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2009/03/14 [Sat] 23:59:27 » E d i t
民主党の鳩山由紀夫幹事長は平成21年3月13日、党本部で記者会見し、小沢一郎代表の公設秘書が逮捕された西松建設の違法献金事件について「なぜ(衆院選を控えた)この時期にこのような(逮捕に踏み切ったのか)ということの説明がまるでない。行政としての責任を果たすべきだ」と述べています。このように、民主党は再び検察批判を強めており、検察批判は野党に広がっています。



1.報道記事を幾つか。

(1) 時事通信(2009/03/13-19:13)

検察に背景説明要求=「検事総長招致も選択肢」-民主・鳩山氏

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は13日、党本部で記者会見し、小沢一郎代表の公設秘書が逮捕された西松建設の違法献金事件について「なぜ(衆院選を控えた)この時期にこのような(逮捕に踏み切ったのか)ということの説明がまるでない。行政としての責任を果たすべきだ」と述べた。菅直人代表代行も先に同様の見解を示しており、党として検察に捜査の背景説明を求める立場を明確にした。
 鳩山氏は、捜査責任者による記者会見など速やかな対応を要求。その上で「それも行わないなら、樋渡利秋検事総長を(国会に)お呼びするのも選択肢としてあり得る」とけん制した。さらに、検察の在り方について「政権を取った暁には議論しなければならないと感じた」とも語った。(2009/03/13-19:13)」



(2) 東京新聞平成21年3月14日付朝刊2面

検察批判 再び過熱 鳩山幹事長「説明責任果たせ」

 西松建設の巨額献金事件をめぐり、民主党が検察当局への批判を再び過熱させている。小沢代表の元秘書の石川知裕衆院議員の参考人聴取が事前に報道されたことがきっかけ。衆院選が近づく中で小沢氏の公設秘書を逮捕したことに対しても、説明を求める意見が日増しに強まっている。

 鳩山由紀夫幹事長は13日の記者会見で、石川氏の聴取について「任意の参考人聴取だから表に出るはずがないのに、事前に出回っているのは、石川氏の名前を出すことが目的だったからだ。非常に煙たいものを感じる」と疑問を呈した。党内では、石川氏の聴取を「選挙妨害だ」と憤る声が大勢だ。

 鳩山氏の小沢氏秘書の逮捕に関して「同じ容疑がある自民党に捜査が及んでいない。法令ではなく検察の裁量で違いが出ていると言わざるを得ない。検察が説明責任を果たし、公平公正に物事を処してほしい」と公の場での説明を求めた。

 検察庁が自主的に説明しない場合は、樋渡利秋検事総長の参考人招致も「選択肢としてあり得る」と述べた。党内では、管直人代表代行も検察に説明を求めたほか、西岡武夫参院議院運営委員長は樋渡利秋検事総長の証人喚問を主張している。」



(3) 朝日新聞平成21年3月14日付朝刊4面

なぜ「次の首相」標的に 検察への批判 野党に広がる

 民主党の小沢代表秘書逮捕を機に検察への批判が、野党内で広がっている。 「なぜ政権交代をめざず『次の首相』を総選挙前に狙うのか」との疑問が消えないためだ。小沢氏本人は露骨な検察批判を控えるが、捜査を受けた経験者らの援護射撃が続きそうだ。

 検察批判を展開するのは、新党大地の鈴木宗男代表や国民新党の亀井静香代表代行、無所属の田中真紀子元外相ら。鈴木氏は15日、 「青年将校化する東京地検特捜部~小沢第1秘書逮捕にみる検察の暴走」と題したシンポジウムに出席する。

 7年前に東京地検に逮捕・起訴され、係争中の鈴木氏は13日、朝日新聞の取材に対し、自民党の中川昭一前財務相と北海道11区で対決する民主党の石川知裕衆院議員の参考人聴取が事前報道された経緯を問題視。 「もうろう会見で辞任した石川氏を助けようとする恣意(しい)的な動きと国民は受け止める」と批判した。

 検事総長の証人喚問に言及した民主党の西岡武夫参院議院運営委員長は記者団に「(検事総長の証人喚問は造船疑獄をめぐって54年に)一例ある。奇異な事柄でも何でもない」と語った。 (松田京平)」



(4) 小沢一郎民主党代表の公設第1秘書が逮捕された西松建設の巨額献金事件に関しては、検察庁のリーク情報によると、10年余で5億円近い献金が、西松建設のOBが設立した政治団体を通じて、自民・民主の多数の国会議員に渡っていたことが、明らかになっています。

特に、二階経産相の場合、西松建設からの巨額パーティー券、裏金疑惑に加えて、地元の後援会事務所は西松建設と同じビル内にあるほか、二階氏の選挙区である和歌山3区では、人口1万1千人の規模に不釣合いなほどの豪勢な施設を、西松建設が施工しているほどの、癒着ぶりです。

ところが、自民党側への捜査はほとんどなされることないのに、検察から狙われているのは小沢・民主党代表側のみであって、民主党の石川知裕衆院議員(35)=比例北海道=が、西松建設献金事件で東京地検特捜部に参考人として事情聴取されたことはもちろん、事情聴取をすることを(守秘義務違反なんて無視して)検察庁が事前にリークしているのです。ですから、鳩山・民主党幹事長は、「同じ容疑がある自民党に捜査が及んでいない。法令ではなく検察の裁量で違いが出ていると言わざるを得ない。検察が説明責任を果たし、公平公正に物事を処してほしい」と公の場での説明を求めるなど、民主党は再び批判を強めています。(なお、二階俊博経産相が代表の政治団体「新しい波」の会計責任者は、泉信也・元国家公安委員長ですから、二階氏を捜査しないことは誰でも予想できますが。)

石川氏は小沢一郎民主党代表の元秘書で、資金管理団体「陸山会」の政治献金処理を一時担当していたとはいえ、現在は国会議員、しかも国会会期中なのですから、議院活動・議員活動のみならず、民主党へ大きく影響を与えるため、民主党の態度は当然といえる反応です。

石川氏は、事情聴取後の記者会見において、特捜部の今後の聴取については「要請があれば話をする」と応じる考えを示していますが、「通常とは違う形で報道が先行したことは遺憾だ」とも述べています(2009/03/14 13:29 【共同通信】)。


2.西松建設献金事件については、検察によるリーク情報に惑わされないために、政治資金規正法のうち、小沢氏の公設第一秘書逮捕の容疑となった点について、市民の側は十分に理解しておく必要があります。そこで、専門家の意見を中心として紹介しておきたいと思います(「民主党・小沢一郎代表の秘書を逮捕~政治資金規正法違反(虚偽記載など)の疑いで」(2009/03/06 [Fri] 01:37:44)でも触れていますが、もっと詳しい内容を紹介するものです。)。

(1) 週刊朝日2009年3月20日増大号(発売日:2009年3月12日)20頁以下

不可解な“微罪”での強制捜査 検察は違法性を立証できるのか

桐蔭横浜大学法科大学院教授、元検事・郷原信郎

 私は検事時代、自民党長崎県連事件など多くの政治資金規正法違反事件を捜査してきました。その経験からすると、今回の検察の捜査にはいくつかの疑問があります。

 まず、小沢氏側の会計処理は本当に政治資金規正法違反と言えるのかどうか。

 この法律は、「寄附をした者」を収支報告書に記載することとしており、西松建設のOBが設立した2つの政治団体が寄附者として記載されています。

 しかし、法律上、寄附の資金を誰が出したのかについては報告書に記載する義務がない。つまり、小沢氏の秘書が、西松建設が出したお金だと知っていながら政治団体の寄附と記載したとしても、それだけでは違反とは言えない。報道では、小沢氏の秘書が西松建設に請求書を送り、献金額まで指示していたとされていますが、それでもただちに違反とはならないのです。

 政治資金規正法違反になるとすれば、寄附者とされる政治団体が実体の全くないダミー団体で、しかも、それを小沢氏側が認識していた場合です。捜査のポイントはこの点を立証できるかどうかですが、全国に数万とある政治団体の中には、政治資金の流れの中に介在するだけで活動の実態がほとんどないものも多数あります。団体の規約があって何らかの活動が行われていて、会計が独立していれば、一応、政治団体の実体があるというのが従来の考え方だったと思います。この点、西松建設の設立した政治団体がまったく実体がないダミーと言えるのかは、微妙なところです。

 もちろん、政治資金の流れの透明性を高めるという政治資金規正法の目的から考えると、実質的な拠出者も収支報告書に記載して公表するのが望ましいことは確かです。しかし、政治資金の現実はまだそれとは程遠い段階なので、法律はまだそこまでは要求していないのです。

 ところで、今回の事件は、選挙が近いと言われている時期に、次期首相の筆頭候補と言われている野党第1党党首の秘書を逮捕するという、非常に政治的影響力の大きい事件です。

 こうした重大な影響の割には、今回の事件は、1億円の闇献金が発覚した日歯連事件などと比較して、規模、態様ともに軽微です。

 政治資金規正法は、かつてはほとんど形骸化していて、1990年代まではきちんと守っている政治家などほとんどいなかった。過去にさかのぼれば、違法の疑いがある処理も実際にはかなりあるはずです。

 こうした状況下で、形式的に法に違反しただけで摘発できるということになると、検察はどの政治家でも恣意(しい)的に捜査の網にかけることができてしまう。だからこそ、摘発する事件は、他の政治家が一般的に行っているレベルよりも明らかに悪質性が高いということが言えなければならない。収支報告書の訂正などでは済まされないような事案でなければならない。

 今回の事件が、政治資金規正法違反として特別に悪質なものと言えるのか、それ以上のプラスアルファの事件があるのか、いずれかでなければ、このような時期に、重大な政治的影響を与えてまで強制捜査を行うとは思えないのですが、現在までの報道を見る限り、この事件が特別に悪質には見えません。私の経験から見ても、今回の捜査は不可解な印象を拭えません。」



(2) 日経新聞平成21年3月12日付夕刊6面「永田町インサイド」

小沢氏秘書逮捕、専門家の見方

■特捜部の「着地点」見えぬ――元東京地検特捜部検事・郷原信郎氏

 ――小沢氏の秘書逮捕をどう見るか。

 「悪質な政治資金規正法違反ではない。政治的な影響は大きく常識では考えられない。特捜部が泥縄式に突っ込まざるを得なくなっているなら一体どんな着地点を描いているのか心配だ」

 ――捜査のポイントは。

 「西松建設が出資したお金と認識していても、それだけで違反にはならない。規正法が義務付けているのは寄付者を収支報告書に記載するところまで。資金を誰が出したかを記載しろとは言っていない。寄付者が実態のないペーパーのような存在かどうかが焦点だ」

 ――便宜供与は。

 「公共事業に関する便宜供与をするなら政府・与党側は圧倒的に有利。小沢氏は野党で当時は自由党党首や民主党副代表だった。その地域の有力者だから『邪魔をしないでほしい』という趣旨ではないか」

 ――秘書逮捕で小沢代表も責任を問われることになるのか。

 「規正法の場合、秘書の選任と監督の両方に過失がなければ処罰はできない。他の法律の両罰規定は選任または監督に過失があることが要件だ。結論から言えば使えない」

 ――自民党二階派のパーティー券購入についてはどう見ているか。

 「裏の話があれば別だが強制捜査は考えにくい。最初から自民党側の捜査も予定していたのであれば、小沢氏の秘書の捜査に合わせて聴取を始めればよかった。世論の反発を考慮し捜査対象を拡大したのではないか。年度末の多忙な時期に特捜部が地方検察に『応援検事をよこせ』と言うのも通常は考えられない」

■政党本位の献金制度必要――日大教授・岩井奉信氏

 ――小沢氏の秘書が逮捕された。

 「常識的には小沢氏側は2つの政治団体がダミーで、西松建設と一体だとわかっているはずだ。見返りを期待する企業が匿名で献金をするわけがない。政治資金収支報告書に虚偽記載があると制度の根幹が揺らぐ」

 「政治資金規正法違反は基本的に形式犯。量刑からすると、今回は異様な捜査だ。衆院選が予想される時に野党党首の秘書を逮捕するのは尋常ではない感じがする」

 ――民主党は「国策捜査」と批判している。

 「それは考えにくい。国策捜査をやれば、後々公判の段階で大問題になる。民主党がそこまで言うのはどうか」

 ――西松建設側の政治団体が購入していた二階派のパーティー券が巨額だったようだ。

 「1回50万円までの上限に触れないよう分散させたのだろう。団体についてせんさくしないことはあり得ない」

 ――「政治とカネ」の問題が後を絶たないのはなぜか。

 「私は企業・団体献金の禁止論者ではない。厳しい規制の下に節度があればいい。だが、そもそも企業・団体献金には『わいろ性』はある」

 ――規正法を再改正する場合のポイントは。

 「政治が政党本位になったのだから、政治家個人はそんなにカネを使う必要はない。もっと政党中心でいい。政党支部は事実上、政治家の個人後援会になっているので、都道府県連がカネを扱うようにしてもいい」

 「個人的には資金管理団体制度をやめればいいと思う。政党と政治家個人の2つだけで管理すればよい」」



(3) 毎日新聞 2009年3月12日 東京夕刊4面

特集ワイド:西松事件の読み方

 政界に激震を走らせた準大手ゼネコン「西松建設」の違法献金事件。「次期首相」のイスに手が届きかけていた小沢一郎・民主党代表は進退問題にさらされ、今後の展開次第では自民党も無傷でいられない。民主党の政権奪取が現実味を帯びているこの時期、強制捜査に乗り出した東京地検特捜部。同党幹部が批判するように「国策捜査」なのか、それとも「政治とカネ」の問題を追及する厳正な捜査なのか。深層に3人の識者が迫った。【遠藤拓、中山裕司】(中略)

◇立件ハードル下げた--ジャーナリスト・魚住昭さん

 西松事件で小沢氏の秘書が逮捕されたのは、2100万円の献金が政治資金規正法で禁じられている企業献金とみなされたからです。04年、村岡兼造元官房長官が在宅起訴された、1億円の裏献金を巡る日歯連事件など他の事件と比べて、金額、手口で悪質性が高いとは言えません。立件のハードルを恣意(しい)的に下げたとしか思えないし、小沢氏が会見で「不公正な検察権力の行使」と訴えた気持ちも分かります。

 地検が強い姿勢で臨んだのは、小沢氏絡みだからでしょう。小沢氏は検察が政界捜査のターゲットとしてきた田中角栄元首相と金丸信・元自民党副総裁に仕え、検察批判を繰り返した。検察上層部に「今回の摘発で小沢氏が首相になる芽は消える」との計算がなかったとは言い切れません。

 以前の検察ならば、政治介入に対する自制心が働いたはずです。現場のはやる気持ちに、上層部が待ったをかけた。「政治資金規正法なんかでバッジ(国会議員)を取れるか」との良識もあった。

 変わったのは、東京佐川急便事件(92年)のころからです。金丸氏が5億円の献金を受け取ったにもかかわらず罰金20万円で決着し、検察批判が高まった。翌年、金丸氏を脱税事件で逮捕し、威信を回復したが、それ以降、東京地検特捜部長らが代替わりするたび、“大物”を摘発しなければとの空気が広がった。

 今回の事件は「国策捜査」との批判もありますが、政権や自民党の指示に従うことはあり得ない。なぜなら検察には昔から、政治家に使われている意識などまったくなく、逆に見下しているからです。

 ただ、検察は世論の動向を気にします。漆間巌官房副長官が「(事件は)自民党議員には波及しない」と述べたことで、「自民党側もやらなければ公正さを示せない」と思ったはずです。意図的な捜査との批判を打ち消すためにも、今後は自民党ルートの疑惑解明にも力を注ぐでしょう。

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 ■人物略歴

 ◇うおずみ・あきら


 1951年生まれ。一橋大卒。共同通信記者時代にリクルート事件などを取材し、その後フリー。著書「特捜検察の闇」(01年)で「国策捜査」のあり方を厳しく指摘した。

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毎日新聞 2009年3月12日 東京夕刊」



(4) 理解しておくべきポイントして、3点を指摘しておきます。

 イ:1点目。小沢氏の公設第1秘書に対して政治資金規正法違反が成立することは困難であって、有罪となる可能性は低いことです。

 「まず、小沢氏側の会計処理は本当に政治資金規正法違反と言えるのかどうか。
 この法律は、「寄附をした者」を収支報告書に記載することとしており、西松建設のOBが設立した2つの政治団体が寄附者として記載されています。
 しかし、法律上、寄附の資金を誰が出したのかについては報告書に記載する義務がない。つまり、小沢氏の秘書が、西松建設が出したお金だと知っていながら政治団体の寄附と記載したとしても、それだけでは違反とは言えない。報道では、小沢氏の秘書が西松建設に請求書を送り、献金額まで指示していたとされていますが、それでもただちに違反とはならないのです。
 政治資金規正法違反になるとすれば、寄附者とされる政治団体が実体の全くないダミー団体で、しかも、それを小沢氏側が認識していた場合です。捜査のポイントはこの点を立証できるかどうかですが、全国に数万とある政治団体の中には、政治資金の流れの中に介在するだけで活動の実態がほとんどないものも多数あります。団体の規約があって何らかの活動が行われていて、会計が独立していれば、一応、政治団体の実体があるというのが従来の考え方だったと思います。この点、西松建設の設立した政治団体がまったく実体がないダミーと言えるのかは、微妙なところです。
 もちろん、政治資金の流れの透明性を高めるという政治資金規正法の目的から考えると、実質的な拠出者も収支報告書に記載して公表するのが望ましいことは確かです。しかし、政治資金の現実はまだそれとは程遠い段階なので、法律はまだそこまでは要求していないのです。」(週刊朝日)

 「――小沢氏の秘書逮捕をどう見るか。
 「悪質な政治資金規正法違反ではない。政治的な影響は大きく常識では考えられない。特捜部が泥縄式に突っ込まざるを得なくなっているなら一体どんな着地点を描いているのか心配だ」
 ――捜査のポイントは。
 「西松建設が出資したお金と認識していても、それだけで違反にはならない。規正法が義務付けているのは寄付者を収支報告書に記載するところまで。資金を誰が出したかを記載しろとは言っていない。寄付者が実態のないペーパーのような存在かどうかが焦点だ」」(日経新聞)


「政治資金規正法違反になるとすれば、寄附者とされる政治団体が実体の全くないダミー団体で、しかも、それを小沢氏側が認識していた場合」です。

そして、「寄附者とされる政治団体が実体の全くないダミー団体」かどうかについては、「団体の規約があって何らかの活動が行われていて、会計が独立していれば、一応、政治団体の実体があるというのが従来の考え方」です(裁判所もそうした考え方に準拠して判断することになります。)。なぜなら、寄附を受ける側は、捜査機関と異なり、寄附者とされる政治団体を調査する法的権限はないのですから、その政治団体が特定の企業に支配されているとしても、形式上判明する範囲で判断するしかないからです。

報道されている点から判断する限り、「西松建設の設立した政治団体がまったく実体がないダミーと言えるのかは、微妙なところ」というのが素直な判断というべきです。

また、「法律上、寄附の資金を誰が出したのかについては報告書に記載する義務がない」のですから、今回の事件にあてはめると、「小沢氏の秘書が、西松建設が出したお金だと知っていながら政治団体の寄附と記載したとしても、それだけでは違反とは言えない」ということになります。

検察庁によるリークによる報道記事の文字を追うだけでは、いかにも政治資金規正法違反は明らかなように勘違いしそうですが、報道記事は、ほとんど政治資金規正法違反を根拠付ける事実を報道してないように思います。言い換えれば、報道記事からすれば、検察庁は、政治資金規正法違反について、合理的な疑いを容れない程度の証拠を有していない、との推測が可能なのです。


 ロ:2点目。仮に、小沢・民主党代表の公設第1秘書が起訴されることがあるとしても、小沢・民主党代表自身は、政治資金規正法違反として起訴される可能性はない(=有罪となる可能性はゼロ)、ということです。

「――秘書逮捕で小沢代表も責任を問われることになるのか。

 「規正法の場合、秘書の選任と監督の両方に過失がなければ処罰はできない。他の法律の両罰規定は選任または監督に過失があることが要件だ。結論から言えば使えない」」(日経新聞)


秘書逮捕で小沢代表も責任を問われることになるのかについては、記事になったのはおそらく初めてではないかと思います。報道機関は、こうした政治資金規正法を正しく理解しているのでしょうか?

報道機関は、小沢・民主党代表が辞任すべきかどうかについて世論調査を行っており、辞任に賛同する市民が多数います。しかし、小沢・民主党代表が秘書逮捕を契機として政治資金規正法違反となる可能性がないという、政治資金規正法を正しく理解したうえで判断したものなのでしょうか。疑問を感じます。


 ハ:3点目。東京地検特捜部としては、元々、自民党側を捜査する気がなかった疑いが濃厚であることです。

「――自民党二階派のパーティー券購入についてはどう見ているか。

 「裏の話があれば別だが強制捜査は考えにくい。最初から自民党側の捜査も予定していたのであれば、小沢氏の秘書の捜査に合わせて聴取を始めればよかった。世論の反発を考慮し捜査対象を拡大したのではないか。年度末の多忙な時期に特捜部が地方検察に『応援検事をよこせ』と言うのも通常は考えられない」」(日経新聞)


「年度末の多忙な時期に特捜部が地方検察に『応援検事をよこせ』と言うのも通常は考えられない」という事実は、報道機関にとっては、昔からよく知っている事実のはずです。こうした事実を知ると、東京地検特捜部は、予想もしていなかった「国策捜査ではないか」という世論の反発を受けて、自民党側の捜査も――やる気はないにしても――着手する気配はみせなければならないとして、応援検事を要請したのです。東京地検特捜部は、元々、自民党側を捜査する気がなかったのに、やる羽目に陥ったため、泥縄式の捜査になっているのです。


3.再び、検察批判への話へ戻ります。

(1) 朝日新聞平成21年3月12日朝刊15面「私の視点―ワイド―」

◆違法献金事件 検察には説明責任がある

ジェラルド・カーチス 米コロンビア大教授(日本政治)

 今回の東京地検特捜部による小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書の逮捕と事態の展開には、解せないことがある。逮捕から1週間余りたつのに、検察当局は強制捜査に踏み切った理由などについて、国民に対し公式の説明をしていない。これは一体、どうしたことか。

 私は、公共事業に絡む建設業界と政治家の腐敗構造がなくなっていない事実を軽視するつもりはない。また、検察が不正献金の問題を追及するのも当然のことである。

 しかし、この事件は普通の政治スキャンダルとは質的に違う。数ヶ月以内には総選挙が行われ、その微妙な時期に、「政治資金規正法違反」という形式犯で、次期首相になる可能性がある人物の公設秘書をいきなり逮捕するとは、極めて異例である。だからこそ、検察の説明責任が問われるのだ。

 検察が自民党のために動いたとの憶測が出たり、民主党から「国策捜査」の非難が飛び出したりした。検察当局は沈黙を守るが、マスコミは「関係者によると」などの形で様々な情報を流している。公共事業をめぐる「あっせん利得」の疑いがあるとか、事件はさらに二階経済産業相に飛び火するとかいう報道が事実のように語られ、当局のリークなどによる巧妙な情報操作への疑念も生じさせている。

 検察当局は、逮捕した秘書の勾留(こうりゅう)期限が来る3月24日に記者会見し、起訴か否かも含めて事情説明すると見られている。だがこの間、逮捕されただけでも世間的には「有罪」の印象をもたれ、次期首相の最有力候補の政治生命をも奪いかねない。

 私は、小沢氏の肩を持ったり、特定の政党の側に立ったりするものではない。検察が政治的に動いているとか、検察のやっていることが怪しいとか言うつもりもない。

 しかし、総選挙を前にして、動き出した検察が沈黙し、公の場で説明しないということは、国民の間の政治不信ばかりか、国家権力に対する不信感を深めることになりかねない。この危険の重大性こそを、検察は認識すべきである。

 なぜ、検察の説明責任を求める声がもっと強く出てこないだろうか。朝日新聞は3月10日、 「民主党、この不信にどう答える」と題した社説を掲げたが、どうして「検察、この不信にどう答える」と問いかけないのか。検察のやることは絶対に正しく、疑う余地がないとでも思っているからなのか。マスコミは検察側が不機嫌になるような報道を自己規制して控えているからなのか。

 検察当局は、現時点ではまだ捜査中なので、すべてを明らかにすることはできないという立場なのだろう。だがそうであれ、記者会見をして説明できることは説明し、話せないことは話せないと言えばいい。肝心なのは、国家権力を行使する機関の姿が国民に見えることだ。

 国家権力があくまでも公平・公正に使われていると国民が信じられることが、民主主義の絶対条件である。いま日本では政治家もマスコミも、さらに国民一般も、この問題にあまりにも鈍感になっていないか。

 今回の事件は1人の野党リーダーの問題だけではない。党利党略ばかりを考えず、法治国家としてのプロセスの正当性を守る意味においても、麻生首相をはじめ与野党の政治家たちは、検察の責任者が公の場に出てきて国民に説明責任を果たすよう求めるべきだ、と私は思う。」



(2) 九州企業特報(2009年03月13日 09:07 更新)

西松献金事件 検察と大手マスコミへ
2009年03月13日 09:07 更新

 検察によるものとしか思えない「リーク記事」の氾濫で、西松建設事件の実相が見えなくなってきた。唯一逮捕者が出ている政治資金規正法違反事件なのか、あっせん利得処罰法違反事件なのか、あるいは刑法上の談合事件なのかさっぱり分からない。現段階ではっきりしているのは、検察の狙いが政権奪取を視野に入れはじめていた民主党の代表だけということになる。西松建設による違法献金事件で、小沢代表の元秘書・石川知裕衆院議員が東京地検特捜部に事情聴取を受けた。検察が手をのばしたのは、またしても小沢代表側である。

 今週初めにも事情聴取、と報じられていたのは自民党の二階経済産業相側だったはずだが、いつの間にか「小沢狙い」に変わっている。新聞も「二階派のことはどうなった!」などとは一切書いていない。天下のNHKも検察情報を垂れ流すだけで、「自民党側への捜査が行なわれないのはおかしい」という正論は出てこない。新聞・テレビの報道は、「東京地検特捜部は~と見て調べを進めている模様」であるとか「特捜部は~するものと見られる」といった表現ばかりである。「9日にも事情聴取されると見られる」はずだった二階大臣側の話はどうなったのだろう。見込み違いなら誤報であろうし、リーク情報に踊らされただけなら「国策捜査」批判への矛先をそらすために、検察と大手マスコミが仕組んだといわれても仕方がない。「自民側への着手が遅れているだけ」であることを願いたい。

 誤解のないように述べておくが、民主党擁護ということではない。西松建設事件の本質が、他のゼネコンを含めた業界と政治家の「金」の問題であり、そうであるなら公共事業を利用した裏献金の原資が「税金」であるからに他ならない。全ての納税者のために断ち切らねばならない陋習なのだ。ザル法と言われてきた「政治資金規正法」で大物政治家側への強制捜査に踏み切った以上、同様の形で西松建設から政治資金提供を受けた政治家側は全て捜査対象であろう。自民党側だけに証拠隠滅の時間を与えることは許されないはずだ。「国策捜査」ではないというなら、その証明をすべきである。自民党側への捜査が行なわれないのが「小沢の検察批判は許せない」といった子どもじみた理由であるはずもないが・・・。

 ところで、「捜査関係者によると」といえば聞こえはいいが、正式発表ではないということだ。昨年から新聞各紙は事件報道については「○○県警によると」「××署の話では」などと、ニュースの出所を明示するようになっていた。しかし、西松事件については自分たちで決めたルールさえ守っていない。検察のリーク情報をろくに吟味もせずに、一面トップで報じることに、危機感はないのだろうか。
 検察は、小沢秘書逮捕で「国策捜査」の批判がでると、自民党側の政治家の名前をリークして矛先をかわした。二階経産相側に注目が集まった途端、小沢代表の元秘書聴取である。この間、政治資金規正法違反(虚偽記載)が疑われる他の政治家は、証拠隠滅には十分な時間をもらっている。大手マスコミが手を貸しているようなものだ。
 そもそも検察が捜査情報をリークしているとすれば、それは守秘義務違反ではないのか。警察にしても捜査情報を流せば処分される。相手がマスコミだからいいということにはなるまい。ましてや東京地検特捜部が扱う事件は、国のあり方を変えるような性格のものが多い。ならばマスコミを利用して事件を作るのではなく、アメリカのように、可能な範囲で「ありのまま」を発表したらどうか。その方がよほどスッキリする。                

【頭山 隆】」



(3) 日々放映・紙面を埋める検察のリーク情報は、「唯一逮捕者が出ている政治資金規正法違反事件なのか、あっせん利得処罰法違反事件なのか、あるいは刑法上の談合事件なのかさっぱり分からない」ものばかりです。このように、政治資金規正法違反の容疑とはまるで関係のないものばかりで、しかも根拠の乏しい憶測にすぎないものばかりなのに、なぜ垂れ流し続けるのか不可思議でなりません。

 イ:もっとも、マスコミがこうした検察によるリーク情報を小躍りして報道することは、以前にもあったことです。

例えば、毎日新聞の論説室・北村龍行記者は、検察のリーク情報を垂れ流した挙句、そのリーク情報を妄信したした結果、ライブドア事件について、「『プロの金融犯罪」』の印象」だとまで述べるほど妄想を誇大に膨らましたのです(「ライブドア事件の意味~毎日新聞の「記者の目」より」(2006/02/12 [Sun] 17:36:18)参照)。

しかし、ライブドアの連結決算を粉飾したなどとして、証券取引法違反の罪に問われたライブドア前社長の堀江貴文氏への判決を読めば分かるように(「堀江貴文・ライブドア前社長に、懲役2年6カ月の実刑判決~東京地裁平成19年3月16日判決」(2007/03/20 [Tue] 23:36:23)参照)、「プロの金融犯罪」の話はまったく出てきません。虚報や妄想を垂れ流したことへの反省は一切なく、また同じことを繰り返しているのです。

「「捜査関係者によると」といえば聞こえはいいが、正式発表ではないということだ。昨年から新聞各紙は事件報道については「○○県警によると」「××署の話では」などと、ニュースの出所を明示するようになっていた。しかし、西松事件については自分たちで決めたルールさえ守っていない。検察のリーク情報をろくに吟味もせずに、一面トップで報じることに、危機感はないのだろうか。」


裁判員制度実施が間近に迫っているのに、無罪推定の原則なぞないかのような報道ばかりであって、「西松事件については自分たちで決めたルールさえ守っていない」のです。報道機関は、捜査機関の忠犬にすぎないのでしょうか?


 ロ:小沢氏の秘書大久保隆規容疑者(47)が逮捕された3日夜以降、東京・霞が関の検察庁には、電話が約20件、ホームページへの書き込みも100件近くに達した。その8割が「国策捜査じゃないか」「選挙が近いのになにをやっているんだ」といった抗議や批判だったのです(中日新聞2009年3月5日 朝刊)。このように世論や民主党側から、猛烈な反発が生じています。

検察庁は、虚実交えたリークを盛んに行い、世論操作といえる行っているものの、(世論調査を見る限り)リーク情報を妄信するような市民は半数を超えていないのが現実です。リーク情報を鵜呑みにする報道機関のはしゃぎっぷりと、市民の感覚とは落差があるのです。

すでに触れたように、現行の政治資金規正法の解釈を前提とする限り、小沢氏の公設第1秘書の逮捕容疑である政治資金規正法違反で有罪となる可能性は低いのです。言い換えれば、無罪となる可能性の高い事件であるのに、リーク情報を鵜呑みにして有罪が確実であるかのような報道を繰り広げることは、不可解であって信用できない態度なのです。


 ハ:ここまで虚報に満ちたリーク情報を見聞きすると、国民は、<1>検察に対して説明責任を果たすよう主張するべきであり、そして、<2>「報道機関はリーク情報を垂れ流すのは止めろ、報道機関は検察に対して説明責任を果たすべきとの声を上げるべきだ」と、報道機関を非難するべきです。

 「総選挙を前にして、動き出した検察が沈黙し、公の場で説明しないということは、国民の間の政治不信ばかりか、国家権力に対する不信感を深めることになりかねない。この危険の重大性こそを、検察は認識すべきである。
 なぜ、検察の説明責任を求める声がもっと強く出てこないだろうか。朝日新聞は3月10日、 「民主党、この不信にどう答える」と題した社説を掲げたが、どうして「検察、この不信にどう答える」と問いかけないのか。検察のやることは絶対に正しく、疑う余地がないとでも思っているからなのか。マスコミは検察側が不機嫌になるような報道を自己規制して控えているからなのか。
 検察当局は、現時点ではまだ捜査中なので、すべてを明らかにすることはできないという立場なのだろう。だがそうであれ、記者会見をして説明できることは説明し、話せないことは話せないと言えばいい。肝心なのは、国家権力を行使する機関の姿が国民に見えることだ。
 国家権力があくまでも公平・公正に使われていると国民が信じられることが、民主主義の絶対条件である。いま日本では政治家もマスコミも、さらに国民一般も、この問題にあまりにも鈍感になっていないか。
 今回の事件は1人の野党リーダーの問題だけではない。党利党略ばかりを考えず、法治国家としてのプロセスの正当性を守る意味においても、麻生首相をはじめ与野党の政治家たちは、検察の責任者が公の場に出てきて国民に説明責任を果たすよう求めるべきだ、と私は思う。」(朝日新聞)

 「そもそも検察が捜査情報をリークしているとすれば、それは守秘義務違反ではないのか。警察にしても捜査情報を流せば処分される。相手がマスコミだからいいということにはなるまい。ましてや東京地検特捜部が扱う事件は、国のあり方を変えるような性格のものが多い。ならばマスコミを利用して事件を作るのではなく、アメリカのように、可能な範囲で「ありのまま」を発表したらどうか。その方がよほどスッキリする。」(九州企業特報)


「国家権力があくまでも公平・公正に使われていると国民が信じられることが、民主主義の絶対条件である」という意見は、まさにそのとおりだと思います。また、検察によるリーク情報のみでは、偏った情報による一方的な意見になってしまうのですから、リーク情報で情報操作されるままに世論が形成されるものであって、民主主義国家として極めて不健全です。

「検察の責任者が公の場に出てきて国民に説明責任を果たすよう求める」ことこそ、民主主義国家として健全なものであるように思います。



<3月16日追記>

BizPlus:コラム:「日経ビジネスon-line おすすめコラム」の2009/03/12付の記事を一部引用しておきます。

ニュースを斬る 代表秘書逮捕、検察強制捜査への疑問 民主党は率直に反省し、政治資金透明化の好機とせよ(2009/03/12)

郷原 信郎(ごうはら・のぶお)

桐蔭横浜大学法科大学院教授
コンプライアンス研究センター長

1955年島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事などを経て、2005年から現職。「不二家問題」(信頼回復対策会議議長)、「和歌山県談合事件」(公共調達検討委員会委員長)など、官庁や企業の不祥事に関与。主な著書に『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)のほか、不二家問題から事故米不正転売問題まで食品不祥事を幅広く取り上げた『食の不祥事を考える』(季刊コーポレートコンプライアンスVol.16)など。近著には『思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)がある



 遅くとも半年余り先には「天下分け目」の衆議院議員総選挙が確実に行われるという時期に、世論調査では、次期総理候補の人気で麻生首相を圧倒的にリードしている民主党小沢一郎代表の公設第一秘書が、東京地検特捜部に逮捕され、日本中に大きな衝撃を与えた。

 容疑は、政治資金規正法違反。小沢氏の資金管理団体である陸山会が、西松建設から政治資金の寄付を受け取ったのに、それを同社のOBが代表を務める政治団体からの寄付であるように政治資金収支報告書に記載したことが虚偽記載に当たるというものだ。

 これに対して、小沢氏側は、記者会見で、容疑を全面的に否定、検察の捜査が不公正だと批判、民主党側からは「国策捜査」との批判も行われた。その後、小沢氏の会見での発言内容に反する事実が各紙で大きく報じられたこともあって捜査批判はトーンダウンしつつあったが、内閣官房副長官が「自民党側には捜査は及ばない」と発言したことが問題になったこともあって国策捜査批判が再燃。検察は、他地検の検事も増員して同じ政治団体から寄付等を受けていた自民党側議員にも捜査の対象を拡大すると報じられている。

 100年に1度とも言われる経済危機が深刻化する最中、政治を大混乱に陥れている今回の事件だが、検事時代、自民党長崎県連事件など多くの政治資金規正法違反事件を捜査してきた私の経験からすると、今回の検察の捜査にはいくつかの疑問がある。

 しかし、小沢氏はその問題とは切り離して今回の問題について率直に反省し、民主党は政治資金の透明化に向けて新たな取り組みをしていく好機と捉えるべきである。

■違反の成立に問題はないのか

 まず、小沢氏側の会計処理が本当に政治資金規正法違反と言えるのかどうかに問題がある。

 この法律では、「寄付をした者」を収支報告書に記載することとしており、陸山会の収支報告書では西松建設のOBが設立した2つの政治団体が寄付者として記載されている。その記載が虚偽だというのが今回の容疑だが、政治資金規正法上、寄付の資金を誰が出したのかを報告書に記載する義務はない。つまり、小沢氏の秘書が、西松建設が出したおカネだと知っていながら政治団体の寄付と記載したとしても、小沢氏の秘書が西松建設に請求書を送り、献金額まで指示していたとしても、それだけではただちに違反とはならない。

 政治資金規正法違反になるとすれば、寄付者とされる政治団体が実体の全くないダミー団体で、しかも、それを小沢氏側が認識していた場合だ。捜査のポイントはこの点を立証できるかどうかだが、全国に数万とある政治団体の中には、政治資金の流れの中に介在するだけで活動の実態がほとんどないものも多数ある。西松建設の設立した政治団体が全く実体がないダミーと言えるのかは、微妙なところだ。

 もちろん、政治資金の流れの透明性を高めるという政治資金規正法の目的から考えると、実質的な拠出者も収支報告書に記載して公表するのが望ましいことは確かだが、政治資金の規正は、ヤミ献金をなくし、収入の総額を正確に開示することを中心に行われてきたのが現実で、資金の実質的拠出者の明示の公開とは程遠い段階だ。法律の趣旨を達成するために今後実現していくべきことと、現行法でどこまで義務付けられ、罰則の対象とされているのかということとは別の問題だ。

 小沢氏が会見で「資金の出所は詮索しない」と発言したこともあって、資金が西松建設から出ていることを小沢氏側が認識しているかどうかに関心が集中し、あたかもそれが捜査のポイントであるように報じられているが、違反の成否という点からすると、問題は、政治団体が実体のないダミーと言えるかどうか、それを小沢氏側が認識しているかどうかだ。

■事件の重大性・悪質性はこの時期の摘発に値するものか

 今回の事件は、総選挙を控えた時期に次期首相の筆頭候補と言われていた野党第一党党首の秘書を逮捕することで重大な政治的影響を及ぼした事件だ。この事件は、こうした重大な影響を生じさせてまで強制捜査に着手すべき事件と言えるのか。

 これまで政治資金規正法で摘発されてきた事件は、違反の態様が特に悪質か、金額が多額か、いずれかであった。

 政治資金規正法は、昔はほとんど形骸化していた。1990年代までは、政治資金規正法のルールを完全に守っている政治家などほとんどいなかったのではないか。2000年以降、政治とカネの問題が取り上げられる度に、政治資金の透明化の要求が高まり、少しずつではあるが透明化の方に向かってきた。

 今回の容疑事実の大部分は2003年から2004年にかけてだが、ちょうどこの時期に摘発された自民党長崎県連事件、日歯連事件、坂井隆憲代議士事件などと比較すると、寄付の総額が4年間で2100万円、しかも、すべて表の寄付で、その寄付の名義を偽った疑いがあるというだけの今回の事件は、規模、態様ともに極めて軽微であることは否定できない。むしろ、この当時の政治献金は、大手ゼネコンから政党や政治家への寄付は、自社の名義で行われるとは限らず下請業者、取引先業者に行わせたり、今回の事件のように政治献金をするための政治団体を設立して行ったりしていたものも多かった。

 しかも、このような政治献金の見返りとして個別の工事の受注が可能になるような場合であれば、職務権限の関係で贈収賄にはならなくても、一つの悪質性の要素になると言える。しかし、具体的な公共工事の受注との間に直接的な対価関係があるかというと、それはほとんどないというのが実情だった。

 業者間の話し合いや情報交換が行われて、その中でどこかの特定の会社に受注予定者が絞り込まれていくのがゼネコン間の談合システムだった。技術力や実績、工事の特性、発注者側への事前協力の有無など、いろいろなことを考慮して受注予定者を1社に絞り込んでいく。その過程で、発注者側の有力者や、地域の有力者などにも、受注業者となることについて了解を得て、関係者すべてのコンセンサスを得ておく必要があった。それをやっておかないと、入札直前になって横やりを入れられ、そのコンセンサスが崩れてしまう恐れがある。そうすると、せっかくの苦労が水の泡になり、入札前に施工の準備まで整えていたのに、すべて無駄になってしまう。

 そこで有力者にはいろいろなところに目配りをして挨拶(あいさつ)をして、最後の最後に、文句を言われないようにしないといけない。そういう挨拶の構図が重畳的に出来上がっているというのが一般的だった。その有力者については、与党の県連の幹事長が力を持っていたり、あるいは議長が力を持っていたり、知事が力を持っていたり、あるいは有力代議士が力を持っていたりなど、いろいろだ。しかも、それは業界内で有力者と認識されているだけで、本当に力を持っているかどうかは分からない。受注業者側は「保険料」のつもりで、有力者と思えるところに挨拶に行き、求められればお金も持っていくという世界だった。そういう談合の構図なので、いくら調べても直接的な対価関係は出て来ない。

 そういう構造というのは、当時はほとんど全国共通だったと考えられる。政治献金というのが特定の工事における受注の対価だということ、対価の明確性を持っているということはあまりない。本件についても、ダム工事を西松建設が受注していたことと政治献金との直接的な対価関係があるとは考えにくい。しかも、小沢氏は、この当時、自由党の党首から民主党との合流で民主党副代表になった時期、国発注のダムについて発注者側に対する影響力があるとは考えられない。有力者と言っても、工事を円滑に進めていくための地域のコンセンサスを得るための挨拶の一環と考えるのが自然だろう。

 2005年末の談合排除宣言によってゼネコン間の談合構造が解消され、政治献金をめぐる構図も大きく変わっていった。それ以前の過去の時点に遡れば違法の疑いがある政治献金は相当数あるはずだが、こうした過去の一時期に形式的に法に違反したというだけで摘発できるということになると、検察はどの政治家でも恣意的に捜査の網にかけることが出来てしまう。政治資金規正法で摘発する事件は、他の政治家が一般的に行っているレベルよりも明らかに悪質性が高い事案、収支報告書の訂正などでは済まされないような事案でなければならない。

 新聞報道などでは、事件の悪性を可能な限り強調しているように見えるが、そのような報道を見る限りでも、今回の事件が、このような時期に、重大な政治的影響を与えてまで強制捜査を行うべき悪質・重大な政治資金規正法違反とは思えない。(以下、省略)」






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2009/03/18 Wed 17:02:06
| #[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ:2009/03/18 Wed 17:02:06
コメントありがとうございます。
非公開コメントですので、修正した形で引用します。


>郷原信郎氏が、「『ガダルカナル』化する特捜捜査  『大本営発表』に惑わされてはならない」という論説を発表しています
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090315/189047/
>これを「世に倦む日日」が批判をしています
http://critic6.blog63.fc2.com/blog-entry-47.html

情報ありがとうございます。郷原信郎氏の論説については、エントリーの中で紹介することにしました。↓
「小沢・民主党代表への事情聴取見送りに~立件困難ゆえだが、リーク情報を流して散々煽ってきた責任(検察・報道機関)はどうとるのだろうか?」(2009/03/20 [Fri] 18:12:13)
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-1740.html


>郷原元検事の理屈も少々乱暴な感じではありますが、「世に倦む日日」の無知と思い上がりには辟易とさせられます。

郷原氏の論説は、法律の専門家としての意見ですが、一般市民向けであって法解釈論を分かりやすく説明しなければならないため、「少々乱暴な感じ」になってしまうのかもしれませんね。法律論に関しては、内容的には、ごく真っ当なものだと思いますが。

これに対して、「世に倦む日日」さんは、ご自分が認めているように、法律の素人ですが、法解釈論が分からないばかりか、罪刑法定主義さえも分かっていないような内容です。

例えば、「世に倦む日日」さんは「大事なことは法律の目的を達成することであり、法の適用を通じて社会正義を実現することである。法曹の専門家は、小手先の解釈を弄るのではなく、法律の理念と大義の立場で事件を論じる必要がある。」と書いています。

しかし、刑法の書籍のどこに、「大事なことは法律の目的を達成することであり、法の適用を通じて社会正義を実現すること」なんて書いているというのでしょうか。そんな妄想は、一行たりとも書いてはいません。

また、刑事罰は重大な権利侵害をもたらすのですから、その刑罰法規の適用は謙抑的でなければならないのですから、厳密な解釈が必要です。それなのに、「小手先の解釈を弄る」などと述べるのですから、そう述べること自体が刑法の基本理念への無知を晒しています。

まして、「大義の立場で(刑事)事件を論じる必要」だなんて、大義(人間として踏み行うべき最も大切な道)といった曖昧な抽象論で解釈をするだなんて、罪刑法定主義はおろか、近代刑法さえも、まるで分かっていないかのようです。

「世に倦む日日」さんがデタラメな法解釈を展開するのは、いつものことですが、今回はいつも以上にデタラメぶりが酷いですね。妄想ばかりしているから、郷原氏の法律論がまるで理解できないのでしょうね。


>「世に倦む日日」は、幾つか有料記事化していますが、金を払う馬鹿がどれだけいるのでしょうか。

今回の事件は、陰謀論めいたことが言いやすいために、妄想好きの「世に倦む日日」さんは大喜びでしょう。どうでもいいような話であれば、妄想を逞しくするのもいいのかもしれませんが、妄想ごっこをするのは単なる現実逃避であって、馬鹿馬鹿しいかぎりです。仰るとおり、「世に倦む日日」のような妄想ブログに、「金を払う馬鹿」がいるとしたら、世も末ですね。
2009/03/20 Fri 20:47:47
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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2009/03/22 Sun 15:20:12
| #[ 編集 ]
>非公開コメントの方へ:2009/03/22 Sun 15:20:12
コメントありがとうございます。
非公開コメントですので、修正した形で引用します。


>ライブドア事件の時も、直接株を買った人々に損害を与えたのは、検察の強制捜査により株価が大きく下落したからでした
>幾らか株価が下がってから強制捜査を行っていれば、大きく損害を受ける人は少なかったはず

そうですね。強制捜査の時期は、多くの株主に損害が生じてしまったのですから、仰るとおり、不適切な時期だったと思います。経済に及ぼす影響を考えて捜査を行うべきです。

ライブドア事件は、元々、規制を著しく緩和した会社法制を利用したもので、元凶は法改正を求めた法務省にあったのに、ツケはライブドアの株主だけに負わされてしまいました。実に不合理です。


>今回の「国策(?)捜査」によって、もし政権交代が達成できなくなった場合は、検察の責任は重大です。
>刑罰に問うことは無理でも、必ず何らかの報いがあることでしょう。

経済対策・雇用対策・貧困対策。3月末が近づいている現在、大量解雇により路頭に迷う人が生じており、近い将来、大量の餓死者が出てもおかしくない状況です。そうした状況であるのに、対策を採るべき国会の議論は低調になっています。

ですから、東京地検特捜部による「捜査・起訴ごっこ」に対して、「そんなことをしている場合か! 特捜部は地獄に落ちろ!」と苦々しく思っている方は多いはずです。もし、政権交代をしなければ、多くの方が怨みに思い、「報いを受けるべき」という意識になるでしょうね。
2009/03/25 Wed 02:00:31
URL | 春霞 #5oClkA7g[ 編集 ]
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