛省を促したい。DNA型鑑定を過信するあまり、無理やり引き出された「自白」の信用性を十分検討せず、有罪との判断に陥った面はなかったか。再審裁判ではこの点を厳しく検証しなくてはならない。」と指摘しています。無実の者が服役したのは、裁判所が信用性に欠ける当時の科学警察研究所のDNA型鑑定を妄信した結果なのですから、裁判所こそ厳しく批判されるべきです。こうした批判が高く評価するべきです。

「「足利事件」の菅家さん、17年半ぶりに釈放~再審開始が確定的に」(2009/06/06 [Sat] 16:53:34)において、「足利事件」報道において必要なポイントとして、5点ほど挙げておきました。

すなわち、<1>「足利事件」では、信用性に欠ける当時のDNA型鑑定を妄信し、暴行を加えてまで虚偽の自白を強要した点が冤罪の原因あり、警察と検察に最大の責任があること、<2>信用性に欠ける当時のDNA型鑑定にお墨付きを与えた最高裁判例(最高裁平成12年7月17日決定刑集54巻6号550頁)など裁判官も重大な責任を負っていること、<3>「逮捕=有罪」視する報道や、DNA型鑑定という新しい科学的捜査手法・科学的証拠に対して批判的な姿勢をしなかったという不作為責任が報道機関にもあること、<4>警察、検察、裁判所が、菅家さんやそのご家族の人生を台無しにしてしまったこと、<5>「足利事件」の本当の真犯人が処罰を免れてしまったこと、<6>「飯塚事件」では、同じく信用性に欠ける当時のDNA型鑑定に基づいて久間三千年さんに対して死刑が確定し、刑が執行されてしまったこと、です。

これら5点のうち、朝日新聞は、<3>の点について言及していない点は残念ですが、ほとんどの点について言及しているため、市民に対して十分な情報を提供をしているといえます。

テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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2009/06/13(土) 09:48:29 | ? ?Υ??
  ・天理15得点、南砺福野に圧勝   ・「磐田の救世主」なぜ帰還   ・今岡、今オフトレード要員に ◇関連記事・情報 足利事件と飯塚事件:菅家利和さんのインタビューを読んで... その上、科警研では真犯人のDNAと久間三千年さんのDNAが...
2009/08/11(火) 19:41:25 | 興味あるニュース速報
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