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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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2006/10/30 [Mon] 07:24:05 » E d i t
政府提出の教育基本法改正案と、民主党提出の「日本国教育基本法案」が、10月30日、衆院教育基本法特別委員会で、首相も出席して本格的な審議に入ります。この審議を聞くにあたって、大内裕和助教授が「教育基本法改正:格差社会を助長するおそれ」という表題での論説記事(毎日新聞平成18年10月29日付の「ウイークリー文化 批評と表現」欄の「21世紀を読む」より)が参考になると思いますので、この論説を紹介したいと思います。


1.毎日新聞平成18年10月29日(日曜日)付4面の「ウイークリー文化 批評と表現」欄の「21世紀を読む」

教育基本法改正:格差社会を助長するおそれ

 臨時国会の最重要法案となっている教育基本法「改正」法案は、特別委員会での本格的な審議が30日から始まる。前の通常国会で注目されたのは「愛国心」をめぐる議論であった。「愛国心」通知表など、その評価の是非や「思想及び良心の自由」との関(かか)わりで論争が行われたことは記憶に新しい。しかし、同法「改正」の重要な論点であるにも関わらず、まだ十分に審議されていない問題がある。それは同法「改正」と現在大きな問題となっている格差社会との関係である。

 教育基本法の重要な理念の一つに「教育の機会均等」がある。戦前は男女や経済力による教育の格差が明確に存在していた。それに対してすべての人に平等な教育機会を提供することが、教育基本法の理念に盛り込まれた。しかし政府法案は「教育の機会均等」を破壊し、格差社会を助長する危険性をもっている。


 教育基本法第3条(教育の機会均等)
 
 すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。


 政府「改正」法案第4条「教育の機会均等」

 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。


 現行法では「能力に応ずる教育」となっていた文言が、政府法案では「能力に応じた教育」へと変えられている。「能力に応ずる教育」は、「発達の必要に応ずる教育」と解釈され、その時点での能力の格差を是正する方向で教育機会を保障することが目指されていた。しかし「能力に応じた教育」は、能力の上下によって教育機会が差別的に配分することを容認する表現である。これでは教育の機会不平等が促進されてしまう。

 それに加えて政府法案第5条「義務教育」には、現行法第4条(義務教育)にない新たな条文がある。


 政府「改正」法案第5条「義務教育」
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

 
 第2項の「各個人の有する能力を伸ばしつつ」との文言は、義務教育における格差拡大をもたらす危険性が高い。義務教育段階での「能力」は特に、家庭や地域など子どもを取り巻く環境に強く影響される。この時点での「能力」の違いを所与の条件としてそれぞれの子どもを伸ばしていくのであれば、義務教育の重要な役割である平等化は放棄され、出身家庭や出身地域による教育格差が拡大し、階層の固定化がもたらされるであろう。

 また第3項の「水準を確保」という文言は、義務教育における競争や能力主義を一層推し進める。文部科学省は07年4月に、小学校6年生と中学校3年生の全員が参加する全国学力テストを実施する。これによりすべての都道府県、小中学校、生徒に順位をつけることが可能になる。このテストなど「水準を確保」することを目指す教育政策が、義務教育段階での競争と格差を全国規模で強化するだろう。教育基本法「改正」が格差社会を助長する危険性はきわめて高い。

 毎日新聞が05年12月に実施した世論調査では、親の所得など家庭環境によって、子どもの将来の職業や所得が左右される「格差社会」になりつつあると思う人は6割を超えている。多くの人々が危惧(きぐ)している格差社会と教育基本法「改正」との関係について、臨時国会で十分な議論が行われることが強く望まれる。


大内裕和(おおうち・ひろかず) 松山大助教授(教育社会学)。1967年生まれ。東大博士課程修了。著書に『教育基本法「改正」を問う』(高橋哲哉東大教授との共著)」




2.教育基本法改正は、多岐にわたります。そのうち、大内助教授は、この論説では、教育基本法第3条(教育の機会均等)と第4条(義務教育)のみに絞り、その条文を改正した場合の弊害、すなわち、格差社会を助長する危険性があるのではないか、と説いています。

この論説を読むと、政府法案が細かく文言を改正し、追加していることが分かります。そして、それによってどのように具体的に教育行政を変化させようとしているのか、という予測も。

 「現行法では「能力に応ずる教育」となっていた文言が、政府法案では「能力に応じた教育」へと変えられている。……しかし「能力に応じた教育」は、能力の上下によって教育機会が差別的に配分することを容認する表現である。これでは教育の機会不平等が促進されてしまう。


 「それに加えて政府法案第5条「義務教育」には、現行法第4条(義務教育)にない新たな条文がある。……第2項の「各個人の有する能力を伸ばしつつ」との文言は、義務教育における格差拡大をもたらす危険性が高い。……また第3項の「水準を確保」という文言は、義務教育における競争や能力主義を一層推し進める。……このテストなど「水準を確保」することを目指す教育政策が、義務教育段階での競争と格差を全国規模で強化するだろう。」


格差社会の助長を望む立場であれば、こういった政府法案に異議を唱える必要はないのでしょうが、格差社会の助長に危惧を覚える立場であれば、政府法案を疑問視する方向になります。

政府が、政府法案で細かく条文の文言を改正することで、具体的に何を考えているのかは、まだ明確ではありません。ですから、「多くの人々が危惧(きぐ)している格差社会と教育基本法『改正』との関係について、臨時国会で十分な議論が行われることが強く望まれる」のです。

もちろん、一般市民としても、教育基本法がどう改正されるのか、改正によりどのように具体的に変わるのか、を充分に知っておく必要があります。子どもの将来・人生に大きく関わる問題なのですから。


教育基本法「改正」情報センターでは、平成1810月30日に、「すべての報道関係者のみなさんに訴えます  教基法改正法案の国会審議を、市民とともに、徹底的に監視し、真の争点を明らかにして、国民の主権者としての判断に必要な情報を報道してください!」(PDF)という「声明」を出しています。
その中から一部引用すると、

 「教育基本法は、教育の憲法ともいわれる法律です。その「改正」は憲法「改正」にも匹敵する大きな問題です。

 また、この間、いじめ自殺事件、必修単位未履修問題などの教育問題が浮上してきました。これらの問題を解決しうるのは、現行教基法を無視し続け、そして今、教基法改正案を提出している文科省の教育行政によってなのか、それとも、現行教基法に基づく教育と教育行政を実現することによってなのか。教基法の改正により、日本の公教育の抱える問題は解消するのか、それとも、悪化していくことになるのか。教基法改正法案の帰趨が、日本の公教育の行く末を左右することは間違いありません。」


このように、「教育基本法は、教育の憲法ともいわれる法律です。その「改正」は憲法「改正」にも匹敵する大きな問題」ですから、この改正は大変重要な意義をもちます。
政府の教育基本法「改正」法案は、全体にわたって細かく改正・追加していますから、すべてにわたり綿密な検討・審議をする必要があります。ですから、教育基本法の改正により、日本の公教育の抱える問題は解消するのかどうか、「愛国心」を評価する必要があるのかどうかなど、を今国会で審議することは意義あることなのでしょう。

しかし、前の通常国会と異なり、今は、高校必修科目の履修不足問題が浮上し、いじめによる児童・生徒の自殺が相次いでいる状態です。いまや、幼稚園や小学校低学年でのいじめも、珍しくありません。それも、幼稚園でも「教諭の目が届かないトイレでの集団暴行」(東京新聞10月30日付朝刊8面)を行ったり、まだ小学1年生の女の子が「耳元で『死ね』と」言われたり「げんこつで殴られ」たりするほどのいじめを受ける(東京新聞10月30日付朝刊8面)。しかも、このような過激化し、犯罪化しているいじめに対して、幼稚園では真剣に対応せず、殴った児童は謝ったりしていないのです。いじめによるとの遺書があっても、学校側は「いじめはなかった、いじめによる自殺でなかった」と言い訳するのです。

高校必修科目の履修不足問題が生じた背景と対策自殺に至るほどのいじめ問題・いじめの低年齢化問題の背景と対策など、こういった今直面している問題に対する具体的な対策こそ、急務であり、これこそ国会で審議すべきことではないのかと考えます。今、教育基本法を審議し、改正する必要があるのか、疑問を感じます。

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コメント
この記事へのコメント
お久し振りです。鞍縞です。

私は、教育においてある程度の差別はあっていいかと思います。
というか、私の学校では英語と数学のみですが、習熟度別にクラスが分かれるので……
バカはバカなりに、優秀な者は優秀な者なりに学び、その上で学歴社会の中で競争していくわけで、ある程度の差別があるからと言って、格差社会の助長にはならないかと。

話が逸れました。

政府の見るべき点が違うということには同意です。
どうにもこうにも解決のしようがないときになって、突如強引な方法を行うのが政府だと私は考えています教育というのは、次世代を担う若者を育てるだけでなく、ひとりの人間の人格形成の過程の一部なのだから、非常に大切なものです。
だからこそ、政府にはいい加減なことはしてほしくないですね。ましてや命や心が関わる事柄なのですから。


長々と駄文を書き連ねてすみませんでした。
不適当でしたら削除をお願いします。
2006/10/30 Mon 22:45:18
URL | 鞍縞 #-[ 編集 ]
このブログのリンクに、私のブログが入ってますね……!
今気付きました(←アホ)。
ありがとうございます!

厚かましいのは承知の上ですが、こちらからも春霞さまのブログにリンクを貼ってよろしいでしょうか?
2006/10/31 Tue 23:48:29
URL | 鞍縞 #23/F9VpE[ 編集 ]
>鞍縞さん
コメントありがとうございます。お返事が遅れてすみません。

>私は、教育においてある程度の差別はあっていいかと思います
>私の学校では英語と数学のみですが、習熟度別にクラスが分かれる
>ある程度の差別があるからと言って、格差社会の助長にはならないかと

大学受験に備えてとなれば、習熟度別のクラス分けは必要でしょう。だから、鞍縞さんが仰るとおり、そういった「ある程度の差別があるからと言って、格差社会の助長にはならない」と思います。

おそらく、大内助教授が言いたいことを丁寧に説明すると、次のようなことかと思います。

「現行の教育基本法は、教育の機会均等と能力主義とバランスを図っているが、政府法案では、能力主義を強調している。そうなると、義務教育段階からの学校選択制の拡大・習熟度別学級編成の拡大につながる。その結果、差別の拡大・固定化となり、上位の学校・クラスへの支援・下位の学校・クラスの切捨てとなり、ずっと下位にある者は上昇する意欲を失ってしまう。こうなるので、格差社会を助長する。」(辻井喬=藤田英典=喜多明人編「なぜ変える? 教育基本法」(2006年、岩波書店)参照)

こういった感じでしょうか。ただ、こう説明しましたが、教育基本法改正論議自体が、抽象論・理念の争いで具体性・現実感に欠けるきらいがあるので、鞍縞さんのように現在学校にいる立場だと、「何で格差社会の助長?」と思うのも無理はないと思います。


>教育というのは、次世代を担う若者を育てるだけでなく、ひとりの人間の
>人格形成の過程の一部なのだから、非常に大切なものです

その通りですね。
憲法の本には、こう書かれています。「教育は、個人の人格的発展という面からも、社会生活の向上という面からも、きわめて重要な意義をもつ。日本国憲法は、26条1項で『すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する』と定め、2項で、『すべて国民は法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする』と定めている。」(戸波江二「憲法(新版)」(平成10年、ぎょうせい)308頁)


>政府の見るべき点が違うということには同意です
>政府にはいい加減なことはしてほしくないですね。ましてや命や心が
>関わる事柄なのですから。

10月30日の衆院特別委員会では、必修漏れといじめ問題に質疑が集中しました。今のところ、「見るべき点が違う」わけではないようです。


>長々と駄文を書き連ねてすみませんでした。
>不適当でしたら削除をお願いします。

全然「長々」なんてことはないです。「不適切」でもなんでもないです。ご遠慮なく。
鞍縞さんのコメントは、言い回しに気を配っているように感じられます。ご配慮ありがとうございます。ですが、ここのブログでは、もっとづけづけと言いたいことを書いて構いません。
2006/11/01 Wed 00:00:36
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
>鞍縞さん:2006/10/31(火) 23:48:29へのお返事
コメントありがとうございます。

>このブログのリンクに、私のブログが入ってますね……!
>今気付きました(←アホ)。

アホじゃないです。
ごく最近、10月31日朝にリンクさせて頂いたので、気が付かないと思います。


>こちらからも春霞さまのブログに
>リンクを貼ってよろしいでしょうか?

こちらこそリンクお願いします。これからも宜しくお願いします。
2006/11/01 Wed 02:17:30
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
直接には関係ないコメントでごめんなさい。
 安倍ちゃんのほんとの顔、怖い顔って感じです。以下の記事です。エントリーに関係なくてすみません。春霞さんのお考え、聴きたくて。

(読売新聞 - 11月01日 01:12)
 安倍首相は31日、首相官邸で米CNNテレビと英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに個別に応じた。内閣広報室によると、首相はインタビューで、憲法改正について「自民党総裁任期は3年で2期までしか務められない。自分の任期中に憲法改正を目指したい」と述べ、今後6年間に自らの手で憲法改正の実現を目指す考えを示した。
 また、「時代にそぐわない条文として典型的なものは9条だ。日本を守る観点や、国際貢献を行う上で改正すべきだ」と述べ、9条改正の必要性を指摘した。
 安倍首相は就任後、憲法改正について所信表明演説で「与野党で議論が深められ、方向性が出てくることを願う」と述べるなど、踏み込んだ発言を控えていた。
2006/11/01 Wed 10:53:49
URL | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集 ]
>ゆうこさん
コメントありがとうございます。

>春霞さんのお考え、聴きたくて。

簡単に書こうと思いましたが、折角ですから、別個に、エントリーを立てて答えてみました。そちらをご覧下さい。お願いします。
2006/11/01 Wed 19:27:07
URL | 春霞 #Gu2JBjds[ 編集 ]
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(読売新聞 - 11月01日 01:12)  安倍首相は31日、首相官邸で米CNNテレビと英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに個別に応じた。内閣広報室によると、首相はインタビューで、憲法改正について「自民党総裁任期は3年で2期までしか務められない。自分の任期中に
2006/11/01(水) 10:56:41 | 来栖宥子★午後のアダージオ
 当ブログの10月27日付けの記事に対するRig様の久々のコメントに対して、返答
2006/11/02(木) 13:50:25 | ENJOY AMBITION!!
教育基本法が、改正されようとしている。言うまでもなく、日本国憲法とともに、戦後民主主義の礎となった法である。そうかい、そんなに都合の悪いものなのかい。今の為政者、権力者にとって、戦後民主主義とは。もとより、法文を読んでるわけじゃない。なに、読まなくったっ
2006/11/06(月) 15:00:05 | BLOG BLUES
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