その後、赤坂署は赤坂の東京ミッドタウン内にある同容疑者の高級マンションを家宅捜索するなど、「同様の事件では異例といえる措置」(スポニチ)を行いましたが、押収物はありませんでした。
草さんは4月24日午前、留置先の警視庁原宿署から東京区検に送検され取り調べを受けましたが、同区検は、草さんが容疑を認めていることなどから「証拠隠滅や逃亡の恐れがない」と判断し、同日午後、釈放しました。同区検は今後、在宅で草さんの捜査を続け、刑事処分を決めるとしています(読売新聞)。もっとも、「釈放され、起訴される公算が小さい」(東京新聞平成21年4月25日付朝刊1面)という見方が穏当でしょう。
1.報道記事を幾つか。
(1) 日経新聞平成21年4月23日付夕刊21面(4版)
「SMAP草容疑者逮捕 港区の公園、泥酔し全裸 公然わいせつ容疑
東京都港区赤坂の公園内で裸になったとして、警視庁赤坂署は23日、人気アイドルグループ「SMAP」のメンバー、草剛容疑者(34)=東京都港区赤坂9=を公然わいせつ容疑の現行犯で逮捕した。当時、草容疑者は、かなり酒に酔っていたという。同署によると、同容疑者は「なぜ裸になったか覚えていないが、反省している」と容疑を認めている。
逮捕容疑は23日午前3時ごろ、港区赤坂9の区立檜町(ひのきちょう)公園内で裸になっていた疑い。当時、同容疑者は一人で、服を着ておらず、靴もはいていなかった。ジーパンなど衣服は公園内に脱ぎ捨てられていたという。
赤坂署によると、近所の住民から「公園で騒いでいる人がいる」と110番通報があった。同署の警察官が駆けつけ注意したところ、草容疑者は園内の芝生にあぐらをかき、「裸だったら何が悪い」と叫び、警察官の注意を聞き入れなかったという。
赤坂署によると、逮捕から約5時間後の23日午前8時ごろの時点で、草容疑者のアルコール濃度は呼気1リットル中0.8ミリグラムだった。現行犯で逮捕された際には泥酔状態だったとみられる。同容疑者は「赤坂の居酒屋で知人2人とビール、焼酎を飲んだ」と供述しているという。
草容疑者が所属するジャニーズ事務所は23日、同容疑者の逮捕を受け「ファンをはじめ、多くの皆さまに多大な迷惑と心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます」とのコメントを発表した。
草容疑者は埼玉県出身で、アイドルグループ「SMAP」の一員として1991年に歌手デビュー。「世界に1つだけの花」など次々にヒット曲を出した。
個人としても「日本沈没」などの映画のほか、数多くのドラマやバラエティー番組、CM番組に出演している。99年から5年連続でジーンズが似合う有名人に贈られる「ベストジーニスト」に選ばれ、殿堂入り。韓国語が得意なタレントとしても知られる。」
「地デジCMなど急きょ中止 起用企業、対応追われる
トップアイドルグループの一員として多くのCMやテレビ番組に出演する草剛容疑者。起用している企業やテレビ局は急きょ放送を取りやめるなど、対応に追われた。
草容疑者は2011年の地上デジタル放送への移行を広報するメーンキャラクターとしてCMに出演しており、現在NHKと民放各社が放映中。
CMを製作した社団法人デジタル放送推進協会は23日からCM放送を停止。メーンキャラクターからも外す方向で、「早急に別のタレントなどによるCMを製作する」という。
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)も同日、草容疑者を起用した選択用洗剤のCM放送を自粛し、「逮捕の詳細が確認でき次第、今後の対応を検討する」(広報担当者)。
トヨタ自動車は、草容疑者を起用しているトヨタレンタリースのCMや店頭ポスター、ウェブサイトなどすべての広告を打ち切ると決めた。「必要に応じ、草容疑者に代わるタレントの起用も検討していく」(広報担当者)という。
9月には草容疑者が主演する映画「BALLAD 名もなき恋のうた」の全国の公開を控えている。配給元の東宝によると、撮影は終了して編集作業に入っており、「情報を収集している。配給をやめるかどうか、なんとも言えない」(広報室)。
レギュラー出演しているバラエティー番組などを放送するフジテレビやテレビ朝日も「対応を協議中」としている。
韓国の人気女優、チェ・ジウさんと草容疑者が共演して「エコライバルになろう」などと環境保全を訴える日韓共同キャンペーンのCMを昨年7月から1年間の予定で流している公共広告機構(AC)も、「6月までの残り期間の放送は中止する方向」(尾形敏朗東京事務局次長)という。
◇
鳩山邦夫総務相は23日、草剛容疑者の逮捕を受け「事実であれば、めちゃくちゃな怒りを感じる」と語った。草容疑者は地上デジタル放送普及のためのメーンキャラクターだが「地デジ関係のものは全部取りかえる」と強調、キャラクターから外す方針を明言した。国会内で記者団に語った。総務相は「イメージキャラクターをやっている社会的な責任の意識を持って行動してもらいたい。最低の人間としか思えない」とも語った。」
「草なぎ容疑者 全裸で奇声!異例の家宅捜索も
アイドルグループ「SMAP」のメンバー、草なぎ剛容疑者(34)が23日、東京都港区赤坂の公園で全裸になったとして、公然わいせつの疑いで警視庁赤坂署に現行犯逮捕された。草なぎ容疑者は泥酔状態で、全裸で奇声を発していたため通報された。同署は赤坂の東京ミッドタウン内にある同容疑者の高級マンションを家宅捜索。同様の事件では異例といえる措置で、芸能界の薬物汚染が取りざたされているだけに一時騒然となった。同容疑者は当面の活動を自粛する。
国民的アイドルが現行犯逮捕された衝撃的なニュース。しかも真夜中の公園で、ひとり全裸で奇声を上げるという信じられない行動に、警視庁も異例の捜査を敢行した。
逮捕容疑は23日午前3時ごろ、東京・六本木の繁華街に隣接する港区赤坂9丁目の檜町公園で全裸になった疑い。赤坂署によると、近所の男性から「酔っぱらいが騒いでいる」と通報があり、駆けつけると芝生にあぐらをかいて「コラ!」「バーカ」など意味不明のことをわめいている草なぎ容疑者がいた。
署員が職務質問すると「裸だったら何が悪い」と言い、手足をばたつかせるなど大暴れ。署員3人で保護シートで草なぎ容疑者をくるんでパトカーに乗せるという“大捕物”になった。
衣服は10数メートル離れたところにまとめてあり、近所の住人は「全裸でベンチに座りながら(得意の)韓国語の歌を歌っていた」「シンゴー!と叫んで、でんぐり返しをしていた」と話している。
その泥酔ぶりには、赤坂署も音を上げたほど。取り調べ中も酔いがさめず、机に顔を伏せて居眠りしそうになるため途中で断念。弁護士も接見当初、まともな会話ができなかったという。
午後になって留置施設のある原宿署に移送される際、その髪はボサボサに乱れ、目はうつろ。顔は青白く、終始うつむきながらワゴン車に乗り込んだ。逮捕から約5時間後の検査でも、酒気帯び運転の基準の約5倍にあたる呼気1リットル中0・8ミリグラムのアルコールが検出される泥酔ぶり。草なぎ容疑者は「反省している。公園までどうやって来たのか、何で裸になったのか覚えていない」と供述している。
調べでは22日夜から23日午前2時ごろまで、逮捕現場から400メートルほど離れた赤坂の居酒屋とバーで知人の男女と計3人で“はしご酒”。店を出ると、女性と一緒に歩いて自宅マンションまで150メートルほどの檜町公園まで行き、女性と別れた。この男女から事情も聴いており、女性は草なぎ容疑者について「かなり酔っていた」と話している。
大きな繁華街を抱え、数々の酔っぱらいを相手にしてきた赤坂署も仰天した草なぎ容疑者の“奇行”。薬物検査を実施して反応が出なかった一方、午後4時15分には観光名所でもある東京ミッドタウン内の高級マンションの家宅捜索に踏み切った。捜査員数人が捜索に入ると約70人の報道陣が集まり、ヤジ馬を含めて一時騒然となった。押収品はなく捜索は約30分で終了。同署は家宅捜索について「あくまで動機や背景を探るための一般的な理由。全裸癖などの嗜好(しこう)性があるか物証を探しただけ」と説明している。
事件の悪質性が低いことなどから、24日午前に東京区検に送検され、釈放される見通し。覚せい剤の吸引や大麻所持などで逮捕される芸能人が後を絶たない中、ファンに思わぬ心配を掛けてしまった草なぎ容疑者。自ら会見し、事件への謝罪と経緯を説明することになりそうだ。
◆草なぎ 剛(くさなぎ・つよし)本名同じ。1974年(昭49)7月9日、埼玉県出身の34歳。88年、中居正広、木村拓哉らとSMAPを結成し、91年に「Can’t Stop!!―LOVING―」でCDデビュー。97年の初主演ドラマ「いいひと。」(フジテレビ)が好評を博し、俳優としての人気が確立。03年、初主演映画「黄泉がえり」が興収30億円の大ヒット。ジーンズ集めが趣味で、99~03年に5年連続でベストジーニストを受賞し、「永久ベストジーニスト」として殿堂入り。血液型A。
[ 2009年04月24日 ]」
(3) 朝日新聞平成21年4月25日付朝刊39面
「「大人として恥ずかしい行動」 草さん謝罪会見
2009年4月25日1時47分
東京都港区の公園で全裸になったとして、公然わいせつ容疑で警視庁に逮捕されたアイドルグループSMAPメンバーの草剛容疑者(34)は24日、送検された後、処分保留のまま釈放された。東京区検は「罪証隠滅、逃亡の恐れがないと判断した」としており、今後は在宅で必要な捜査を継続する。
この日午後2時半ごろ、釈放の手続きを終えた草なぎさんは、原宿署の駐車場に続く出入り口から姿を見せた。うつむき加減で足早。100人以上の報道陣が集まったが、無言のままで所属事務所のワゴン車に乗り込んだ。乗り込んだ後部座席にはカーテンが引かれ、姿は見えなくなった。
釈放直前、偶然署を訪れた東京都豊島区の自営業菊川秀夫さん(32)は、署内で警察官に付き添われて歩く草なぎさんを見た。「ジージャンにジーンズ姿で、うなだれていた」という。
◇
釈放された草さんは24日夜、「大人として恥ずかしい行動をしてしまい、本当に申し訳ありません」と謝罪した。
会見は東京都港区北青山のレコード会社で午後9時から行われた。草さんは、事件当日の夜は飲んでいるうちに意識がなくなり、「次に意識があったときは警察にいた。夢なのか現実なのか分からない状況で気分がふわふわしていた」と話した。
日頃の飲酒について問われると「たくさん飲むか、どのくらい飲むかは決まっていない。自分のことが分からなくなるくらい飲むときもある」と説明。飲んでいて屋外で裸になったことは今までなかったが、室内ではSMAPのメンバーの香取慎吾さんと飲んだときにパンツ1枚になった経験はあったと話した。
会見には弁護士も同席し、事件当夜の経過を説明した。」
2.正直なところ、今回の警察の対応は、やり過ぎでしょう。
(1) 週刊朝日2009年5月8日号136頁以下(一部抜粋)
「「裸だったら何が悪い」草剛 全裸逮捕でこれだけの疑問
下半身までモロ出しの草の性癖を探るべく、警視庁は30分ほどの家宅捜索を行ったが、何も押収はしなかった。薬物反応もなく、草は逮捕翌日、送検されたのちに釈放された。
家宅捜索にまで及んだ警視庁の捜査に対しては、疑問を呈する声もある。
元警察官でジャーナリストの黒木昭雄氏はこう言う。
「警察官は本来、泥酔者をまずは警察官職務執行法に基づいて『保護』するのが常です。草氏の社会的地位と責任を考えれば、彼が今回のような行動を取ること自体、正常な判断能力があったとは言えない。過度の飲酒によって犯罪の意思が希薄、もしくはなかったと考えるべきで、『意思無き行為はこれを罰しない』という刑法の大原則に照らせば、今回は不当逮捕のそしりを受ける可能性もある。しかも、深夜の公園という人けのない場所で実害がないのに、『裸だから公然わいせつだ』と即逮捕しても、世論の支持は得られない。丸1日半も警察署に留め置かれたうえに、尿検査して陰性だったにもかかわらず家宅捜索されることにも大いに疑問を感じます」
警視庁の広報担当は、
「捜査は適法妥当に行われたもの」としている……。(以下、省略)
(2) 東京新聞平成21年4月25日付朝刊「発言」5面
「警察の対応 行き過ぎだ――栃木県・男性60代
SMAPの草剛さんを擁護するわけではありませんが、今回のことは警察の行き過ぎだと思います。
確かに、「草剛」とう名前は広く世間に行き渡っており、ハメを外し過ぎるのはいけないと思います。しかし、全裸といっても他人に見せるためにやったわけでもなし。公園で大声を出していたために通報されただけ。警官が来たときに少し抵抗したそうですが、酒を飲んだ人は誰だってやることです。少し前なら警察は泥酔者を保護し、一晩寝かしてから帰してやったものです。
今の警察はまるで「オイコラ」の時代に戻ったようです。ちょっとのことで大騒ぎし、ちょっとでも抵抗すると捕まえます。最近の警察は怖いです。警察は、尿検査で薬物反応が出ていないのに家宅捜索をしましたが、これもやり過ぎでしょう。
今回、警察はすべてやり過ぎの感があることは否めません。」
(3) 今回、警察は、泥酔状態の草さんが、深夜3時頃に公園で全裸になっていたことで、公然わいせつ罪の容疑で現行犯逮捕したのですが、犯罪が成立するのかどうかが問題です。
イ 公然わいせつ罪についての解説を引用しておきます。
「174条(公然わいせつ) 公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは過料に処する。
■公然性
本罪の実行行為は、公然とわいせつな行為をすることである。公然とは不特定または多数人が認識しうべき状態のことであるとされる(最決昭32・5・22刑集11・5・1526……)。不特定であれば少数でもよく、多数であれば特定の人の集団でもかまわない。そしてそれらの者がわいせつ行為を実際に認識する必要はなく、認識する可能性があれば足りる。問題はその可能性の程度であり、人が通行する可能性もほとんどない浜辺や早朝の道路・公園等で全裸になる行為は本罪に該当しないと解すべきであろう(中山461頁参照)。
■具体的行為類型
わいせつの意義については既に述べたが、文書等のわいせつ性が問題となる175条の場合と微妙に異なり、本条のわいせつ行為は「その行為者又はその他の者の性欲を興奮刺激又は満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するもの」とされている(東京高判昭27・12・18高刑集5・12・2314)。具体的な被害者が、性的羞恥心を侵害される必要はない。具体的には、性器の露出行為や性交行為が典型である。」(前田雅英『刑法各論講義(第4版)(東京大学出版会、2007年)480頁以下)
ロ:今回の事案では、深夜午前3時の公園で全裸になったのですから、不特定または多数人が認識する可能性がほとんどない、すなわち「人が通行する可能性もほとんどない……早朝の……公園等で全裸になる行為」ですので、公然わいせつ罪の「公然性」の要件を欠く可能性があることになります。
また、草さんによると、「事件当日の夜は飲んでいるうちに意識がなくなり、次に意識があったときは警察にいた」ということです。とすると、泥酔状態によって心神喪失状態となり、心神喪失下での行為となりますので、刑法39条(責任能力)により、責任を阻却して不可罰といえます。警察官であれば泥酔状態の一般人を保護することは経験済みのことですし、「大きな繁華街を抱え、数々の酔っぱらいを相手にしてきた赤坂署」(スポニチ)にとっては、泥酔状態か否かは、今までの経験上(言動や顔色、酒臭さの経験も考慮して)、容易に判断可能だったはずです。
このようなことから、今回の事案の場合、全裸になっていることから客観的には「わいせつな行為」に該当するとしても、「公然性」の要件が欠ける可能性があり、特に責任能力を欠いているとして、犯罪行為があったとは認められない可能性が十分にあると考えます。
なお、朝日新聞は、「警視庁幹部によると、公園や電車など公共の場で露出した場合は認識される可能性が高いため、目撃者の有無にかかわらず、「公然」とみなされるという。」(asahi.com(2009年4月23日23時0分))という記事を掲載し、犯罪性を肯定しています。しかし、先に触れたように、深夜は人がいない公園と、運行中は常に不特定多数人が乗車し得る電車とは別個に扱うのが通常の解釈ですし、深夜・早朝かどうかという時間帯が犯罪性を肯定するためには重要なポイントなのですから、単純に「公園での露出は『公然』とみなされる」という朝日新聞の記事は間違っています。
(4) 元警察官でジャーナリストの黒木昭雄氏は、「警察官は本来、泥酔者をまずは警察官職務執行法に基づいて『保護』するのが常です」と述べています。
イ:警察官職務執行法第3条(保護)を引用しておきます。
「警察官職務執行法第3条(保護)
1 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して次の各号のいずれかに該当することが明らかであり、かつ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、取りあえず警察署、病院、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
1.精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある者
2.迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)
2 前項の措置をとつた場合においては、警察官は、できるだけすみやかに、その者の家族、知人その他の関係者にこれを通知し、その者の引取方について必要な手配をしなければならない。責任ある家族、知人等が見つからないときは、すみやかにその事件を適当な公衆保健若しくは公共福祉のための機関又はこの種の者の処置について法令により責任を負う他の公の機関に、その事件を引き継がなければならない。
3 第1項の規定による警察官の保護は、24時間をこえてはならない。但し、引き続き保護することを承認する簡易裁判所(当該保護をした警察官の属する警察署所在地を管轄する簡易裁判所をいう。以下同じ。)の裁判官の許可状のある場合は、この限りでない。
4 前項但書の許可状は、警察官の請求に基き、裁判官において已むを得ない事情があると認めた場合に限り、これを発するものとし、その延長に係る期間は、通じて5日をこえてはならない。この許可状には已むを得ないと認める事情を明記しなければならない。
5 警察官は、第1項の規定により警察で保護をした者の氏名、住所、保護の理由、保護及び引渡の時日並びに引渡先を毎週簡易裁判所に通知しなければならない。」
草さんは泥酔状態だったのですし、そもそも犯罪行為に当たるかも問題があるのですから、黒木昭雄氏の言うように、逮捕するのではなく、警職法3条1項に基づいて「保護」するべきだったように思われます。
ロ もちろん、逮捕行為に問題はないとの解説もあります。
(イ) 読売新聞平成21年4月25日付朝刊34面「解説」
「警察「全裸やめず異例逮捕でない」
草剛容疑者が逮捕された23日、警視庁には深夜まで「逮捕は行き過ぎではないか」といった抗議の電話が続いた。これについて同庁幹部は「一般の人でも同じようなケースでは『原則逮捕』となる。決して異例ではない」と説明する。
公然わいせつ罪は不特定の人が認識できる状況で、わいせつと思わせる姿を見せた場合などに適用される。今回の現場には偶然、別の男性が居合わせたが、仮にだれ一人いない時でも逮捕に至る場合がある。
今回のケースでは、現場は未明の人けの少ない公園であり、草さんが警察官の到着後、速やかに服を着て指示に従っていたら、逮捕されなかった可能性が高い。しかし、実際には、駆けつけた警察官に「何が悪いんだ」と、全裸のまま抵抗した。他人にわいせつと思わせる状況を改める意思がなかったとみなされても仕方なく、逮捕は避けられなかった。
東京区検は今後、刑事処分を決めるが、草さんの行為が、社会人としての常識を逸脱していたことは間違いないだろう。
(2009年4月25日03時09分 読売新聞)」
(ロ) この読売新聞の解説は、「駆けつけた警察官に『何が悪いんだ』と、全裸のまま抵抗した」ので、「他人にわいせつと思わせる状況を改める意思がなかった」ため、公然わいせつ罪の要件を満たすため、逮捕は適法という理屈です。しかし、公然わいせつ罪の構成要件を満たすかどうかと、警察官に抵抗したか否かは別個の問題ですので、この解説は間違っています。
確かに、警察官に抵抗したら逮捕される可能性はあるのですから、そうした意味を述べているにすぎないのでしたら、あながち間違った解説とはいえないかもしれません。しかし、酔っ払いが抵抗するのは通常のことですから、抵抗したことをもって逮捕を適法と理解するのは不合理です。酔っ払いを拘束するには、逮捕行為ではなく、警職法3条による「保護」が適切です。
(5) 警察の対応として最も問題なのは、草さんの自宅を捜索したことです。赤坂署は家宅捜索について「あくまで動機や背景を探るための一般的な理由。全裸癖などの嗜好(しこう)性があるか物証を探しただけ」と説明しています(スポニチ)。
イ:しかし、公然わいせつ罪の証拠は現場しかないのですから、自宅を捜索する必要性が乏しいのです。大きな繁華街を抱え、数々の酔っぱらいを相手にしてきた赤坂署は、泥酔状態と容易に分かり得たはずなのに、公然わいせつで逮捕したにもかかわらず、薬物検査まで実施したのです。そして、「薬物検査を実施して反応が出なかった」のに、自宅の捜索までしたのです。
こうした警察の対応からすれば、「あくまで(公然わいせつの)動機や背景を探るための一般的な理由」と述べているものの、自宅の捜索は、薬物使用・所持の疑いで捜索したものと判断するのが合理的です。これは、捜査機関がもっぱら別罪の証拠に利用する目的で、別罪証拠の捜索差押えをするものであって(「別件捜索差押え」といいます。)、こうした捜査は令状主義(憲法31・35条)に違反するものとして違法と解されています(最判昭和51・11・18判時837号104頁)。
ですから、今回、草さんの自宅を公然わいせつの容疑を名目として捜索したことは、「別件捜索」であって違法捜査であった可能性が高いといえます。(公然わいせつ容疑には尿検査は無関係ですから、尿検査もまた「別件」での捜査であって、問題がありますが。)
ロ:もっとも、草さんの弁護士は、次のようなコメントを述べています。
「不起訴の見通し、草なぎの弁護士
草なぎを担当する矢田次男弁護士は24日、草なぎの処分について「職業的なものや被害者がいるものではなく、社会的制裁も受けている。弁護士としては通常、お許しいただけるケースだと思うし、そうお願いしている」と不起訴となる見通しを明かした。また、草なぎが取り調べのほかに、尿検査や家宅捜索を受けたことには「芸能人だからでしょう」とチクリ。だが「逆にやってもらったほうがよかった。後でクスリの疑惑だったと報じられるよりは。何もない潔白はわかっていましたから」と話していた。」(デイリースポーツ4月25日付)
尿検査や家宅捜索自体に問題がある以上(「芸能人だから」尿検査や捜索を受けたと非難している)、「逆にやってもらったほうがよかった」というのは、警察に対して皮肉を述べているというべきでしょう。(家宅捜索を全面的に肯定しているわけではないことに注意するべきです。)
もちろん、「薬物を使用をしていないのに、薬物を使用をしているのかもしれない」などと痛くもない腹を探られるのは、イメージを大切にする芸能人にとって致命的です。ですから、警察の捜査というお墨付きを得ることは、芸能人にとっては「逆にやってもらったほうがよかった」といえるのかもしれません。
しかし、一般人にとっては、逮捕はもちろん、自宅を捜索されること自体で社会的なダメージを受けるため、「逆にやってもらったほうがよかった」ということはありません。ですから、矢田次男弁護士の発言は(草さんの弁護に限ったものであって)一般化してはならず、今回の捜査は、違法捜査であることの指摘は、必ずしておくべきだと考えます。
3.警察の対応も問題ですが、報道機関による報道は、騒ぎ過ぎだったように思います。
(1) 朝日新聞平成21年4月26日付朝刊「声」8面
「草さんの話題 騒ぎ過ぎでは――千葉県・女性70代
SMAPの草(くさなぎ)剛さんの話題がかしましい。お酒に酔って公園で裸になった? なんだ、そんなこと。34歳の青年がたまたまお酒を少し飲みすぎただけではないか。
気が付いたら公園にいた。気が付くと服を着ていなかった。いつ裸になったか記憶がない。全裸はともかく似たような経験は誰にも一度や二度はあるのでは。「夕べはちょっと羽目を外しすぎたな。これから気をつけろよ」の一言で済むことだ。婚外子などで話題になった故・仏ミッテラン大統領だったら「あ、酔っ払って?それがどうした」と言うかも。しかし世間は厳しい。
何やらのCMは降板、所属事務所ではタレント活動を当面自粛……。草さんは釈放後、ちゃんと謝罪会見をしたのだから、後はさらりと水に流すということでいいのではないか。酒酔い運転をしたわけでも、誰かに猥褻(わいせつ)行為をしたわけでもない。家宅捜査で薬物が出てきたわけでもない。
取るに足りないことで大騒ぎする日本は国際社会に対しても恥ずかしいと、かつて一度や二度の「お酒の上の失敗」の経験を持つ私は思う。」
(2) 平成21年4月23日付夕刊(4版)において、朝日新聞・読売新聞・毎日新聞は1面と社会面において、大きく紙面を取って記事にしていました。草さんの謝罪会見も一面で写真掲載する新聞社もありました。
テレビ報道も同様であって、テレビは謝罪会見を生中継はせず会見終了以降放送することになっていたにも関わらず、NHKは、約束を反故にして、NHK「ニュースウオッチ9」で開始から3分遅れの、ほぼ生中継で伝えてしまったのです。
しかし、そこまで大々的に報道する必要があったのでしょうか。「酒酔い運転をしたわけでも、誰かに猥褻(わいせつ)行為をしたわけでもない。家宅捜査で薬物が出てきたわけでもない」のです。幾ら有名人であろうとも、「34歳の青年がたまたまお酒を少し飲みすぎただけ」であって、たいした事件ではないのです。
このような「取るに足りないことで大騒ぎする日本」は、情けない限りです。報道機関こそ、「大人になるべき」ではないでしょうか。
4.今回の事件で非常に不快に感じたのは、「最低の人間としか思えない」と語った鳩山総務相の発言です。
(1) 日刊スポーツ平成21年4月25日付25面
「鳩山総務相弱し前言撤回 草剛は「最低の人間」→「最低の行為」
鳩山邦夫総務相は24日の閣議後の記者会見で、公然わいせつの疑いで逮捕されたSMAP草剛(34)を「最低の人間」と批判した前日23日の発言をいきなり撤回した。発言直後、総務省や鳩山総務相の事務所に草ファンからの抗議の電話が殺到した。批判による反響の大きさは、鳩山総務相にも予想外だったようで「最低の人間」を「最低の行為と言い換える」と、苦しい弁明をした。
■地デジキャラ「やむを得ず」
鳩山総務相の態度は、草ファンらの猛抗議の影響もあり、怒りをあらわにした前日(23日)とは一変した。
鳩山総務相は「はらわたが煮えくりかえり、言ってはいけないことを言いました」と反省すると「最低の人間と言ったのは言い過ぎた。取り消して率直に反省する。人間は人間を評価できない。『最低、最悪の行為』と言い換える」と述べた。さらに「(デジタル放送推進への)期待が大きかっただけに、失望も巨大だった。彼も反省して出直してほしい」「日韓友好にも尽くしている」と持ち上げて弁明した。草が務めていたデジタル放送のキャラクターも「選び直す」と語ったが「やむを得ず」とした。
■「電話100本以上」4、5人対応
鳩山総務相は23日、草逮捕の一報で、記者団に「人間として最低だ。絶対に許さない」 「めちゃくちゃな怒りを感じる。ふざけている」と強い口調で批判を繰り返した。キャラクターとして選んだ総務省の責任にも触れ、怒りがおさまらない様子だった。
批判の反響は鳩山総務相の予想を大きく上回ったようだ。テレビなどの報道で発言を知ったファンらから総務省や鳩山総務相の事務所に「言い過ぎた」など抗議の電話が殺到した。総務省によると、「23日の午後くらいから抗議の電話が鳴りっぱなしです。今日(24日)の夕方になっても続いている。4、5人で対応しているが、大変な状態だ」と説明した。集計はしておらず、正確な数字は分からないと言うが、「100件以上は確実にあるだろう」との声が聞こえた。鳩山総務相もファンの怒りに降参した形だ。
かつて総務副大臣として草と地上デジタルの普及にあたった佐藤勉国家公安委員長も会見で「非常に残念」と話した。ただ、「逮捕は厳しすぎるという声が警察に多く寄せられているが」との質問には「一般論として、逮捕の必要性は各都道府県(警察)が適切に判断している」と述べるにとどめた。」
「警察のミスジャッジ マスコミも情けない
ジャーナリストの鳥越俊太郎氏 未明の午前3時に無人の公園に裸でいたことを公然わいせつ容疑で逮捕することには無理がある。大声を出し、騒音で迷惑をかけたかもしれないが違法ではない。警察は泥酔者がいたら、まず保護するのが普通。薬物使用などを疑い、功を焦って逮捕したのだろうがこうしたやり方は間違いだ。警察のミスジャッジとそれに踊らされるマスコミを見ていると情けなくなる。CMを中止するなどした企業はもっと事態の推移を見てから判断してもよかったのではないか。
石原都知事は擁護「気持ち分からんでもない」「ちょっと騒ぎすぎ」
石原慎太郎東京都知事(76)は24日、都庁で行われた会見で、公然わいせつ容疑で逮捕され、釈放された草に「裸になりたい気持ち、分からないでもないな、おれは」と擁護した。石原都知事は米の最高裁の判決で「人間の肉体の一部はとりわけ醜くない」と全裸の写真が解禁になった事例を紹介。「裸になったらわいせつなんですか? 今回のことを聞いて日本と米、国によって考え方がずいぶん違うんだなと思った」と語った。
特別な親交があったわけでもなく、今回の事件の詳細も知らなかったようで、会見では報道陣に質問する場面もあった。草が深夜、酔って1人で公園で騒いでいたと知ると「いろいろフラストレーションがあったんだろうね」と、多忙な人気タレントを思いやった。さらに「ちょっと騒ぎすぎじゃないか」と付け加えた。」
すでに述べたように、「34歳の青年がたまたまお酒を少し飲みすぎただけ」であって、取るに足りない事件なのです。それなのに、鳩山総務相は「最低の人間としか思えない」とまで言うのですから、「どうかしている」としか思えません。
多くの人から批判されてしまい、鳩山総務相は、「最低、最悪の行為」と言い換えると述べたようです。しかし、取るに足りない事件なのですから、「最低、最悪の行為」ということも、妥当ではないというべきです。
(2) 翻ってみれば、鳩山法相は、中川・前財務金融相が泥酔会見を行い、全世界に日本の恥を晒した件について、「テレビの画面を通してお疲れなのだなあと思った」と述べて、擁護していたのです。
「鳩山総務大臣閣議後記者会見の概要
平成21年2月17日
中川財務・金融担当大臣 1)
問: 大臣、中川財務大臣の酩酊したように見える会見についてなのですが、これをどういうふうに見ていらっしゃるかということと、野党が問責をする見通しになってますけれども、これについても御所見をお願いします。 答: まあ、その場にいたわけではありませんから、何とも言い様がないし、テレビの画面を通してお疲れなのだなあと思ったぐらいで、あとは、私は責任を持ってものは言えません。それから問責、これは野党がお決めになることなのではないでしょうか。私からの論評すべきことではありません。 」
この違いは、鳩山総務相に「芸能人を使ってやっている」という差別意識があるからこそ、「芸能人ごときが推進している地上デジタル放送に少しでも不利益なことをしやがって」という意識がつい出てしまって、「最低の人間だ」と芸能人を罵倒してしまったのでしょう。
これに対して、酒癖の悪い中川氏が世界中に日本の恥を晒したのだから、一般人の意識からすれば、中川氏こそ「最低の人間」と罵倒してもよさそうなのに、鳩山総務相は、中川氏に対しては選民意識をもつ同士として、擁護してしまうのです。
こうした差別意識を持つ鳩山邦夫氏こそ、「最低の人間」であって、国民の代表者たる国会議員としての資質を有していないというべきです。「友人の友人はアルカイダ」などの妄言を吐いていたりするなど、ずっと以前から国家議員の資質は失っているのに、麻生首相は論功行賞として性懲りもなく大臣にしたのですから、自民党自体も政権担当能力を失っています。少なくとも、鳩山邦夫氏は、国会議員を辞任するべきであり、有権者は未来永劫、鳩山邦男氏に投票するべきではないと考えます。
誰しもお酒による失敗はある物で、直接の被害者が居ない今回の件ではマスコミも警察も騒ぎ過ぎだったと思います。
ビートたけしが今回の件でコメントしたのが痛快でした。
>「男の子なんだからそういうこともあると言って許してくれる粋なスポンサーが欲しいね」
粋なコメントです。 すぐCM打ち切った某車メーカーは今頃失敗したと思ってるかも。(^^;;
彼は一旦社会的な地位を全て失ってしまいましたが、彼が築いてきたファンと言う大きな財産が残ってます。 暫くは休養も兼ねて謹慎して、しかるべき時に復帰してまた頑張って欲しいものです。
URL | 迷い猫 #-[ 編集 ]
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