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2006/10/28 [Sat] 15:22:58 » E d i t
タレントの向井亜紀さんと元プロレスラーの高田延彦さん夫妻が、米国在住の女性に代理出産を依頼して出生した双子の男児を巡り、出生届の受理を命じた東京高裁決定を不服として、東京都品川区は許可抗告を申し立てていました。東京高裁は10月27日、品川区による最高裁への抗告を許可する決定をした、との報道(10月28日付朝刊各紙)がありました。これについてコメントしたいと思います。


1.まずは新聞報道の記事から。
「神戸新聞Web News」

 「代理出産、最高裁で審理  2006/10/27 18:36

 タレント向井亜紀さん(41)夫妻が代理出産でもうけた双子の出生届をめぐる家事審判で、東京高裁(南敏文裁判長)は27日、出生届受理を命じた9月29日の同高裁決定を不服として東京都品川区が申し立てた抗告を許可する決定をした。最高裁での審理が決まった。

 品川区が申し立てたのは許可抗告と呼ばれる手続きで、民事訴訟法は対象となる決定に法令の解釈に関する重要な事項を含む場合、最高裁への抗告を許可しなければならないと定めている。

 向井さん夫妻は2004年1月、米国人女性が代理出産した双子の出生届を提出。区が不受理としたため取り消しを求めて家事審判を起こした。

 東京家裁は請求を却下したが、同高裁は「血縁関係は明らかで、親子と認めた米国の確定裁判を承認しても公序良俗に反しない。不受理だと法律的に受け入れる国がなくなり、子の福祉を優先すべきだ」と判断した。

 品川区は10月、法務省と協議した上で「司法の最終判断に委ねたい」として許可抗告を申し立てた。」



(2) 「NIKKEI NET(10月27日23:00・日経新聞)」

 「 向井さん夫妻の出生届問題、最高裁で審理へ

 タレントの向井亜紀さん(41)夫妻が米国人女性の代理出産でもうけた双子(2)の出生届が受理されなかった問題で、東京高裁(南敏文裁判長)は27日、受理を命じた先月29日の東京高裁決定を不服として東京都品川区が申し立てた抗告を許可する決定をした。最高裁で審理されることが決まった。

 同高裁は「申し立て理由には、法令解釈に関する重要な事項が含まれている」と判断した。

 向井さんはがんで子宮を摘出後、本人らが体外受精した受精卵を代理出産してもらう契約を米国人女性と結び、2003年に双子が生まれた。

 同区に出生届の受理を求めた家事審判で、東京家裁は昨年11月、申し立てを却下したが、同高裁は「血縁関係は明らか。子の福祉を優先すべき」として受理するよう命じたため、区は法務省と協議し、許可抗告した。 (23:00) 」




2.許可抗告の条文・解釈とその後の手続を挙げておきます。

(1) まずは許可抗告の条文です。

(許可抗告)
民事訴訟法第三百三十七条  高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
2  前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない。
3  前項の申立てにおいては、前条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。
4  第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告があったものとみなす。
5  最高裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原裁判を破棄することができる。
6  第三百十三条、第三百十五条及び前条第二項の規定は第二項の申立てについて、第三百十八条第三項の規定は第二項の規定による許可をする場合について、同条第四項後段及び前条第三項の規定は第二項の規定による許可があった場合について準用する。



許可抗告の申立てがあった場合、「民事訴訟法は対象となる決定に法令の解釈に関する重要な事項を含む場合、最高裁への抗告を許可しなければならないと定めて」(民事訴訟法337条2項)います。

東京高裁は「申し立て理由には、法令解釈に関する重要な事項が含まれている」と判断したため、抗告を許可する決定をしたわけです。もっとも、「法令解釈に関する重要な事項」については、<1>日本民法の解釈上の「代理出産の是非」という事項が含まれていると判断したのか、<2>民事訴訟法(国際民事訴訟法)の解釈上の118条の要件判断に関する事項が含まれていると判断したのか、<3>両方の問題に関わる事項と判断したのか、気になるところです。


(2) 許可した後の手続について説明しておきます。

 「その後の手続については、特別抗告および特別上告に関する規定が準用され(337条4項により336条3項の準用)、結局、その性質に反しない限り、通常の上告に準ずることになる(336条用3項・327条2項参照。なお、規則209条も特別抗告に関する規則208条を準用する)。したがって、事件の送付(規則197条の準用)を受けた最高裁判所は、原則として書面審理を行い、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるときは、原裁判を破棄する(337条5項)。」(中野=松浦=鈴木編「新民事訴訟法講義」535頁)


このため、東京高裁が抗告を許可する決定をしたことで、「最高裁で審理されることが決まった」、すなわち、この事案においては「代理出産で生まれた子供を法律上、実子とすべきかどうか、正式に最高裁で審理されることになった」(読売新聞平成18年10月28日付朝刊)と判断できるわけです。




3.最高裁判所がどのような判断をするのかについては、何度か言及していますが、現在の立法動向を踏まえて判断することになると思います。

(1) 裁判所が立法動向を考慮することはよくあることですが、特に家族法の分野では立法動向を踏まえ、国会の立法裁量を重視するものと考えられます。
というのは、例えば、一夫一婦制で離婚を禁止するカトリック系の家族法と、一夫多妻制で男子専制離婚を認めるイスラム系の家族法があるように、家族法は宗教・倫理思想や各国独自の家族観に基づき、根本的な差異が生じています
そのため、家族法の分野の改正・立法については、世界の立法動向と全く無関係とはいえないものの、本来的には世界の立法がどうであっても、自国独自の家族法が求められるため、立法裁量の幅が非常に広いと考えられるからです。


(2) さて、立法動向については2つあります。
まず1つは、「代理出産(代理母)による法律関係~「代理出産禁止」を見直しを含め再検討へ」で触れたように、「柳沢厚生労働相は17日の閣議後会見で、現在は禁止の方針を定めている代理出産に関し、その見直しも含めて再検討を始めることを明らかにした。今後、法務省も含め、政府全体で検討する」(読売新聞(平成18年10月17日夕刊1面) としているので、内閣提出法案としては、代理出産を認める方向での立法を考えていることです。


(3) もう1つは、代理出産をはじめとする生殖補助医療の法整備に向け、来年の通常国会へ議員立法の形で法案を提出することが予定されているようです。

「東京新聞のHP(10月26日)」

 「代理出産で法案提出へ 議員立法で超党派グループ

 超党派の国会議員グループ「生命倫理と生殖技術について考える超党派勉強会」(清水嘉与子会長)は26日の会合で、代理出産をはじめとする生殖補助医療の法整備に向け、来年の通常国会へ議員立法の形で法案を提出することを決めた。

 医療の進歩によって可能になった、代理出産や、死亡した父親の凍結精子を使った妊娠・出産などについて問題点を整理し、どこまで認めるかなどを検討する。

 生殖補助医療の法整備をめぐっては、厚生労働省の専門部会が2003年に「代理出産を罰則付きで禁止すべきだ」などとした報告書をまとめ、同省が政府提案による法案提出を目指したが、議論は中断されたまま。グループは「03年の報告書にはとらわれず、ゼロから議論する」(野田聖子事務局長)としている。

 長野県の根津八紘医師が今月中旬、がんで子宮を失った30代の娘に代わり、50代後半の母親が「孫」を代理出産した事例を公表したことなどを受け、学会関係者らから法整備を求める声が高まっていた。

 野田議員は「ルールがないまま放置しておくわけにはいかない。法案づくりを急ぎたい」と話した。

(共同)
(2006年10月26日 21時51分)」


超党派の国会議員グループ「生命倫理と生殖技術について考える超党派勉強会」(清水嘉与子会長)は、「03年の報告書にはとらわれず、ゼロから議論する」(野田聖子事務局長)として、代理出産禁止の方針を打ち出した「報告書」を見直すというのですから、政府と同様に、代理出産を認める方向での議員立法を考えていると思われます。
野田議員自体も、代理出産肯定の立場に好意的な議員のようですから、代理出産を認める方向の立法案を考えているはずですから、代理出産を認める方向での議員立法であることはまず間違いないでしょう。


(4) これで、政府だけでなく、生殖補助医療に理解と関心のある議員グループも、代理出産を認める方向での立法を考えていることが明らかになりました。

最高裁判所が、向井夫妻の事案において「裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反」があるかどうかを判断する場合、代理出産を認める立法動向を考慮するとなると、出生届受理を命じた9月29日の東京高裁決定を破棄することは、非常に考えにくいです。
何度も触れていますが、代理出産による子を実子と扱う出生届を命じる決定を破棄すると、政府や生殖補助医療に理解と関心のある議員グループが代理出産を認めるよう考えていることと、実質的に抵触してしまうからです。

仮に、最高裁判所が代理出産を否定するような判示をしたとしても、政府や生殖補助医療に理解と関心のある議員グループが、代理出産を認める方向なのですから、すぐに無意味な判例となることが予想されます。幾らなんでも、無意味となるような判例を出すなんて考え難いです。こういう意味でも、出生届受理を命じた9月29日の東京高裁決定を破棄することは、非常に考えにくいでしょう。

なお、日本民法上の母子関係の成立につき、従来は、分娩主義でしたが、今回、判断を示すのではないかと期待する向きもあるでしょう。従来は分娩主義であったこと自体を確認することは、するかもしれません。しかし、近いうちに法改正・立法が予定されている以上、それも代理出産を認める方向ですから、あえて最高裁が判断を示すことはないと思います。


(5) 向井夫妻の事案において、最高裁が「裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反」があるか否かを判断する場合、問題となるのが、50代夫婦事案に関する最高裁平成17年11月24日決定との抵触です。この原審である大阪高裁決定は、州裁判所による親子関係成立の裁判があったのに、民事訴訟法118条をまったく問題としない法解釈を行って結論を導いたからです(「代理出産(代理母)による法律関係~大阪高裁平成17年5月20日決定全文(50代夫婦の双子代理出産事件)」参照)。

同じく代理出産による親子関係の成立につき、州裁判所の裁判があるのに、大阪高裁決定(最高裁)が民事訴訟法118条を意識しない法解釈をしてしまった以上、東京高裁決定に「明らかな法令違反」があるかどうかについては、どうしても大阪高裁決定(最高裁)と東京高裁決定を比較せざるを得ません。
言い換えると、今回の最高裁では、大阪高裁決定を原審とする最高裁決定を、(再審ではないので)実質的にもう一度判断することになるわけです。

ずっと論じてきたように、国際私法・国際民事訴訟法の考え方からすると、州裁判所の命令で親子関係が確定している以上、東京高裁決定の法解釈に分があるのですから、最高裁がどう言い訳するのかが、非常に注目するべき点であると思います。




<追記>

「朝日新聞平成18年10月28日付朝刊38面」

「孫」代理出産、結論は出さず 産婦人科学会
2006年10月27日23時44分

 日本産科婦人科学会(武谷雄二理事長)は27日、常務理事会を開き、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(やひろ)院長が公表した50代女性による「孫」の代理出産への対応などを協議した。

 倫理委員長の吉村泰典・慶応大教授によると、代理出産の事実は、地方部会を通じて電話で根津院長に確認した。さらに「事前にどのような健康チェックをしたのか、出産後はどうか、など詳細な内容をフォローする必要がある。50代女性の妊娠出産に関するデータは世界的にも貴重だ」として、文書による報告を求めることにしたという。

 代理出産を禁じた同学会会告(指針)への違反に対する処分は「(法整備を検討する閣僚発言など)国の動きを見ながら、引き続き検討を続ける」として、結論は出さなかった。」



日本産科婦人科学会は、代理出産を禁じた同学会会告(指針)への違反に対する処分をすることなく、しかも、データが欲しいというのですから、日本産科婦人科学会の意見もだいぶ変わったようです。
代理出産について、好意的な話をテレビ放送(友人への好意から代理出産を自ら申し出て、良好な結末)があったことも、影響したのでしょうか。

テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

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