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2009/05/07 [Thu] 05:40:45 » E d i t
殺人事件での時効制度の廃止などを訴える遺族会「宙(そら)の会」が平成21年5月3日、都内で第1回全国大会を開催しました。同会には17件の未解決事件の遺族61人が参加し、遺族や活動の賛同者ら約120人が大会に出席しました。

大会では時効制度撤廃を求める嘆願書が読み上げられ、同会は今後集める署名とともに、月内にも法務省や各政党に提出するとのことです。その嘆願書によると、(1)時効制度の廃止、(2)公訴時効の停止の2点だけでなく、(3)時効が成立した遺族に対する国家賠償責任という点をも求める活動を進めるとしています(時事通信:2009/05/03-20:18)。


1.報道記事を幾つか。

(1) 毎日新聞平成21年5月4日付朝刊26面(14版)

「時効成立は国賠を」 「遺族の会」全国大会 

■見直しに加え、嘆願提出へ

 時効制度見直しを求めて結成された「殺人事件被害者遺族の会(宙(そら)の会)」の第1回全国大会が3日、東京都千代田区の明治大学で開かれた。これまで求めてきた「時効の廃止」「時効の停止」に加え、「時効が成立した遺族に対する国家賠償責任」を三つ目の柱として嘆願書に盛り込んだ。月内にも法務省や各政党に提出する。

 この日までに入会したのは、国内外の17事件の遺族と、賛助会員61人。大会には約200人が集まった。

 上智大生殺害事件(96年9月)で次女を失った小林賢二・代表幹事(62)が嘆願書を読み上げ、「時効制度は、『生命』という最も崇高な『尊厳』を喪失させている」と、廃止・停止を改めて求めた。また、「国家は刑事・民事で処罰権・賠償権を行使することにより秩序の安定を図っている」として、義務を結果的に果たせなかった責任を賠償という形で救済すべきだと訴えた。

 大会では冒頭、世田谷一家殺害事件(00年12月)で長男一家4人を失った宮沢良行会長(81)が「憲法記念日にあたる本日、『生命の尊厳』を多くの国民に考えていただき、時効制度の是非を問いたい」とあいさつ。

 作家の柳田邦男さんが特別講演を行い「自分や家族が被害者だったらという視点が必要だ。宙の会の活動は命を大切にする社会の第一歩になる」と話した。

==============

 ■解説

 ◇救済に道筋を


 時効成立後、刑事責任を追及できなかった遺族が、容疑者に損害賠償を求めるケースがある。民事でしか闘えない遺族のつらさは想像に難くないが、それ以上につらいのは、容疑者が浮かばないまま時効を迎えた遺族だ。刑事でも民事でも救われない遺族救済に道筋をつけるべきときではないだろうか。

 90年12月の札幌信金職員、生井宙恵(みちえ)さん(当時24歳)殺害事件(05年時効)で、遺族が殺人容疑で指名手配された男に賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は08年3月、男に7500万円の支払いを命じた。しかし、男は所在不明のままで、賠償金が支払われる見込みはない。

 一方、78年に殺害された東京都足立区立小教諭、石川千佳子さん(当時29歳)の遺族が、時効成立後に名乗り出た元警備員の男(73)に賠償を求めた訴訟では、最高裁が先月28日、男の上告を棄却し、4255万円の支払いを命じた東京高裁判決が確定した。

 しかし、時効成立事件で、容疑者が分かっていることはまれで、ほとんどの事件で、遺族は親族を殺害された怒りと悲しみをぶつける相手もないまま、事件捜査を終えた捜査当局から「容疑者不詳で不起訴」との処分通知を受け取るだけだ。今は、泣き寝入り以外の選択肢は遺族にはない。

 15年間捜査した結果が、紙一枚ではあまりにも悲しすぎる。【山本浩資】

毎日新聞 2009年5月4日 東京朝刊」



(2) 読売新聞平成21年5月4日付朝刊24面(14版)

時効制度の見直しを…撤廃求め、遺族が初の全国集会

 殺人事件などの公訴時効撤廃を求める被害者遺族でつくる「宙(そら)の会」が3日、東京都千代田区の明治大で、初めての全国大会を開いた。

 各地から集まった10遺族や賛同者など約120人が参加して制度を見直すよう訴えた。

 大会では、遺族が犯人の捕まらない事件で抱える心痛を次々に明かした。その一人、名古屋市の会社員、高羽悟さん(52)は、1999年11月、市内の自宅で何者かに妻奈美子さん(当時32歳)を殺害された。

 当時、長男の航平さん(11)はよちよち歩きを始めたばかり。高羽さんは妻のために「必ず犯人を現場検証に立ち会わせる」との思いから、転居した今も現場のアパートを借り続けていることを明らかにした。時効まであと5年半。「逃げ得を許す制度」に対する疑問をぶつけた。

 制度見直しを検討中の法務省は先月、撤廃、延長など4案を示した中間報告を公表した。これについて、高羽さんは「撤廃はもちろん、すでに起きてしまった事件の時効も、DNAなど証拠がある場合は停止してほしい」と訴えた。

 このほか、ノンフィクション作家の柳田邦男さんが講演、「法律家も『もし自分の家族だったら』という視点を持ってほしい」と話した。同会は近く、撤廃などを求める嘆願書を法務省や各政党に提出する。

(2009年5月4日00時23分 読売新聞)」



(3) 日経新聞平成21年5月4日付朝刊27面(14版)

時効見直し議論活発

■凶悪犯罪、重い「時の壁」 遺族ら撤廃訴え/無罪立証「困難に」

 凶悪・重大犯罪に関する公訴時効を巡る議論が活発化している。殺人事件の遺族らが5月から、時効撤廃を求める活動を本格化させ、法務省も見直しに着手。未解決事件に立ちはだかる“時の壁”を越え、被害者救済に新たな道を開く期待がある一方、捜査の長期化に伴う証拠散逸などの問題もあり見直し慎重論も根強い。刑事政策の大転換でもあり、十分な議論が必要となりそうだ。

■願い強く

 「被害者遺族だけでなく、事件の後遺症に苦しむ被害者自身の願いでもあるんです」。4月24日、法務省内で開かれた時効制度見直しを検討する勉強会。全国犯罪被害者の会(あすの会)の岡村勲代表幹事ら犯罪被害者の3団体が時効廃止を強く訴えた。「大幅延長ではどうか」と打診する同省側に「延長と廃止では意味が全然違う」と反論。消えることのない事件の傷や犯人への憤りを訴えかけたという。

 勉強会は被害者団体らの強い要望を受ける形で今年1月に設置。4月、時効の廃止や大幅延長など4案を盛り込んだ中間報告を示した。早川忠孝政務官や刑事局幹部ら約10人のメンバーは現時点の方針を「制度を見直すかどうかも含め白紙の状態」としている。

■根強い慎重論も

 殺人事件の遺族の東京都内の20代男性は「時効廃止が本当に被害者のためになるのか。冷静に判断してほしい」と話す。小学生の時に家族を失い既に刑事事件の時効を迎えた。 「時効をなくすと犯人が捕まる可能性がどれほど高まるのか。ほかに被害者救済の方策があるかも知りたい」

 法務省によると、時効成立後に犯人が判明した重大事件はこれまで3件ほど。一方「時間がたつと無罪の立証が困難になる」との声もあり、日本弁護士連合会には時効廃止や延長に否定的な意見が根強い。神洋明弁護士は「捜査人員にも限界がある。日々の事件解決に集中し被害者救済は別の方法を考えたほうが合理的」と主張する。

■刑事政策の大転換

 公訴時効は2004年にも見直し議論があり、DNA型鑑定など捜査技術の発達や「処罰感情は薄まらない」などの被害者の意見が考慮されて05年1月施行の改正刑事訴訟法で延長。最高刑が死刑や無期懲役の重大犯罪の時効がそれぞれ15年、10年から25年、15年に延びた。

 ただ制度廃止は見送られ、被害者らに「逃げ得が許されるのか」と不満が残り、今回の再議論に至った。07年までの10年で時効が成立した殺人、放火などの凶悪犯罪は1700件以上に上る。

 時効制度の見直しは刑事政策の大転換だ。法務省幹部は「刑事司法全体にかかわる重大な問題。議論を尽くすことが大切だ」と指摘している。

============================================================

▼時効 犯罪行為から一定期間がたつと起訴できなくなる「公訴時効」と、刑の言い渡し後に一定期間が過ぎると刑が執行できなくなる「刑の時効」がある。通常公訴時効を指すことが多く、証拠が散逸し公正な裁判を行うのが困難になることや、被害者や社会全体の処罰感情が薄まることなどが根拠とされる。

 民事でも権利関係に関する時効があり不法行為から20年がたつと被害者の損害賠償請求権が消滅する。都内の女性教諭が殺害され26年後に遺体が発見された事件では、遺族が殺害を認めて出頭した元警備員に損害賠償を求めて訴訟を起こし、最高裁は4月「著しく正義に反する」として民事の時効にあたる「除斥期間」を適用しない判断を示した。」


「罪を必ず罰する法律を」 「宙の会」が初の全国大会

 未解決の殺人事件の被害者遺族が時効撤廃・停止を求めて結成した「宙(そら)の会」が3日、東京都内で第1回全国大会を開いた。同会代表幹事で、東京都葛飾区の上智大生殺害事件(1996年9月)の遺族、小林賢二さん(62)は「時効後に犯人が大手を振って歩ける世の中にしてはならない」と強調、事項撤廃を求める嘆願書に広く署名を募り、法相に提出する考えを示した。

 同会は、現行法で25年(2004年まで15年)とされている殺人など「死刑に当たる罪」の時効の撤廃などを求め、17事件の被害者遺族で2月に結成。大会には全国の遺族や支援者ら約150人が参加した。

 東京都世田谷区の一家4人殺害事件(00年12月)の遺族、宮沢良行さん(81)は「『犯した罪は必ず罰せられる』という常識に沿って法律を作ってほしい」と呼び掛けた。

 また基調講演した作家の柳田邦男さんは「『遺族の被害者感情が薄れる』ことが時効制度の理由の1つとされるが、人の悲しみが消えることはない」と現行制度を批判した。」




2.憲法記念日の5月3日、殺人事件などの公訴時効撤廃を求める被害者遺族でつくる「宙(そら)の会」もまた、東京都千代田区の明治大で、全国大会を開いたわけです。これらの記事のうち、何点かに触れていきます。

(1) 1点目。嘆願書の内容について。
 

 「時効制度見直しを求めて結成された「殺人事件被害者遺族の会(宙(そら)の会)」の第1回全国大会が3日、東京都千代田区の明治大学で開かれた。これまで求めてきた「時効の廃止」「時効の停止」に加え、「時効が成立した遺族に対する国家賠償責任」を三つ目の柱として嘆願書に盛り込んだ。月内にも法務省や各政党に提出する。(中略)
 上智大生殺害事件(96年9月)で次女を失った小林賢二・代表幹事(62)が嘆願書を読み上げ、「時効制度は、『生命』という最も崇高な『尊厳』を喪失させている」と、廃止・停止を改めて求めた。また、「国家は刑事・民事で処罰権・賠償権を行使することにより秩序の安定を図っている」として、義務を結果的に果たせなかった責任を賠償という形で救済すべきだと訴えた。」(毎日新聞)


 イ:「宙の会」は、従来から、(1)時効制度の廃止と、(2)公訴時効の停止を求めていますが、今回の嘆願書によると、それに加えて、「時効が成立した遺族に対する国家賠償責任」制度を創設することをも主張することにしています。

「時効が成立した遺族に対する国家賠償責任」制度を肯定する理由として、「『国家は刑事・民事で処罰権・賠償権を行使することにより秩序の安定を図っている』として、義務を結果的に果たせなかった責任を賠償という形で救済すべき」としています。

いかなる主張であろうとも表現の自由(憲法21条)によって保障されており、また、請願権(憲法16条)も認めている以上、法務省に対して嘆願書の内容を請願すること自体は自由です。被害者遺族であれば、(1)時効制度の廃止、(2)公訴時効の停止だけでなく、(3)時効が成立した遺族に対する国家賠償責任という3点を求めたいという心情にもなるのでしょう。


 ロ:しかし、「時効期間経過前に犯人を処罰できないことは、処罰義務を結果的に果たせなかったとして『結果責任』が生じる」という根拠は、被害者団体が本当に主張してよいのでしょうか?

捜査機関は、公訴時効期間が経過する前に、犯人を発見しようと懸命になって捜査をしているのです。いわば、被害者の無念を晴らすべく、被害者側の心情を汲みながら捜査しているのに、嘆願書によれば、「時効期間経過前に犯人を処罰できないことは、処罰義務を結果的に果たせなかった」として、「責任が生じる」としてしまうのです。国家に責任があるという意味であるとしても、実質的に責任を果たさなかったと糾弾されるのは捜査機関となってしまいます。

被害者の無念を晴らすべく、被害者側の心情を汲みながら捜査しているのに、被害者遺族団体から、「結果責任」を追及されるのでは、捜査機関側のやる気を著しく減退させてしまい、「我々捜査機関を侮辱するのか!」と、大きな反発が生じてしまう可能性があります。

ですから、「時効期間経過前に犯人を処罰できないことは、処罰義務を結果的に果たせなかったとして『結果責任』が生じる」という根拠は、あまりにも不適切であると考えます。少なくとも、被害者団体だけは、主張するべき根拠ではないと思います。


 ハ:国家に賠償責任を求める場合、国家賠償法に定めがあります。

国家賠償法第1条 

1 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。


公権力の行使に関する責任については、「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた」こと、すなわち「過失責任」となっています。ですから、今回の嘆願書が求める「結果責任」は、国家賠償法1条とは異質の規定であり、賠償責任とするのは困難です。もし「結果責任」規定を創設するのであれば、故意・過失を必要としない「補償」制度として創設するしかと思います。

ただ、犯罪被害者や犯罪被害者遺族に対しては多くの支援体制があり(「内閣府」のHPの「主な犯罪被害者等支援体制の概要」参照)、その1つに、「犯罪被害給付制度」(通り魔殺人等の故意の犯罪行為によって亡くなられた方のご遺族や障害が残ることとなった方、重大な負傷又は疾病を受けた方に対して、国から給付金が出る制度)があります(「警察庁犯罪被害者支援室」のHPの「犯罪被害給付制度のご案内」参照)。

このように、犯罪被害給付制度がある以上、この枠内で対応するのが妥当なあり方です。この制度によって受ける給付金は、被害者が受けた被害からすれば、給付額として決して十分とはいえないのかもしれませんが、そうであれば、もっと給付額を充実させていくのが正論であるように思います。

なお、毎日新聞の解説では、「刑事でも民事でも救われない遺族救済に道筋をつけるべきときではないだろうか」としています。しかし、犯罪被害給付制度がある以上、「刑事でも民事でも救われない遺族」に対する救済方法はあるのですから、間違っています。(ちなみに、刑事裁判は、被害者救済のための制度ではないので、「刑事(裁判)で遺族を救済する」という点でも、この解説は間違っています。)


 ニ:嘆願書によれば、公訴時効期間が経過した犯罪事件か否かで金額を区別し、公訴時効期間が経過した犯罪事件は増額する規定を創設することになると推測できます。

しかし、公訴時効が経過したか否かに関係なく、例えば死亡といった、誰にとっても同じ生命と言う利益を奪われたのですから、公訴時効を経過した被害者か否かで金額を区別することに、十分な合理性があるとは思えません。

ですから、「公訴時効期間が経過した犯罪事件か否かで金額を区別し、公訴時効期間が経過した犯罪事件は増額する規定を創設すること」は、妥当なものとは言えないというべきです。



(2) 2点目。基調講演を行った柳田邦男さんの講演内容について。

 「ノンフィクション作家の柳田邦男さんが講演、「法律家も『もし自分の家族だったら』という視点を持ってほしい」と話した。」


裁判官は発言をしませんし、検察官はもっぱら被害者側の立場寄りの発言をするでしょうから、ここでいう「法律家」は、法律の研究者及び弁護士を指すものといえます。ですから、柳田邦男さんは、時効制度撤廃に消極的な法律の研究者及び弁護士に対して、「もし自分の家族だったら」という視点が欠けていると批判を加えたものといえます。

しかし、弁護士は被害者及び加害者の双方を弁護する立場にあるのですから、被害者及び加害者が「もし自分の家族だったら」という視点を考察をすることになります(もちろん、他方の立場のみを弁護する方がかなり多いでしょうが)。また、研究者は、通常は、自説の主張を説得力あるものにするために、公訴時効制度を撤廃した場合のメリット・デメリットの双方を考慮して判断しますから、「もし自分の家族だったら」という視点も、考慮したうえで判断しています。

日経新聞の記事によると、殺人事件の遺族の東京都内の20代男性は、「時効廃止が本当に被害者のためになるのか。冷静に判断してほしい」と話してます。この男性の場合は、小学生の時に家族を失い既に刑事事件の時効を迎えており、「時効をなくすと犯人が捕まる可能性がどれほど高まるのか。ほかに被害者救済の方策があるかも知りたい」 」と述べています。このように、「もし自分の家族だったら」という視点をもつ者であっても、公訴時効廃止に積極的であるわけではないのです。

このように、法律の研究者及び弁護士は、被害者及び加害者が「もし自分の家族だったら」という視点の双方を考慮するのですから、柳田邦男さんの批判は的外れであるというべきです。

事件から時間が経過すると証拠が集まらなくなり、そうすると、無罪の立証が困難になって冤罪であっても反証が困難になってしまいます。また、冤罪でなくとも、犯人とされた者にとって有利な情状は、時間の経過とともに消滅していく可能性があります。柳田邦男さんに対しては、「(間違って)加害者とされた者及びその家族だったら」という視点も考慮してほしいと批判が可能ですから、その反論を行ってほしいと思います。



(3) 3点目。基調講演を行った柳田邦男さんの講演内容について。

 「基調講演した作家の柳田邦男さんは「『遺族の被害者感情が薄れる』ことが時効制度の理由の1つとされるが、人の悲しみが消えることはない」と現行制度を批判した。」


「公訴時効」制度の存在理由は、「証拠が散逸し公正な裁判を行うのが困難になることや、被害者や社会全体の処罰感情が薄まることなど」とされています。このように、「被害者や社会全体の処罰感情が薄まること」であって、柳田邦男さんが言うように、処罰感情が薄れるという根拠の主体は、「遺族」だけではないのです。

また、柳田邦男さんは、「人の悲しみが消えることはない」とします。しかし、個々の被害者遺族の感情を問題にするのであれば、個々の被害者遺族によって異なるのであって、「人の悲しみが消えることはない」と決め付けることはできないはずです。個々人の感情は、それぞれの性格・人生・生活環境などによって異なるのですから、個々人によって違うのが普通なのですから。




3.最後に。

公訴時効制度については、「法務省、「公訴時効の在り方勉強会」の中間報告を発表(上)~「見直しという結論ありき」の報告ではないことを知ってましたか?」(2009/04/05 [Sun] 22:42:18)などでも触れているように、正義感から言えば、正義はあくまでも追及されるべきというのは1つの考え方としてありえるものですから、被害者感情・被害者側の視点も法改正を考えるうえで一要素といえます。

ただし、やはり法制度を巡る問題なのですから、ある意味、国家の制度として政策的な側面があります。ですから、捜査機関がどれだけ人的資源・時間的資源を投入するべきか否かという「国家の資源の配分の問題」が生じます。捜査人員は有限なのですから、無限に人員と時間を費やすことは困難なのです。

また、逮捕・起訴された者は必ずしも真犯人であるとは限りません。事件後長期間経過すれば、無罪を証明する証拠が散逸してしまい、なおさら冤罪(部分冤罪も含む)の可能性は高まることにも注意が必要です。現在、起訴されれば9割は有罪であって、しかも、重大事件に関しては再審制度はほとんど機能していないのですから、冤罪救済の道はまずありません。このように、公訴時効制度を見直すに当たっては、特に、被疑者・被告人となる者の防御の利益の視点を十分に考慮する必要があるのです。

法務省によれば、公訴時効成立後に犯人が判明した重大事件はこれまで3件ほどにどとまるのですから、いくら公訴時効を廃止したとしても、残念ながら、犯人が判明する可能性は少ないと予想されます。公訴時効を廃止することで、他の事件に費やしてきた捜査人員と時間が削られる結果、全体的に検挙率が低下することになってもよいのかどうか、判断する必要があるのです。

これらの観点を総合的に考慮して、公訴時効制度の見直し(公訴時効期間を延長するのか、公訴時効制度を廃止するのか)を検討する必要があります。そして、こうした公訴時効制度の改正を考える場合には、一般市民の誰もが被害者(の家族)のみならず加害者(の家族)にもなり得るのだということをよく考えて、冷静に判断するべきなのです。

テーマ:法律全般 - ジャンル:政治・経済

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2009/06/28(日) 11:32:26 | ò?
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